説明

装飾品およびその製造方法

【課題】湿式のエッチング加工が施しやすく、明るさがあり高級感のある金色色調を呈し、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ、高硬度および高耐傷性を有する装飾品を得ることを目的としている。
【解決手段】本発明の装飾品は、装飾品用基材と、この装飾品用基材に被覆された、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層と、この密着層に被覆された積層被膜と、この積層被膜に被覆された、0.1〜0.3μmの厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜と、この金色硬質被膜に被覆された、0.02〜0.04μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜とから構成され、該積層被膜は、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されており、かつ、該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ(1)窒化ハフニウム(HfN)と窒化チタン(TiN)、(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と窒化チタン(TiN)、または(3)窒化ハフニウム(HfN)と窒化ジルコニウム(ZrN)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾品およびその製造方法に関する。詳しくは、湿式のエッチング加工が施しやすく、明るさがあって、高級感があり、より純金に近い色調(スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲)を呈し、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ、高硬度および高耐傷性を有する装飾品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計バンド、時計ケ−ス、べゼル、裏蓋、中留、尾錠、リューズなどの時計外装部品や、ピアス、イヤリング、指輪、メガネフレーム、ペンダント、ブローチ、ネックレス、ブレスレットなどの装飾品では、その最外層に、湿式または乾式メッキの手法を用いて金被膜を形成することにより、高級感または優れた耐食性を付与している。
【0003】
しかしながら、金被膜や、金-鉄合金などの金合金被膜は、一般的に硬度が小さいため、傷つきやすく、また腐食が発生しやすいため、装飾品の美観を損ねやすいとの問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1および2では、装飾品の層構成に積層構造を有することで、耐食性および耐傷性を向上した金色色調を呈する装飾品について開示している。さらに、特許文献3においても、装飾品の層構成に特定の積層構造を有することで、硬度、耐食性および耐傷性を向上した金色色調を呈する装飾品についての記載がある。
【0005】
しかしながら、これらの装飾品では、金色を呈する最外被膜の材質や、膜厚に問題があり、市場が要求する、明るさがあって、高級感があり、かつ、より純金に近い金色の色調を得ることはできない。また、膜厚が厚いため、耐傷性にも改良の余地がある。
【0006】
また、特許文献3では、より純金に近い金色の色調を有し、かつ、耐食性および耐傷性の向上を図った金色色調を呈する装飾部品について開示している。
しかしながら、この部品では、耐食性にさらなる改良の余地があり、特にこの部品からでは、湿式のエッチング工程を伴い製造される、金色色調と、金色色調と異なる色調とを有する、いわゆるツートンカラーを有する装飾品を得ることは非常に難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−269916号公報
【特許文献2】特開2007−262483号公報
【特許文献3】特開2007−84867号公報
【特許文献4】WO2008/41562 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、湿式のエッチング加工が施しやすく、明るさがあって、高級感があり、より純金に近い色調(スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲)を呈し、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ、高硬度および高耐傷性を有する装飾品を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、
装飾品用基材と、
この装飾品用基材に被覆された、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層と、
この密着層に被覆された積層被膜と、
この積層被膜に被覆された、0.1〜0.3μmの厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜と、
この金色硬質被膜に被覆された、0.02〜0.04μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜と、
から構成される装飾品であって、
該積層被膜は、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されており、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である装飾品が、湿式のエッチング加工が施しやすく、明るさがあって、高級感があり、より純金に近い色調(スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲)を呈し、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ、高硬度および高耐傷性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
また、本発明の装飾品は、前記積層被膜が、0.005〜0.2μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層された被膜であり、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であることも好ましく、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明の装飾品は、前記装飾品用基材に、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が被覆され、この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に、0.1〜0.3μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層が被覆され、このバリア層に、前記密着層、前記積層被膜、前記金色硬質被膜および前記金色最外被膜が、この順で被覆されており、かつ、前記密着層と、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)ジルコニウム(Zr)と、窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であってもよい。
【0012】
また、本発明の装飾品は、
装飾品用基材と、
この装飾品用基材に被覆された、金色最外被膜の金色色調と異なる被膜と、
この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に被覆された積層被膜と、
この積層被膜に被覆された、0.1〜0.3μmの厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜と、
この金色硬質被膜に被覆された、0.02〜0.04μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜と、
から構成される装飾品であって、
該積層被膜は、0.005〜0.2μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されており、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であってもよい。
【0013】
また、この装飾品は、前記装飾品用基材に、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が被覆され、この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に、0.1〜0.3μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層が被覆され、このバリア層に、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層が被覆され、この密着層に、前記積層被膜、前記金色硬質被膜および前記金色最外被膜が、この順で被膜されていることも好ましく、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)であることがさらに好ましい。
【0014】
前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、あるいは、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる被膜であることも好ましい。
【0015】
前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜は、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜であり、かつ、前記装飾品用基材と該DLC被膜との間に、チタン被膜と、該チタン被膜表面に形成されたシリコン被膜とを有していることも好ましい。
【0016】
前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜は、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる被膜であり、かつ、前記装飾品用基材と該プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる被膜との間に、チタン被膜と、該チタン被膜表面に形成された炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜とを有していることも好ましい。
【0017】
前記密着層は、チタン(Ti)であり、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)であることも好ましい。
【0018】
前記密着層と、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)であることも好ましい。
【0019】
前記金合金が、金−ニッケル合金、金−パラジウム合金、金−プラチナ合金、金−銅合金および金−ロジウム合金の群から選ばれる少なくとも1つを主成分として含むことも好ましい。
【0020】
前記装飾品用基材が、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステンカーバイトおよびタンタルカーバイトの中から選ばれる少なくとも1つか、またはセラミックスからなることも好ましい。
【0021】
前記装飾品用基材が、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステンカーバイトおよびタンタルカーバイトの中から選ばれる少なくとも1つからなり、かつ、基材表面が鏡面、梨地、ヘアーライン模様、ホーニング模様、型打ち模様及びエッチング模様の中から選ばれる少なくとも1つの表面仕上げが施されていることも好ましい。
【0022】
本発明の装飾品の製造方法は、
[1]金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、
[2]装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層を形成する工程と、
[3]密着層の表面に、乾式メッキ法により、第1の窒化物層と、第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程と、
[4]最上層の第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜を、0.1〜0.3μmの厚みを有するように形成する工程と、
[5]金色硬質被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜を、0.02〜0.04μmの厚みを有するように形成する工程とを含み、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の装飾品の製造方法は、前記工程[3]が、前記密着層の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層の表面に第1の窒化物層と、この第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程を含み、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であることも好ましい。
【0024】
本発明の装飾品の製造方法は、前記工程[1]が、金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、該装飾品用基材に、乾式メッキ法により、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜を形成する工程と、該金色最外被膜の金色色調と異なる被膜に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層を形成する工程を含み、
前記工程[2]は、バリア層の表面に、乾式メッキ法により、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層を形成する工程を含み、
さらに、[6]前記金色最外被膜の一部にマスキング処理を施した後、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜、前記密着層およびバリア層をエッチングする工程とを含み、かつ、
前記密着層と、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)ジルコニウム(Zr)と、窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であってもよい。
【0025】
本発明の装飾品の製造方法は、金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、
該装飾品用基材に、乾式メッキ法により、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜を形成する工程と、
該金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層の表面に第1の窒化物層と、第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程と、
最上層の第2の窒化物層の表面に、窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜を、0.1〜0.3μmの厚みを有するように形成する工程と、
金色硬質被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜を、0.02〜0.04μmの厚みを有するように形成する工程を含み、さらに、
前記金色最外被膜の一部にマスキング処理を施した後、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜を、エッチングする工程を含み、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の装飾品は、明るさがあって、高級感があり、より純金に近い色調(スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲)を呈し、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ、高硬度および高耐傷性である。そのため、長期にわたり装飾品の美観を維持することができる。
【0027】
特に、本発明の装飾品が、金色色調と、金色色調とは異なる色調とを呈する、いわゆるツートンカラーの外観を有するとき、顕著に腐食が発生せず、長期にわたり装飾品の美観を維持することができる。
【0028】
また、本発明の装飾品が、特定の層構成を有することで、湿式のエッチング加工が施しやすい。そのため、エッチング時によって生じる電位差腐食などを抑制でき、また、装飾品の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、摩耗試験の方法を説明するための摩耗試験機の模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る装飾品およびその製造方法について具体的に説明する。
なお、A(基材)に被覆されたB(例えば密着層)とは、AがBにて被覆されていることをいう(以下、同様)。
【0031】
〔装飾品〕
本発明に係る装飾品は、装飾品用基材と、この装飾品用基材に被覆された、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層と、この密着層に被覆された積層被膜と、この積層被膜に被覆された、0.1〜0.3μmの厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜と、この金色硬質被膜に被覆された、0.02〜0.04μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜とから構成され、積層被膜は、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されており、かつ、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。
【0032】
また、前記積層被膜は、0.005〜0.2μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層された被膜であり、かつ、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であると、装飾品の外観の明るさがさらに向上するため、好ましい。
【0033】
また、本発明に係る装飾品は、前記装飾品用基材に、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が被覆され、この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に、0.1〜0.3μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層が被覆され、このバリア層に、前記密着層、前記積層被膜、前記金色硬質被膜および前記金色最外被膜が、この順で被覆されており、かつ、前記密着層と、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)ジルコニウム(Zr)と、窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかであってもよい。
【0034】
また、本発明に係る装飾品は、前記装飾品用基材と、この装飾品基材に被覆された、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜と、この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に被覆された、積層被膜と、この積層被膜に被覆された、0.1〜0.3μmの厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜と、この金色硬質被膜に被覆された、0.02〜0.04μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜とから構成され、前記積層被膜は、0.005〜0.2μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されており、かつ、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)であってもよい。
【0035】
このように特定の層構成から形成されている本発明の装飾品は、明るさがあって、高級感があり、より純金に近い色調(スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲)を呈し、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ、高硬度および高耐傷性である。そのため、長期にわたり装飾品の美観を維持することができる。特に、本発明の装飾品が、金色色調と、金色色調とは異なる色調とを呈する、いわゆるツートンカラーの外観を有するとき、顕著に腐食の発生を抑制できるため、長期にわたり装飾品の美観を維持することができる。
【0036】
そのため、たとえば腕時計ケース、腕時計バンド、腕時計のリューズ、腕時計の裏蓋等の時計外装部品、さらにはベルトのバックル、指輪、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、ペンダント、ブローチ、カフスボタン、ネクタイ止め、バッジ、メダル、眼鏡のフレーム、カメラのボディ、ドアノブなどに好適に用いられる。
【0037】
また、本発明の装飾品が、前述のとおり特定の層構成を有することで、ツートンカラーの製造時に行なう湿式のエッチング加工が施しやすい。そのため、エッチング時によって生じる電位差腐食などを抑制でき、また、装飾品の生産性を向上させることができる。
【0038】
本発明の装飾品は、表面硬度(HV、(株)フィッシャーインストルメンツ製 硬度計(フィッシャースコープ(登録商標)H100)を用いて、荷重5mN 10秒間保持で測定)が、通常1000〜2500、好ましくは1200〜2500、さらに好ましくは1500〜2500である。この範囲であれば、装飾品は耐傷付き性に優れる。なお、表面硬度が小さすぎると、装飾品の表面に傷がつきやすくなるので好ましくない。
【0039】
本発明の装飾品の金色色調は、スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲である。また、この範囲にある装飾品は、鏡面光沢でL*(70.0)a*(2.0)b*(15.0)〜L*(90.0)a*(10.0)b*(30.0)の範囲の金色色調を示している。ここに、L*は国際照明委員会(CIE)のCIE 1976 (L***)色空間における明度指数であり、a*、b*はクロマティクネス指数を表わす。上記金色色調のL*、a*およびb*の測定は、CIEの規格で定められている0度視野XYZ系による物体色の測定方法に従って、鏡面光沢の試験片について、ミノルタ社製スペクトロフォトメータCM503dを用いて行なわれる。
【0040】
なお、上記の各層は、通常、乾式メッキ法により形成される。乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。
【0041】
〔装飾品の製造方法〕
本発明の装飾品は、金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程(工程[1])と、装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層を形成する工程(工程[2])と、密着層の表面に、乾式メッキ法により、第1の窒化物層と、第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程(工程[3])と、最上層の第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜を、0.1〜0.3μmの厚みを有するように形成する工程(工程[4])と、金色硬質被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜を、0.02〜0.04μmの厚みを有するように形成する工程(工程[5])とを含む方法により製造される。また、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とは、それぞれ(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。
【0042】
また、本発明の装飾品が、後述する金色被膜層を有する積層被膜を含むとき、前記工程[3]は、前記密着層の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層の表面に第1の窒化物層と、この第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程を含む。なお、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とは、それぞれ、(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。
【0043】
また、本発明の装飾品が、金色色調と、金色色調とは異なる色調とを呈する、いわゆるツートンカラーの外観を有するとき、装飾品は、前記工程[1]が、金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、該装飾品用基材に、乾式メッキ法により、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜を形成する工程と、該金色最外被膜の金色色調と異なる被膜に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層を形成する工程を含み、前記工程[2]は、バリア層の表面に、乾式メッキ法により、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層を形成する工程を含み、さらに、[6]前記金色最外被膜の一部にマスキング処理を施した後、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜、前記密着層およびバリア層を、エッチングする工程とを含む方法により製造される。また、密着層と第1の窒化物層と第2の窒化物層とが、それぞれ(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、(2)ジルコニウム(Zr)と、窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または(3)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。
【0044】
本発明において、前記エッチングする工程[6]は、金色最外被膜の所望の場所に、適宜混合した液体を塗布することなどによりマスキング処理を施し、その後、アルカリ性溶液、たとえば、シアン化カリウムと水酸化ナトリウムを含むエッチング液にて、金色最外被膜をエッチングする工程と、その後、酸性溶液、たとえば、フッ酸、硝酸および硫酸を含むエッチング液を用いて、金色硬質被膜、金色被膜層を含まない積層被膜および密着層をエッチングする工程と、アルカリ性溶液、たとえば、シアン化カリウムと水酸化ナトリウムを含むエッチング液を用いて、バリア層をエッチングする工程と、金色最外被膜上に施したマスクを、有機系溶剤などを用いて除去する工程を含む。
【0045】
本発明では、上述のように特定の層構成を有するため、金色硬質被膜、金色被膜層を含まない積層被膜および密着層をエッチングする工程を、通常30〜150秒程度、好ましくは30〜120秒程度で行なうことができる。そのため、酸性溶液のエッチング液による、バリア層や基材などの腐食を抑制でき、その結果、孔食に起因する電位差腐食を顕著に抑制できる。また、装飾品の生産性を向上させることができる。そして、特に、この電位差腐食を抑制できる効果は、後述する装飾品基材が、表面仕上げされているときに顕著に表れる。従って、装飾品としての仕上がりが美しく、長期にわたり装飾品の美観を維持することができる。
【0046】
また、本発明の装飾品が、後述する金色被膜層を有する積層被膜を含み、かつ、ツートンカラーの外観を有するとき、装飾品は、金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、該装飾品用基材に、乾式メッキ法により、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜を形成する工程と、該金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層の表面に第1の窒化物層と、第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程と、最上層の第2の窒化物層の表面に、窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜を、0.1〜0.3μmの厚みを有するように形成する工程と、金色硬質被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜を、0.02〜0.04μmの厚みを有するように形成する工程を含み、さらに、前記金色最外被膜の一部にマスキング処理を施した後、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜を、エッチングする工程とを含む方法により製造される。また、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とは、それぞれ(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。
【0047】
後述する金色被膜層を有する積層被膜を含む装飾品において、前記エッチング工程は、金色最外被膜の所望の場所に、適宜混合した液体を塗布することなどによりマスキング処理を施し、その後、アルカリ性溶液、たとえば、シアン化カリウムと水酸化ナトリウムを含むエッチング液にて、金色最外被膜、金色硬質被膜、金色被膜層を有する積層被膜、必要に応じて被膜される、密着層およびバリア層を、エッチングする工程と、金色最外被膜上に施したマスクを、有機系溶剤などを用いて除去する工程を含む。このように積層被膜として金色被膜層を有することで、エッチング液として酸性溶液を必要とせず、いわゆる、リフトオフによりエッチングすることができる。そのため、金色最外被膜、金色硬質被膜、金色被膜層を含む積層被膜、および必要に応じて被覆される密着層およびバリア層を、通常30〜150秒程度、好ましくは30〜120秒程度でエッチングすることができ、エッチング工程を簡素化できる。また、エッチング液として酸性溶液を用いる必要がないため、金色最外被膜の金色色調と異なる被膜や装飾品用基材などに対する腐食をさらに抑制することができる。その結果、孔食に起因する電位差腐食をさらに顕著に抑制することができ、特に、この電位差腐食を抑制できる効果は、後述する装飾品基材が、表面仕上げされているときにさらに顕著に表れる。そのため、装飾品として、より美しく仕上げることができ、かつ、この仕上がり(美観)をより長期にわたり維持することができる。
【0048】
なお、リフトオフとは、フォトリソグラフィにおいて、レジストを剥離する際、レジスト上に形成された被膜も同時に除去することであるが、本発明においてリフトオフとは、積層被膜を構成する金色被膜層と、金色被膜層上に被膜される第1の窒化物層および第2の窒化物層、さらに、必要に応じて被覆される密着層およびバリア層とを、同時に除去することを意味する。
以下、各被膜、層および基材について、具体的に説明する。
【0049】
〔金色最外被膜〕
本発明に係る装飾品を構成している金色最外被膜は、金色色調を呈する、金(Au)または金合金からなり、乾式メッキ法により金色硬質被膜表面に被膜される。
【0050】
金色最外被膜に用いられる金合金としては、金と全率固溶する元素を選択することが望ましく、得られた金合金は、薄膜にしても緻密な膜となるため、耐食性に優れ、変色などを起しにくく、信頼性が高い。
【0051】
このような金合金としては、金-ニッケル(Au-Ni)合金、金-パラジウム(Au-Pd)合金、金-プラチナ(Au-Pt)合金、または金-ロジウム(Au-Rh)合金が挙げられる。これらの金合金は、後述のとおり金色硬質被膜の色調が反映されたときに、装飾品に対して、明るさがあり高級感のある金色色調を呈することができる。なお、これらの金合金は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
金色最外被膜としては、金-ニッケル(Au-Ni)合金が、より純金に近い色調(スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲)を得ることができるため好ましい。
本発明において、金色最外被膜の厚みは、0.005μm以上0.05μm以下、好ましくは、0.02μm以上0.04μm以下の範囲である。
【0053】
金または金合金からなる金色最外被膜は、硬度が低く、傷つきやすいため、装飾品の美観を損ねやすい。しかしながら、特に0.02μm以上0.04μm以下のときは、傷が、0.04μmを超える深さに達し得ない浅い傷となるため視認され難く、かつ充分な耐食性を得られるだけでなく、色彩色(明るさ)、耐磨耗性も向上する。そのため、本発明に用いられる金色最外被膜の厚みは、上記範囲にあることが好ましい。また、金色最外被膜が0.04μm以下の薄膜になれば、下層の金色硬質被膜(窒化ハフニウムからなる被膜)の色調がより強く反映されるため、金色最外被膜の色調のみでは決して得られない、明るさがあって、高級感があり、より純金に近い色調(スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲)を得ることができる。なお、0.005μm未満の膜は、被膜として成膜することが困難となる。
【0054】
乾式メッキ法としては、スパッタリング法、真空蒸着法またはイオンプレーティング法を用いることができる。
以下、本発明に係る装飾品における各々の被膜、特にスパッタリング法による金色最外被膜の形成についてより具体的に説明する。
【0055】
腕時計用バンドなどの基材は、予め有機溶剤等で洗浄しておくことが好ましい。また、スパッタリング装置内を1.0×10-5〜1.0×10-2Pa、好ましくは1.0×10-5〜1.0×10-3Paまで排気した後、雰囲気ガスを1.0×10-2〜5.0×10-1Pa、好ましくは5.0×10-2〜1.0×10-1Paまで導入する。
【0056】
均一な金色色調を有する金色最外被膜を得るには、成膜前の装置内部の圧力は低い方がよく、1.0×10-3Pa以下、好ましくは1.0×10-4Pa以下に排気することが望ましい。すなわち、装置内部の圧力が低くなるにしたがって、装置内部の不可避成分の存在する量が減少し、金色色調が均一化するからである。
【0057】
〔金色硬質被膜〕
本発明に係る装飾品を構成している金色硬質被膜は、0.1μm以上0.3μm以下の厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなり、後述する積層被膜の表面に、乾式メッキ法により被膜される。
【0058】
金色硬質被膜は、金色最外被膜に比べて、硬度が高く、傷つきにくいことが望ましい。なお、金色最外被膜に対する金色硬質被膜の表面硬度の比(HV、(株)フィッシャーインストルメンツ製 硬度計(フィッシャースコープ(登録商標)H100)を用いて、荷重5mN 10秒間保持で測定)は、通常1800以上、好ましくは2000以上、さらに好ましくは2300以上である。
【0059】
また、金色最外被膜が、前述の特定の膜厚を有することで、装飾品が呈する外観の金色色調は、金色硬質被膜の色調が反映される。
そのため、金色硬質被膜としては、金色最外被膜に比べて硬度が高く、かつ、明るい淡黄色調(レモンイエロー色調)を呈する、窒化ハフニウム(HfN)が好ましい。窒化ハフニウムを金色硬質被膜として用いることで、装飾品が呈する外観色調は、さらに明るさがあって、暖かみがあり、その上、高級感のある金色色調を呈し、かつ、傷が肉眼で視認されにくい。
【0060】
また、後述するように、窒化ハフニウム(HfN)は、酸性溶液、たとえば、フッ酸、硝酸および硫酸の混合溶液などに溶解しやすい。そのため、たとえば、湿式エッチング法を用いてツートンカラーを有する装飾品を作製する場合に、加工しやすい。
【0061】
本発明において、金色硬質被膜の厚みは、0.1〜0.3μm、好ましくは0.15〜0.25μm、さらに好ましくは0.18〜0.22μmである。
本発明では、金色硬質被膜の下層に積層被膜を有するため、金色硬質被膜と積層被膜と共に装飾品の表面硬度を保つことができるため、金色硬質被膜の膜厚を薄くすることができる。
【0062】
なお、金色硬質被膜の厚みが薄すぎると、積層被膜の色調が、金色硬質被膜の色調に反映してしまい、金色硬質被膜の有する色調が変化して視認される恐れがあり、たとえば、金色硬質被膜の明るい淡黄色調をくすませる場合がある。結果として、本発明の装飾品は、明るさがあり高級感のある金色色調を呈する外観色調を得ることができないので好ましくない。また、金色硬質被膜の厚みが薄すぎると、装飾品の表面硬度が小さくなって、装飾品の表面が傷つきやすくなる。
【0063】
また、金色硬質被膜の厚みが厚すぎると、成膜時間が長くなって生産性が悪くなり、結果として成膜コストが必要以上に高価になるので好ましくない。特に、窒化ハフニウム(HfN)では、ハフニウムが高価なので、金色硬質被膜の厚みが厚すぎると、経済的な不利益が大きくなる。
【0064】
一方で、金色被膜層を有する積層被膜を用いると、上記の金色硬質被膜の膜厚においても、この積層被膜から得られる金色色調の明るさが、装飾品が呈する金色色調に反映される。この場合、装飾品が呈する外観色調は、さらに明るくなり、より高級感のある装飾品を得ることができる。
【0065】
金色硬質被膜の被覆に用いられる乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が、特に好ましく用いられる。
【0066】
なお、金色硬質被膜としては、窒化ハフニウム(HfN)の他に、窒化クロム(CrN)、窒化バナジウム(VN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化ニオブ(NbN)または窒化タンタル(TaN)などからなる金属窒化物、あるいは炭化窒化クロム、炭化窒化ジルコニウム、炭化窒化ハフニウム、炭化窒化バナジウム、炭化窒化ニオブまたは炭化窒化タンタルなどからなる金属炭化窒化物を用いることもできる。なお、これらの金属窒化物または金属炭化窒化物は、少なくとも1つを主成分(金色硬質被膜中、50〜100原子%含有している成分)として含んでいれば、1種単独で、2種以上組み合わせて、あるいは、窒化ハフニウム(HfN)と組み合わせて、用いることができる。
【0067】
これら金属窒化物または金属炭化窒化物において、含有する元素の比率を変えることで、金色硬質被膜の色調、例えば金色色調の明暗などを容易に制御でき、装飾品が呈する外観色調を自由に変えることができる。
【0068】
<金色最外被膜と金色硬質被膜について>
本発明に係る装飾品の外観色調は、外光より、金色最外被膜で反射された反射光と、金色最外被膜を通過して金色硬質被膜で反射された反射光とが共に視認されることにより得られる。
【0069】
これにより、本発明の装飾品が呈する外観色調は、最外被膜の金色色調に、金色硬質被膜の色調を反映した色調となり、最外被膜のみでは決して得られない、明るさがあり高級感のある金色色調を呈することができる。
【0070】
このような金色最外被膜と金色硬質被膜において、金属最外被膜として、金(Au)、金-ニッケル(Au-Ni)合金、金-パラジウム(Au-Pd)合金、金-プラチナ(Au-Pt)合金、または金-ロジウム(Au-Rh)合金を、金色硬質被膜としては、窒化ハフニウム(HfN)を用いることで、より明るさがあって高級感のある金色色調を呈し、かつ、より傷が肉眼で視認されにくい装飾品を得ることができる。
【0071】
さらに、金色最外被膜としては金-ニッケル(Au-Ni)合金を、金色硬質被膜としては窒化ハフニウム(HfN)を用いると、明るさや高級感、傷の非視認性の他に、暖かみのある色調を呈し、スイス金色規格1N−14の金色色調を装飾品の外観色調に付与できるため、より好ましい。
【0072】
なお、金色最外被膜の厚みが、0.005μm以上0.05μm以下であれば、金色硬質被膜の色調が反映されるが、0.05μmを超えると、金色硬質被膜の色調が反映されにくくなり、明るさがあって高級感のある金色色調が得られにくい場合がある。
【0073】
金色最外被膜と金色硬質被膜は、たとえば以下のような方法により調製することもできる。まず、積層被膜表面に、金色硬質被膜を形成した後、この金色硬質被膜表面の一部にマスキング処理を施し、この金色硬質被膜およびマスク表面に、金または金合金からなるメッキ被膜を乾式メッキ法で形成し、その後、このマスクおよびマスクの上のメッキ被膜を除去する工程を少なくとも1回行なうことにより、金色硬質被膜の色調を反映した色調となり、最外被膜のみでは決して得られない、明るさがあり高級感のある金色色調を有する最外層被膜を得ることもできる。
【0074】
〔積層被膜〕
本発明に係る装飾品を構成している積層被膜は、特定の厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、特定の厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されている。また、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とは、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。
【0075】
本発明において、第1の窒化物層の厚みは、0.007〜0.025μm、好ましくは0.007〜0.02μm、さらに好ましくは0.01〜0.02μmであり、第2の窒化物層の厚みは、0.007〜0.025μm、好ましくは0.007〜0.02μm、さらに好ましくは0.01〜0.02μmの厚みである。さらに、積層は、第1の窒化物層と第2の窒化物層とを1組として、5〜30組、好ましくは8〜25組、さらに好ましくは10〜20組である。それゆえ、第1の窒化物層と第2の窒化物層を1組として、1組の膜厚を膜層周期(λ)とすると、積層周期(λ)は、15〜50nm、好ましくは15〜40nm、さらに好ましくは20〜40nmとなり、積層被膜全体の膜厚は、75〜1500nm、好ましくは120〜1000nm、さらに好ましくは200〜800nmとなる。
【0076】
また、本発明において、積層被膜は、特定の厚みを有する金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層の表面に積層された、特定の厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層の表面に積層された、特定の厚みを有する第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層されていることも好ましい。このような積層被膜は、装飾品の外観の明るさをさらに向上させることができる。なお、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とは、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。
【0077】
このような積層被膜において、金色被膜層の厚みは、0.005〜0.2μm、好ましくは0.01〜0.1μm、さらに好ましくは0.01〜0.05μmであり、第1の窒化物層の厚みは、0.007〜0.025μm、好ましくは0.007〜0.02μm、さらに好ましくは0.01〜0.02μmであり、第2の窒化物層の厚みは、0.007〜0.025μm、好ましくは0.007〜0.02μm、さらに好ましくは0.01〜0.02μmの厚みである。さらに、積層は、金色被膜層、第1の窒化物層および第2の窒化物層とを1組として、5〜30組、好ましくは8〜25組、さらに好ましくは10〜20組である。それゆえ、金色被膜層、第1の窒化物層および第2の窒化物層を1組として、1組の膜厚を膜層周期(λ)とすると、積層周期(λ)は、0.019〜0.25μm、好ましくは0.024〜0.14μm、さらに好ましくは0.03〜0.09μmとなり、積層被膜全体の膜厚は、0.095〜7.5μm、好ましくは0.192〜3.5μm、さらに好ましくは0.3〜1.8μmとなる。
【0078】
なお、金合金としては、前述の金色最外被膜に記載の金合金を1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、金合金としては、金色最外被膜と同じ被膜であることが、生産性の観点から好ましい。
【0079】
このように、本発明では、特定の材質からなる薄膜を、ある周期で積層を重ねることで、装飾品全体の膜応力は高くなるが、装飾品全体の膜厚を小さくすることができる。そのため、被膜に対するチッピングの発生を抑制できるため、基材に対する電位差腐食の発生を抑制でき、その結果、装飾品の耐食性を顕著に抑制できる。また、積層周期を増やすことは、装飾品の耐磨耗性を向上させることができるため、好ましい。なお、本発明において、高硬度の装飾品を得られ、かつ、生産性の観点から、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とが、(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)であることが、好ましい。
【0080】
また、窒化ハフニウム(HfN)、窒化ジルコニウム(ZrN)および窒化チタン(TiN)は、上述の酸性溶液(たとえば、フッ酸、硝酸および硫酸の混合溶液)のエッチング液に対する溶解のし易さに差異があり、この順で溶解しやすい。なお、溶解のしやすさは、ハフニウム、ジルコニウムおよびチタンに対しても、同様である。
【0081】
本発明に係る積層被膜は、特定の膜厚を有し、かつ、第2の窒化物層より第1の窒化物層の方が溶解しやすい順を1組として、特定の周期積層している。このような積層の構成を有することで、エッチング処理が顕著に速くなるため、エッチング液によるバリア層や、基材などの腐食を抑制でき、その結果、孔食に起因する電位差腐食を顕著に抑制できる。特に、この電位差腐食を抑制できる効果は、後述する装飾品基材が、表面仕上げされているときに顕著に表れる。
【0082】
また、第1の窒化物層、第2の窒化物層の厚みが、それぞれ0.01μm未満であると、成膜が困難になるおそれがあり、それぞれ0.03μmを超えると、エッチング処理に対する速度の利点が得られない。
【0083】
また、本発明に係る積層被膜としては、前述した金色被膜層を有する特定の積層被膜を用いてもよい。このような層構成を有することで、積層被膜から得られる金色色調の明るさが、装飾品が呈する金色色調に反映されるため、装飾品が呈する外観色調は、さらに明るくなり、より高級感のある装飾品を得ることができる。また、ツートンカラーを有する装飾品を作製する場合には、いわゆる、リフトオフにより所望の箇所をエッチングすることができるため、エッチング液として酸性溶液を必要とせず、エッチング工程を簡素化できる。さらに、エッチング液として酸性溶液を必要としないため、バリア層や基材などに対する腐食をさらに抑制することができ、その結果、孔食に起因する電位差腐食をさらに顕著に抑制することができる。特に、この電位差腐食を抑制できる効果は、後述する装飾品基材が、表面仕上げされているときにさらに顕著に表れる。
【0084】
なお、金色被膜層の厚みが0.005μm未満、第1の窒化物層、第2の窒化物層の厚みが、それぞれ0.01μm未満であると、成膜が困難になるおそれがあり、金色被膜層は0.2μmを、第1の窒化物層、第2の窒化物層は0.03μmを超えると、いわゆる、リフトオフの効果が得られないおそれがある。また、リフトオフをより引き起こしやすくする点から、第1の窒化物層と、第2の窒化物層とは、(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)であることが、好ましい。
【0085】
なお、上記第1の窒化物層、第2の窒化物層は、金属(Hf、Zr、Ti)の含有量が40〜60atm%、窒素の含有量が30〜50atm%である、窒化ハフニウム(HfN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化チタン(TiN)が望ましい。窒素の含有量が上記範囲内にあると、その窒化物被膜は金色色調を呈し、しかも硬質である。
【0086】
積層被膜は、通常、乾式メッキ法により形成される。乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。なお、生産性の面から、1種類の乾式メッキ法により、積層被膜を形成することが好ましい。
【0087】
積層被膜表面でのビッカース硬度(HV)は、装飾品用基材の種類、密着層の種類や厚み等により異なるが、本発明に係る装飾品としては、超微小押し込み硬さ試験機(ビッカース圧子、荷重5mN、保持時間10秒)を用いて測定されるビッカース硬度(HV)が1000以上であることが耐傷付き性の面から望ましい。
【0088】
〔密着層〕
本発明に係る装飾品を構成している密着層は、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなり、乾式メッキ法により、後述する装飾品用基材の表面、または、バリア層の表面に被膜される。
【0089】
密着層は、装飾品に係る被膜全体の密着性を向上させる層として機能する。
また、このような密着層は、後述の金色最外被膜の金色色調と異なる被膜および金色被膜層を有する積層被膜を含む装飾品においても、装飾品に係る被膜全体の密着性を向上させることができるため、好ましく被覆できる。
【0090】
装飾品用基材の表面に密着層を被膜する場合、密着層は、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)のいずれかであり、中でも、生産性の点から、チタン(Ti)であることが、好ましい。また、密着層が、積層被膜の第1の窒化物層に含まれる元素と同一の元素からなる場合、より装飾品に係る被膜全体の密着性を向上させることができるため、好ましい。
【0091】
なお、これらの密着層に用いられる金属被膜は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることもできる。
また、後述するバリア層の表面に密着層を被膜し、金色色調と、金色色調と異なる色調とのツートンカラーを作製する場合、作製には湿式エッチング処理を行なうため、装飾品の被膜全体の密着性がより要求される。そのため、密着層として、積層被膜の第1の窒化物層に含まれる元素と同一の元素からなることが好ましい。このような、密着層、第1の窒化物層および第2の窒化物層の組み合わせとしては、(1)ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN)および窒化チタン(TiN)、(2)ジルコニウム(Zr)、窒化ジルコニウム(ZrN)および窒化チタン(TiN)、または(3)ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN)および窒化ジルコニウム(ZrN)のいずれかである。また、特に、密着層、第1の窒化物層および第2の窒化物層の組み合わせが、(1)ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN)および窒化チタン(TiN)であるとき、エッチング処理に対する速度を維持しつつ硬度を保てる点から、より好ましい。
【0092】
本発明において、密着層の厚みは、0.02〜0.4μm、好ましくは0.03〜0.3μm、さらに好ましくは0.05〜0.2μmである。密着層の厚みが薄すぎると、基材との密着性が低下するので好ましくなく、厚すぎると、成膜コストが高価になるので経済的な観点から好ましくない。また、密着層の膜厚を、この範囲以上に厚くしても、基材との密着性は良くならないので、意義は無い。
【0093】
乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が、特に好ましく用いられる。
【0094】
〔バリア層〕
本発明に係る装飾品を構成しているバリア層は、金色色調を呈する、金(Au)または金合金からなり、乾式メッキ法により、後述する金色最外被膜の金色色調とは異なる被膜の表面に被膜される。
【0095】
なお、金合金としては、前述の金色最外被膜に記載の金合金を1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、バリア層としては、金色最外被膜と同じ被膜であることが、生産性の観点から好ましい。
【0096】
バリア層は、金色色調と、金色色調と異なる被膜とのツートンカラーを作製する場合の湿式エッチング処理を制御するために用いられる。本発明において、金(Au)または金合金は、金色硬質被膜、金色被膜層を有さない積層被膜および密着層をエッチングするために用いられる酸性溶液に溶解しにくい。一方、金色最外被膜の金色色調とは異なる被膜は、前述の酸性溶液に溶解する。そこで、本発明では、バリア層を被膜することで、金色最外被膜の金色色調とは異なる被膜を前述の酸性溶液から保護し、その後、バリア層をアルカリ性溶液などでエッチングすることで、所望のツートンカラーを有する装飾品を作製する。
【0097】
一方、金色最外被膜の金色色調と異なる被膜および金色被膜層を有する積層被膜を含む装飾品においても、ツートンカラーの作製においては、本発明に係るバリア層を、好ましくは前述の密着層と共に被覆すると、リフトオフをより引き起こしやすくすることができるため、密着層のエッチングをより効率的に行なえる。そのため、このような装飾品においても、バリア層を被膜することが好ましい。
【0098】
本発明において、バリア層の厚みは、0.05〜0.4μm、好ましくは0.1〜0.4μm、さらに好ましくは0.1〜0.3μmである。バリア層の厚みが薄すぎると、エッチングの速度を制御できないため好ましくなく、厚すぎると、生産性の点から好ましくない。
【0099】
乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が、特に好ましく用いられる。
【0100】
均一な金色色調を有するバリア層を得るには、成膜前の装置内部の圧力は低い方がよく、1.0×10-3Pa以下、好ましくは1.0×10-4Pa以下に排気することが望ましい。すなわち、装置内部の圧力が低くなるにしたがって、装置内部の不可避成分の存在する量が減少し、金色色調が均一化するからである。
【0101】
〔金色最外被膜の金色色調と異なる被膜〕
本発明の装飾品は、金色最外被膜と異なる色調を有する被膜を、後述する装飾品基材の表面に被覆し、所定のエッチング処理を行なうことで、金色色調と、金色色調と異なる色調とを呈する、いわゆるツートンカラーの外観を有することもできる。なお、異なる色調は、金色色調と異なる色であれば、特に制限は無い。
【0102】
本発明において、金色最外被膜と異なる色調を有する被膜は、黒色を有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)、あるいは、白色(銀白色)を有するプラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなることが、装飾品としてのカラーバリエーションとして好ましく、乾式メッキ法により、装飾品用基材の表面に被膜される。なお、本発明において、金色最外被膜と異なる色調を有する被膜の厚みは、色調(構成する膜)および膜構成によっても異なるが、通常0.001〜5.0μm、好ましくは0.1〜4.0μm、さらに好ましくは0.3〜3.0μmの範囲となる。
【0103】
なお、プラチナ合金としては、特に白色を有するプラチナ−パラジウム(Pt−Pd)合金が挙げられるが、その他の色を呈するプラチナ−金(Pt−Au)合金などでもよい。
【0104】
黒色を呈するダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜は、装飾品用基材とダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜との間に、密着性の観点から、チタン被膜と、チタン被膜表面に形成された、シリコン被膜もしくはシリコンカーバイド被膜とを有していてもよい。すなわち、装飾品用基材の表面に、チタン被膜、シリコン(シリコンカーバイド)被膜およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜が、乾式メッキ法により、この順で形成されていることが好ましい。この場合、チタン被膜の厚みは、通常0.05〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.8μmであり、シリコン被膜層の厚みは、通常0.05〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.8μmであり、DLC被膜の厚みは、通常0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.5μmである。
【0105】
また、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜は、装飾品用基材とプラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜との間に、密着性および色調の観点から、チタン被膜と、チタン被膜表面に形成された炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜とを有していてもよい。すなわち、装飾品用基材の表面に、チタン被膜、炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜、およびプラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜が、乾式メッキ法により、この順で形成されていることが好ましい。この場合、チタン被膜の厚みは、通常0.02〜0.2μm、好ましくは0.05〜0.1μmであり、炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜の厚みは、通常0.2〜1.5μm、好ましくは0.5〜1.0μmであり、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる白色色調を有する被膜の厚みは、通常0.005〜0.5μm、好ましくは0.005〜0.1μmである。
【0106】
なお、乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、CVDなどが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。
【0107】
〔装飾品用基材〕
本発明に係る装飾品で用いられる装飾品用基材は、金属、合金および/またはセラミックスから形成される。
【0108】
上記金属や、合金としては、具体的には、ステンレス鋼、チタン、チタン合金、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステンカーバイト、タンタルカーバイトなどが挙げられる。これらの金属や、合金は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0109】
また、金属や、合金からなる装飾品用基材は、必要に応じて各種手段により、鏡面、梨地、ヘアーライン模様、ホーニング模様、型打ち模様及びエッチング模様の中から選ばれる少なくとも1つの表面仕上げが施されていることも好ましい。
【0110】
このような表面仕上げは、たとえば、ヘアーライン模様であれば公知の機械加工、具体的には、ワイヤーブラシや研磨紙、研磨布を使用して微細な溝を作ることにより模様付けを行なうことができる。その他の方法も、従来公知の機械加工によりなされる。
【0111】
本発明の装飾品は、装飾品用基材が表面仕上げされても、顕著に優れた耐蝕性を得ることができ、装飾品が有する金色の美観、特に、金色色調と金色色調と異なる色調とのツートンカラーが有する美観を、長期に渡って維持することができる。これは、本発明では、積層被膜を有することで、装飾品全体の膜厚を小さくすることができるため、その結果、被膜に対するチッピングが発生し難く、基材に対する電位差腐食が発生し難いためと考えられる。また、ツートンカラーを作製する際に行なう湿式エッチング処理では、前述のとおり、金色硬質被膜、金色被膜層を含まない積層被膜および密着層のエッチング処理を短時間で行なうことができるため、バリア層が、エッチング液に侵食され難く、その結果、装飾品用基材が表面仕上げされても孔食されずに、本発明の装飾品は、顕著に優れた耐蝕性を得ることができる。さらに、積層被膜として金色被膜層を有する場合、上述のとおり、リフトオフによりエッチングすることができるため、装飾品用基材に対する腐食をさらに抑制することができ、装飾品用基材が表面仕上げされても孔食されない。そのため、装飾品は、より顕著に優れた耐蝕性を得ることができ、より装飾品としての仕上がりが美しく、長期にわたる美観をさらに維持することができる。
【0112】
セラミックスとしては、具体的には、ジルコニアセラミックスなどが挙げられる。このジルコニアセラミックスは、その組成が酸化イットリウム(Y22)または他の安定化剤(たとえば酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO))を3〜7重量%含む安定化ジルコニアで、白色色調を呈している。より具体的に説明すると、このジルコニアセラミックスは、ジルコニアおよびバインダーを主成分とし、酸化イットリウム等の安定化剤を3〜7重量%含んだ安定化ジルコニア粉末100重量部に対して、バインダーを20〜25重量部含んでおり、焼成後に白色色調を呈する。バインダーとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンビニルアセテート、ブチルメタクリレート、ポリアセタール、ワックスおよびステアリン酸からなる群から選ばれる少なくとも2種を混合したものがよい。
【0113】
本発明において、酸化イットリウム(イットリア)等の安定化剤が3重量%より少なくなると、成形したジルコニアセラミックスの耐衝撃性が低下し(脆くなる)、外部からの衝撃で割れ等が発生し易くなり、また、安定化剤が7重量%より多くなっても耐衝撃性が低下し、外部からの衝撃で割れ等が発生し易くなるからである。安定化剤が上記範囲内にあると、ジルコニアセラミックスの結晶構造が立方晶と単斜晶の2相混合組織となっているため、耐衝撃性が安定していると考えられる。
【0114】
また、バインダーの含有量を、ジルコニア粉末100重量部に対して20〜25重量部としたのは、バインダーが20重量部より少なくなると、射出成形が悪くなり、金型内に素材が完全に充填されにくくなり、また、25重量部より多くなると、脱脂工程に時間がかかり量産性が悪くなるとともに、成形された形が壊れやすくなるからである。
【0115】
また、セラミックスからなる装飾品用基材、たとえば時計ケース用基材は、ジルコニアおよびバインダーを主成分とする素材を用いて射出成形により時計ケースの形状を有する成形体を作った後、この成形体を機械加工により粗加工、さらに、この粗加工した成形体を脱脂および焼成して時計ケースの粗基材を作り、次いで、この粗基材を研削および研磨等の機械加工することにより製造される。
【0116】
本発明においては、装飾品用基材の表面に密着層または金色最外被膜の金色色調と異なる被膜を形成する際に、予め装飾品用基材表面を従来公知の有機溶剤等で洗浄・脱脂しておくことが好ましい。
【0117】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
なお、実施例における外観、硬度、磨耗試験(耐磨耗性)、耐食性試験およびエッチングタイムは、下記の方法に従って行なった。
【0118】
(1)外観
目視および顕微鏡による観察を行った。さらに、金色色調に関しては、スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲であるものを○(合格)、それ以外を×(不合格)とした。さらに、○(合格)であったもののうち、より明度が高いものを◎とした。
【0119】
(2)硬度
得られた装飾品の表面硬度(HV)を、硬度計((株)フィッシャーインストルメンツ社製 フィッシャースコープ(登録商標) H100)を用いて、荷重5mN 10秒間保持で測定し、下記の基準にて評価した。
○(合格) :硬度 1000(HV)以上
×(不合格):硬度 1000(HV)未満
【0120】
(3)摩耗試験(耐磨耗性)
得られた装飾品の表面上に、スガ試験機(株)製の摩耗試験機[商品名 NUS−ISO−2]を用い(図1参照)、下記の方法に従って傷をつけた。すわなち、摩耗輪に貼り付ける研磨紙としてラッピングフィルム(フィルム表面に粒子径0.5μmのCr23粒子があるもの)を用い、この研磨紙と試験片との接触荷重は500gとし、研磨紙と試験片との相対的な往復運動回数は50回として、研磨紙の圧接により試験片に傷をつけた。この傷と、基準サンプル(実施例1〜3の試験片に傷を付けたサンプルを基準サンプルとして採用した)の傷とを5人の判定人によって目視により比較し、前記金色装飾品の表面上に付けられた傷について、傷が目立たないものを○(合格)とした。
【0121】
(4)耐食性試験
耐食性試験は、JIS H 8502に記載のメッキの耐食性試験方法(キャス(CASS)試験)に準拠して、行なった。試験時間は48時間とし、その試験面の耐食性評価は、レイティングナンバ標準図表によってレイティングナンバが9.8以上のとき、○(合格)とした。
【0122】
(5)エッチングタイム試験
ヘアーライン模様を施した装飾品(腕時計バンド用基材)の金色最外被膜表面を、シアン化カリウムと水酸化ナトリウムを含むエッチング液にて、エッチングした。この装飾品に対して、フッ酸、硝酸および硫酸を含むエッチング液にて、金色硬質被膜から密着層までをエッチングし、このときに要した時間を測定し、1分未満を○(合格)、1分以上を×(不合格)とした。さらに、○(合格)であったもののうち、エッチングによる装飾品の表面荒れが、より無いものを◎とした。
【実施例1】
【0123】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。
次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのチタン被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0124】
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0125】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および厚み0.017μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が34nmで積層被膜全体の膜厚が0.65μmである積層被膜を形成した。
【0126】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0127】
上記のようにして得られた積層被膜は、38層(19組)であった。
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウムおよび窒化チタンからなる積層被膜の表面に、金色を呈する窒化ハフニウムからなる金色硬質被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.2μm形成した。
【0128】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0129】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウムよりなる金色硬質被膜表面に、金−ニッケル合金からなる金色最外被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.03μm形成した。
【0130】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0131】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1620Hvを示した。なお、試験サンプル数は5個で、表面硬度の数値はその平均値で表わした(以下の実施例においても、同様に行なった)。
【0132】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【実施例2】
【0133】
下記の条件にて密着層および積層被膜を被膜した以外は、実施例1と同様の成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
〔密着層および積層被膜の成膜条件〕
実施例1と同様にして加工した腕時計用基材および腕時計バンド用基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのジルコニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0134】
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0135】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたジルコニウム被膜表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ジルコニウム被膜および厚み0.017μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が34nmで積層被膜全体の膜厚が0.65μmである積層被膜を形成した。
【0136】
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0137】
上記のようにして得られた積層被膜は、38層(19組)であった。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1518Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0138】
下記の条件にて密着層および積層被膜を被膜した以外は、実施例1と同様の成膜条件にて腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
〔密着層および積層被膜の成膜条件〕
実施例1と同様にして加工した腕時計用基材および腕時計バンド用基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのハフニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0139】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0140】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたハフニウム被膜表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および厚み0.017μmの窒化ジルコニウム被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が34nmで積層被膜全体の膜厚が0.65μmである積層被膜を形成した。
【0141】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0142】
上記のようにして得られた積層被膜は、38層(19組)であった。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1518Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0143】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例1と同様の加工方法および成膜条件にて形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1580Hvを示した。
【0144】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【実施例5】
【0145】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例2と同様の加工方法および成膜条件にて形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1550Hvを示した。
【0146】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【実施例6】
【0147】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例3と同様の加工方法および成膜条件にて形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1390Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【0148】
[比較例1]
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0149】
次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのチタン被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0150】
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0151】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.6μmの窒化チタン被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0152】
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0153】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化チタン被膜表面に、厚み0.2μmの窒化ハフニウム被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0154】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0155】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウム被膜の表面に、金−ニッケル合金からなる被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.05μm形成した。
【0156】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0157】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1400Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【0158】
[比較例2]
窒化ハフニウム被膜を形成しない以外は、比較例1と同様の加工方法および成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
【0159】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1280Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【0160】
[比較例3]
実施例1の積層被膜の代わりに、下記の条件にて窒化ハフニウム被膜および窒化チタン被膜を被膜した以外は、実施例1と同様の加工条件および成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
【0161】
〔窒化ハフニウム被膜および窒化チタン被膜の成膜条件〕
腕時計用基材および腕時計バンド用基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのチタン被膜(密着層)をスパッタリング法により、実施例1と同様にして形成した。
【0162】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.02μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜、厚み0.02μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0163】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0164】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で920Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【0165】
[比較例4]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例1と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1410Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【0166】
[比較例5]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例2と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1250Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【0167】
[比較例6]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例3と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で950Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表1に示す。
【0168】
【表1】

【実施例7】
【0169】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアーライン仕上げとした。
【0170】
次いで、これらの基材をイオンプレーティング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
次いで、これらの基材表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0171】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.004〜0.009Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:50V
フィラメント電圧:7V
【0172】
次いで、これらの基材表面に形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0173】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、300mA
ガス:メタンガスとアルゴンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0174】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0175】
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0176】
このようにして、硬質白色被膜を有する腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を得た。
次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で硬質白色被膜の表面に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0177】
<成膜条件>
ターゲット :金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0178】
次いで、この基材をスパッタリング装置内で、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に形成された金−ニッケル合金からなる金被膜の表面に、厚み0.1μmのチタン被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0179】
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0180】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および厚み0.017μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が34nmで積層被膜全体の膜厚が0.44μmである金色の積層被膜を形成した。
【0181】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0182】
上記のようにして得られた積層被膜は、26層(13組)であった。
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウムおよび窒化チタンよりなる積層被膜表面に、金色を呈する窒化ハフニウムからなる金色硬質被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.2μm形成した。
【0183】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0184】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウムからなる金色硬質被膜表面に、Au−Ni金合金からなる金色最外被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.03μm形成した。
【0185】
<成膜条件>
ターゲット :Au−Ni金合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0186】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1463Hvを示した。
【0187】
また、色調は、L*:80.8、a*:4.3、b*:25.9であった(L*、a*、b*の測定は、CIEの規格で定められている0度視野XYZ系による物体色の測定方法に従って、鏡面光沢の試験片について、ミノルタ社製スペクトロフォトメータCM503dを用いて行なわれた)。
【0188】
次いで、上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、必要箇所にマスキング処理を施した後、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜、前記密着層および前記バリア層をエッチングした。このときのエッチングタイムを、上記方法に従って測定し、その結果を表2に示した。
【0189】
なお、前記金色最外被膜および前記バリア層のエッチングには、シアン化カリウムを含むアルカリ性水溶液を用い、前記金色硬質被膜、前記積層被膜および前記密着層のエッチングには、硝酸、フッ酸および硫酸を含む酸性水溶液を用いた。
【0190】
次いで、金色最外被膜上に施したマスクを、有機系溶剤を用いた湿式エッチング法により除去した。
上記エッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表2に示す。
【実施例8】
【0191】
下記の条件にて密着層および積層被膜を被膜した以外は、実施例7と同様の成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
〔密着層および積層被膜の成膜条件〕
実施例7と同様に成膜して得られた硬質白色被膜を有する基材を、スパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に形成された金−ニッケル合金からなる金被膜の表面に、厚み0.1μmのジルコニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0192】
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0193】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたジルコニウム被膜表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ジルコニウム被膜および厚み0.017μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が34nmで積層被膜全体の膜厚が0.44μmである金色積層被膜を形成した。
【0194】
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0195】
上記のようにして得られた積層被膜は、26層(13組)であった。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1400Hvを示した。
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
【0196】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【実施例9】
【0197】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた装飾品である腕時計ケース用基材及び腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工により鏡面仕上げとした。
【0198】
次いで、実施例7と同様の成膜条件で、これらの基材表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜と、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜と、厚み0.05μmの白色色調を有するプラチナ被膜とを形成した。
【0199】
次いで、これらの基材をスパッタリング装置に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に形成された硬質白色被膜の表面に、実施例7と同様の成膜条件で、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)を形成した。
【0200】
次いで、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に形成された金−ニッケル合金からなる金被膜の表面に、厚み0.1μmのハフニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0201】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
スパッタリング供給電力:3kW
スパッタガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0202】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたハフニウム被膜表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および厚み0.017μmの窒化ジルコニウム被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が34nmで積層被膜全体の膜厚が0.44μmである金色積層被膜を形成した。
【0203】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0204】
上記のようにして得られた積層被膜は、26層(13組)であった。
次いで、実施例7と同様の成膜条件で、これら基材表面に形成された窒化ハフニウムおよび窒化ジルコニウムよりなる積層被膜表面に、厚さ0.2μmの金色を呈する窒化ハフニウムからなる金色硬質被膜と、厚さ0.03μmの金−ニッケル合金からなる金色最外被膜を形成した。
【0205】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1300Hvを示した。
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
【0206】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【実施例10】
【0207】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂し、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0208】
<成膜条件>
ターゲット:チタン
ターゲット供給電力:0.3〜0.5kW
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.02Pa
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
【0209】
次いで、このチタンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmのシリコンメッキ被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0210】
<成膜条件>
ターゲット:シリコン
ターゲット供給電力:0.3〜0.5kW
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.05Pa
バイアス電圧(加速電圧):−50〜−100V
【0211】
次いで、このシリコンメッキ被膜表面に、厚み0.1μmの黒色のダイヤモンドライクカーボン(DLC)メッキ被膜をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により下記の成膜条件で形成した。
【0212】
<成膜条件>
ガス:ベンゼン
成膜圧力:0.2Pa
フィラメント電流:20A
アノード電流:2.0A
カソード電圧(加速電圧):−1.0〜−5.0kV
【0213】
後の工程は、実施例8と同様にして、黒色と金色のツートンカラーを有する腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1410Hvを示した。
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
【0214】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【実施例11】
【0215】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例7と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1380Hvを示した。
【0216】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【実施例12】
【0217】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例8と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1470Hvを示した。
【0218】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【実施例13】
【0219】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例9と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1470Hvを示した。
【0220】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【実施例14】
【0221】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例10と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1520Hvを示した。
【0222】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【0223】
[比較例7]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材の表面に、実施例7と同様の条件で形成した硬質白色被膜上に、比較例1と同様の成膜条件および膜厚で、チタン被膜、窒化チタン被膜、窒化ハフニウム被膜、金−ニッケル合金からなる被膜を、この順で成膜して得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。また、エッチング前の得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1355Hvを示した。
【0224】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行ない、その結果を表2に示した。
【0225】
[比較例8]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材の表面に、実施例7と同様の条件で形成した硬質白色被膜上に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)および厚み0.2μmのチタン被膜(密着層)を、この順で形成し、さらに、得られたチタン被膜の表面に、比較例1と同様の成膜条件で、厚み0.8μmの窒化チタン被膜、厚み0.2μmの窒化ハフニウム被膜および厚み0.3μmの金−ニッケル合金からなる被膜を、この順で形成した。
【0226】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドを用いて、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。また、エッチング前の得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1290Hvを示した。
【0227】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行ない、その結果を表2に示した。
【0228】
[比較例9]
金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)を形成しない以外は、実施例7と同様にして、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
【0229】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドを用いて、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。また、エッチング前の得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1285Hvを示した。
【0230】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行ない、その結果を表2に示した。
【0231】
[比較例10]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材の表面に、実施例7と同様の条件で形成した硬質白色被膜上に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)および厚み0.2μmのハフニウム被膜(密着層)を、この順で形成し、さらに、得られたハフニウム被膜の表面に、厚み0.8μmの窒化ハフニウム被膜および厚み0.3μmの金−ニッケル合金からなる被膜を、この順で形成した。
【0232】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドを用いて、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。また、エッチング前の得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で 1180Hvを示した。
【0233】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【0234】
[比較例11]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例7と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1285Hvを示した。
【0235】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【0236】
[比較例12]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例8と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1290Hvを示した。
【0237】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【0238】
[比較例13]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例9と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1310Hvを示した。
【0239】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【0240】
[比較例14]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例10と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1250Hvを示した。
【0241】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例7と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表2に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表2に示した。
【0242】
【表2】

【実施例15】
【0243】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。
次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのチタン被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0244】
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0245】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.02μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成し、その後、窒素ガスをスパッタリング装置内に導入し、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下において、この金被膜層表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および、この窒化ハフニウム被膜表面に厚み0.017μmの窒化チタン被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。この金被膜層、窒化ハフニウム被膜および窒化チタン被膜を、この順で繰り返し積層し、積層周期(λ)が0.054μmで積層被膜全体の膜厚が1.026μmである金色の積層被膜を形成した。
【0246】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0247】
上記のようにして得られた積層被膜は、38層(19組)であった。
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された、金色被膜層、窒化ハフニウムおよび窒化チタンからなる積層被膜の表面に、金色を呈する窒化ハフニウムからなる金色硬質被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.2μm形成した。
【0248】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0249】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウムよりなる金色硬質被膜表面に、金−ニッケル合金からなる金色最外被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.03μm形成した。
【0250】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0251】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1600Hvを示した。なお、試験サンプル数は5個で、表面硬度の数値はその平均値で表わした(以下の実施例においても、同様に行なった)。
【0252】
また、色調は、L*:88.5、a*:8.1、b*:24.8であった(L*、a*、b*の測定は、実施例7と同様に行った)。
さらに、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【実施例16】
【0253】
下記の条件にて密着層および積層被膜を被膜した以外は、実施例15と同様の成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
〔密着層および積層被膜の成膜条件〕
実施例15と同様にして加工した腕時計用基材および腕時計バンド用基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのジルコニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0254】
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0255】
次いで、このスパッタリング装置内において、これら基材表面に形成されたジルコニウム被膜表面に、下記の成膜条件で、厚み0.02μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ジルコニウム被膜および厚み0.017μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が0.054μmで積層被膜全体の膜厚が1.026μmである積層被膜を形成した。
【0256】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0257】
上記のようにして得られた積層被膜は、38層(19組)であった。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1500Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【実施例17】
【0258】
下記の条件にて密着層および積層被膜を被膜した以外は、実施例15と同様の成膜条件にて腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
〔密着層および積層被膜の成膜条件〕
実施例15と同様にして加工した腕時計用基材および腕時計バンド用基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのハフニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0259】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0260】
次いで、このスパッタリング装置内において、これら基材表面に形成されたハフニウム被膜表面に、下記の成膜条件で、厚み0.02μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および厚み0.017μmの窒化ジルコニウム被膜を、この順でスパッタリング法により交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が0.054μmで積層被膜全体の膜厚が1.026μmである積層被膜を形成した。
【0261】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0262】
上記のようにして得られた積層被膜は、38層(19組)であった。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1500Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【実施例18】
【0263】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例15と同様の加工方法および成膜条件にて形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1550Hvを示した。
【0264】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【実施例19】
【0265】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例16と同様の加工方法および成膜条件にて形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1530Hvを示した。
【0266】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【実施例20】
【0267】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例17と同様の加工方法および成膜条件にて形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1400Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【0268】
[比較例15]
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。
【0269】
次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのチタン被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0270】
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0271】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成し、その後、窒素ガスをスパッタリング装置内に導入し、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下において、この金被膜層表面に、厚み0.6μmの窒化チタン被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0272】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0273】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化チタン被膜表面に、厚み0.2μmの窒化ハフニウム被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0274】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0275】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウム被膜の表面に、金−ニッケル合金からなる被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.05μm形成した。
【0276】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0277】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1310Hvを示した。
【0278】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
[比較例16]
窒化ハフニウム被膜を形成しない以外は、比較例15と同様の加工方法および成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
【0279】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1310Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【0280】
[比較例17]
実施例15の積層被膜の代わりに、下記の条件にて金色被膜層、窒化ハフニウム被膜および窒化チタン被膜を被膜した以外は、実施例15と同様の加工条件および成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
【0281】
〔金色被膜層、窒化ハフニウム被膜および窒化チタン被膜の成膜条件〕
腕時計用基材および腕時計バンド用基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に、厚み0.1μmのチタン被膜(密着層)をスパッタリング法により、実施例15と同様にして形成した。
【0282】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成し、その後、窒素ガスをスパッタリング装置内に導入し、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下において、この金被膜層表面に、厚み0.02μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜、厚み0.02μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0283】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0284】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で900Hvを示した。
【0285】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【0286】
[比較例18]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例15と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1380Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【0287】
[比較例19]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例16と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1240Hvを示した。
【0288】
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【0289】
[比較例20]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例17と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で930Hvを示した。
また、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表3に示す。
【0290】
【表3】

【実施例21】
【0291】
まず、ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。なお、これらの基材の表面は、機械加工によりヘアーライン仕上げとした。
【0292】
次いで、これらの基材をイオンプレーティング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面をボンバードクリーニングした。
次いで、これらの基材表面に、厚み0.05μmのチタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0293】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、200〜500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.004〜0.009Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:50V
フィラメント電圧:7V
【0294】
次いで、これらの基材表面に形成されたチタンメッキ被膜表面に、厚み0.6μmの白色色調を有する炭化チタンメッキ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0295】
<成膜条件>
蒸発源:チタン
電子銃:10kV、300mA
ガス:メタンガスとアルゴンガスとの混合ガス
成膜圧力:0.02Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0296】
次いで、これらの基材表面に形成された炭化チタンメッキ被膜表面に、厚み0.005μmの白色色調を有するプラチナ被膜をイオンプレーティング法(熱陰極法)により下記の成膜条件で形成した。
【0297】
<成膜条件>
蒸発源:プラチナ
電子銃:10kV、500mA
ガス:アルゴンガス
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−50V
アノード電圧:60V
フィラメント電圧:7V
【0298】
このようにして、硬質白色被膜を有する腕時計ケース用基材および腕時計バンド用基材を得た。
次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で硬質白色被膜の表面に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0299】
<成膜条件>
ターゲット :金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0300】
次いで、この基材をスパッタリング装置内で、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に形成された金−ニッケル合金からなる金被膜の表面に、厚み0.1μmのチタン被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0301】
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0302】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガス雰囲気下に、これら基材表面に形成されたチタン被膜表面に、厚み0.02μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成し、その後、窒素ガスをスパッタリング装置内に導入し、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下において、この金被膜層表面に、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および、この窒化ハフニウム被膜表面に厚み0.017μmの窒化チタン被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。この金被膜層、窒化ハフニウム被膜および窒化チタン被膜を、この順で繰り返し積層し、積層周期(λ)が0.054μmで積層被膜全体の膜厚が0.702μmである金色の積層被膜を形成した。
【0303】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0304】
上記のようにして得られた積層被膜は、26層(13組)であった。
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、この基材表面に形成された金色被膜層、窒化ハフニウムおよび窒化チタンよりなる積層被膜表面に、金色を呈する窒化ハフニウムからなる金色硬質被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.2μm形成した。
【0305】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0306】
次いで、このスパッタリング装置内でアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス雰囲気下に、これら基材表面に形成された窒化ハフニウムからなる金色硬質被膜表面に、Au−Ni金合金からなる金色最外被膜をスパッタリング法により下記の成膜条件で0.03μm形成した。
【0307】
<成膜条件>
ターゲット :Au−Ni金合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
【0308】
上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1450Hvを示した。
【0309】
次いで、上記のようにして得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、必要箇所にマスキング処理を施した後、シアン化カリウムを含むアルカリ性水溶液を用いて、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜、密着層およびバリア層をエッチングした。このときのエッチングタイムを、上記方法に従って測定し、その結果を表4に示した。
【0310】
次いで、金色最外被膜上に施したマスクを、有機系溶剤を用いた湿式エッチング法により除去した。
上記エッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行なった。その結果を表4に示す。
【実施例22】
【0311】
下記の条件にて密着層および積層被膜を被膜した以外は、実施例21と同様の成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
〔密着層および積層被膜の成膜条件〕
実施例21と同様に成膜して得られた硬質白色被膜を有する基材を、スパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に形成された金−ニッケル合金からなる金被膜の表面に、厚み0.1μmのジルコニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0312】
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0313】
次いで、このスパッタリング装置内において、これら基材表面に形成されたジルコニウム被膜表面に、下記の成膜条件で、厚み0.02μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ジルコニウム被膜および厚み0.017μmの窒化チタン被膜を、この順でスパッタリング法により交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が0.054μmで積層被膜全体の膜厚が0.702μmである積層被膜を形成した。
【0314】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :チタン
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−150V
【0315】
上記のようにして得られた積層被膜は、26層(13組)であった。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1380Hvを示した。
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
【0316】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【実施例23】
【0317】
下記の条件にて密着層および積層被膜を被膜した以外は、実施例21と同様の成膜条件にて、腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
〔密着層および積層被膜の成膜条件〕
実施例21と同様に成膜して得られた硬質白色被膜を有する基材を、スパッタリング装置内に取り付け、アルゴンガス雰囲気中で基材表面に形成された金−ニッケル合金からなる金被膜の表面に、厚み0.1μmのハフニウム被膜(密着層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
【0318】
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
スパッタリング供給電力:3kW
スパッタガス :アルゴンガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0319】
次いで、このスパッタリング装置内において、これら基材表面に形成されたハフニウム被膜表面に、下記の成膜条件で、厚み0.02μmの金−ニッケル合金からなる金色被膜層、厚み0.017μmの金色を呈する窒化ハフニウム被膜および厚み0.017μmの窒化ジルコニウム被膜を、この順でスパッタリング法により交互に繰り返し積層し、積層周期(λ)が0.054μmで積層被膜全体の膜厚が0.702μmである積層被膜を形成した。
【0320】
<成膜条件>
ターゲット:金−ニッケル合金
ターゲット供給電力:0.5kW
ガス :アルゴンガス
成膜圧力:0.20〜0.25Pa
バイアス電圧 :Grand〜−100V
<成膜条件>
ターゲット :ハフニウム
ターゲット供給電力:3kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
<成膜条件>
ターゲット :ジルコニウム
ターゲット供給電力:6kW
ガス :アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガス
成膜圧力 :0.08〜0.15Pa
バイアス電圧 :Grand〜−200V
【0321】
上記のようにして得られた積層被膜は、26層(13組)であった。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1300Hvを示した。
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
【0322】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【実施例24】
【0323】
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材の表面に、実施例10と同様の条件で形成した黒色を呈するDLC被膜上に、実施例22と同様の成膜条件および膜厚で、バリア層、密着層、積層被膜、窒化ハフニウム被膜、金−ニッケル合金からなる被膜を被膜し、黒色と金色のツートンカラーを有する腕時計ケースおよび腕時計バンドを作製した。
【0324】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1400Hvを示した。
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
【0325】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【実施例25】
【0326】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例21と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1350Hvを示した。
【0327】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【実施例26】
【0328】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例22と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1480Hvを示した。
【0329】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【実施例27】
【0330】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例23と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1450Hvを示した。
【0331】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【実施例28】
【0332】
基材をチタン(Ti)にした以外は、実施例24と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1510Hvを示した。
【0333】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【0334】
[比較例21]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材の表面に、実施例21と同様の条件で形成した硬質白色被膜上に、比較例15と同様の成膜条件および膜厚で、チタン被膜、金色被膜層、窒化チタン被膜、窒化ハフニウム被膜、金−ニッケル合金からなる被膜を、この順で成膜して得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。また、エッチング前の得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1350Hvを示した。
【0335】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行ない、その結果を表4に示した。
【0336】
[比較例22]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材の表面に、実施例21と同様の条件で形成した硬質白色被膜上に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)および厚み0.2μmのチタン被膜(密着層)を、この順で形成し、さらに、得られたチタン被膜の表面に、比較例15と同様の成膜条件で、厚み0.2μmの金色被膜層、厚み0.8μmの窒化チタン被膜、厚み0.2μmの窒化ハフニウム被膜および厚み0.3μmの金−ニッケル合金からなる被膜を、この順で形成した。
【0337】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドを用いて、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。また、エッチング前の得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1280Hvを示した。
【0338】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行ない、その結果を表4に示した。
【0339】
[比較例23]
ステンレス鋼(SUS316L)を機械加工して得られた鏡面仕上げの腕時計用基材および腕時計バンド用基材の表面に、実施例21と同様の条件で形成した硬質白色被膜上に、厚み0.2μmの金−ニッケル合金からなる金被膜(バリア層)および厚み0.2μmのハフニウム被膜(密着層)を、この順で形成し、さらに、得られたハフニウム被膜の表面に、厚み0.2μmの金色被膜層、厚み0.8μmの窒化ハフニウム被膜および厚み0.3μmの金−ニッケル合金からなる被膜を、この順で形成した。
【0340】
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドを用いて、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。また、エッチング前の得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1160Hvを示した。
【0341】
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【0342】
[比較例24]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例21と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1290Hvを示した。
【0343】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【0344】
[比較例25]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例22と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1290Hvを示した。
【0345】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【0346】
[比較例26]
基材をチタン(Ti)にした以外は、比較例23と同様の成膜条件で形成した。
得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドの表面に形成されている金色被膜の表面硬度を、上記方法に従って測定した結果、フィッシャー硬度計で1230Hvを示した。
【0347】
次いで、得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドに対し、実施例21と同様にして、エッチングを施した。なお、このときのエッチングタイムの結果を表4に示した。
また、このエッチング工程により得られた腕時計ケースおよび腕時計バンドについて、外観、磨耗試験(耐磨耗性)および耐食性試験を上記方法に従って行こない、その結果を表4に示した。
【0348】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0349】
本発明は、たとえば、腕時計ケース、腕時計バンド、腕時計のリューズ、腕時計の裏蓋等の時計外装部品、ベルトのバックル、指輪、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、ペンダント、ブローチ、カフスボタン、ネクタイ止め、バッジ、メダル、眼鏡のフレーム、カメラのボディ、ドアノブなどに適用することができる。
【符号の説明】
【0350】
1・・・試験片
2・・・試験片押さえ板
3・・・試験片押さえネジ
4・・・試験片取り付け台
5・・・摩耗輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾品用基材と、
この装飾品用基材に被覆された、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層と、
この密着層に被覆された積層被膜と、
この積層被膜に被覆された、0.1〜0.3μmの厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜と、
この金色硬質被膜に被覆された、0.02〜0.04μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜と、
から構成される装飾品であって、
該積層被膜は、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されており、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする装飾品。
【請求項2】
前記積層被膜が、0.005〜0.2μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層された被膜であり、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾品。
【請求項3】
前記装飾品用基材に、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が被覆され、
この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に、0.1〜0.3μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層が被覆され、
このバリア層に、前記密着層、前記積層被膜、前記金色硬質被膜および前記金色最外被膜が、この順で被覆されており、かつ、
前記密着層と、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)ジルコニウム(Zr)と、窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする請求項1に記載の装飾品。
【請求項4】
装飾品用基材と、
この装飾品用基材に被覆された、金色最外被膜の金色色調と異なる被膜と、
この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に被覆された積層被膜と、
この積層被膜に被覆された、0.1〜0.3μmの厚みを有する窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜と、
この金色硬質被膜に被覆された、0.02〜0.04μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜と、
から構成される装飾品であって、
該積層被膜は、0.005〜0.2μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆された、0.01〜0.02μmの厚みを有する第2の窒化物層とが、これらの層を1組として、10〜20組積層されており、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする装飾品。
【請求項5】
前記装飾品用基材に、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が被覆され、
この金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の一部に、0.1〜0.3μmの厚みを有し、かつ、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層が被覆され、
このバリア層に、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層が被覆され、
この密着層に、前記積層被膜、前記金色硬質被膜および前記金色最外被膜が、この順で被膜されている
ことを特徴とする請求項4に記載の装飾品。
【請求項6】
前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる被膜、あるいは、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる被膜であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の装飾品。
【請求項7】
前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜であり、かつ、
前記装飾品用基材と該DLC被膜との間に、チタン被膜と、該チタン被膜表面に形成されたシリコン被膜とを有していることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の装飾品。
【請求項8】
前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜が、プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる被膜であり、かつ、
前記装飾品用基材と該プラチナ(Pt)またはプラチナ合金からなる被膜との間に、チタン被膜と、該チタン被膜表面に形成された炭化チタン被膜または炭窒化チタン被膜とを有していることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の装飾品。
【請求項9】
前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)である
ことを特徴とする請求項2または4に記載の装飾品。
【請求項10】
前記密着層が、チタン(Ti)であり、
前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)である
ことを特徴とする請求項1、2または5に記載の装飾品。
【請求項11】
前記密着層と、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)である
ことを特徴とする請求項3に記載の装飾品。
【請求項12】
前記金合金が、金−ニッケル合金、金−パラジウム合金、金−プラチナ合金、金−銅合金および金−ロジウム合金の群から選ばれる少なくとも1つを主成分として含む
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の装飾品。
【請求項13】
[1]金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、
[2]装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層を形成する工程と、
[3]密着層の表面に、乾式メッキ法により、第1の窒化物層と、第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程と、
[4]最上層の第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜を、0.1〜0.3μmの厚みを有するように形成する工程と、
[5]金色硬質被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜を、0.02〜0.04μmの厚みを有するように形成する工程とを含み、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする装飾品の製造方法。
【請求項14】
前記工程[3]が、
前記密着層の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層の表面に第1の窒化物層と、この第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程を含み、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする請求項13に記載の装飾品の製造方法。
【請求項15】
前記工程[1]が、
金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、
該装飾品用基材に、乾式メッキ法により、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜を形成する工程と、
該金色最外被膜の金色色調と異なる被膜に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈するバリア層を形成する工程を含み、
前記工程[2]は、
バリア層の表面に、乾式メッキ法により、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)またはジルコニウム(Zr)からなる密着層を形成する工程を含み、
さらに、
[6]前記金色最外被膜の一部にマスキング処理を施した後、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜、前記密着層およびバリア層を、エッチングする工程とを含み、かつ、
前記密着層と、前記第1の窒化物層と、前記第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)ジルコニウム(Zr)と、窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)ハフニウム(Hf)と、窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする請求項13に記載の装飾品の製造方法。
【請求項16】
金属またはセラミックスからなる素材を用いて、各種加工手段で装飾品用基材を製造する工程と、
該装飾品用基材に、乾式メッキ法により、前記金色最外被膜の金色色調と異なる被膜を形成する工程と、
該金色最外被膜の金色色調と異なる被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色被膜層と、この金色被膜層の表面に第1の窒化物層と、第1の窒化物層の表面に第2の窒化物層とを、これらの層を1組として、10〜20組積層した、積層被膜を形成する工程と、
最上層の第2の窒化物層の表面に、窒化ハフニウム(HfN)からなる金色硬質被膜を、0.1〜0.3μmの厚みを有するように形成する工程と、
金色硬質被膜の表面に、乾式メッキ法により、金(Au)または金合金から成る、金色色調を呈する金色最外被膜を、0.02〜0.04μmの厚みを有するように形成する工程を含み、さらに、
前記金色最外被膜の一部にマスキング処理を施した後、湿式エッチング法により、前記金色最外被膜、前記金色硬質被膜、前記積層被膜を、エッチングする工程を含み、かつ、
該第1の窒化物層と、該第2の窒化物層とが、それぞれ
(1)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化チタン(TiN)、
(2)窒化ジルコニウム(ZrN)と、窒化チタン(TiN)、または
(3)窒化ハフニウム(HfN)と、窒化ジルコニウム(ZrN)である
ことを特徴とする装飾品の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84233(P2010−84233A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207034(P2009−207034)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】