説明

補強用プリプレグシート及び構造体の補強方法

【課題】 本発明は、優れた機械的強度を有し且つ軽量性に優れた補強用プリプレグシートを提供する。
【解決手段】 本発明の補強用プリプレグシートは、アラミド繊維又は玄武岩繊維を含む繊維束から形成された網状体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させてなることを特徴とするので、軽量性に優れていると共に、硬化させることによって優れた機械的強度を発揮するので、風力発電用ブレードなどのように軽量性と強度とが要求される用途に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補強用プリプレグシート及びこれを用いた構造体の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化などが進行しており世界規模で地球環境の保全が進められている。その一環として、電力の供給を従来の火力発電から風力発電の自然の力を利用した発電に移行しようとする試みが欧州を中心に進められている。
【0003】
風力発電用ブレードとしては特許文献1をはじめとして多数、提案されている。そして、風力発電の発電効率を向上させるためにブレードの大型化が求められており、大型化に伴う強度の向上のためにガラス繊維が用いられているものの、ガラス繊維は重量が重く、ブレードが重くなり、その結果、ブレードの大型化には限界があった。
【0004】
【特許文献1】特開平9−100774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた機械的強度を有し且つ軽量性に優れた補強用プリプレグシート及びこれを用いた構造体の補強方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアラミド繊維又は玄武岩繊維を含む繊維束から形成された網状体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させてなることを特徴とする。アラミド繊維は、強度の点において炭素繊維と同等の性能を示し、ガラス繊維と比較して半分程度の比重であって軽量性に優れている。アラミド繊維には、パラ系とメタ系とがあるが、強度が優れているので、パラ系が好ましい。
【0007】
又、玄武岩繊維は、耐熱性、不燃性、耐候性の点において炭素繊維と同等の性能を示し、組成が玄武岩からできているので埋め立て処理にあたっても環境に対する影響が少なくて好ましい。
【0008】
アラミド繊維又は玄武岩繊維を含む繊維束は、モノフィラメントが束ねられたものであって、所謂、マルチフィラメントといわれるが、モノフィラメントが撚られたものであっても無撚り状であってもよいが、熱硬化性樹脂の含浸性に優れ、網状体に均一に且つ充分に含浸することができるので、モノフィラメントが無撚り状であることが好ましい。
【0009】
繊維束から形成された網状体としては、例えば、図1又は図2に示したように、繊維束1a、1a・・・を多数本、所定間隔毎、好ましくは5〜20mm毎に並設してなる繊維束列1Aと、この繊維束列1Aの繊維束1aに斜行又は直交する方向に、多数の繊維束1b、1b・・・を所定間隔毎に並設してなる繊維束列1Bとからなり、これらの繊維束列1A、1Bの繊維束1a、1bの交差部を熱融着や接着剤などの公知の手段でもって一体化することにより多数の通孔1cが設けられてなるものや、このようにして得られた網状体の一面に、図3又は図4に示すように、多数本の繊維束1d、1d・・・を所定間隔毎、好ましくは5〜20mm毎に並設してなる繊維束列1Dを、網状体を形成している上記2列の繊維束列1A、1Bに斜行する方向に重ね合わせ、繊維束列1A(1B)の繊維束1a(1b)と、繊維束列1Dの繊維束1dとの交差部を接着剤或いは熱融着により一体化させて多数の通孔1cを設けてなるように形成してなる網状体、図5に示したように、多数本の繊維束1d、1d・・・を所定間隔毎、好ましくは5〜20mm毎に並設してなる繊維束列1D及び多数本の繊維束1e、1e・・・を所定間隔毎、好ましくは5〜20mm毎に並設してなる繊維束列1Eを、網状体を形成している上記2列の繊維束列1A、1Bに斜行する方向に重ね合わせ、繊維束列1A(1B)の繊維束1a(1b)と、繊維束列1D、1Eの繊維束1d、1eとを接着剤或いは熱融着により一体化させて多数の通孔1cを設けてなるように形成してなる網状体を挙げることができ、様々な方向の強度に優れた図5に示した網状体が好ましい。
【0010】
そして、上記網状体には熱硬化性樹脂が含浸されている。このような熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられ、エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
又、熱硬化性樹脂には紫外線吸収剤及び酸化防止剤が添加されていてもよい。このように紫外線吸収剤及び酸化防止剤を含有しておくことによって屋外で使用した場合にあっても優れた強度を長期間に亘って維持することができる。
【0012】
上記紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられ、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0013】
上記酸化防止剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の酸化防止剤が用いられて良く、通常は、上記熱安定剤としての効果を兼ね備えるものが多く、例えば、カルボン酸の金属塩、フェノール系抗酸化剤、有機亜燐酸エステルなどのキレーターなどが挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
熱硬化性樹脂中における紫外線吸収剤及び酸化防止剤の含有量は、少ないと、紫外線吸収剤を添加した効果が発現しないことがあり、多いと、熱硬化性樹脂の機械的強度を低下させるばかりではなく、添加剤の飽和により効果が発現しにくい状態となることがあるので、熱硬化性樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましい。
【0015】
そして、網状体への熱硬化性樹脂の含浸方法としては、公知の方法が用いられ、真空樹脂含浸法、加圧樹脂含浸法などの他、より簡単な方法としてハンドレイアップ法などが挙げられる。
【0016】
このようにして構成された補強用プリプレグシートは構造体の補強に好適に用いることができ、強度及び軽量性が要求される風力発電用ブレードの補強材として好適に用いることができる。
【0017】
次に、本発明の補強用プリプレグシートを用いて風力発電用ブレードを補強する要領を図6、7を参照しながら説明する。風力発電用ブレード2は、所定長さを有する主桁21とこれを被覆するように配設されてなるポリウレタン系樹脂発泡体などの発泡体22とから構成されている。
【0018】
この風力発電用ブレード2を補強するには、補強用プリプレグシートAを風力発電用ブレード2の長さ方向の端部から螺旋状に一部を互いに重ね合わせた状態に隙間なく巻いていくことによって、風力発電用ブレード2を補強用プリプレグシートAによって全面的に被覆する。この際、補強用プリプレグシートAは柔軟性に優れていることから、補強用プリプレグシートAを風力発電用ブレード2の表面に沿って隙間なく確実に巻き付けることができる。
【0019】
しかる後、補強用プリプレグシートAを加熱することによって熱硬化性樹脂を硬化させて補強用プリプレグシートを強固なものとすると共に、互いに重なり合った補強用プリプレグシートA部分同士を一体化させて、風力発電用ブレード2を補強用プリプレグシートAによって全面的に被覆し補強することができる。
【0020】
なお、補強用プリプレグシートAによって風力発電用ブレードを補強した場合を説明したが、これに限定されるものではなく、構造体としては、車両用躯体、ボード用躯体などが挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の補強用プリプレグシートは、アラミド繊維又は玄武岩繊維を含む繊維束から形成された網状体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させてなることを特徴とするので、軽量性に優れていると共に、硬化させることによって優れた機械的強度を発揮するので、風力発電用ブレードなどのように軽量性と強度とが要求される用途に好適に用いることができる。
【0022】
そして、上記補強用プリプレグシートにおいて、繊維束のモノフィラメントが無撚り状に束ねて形成されている場合には、網状体に熱硬化性樹脂を均一に且つ確実に含浸させることができる。
【0023】
更に、上記補強用プリプレグシートにおいて、熱硬化性樹脂に紫外線吸収剤が含有されている場合には、屋外での使用にあたっても長期間に亘って優れた強度を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の補強用プリプレグシートを構成している網状体を示した平面図である。
【図2】本発明の補強用プリプレグシートを構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図3】本発明の補強用プリプレグシートを構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図4】本発明の補強用プリプレグシートを構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図5】本発明の補強用プリプレグシートを構成している網状体の他の一例を示した平面図である。
【図6】本発明の補強用プリプレグシートを用いて風力発電用ブレードを補強する要領を示した斜視図である。
【図7】本発明の補強用プリプレグシートを用いて風力発電用ブレードを補強した状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 網状体
2 風力発電用ブレード
21 主桁
22 発泡体
A 補強用プリプレグシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維又は玄武岩繊維を含む繊維束から形成された網状体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させてなることを特徴とする補強用プリプレグシート。
【請求項2】
繊維束は、モノフィラメントが無撚り状に束ねて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の補強用プリプレグシート。
【請求項3】
熱硬化性樹脂に紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の補強用プリプレグシート。
【請求項4】
アラミド繊維束からなる網状体に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸させてなる補強用プリプレグシートを構造体の表面に巻き付けた上で上記熱硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする構造体の補強方法。
【請求項5】
構造体が風力発電用ブレードであることを特徴とする請求項4に記載の構造体の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−235306(P2009−235306A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85659(P2008−85659)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】