説明

装飾フィルムの貼り付け方法及び装飾フィルムの貼り付け装置

【課題】被貼付体に装飾フィルムを貼り付けるときに、装飾フィルムに局部的な歪みが生じるのを防止することができる装飾フィルムの貼り付け方法を提供する。
【解決手段】装飾層12及び粘着層13を有する装飾フィルム11を、被貼付体21の表面に貼り付ける装飾フィルムの貼り付け方法であって、装飾フィルム11を、弾性体1の凸面2上に、装飾層12が凸面2側を向くように装着し、被貼付体21及び/又は装飾フィルム11を移動させて、被貼付体21と、装飾フィルム11の粘着層13とを当接させて、被貼付体21と弾性体1との間に装飾フィルム11を挟持した状態とし、弾性体1が被貼付体21の表面の形状と相補的な形状となるように弾性変形する圧力を加え、被貼付体21と装飾フィルム11とを圧着して、被貼付体21に装飾フィルム11を貼り付ける装飾フィルムの貼り付け方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾フィルムの貼り付け方法及び装飾フィルムの貼り付け装置に関し、更に詳しくは、被貼付体に装飾フィルムを貼り付けるときに、装飾フィルムに局部的な歪みが生じるのを防止することができる装飾フィルムの貼り付け方法及び装飾フィルムの貼り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より粘着剤付き装飾フィルムを被貼付体に貼り付けるときには、スキージ等を用いて手作業で貼り付けていた。この方法では、曲面に貼り付ける場合等には、貼り付け始めは、装飾フィルムを延伸しなくても、しわが生じることもなく問題なく貼り付けられるが、貼り付けが進むに従い、しわが生じるようになってくるため、局部的に延伸しながら貼り付ける必要があった。そのため、装飾フィルムの当該局部的に延伸された部分の形状が歪むという問題があった。また、このような手作業により装飾フィルムを貼り付けると時間がかかるという問題があった。また、装飾フィルムを曲面に貼り付けるときには、面積が大きくなるほど上記歪みが大きくなるため、大きな面積の装飾フィルムを使用することは困難であった。そして、この問題は、被貼付体の曲面の曲率が大きくなるほど顕著なものであった。
【0003】
このような、装飾フィルムを被貼付体に貼り付ける方法としては、真空成形により装飾フィルムを成形しながら、その装飾フィルムを被貼付体に貼り付ける方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、装飾フィルムをそれより面積の大きいアプリケーションテープに貼り付けて積層体とし、その積層体と所定の真空成形用装置とで閉空間を形成させ、その閉空間内に被貼付体を装着し、その閉空間内を減圧することにより積層体に配設された装飾フィルムを被貼付体に貼り付けるものであった。この方法によると、被貼付体と装飾フィルムとが、その間に空気が保持された状態で貼り付いたり、被貼付体に凹部があると、装飾フィルムがその凹部の形状に追従せずに、その凹部の凹面に装飾フィルムが貼り付かないという問題があった。
【0004】
また、曲面状の被貼付体に装飾フィルムを貼り付ける方法としては、プルマスクテープを利用し、装飾フィルムを貼り付ける曲面に対して装飾フィルムを一定の角度で保持した状態で減圧する方法がある(例えば、特許文献2参照)。この方法では、被貼付体と装飾フィルムとの間に空気が入り込むことがあるという問題があった。
【特許文献1】特開昭56−113420号公報
【特許文献2】特開平02−137990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その特徴は、被貼付体に装飾フィルムを貼り付けるときに、装飾フィルムに局部的な歪みが生じるのを防止することができる装飾フィルムの貼り付け方法及び装飾フィルムの貼り付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によって以下の装飾フィルムの貼り付け方法及び装飾フィルムの貼り付け装置が提供される。
【0007】
[1] 装飾面を有する装飾層及び粘着層を備える装飾フィルムを、被貼付体の表面に貼り付ける装飾フィルムの貼り付け方法であって、前記装飾フィルムを、凸面を有する弾性体の前記凸面上に、前記装飾層が前記凸面側を向くように装着し、前記被貼付体及び前記装飾フィルムのうちの少なくとも一方を移動させて、前記被貼付体と、前記装飾フィルムの前記粘着層とを当接させて、前記被貼付体と前記弾性体との間に前記装飾フィルムを挟持した状態とし、前記弾性体が前記被貼付体の表面の形状と相補的な形状となるように弾性変形する圧力を加え、前記被貼付体と前記装飾フィルムとを圧着して、前記被貼付体に前記装飾フィルムを貼り付ける装飾フィルムの貼り付け方法。
【0008】
[2] 前記装飾フィルムを、前記装飾フィルムよりも表面積の大きなアプリケーションテープに、前記装飾層側が前記アプリケーションテープに接触するように積層して積層体とし、前記積層体を、前記装飾フィルムの前記装飾面が前記弾性体側に向けられるように、前記凸面上に装着する[1]に記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【0009】
[3] 前記凸面と前記装飾フィルムとの間を減圧して、前記装飾フィルムを、前記凸面上にほぼ密着するように装着する[1]又は[2]に記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【0010】
[4] 前記弾性体の10N/cm2で加圧したときの変形量(沈み量)が0.1〜100mmである[1]〜[3]のいずれかに記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【0011】
[5] 前記弾性体が弾性変形する圧力が0.1〜200N/cm2である[1]〜[4]のいずれかに記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【0012】
[6] 前記弾性体が、その凸面に前記弾性体の他の部分より弾性率の高い表面層を有する[1]〜[5]のいずれかに記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【0013】
[7] その表面に装飾フィルムを装着することができる凸面を有する弾性体と、前記凸面を下方向に向けて前記弾性体がその下面側に装着される弾性体固定板と、前記弾性体固定板の下方側に配設されその上面に被貼付体を固定することができる被貼付体固定台と、前記弾性体固定板及び前記被貼付体固定台とを、これらの少なくとも一方が上下方向に移動するように支持する支持体とを有する装飾フィルムの貼り付け装置。
【0014】
[8] 前記凸面に前記装飾フィルムを装着するときに、前記凸面と前記装飾フィルムとの間を減圧することができる[7]に記載の装飾フィルムの貼り付け装置。
【0015】
[9] 前記弾性体が、10N/cm2で加圧したときの変形量(沈み量)が0.1〜100mmである[7]又は[8]に記載の装飾フィルムの貼り付け装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の装飾フィルムの貼り付け方法によれば、装飾フィルムを弾性体の凸面に装着し、その弾性体を被貼付体に押し付けながら(圧力をかけながら)装飾フィルムを被貼付体に貼り付けるため、弾性体が被貼付体に押圧されるときに、弾性体が弾性変形し、被貼付体の表面形状と相補的な形状となり、そのとき弾性体と被貼付体との間に挟持された装飾フィルムが局所的な歪みもなく被貼付体にむらなく均一に貼り付けられる。また、弾性体が被貼付体に接触して弾性変形するときには、最初に当接した部分から外側に向かって、連続的に接触領域が広がるように変形するため、装飾フィルムと被貼付体との間に空気が入り難くなる。更に、弾性体の被貼付体に接触する部分が凸面であるため、適用できる被貼付体の形状は特に限定されず、種々の形状の被貼付体に装飾フィルムを貼り付けることができる。更に、短時間に多くの装飾フィルムを被貼付体に貼り付けることができる。
【0017】
本発明の装飾フィルムの貼り付け装置によれば、弾性体固定板及び/又は被貼付体固定台をそれぞれが接近する方向に移動させて、装飾フィルムを装着した弾性体の凸面に被貼付体を押圧させることができるため、弾性体が被貼付体に押圧されるときに、弾性体が弾性変形し、被貼付体の表面形状と相補的な形状となり、そのとき弾性体と被貼付体との間に挟持された装飾フィルムが局所的な歪みもなく被貼付体にむらなく均一に貼り付けられる。また、弾性体が被貼付体に接触して弾性変形するときには、最初に当接した部分から外側に向かって、連続的に接触領域が広がるように変形するため、装飾フィルムと被貼付体との間に空気が入り難くなる。更に、弾性体の被貼付体に接触する部分が凸面であるため、適用できる被貼付体の形状は特に限定されず、種々の形状の被貼付体に装飾フィルムを貼り付けることができる。更に、短時間に多くの装飾フィルムを被貼付体に貼り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0019】
図1は、本発明の装飾フィルムの貼り付け方法の一の実施の形態で使用する、装飾フィルムを装着した弾性体及び被貼付体を模式的に示す断面図である。
【0020】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け方法は、被貼付体21の表面に、装飾面15を有する装飾層12及び粘着層13を備える装飾フィルム11を、装飾フィルム11の粘着層13側から貼り付けるものであって、まず、図1に示すように、装飾フィルム11を、凸面2を有する弾性体1の凸面2上に、装飾層12の装飾面15が凸面2側を向くように装着する。装飾面15は、装飾層12の粘着層13に接していない側の面である。本実施の形態では、装飾フィルム11を、装飾フィルム11よりも表面積の大きなアプリケーションテープ14に、装飾層12の装飾面15がアプリケーションテープ14に接触するように積層して積層体17とし、積層体17を、装飾フィルム11の装飾層12の装飾面15が弾性体1側に向けられるように、凸面2上に装着している。アプリケーションテープ14は、好ましくは、その外縁部分の少なくとも一部が装飾フィルム11と重ならず、その部分が積層されていない状態となる。上記積層体17は、図2に示すように、装飾フィルム11とアプリケーションテープ14とが、積層用粘着層16により接着されている。図1に示すように、積層体17(装飾フィルム11)を凸面2に装着するときは、凸面2と積層体17(装飾フィルム11)との間を減圧して、積層体17(装飾フィルム11)を、凸面2上にほぼ密着するように装着することが好ましい。例えば、弾性体1を通して減圧することが好ましい。積層体17(装飾フィルム11)を、凸面2上にほぼ密着させるようにすると、積層体17(装飾フィルム11)の粘着層13が被貼付体21に押圧されたときに、装飾フィルム11が被貼付体21に歪みなく均一に貼り付くため好ましい。ここで、「ほぼ密着する」とは、積層体17(装飾フィルム11)が、凸面2上に完全に密着する必要はなく、積層体17(装飾フィルム11)の粘着層13が被貼付体21に押圧されたときに、装飾フィルム11が被貼付体21に歪みなく均一に貼り付く程度であればよい。「ほぼ密着」せずに、例えば、積層体17(装飾フィルム11)と凸面2との間に多くの空気が入り込んで装飾フィルム11に「しわ」が入ったような状態になると、積層体17(装飾フィルム11)の粘着層13が被貼付体21に押し付けられたときに、装飾フィルム11と被貼付体21との間にも空気が入り易くなることがある。
【0021】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け方法においては、装飾フィルム11を積層体17として装着した弾性体1を被貼付体21側に移動させるか、又は、被貼付体21を弾性体1側に移動させることにより、被貼付体21及び装飾フィルム11のうちの少なくとも一方を移動させて、被貼付体21と、凸面2に装着された装飾フィルム11の粘着層13とを当接させる。そして、被貼付体21と弾性体1との間に装飾フィルム11を挟持した状態とし、弾性体1が被貼付体21の表面の形状と相補的な形状となるように弾性変形する圧力を加え、被貼付体21と装飾フィルム11とを圧着して、被貼付体21に装飾フィルム11を貼り付ける。弾性体1が弾性変形する圧力は、弾性体1と被貼付体21とが当接した状態で、弾性体1が被貼付体21から受ける圧力である。また、このとき、装飾フィルム11を装着した弾性体1と、被貼付体21の両方を互いに近づく方向に移動させてもよい。
【0022】
上記弾性体1を弾性変形させる圧力は、0.1〜200N/cm2であることが好ましく、5〜100N/cm2であることが更に好ましく、10〜30N/cm2であることが特に好ましい。0.1N/cm2より小さいと、装飾フィルム11の粘着層13が被貼付体21に十分に押し付けられ難いため、装飾フィルム11の貼り付き方が不十分になることがある。200N/cm2より大きいと、貼り付けた装飾フィルム11が変形したり、被貼付体21が変形したり、装飾フィルム11を貼り付けるための装置が必要以上に大型、高価になることがある。
【0023】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け方法によれば、装飾フィルムを弾性体の凸面に装着し、弾性体が弾性変形する圧力が、弾性体と被貼付体との間に加えられながら(弾性体と被貼付体とが互いに押し合う状態で)装飾フィルムを被貼付体に貼り付けるため、弾性体が被貼付体に押し付けられるときに、弾性体が弾性変形し、被貼付体の表面形状と相補的な形状となり、そのとき弾性体と被貼付体との間に挟持された装飾フィルムが局所的な歪みもなく被貼付体にむらなく均一に貼り付けられる。また、短時間で、繰り返し精度よく貼り付けを行うことができるため、効率よく短時間で大量の貼り付けを行うことができ、更に、自動化することによりその効果を高めることができる。このときに、弾性体が弾性変形して被貼付体の表面形状と相補的な形状となるために、弾性体を10N/cm2で加圧したときの変形量(沈み量)が0.1〜100mmであることが好ましく、1〜50mmであることが更に好ましく、2〜10mmであることが特に好ましい。0.1mmより小さいと、弾性体が被貼付体の表面形状と相補的な形状となり難いことがあり、100mmより大きいと、変形し易いため弾性体により被貼付体を押し付けることが十分にできず、装飾フィルムを貼り付け難くなることがある。ここで、弾性体の「沈み量」とは、一定の加圧をしたときの弾性体の変形長さをいい、該沈み量の測定は、沈み量を測定する弾性体の所定の面(当接面)と同じ形状の面を有する鋼鉄製の錘を用い、該錘の面を該弾性体の所定の面に当接させ、10N/cm2で加圧したときに、該錘が加圧方向に当所の当接面を基準に移動した距離を計測して行う。
【0024】
図1に示す弾性体1は、被貼付体21の表面形状に合わせて十分に変形する必要があるが、上述したように、変形し易過ぎても被貼付体21に対する押圧力が低くなることがある。そのため、弾性体1が、十分に変形し、且つ上記押圧力を維持するために、その凸面2に弾性体1の他の部分より硬度の高い表面層3を有することが好ましい。このように、硬度の相対的に高い表面層3を有することにより、弾性体1が変形し易くても、被貼付体21に接する部分である表面層3が被貼付体21を押し付けることができるため十分に押圧力を維持することができる。表面層3の硬度は30〜90であることが好ましく、50〜60であることが更に好ましい。上記表面層3の硬度は、JIS K 6253に準拠する方法で測定した値である。
【0025】
また、本実施の形態においては、弾性体が被貼付体に接触して弾性変形するときには、最初に当接した部分から外側に向かって、連続的に接触領域が広がるように変形するため、装飾フィルムと被貼付体との間に空気が入り難くなる。更に、弾性体の被貼付体に接触する部分が凸面であるため、適用できる被貼付体の形状は特に限定されず、種々の形状の被貼付体に装飾フィルムを貼り付けることができる。被貼付体に窪み等があっても、凸状の弾性体に押圧されると、その窪みの中にも弾性体が入り、窪み内の(窪みを形成する)面にまで装飾フィルムが到達することができる。
【0026】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け方法で使用する弾性体の形状は、被貼付体に当接し、弾性変形しながら圧力を加えるための凸面を有していれば、特に限定されるものではない。凸面の形状は、球面形状の一部であってもよいし、球面形状の一部が長く伸びた形状や、球面形状の一部が歪んだ形状であってもよい。図1に示す弾性体1の凸面2は、球面形状の一部である。また、凸面の先端部分周辺を半径の小さい球面形状の一部とし、その外周に位置する部分をその先端部分周辺より半径の大きな球面形状の一部とするような2段階の球面形状の一部であってもよい。この場合、2つの球面の繋ぎ目は、滑らかに繋がっていることが好ましい。繋ぎ目に稜線やV字状の溝等が形成されると、その部分で装飾フィルムが被貼付体に均一に貼り付かなくなることがある。
【0027】
弾性体(表面層以外の部分)の材質は、被貼付体が押し付けられたときに、適度に変形するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、発泡ウレタン樹脂、発泡シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、天然ゴム、ラテックス、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等が好ましい。また、弾性体としては、内部に空間が形成され、その内部空間に気体又は液体が充填され、押圧時に内部が圧縮され(気体の場合)、又はその気体又は液体が適度に外部に排出されることにより、弾性体が被貼付体の表面形状と相補的な形状に変形するような構造のものであってもよい。
【0028】
特に、貼付時の圧力を上げる目的で上記弾性体の表面に硬度を上げた層を追加する場合の材質としては、ウレタン樹脂、合成ゴム、天然ゴム、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、ラテックス等が好ましい。また、表面層の厚さは、0.1〜50mmが好ましく、1〜20mmが更に好ましい。
【0029】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け方法に使用する装飾フィルム11(図2参照)としては、従来から使用されている装飾フィルムを使用することができ、例えば、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、アイオノマー樹脂等を使用することができる。装飾フィルム11の厚さは特に限定されるものではないが、30〜200μmが好ましい。装飾フィルム11の粘着層13に使用する粘着剤としては、アクリル系粘着剤等を使用することができる。粘着層13の厚さは特に限定されるものではないが、15〜30μmが好ましい。装飾フィルム11は、使用前には、粘着層13の表面にほこり等が付着しないように保護用のライナーが配設されていることが好ましい。装飾フィルム11を被貼付体に貼り付けるときには、このライナーは取り外して使用される。また、装飾フィルム11の装飾層12の装飾面15には、通常、インク等により目的に応じた模様、文字等が記載されており、その表面には上記模様、文字等を保護するために、透明な保護フィルムが配設されている。また、粘着層13の材質としては、粘着剤の代わりに感熱式の接着剤を配設してもよい。感熱式の接着剤を使用するときには、被貼付体を装飾フィルム11に当接させて、押し付けたときに、装飾フィルム11を加熱するようにすることが好ましい。例えば、弾性体の内部又は外部にヒーターを配設してもよい。
【0030】
アプリケーションテープ14(図2参照)としては、従来から使用されているものを使用することができる。アプリケーションテープ14の伸長性は、厳しい三次元曲面へのマーキングの適用が可能になるように、大きいことが好ましく、例えば、JIS Z0237に準拠する方法で測定して、150〜400%の破断点伸び率を有することが好ましい。アプリケーションテープとして使用できる材料は、例えば、PVC(塩化ビニル樹脂)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)/PP(ポリプロピレン)、ウレタンゴム、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂等である。アプリケーションテープ12の一の表面には、装飾フィルム11に配設するために粘着剤が配設されていることが好ましい。例えば、図2に示す積層用粘着層16のように配設することができる。この粘着剤は装飾フィルムに配設するものより粘着力が弱いものが好ましい。例えば、アクリル粘着剤、合成ゴム系粘着剤等を使用することができる。
【0031】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け方法により、装飾フィルムを装着される被貼付体は、特に限定されるものではない。例えば、オートバイの燃料タンク、自動車のバンパー等を挙げることができる。
【0032】
次に、本発明の装飾フィルムの貼り付け装置について説明する。図3は、本発明の装飾フィルムの貼り付け装置の一の実施の形態を模式的に示す断面図である。図3に示すように、本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置100は、その表面に装飾フィルム41を装着することができる凸面52を有する弾性体51と、凸面52を下方向に向けて弾性体51がその下面側に装着される弾性体固定板61と、弾性体固定板61の下方側に配設されその上面に被貼付体64を固定することができる被貼付体固定台62と、弾性体固定板61及び被貼付体固定台62とを、これらの少なくとも一方が上下方向に移動し、弾性体51を被貼付体固定台62に固定した被貼付体64に押し付けることができるように支持する支持体63とを有するものである。
【0033】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を使用して、装飾フィルムを被貼付体に貼り付けるときには、図3に示すように、まず、装飾フィルム41を、弾性体51の凸面52上に、装飾層42が凸面52側を向くように装着する。次に、被貼付体固定台62(被貼付体64)を上方に移動させるか、又は弾性体固定板61(装飾フィルム41)を下方に移動させて、被貼付体64と、凸面52に装着された装飾フィルム41の粘着層43とを当接させて、被貼付体64と弾性体51との間に装飾フィルム41を挟持した状態とし、弾性体51を、被貼付体64の表面の形状と相補的な形状となるように弾性変形する圧力を加え、被貼付体64と装飾フィルム41とを圧着して、被貼付体64に装飾フィルム41を貼り付ける。つまり、上述した、本発明の装飾フィルムの貼り付け方法を、本発明の装飾フィルムの貼り付け装置を使用して実施することができる。
【0034】
装飾フィルムとしては、上述した本発明の装飾フィルムの貼り付け方法において使用される、アプリケーションフィルムと積層した積層体を使用することが好ましい。積層体の構成としては、上述した本発明の装飾フィルムの貼り付け方法において使用される積層体と同様とすることが好ましい。特に、弾性体を10N/cm2で加圧したときの変形量(沈み量)が0.1〜100mmであることが好ましい。
【0035】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を構成する弾性体は、上述した本発明の装飾フィルムの貼り付け方法において使用される弾性体と同様とすることが好ましい。
【0036】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を構成する弾性体固定板の構造は、特に限定されるものではなく、凸面を下向きにして弾性体を装着し、その凸面を被貼付体に押圧させることができるように形成されていればよい。例えば、板状の金属や、金属製の角材、棒等を枠組みしたもの等、所望の構造とすることができる。材質も特に限定されるものではなく、鉄、アルミニウム、ステンレススチール等の金属や、木材等を使用することができる。
【0037】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を構成する被貼付体固定台の構造は、特に限定されるものではなく、被貼付体をその上面に固定し、被貼付体と弾性体固定板に装着された弾性体の凸面とを押圧させることができるように形成されていればよい。例えば、板状の金属や、金属製の角材、棒等を枠組みしたもの等、所望の構造とすることができる。材質も特に限定されるものではなく、鉄、アルミニウム、ステンレススチール等の金属や、木材等を使用することができる。
【0038】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を構成する支持体の構造は、特に限定されるものではなく、図3に示すように、被貼付体固定台62及び弾性体固定板61を支持し、被貼付体固定台62及び/又は弾性体固定板61を上下方向に移動することができ、弾性体51の凸面52に被貼付体64を押し付ける(又は、被貼付体64に弾性体51の凸面52を押し付ける)ことができるように形成されていればよい。例えば、2枚の板状部材を平行に立てたものとし、その間に弾性体固定板61を上側、被貼付体固定台62を下側になるように配設させてもよいし、4本の棒状の脚部を立てて枠組みし、弾性体固定板61及び被貼付体固定台62をその4本の脚部により上下動可能な状態で支えるように構成してもよい。
【0039】
被貼付体固定台及び/又は弾性体固定板を上下方向に移動させ、弾性体の凸面に被貼付体を押し付ける(又は、被貼付体に弾性体の凸面を押し付ける)ために、駆動装置が、被貼付体固定台及び/又は弾性体固定板に取り付けられていることが好ましい。移動、押圧するときの駆動装置としては、エアシリンダー、油圧シリンダー、スプリング、モーター等を利用することができる。また、被貼付体固定台及び/又は弾性体固定板を人力で移動させ、弾性体の凸面に被貼付体を押し付ける(又は、被貼付体に弾性体の凸面を押し付ける)ようにしてもよい。
【0040】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を使用するときに、装飾フィルムを弾性体に装着する操作は、手作業で行うことができる。更に、図4に示すように、被貼付体固定台62と弾性体固定板61との間に、自動で上下に移動可能なフィルム固定枠65を配設し、フィルム固定枠65に装飾フィルム(図示せず)を固定してフィルム固定枠65を弾性体まで移動させて、装飾フィルムを自動的に弾性体51に装着するように形成することが好ましい。フィルム固定枠65は、装飾フィルム又は装飾フィルムを貼り付けたアプリケーションテープ(図示せず)の外周を固定するための外枠部分を有し、その外枠部分に囲まれて空間(貫通孔)部分(図示せず)が形成されている。装飾フィルムを弾性体に装着するときには、上記装飾フィルム又はアプリケーションテープの外周をフィルム固定枠65の外枠部分に固定し、そのときに上記空間部分に位置する装飾フィルム(アプリケーションテープ)を弾性体に貼り付けるようにする。ここで、図4は、本発明の装飾フィルムの貼り付け装置の他の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【0041】
フィルム固定枠を設けたときには、フィルム固定枠にまず装飾フィルム(積層体)を固定する。このとき、装飾フィルムの装飾層の装飾面が上側(弾性体側)を向き、粘着層が下側(被貼付体側)を向くように固定する。そして、フィルム固定枠を上部に移動させ(弾性体を固定した弾性体固定板を下方に移動させてもよい)、装飾フィルムの装飾層側を弾性体固定板に固定された弾性体の凸面に装着する。このとき、フィルム固定枠及び/又は弾性体固定板の移動は、手動であってもよいし、駆動装置を使用して自動としてもよい。また、装飾フィルムが弾性体の凸面に装着されたときには、弾性体(弾性体固定枠)とフィルム固定枠とが接近して、重なった状態となっている。次に、弾性体固定枠とそれに重なった状態となっているフィルム固定枠とを下方向に移動させるか、又は、被貼付体を固定した被貼付体固定台を上方に移動させて、装飾フィルムの粘着層と被貼付体とを当接させるとともに、装飾フィルムの粘着層に被貼付体を押し付ける(又は、被貼付体に装飾フィルムの粘着層を押し付ける)。これにより、装飾フィルムを被貼付体に貼り付けることができる。装飾フィルムを被貼付体に貼り付けた後は、被貼付体固定台を移動させるか、又は弾性体固定板及びフィルム固定枠を移動させて、被貼付体固定台と、弾性体固定板及びフィルム固定枠とを離す。そして、装飾フィルムを、アプリケーションテープとの積層体としていた場合には、アプリケーションテープを剥がすことにより、装飾フィルムを被貼付体に貼り付ける操作が完了する。
【0042】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を使用するときに、装飾フィルムを弾性体の凸面に装着するときには、装飾フィルムと弾性体の凸面との間を減圧して装着することが好ましい。
【0043】
本実施の形態の装飾フィルムの貼り付け装置を使用して装飾フィルムを装着する被貼付体としては、上述した本発明の形態の装飾フィルムの貼り付け方法により装飾フィルムが装着される被貼付体と同様のものを挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の装飾フィルムの貼り付け方法及び本発明の装飾フィルムの貼り付け装置は、被貼付体に装飾フィルムを貼り付けるときに、装飾フィルムに局部的な歪みが生じるのを防止し、短時間で貼り付けることができるため、例えばバイクの燃料タンク部、自動車のバンパー等の曲面のきつい部分に装飾フィルムを貼付するのに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の装飾フィルムの貼り付け方法の一の実施の形態に使用する、装飾フィルムを装着した弾性体及び被貼付体を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の装飾フィルムの貼り付け方法の一の実施の形態で被貼付体に貼り付ける装飾フィルムを模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の装飾フィルムの貼り付け装置の一の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の装飾フィルムの貼り付け装置の他の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1,51…弾性体、2,52…凸面、3…表面層、11,41…装飾フィルム、12,42…装飾層、13,43…粘着層、14…アプリケーションテープ、15…装飾面、16…積層用粘着層、17…積層体、21…被貼付体、61…弾性体固定板、62…被貼付体固定台、63…支持体、64…被貼付体、65…フィルム固定枠、100…装飾フィルムの貼り付け装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾面を有する装飾層及び粘着層を備える装飾フィルムを、被貼付体の表面に貼り付ける装飾フィルムの貼り付け方法であって、
前記装飾フィルムを、凸面を有する弾性体の前記凸面上に、前記装飾層が前記凸面側を向くように装着し、
前記被貼付体及び前記装飾フィルムのうちの少なくとも一方を移動させて、前記被貼付体と、前記装飾フィルムの前記粘着層とを当接させて、前記被貼付体と前記弾性体との間に前記装飾フィルムを挟持した状態とし、前記弾性体が前記被貼付体の表面の形状と相補的な形状となるように弾性変形する圧力を加え、
前記被貼付体と前記装飾フィルムとを圧着して、前記被貼付体に前記装飾フィルムを貼り付ける装飾フィルムの貼り付け方法。
【請求項2】
前記装飾フィルムを、前記装飾フィルムよりも表面積の大きなアプリケーションテープに、前記装飾層側が前記アプリケーションテープに接触するように積層して積層体とし、
前記積層体を、前記装飾フィルムの前記装飾面が前記弾性体側に向けられるように、前記凸面上に装着する請求項1に記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【請求項3】
前記凸面と前記装飾フィルムとの間を減圧して、前記装飾フィルムを、前記凸面上にほぼ密着するように装着する請求項1又は2に記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【請求項4】
前記弾性体の10N/cm2で加圧したときの変形量(沈み量)が0.1〜100mmである請求項1〜3のいずれかに記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【請求項5】
前記弾性体が弾性変形する圧力が0.1〜200N/cm2である請求項1〜4のいずれかに記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【請求項6】
前記弾性体が、その凸面に前記弾性体の他の部分より弾性率の高い表面層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の装飾フィルムの貼り付け方法。
【請求項7】
その表面に装飾フィルムを装着することができる凸面を有する弾性体と、前記凸面を下方向に向けて前記弾性体がその下面側に装着される弾性体固定板と、前記弾性体固定板の下方側に配設されその上面に被貼付体を固定することができる被貼付体固定台と、前記弾性体固定板及び前記被貼付体固定台とを、これらの少なくとも一方が上下方向に移動するように支持する支持体とを有する装飾フィルムの貼り付け装置。
【請求項8】
前記凸面に前記装飾フィルムを装着するときに、前記凸面と前記装飾フィルムとの間を減圧することができる請求項7に記載の装飾フィルムの貼り付け装置。
【請求項9】
前記弾性体が、10N/cm2で加圧したときの変形量(沈み量)が0.1〜100mmである請求項7又は8に記載の装飾フィルムの貼り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−1068(P2006−1068A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177915(P2004−177915)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】