説明

補助駆動装置、セミトレーラ、補助駆動装置の装着方法、及び、セミトレーラの運行方法

【課題】セミトレーラのトレーラに電動モータとバッテリを備えた駆動補助装置を着脱可能に取り付けて、必要時に電動モータでトレーラの車軸を駆動させることにより、牽引する側のトラクラヘッドに搭載するエンジンと多段ミッションを小型化できる補助駆動装置、セミトレーラ、補助駆動装置の装着方法、及び、セミトレーラの運行方法を提供する。
【解決手段】補助駆動装置を、電動モータとバッテリユニットを備え、セミトレーラのトレーラ側に着脱可能に取り付けられ、装着時には前記電動モータの駆動により前記トレーラの車軸を駆動するように構成し、この補助駆動装置をトレーラに必要に応じて着脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セミトレーラのトレーラに着脱可能に取り付ける補助駆動装置、この補助駆動装置を着脱可能に構成したセミトレーラ、このセミトレーラへの補助駆動装置の装着方法、及びこの補助駆動装置を着脱可能に構成したセミトレーラの運行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流の国際化と大量輸送の観点から海上輸送が煩雑に行われ、この海上輸送に伴い海上コンテナの輸送が行われている。このコンテナを利用した輸送は、船舶を利用した海上輸送だけではなく、鉄道等の公共大量輸送網を利用した陸上輸送をすることができるので、地球温暖化の原因となるCO2の排出量の抑制に寄与できる。
【0003】
このコンテナ輸送には、図12に例示するようなセミトレーラ1Xが多く使用されている。このセミトレーラ1Xは、トラクタヘッド10Xとトレーラ20Xを連結して、貨物の荷重をトラクタヘッド10Xとトレーラ20Xとで分担して受け持つ構成となっている。
【0004】
このコンテナ輸送では、他の大量輸送手段と連携した輸送を行うと共に、セミトレーラによる輸送を、限定的に、例えば、船舶からの積み下ろしからコンテナヤードまでの移動、コンテナヤードから鉄道基地までの輸送、コンテナヤードから荷主までの輸送等に限定して行うことにより、CO2の排出量の抑制への寄与をより大きくできる。また、これらの移動においては、セミトレーラの走行パターンがある程度限定されるために、セミトレーラの運行スケジュールは容易に調整できるものとなる。
【0005】
また、このセミトレーラによる輸送では、トレーラの構造上、積載可能な荷姿が規格化された海上コンテナ、またはそれに準じるものに限定されるため、搬送先に積荷を搬送した後は、搬送先に同様のコンテナがある場合、若しくは、コンテナを積載したトレーラがある場合はそれらを牽引してコンテナヤード若しくは港湾施設に戻るが、それ以外は、コンテナを積載していない状態でトレーラを牽引して戻るか、トレーラを切り離してトラクタヘッドのみで走行する状態が発生する。
【0006】
しかしながら、セミトレーラの運行では、輸送時のコンテナ積載状態と、輸送後の帰りの空コンテナを搭載している状態、若しくは、コンテナを搭載していない状態とでは、トレーラを牽引するトラクタヘッドの負荷が大きく異なっている。
【0007】
それにもかかわらず、図12に例示するような従来のセミトレーラ1Xでは、重量物であるコンテナを積載したトレーラ20Xを牽引するために、トラクタヘッド10Xに高出力で排気量が多い大型のエンジン(内燃機関)11Xとこのエンジン11Xの出力に見合った大型の多段ミッション(多段変速機)12Xを搭載している。
【0008】
その結果、トラクタヘッド10Xのみで走行する場合、又は、コンテナを搭載していない空荷状態若しくは空のコンテナを搭載している状態のトレーラ20Xを牽引して走行運転する場合においては、エンジン出力が貨物積載時の走行運転状態とは明らかに異なり、定格出力が大きなエンジン11Xで、低出力の運転をすることになる。この低出力状態では、貨物積載状態での発進時に必要なギヤ段が不要となり、大型の多段ミッション12Xは不要となる。
【0009】
言い換えれば、貨物搭載のコンテナ積載時のセミトレーラ1Xの走行運転では、大排気量で高出力のエンジン11Xと大型の多段ミッション12Xが必要であるが、トラクタヘッド10Xのみの走行運転、または、空荷状態や空のコンテナ積載状態のセミトレーラ1Xの走行運転は、小排気量エンジンと小型の多段ミッションで可能となる。
【0010】
一方、近時、地球温暖化の原因を解消するために、港湾施設等でもCO2の排出を抑制することが望まれており、かかる意味においても従来の大型のエンジンを搭載したセミトレーラの使用はなるべく控えて、小出力のエンジンと小型の多段ミッションを組み合わせた駆動装置を備えたセミトレーラを使用することが望ましい。
【0011】
これに関連して、トレーラを牽引する電気自動車における補助駆動装置であるが、この電気自動車に連結されるトレーラにガソリンエンジンの発電システムを着脱可能に搭載し、発電システムで発生した電気を電気自動車内のモータ及び/又はバッテリに供給することにより、電気自動車をハイブリッド化すると共に、発電システムを取り外して通常のトレーラとしても使用できるようにする電気自動車のハイブリッド化用外付け発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
また、電気自動車で、大きな航続距離が必要なときに、エンジンと燃料タンクと発電機を搭載し、電気自動車のバッテリを充電するための電気自動車用トレーラを、この電気自動車に接続する電気自動車用トレーラが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
一方、セミトレーラのトレーラには、トレーラを牽引している時に、トラクタヘッド側が排気ブレーキを使用した場合にトレーラの突き上げを防止するときに使用したり、また、トレーラのジャックナイフ現象を防止したりする時に使用されるトレーラブレーキが備わっている。このトレーラブレーキは、トレーラ側のトレーラのみに効くブレーキシステムである。このブレーキ機構は、基本的にはトラクタヘッド側のフットブレーキと同じで、エア駆動によるブレーキである。多くの場合、ステアリングコラムの専用レバーを操作して、このブレーキを作用させている。このブレーキエネルギーは従来技術においては熱に変換されるだけで終わっている。
【0014】
また、図12に例示するように、セミトレーラ1Xのトレーラ20側のフレーム21の下部には、車軸22と車輪24と、トレーラブレーキシステム等の構造しかなく、スペースも多く、空間が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平11−341605号公報
【特許文献2】特開平11−341606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、従来技術におけるセミトレーラの問題点と、海上コンテナ等のセミトレーラを使用した運行方法の問題点を解決するために、セミトレーラのトレーラに電動モータとバッテリを備えた駆動補助装置を着脱可能に取り付けて、必要時に電動モータでトレーラの車軸を駆動させることにより、牽引する側のトラクラヘッドに搭載するエンジンと多段ミッションを小型化できる補助駆動装置、セミトレーラ、補助駆動装置の装着方法、及び、セミトレーラの運行方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するための本発明の補助駆動装置は、セミトレーラの補助駆動装置であって、電動モータとバッテリを備え、セミトレーラのトレーラに着脱可能に取り付けられ、装着時に前記電動モータの駆動により前記トレーラの車軸を駆動できるように構成する。
【0018】
この補助駆動装置を、セミトレーラのトレーラに着脱可能に取り付けることにより、トレーラに貨物を積載して大きな駆動力が必要な時には、この補助駆動装置の電動モータでトレーラの車軸を駆動して、トラクタヘッドのエンジンの出力を補助できるので、トラクタヘッドのエンジンの小排気量化と小型化と、多段ミッションの小型化を図ることができ、トラクタヘッドを軽量化できる。なお、この電動モータとバッテリを一体的に設けると、トレーラへの装着及び取り外しが容易になると共に、補助駆動装置の管理が容易となる。
【0019】
更に、上記の補助駆動装置において、前記電動モータを前記トレーラのブレーキ時のエネルギーを回生する回生装置として使用するように構成することにより、トレーラブレーキのエネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリに充電できるので、この電気エネルギーをトレーラの発進時や加速時の電動モータによる補助駆動用のエネルギーとして使用できる。従って、トレーラブレーキ力の確保と省エネルギー化を図ることができる。
【0020】
そして、上記の目的を達成するための本発明のセミトレーラは、上記の補助駆動装置を着脱可能に設けるための取付け部を前記トレーラに設けて構成する。この構成によれば、トレーラの積載状態に応じて、補助駆動装置を着脱することで、トラクタヘッドのエンジンの小排気量化と小型化と、多段ミッションの小型化とを図ることができ、トラクタヘッドを軽量化できる。
【0021】
そして、軽量化したトラクタヘッドで、運転を行うことにより、また、空荷状態や空コンテナ搭載の状態では、小型化したエンジンでセミトレーラを運行して、燃費を節約できるので、また、貨物積載状態では、補助駆動として電気エネルギーを使用できるので、CO2の排出量を減少できる。
【0022】
上記のセミトレーラにおいて、前記補助駆動装置の第1係合部を、前記トレーラの前方から前記トレーラのフレームの下部に設けた前記取付け部の第2係合部に係合させて、前記補助駆動装置を前記フレームの下部に装着するように構成する。この構成によれば、セミトレーラ用の補助駆動装置を第1係合部と第2係合部の係合で吊り下げる構成としたので、フレームの下部に設ける取付け部の構成を著しく単純化できると共に、着脱が非常に簡単にできるようになる。
【0023】
そして、上記の目的を達成するための本発明の補助駆動装置の装着方法は、上記の補助駆動装置を、移動用台車に乗せて、前記トレーラの前方から前記トレーラの下部に設けた取付け部に移動し、前記補助駆動装置の第1係合部を、前記トレーラの前方から前記トレーラの前記フレームの下部に設けた前記取付け部の第2係合部に係合させて、前記補助駆動装置を前記フレームの下部に装着することを特徴とする補助駆動装置の装着方法である。この方法によれば、補助駆動装置を前方から挿入して装着するので、フレームの下部に設ける取付け部の構成を単純化できると共に、着脱が非常に簡単に出来るようになる。
【0024】
そして、上記の目的を達成するための本発明のセミトレーラの運行方法は、積荷を積載したコンテナを搭載したトレーラを牽引する場合には、上記の補助駆動装置を前記トレーラに取り付けて、トラックヘッドのエンジンの出力に加えて前記電動モータで前記トレーラの車軸を回転させてセミトレーラを運行し、コンテナを搭載していない前記トレーラ又は空荷のコンテナを搭載した前記トレーラを牽引する場合には、前記補助駆動装置を前記トレーラから取り外して、前記トラックヘッドの前記エンジンの出力でセミトレーラを運行することを特徴とする方法である。
【0025】
この方法によれば、トレーラの積載状態に応じて、補助駆動装置で補助駆動できるので、トレーラを牽引するための力が小さくて済む場合には、軽量化したトラクタヘッドの小型化したエンジンで、セミトラクタの運行を行うことにより燃費を節約できるので、また、トレーラを牽引するために大きな力が必要な場合には、補助駆動として電気エネルギーを使用できるので、CO2の排出量を減少できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る補助駆動装置、セミトレーラによれば、補助駆動装置をセミトレーラのトレーラに着脱可能に取り付けることにより、トレーラに貨物を積載した状態では、補助駆動装置をトレーラ側に装着して、この補助駆動装置の電動モータでトレーラの車軸を駆動して、トラクタヘッドのエンジンの駆動力を補助しながら走行できるので、トラクタヘッドのエンジンの小排気量化と小型化と、多段ミッションの小型化を図ることができ、トラクタヘッドを軽量化できる。そして、この場合に補助駆動として電気エネルギーを使用するので、CO2の排出量を減少できる。
【0027】
また、空荷状態や空コンテナを搭載している状態では、補助駆動装置をトレーラから取り外して軽量となったトレーラを、トラクタヘッドの小型化したエンジンの出力だけで牽引してセミトレーラを走行させて燃費を節約できるので、CO2の排出量を減少できる。
【0028】
また、本発明に係る補助駆動装置の装着方法によれば、フレームの下部に設ける取付け部の構成を著しく単純化できると共に、着脱が非常に簡単にできるようになる。なお、トレーラに電動モータとバッテリを固定配置した場合には、複雑なバッテリ交換設備が必要になるが、この装着方法を採用すると、補助駆動装置を容易に取り外すことができる上に、取り外した時にバッテリを充電できるようになるので、バッテリの充電が容易にできるようになる。
【0029】
更に、本発明に係るセミトレーラの運行方法によれば、トレーラの積載状態に応じて、また、必要に応じて、補助駆動装置で補助駆動できるので、トレーラを牽引するための力が小さくて済む場合には、軽量化したトラクタヘッドの小型化したエンジンで、セミトレーラを運行することにより、燃費を節約でき、また、トレーラを牽引するために大きな力が必要な場合には、電気エネルギーを使用して補助駆動してセミトレーラを運行できるので、CO2の排出量を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るセミトレーラの補助駆動システムの構成を示す側面図である。
【図2】図1のセミトレーラのトレーラ側の構成を示す側面図である。
【図3】図2のA−A矢視図である。
【図4】図2のエアシステムを示す側面図である。
【図5】補助駆動装置をトレーラに装着する第1段階の様子を示した側面図である。
【図6】補助駆動装置をトレーラに装着する第2段階の様子を示した側面図である。
【図7】補助駆動装置をトレーラに装着する第3段階の様子を示した側面図である。
【図8】補助駆動装置を移動台車に載置した様子を示した正面図である。
【図9】補助駆動装置をトレーラに装着する第1段階の様子を示した正面図である。
【図10】補助駆動装置をトレーラに装着する第2段階の様子を示した正面図である。
【図11】補助駆動装置をトレーラに装着する第3段階の様子を示した正面図である。
【図12】従来技術のセミトレーラの構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施の形態の補助駆動装置、セミトレーラ、補助駆動装置の装着方法、及び、セミトレーラの運行方法について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
最初に、補助駆動装置とセミトレーラの構成について説明する。図1に示すように、本発明の補助駆動装置30を着脱可能に取り付けるセミトレーラ1は、海上コンテナ等を運搬するトレーラであり、そのトレーラの中でも、荷重をその車体であるトレーラ20自体と、このトレーラ20を牽引するトラクタヘッド10の両方で分担して支持するトレーラであり、トレーラ20側の連結器(キングピン)20aに、トラクタヘッド(セミトラクタ)側の連結器(カプラ)10aを連結して、トラクタヘッド10によりトレーラ20が牽引された状態で運行される。なお、トレーラ荷重の殆どがトレーラ自体に加わるトレーラはフルトレーラと呼ばれ、大型トラック等に連結する大型フルトレーラと、乗用車等に連結するキャンピングトレーラなどの軽量フルトレーラに大別されている。
【0033】
図1〜図3に示すように、トラクタヘッド10は、エンジン(内燃機関)11と多段ミッション(多段変速機)12と動力伝達軸13と駆動輪14と従動輪15等を有し、運転席16を備えて構成される。このエンジン11は、図12に例示するような従来技術のトラクタヘッド10Xのエンジン11Xよりも小排気量でより小型のものとなり、この多段ミッション12も従来技術のトラクタヘッド10Xの多段ミッション12Xよりも小型のものとなる。
【0034】
また、図2及び図3に示すように、トレーラ20は、フレーム21の下部に車輪部を備え、この車輪部には車軸22に駆動輪23又は従動輪24が備わっている。この駆動輪23には、制動用の通常のトレーラブレーキ(図示しない)を有すると共に、デフレンシャルギヤ25とそこに至るプロペラシャフト26が設置されている。また、プロペラシャフト26の途中には駆動輪23の上下動に追従するためのユニバーサルジョイント26aが設置されている。また、プロペラシャフト26の駆動輪23とは反対側の連結部26bにはスプライン構造(例えば雌部)が設けられている。
【0035】
また、この補助駆動装置30は、セミトレーラ1のトラクタヘッド10のエンジン11の出力を必要に応じて補助するための補助駆動装置30であり、電動モータ31とバッテリユニット(バッテリ)32を有して構成される。この電動モータ31とバッテリユニット32は、トレーラ20のフレーム21からの迅速な脱着作業ができるように、一体構造とすること、即ち、一体的に設けることが好ましい。また、電動モータ21の出力やバッテリユニット32の容量は、セミトレーラ1の裁荷状態、即ち、積載する貨物(コンテナ)の重量や、走行パターンに対応するように、幾つかの種類を用意して、運行時のセミトレーラ1の裁荷状態や走行パターンに対応させて選択できるようにすることが好ましい。
【0036】
また、補助駆動装置30をトレーラ20に装着した時に、電動モータ31の駆動によりトレーラ20の車軸21を駆動できるように、電動モータ31の駆動軸31aの先端は、スプライン構造(例えば雄部)に形成され、トレーラ20のプロペラシャフト24のスプライン構造に形成された連結部24bに挿入して係合できるように構成される。
【0037】
更に、補助駆動装置30がトレーラ20に装着されて、駆動軸31aと連結部24bが連結されているときに、車軸22へ駆動力を伝達する伝達軸であるプロペラシャフト26の回転から電気エネルギーを回収するように制御系を構成し、トレーラ20のブレーキ時のエネルギーを回生する回生装置として使用できるようにする。
【0038】
この補助駆動装置30をトレーラ20に着脱可能に取り付けられるように、補助駆動装置30の両サイドの上側に固定部材(固定ブラケット:第2係合部)33を備えて構成される。この固定部材33は、トレーラ20のフレーム21の下部に設けられた案内部材(案内ブラケット:第1係合部)25aに係合して、補助駆動装置30はトレーラ20のフレーム21の下に吊り下げられる。
【0039】
また、トレーラ20側は、補助駆動装置30を着脱可能に設けるための取付け部材27a、27b、27cを配置した取付け部27を設けて構成される。この取付け部27は案内部材27aと固定ストッパ27bと可動ストッパ27cとで形成される。 図3に示すように、この案内部材27aは、補助駆動装置30に設けられた固定部材33を前方から挿入して嵌め込んで、補助駆動装置30を吊り下げることができるように、L字鋼材等で形成され、フレーム21の下部に平行に数個(図では片側3個)配列される。また、固定ストッパ27bは、この補助駆動装置30の後端が当接して、補助駆動装置30の前後方向の位置決めをする機能を持つものであり、L字鋼材等をフレーム21の下部に取り付けて形成され、可動ストッパ27cと共に補助駆動装置30からの脱落を防止する。
【0040】
また、可動ストッパ27cは、固定ストッパ27bと反対側、即ち、トレーラ20の前方に配置される。この可動ストッパ27cは、ストッパ移動機構28のエアシリンダ28aの先端側に設けられ、かつ、スプリング機構を備えた軸部28bの回りに回転するレバー28cの先端に固定されている。
【0041】
可動ストッパ27cは、補助駆動装置30の装着時には、エアシリンダ28aの伸張により下降して補助駆動装置30の前端側を押さえ、補助駆動装置30を固定支持する。また、可動ストッパ27cは、補助駆動装置30の取り外し時には、エアシリンダ28aの縮小により上昇して、補助駆動装置30の前端側の押さえである可動ストッパ27cが外れる。これにより、補助駆動装置30がスライドして前方に移動できるようになる。
【0042】
この補助駆動装置30のトレーラ20への取り付けでは、フレーム21に設置している案内部材27aに、補助駆動装置30に設置した固定部材33をスライドして後方に移動させて嵌め込んで、フレーム21の下に吊り下がる状態で搭載される。この状態で、補助駆動装置30がフレーム21の案内部材27aから脱落しないように、後方の固定ストッパ27bと前方の可動ストッパ27cで固定支持する。
【0043】
更に、トレーラ20をトラクタヘッド10から取り外して、トレーラ20単体で駐車場に置いておけるように、前部支持機構(ランディングギヤ)29を設けている。この前部支持機構29は、地面と接地する脚部分の上下動を行う手段として脚昇降用のエアシリンダ29aを有し、また、脚部について地面と接地する部分に車輪29cを設けている。
【0044】
トレーラ20がトラクタヘッド10から分離される時には、エアシリンダ29aの伸張により、支柱29bとその先端に設けられた車輪29cが下降して地面に当たって、トレーラ20の前部分を車輪29cで支持する。また、トレーラ20がトラクタヘッド10に連結される時には、エアシリンダ29aの縮小により、支注29bと車輪29cは上昇してフレーム21内に収容される。
【0045】
更に、トレーラ20は、図4に示すように、エアシステム40を備えている。このエアシステム40は、エアタンク41、エア制御ユニット42、エア配管43を有して構成される。また、エアタンク41の入口側にエア流出防止のために逆止弁41aが設置されている。そして、分岐部44において、A1方向よりトラクタヘッド10から供給されるエア(圧縮空気)を、A2方向にトレーラ20用のエアブレーキ用のエアを供給すると共に、A3方向にエアタンク41へのエアを供給して、このエアをエアタンク41に貯蔵するように構成される。このエアタンク41に貯蔵されたエアをエア配管43によりエア制御ユニット42を経由して、ストッパ移動機構28のエアシリンダ28aと前部支持機構29のエアシリンダ29aに供給するように構成される。
【0046】
このエアシステム40のエア制御ユニット42の制御により、必要に応じて、エアタンク41のエアを、ストッパ移動機構28のエアシリンダ28aと前部支持機構29のエアシリンダ29aに送って、これらのエアシリンダ28a、29aの伸張と縮小を行う。
【0047】
次に、補助駆動装置30のセミトレーラ20への装着方法について説明する。この装着方法では、第1段階では、図5に示すように、充電を完了したバッテリユニット32を備えた補助駆動装置30を移動用台車34に載せる。第2段階では、図6に示すように、トレーラ20の前方からフレーム21の下部に設けた取付け部27に移動する。第3段階では、図7に示すように、補助駆動装置30の固定部材33(第1係合部)を、取付け部27の固定ストッパ27bに当たるまで移動して、案内部材(第2係合部)27aに嵌め込ませる(係合させる)。
【0048】
この嵌め込みに際しては、電動モータ31の駆動軸31aを、トレーラ20のプロペラシャフト26の連結部26bに挿入して、スプライン構造による連結で係合する。この駆動軸31aと連結部26bの横方向の位置決めは、固定部材33が案内部材27aによって位置決めされることにより、容易に位置決めできるので、容易にスプライン構造の雄部と雌部を係合することができる。
【0049】
これにより、補助駆動装置30の固定部材33を案内部材27aにより支持して、補助駆動装置30をフレーム21の下部に吊り下げ状態で装着する。それと共に、エアシリンダ28aを伸張して可動ストッパ27cをフレーム21の下側よりも突出させて下降させる。これにより、補助駆動装置30の前端側を押さえて、前方向の移動を止めて固定する。
【0050】
そして、補助駆動装置30が固定されたら、前部支持機構29の脚昇降用のエアシリンダ29aを更に伸張して車輪29cを下降させてトレーラ20の前部を少し上昇させ、移動用台車34を補助駆動装置30から浮かす。この浮かした状態で、移動用台車34を移動させて補助駆動装置30から外し、トレーラ20の前方に引き抜いて、フレーム21の下より除去して、補助駆動装置30のトレーラ20への装着を終了する。
【0051】
この装着の終了後、トラクタヘッド10とトレーラ20を連結し、必要な制御系の配線やエア配管やその他の配管等の接続を行う。その後、前部支持機構29の脚昇降用のエアシリンダ29aを縮小して車輪29cを収納して、セミトレーラ1の走行を可能にする。
【0052】
次に、補助駆動装置30のトレーラ20からの取り外し方法について説明する。この取り外し方法は、上記の装着方法と逆に行われる。取り外し作業の前段階として、前部支持機構29の脚昇降用のエアシリンダ29aを伸張して車輪29cを下降して、トレーラ20の前部を支持する。その後、必要な制御系の配線やエア配管やその他の配管等の接続を解除して、トラクタヘッド10とトレーラ20の連結を解除する。この連結の解除の後で、トラクタヘッド10又はトレーラ20のいずれかを移動し、取り外しの作業スペースを確保する。
【0053】
そして、取り外しの第1段階では、図7に示すような固定支持の状態で、移動用台車34を前方から補助駆動装置30の下部に入れてその下に配置する。配置ができたら、前部支持機構29の脚昇降用のエアシリンダ29aを少し縮小して車輪29cを下降して、トレーラ20の前部を少し下降する。これにより、補助駆動装置30の固定部材33を取付け部25の案内部材27cで支持している状態を外して、補助駆動装置30がフレーム21の下部に吊り下げられた状態を解除して、補助駆動装置30を移動用台車34に載せる。
【0054】
その後、ストッパ移動機構28のエアシリンダ28aを縮小して、軸部28bのスプリング機構により、若しくはエアシリンダ28aによる引き込みにより、可動ストッパ27cを上昇させて補助駆動装置30の前端側の押さえを外し、前方向に移動できるようにする。
【0055】
第2段階では、図6に示すように、前方向に移動可能にした後、補助駆動装置30を載置した状態で移動用台車34を、トレーラ20のフレーム21の下部に設けた取付け部27の前方に移動させる。この移動時においては、フレーム21の下部に吊り下げられた状態が既に解除され、補助駆動装置30は移動用台車34に載置された状態となっているので、補助駆動装置30は移動用台車34で容易に移動することができる。
【0056】
第3段階では、図5に示すように、移動用台車34に載ったまま補助駆動装置30がトレーラ20の前方に移動させられ、トレーラ20から補助駆動装置30が取り外される。この補助駆動装置30は必要に応じて充電エリアに移動されてバッテリユニット32は充電される。一方、トレーラ20は、状況に応じて、そのままトラクタヘッド10に連結されて、空荷状態、又は、空コンテナを搭載した状態で運行されたり、充電済みの別の補助駆動装置30を装着した後、トラクタヘッド10に連結されて、貨物を搭載したコンテナを搭載した状態で運行されたりする。
【0057】
次に、上記のセミトレーラの運行方法について説明する。このセミトレーラの運行方法では、貨物を積載したコンテナを搭載したトレーラ20を牽引する場合には、異なる電動モータ21の出力やバッテリユニット32の容量を持つ、幾つかの種類の補助駆動装置30の中から、運行時のセミトレーラ1の裁荷状態や走行パターンに適合する補助駆動装置30を選択して、その補助駆動装置30をトレーラ20に取り付けて、トラックヘッド10のエンジン11の出力に加えて電動モータ21でトレーラ20の車軸22と駆動輪23を回転させてセミトレーラ1を運行する。
【0058】
この運行では、積車状態での発進時は、トラクタヘッド10の運転席16でのアクセル制御により、トラクタ10側のエンジン11の駆動力に、トレーラ20側に搭載された補助駆動装置30の電動モータ31の補助駆動力を加えて必要な出力を得てセミトレーラ1を発進させる。また、中間走行における加速時などのトラクタヘッド10のエンジン11の駆動力が不足する領域においては、補助駆動装置30の電動モータ31をバッテリユニット32からのエネルギーで駆動して、この補助駆動力で走行アシストを行う。
【0059】
そして、減速時のトレーラブレーキを作動させる際には、従来技術で使用していたエアブレーキを使用せずに、補助駆動装置30の電動モータ31を発電機として使用し、トレーラブレーキをステアリング部の専用ブレーキで作用状態としたときに、電気エネルギーに変換して回収し、回収エネルギーとしてバッテリユニット32に充電する。なお、回生ブレーキによるブレーキ力が不足する場合には、エアブレーキも併用する。
【0060】
また、空荷状態又は空のコンテナを搭載した状態のトレーラ20を牽引してセミトレーラ1を運行する場合には、補助駆動装置30をトレーラ20から取り外して、トラックヘッド10のエンジン11の出力のみでセミトレーラ1を運行する。なお、この運行において減速時等のトレーラブレーキを使用する際には、従来技術で使用していた既存のエアブレーキを使用する。
【0061】
そして、本発明に係る補助駆動装置30、セミトレーラ1によれば、この補助駆動装置30を、セミトレーラ1のトレーラ20に着脱可能に取り付けることにより、トレーラ20に貨物を積載した状態では、補助駆動装置30をトレーラ20側に装着して、この補助駆動装置30の電動モータ31によりバッテリユニット32からのエネルギーでトレーラ20の車軸22を駆動して、トラクタヘッド10のエンジン11の駆動力を補助しながら走行できるので、トラクタヘッド10のエンジン11の小排気量化と小型化と、多段ミッション12の小型化を図ることができ、トラクタヘッド10を軽量化できる。そして、この場合に補助駆動として電気エネルギーを使用するので、CO2の排出量を減少できる。
【0062】
また、空コンテナ搭載時やコンテナを搭載していない時には、補助駆動装置30をトレーラ20側から取り外して、小型化したエンジン11の出力だけで軽量なトレーラ20を牽引してセミトレーラ1を走行させて燃費を節約できるので、CO2の排出量を減少できる。
【0063】
また、本発明に係る補助駆動装置の装着方法によれば、フレーム21の下部に設ける取付け部27の構成を単純化できると共に、着脱が非常に簡単にできるようになる。なお、トレーラ20に電動モータ31とバッテリユニット32を固定配置した場合には、複雑なバッテリ交換設備が必要になるが、この装着方法を採用すると、補助駆動装置30を容易に取り外すことができる上に、取り外した時にバッテリユニット(バッテリ)32を充電できるようになるので、バッテリユニット32への充電が容易にできるようになる。
【0064】
更に、本発明に係るセミトレーラの運行方法によれば、トレーラ20の積載状態に応じて、補助駆動装置30で補助駆動できるので、トレーラ20を牽引するための力が小さくて済む場合には、軽量化したトラクタヘッド10の小型化したエンジン11で、セミトレーラ1を運行することにより、燃費を節約でき、また、トレーラ20を牽引するために大きな力が必要な場合には、補助駆動として電気エネルギーを使用してセミトレーラ1を運行できるので、CO2の排出量を減少できる。
【0065】
更に、トレーラ20側に着脱可能に取り付けたセミトレーラ1用の補助駆動装置30の電動モータ31で、トレーラブレーキによるエネルギー回生を行うことができるようになり、セミトレーラ1の走行時にブレーキ熱として捨てていたブレーキエネルギーを、補助駆動装置30のバッテリユニット32に充電することができるようになる。その結果、バッテリユニット32に充電した電気エネルギーを、セミトレーラ1の発進時及び加速時の電動モータ31の駆動時に使用することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る補助駆動装置、セミトレーラによれば、トラクタヘッドのエンジンの小排気量化と小型化と、多段ミッションの小型化を図ることができ、トラクタヘッドを軽量化でき、また、補助駆動として電気エネルギーを使用するので、CO2の排出量を減少できる。また、補助駆動装置の装着方法によれば、フレームの下部に設ける取付け部の構成を単純化できると共に、着脱が非常に簡単にでき、バッテリへの充電が容易にできるようになる。更に、セミトレーラの運行方法によれば、燃費の節約と、CO2の排出量を減少できる。
【0067】
従って、海上輸送や鉄道等の公共大量輸送網を利用した陸上輸送に使用されているコンテナの輸送用に数多く使用されているセミトレーラに利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1、1X セミトレーラ
10、10X トラクタヘッド
11、11X エンジン(内燃機関)
12、12X 多段ミッション(多段変速機)
14 駆動輪
20 トレーラ
21 フレーム
22 車軸
23 駆動輪
26 プロペラシャフト
26b 連結部
27 取付け部
27a 案内部材(第1係合部)
27b 固定ストッパ
27c 可動ストッパ
28 ストッパ移動機構
28a エアシリンダ
29 前部支持機構
29a エアシリンダ
30 補助駆動装置
31 電動モータ
31a 電動軸
32 バッテリユニット(バッテリ)
33 固定部材(第2係合部)
34 移動用台車
40 エアシステム
41 エアタンク
42 エア制御ユニット
43 エア配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セミトレーラの補助駆動装置であって、電動モータとバッテリを備え、セミトレーラのトレーラに着脱可能に取り付けられ、装着時に前記電動モータの駆動により前記トレーラの車軸を駆動できるように構成したことを特徴とする補助駆動装置。
【請求項2】
前記電動モータを前記トレーラのブレーキ時のエネルギーを回生する回生装置として使用することを特徴とする請求項1に記載の補助駆動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の補助駆動装置を着脱可能に設けるための取付け部を前記トレーラに設けたことを特徴とするセミトレーラ。
【請求項4】
前記補助駆動装置の第1係合部を、前記トレーラの前方から前記トレーラのフレームの下部に設けた前記取付け部の第2係合部に係合させて、前記補助駆動装置を前記フレームの下部に装着することを特徴とする請求項3記載のセミトレーラ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の補助駆動装置を、移動用台車に乗せて、前記トレーラの前方から前記トレーラの下部に設けた取付け部に移動し、前記補助駆動装置の第1係合部を、前記トレーラの前方から前記トレーラの前記フレームの下部に設けた前記取付け部の第2係合部に係合させて、前記補助駆動装置を前記フレームの下部に装着することを特徴とする補助駆動装置のセミトレーラへの装着方法。
【請求項6】
積荷を積載したコンテナを搭載したトレーラを牽引する場合には、請求項1又は2に記載の補助駆動装置を前記トレーラに取り付けて、トラックヘッドのエンジンの出力に加えて前記電動モータで前記トレーラの車軸を回転させてセミトレーラを運行し、コンテナを搭載していない前記トレーラ又は空荷のコンテナを搭載した前記トレーラを牽引する場合には、前記補助駆動装置を前記トレーラから取り外して、前記トラックヘッドの前記エンジンの出力でセミトレーラを運行することを特徴とするセミトレーラの運行方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−126250(P2012−126250A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279208(P2010−279208)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】