説明

補正係数演算装置及び自位置認識装置

【課題】逐次取り込まれるGPS情報を十分に生かして、精度が高く信頼性の高い距離補正係数を迅速に得ることができる補正係数演算装置を得る。
【解決手段】距離補正係数の演算に使用する2つのGPS情報であるGPS情報対に関し、移動距離に基づく評価を実行し、移動距離が大きい情報ほど演算に使用する頻度を高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS衛星から得られるGPS情報と、移動量に応じたパルス信号を出力する距離センサから得られるパルス数情報とに基づいて、前記パルス数情報から求められる移動距離を補正するための距離補正係数を演算する補正係数演算装置に関するとともに、得られる距離補正係数を使用して、自位置の移動軌跡を演算し、自位置の認識を行う自位置認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の補正係数演算装置として、出願人は、特許文献1に開示の技術を提案している。この文献に記載の技術では、最新のGPS情報と、一つ前のGPS情報とを使用して距離補正係数を求めるに際して、GPS情報の受信と同時にパルス数情報を取得する取得手段を備える。結果、精度低下を起こすことがなく距離補正係数を求めることができる。また、この技術では、サンプリング間隔が短く、サンプリング数を多くできるため、条件の悪いGPS情報を事実上使用することなく、良好な精度の距離補正係数を求めることができる。
【0003】
さて、この種の補正係数演算装置における移動距離演算処理、距離補正係数判定処理、距離補正係数演算処理の流れの概略を、特許文献1の記載に基づいて説明すると、以下のようになる。
1 移動距離演算処理
同明細書に添付の図5に示すように、先ず、ステップS1でGPS受信装置からGPS情報として速度、時刻、方位およびステータス信号を取得し、ステップS2で、GPS受信と同時に距離センサからパルス信号(パルス数信号である)を取得し、ステップS3で距離補正係数を算出するか否かの判定を行い、ステップS4で距離補正係数の算出を行い、ステップS5で、距離センサ26により得られた距離を距離補正係数に基づいて補正することにより移動距離Lを算出する。
【0004】
この移動距離Lは、L=k×Δpls×(1パルス当りの距離)として算出される。ここで、kは距離補正係数、Δplsは今回受信の距離センサからのパルス数(pls)と前回受信の距離センサからのパルス数(pls1)とのパルス差であり、1パルス当りの距離は予め車両毎にデフォルト値として設定されている。1パルス当たりの距離とは、移動体が標準的な状態にある状況における、単位パルス発生に対応した移動距離である。
【0005】
なお、移動距離演算処理はGPS信号を受信する度毎に行われる。すなわち、GPS情報の受信間隔は所定時間間隔であり、一般的には1秒間隔が使われるため、この移動距離演算処理も1秒間隔にて実行される。
【0006】
距離補正係数判定処理
この処理は、先に示した同明細書に添付の図5のステップS3における距離補正係数判定の処理であり、距離補正係数の演算に使用可能なGPS情報の割り出しを実行する処理である。この判定は、本発明において、第一条件判定と呼ぶ判定と同性質のものであり、その判定条件は、2点間の速度が所定速度以上であるか否か、2点間の角度変化が所定角度以内であるか否か、2点間の速度差が所定速度差以内にあるか否か、2点間の時間差が所定時間差以内にあるか否か、受信した2点が同次元測位情報に属するか否かである。
【0007】
距離補正係数演算処理
同明細書に添付の図7は、同図5のステップS4における距離補正係数演算の処理の流れを説明するための図であり、先ずステップS1で、今回のGPS情報を受信した時刻(t)と前回のGPS情報を受信した時刻(t1)から2つのデータ間のタイム差Δtを計算する。次に、ステップS2で、今回のGPS情報を受信した時の距離センサのパルス数(pls)と前回のGPS情報を受信した時のパルス数(pls1)から2つのデータ間のパルス差Δplsを計算する。
【0008】
次に、ステップS3で、上記2点間のGPS移動距離LGPSを下式により算出する。
Lgps=(spd+spd1)/2×Δt
spd :今回得られたGPSによる速度
spd1:前回得られたGPSによる速度
すなわち、GPS移動距離Lgpsは、2点におけるGPS受信より得られる速度の平均値にタイム差を乗じて算出される。
【0009】
次に、ステップS4で、算出されたパルス差(Δpls)とGPS移動距離から単位距離D(例えば100m)進むのに必要なパルス数pを計算し、その値をヒストグラムにインクリメントする。そして、ステップS5で、ヒストグラムに一定以上データがセットされたらデータを平均し、下式より距離補正係数kを算出する。
【0010】
k=(D/p)/(1パルス当りの距離)
【0011】
従って、この文献に開示の手法では、距離補正係数を演算するのに、今回受信した現在のGPS情報と前回のGPS情報とを使用することを基本としている。
【0012】
このようなGPS情報を使用して移動距離補正係数を求める学習の開始は、従来、所定の情報数が集まる、例えば、150mを走行した後に、行われるようにされている。
即ち、移動開始時にはデフォルト値として得られている移動距離補正係数を使用し、その後、ある程度、GPS情報が蓄積された状態で、有意な移動距離補正係数が得られるものとし、その補正係数を使用する構成が採用されている。
【特許文献1】特許2891403
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような手法を採用する場合は、現在と前回とのGPS情報のみが距離補正係数の演算に使用されるため、一定時間間隔で逐次受信されている多数のGPS情報を充分に使いきっているとは言えない。
このような問題に対して、連続して取り込まれるGPS情報を有効に利用するという観点からは、例えば、現時点と一定回数前の過去のGPS情報とを使用して、上記したと同様な処理を行って距離補正係数を求めることも考えられる。
【0014】
また、2点を使用する場合、その2点間における移動において、大きな標高差がある地域を移動しているにも拘らず水平地での走行と同様の処理を行うと、比較的長い勾配を移動しているにも拘らず、移動距離が短いとして捕らえられてしまい、誤った距離補正係数を得るという問題がある。
【0015】
さらに、特許文献1に開示の手法では、逐次取り込まれてくるGPS情報が異なった誤差半径を有する情報であるにも拘らず、実質的に等価な情報として取り扱うため、距離補正係数の精度が十分、上がらないという問題があった。
【0016】
そこで、移動距離補正係数の精度(信頼度)を向上させるべく、補正係数演算に使用するGPS情報に要求する演算採用条件(本願にいう第一条件)を厳しいものとすることはできるのであるが、このような条件設定を行うと、移動距離補正係数演算の基礎とすべき情報数の蓄積が、おのずから遅れる。
例えば、GPS情報に関して、その誤差半径が小さい情報のみを使用しようとすると、情報数の蓄積は遅れる。このような状況は、GPS情報に関して、その衛星数判定、速度判定、直進判定、定速判定、勾配判定等、多種の判定を満たすGPS情報を移動距離補正係数の演算に使用しようとする場合は、なお更である。
【0017】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、逐次取り込まれるGPS情報を十分に生かして、精度が高く信頼性の高い距離補正係数を得ることができるとともに、比較的信頼性の高い距離補正係数を迅速に得ることができる補正係数演算装置を得ることをにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る
GPS衛星からの信号に基づいて受信時刻情報及び速度情報を含むGPS情報を周期的に取得するGPS情報取得手段と、
移動量に応じたパルス信号を出力する距離センサからのパルス数情報を、少なくとも前記GPS情報の取得と同時に取得するパルス数情報取得手段と、
前記パルス数情報に基づいて求められる移動距離を補正するための距離補正係数を、前記GPS情報及び前記パルス数情報に基づいて演算する補正係数演算装置の特徴構成は、
任意の2点のGPS情報に関して所定の第一条件を満たすか否かを判定する第一条件判定手段と、
前記2点のGPS情報が前記第一条件を満たす場合に、前記2点間のGPS情報に基づいて前記2点間の移動距離を演算する移動距離演算手段と、
前記移動距離演算手段により演算された前記2点間の移動距離と前記2点間の前記パルス数情報に示されるパルス数の差分との関係量を演算する関係量演算手段と、
前記関係量演算手段により演算された前記関係量の情報を記憶する記憶手段と、
前記2点間の移動距離に応じて、前記関係量を前記記憶手段に記憶する際の情報数を調節する情報数調節手段と、
前記記憶手段に格納された関係量の情報数が一定数以上となった後に、前記記憶手段に格納された複数の前記関係量に基づいて、代表関係量を演算する代表関係量演算手段と、
前記代表関係量を用いて前記距離センサの出力を補正するための距離補正係数を演算する距離補正係数演算手段と、
を備える点にある。
【0019】
この特徴構成を備えることにより、本願では、GPS情報に関して、任意の2点のGPS情報である、GPS情報の対に関して、距離補正係数の演算を行うこととなる。
ここで、距離補正係数の演算において、一のGPS情報対に対して、第一条件判定手段で、距離補正係数の演算において好ましいGPS情報の対を判定抽出し、移動距離演算手段にあっては、2点間の距離をGPS情報に基づいて求め、関係量演算手段により、パルス数と移動距離との関係を求める。
これら一連の処理は、処理の対象としているGPS情報対に対して、個々に行われるのであるが、本願にあっては、記憶手段における関係量の記憶において、その情報数が情報数調節手段により調節される。即ち、従来、異なったGPS情報対を等価なものとして扱ってきたのに対して、GPS情報対の取り込み状況に応じて異なった情報数(情報的価値)を有するものとするのである。例えば、後述するように、移動距離が長いもの程、情報数(情報的価値)が高いものとする。このようにすることで、情報数の記憶・蓄積は加速される。
【0020】
そして、記憶手段に格納された関係量の情報数が一定数以上となった後に、記憶手段に記憶された複数の関係量情報からその統計値である代表関係量を代表量演算手段により得、この代表関係量から距離補正係数を得る。
【0021】
結果、本願に係る発明では、情報数調節手段により、GPS情報の価値を評価しながら、GPS情報を記憶・蓄積することができるため、取り込まれてくるGPS情報の評価を適切に行って、等価な情報として扱う場合に比べて、迅速に距離補正係数を得ることができる。
【0022】
このような補正係数演算装置をハードウェアである演算処理装置に組み込んで実現する補正係数演算プログラムは、以下のように構成される。
即ち、GPS衛星からの信号に基づいて受信時刻情報及び速度情報を含むGPS情報を周期的に取得するGPS情報取得ステップと、
移動量に応じたパルス信号を出力する距離センサからのパルス数情報を、少なくとも前記GPS情報の取得と同時に取得するパルス数情報取得ステップと、を実行し、
前記パルス数情報に基づいて求められる移動距離を補正するための距離補正係数を、前記GPS情報及び前記パルス数情報に基づいて演算する処理をコンピュータに実行させる補正係数演算プログラムであって、
任意の2点のGPS情報に関して所定の第一条件を満たすか否かを判定する第一条件判定ステップと、
前記2点のGPS情報が前記第一条件を満たす場合に、前記2点間のGPS情報に基づいて前記2点間の移動距離を演算する移動距離演算ステップと、
前記移動距離演算ステップにより演算された前記2点間の移動距離と前記2点間の前記パルス数情報に示されるパルス数の差分との関係量を演算する関係量演算ステップと、
前記2点間の移動距離に応じて、前記関係量を記憶手段に記憶する際の情報数を調節する情報数調節ステップと、
情報数調節ステップによる調節後の情報数の前記関係量の情報を前記記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記記憶手段に格納された関係量の情報数が一定数以上となった後に、前記記憶手段に格納された複数の前記関係量に基づいて、代表関係量を演算する代表関係量演算ステップと、
前記代表関係量を用いて前記距離センサの出力を補正するための距離補正係数を演算する距離補正係数演算ステップと、
をコンピュータに実行させる補正係数演算プログラムとしておくこととなる。
【0023】
上記の関係量としては、基準距離当りのパルス数又は単位パルス数当りの距離を採用することができる。本願に係る距離補正係数は、単位パルス当りの距離が、距離センサの設置対象の状態により変化した場合に、この変化に良好に追従すべく求められるべきものであり、基準距離当りのパルス数は、その逆数で単位パルス当りの距離とできるためである。無論、単位パルス数当りの距離をそのまま採用しても構わない。
【0024】
さて、前記第一条件としては、所定の誤差半径内の情報であるか否かを判定するための精度条件、信号を受信した衛星数が所定数以上であるか否かを判定するための衛星数条件、一定速度以上で走行しているか否かを判定するための速度条件、直進移動状態を示しているか否かを判定するための直進条件、定速移動状態を示しているか否かを判定するための定速条件、のいずれか一つ以上とすることができる。
【0025】
精度条件を第一条件に含めることにより、誤差半径の小さい信頼性の高いGPS情報を使用して、距離補正係数を求めることができる。衛星数条件に関しても同様である。
速度条件、直進条件、定速条件に関しては、従来から行われてきたと同様に、距離補正係数を演算するのに、移動がある程度の速度状態で行われ、ほぼ等速で直進している状態のGPS情報を使用するのが最も好ましいためである。
【0026】
さらに、前記情報数調節手段としては、これを、前記2点間の移動距離の増加に従う複数段階の分類を用い、前記関係量を前記記憶手段に記憶する際には、当該関係量の演算元の前記2点間の移動距離に関する段階が増加するに従って、当該関係量についての情報数を増やす構成としておくことが好ましい。
移動距離の増加に従って、2点間で求められる関係量の信頼性は高まる(2点間の距離が長いほど平均的な関係量を代表でき、異常値が排除される)ため、そのような関係量の情報数(情報的価値)を高いものとして処理をおこない、好適な距離移動係数を迅速に得られるためである。
【0027】
このような動作を実現する補正係数演算プログラムは、以下のように構成される。
情報数調節ステップを、前記2点間の移動距離の増加に従う複数段階の分類を用い、前記関係量を前記記憶手段に記憶する際には、当該関係量の演算元の前記2点間の移動距離に関する段階が増加するに従って、当該関係量についての情報数を増やす構成としておけばよい。
【0028】
さらに、選択された前記2点間のいずれかのGPS情報が前記第一条件を満たさなくなった場合には、当該2点のGPS情報についての処理を終了することが好ましい。
この構成を採用しておくと、2点間に存する全てのGPS情報が第一条件を満足しない限り、そのGPS情報対は距離補正係数の演算に使用されないこととなり、最も好ましいGPS情報を係数演算に使用できるためである。
【0029】
この機能を実現する補正係数演算プログラムは、
選択された前記2点間の何れかのGPS情報が前記第一条件を満たさなくなった場合には、前記GPS情報選択ステップにおける当該現在のGPS情報についての処理を終了する構成となる。
【0030】
また、前記2点間のGPS情報の数が所定数以上であるというGPS情報数条件を満たすか否かを判定するGPS情報数判定手段を更に備え、
前記GPS情報数条件を満たさない場合には、前記関係量演算手段による前記関係量の演算対象外とすることが好ましい。
このようにすることで、移動距離補正係数の演算に、ある程度以上のGPS情報が含まれる状態におけるGPS情報のみを使用でき、信頼性が高くなる。
【0031】
この機能を実現する補正係数演算プログラムは、
前記2点間のGPS情報の数が所定数以上であるというGPS情報数条件を満たすか否かを判定するGPS情報数判定ステップを更に備え、
前記GPS情報数条件を満たさない場合には、前記関係量演算ステップ以降のステップにおける処理の対象外とする補正係数演算プログラムとなる。
【0032】
また、前記現在のGPS情報の取得時に所定角度以上の勾配を移動中であるか否かを判定する勾配判定手段を更に備え、
勾配を移動中であると判定された場合には、前記GPS情報選択手段による当該現在のGPS情報についての処理を終了することも好ましい。
本来、勾配を移動している場合、その標高差に起因して、GPS情報側からのみ得られる移動距離と真の移動距離との間に誤差が発生しやすく、移動距離補正係数の演算には好ましくないが、このような信頼性の低いGPS情報を良好に演算から除外することができる。
【0033】
この機能を実現する補正係数演算プログラムは、
前記現在のGPS情報の取得時に所定角度以上の勾配を移動中であるか否かを判定する勾配判定ステップを更に備え、
勾配を移動中であると判定された場合には、前記GPS情報選択ステップにおける当該現在のGPS情報についての処理を終了する補正係数演算プログラムとなる。
【0034】
さて、これまで説明してきた補正係数演算装置を自位置認識装置に備え、
方位センサからの方位情報を取得する方位情報取得手段を備え、
前記パルス数情報、前記方位情報と前記補正係数演算装置により得られる前記距離補正係数に基づいて、自位置の移動軌跡を演算し、自位置の認識を行う自位置演算手段を備える構成とすると、自位置の認識を信頼性の高い迅速なものとできる。
【0035】
この機能を実現できる、これまで説明してきた補正係数演算プログラムを含んで構成される自位置認識プログラムは、
方位センサからの方位情報を取得する方位情報取得ステップを有し、
前記パルス数情報、前記方位情報と前記補正係数演算プログラムにより得られる前記距離補正係数に基づいて、自位置の移動軌跡を演算し、自位置の認識を行う自位置演算ステップをコンピュータに実行させる自位置認識プログラムとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本願に係る補正係数演算装置1を備えた自位置認識装置2の実施の形態について、以下、図面に基づいて説明する。この種の自位置認識装置2は、例えば、自動車等のナビゲーション装置(図示省略)に装備されて、自車位置の認識の用に供される。
図1は、自位置認識装置2の構成の概略を示す機能ブロック図である。
【0037】
同図において、左側に、上記自位置認識に係る機能部50を示すとともに、右側に、距離補正係数演算に係る機能部10を示している。補正係数演算装置1に係る部分は、一点鎖線で囲った部分である。
以下、自位置認識処理に係る機能部50、距離補正係数演算処理に係る機能部10の順に説明する。
【0038】
1 自位置認識処理に係る機能部50
自位置認識処理は、従来技術で採用されている自位置認識の処理手法を踏襲するものであり、先に特許文献1に開示の技術で説明したのと、大きく異なるところはない。
即ち、GPS情報取得部52から得られるGPS情報、パルス数情報取得部55から得られるパルス数情報及びジャイロ情報取得部58から得られるジャイロ情報に基づいて、補正係数演算装置1から得られる距離補正係数kを使用して移動距離を演算し、この移動距離を利用して自位置を演算・認識する。
【0039】
自位置認識装置側で使用される移動距離は、パルス数増分Δpls、単位パルス当りの距離Ld及び距離補正係数kによって求められる移動距離であるため、この移動距離を以降、Lplsと記載する。
【0040】
以下、各部の構成及びその働きに関して説明する。
GPS受信機51は、GPS衛星Sからの信号を受信する。このGPS衛星Sからの信号は、1秒おきに受信され、GPS情報取得部52に送られる。GPS情報取得部52は、受信されたGPS衛星Sからの信号を解析し、自位置情報、進行方位情報、移動速度情報、測位衛星数情報、誤差半径情報、高さ方向速度情報等の情報を導出し、これらの情報を含むGPS情報を生成する。自位置情報は、自位置の緯度座標及び経度座標からなる情報である。
このGPS情報は、GPS衛星Sからの信号を受信する毎、すなわち1秒おきに周期的に生成され、GPS情報記憶部53に記憶される。
【0041】
距離センサ54は、自位置認識装置が搭載されている車両CARの移動距離を検出するためのセンサである。この距離センサ54としては、所謂、車速パルスセンサを採用している。この種の距離センサ54は、車両CARのドライブシャフト等である走行移動に関る回転部材が一定量回転する毎にパルス信号を出力する。距離センサ54からの出力は、パルス数情報取得部55に送られる。パルス数情報取得部55は、距離センサ54から出力されたパルス信号のパルス数を積算してパルス数情報を生成する。このパルス数情報は、少なくともGPS情報取得部52によるGPS情報の取得時毎、ここでは、1秒おきに周期的に生成される。生成されたパルス数情報は、パルス数情報記憶部56に記憶される。
【0042】
図2に、GPS情報の取り込み状況を示した。図2(イ)は、走行移動状態にある車両CARが、GPS衛星Sから逐次、信号を受取る状態を示している。図2(ロ)は、横軸に時間を、時間軸の上側にGPS情報の取り込みタイミングを、下側にパルス信号の発生タイミングを示したものである。この走行状態では、移動速度が大きいため、パルス信号の発生が頻繁に行われていることが判る。
【0043】
ジャイロセンサ57は、自車方位の変化を検出する方位センサである。このジャイロセンサ57としては、振動ジャイロ、光ファイバジャイロ等の各種のジャイロスコープが使用可能であるが、本例では、振動ジャイロを用いている。このジャイロセンサ57は、所定の検出軸回りの回転角速度に比例した電圧等の出力を発生する。ジャイロセンサ57からの出力は、ジャイロ情報取得部58に送られる。ジャイロ情報取得部58は、ジャイロセンサ57からの電圧等のアナログ信号の出力をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換を行い、所定段階のデジタル信号でなるジャイロ出力値を生成する。このジャイロ出力値は、少なくともGPS情報取得部52によるGPS情報の取得時、ここでは、1秒おきに周期的に生成される。生成されたジャイロ出力値は、ジャイロ情報としてジャイロ情報記憶部59に記憶される。
【0044】
自位置記憶部60は、前回までに逐次認識された自位置を記憶した記憶部であり、自位置は、緯度座標及び経度座標の組み合わせとして記憶されている。前回の自位置情報は、自位置演算部61に送られて、現在の自車位置の演算・認識に使用される。
【0045】
自位置演算部61は、この演算部61に送られてくる、移動距離に関連した情報であるパルス数情報、移動軌跡の方位に関連する情報であるジャイロ情報、移動軌跡を演算する基点となる前回の自位置情報を利用して、現在の自位置を演算する。この自位置の演算に際して、補正係数演算装置1から送られてくる距離補正係数kが移動距離Lplsの演算に使用される。
【0046】
自位置は、少なくともGPS情報取得部52によるGPS情報の取得時、ここでは1秒おきに周期的に演算され、演算により求められた自位置は、先に説明した自位置記憶部60に記憶される。
【0047】
移動軌跡の演算は、前回の自位置から、その位置からジャイロ情報として得られる現在の方位方向に、パルス数の増分に相等する移動距離Lplsだけ移動したものとして移動軌跡を求める。ここで、移動距離Lplsの演算は、先にも説明したように、現時点と前回時点との間におけるパルス数の増分Δpls、1パルス当りの距離Ld及び距離補正係数kを乗じたものLpls=Δpls×Ld×kとされる。
【0048】
このようにして自位置演算部61で演算される移動軌跡に基づいて、自位置が求まり、自位置記憶部60に送り返されて、現在の自位置として記憶される。一方、ナビゲーション装置(図外)側へも出力される。
【0049】
2 距離補正係数演算処理に係る機能部10
以下、補正係数演算装置1の構成に関して説明する。
図1に示すように、自位置演算装置2との関係において、この補正係数演算装置1は、GPS受信機51、GPS情報取得部52、GPS情報記憶部53、距離センサ54、パルス数情報所得部55、パルス数情報記憶部56を共有している。従って、補正係数演算装置1内において、GPS情報取得部52から得られるGPS情報とパルス数情報取得部55から得られるパルス数情報を演算処理に使用することができる。
補正係数演算装置1により得られた距離補正係数kは自位置演算部61に送られ、当該部61での自位置の演算の用に供される。
【0050】
距離補正係数kの演算処理は、大まかには主要な3パートから構成されている。
【0051】
第一パートは、GPS情報選択部110が主に働き、第一条件判定、第二条件判定、第三条件判定の判定対象となるGPS情報の対を順次選択し、判定の対象を特定するとともに、判定を満足する場合には、求められる基準パルス数NSplsを使用して、その基準パルス数NSplsのヒストグラムを求め、最終的に、基準パルス数NSplsの平均値から距離補正係数kを演算するマクロフローを制御するパートである。
【0052】
本願にあっては、前記GPS情報の対は、新たに取り込まれた現在のGPS情報と、現在のGPS情報より前の過去のGPS情報との対として成立する。さらに、後述するように、この対とされる過去のGPS情報に関する過去への戻り数には制限が設けられており、この数内での処理を繰返すように構成されている。
【0053】
第二パートは、条件判定部120とされる部位であり、図示するように、第一条件判定部121、第二条件判定部122、第三条件判定部123からなっている。
第一条件判定部121では、上記の第一パートで生成されるGPS情報対に関して、情報が直接的に距離補正係数kの演算に使用できるものか、否かの判定を行う。
【0054】
第二条件判定部122は、GPS情報対を成す2つのGPS情報が受信された2点間に関して、その間における移動距離、その間に含まれるGPS情報数について、2点間で得られた情報が距離補正係数kの演算に使用できるものか、否かの判定を行う。ここで求められる移動距離は、後述するように、GPS情報に基づいて求められる移動距離であるため、Lgpsと記載する。
【0055】
第三条件判定部123は、GPS情報対を成す2つのGPS情報が受信された2点間に関して、その間に含まれるパルス数について、距離補正係数kの演算に使用できるものか、否か等の判定を行う。この処理で求められた所定距離当りのパルス数が本願にいう関係量の一種である基準パルス数NSplsである。
【0056】
第三パートは、第一条件判定、第二条件判定、第三条件判定を満足した利用可能と判断されるGPS情報対を用いて、基準パルス数記憶部124で、基準パルス数NSplsを順次、蓄積・記憶する。この蓄積は、現在のGPS情報に関する処理の実行中に行われる外、過去のGPS情報に関して逐次得られた結果も蓄積されている。即ち、第三パートにあっては、過去のGPS情報に関する処理が生かされる。
そして、平均距離演算部125で、蓄積されてきた多数の基準パルス数NSplsから、その代表値を求め、距離補正係数演算部126で、現時点で好適な距離補正係数kを演算する。
【0057】
以下、各部の構成及びその働きに関して説明する。
GPS情報選択部110は、新たなGPS情報がGPS情報取得部52から送られてくる毎に、新たなGPS情報を現在のGPS情報として、この現在のGPS情報との関係において以降の処理に供すべき、現在のGPS情報と過去のGPS情報との対を選択・特定する。
【0058】
即ち、現在のGPS情報に対して、順次過去に戻りながら特定数前(例えば32個前)までのGPS情報との組み合わせで順次学習を行い、現在のGPS情報に関する学習を終了するように処理制御する。
【0059】
詳細には、現在のGPS情報が取り込まれると、この選択部110は、現在のGPS情報と現在から一つ前のGPS情報との組み合わせ、2つ前のGPS情報との組み合わせというようにGPS情報を順に過去に辿りながら、順次、GPS情報対を以降の処理に送る。繰り返し操作が、予め設定された数に到達すると、現在のGPS情報に関して、その学習を終える。本例では、過去のGPS情報への戻り回数は32としている。
このGPS情報選択部110が、GPS情報選択手段となる。
【0060】
第一条件判定部121は、逐次送られてくるGPS情報対に関して、第一条件判定を実行する。図示するように、第一条件判定部121には6種の判定手段が備えられており、各判定手段における判定を全て満たすGPS情報のみが以降の処理に送られる。
この第一条件判定部121が、第一条件判定手段となる。
【0061】
精度判定手段121aは、対として送られてくるGPS情報の誤差半径に関して、現在のGPS情報と過去のGPS情報とが共に、予め設定された誤差半径を満たす情報か否かを判定する。本例では、誤差半径としては、300mを上限値としている。
【0062】
衛星数判定手段121bは、GPS情報に含まれる衛星数情報に関して、GPS情報として、3つの衛星に基づいた情報(2D情報)と4つの衛星に基づいた情報(3D情報)とが混在している場合に、情報精度の高い3D情報のみの組み合わせを以降の処理に供しようとするものである。この手段121bにおいても、GPS情報対を成す両方のGPS情報が3D情報であること判定要件とする。
【0063】
速度判定手段121cは、GPS情報に含まれるGPS速度情報に関して、GPS速度が予め設定された速度以上か否かを判定する。この速度は下限速度であり、GPS速度が所定速度以上である状況におけるGPS情報のみを以下の処理に供するためである。本例では、10m/sを下限値としている。距離補正係数kは、移動が所定速度以上での移動となっている場合に、信頼性の高い値として得られるためである。
【0064】
直進判定手段121dは、現在のGPS情報を取り込んだ時点と、このGPS情報に対して対をなす過去のGPS情報を取り込んだ時点との2点間に関して、GPS方位情報を比較することにより移動が直進移動であるかどうかを調べ、移動が直進的に行われている2点間で取得したGPS情報を以降の処理に供しようとするものである。本例では、2点間で、GPS方位情報に2°未満の差しかない場合に、直進移動をおこなっているものとして以下の処理に供している。距離補正係数kは、移動が直進移動となっている場合に、信頼性の高い値として得られるためである。
【0065】
定速判定手段121eは、現在のGPS情報を取り込んだ時点と、このGPS情報に対して対をなす過去のGPS情報に関して、そのGPS速度情報の差を問題とし、定速走行をおこなっている状況における2点のGPS情報を以降の処理に供しようとするためのものである。本例では、GPS速度情報に1m/s以下の差しかない場合に、定速移動をおこなっているものとして以下の処理に供している。
【0066】
勾配判定手段121fは、現在のGPS情報を取り込んだ時点と、このGPS情報に対して対をなす過去のGPS情報に関して、そのGPS高さ情報の差を問題とし、勾配走行をおこなっている状況における2点のGPS情報を以降の処理に供しないようとするためのものである。本例では、GPS高さ方向速度に0.2m/sより大きい差がある場合は、勾配走行をおこなっているとして、以下の処理から外すようにしている。
【0067】
第一条件判定部121では、上記6の判定手段121a〜121fによる判定が行われ、これら全ての条件を満足するGPS情報の組み合わせが以降に処理に送られる。一方、何れかの条件を満たさない場合は、現在のGPS情報に関する学習を終了する。
【0068】
第二条件判定部122は、移動距離演算手段122a、移動距離判定手段122b、GPS情報数演算手段122c、GPS情報数判定手段122dからなる。
第二条件判定部122は、GPS情報対を成すそれぞれのGPS情報が取り込まれた2点間に於ける移動距離に関して、その移動距離自体を問題とするとともに、その中に含まれるGPS情報数を問題とする。
この第二条件判定部122で、第二判定条件が満足されない場合は、当該対となっているGPS情報は以降の処理の対象とはせず、対とする過去のGPS情報を、一つ前に辿り更なる対について処理を実行する。
【0069】
移動距離演算手段122aは、上記の第一条件判定部121において第一条件を満たしたGPS情報対に関して、現在のGPS情報を取り込んだ時点と過去のGPS情報を取り込んだ時点との2点間で移動した距離を演算する。このようにしてGPS情報のみに基づいて求まる移動距離を、本願にあっては移動距離Lgpsと以下記載する。
【0070】
この演算手段122aにおける演算処理には、GPS情報に含まれる移動速度情報spdと各GPS情報が取得された時間情報tを使用する。即ち、現在のGPS情報に係る移動速度情報をspd0、対となっているGPS情報に係る移動速度情報をspdi(ここで、iは1〜32までの自然数)として、GPS情報に基づく移動距離Lgpsは以下の式で求める。
【0071】
Lgps=(spd0+spd1)/2×Δt1+(spd1+spd2)/2×Δt2+・・・・・・+(spd(i−1)+spdi)/2×Δti
【0072】
ここで、spd1、spd2は、それぞれspd0より一つ前及び2つ前の移動速度情報であり、spd(i−1)は、移動速度情報spdiを取り込んだ時点より、一つ後(現在時点に近い側)の移動速度情報である。Δt1、Δt2、・・・・・・Δtiは、それぞれ、現在のGPS情報の取り込み時点と、一つ前の取り込み時点との差(経過時間)、一つ前の取り込み時点と2つ前の取り込み時点との差(経過時間)、・・・・・・・・、移動速度情報spdiの取り込み時点より、一つ後(現在時点に近い側)のGPS情報の取り込み時点との差(経過時間)である。
【0073】
従って、この演算手段122aにより演算される移動距離Lgpsは、現在処理の対象としているGPS情報対に関して、対となる2点間で取り込まれた全てのGPS情報を利用して、平均移動速度×経過時間の積算値(Σ(spd(i−1)+spdi)/2×Δti)として、移動距離Lgpsを得ることとなっている。ここで、本例においては、経過時間Δtは、自位置出力を利用する側であるナビゲーション装置に備えられている、ms単位で時刻認識可能なタイマーカウントを利用して、使用する経過時間Δtを精度の高いものとしている。
【0074】
移動距離判定手段122bは、移動距離演算手段122aにより演算されたGPS情報対に係る2点間の距離Lgpsが、所定距離以上か否かを判定する。本例では、所定距離として100mを採用している。そして、所定距離未満である場合は、現状で処理の対象としているGPS情報対を以降の処理の対象外とし、所定距離以上である場合に以降の処理に供する。このように、現状で処理の対象としているGPS情報対が処理の対象外とされた場合は、さらに前の過去のGPS情報との対に対して、新たに処理を進める。
【0075】
GPS情報数演算手段122cは、GPS情報対を成す各GPS情報が取り込まれた2点間にあるGPS情報数を参照して、影響度eを演算する。
この影響度eは、基準移動距離をLS、GPS情報数をN、2点間の移動距離をLgpsとして、e=LS/Lgps/Nとして求められる。本例の場合は、基準移動距離LSとして100mを採用している。
この影響度eは、閾値を0.05とし、LSを100mとする場合、基準移動距離LS=100m内に、20個のGPS情報が取り込まれていることを意味する。さらに詳細に図3を使用して影響度eに関して説明する。
【0076】
同図において、横軸は時間(移動距離でもある)を示しており、左端が現在のGPS情報が取り込まれた時点を示し、右に向かうに従ってGPS情報を過去に辿る状態を示している。上段に示されるブロック列は、個々にGPS情報が取り込まれ移動していることに対応している。中段は、現在から7のGPS情報を戻って、現在と7前の2点間における影響度eを求める状況を示しており、下段は、現在から12前のGPS情報を戻って、現在と12前の2点間における影響度eを求める状況を示している。
【0077】
以下、移動が、GPS情報の取り込みタイミング毎に15m起こっているものとして説明する。
中段に示す7のGPS情報を処理対象とする場合、影響度eは、100/105/7となり0.136と算出され、単一のGPS情報が13.6%の影響度を有していることとなる。従って影響度eの閾値を0.05(5%)とする場合は、このGPS情報対は使用しないこととなる。この閾値の場合、100mの移動距離に、20未満のGPS情報しか包含されていないこととなる。
【0078】
下段に示す12のGPS情報を処理対象とする場合、影響度eは、100/180/12となり、0.046と算出され、単一のGPS情報が4.6%の影響度を有している。従って影響度eの閾値を0.05(5%)とする場合は、このGPS情報対は使用できることとなる。
【0079】
GPS情報数判定手段122dは、GPS情報数演算手段122cにより演算された影響度eに関して、所定値以下か否かを判定する。本例では、この値として先に閾値として紹介した0.05を採用している。そして、所定値未満である場合は、現状で処理の対象としているGPS情報対を以降の処理に送る。一方、所定値より大きい場合は対象外とし、さらに前の過去のGPS情報との対に対して、新たに処理を進める。
【0080】
第三条件判定部123は、上記のようにして求められる2点間に於ける移動距離Lgpsに関して、基準移動距離LS当りのパルス数である基準パルス数NSplsを問題とする。基準パルス数NSplsが、標準的な移動状態におけるもののGPS情報対を以下の処理に供しようとするものである。
この第三条件判定部123で、第三判定条件が満足されない場合は、現在処理の対象としている現在のGPS情報に関する学習処理を終了する。現在の走行状態が、距離補正係数kを得るのに適当な標準的な移動状態から逸脱していると考えられるためである。
【0081】
この判定部123は、基準パルス数演算手段123aと、この演算手段123aで演算された基準パルス数NSplsに関して判定を行う基準パルス数判定手段123bとから構成されている。
【0082】
基準パルス数演算手段123aは、現在処理の対象としているGPS情報対に関して、2点間における基準移動距離LS当りのパルス数を基準パルス数NSplsとして演算する。本例は、基準移動距離LSとして100mを採用している。現在のGPS情報が受信された点のパルス数をpls、対となる過去のGPS情報が受信された点のパルス数をplsIとして、基準パルス数は、(pls−plsI)×LS/Lgpsとして演算される。この基準パルス数演算手段123aは、本願における関係量演算手段の一種である。
【0083】
基準パルス数判定手段123bは、上記のようにして求まる基準パルス数NSplsが、これまで求められている基準パルス数NSplsの平均値に対して、所定の範囲内に入っているか否かを判定する。本例では、所定範囲内として、平均値の0.7〜1.3倍の範囲内にある場合に、範囲内にあると判定する。
そして、判定対象の基準パルス数NSplsが範囲内にあるときは、現在処理の対象としているGPS情報対を以降の処理の対象とする。範囲内にない場合は、処理の対象としている現在のGPS情報に関して、その学習処理を終了する。
【0084】
以上のようにして、第一条件判定、第二条件判定及び第三条件判定の全ての判定を満足するGPS情報対は、代表関係量演算処理の対象とされる。
代表関係量演算を行うため、図1に示すように、基準パルス数記憶部124、代表関係量である平均距離を演算する平均距離演算部125が設けられている。そして、平均距離演算部125で得られた平均距離から距離補正係数演算部126で、距離補正係数kが演算される。
【0085】
基準パルス数記憶部124は、これまで説明してきた3条件全てを満たすGPS情報対に関して、その基準パルス数NSpls情報を記憶する部位である。この記憶格納の状態は、先に説明した従来技術で行われてきたとは異なり、一つのGPS情報対に対して、当該GPS情報対の移動距離Lgpsに対応して、調節された情報数を与え、基準パルス数NSplsの値により分類して、所定の記憶領域に記憶するものである。
【0086】
この要請から、図6に示すように、基準パルス数記憶部124には、情報数決定手段124aと、蓄積記憶手段124bが備えられている。
情報数決定手段124aは、現在処理の対象としているGPS情報対に関して、その移動距離をLgpsとして、〔Lgps/50−1を満す整数(小数点以下切捨て)〕で示す演算式に基づいて、情報数を決定する。この決定方式では、移動距離が50m以下の場合情報数は0となり、移動距離が50より大きく100m以下の場合情報数は1となる。さらに、移動距離Lgpsの増加に従って、情報数は増加する。この情報数決定手段124aが、本願における調節手段である。
蓄積記憶手段124bは、現在処理の対象としているGPS情報対に関して、上記のようにして決定される情報数だけ、その基準パルス数NSplsを所定の記憶領域に蓄積・記憶する。
この基準パルス数記憶部124は、本願における記憶手段である。
【0087】
平均距離演算部125には、図4に示すように、蓄積情報数確認手段125a、蓄積情報数判定手段125b及び平均距離演算手段125cが備えられている。
蓄積情報数確認手段125aは、基準パルス数記憶部124に蓄積された総情報数を確認し、蓄積情報数判定手段125bにより、その総情報数が所定の値に到達したかどうかが判定される。図示するように、この手段には、第一情報数判定手段125b−1、第二情報数判定手段125b−2及び第三情報数判定手段125b−3が備えられており、総情報数に基づいて、異なった処理を実行するように構成されている。
前記平均距離演算手段125cは、全てのGPS情報対に関して、単位パルス当りの移動距離の平均(この値を単位パルス平均距離Lavと呼ぶ)を演算する。この平均距離演算手段125が、代表関係量演算手段である。
【0088】
本願に係る補正係数演算装置1では、上記のようにして、順次、現在のGPS情報を取り込み、所定の処理を実行した後、新たな基準パルス情報NSplsが順次蓄積される。新たに演算された基準パルス情報NSplsを追加し(この蓄積量の総計は4000程度とできる)、古い情報を捨てることで、単位パルス平均距離は、常に、現状を代表できる値に維持される。
【0089】
距離補正係数演算部126は、図5に示すように、距離補正係数演算手段126a、距離補正係数出力手段126bを備えて構成されている。
距離補正係数演算手段126aは、平均距離演算部125で求められる単位パルス平均距離Lavと、予めデフォルト値として設定されている1パルス当りの距離Ldの比(Lav/Ld)を演算し、この比が本願にいう距離補正係数kとなる。
【0090】
このようにして得られた距離補正係数kが、距離補正係数出力手段126bで出力可能に構成されている。
【0091】
以上が、本願に係る補正係数演算装置1の構成の説明であるが、以下、図7〜図11に示すフローチャートを使用して、補正係数演算処理について説明する。
図7は、補正係数演算処理のメインフローであり、新たなGPS情報(処理フロー内にあっては、このGPS情報を「現在のGPS情報」と呼ぶ)の取り込みを開始条件として、この現在のGPS情報に基づく学習処理を行う。このメインフローに従った処理は、主に、GPS情報選択部110により実行される。
【0092】
学習処理の開始は、新たなGPS情報(現在のGPS情報)の取り込みで開始される(ステップ1:yes)。新たなGPS情報の取り込みがない状態では、新たなGPS情報の取り込み待ち状態となる(ステップ1:no)。
【0093】
現在のGPS情報の取り込みが起こると、そのGPS情報に関する学習処理を開始する。学習処理は、現在のGPS情報に対して、その前、所定数までの過去のGPS情報に戻って、現在のGPS情報と過去のGPS情報との対を作成し、作成されるGPS情報対に対する処理を順次、繰返す処理である。そこで、カウンタIを1にセットする(ステップ2)とともに、所定の条件下において、カウンタIを順次インクリメント(ステップ9)する。
【0094】
上記カウンタIが、所定数(本例では32)に到達しているか否かを判定する(ステップ3)。カウンタIが32に到達するまでは、新たに取り込まれた現在のGPS情報と、現在からカウンタI番過去のGPS情報の取り込みを実行し、以下の処理の対象とするGPS情報対(現在のGPS情報とI番前のGPS情報の対)を生成する(ステップ4)。
【0095】
上記のようにして、逐次生成される各GPS情報対に対して、第一〜第三条件判定処理(ステップ5、6、7)を実行し、これら条件を全て満足するGPS情報対を使用可能な情報と判定し、これまで得られている情報及び現在のGPS情報を使用して、距離補正係数kの演算・出力を実行する(ステップ8)。
【0096】
ここで、図7に示すように、第一条件判定部121で実行される第一条件判定(ステップ3)において、この条件に適合しないと判断されたGPS情報対が現れた場合は、カウンタループ(ステップ3〜ステップ9を巡るループ)を脱し、現在のGPS情報に関する学習を終える。
第二条件判定部122で実行される第二条件判定においては、この条件に適合しないと判断されたGPS情報対が現れた場合は、カウンタループ内に留まるが、そのGPS情報対が距離補正係数の演算処理の対象からは外され、カウンタIのインクリメント処理I=I+1のみが実行される(ステップ9)。
第三条件判定部123で実行される第三条件判定に関しは、第一条件判定と同様である。
【0097】
従って、このメインフローにあっては、新たなGPS情報の取り込みが起こると、当該GPS情報である現在のGPS情報から順次過去のGPS情報に戻る操作を繰り替えし、第一条件判定及び第三条件判定が満足される限りにおいて、順次、距離補正係数の演算導出を繰返すこととなる。よって、GPS情報対間内に存在する全てのGPS情報は、これら条件判定に関して、個々に、両条件を満足するものとなる。
【0098】
図8は、第一条件判定処理を示すフローチャートである。
以下に示す表1に、第一条件判定処理における判定条件種、その判定を実行する判定条件手段及び、実際の判定条件を示した。
【0099】
【表1】

【0100】
同フローに示すように、第一条件判定にあっては、判定は3段階で実行されるように構成されており、GPS情報対に関して、まず、その精度判定、衛星数判定、速度判定及び直進判定を行い、判定を満たす場合は以降の処理におくる(ステップ11:yes)。次に、定速判定を行い、判定を満たす場合は以降の処理におくる(ステップ12:yes)、さらに勾配判定を行い、判定を満たす場合は以降の処理におくる(ステップ13:yes)。一方、いずれかの条件が満足されない場合は、処理の対象としている現在のGPS情報に関する処理を終える(ステップ11、ステップ12、ステップ13:no)。
このようにして、第一条件判定で、距離補正係数の演算に適切に使用できないGPS情報が処理の対象から除かれる。
【0101】
図9は、第二条件判定処理の内容を示すフローチャートである。
以下に示す表2に、第二条件判定処理における判定条件種、その判定を実行する判定条件手段及び、実際の判定条件を示した。
【0102】
【表2】

【0103】
同フローに示すように、第二条件判定にあっては、判定は2段階で実行される。
先ず、処理の対象としているGPS情報対に関して、移動距離演算手段122aにより、これらGPS情報を受信した2点間の移動距離Lgpsを求める(ステップ21)。このようにして求められた移動距離Lgpsが、移動距離判定手段122bにより、所定の移動距離以上か否かを判定する(ステップ22)。本例の場合は、表2に示すように100m以上を判定条件とする。そして、総度数が充分確保されている状況では、100m以上の場合(ステップ22:yes)は、以降の処理の対象とすることとし、100m未満の場合(ステップ22:no)は、このGPS情報対は以降の処理に使用することなく、カウンタIを1増加させる(ステップ9)。結果、処理は、現在処理対象より一つ前の過去のGPS情報と、現在のGPS情報との対に移ることとなる。
【0104】
次に、処理の対象としているGPS情報対に関して、GPS数演算手段122cにより、これらGPS情報を受信した2点間にある影響度eを求める(ステップ23)。GPS数判定手段122dにより、このようにして求められた影響度eが、所定の影響度以下か否かを判定する。本例の場合は、表2に示すように0.05以下を判定条件とする。0.05以下の場合(ステップ24:yes)は、以降の処理の対象とすることとし、0.05より大きい場合(ステップ24:no)は、このGPS情報対は以降の処理に使用することなく、距離の場合と同様に、カウンタIを1増加させる。結果、処理は、現在処理対象より一つ前の過去のGPS情報と、現在のGPS情報との対に移る。
【0105】
図10は、第三条件判定処理の内容を示すフローチャートである。
以下に示す表3に、第三条件判定処理における判定条件種、その判定を実行する判定条件手段及び、実際の判定条件を示した。
【0106】
【表3】

【0107】
この条件判定では、基準パルス数演算手段123aにより、先の第二条件判定で求められている2点間の移動距離Lgpsを使用して、処理の対象としているGPS情報対に関して、これらGPS情報を受信した2点間の基準パルス数NSplsを求める(ステップ31)。この基準パルス数NSplsは、2点間で測定されたパルス数を基準距離LSに換算したものであり、移動が標準的な移動か異常な状態での移動かの評価指標となる。
【0108】
基準パルス数判定手段123bにより、このようにして求められた基準パルス数NSplsが、これまで求められている基準パルス数NSplsに対して、所定の範囲内か否かを判定する。本例の場合は、これまで求められている基準パルス数NSplsの平均値の0.7〜1.3の範囲内か否かを判定条件とする。範囲内の場合(ステップ32:yes)は、以降の処理の対象とすることとし、範囲外の場合(ステップ32:no)は、このGPS情報対に関する学習は終了する。
【0109】
図11に示す距離補正係数kの演算処理は、以上のようにして条件判定を経ることで、選別されてきたGPS情報対を距離補正係数演算に有用な情報として取り扱い、情報の蓄積を行うとともに、所定量の情報の蓄積が完了したことを条件として、距離補正係数kを演算し、演算結果を出力する処理である。
【0110】
後者の距離補正係数kの演算処理は、蓄積される情報数に従って、2系統に分けられており、装置の使用経歴が浅く、蓄積される情報数が所定の情報数より少ない場合は、図11において左側の処理系統を辿る、蓄積された情報数が充分な場合は、右側の処理系統を辿るものとされる。以下、順に説明する。
【0111】
第一〜第三の判定条件を満足したGPS情報対に関しては、その基準パルス数NSplsが求められて、この処理段階に到る。
基準パルス数記憶部124における処理は、図11に示すステップ41における処理であり、図12にその詳細フローチャートで示すように、処理がこの段階に単位回到達したことを条件として、前記情報数決定手段124aによりその情報数を決定し(ステップ51)、前記蓄積記憶手段124bにより所定の記憶領域に、基準パルス数NSplsの値に従って分類して、その情報数分だけ収納する(ステップ52)。
【0112】
さらに、図11に戻って説明を続けると、引き続いて、平均距離演算部125での処理に移るのであるが、蓄積情報数確認手段125aで、上記記憶領域に蓄積される情報の総数を確認する(ステップ42)。
確認された情報の総数に従って、図上左右に示される各処理を実行する。第一情報数判定手段125b−1による処理において、情報の総数が、第一情報数(本例の場合は64)より大きい場合(ステップ43:yes)は、第二情報数判定手段125b−2による処理において、総数が第二情報数(本例の場合は32)の倍数か否かを判定する(ステップ44−1)。そして、第二情報数の倍数に該当する場合(ステップ44−1:yes)は、平均距離演算手段125cによる1パルスの平均距離演算(ステップ45−1)、距離補正係数演算手段126aによる距離補正係数演算を経て(ステップ46−1)、距離補正係数出力手段126bにより得られた演算結果をそのまま出力する(ステップ47−1)。
一方、第二情報数の倍数に該当しない場合は、カウンタIのインクリメントを実行する(ステップ9)。
【0113】
以上説明してきた処理が、装置の使用から所定期間を過ぎており、第一情報数以上の多くの情報量が確保されており、安定した距離補正係数を演算出力できる状況における処理状況である。
【0114】
一方、情報の総数が、第一情報数判定手段125b−1による処理において、第一情報数(本例の場合は64)より小さい場合(ステップ43:no)は、第二情報数判定手段125b−3による処理として、総数が第三情報数(本例の場合は8)の倍数か否かを判定する(ステップ44−2)。そして、第三情報数の倍数に該当する場合(ステップ44−2:yes)は、平均距離演算手段125cによる1パルスの平均距離演算(ステップ45−2)、距離補正係数演算手段126aによる距離補正係数演算を経て(ステップ46−2)、距離補正係数出力手段126bにより距離補正係数出力(ステップ47−2)を実行する。
【0115】
先に説明した図11右側に示す処理系統では、得られた演算結果を、そのまま出力するものとしたが、この左側に示す処理系統でも、その出力処理形態は踏襲される。但し、第二情報数と第三情報数との関係から、左側のフローでは、情報数の少ない段階から、高い頻度で、距離補正係数kの出力がなされることとなる(ステップ47−2)。
一方、第二情報数の倍数に該当しない場合は、カウンタIのインクリメントを実行する(ステップ9)ことに関しては、同様である。
【0116】
このように装置の使用開始から比較的期間経過が短く蓄積される情報量が少ない状況で、第一情報数未満の情報量しか得られていない状況では、異常値を排除しながら、真値に近いと考えられる距離補正係数kを演算出力した処理を実行できる。
【0117】
結果、本願に係る補正係数演算装置1を使用して、現在の状況にあった距離補正係数を得、自位置認識装置を使用して自位置を求め、ナビゲーションの用に好適に供することができる。
【0118】
〔別実施の形態〕
(1) 上記の実施の形態においては、関係量として基準パルス情報を使用したが、当然にGPS情報から求まる移動距離Lgpsを使用して、関係量として単位パルス当りの距離(移動距離)を直接求めてもよい。
(2) 上記の実施の形態では、第一条件に属する全ての条件を満たすGPS情報対を距離補正係数の演算に使用するものとしたが、用途によっては、それら条件項目のうち、いずれか採用するものとしてもよい。
(3) 上記の実施の形態では、新たなGPS情報の取り込み毎に、過去のGPS情報との対を作成し、距離補正係数の演算を実行するものとしたが、本願手法は、予め時系列で記憶されているGPS情報群に対して、任意の2つのGPS情報を対として選択し・距離補正係数の演算に使用する場合にも適用できる。即ち、新たなGPS情報の取り込み毎に行われる必要はない。
(4)上記の実施の形態では、GPS情報対を構成する過去のGPS情報の戻り数(所定数)を32としたが、この数値は、距離補正係数の信頼性を失わず、同時に処理に要する時間を過度に増加させない限りにおいて変更可能である。
(5) 平均距離演算部125で採用する第一情報数、第二情報数、第三情報数としては、本実施例では(64、32、8)の組み合わせとしたが、さらに大きな数の組合わせを採用してもよく、任意の組み合わせを採用できる。但し、これら情報数の性質上、第一、第二、第三と進むに従ってその数は低下され、同時に演算処理上、演算が簡便となる数値の組み合わせが好ましい。
(6) 上記の実施の形態では、移動の直進性の判定に関して、GPS情報に含まれる進行方位情報を使用してその直進性を判断するものとしたが、別途設けられているジャイロセンサ等からの方位情報からも、移動の直進性を判定するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0119】
逐次取り込まれるGPS情報を十分に生かして、精度が高く信頼性の高い距離補正係数を迅速に得ることができる補正係数演算装置を得ることができ、信頼性の高い自位置認識を行える自位置認識装置を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本願に係る補正係数演算装置及び自位地認識装置の機能ブロック図
【図2】GPS情報及びパルス信号の取り込み状態を示す説明図
【図3】GPS情報数と移動距離とに関する影響度の説明図
【図4】平均距離演算部の詳細構成を示す機能ブロック図
【図5】距離補正係数演算部の詳細構成を示す機能ブロック図
【図6】記憶部に記憶されるヒストグラムを示す図
【図7】距離補正係数演算のメインフローフローチャート
【図8】第一条件判定のフローチャート
【図9】第二条件判定のフローチャート
【図10】第三条件判定のフローチャート
【図11】距離補正係数演算出力のフローチャート
【図12】情報数決定を伴う情報蓄積のフローチャート
【符号の説明】
【0121】
1 補正係数演算装置
2 自位置認識装置
52 GPS情報取得部
55 パルス情報取得部
58 ジャイロ情報取得部
60 自位置記憶部
61 自位置演算部
110 GPS情報選択部
120 判定部
121 第一条件判定部
122 第二条件判定部
123 第三条件判定部
124 基準パルス数記憶部
125 平均距離演算部
126 距離補正係数演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星からの信号に基づいて受信時刻情報及び速度情報を含むGPS情報を周期的に取得するGPS情報取得手段と、
移動量に応じたパルス信号を出力する距離センサからのパルス数情報を、少なくとも前記GPS情報の取得と同時に取得するパルス数情報取得手段と、
前記パルス数情報に基づいて求められる移動距離を補正するための距離補正係数を、前記GPS情報及び前記パルス数情報に基づいて演算する補正係数演算装置であって、
任意の2点のGPS情報に関して所定の第一条件を満たすか否かを判定する第一条件判定手段と、
前記2点のGPS情報が前記第一条件を満たす場合に、前記2点間のGPS情報に基づいて前記2点間の移動距離を演算する移動距離演算手段と、
前記移動距離演算手段により演算された前記2点間の移動距離と前記2点間の前記パルス数情報に示されるパルス数の差分との関係量を演算する関係量演算手段と、
前記関係量演算手段により演算された前記関係量の情報を記憶する記憶手段と、
前記2点間の移動距離に応じて、前記関係量を前記記憶手段に記憶する際の情報数を調節する情報数調節手段と、
前記記憶手段に格納された関係量の情報数が一定数以上となった後に、前記記憶手段に格納された複数の前記関係量に基づいて、代表関係量を演算する代表関係量演算手段と、
前記代表関係量を用いて前記距離センサの出力を補正するための距離補正係数を演算する距離補正係数演算手段と、
を備える補正係数演算装置。
【請求項2】
前記関係量は、基準距離当りのパルス数又は単位パルス数当りの距離である請求項1に記載の補正係数演算装置。
【請求項3】
前記第一条件は、所定の誤差半径内の情報であるか否かを判定するための精度条件、信号を受信した衛星数が所定数以上であるか否かを判定するための衛星数条件、一定速度以上で走行しているか否かを判定するための速度条件、直進移動状態を示しているか否かを判定するための直進条件、定速移動状態を示しているか否かを判定するための定速条件、のいずれか一つ以上を含む請求項1又は2に記載の補正係数演算装置。
【請求項4】
情報数調節手段は、前記2点間の移動距離の増加に従う複数段階の分類を用い、前記関係量を前記記憶手段に記憶する際には、当該関係量の演算元の前記2点間の移動距離に関する段階が増加するに従って、当該関係量についての情報数を増やす請求項1から3の何れか一項に記載の補正係数演算装置。
【請求項5】
前記2点間のいずれかのGPS情報が前記第一条件を満たさない場合には、当該2点のGPS情報についての処理を終了する請求項1から4の何れか一項に記載の補正係数演算装置。
【請求項6】
前記2点間のGPS情報の数が所定数以上であるというGPS情報数条件を満たすか否かを判定するGPS情報数判定手段を更に備え、
前記GPS情報数条件を満たさない場合には、前記関係量演算手段による前記関係量の演算対象外とする請求項1から5の何れか一項に記載の補正係数演算装置。
【請求項7】
前記現在のGPS情報の取得時に所定角度以上の勾配を移動中であるか否かを判定する勾配判定手段を更に備え、
勾配を移動中であると判定された場合には、当該2点のGPS情報についての処理を終了する請求項1から6の何れか一項に記載の補正係数演算装置。
【請求項8】
前記請求項1から7の何れか一項に記載の補正係数演算装置を備えた自位置認識装置であって、
方位センサからの方位情報を取得する方位情報取得手段を備え、
前記パルス数情報、前記方位情報と前記補正係数演算装置により得られる前記距離補正係数に基づいて、自位置の移動軌跡を演算し、自位置の認識を行う自位置演算手段を備える自位置認識装置。
【請求項9】
GPS衛星からの信号に基づいて受信時刻情報及び速度情報を含むGPS情報を周期的に取得するGPS情報取得ステップと、
移動量に応じたパルス信号を出力する距離センサからのパルス数情報を、少なくとも前記GPS情報の取得と同時に取得するパルス数情報取得ステップと、を実行し、
前記パルス数情報に基づいて求められる移動距離を補正するための距離補正係数を、前記GPS情報及び前記パルス数情報に基づいて演算する処理をコンピュータに実行させる補正係数演算プログラムであって、
任意の2点のGPS情報に関して所定の第一条件を満たすか否かを判定する第一条件判定ステップと、
前記2点のGPS情報が前記第一条件を満たす場合に、前記2点間のGPS情報に基づいて前記2点間の移動距離を演算する移動距離演算ステップと、
前記移動距離演算ステップにより演算された前記2点間の移動距離と前記2点間の前記パルス数情報に示されるパルス数の差分との関係量を演算する関係量演算ステップと、
前記2点間の移動距離に応じて、前記関係量を記憶手段に記憶する際の情報数を調節する情報数調節ステップと、
情報数調節ステップによる調節後の情報数の前記関係量の情報を前記記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記記憶手段に格納された関係量の情報数が一定数以上となった後に、前記記憶手段に格納された複数の前記関係量に基づいて、代表関係量を演算する代表関係量演算ステップと、
前記代表関係量を用いて前記距離センサの出力を補正するための距離補正係数を演算する距離補正係数演算ステップと、
を備える補正係数演算プログラム。
【請求項10】
情報数調節ステップは、前記2点間の移動距離の増加に従う複数段階の分類を用い、前記関係量を前記記憶手段に記憶する際には、当該関係量の演算元の前記2点間の移動距離に関する段階が増加するに従って、当該関係量についての情報数を増やす請求項9に記載の補正係数演算プログラム。
【請求項11】
前記2点間のいずれかのGPS情報が前記第一条件を満たさない場合には、当該2点のGPS情報についての処理を終了する請求項9又は10に記載の補正係数演算プログラム。
【請求項12】
前記2点間のGPS情報の数が所定数以上であるというGPS情報数条件を満たすか否かを判定するGPS情報数判定ステップを更に備え、
前記GPS情報数条件を満たさない場合には、前記関係量演算ステップ以降のステップにおける処理の対象外とする請求項9から11の何れか一項に記載の補正係数演算プログラム。
【請求項13】
前記現在のGPS情報の取得時に所定角度以上の勾配を移動中であるか否かを判定する勾配判定ステップを更に備え、
勾配を移動中であると判定された場合には、当該2点のGPS情報についての処理を終了する請求項9から12の何れか一項に記載の補正係数演算プログラム。
【請求項14】
前記請求項9から13の何れか一項に記載の補正係数演算プログラムを含んで構成される自位置認識プログラムであって、
方位センサからの方位情報を取得する方位情報取得ステップを有し、
前記パルス数情報、前記方位情報と前記補正係数演算プログラムにより得られる前記距離補正係数に基づいて、自位置の移動軌跡を演算し、自位置の認識を行う自位置演算ステップをコンピュータに実行させる自位置認識プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−155363(P2007−155363A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347265(P2005−347265)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】