説明

複合材料マイクロフォン、マイクロフォン・アセンブリ、およびそれらの製造方法

複合材料マイクロフォンは、可撓性かつ伸張性の第1および第2の導体(31a、...、31e、131a、131g;33a、...、33h、133a、133g)からなる格子を有する可撓性および伸張性の基板(22、122、250、350、450)を備える。第1の導体(31a、...、31e、131a、131g)は、第2の導体(33a、...、33h、133a、133g)に対して横断方向に配置される。複数の音響センサ(40、140)がそれぞれ、格子中の各対の導体と接続状態にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料マイクロフォンに関する。本発明は、さらに、複合材料マイクロフォンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2006110230が、複合材料マイクロフォンまたはマイクロフォン・アレイを開示している。マイクロフォン・アレイは、従来のマイクロフォンを上回るかなりの利点を有する。例えば、マイクロフォン・アレイは、音響信号をそれらの伝播方向に応じてピックアップすることを可能にする。そのため、マイクロフォン・アレイは、時として、空間フィルタとも呼ばれる。ショットガン型マイクロフォンなどの従来の指向性マイクロフォンに勝るマイクロフォン・アレイの利点は、複数のマイクロフォンおよび対応するビームフォーマの処理によりもたらされる自由度による高いフレキシビリティである。マイクロフォン・アレイの指向性パターンは、広範囲にわたって変更が可能である。これにより、例えば、目的方向のステアリング、実際の音響状況にしたがったパターンの適合化、および/または音響源へのズームインまたは音響源からのズームアウトが可能となる。これらは全て、マイクロフォン・アレイの機械的変更が不要である、典型的にはソフトウェア中に実装されるビームフォーマの制御によって、なされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、費用対効果の高い製造が可能な複合材料マイクロフォンを提供することである。
【0004】
他の目的は、費用対効果の高い製造が可能なマイクロフォン・アセンブリを提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、複合材料マイクロフォンの効率的な製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、マイクロフォン・アセンブリの効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、伸張性および可撓性の第1および第2の導体からなる格子を備える可撓性および伸張性の基板であって、第1の導体は、第2の導体に対して横断方向に配置される可撓性および伸張性の基板と、それぞれが格子中の各対の導体に接続状態にある複数の変換器とを備える複合材料マイクロフォンが提供される。
【0008】
本発明による複合材料マイクロフォンにおいては、変換器は、伸張性および可撓性の電気導体からなる格子を備える可撓性および伸張性の基板に配置される。この基板により、効率的な製造手順が可能になる。一方においては、基板の可撓性により、製造プラント内の任意の軌道に沿った輸送が可能となり、それと共に、この基板が平坦状態にある場合に、この基板の上に様々な構成要素および層を施すことが可能となる。これにより、複合材料マイクロフォンを、費用対効果の高い様式で、とりわけロール・ツー・ロール・プロセス(roll to roll process)において製造することが可能となる。変換器は、互いから離間されて基板に配置される。したがって、製造後には、基板および導体からなる格子の可撓性および伸張性により、複数方向への音響信号の感知に適した望ましい3D形状へと、この製造された複合材料マイクロフォンを湾曲させることが可能となる。
【0009】
本発明による複合材料マイクロフォンを製造する方法は、
可撓性および伸張性の基板を用意し、その上にセンサ・アレイを形成するステップを含み、前記ステップは、
可撓性および伸張性の第1および第2の導体からなり、第1の導体が、第2の導体に対して横断方向に配置される格子を施す横断ステップと、
格子中の各対の導体にそれぞれが接続するように複数の変換器を施すステップと
を含む。
【0010】
一実施形態においては、基板は、1つまたは複数の穿孔を備える。基板中に穿孔が存在することにより、基板の可撓性および伸張性が向上する。望ましい3D形状の複合材料マイクロフォンに対して適合化された穿孔のパターンが施されてよい。例えば、基板の比較的強い変形が要求される位置には、比較的高密度の穿孔または比較的大きな穿孔が施されてよい。
【0011】
一実施形態においては、音響センサは、2つの金属電極間に挟まれた(フェロ)エレクトレット層を備える薄膜変換器によって形成される。これらの変換器は、良好な線形応答を有し、ロール・ツー・ロール・プロセスにおいて比較的容易に製造することが可能である。多孔質ポリプロピレン、ポリテトラフルオライドエチレン、ポリビニリデンフルオライドおよびこれとトリフルオライドおよびテトラフルオライドを含むそのコポリマー、環状オレフィンコポリマー、ならびに奇数ナイロンなどの有機材料を、エレクトレット層に適用することができる。
【0012】
エレクトレットの電極は、可撓性および伸張性の第1および第2の導体に直接的に結合されてよい。しかし、一実施形態においては、強誘電性層の状態は、薄膜トランジスタの電流変調によって感知される。その場合には、変換器の電極は、薄膜トランジスタのゲート電極に電気的に結合される。このようにすることで、改善された信号対雑音比が得られる。
【0013】
変換器素子を形成するエレクトレットの薄膜トランジスタに対する配置のための様々なオプションが可能である。例えば、トランジスタおよび変換器素子は、基板の上に、互いに対して側方になるように並べて配置されてよい。
【0014】
しかし、好ましくは、変換器素子は、薄膜トランジスタの上に配置される。換言すれば、薄膜トランジスタは、基板と変換器素子との間に配置される。このようにすることで、音波を感知するためにより広い表面が使用可能となり、これにより、感度が向上する。さらにこのことは、例えば圧力感知のためなど、異なる目的のために変換器を有する格子が使用される場合にも該当する。
【0015】
薄膜トランジスタは、下部ゲート・デバイス・ジオメトリを有してよい。このジオメトリにおいては、薄膜トランジスタは、以下の層、すなわち、
基板に施されたゲート電極と、
ゲート電極の上の第1の絶縁体層と、
第1の絶縁体層の上に互いに離間して配置されたソース領域およびドレイン領域と、
第1の絶縁体層、ソース領域、およびドレイン領域の上の半導体層と、
半導体層の上の第2の絶縁体層と
を備える。この下部ゲート薄膜トランジスタの上には、フェロエレクトレットが、下部電極が第2の絶縁体層の上に位置する状態で配置される。電気接続部が、第1の絶縁体層、半導体層、および薄膜トランジスタの第2の絶縁体層を貫通して、ゲート電極と下部電極との間に施される。フェロエレクトレットは、下部電極に強誘電性材料の層を、および強誘電性材料の層に上部電極をさらに備える。この実施形態においては、薄膜トランジスタが下部ゲート・デバイス・ジオメトリにあることにより、第2の絶縁体は、寄生容量効果に対する良好な保護を実現する。
【0016】
薄膜トランジスタが上部ゲート・デバイス・ジオメトリを有する別の実施形態が可能である。この場合は、ソース領域およびドレイン領域が、基板において互いに離間されて配置され、半導体層が、基板、ソース領域、およびドレイン領域に施される。絶縁体層が、半導体層に施され、ゲート電極が、絶縁体層に施される。強誘電性層が、ゲート電極と上部電極との間に直接的に施されてよい。ここにおいて、ゲート電極は、さらにエレクトレットの下部電極として機能する。この実施形態は、非常に単純な構造を有する点で有利である。しかし、薄膜トランジスタのゲート電極およびエレクトレットの下部電極の両方として機能する電極は、トランジスタのソースおよびドレインと共に比較的大きな寄生容量を形成する場合があり、これは、いくつかの用途に関しては望ましくない場合がある。この実施形態の一変形例においては、フェロエレクトレットは、独立した下部電極を有し、さらなる絶縁体層が、薄膜トランジスタのゲート電極とエレクトレットの下部電極と間に配置され、ゲート電極および下部電極は、さらなる絶縁体を貫通する電気接続部によって結合される。これは、寄生効果の良好な抑制が得られると共に、導体が半導体層を貫通して存在する必要がないという利点を有する。
【0017】
マイクロフォンは、第1および第2の導体に結合されるアクティブ・マトリクス・アレイのために、基板上に読出し回路をさらに備えてよい。同一基板上にこの回路を配置することにより、マイクロフォンに結合されることとなる外部信号ラインが、比較的少ない数で足りる。例えば行シフト・レジスタおよび列シフト・レジスタを備える読出し回路は、マトリクス・トランジスタのために使用されるものと同一の半導体プロセス・ジオメトリによって作製されてよい。
【0018】
有機材料が、半導体層、誘電体、(フェロ)エレクトレット層、および電極を含む、複合材料マイクロフォン中の変換器のために使用される構成要素に対して使用されてよい。
【0019】
本発明によるマイクロフォン・アセンブリは、前記態様の一つによる1つまたは複数の複合材料マイクロフォンを備え、基板は、凸状キャリア本体を覆って伸張される。凸状キャリア本体を覆って基板を伸張させることにより、アレイ中の各音響センサは、伸張後にそれが配置される位置にて、前記凸状キャリア本体の表面の法線にしたがって配向され、それにより、広角度の感度が得られる。キャリア本体に対する基板の良好な適合は、空間角度が2π sr(ステラジアン)になるまで得られる。全方向性感度は、このようにマイクロフォン・アセンブリを備える2つ以上のこれらの凸状キャリア本体を組み合わせることによって得られる。
【0020】
全方向性感度を有するマイクロフォン・アセンブリのコンパクトな実施形態は、一対の半球状部から構成される球体を備え、これらの対の半球状部は、第1の側部にて互いに対面し、本発明による可撓性基板をそれぞれ備える。この基板の複数部分は、比較的低いひずみ量で、それぞれの半球状部に施され得る。この実施形態により、球体が2つのステップのみにおいて可撓性基板により覆われ得ることによって、および基板の複数部分が比較的簡単に各半球状部に施され得ることによって、効率的な製造が可能となる。この球体は、変換器から得られた出力信号を処理するための電子回路を収容し得る。
【0021】
これらのおよび他の態様は、図面を参照としてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】マイクロフォン・アセンブリを示す図である。
【図2】本発明による複合材料マイクロフォンの第1の実施形態を示す図である。
【図3】本発明による複合材料マイクロフォンの第2の実施形態を示す図である。
【図4】複合材料マイクロフォンの一部を示す図である。
【図5】図4に示される一部の第1の実装形態を示す図である。
【図5A】図5のA−Aによる断面図である。
【図6】図4に示される一部の第2の実装形態を示す図である。
【図7】図4に示される一部の第3の実装形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明においては、本発明の十分な理解を促すために、多数の特定の詳細が述べられる。しかし、本発明はこれらの特定の詳細を伴わずに実施し得ることが、当業者には理解されよう。他の例においては、よく知られている方法、手順、および構成要素は、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、詳細には説明されていない。本発明は、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して、以下においてより十分に説明される。しかし、本発明は、多数の異なる形態において実現され得るものであり、本明細書において述べられる実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を十分かつ完全なものとし、本開示により当業者に対して本発明の範囲を十分に伝えるために、提示される。
【0024】
図面においては、層および領域のサイズおよび相対サイズは、明瞭化のために誇張される場合がある。本発明の実施形態は、本発明の理想化された実施形態(および中間的構造)の概略図である断面図を参照して、本明細書において説明される。そのため、例えば製造技術および/または製造公差などの結果としての図の形状からの変異が見込まれるべきである。したがって、本発明の実施形態は、本明細書において例示される領域の特定的な形状に限定されるものとして解釈されるべきではなく、例えば製造によりもたらされる形状偏差を含み得る。したがって、図面において例示される領域は、本質的に概略的なものであり、それらの形状は、デバイスの領域の実際の形状を示すことは意図されず、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0025】
ある層がある層の「上に」位置すると言われる場合には、その層は、他方の層の上に直接的に位置してよく、または介在層が存在し得ることが理解されよう。これとは対照的に、ある要素が別の層の「上に直接的に」位置すると言われる場合には、介在層は存在しない。同様の数字は、全体を通じて同様の要素を示す。本明細書において使用される際に、「および/または」という用語は、1つまたは複数の関連して列挙されるアイテムのあらゆる組合せを含む。
【0026】
本明細書においては、第1の、第2の、第3の、等々の用語が、種々の要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションを説明するために使用されることがあるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/またはセクションは、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、またはセクションを、別の要素、構成要素、領域、層、またはセクションから区別するために使用されるに過ぎない。したがって、以下に論じられる第1の要素、構成要素、領域、層、またはセクションを、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、またはセクションと呼ぶことが可能である。
【0027】
本明細書においては、「下に」、「下方に」、「下方の」、「上方に」、および「上方の」等々の空間的に相対的な用語が、図面に例示されるようなある要素または特長(feature)の、別の要素(または複数の要素)または特長(または複数の特長)に対する関係の説明を容易化するために使用されることがある。これらの空間的に相対的な用語は、図面に示される配向に加えて、使用時または作動時におけるデバイスの様々な配向を包含するように意図されることを理解されたい。例えば、図面中のデバイスが反転される場合には、他方の要素または特長の「下方に」または「下に」位置するものとして説明される要素は、他方の要素または特長の「上方に」配向されることとなる。したがって、例示的な用語である「下方に」は、上方におよび下方にの両方の配向を包含することが可能である。デバイスは、さらに他の態様で配向されてよく(90度回転されて、または他の向で)、本明細書において用いられる空間的に相対的な記述は、それに応じて解釈され得る。
【0028】
特に明記しない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書において定義されるものなどの用語は、関連技術のコンテクスト中におけるそれらの意味に合致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示されない限り、理想化されたまたは過度に型通りの意味において解釈されるものではないことが理解されよう。
【0029】
図1は、半球状部12、14の形態の一対の凸状キャリア本体から構成される球体を備えるマイクロフォン・アセンブリを示す。これらの半球状部12、14は、第1の側部13、15にて互いに対面し、基板22、24上に形成された複合材料マイクロフォンをそれぞれ備える。基板22、24は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)層またはPEN(ポリエチレンナフタレート)層などの、可撓性および伸張性材料の層である。
【0030】
可撓性および伸張性の基板22、24は、それぞれの半球状部12、14を覆って伸張され、フック26により半球状部12、14上に設置される。代替としては、基板22、24は、接着剤により半球状部12、14に接着されてよい。半球状部12、14の対は、複合材料マイクロフォンからの信号を処理するための信号処理ユニット18を包囲している。
【0031】
図2は、複合材料マイクロフォンの1つをさらに詳細に示す。他方の複合材料マイクロフォンは、好ましくは同様の構造を有する。図2に図示されるように、基板22は、第1の導体31a、...、31eと第2の導体33a、...、33hとにより形成される格子を備える。この場合においては、格子は、5つの第1の導体と4つの第2の導体とを備えるが、格子は、第1および第2の導体の任意の他の組合せによって実現されてもよい。第1の導体は、第2の導体に対して横断方向に配置される。この場合においては、第1の導体は接線方向に配置され、第2の導体はラジアル方向に配置されることにより、それらは互いに垂直に交差し、互いから離隔される。第1の導体31a、...、31eは、基板22の外方端部の補強リング27においてそれぞれの接触端子32a、...32eに結合される。最も外方の第1の導体31aは、その接触端子32aに直接的に接続される。他の第1の導体31b、...31eは、補助用ラジアル方向導体によりそれらの接触端子32b、...、32eに接続される。第2の導体33a、...、33hは、補強リング27において他の接触端子34a、...34hに結合される。複数の変換器40が、基板に施される。それらはそれぞれ、格子中の第1の導体および第2の導体の各対に接続される。明瞭化のために、図面においては4つの変換器40のみが示される。しかし実際には、アレイは、第1および第2の導体の任意の対に対応する変換器を備え得る。したがって、これは、合計で40個の変換器となる。
【0032】
第1および第2の導体、ならびに補助用導体は、可撓性および伸張性である。可撓性および伸張性の導体は、例えばUS2007115572において説明されるように、例えば蛇行形状においてそれらを形成することによって実現されてもよい。代替としては、例えばWO9639707において説明されるような導電性ポリマーと非導電性ポリマーとの混合物などの、本来的に可撓性、伸張性、および導電性の材料を使用してもよい。好ましくは、基板22の外周は、初めにおいて、最大でも、それが配置されることとなる半球状部12の外周の値である値を有する。このようにすることで、基板22は、半球状部の外方表面にぴったりと合致し、それにより、明確に規定された形状を有する。好ましくは、基板22の外周は、初めにおいて、それが配置されることとなる半球状部12の外周の値の少なくとも3分の2(2/3)の値を有する。例えば半球状部の外周の半分未満など、基板22の初期外周がさらに著しく小さい場合には、半球状部に基板22を設置するために比較的強い力が必要となり、これは、製造を困難にし、基板に損傷を与えるおそれがある。
【0033】
基板22の初期外周が半球状部12の外周と同一である特定の場合においては、ラジアル方向における変形Srはπ/2であり、すなわち、基板は、約1.5倍伸張される。接線方向における変形は、基板22の中心におけるπ/2から基板の端部における0の間で多様化する。
【0034】
第1および第2の導体は、極格子にしたがって配置される必要はない。図3は、代替の一構成を示し、第1および第2の導体は、デカルト(直交)格子にしたがって配置される。図2中のパーツに対応する図3中のパーツは、100だけ大きな参照数字を有する。明瞭化のため、2つの第1の導体のみが、それぞれ131aおよび131gの参照数字によって示される。同様に、2つの第2の導体133a、133gのみが、参照数字で示される。図4において分かるように、第1および第2の導体がそれぞれ、各接触端子(例えば132a、132g、134a、134g)に直接的に接続され得ることが、この構成の1つの利点である。図3の実施形態においては、基板122は、1つまたは複数の穿孔128を備える。穿孔128により、基板122の変形が容易になる。穿孔の位置およびサイズは、変形量を決定するために選択され得る。穿孔128のサイズは、その位置の関数としての基板122の変形量を制御するために、基板122上の位置の関数として変動し得る。
【0035】
図4は、本発明によるマイクロフォンにおいて使用するのに適した変換器40の回路図を概略的に示す。例として、図2による複合材料マイクロフォンの実施形態において、第1の導体31bおよび第2の導体33hに結合される変換器40が示される。実際には、同一の変換器が、アレイ全体において使用されてよい。さらに、これらの変換器は、図3の直交アレイ中で変換器140として使用されてもよい。図4に図示される変換器40は、第1の導体31bと第2の導体33hとの間に主電流経路を有するFET44を備える。FET44の伝導率は、一方の側でそのゲートに接続された感圧エレクトレット42によって制御される。エレクトレット42は、その他方の側で基準電圧源に結合される。2つの電極の間に挟まれた(フェロ)エレクトレット層を備えるかかるフェロエレクトレットは、薄膜変換器を形成する。エレクトレット層は、例えばポリプロピレンまたは別のポリマーなどの有機材料により形成されてよい。必要な場合には、これらの材料は、空気中のコロナ放電により内部帯電され得る。任意には、FET44の伝導率は、そのゲートに対して外部電圧を印加することによって変調される(これは、追加の導体(図面には図示せず)を要する)。
【0036】
図2および図3に図示される実施形態においては、第1の導体31a、...、31e;131a、131g、および第2の導体33a、...、33h;133a、133gは、基板22、122の外方端部で接触端子32a、...32e、34a、...、34e;132a、132g;134a、134gに接続される。代替の一実施形態においては、基板は、格子中に配置された音響センサにより形成されるアクティブ・マトリクス・アレイのための読出し回路をさらに備えてよい。かかる読出し回路は、行シフト・レジスタおよび列シフト・レジスタを備えてよい。したがって、好ましくは、マトリクス・トランジスタ44に対して使用されるものと同一の半導体プロセスおよびデバイス・ジオメトリが使用される。
【0037】
図5は、変換器240の第1の好ましい実装形態を示す。図4中のパーツに対応する図5中のパーツは、200だけ大きな参照数字を有する。図5の実装形態においては、FET244は、下部ゲート・デバイス・ジオメトリを有する。このジオメトリにおいては、薄膜トランジスタ244は、基板250の上にゲート電極252を備える。第1の絶縁体層254が、ゲート電極252の上に施される。ソース領域258およびドレイン領域260が、第1の絶縁体層254上に互いに離間されて配置され、半導体層256が、第1の絶縁体層254、ソース領域258、およびドレイン領域260の上に配置される。第2の絶縁体層262が、半導体層254の上に配設される。この下部ゲート薄膜トランジスタ244の上には、フェロエレクトレット242が、下部電極266が第2の絶縁体層262上に位置する状態で配置される。電気接続部264が、第1の絶縁体層254、薄膜トランジスタ244の半導体層256、および薄膜トランジスタ244とフェロエレクトレット242との間の第2の絶縁体層262を貫通して、ゲート電極252と下部電極266との間に施される。フェロエレクトレット242は、下部電極266および上部電極269に、強誘電性材料の層268をさらに備える。この実施形態においては、薄膜トランジスタ244が下部ゲート・デバイス・ジオメトリにあることにより、第2の絶縁体262は、寄生容量効果に対する良好な保護を実現する。ソース258は、半導体層256および隔離層262を貫通するビア259によって、下部電極層266の平面中の各第1の導体231aに結合される。ドレイン260は、ドレイン260の層と同一平面中の各第2の導体233aに結合される。これは、下部電極層266の平面を通る断面A−Aを図示する図5Aにおいても図示される。さらに、図5Aは、ドレイン258およびソース260を通る平面を破線の形態で示す。
【0038】
この実施形態の変換器240がこれらの層のみを備えることは、必須ではない。これらの層が、図5に提示される順で存在することで十分である。例えば、ゲート電極252は、基板250の上に直接的に施されてよいが、代替としては、1つまたは複数の層が、基板250とゲート電極252との間に存在してもよい。
【0039】
図6は、変換器340の第2の好ましい実装形態を示す。図5中のパーツに対応する図6中のパーツは、100だけ大きな参照数字を有する。図6の実装形態においては、FET344は、上部ゲート・デバイス・ジオメトリを有する。この場合では、ソース領域358およびドレイン領域360は、基板350にて互いに離間して配置され、半導体層356が、基板350、ソース領域358、およびドレイン領域360に施される。絶縁体層354が、半導体層356に施され、ゲート電極352が、絶縁体層362に施される。図示される実施形態においては、強誘電性層368が、ゲート電極352と上部電極369との間に直接的に施される。ここにおいて、ゲート電極352は、さらにエレクトレット342の下部電極366として機能する。この実施形態は、非常に単純な構造を有する点で有利である。
【0040】
この実施形態の変形例が、図7に示される。図7では、図5中のパーツに相当するパーツは、200だけ大きな参照数字を有する。図7に図示される変形例においては、フェロエレクトレット442は、独立した下部電極466を有し、さらなる絶縁体層462が、薄膜トランジスタ444のゲート電極452とエレクトレット442の下部電極466との間に配置される。ゲート電極452および下部電極466は、さらなる絶縁体層462を貫通する電気接続部462によって結合される。これは、寄生効果の良好な抑制が得られると共に、導体が半導体層を貫通して存在する必要がないという利点を有する。
【0041】
代替としては、トランジスタおよびフェロエレクトレットは、基板上において互いに対して側方に配置されてもよい。これにより、パターニングを要する層数の合計が最も少なくなる。しかし、薄膜トランジスタ上にフェロエレクトレットが積層される図5、図6、および図7を参照して説明された実施形態は、フェロエレクトレットによる感知のためにより大きな表面が使用可能となるという利点を有し、これは、マイクロフォンの感度に関して有利なものとなる。原理的には、スタックを逆に配置すること、すなわち基板と薄膜トランジスタとの間にフェロエレクトレットを配置することが可能であるが、この配置は、フェロエレクトレットの表面が薄膜トランジスタにより隠されるので、マイクロフォンの感度に負の影響を与え得る。
【0042】
薄膜トランジスタ42、242、342、442中の半導体材料として、α−Siなどの無機材料を適用することができる。代替としては、これの代わりに、例えばペンタセンなどの有機材料を使用することができる。薄膜トランジスタおよび変換器の電極は、Au、Ag、Pt、Pd、またはCuなどの金属によって形成することができる。さらに、ポリアニリン誘導体およびポリチオフェン誘導体などの導電性ポリマーを代替として使用することもできる。隔離層は、酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素などの無機材料によって形成することができるが、代替としては、ポリビニルフェノール、ポリスチレンなどの非導電性ポリマーを使用することができる。基板および導体自体であるその格子は、予め伸張性および可撓性であり、音響センサ素子は、互いから分離されて基板に配置されるが、アレイ中の音響センサの構成要素に有機材料を使用することにより、複合材料マイクロフォンの伸張性および可撓性がさらに向上する。
【0043】
実際の実施形態においては、基板は、変換器を形成する層のスタックよりも大きな厚さを有することに留意されたい。例えば、基板は、強度および可撓性に関する要件に応じて、10から200μmのオーダの厚さを有する。しかし、明瞭化のため、図面においては、基板は比較的薄い層として提示される。一般的には、他の層は、30nmから1μmの範囲の厚さを有する。導電性層は、例えば必要とされる伝導率に応じて、例えば100nmなど、30nmから1μmの範囲の厚さを有してよい。隔離層は、50から300nmの範囲であってよい。しかし、薄膜トランジスタからエレクトレットを隔てる隔離層は、はるかに厚くてもよく、例えば層262または462は、1から10μmの厚さを有してよい。エレクトレット層は、例えば70μmなど、10から200μmの範囲の厚さを有してよい。
【0044】
図1から図7を参照して説明されるような複合材料マイクロフォンを製造する方法は、
可撓性基板を用意し、その上にセンサ・アレイを形成するステップを含み、前記ステップは、
伸張性および可撓性の第1および第2の導体からなり、第1の導体が、第2の導体に対して横断方向に配置される格子を施すステップと、
格子中の各対の導体に接続するように複数の音響センサを施すステップと
を含んでいてもよい。
【0045】
マイクロフォンの種々の構成要素は、それ自体において知られている様式で基板に施すことができる。例えば、薄膜トランジスタまたはエレクトレットの電極が、製造の際に、初めに複合材料マイクロフォンの全表面を覆うように金属などの導電性層または導電性ポリマーを施すことによって、施され得る。その後、この層は、エッチング技術またはインプリントによりパターニングされ得る。代替としては、電極は、パターン印刷技術によって形成され得る。同様に、第1および第2の導体、半導体層、絶縁体層、ドレイン領域、およびソース領域、ならびにエレクトレット層などの、マイクロフォンの他の機能要素が形成され得る。
【0046】
「垂直」導体、すなわち高い層から低い層へ、基板の平面に対して横断方向に延在する導体は、EP0986112およびWO2007004115において説明されているような技術によって形成され得る。
【0047】
特許請求の範囲において、「備える」という語は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「a」、「an」(1つの)は、複数を除外しない。単一の構成要素または他のユニットが、特許請求の範囲内に挙げられる複数のアイテムの機能を遂行し得る。単にいくつかの測定値が互いに異なる請求項中において挙げられるということは、これらの測定値の組合せを有利に使用し得ないということを意味しない。特許請求の範囲中の任意の参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性および伸張性の第1および第2の導体(31a、...、31e、131a、131g;33a、...、33h、133a、133g)からなり、前記第1の導体(31a、...、31e、131a、131g)は、前記第2の導体(33a、...、33h、133a、133g)に対して横断方向に配置される格子を備える可撓性および伸張性の基板(22、122、250、350、450)と、
それぞれが前記格子中の各対の導体に接続状態にある複数の音響センサ(40、140)と
を備えることを特徴とする複合材料マイクロフォン。
【請求項2】
前記基板(122)は、1つまたは複数の穿孔(128)を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項3】
前記音響センサ(40、140)は、2つの電極(266、269;366、369;466、469)の間に挟まれた(フェロ)エレクトレット層(268;368;468)を備える薄膜変換器を備えることを特徴とする請求項1に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項4】
前記エレクトレット層(268;368;468)は、有機材料からなることを特徴とする請求項3に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項5】
前記強誘電性層の状態が、薄膜トランジスタ(244;344;444)の電流変調によって感知され、前記変換器(242;342;442)の電極(266;366;466)が、前記薄膜トランジスタのゲート電極(252;352;452)に電気的に結合されることを特徴とする請求項3または4に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項6】
前記トランジスタおよび前記変換器は、前記基板の上に互いに対して側方に配置されることを特徴とする請求項5に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項7】
前記変換器(242;342;442)は、前記薄膜トランジスタ(244;344;444)の上に配置されることを特徴とする請求項5に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項8】
前記薄膜トランジスタ(244)は、下部ゲート・デバイス・ジオメトリを有することを特徴とする請求項7に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項9】
前記薄膜トランジスタ(344;444)は、上部ゲートTFTデバイス・ジオメトリを有することを特徴とする請求項7に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項10】
前記アクティブ・マトリクス・アレイのための読出し回路をさらに備え、前記読出し回路は、前記マトリクス・トランジスタのために使用されるものと同一の半導体プロセス・ジオメトリによって作製された行シフト・レジスタおよび列シフト・レジスタを備えることを特徴とする請求項5から9のいずれか一項に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項11】
前記薄膜トランジスタ(42、242、342、442)は、有機半導体および/または有機誘電体および/または有機電極を備えることを特徴とする請求項5から10のいずれか一項に記載の複合材料マイクロフォン。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の1つまたは複数の複合材料マイクロフォンを備え、前記基板(22、24)は、凸状キャリア本体(12、14)を覆って伸張されていることを特徴とするマイクロフォン・アセンブリ。
【請求項13】
半球状部の形態の第1および第2の凸状キャリア本体(12、14)を備え、これらの半球状部は、それらの最も広い側部(13、15)にて互いに対面していることを特徴とする請求項12に記載のマイクロフォン・アセンブリ。
【請求項14】
前記対の半球状部(12、14)は、前記複合材料マイクロフォンからの信号を処理するための信号処理ユニット(18)を包囲していることを特徴とする請求項13に記載のマイクロフォン・アセンブリ。
【請求項15】
可撓性基板を用意し、その上にセンサ・アレイを形成するステップを含み、前記ステップは、
伸張性および可撓性の第1および第2の導体からなり、前記第1の導体は、前記第2の導体に対して横断方向に配置される格子を施すステップと、
前記格子中の各対の導体に接続するように複数の音響センサを施すステップと
を含むことを特徴とする複合材料マイクロフォンを製造する方法。
【請求項16】
音響センサを施す前記ステップは、薄膜トランジスタを施すサブステップおよびフェロエレクトレットを施すサブステップを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フェロエレクトレットは、前記薄膜トランジスタに施されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
音響センサを施す前記ステップは、
基板上にゲート電極を施すステップと、
前記ゲート電極の上に第1の絶縁体層を施すステップと、
前記第1の絶縁体層の上に、互いに離間されて配置されたソース領域およびドレイン領域を施すステップと、
前記第1の絶縁体層、前記ソース領域、および前記ドレイン領域の上に半導体層を施すステップと、
前記半導体層の上に第2の絶縁体層を施すステップと、
前記第2の絶縁体層の上に下部電極を施すステップと、
前記第1の絶縁体層、前記半導体層、および前記第2の絶縁体層を貫通して、前記ゲート電極と前記下部電極との間に電気接続部を施すステップと、
前記下部電極の上に強誘電性材料の層を施すステップと、
強誘電性材料の前記層の上に上部電極を施すステップと
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
音響センサを施す前記ステップは、
基板の上に、互いに離間されて配置されたソース領域およびドレイン領域を施すステップと、
前記基板、前記ソース領域、および前記ドレイン領域の上に半導体層を施すステップと、
前記半導体層の上に絶縁体層を施すステップと、
前記絶縁体層の上にゲート電極を施すステップと、
前記ゲート電極の上に強誘電性層を施すステップと、
前記強誘電性層の上に上部電極を施すステップと
を含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記ステップにより得られる円形形状の複合材料マイクロフォンを用意し、凸状本体の表面に適合するように前記基板を伸張するステップをさらに含むことを特徴とする請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
外部の第1および第2の導体に前記第1および第2の導体を接続するステップをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複合材料マイクロフォンを備える半球状本体の対を、球形状本体へと合体させるステップを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記球形状本体の中空部分に、前記外部導体に結合された信号処理回路が設けられることを特徴とする請求項22に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−522456(P2011−522456A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506220(P2011−506220)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050224
【国際公開番号】WO2009/134127
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】