説明

複合発電システム及び複合発電システムの運転方法

【課題】複合発電システム及び複合発電システムの運転方法において、抽気元弁の故障における昇圧機のサージングを抑制することで安全性の向上を図る。
【解決手段】微粉炭を燃焼してガス化するガス化炉11と、圧縮機21で圧縮した圧縮空気とガス化炉11で生成された石炭ガスの混合気を燃焼器22で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービン23を駆動して発電機25により発電するガスタービン13を設け、圧縮機21から抽気ライン40を通して抽気した圧縮空気を第1昇圧機37により昇圧してガス化炉11へ送給可能とすると共に、この抽気ライン40に抽気元弁67を設け、異常停止制御装置82は、抽気元弁67の開度に応じて第1昇圧機37及びガスタービン13を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化炉で燃料をガス化し、ガスタービンでこのガス化炉で生成したガスと圧縮空気との混合気を燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電し、ガスタービンの圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧してガス化炉へ送給する複合発電システム及び複合発電システムの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンにより構成されており、空気取入口から取り込まれた空気が圧縮機によって圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器にて、この圧縮空気に対して燃料を供給して燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスがタービンを駆動し、このタービンに連結された発電機を駆動して発電する。そして、このようなガスタービンにガス化炉を適用した複合発電プラントでは、ガス化炉で固体燃料または液体燃料をガス化し、このガス化炉で生成したガスをガスタービンへ送給して圧縮空気と混合し、この混合気を燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動すると共に、ガスタービンから排出された高温の排気ガスをボイラに送って蒸気を生成し、生成された蒸気を蒸気タービンに送って発電機を駆動して発電するようにしている。
【0003】
このような複合発電プラントにて、ガス化炉では、炉内に燃料としての微粉炭(石炭)を供給すると共に、酸素及び窒素を供給して不完全燃焼させることで、未燃ガスを生成し、この未燃ガスからガスタービンで使用する燃焼用ガスを精製している。また、ガス化炉には、搬送用の圧縮空気を供給し、この圧縮空気により生成された未燃ガスをガス精製設備やガスタービンに送給している。従来の複合発電プラントでは、ガスタービンの圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧機で昇圧してからガス化炉へ送給している。
【0004】
この場合、複合発電プラントの起動時に、ガス化炉で直ちに燃焼用ガスを生成することができないため、石炭ガスに代えて液体燃料を燃焼器に供給してガスタービンを起動しており、このとき、ガスタービンの圧縮機から昇圧機への抽気ラインに設けられた抽気元弁が閉止状態にある。そして、ガス化炉で燃焼用ガスが生成可能となると、抽気元弁を開放して圧縮機の抽気空気を昇圧機で昇圧してからガス化炉に送給し、この昇圧ガスにより石炭ガスを燃焼器に供給してガスタービンを駆動するようにしている。
【0005】
このような複合発電プラントとしては、下記特許文献1に記載されたものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平05−248260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したように、複合発電プラントでは、ガスタービンの圧縮機と昇圧機とを繋ぐ抽気ラインには抽気元弁が設けられており、この抽気元弁はガス化路の稼動時には開放状態に保持されている。ところが、この抽気元弁は、油圧や空気圧または電磁力などにより作動可能であるものの、油圧漏れや空気圧漏れまたは電気的な故障が発生したときには、抽気元弁が閉止してしまい、昇圧機に抽気空気が送られずにサージングが発生し、昇圧機が損傷してしまうおそれがある。そのため、故障により抽気元弁が閉止してしまったときには、ガスタービン及び昇圧機を緊急停止すると共に、ガス化炉も停止するようにしている。
【0008】
しかし、抽気元弁が故障により徐々に閉止したときに、ガスタービン及び昇圧機を同時に停止するが、昇圧機にはその慣性力があるために直ちに停止することができず、抽気空気の昇圧作動が所定時間だけ継続される。一方、ガスタービンの圧縮機が停止して車室内の圧力が低下しているため、圧縮機の圧縮空気が昇圧機には供給されず、昇圧機でサージングが発生してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した課題を解決するものであり、抽気元弁の故障における昇圧機のサージングを抑制することで安全性の向上を図った複合発電システム及び複合発電システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための請求項1の発明の複合発電システムは、固体燃料または液体燃料をガス化するガス化炉と、圧縮機で圧縮した圧縮空気と該ガス化炉で生成したガスの混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電するガスタービンと、前記圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧して前記ガス化炉へ送給する昇圧機と、前記圧縮機と前記昇圧機との抽気ラインに設けられた抽気元弁とを具えた複合発電システムにおいて、前記抽気元弁の開度または該抽気元弁より上流側の抽気圧力に応じて前記昇圧機及び前記ガスタービンを停止する異常停止制御手段が設けられたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発明の複合発電システムでは、前記抽気元弁の開度を検出する開度センサと、該開度センサが検出した開度と開度指令値との偏差に基づいて前記抽気元弁の異常を判定する異常判定手段を設け、該異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記昇圧機を停止すると共に前記抽気元弁の閉止速度に応じた停止遅延時間を設定し、該停止遅延時間の経過後に前記ガスタービンを停止することを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明の複合発電システムでは、前記抽気元弁より上流側の抽気圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサが検出した圧力が予め設定された圧力上限値より高くなったときに前記抽気元弁の異常を判定する異常判定手段を設け、該異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記昇圧機及び前記ガスタービンを停止することを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明の複合発電システムでは、前記昇圧機から排出された昇圧空気を該昇圧機の入口側に戻す循環ラインを設け、前記異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記循環ラインを開放することを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明の複合発電システムでは、前記昇圧機から排出された昇圧空気を大気に排出する排出ラインを設け、前記異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記排出ラインを開放することを特徴としている。
【0015】
また、請求項6の発明の複合発電システムの運転方法は、固体燃料または液体燃料をガス化するガス化炉と、圧縮機で圧縮した圧縮空気と該ガス化炉で生成したガスの混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電するガスタービンと、前記圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧して前記ガス化炉へ送給する昇圧機と、前記圧縮機と前記昇圧機との抽気ラインに設けられた抽気元弁とを具えた複合発電システムにおいて、前記抽気元弁の開度と開度指令値との偏差が予め設定された基準値より大きいときに前記抽気元弁の異常を判定し、該抽気元弁の異常判定時に、前記昇圧機を停止すると共に、該抽気元弁の閉止速度に応じた設定された停止遅延時間の経過後に前記ガスタービンを停止することを特徴とするものである。
【0016】
請求項7の発明の複合発電システムの運転方法は、固体燃料または液体燃料をガス化するガス化炉と、圧縮機で圧縮した圧縮空気と該ガス化炉で生成したガスの混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電するガスタービンと、前記圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧して前記ガス化炉へ送給する昇圧機と、前記圧縮機と前記昇圧機との抽気ラインに設けられた抽気元弁とを具えた複合発電システムにおいて、前記抽気元弁より上流側の抽気圧力が予め設定された圧力上限値より高くなったときに前記抽気元弁の異常を判定し、該抽気元弁の異常判定時に、前記昇圧機及び前記ガスタービンを停止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明の複合発電システムによれば、固体燃料または液体燃料をガス化するガス化炉と、圧縮機で圧縮した圧縮空気とガス化炉で生成したガスの混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電するガスタービンと、圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧して前記ガス化炉へ送給する昇圧機とを設けて構成し、圧縮機と昇圧機との抽気ラインに抽気元弁を設けると共に、抽気元弁の開度または抽気元弁より上流側の抽気圧力に応じて昇圧機及びスタービンを停止する異常停止制御手段を設けたので、異常停止制御手段は、抽気元弁の開度または抽気元弁より上流側の抽気圧力に応じて抽気元弁の異常を判定して昇圧機及びガスタービンの停止時期を設定することが可能となり、抽気元弁の故障における昇圧機のサージングを抑制し、安全性を向上することができる。
【0018】
請求項2の発明の複合発電システムによれば、抽気元弁の開度を検出する開度センサと、開度センサが検出した開度と開度指令値との偏差に基づいて抽気元弁の異常を判定する異常判定手段を設け、異常判定手段が抽気元弁の異常を判定したときに、異常停止制御手段は、昇圧機を停止すると共に抽気元弁の閉止速度に応じた停止遅延時間を設定し、停止遅延時間の経過後にガスタービンを停止するので、抽気元弁の異常時に、昇圧機を停止して停止遅延時間の経過後にガスタービンを停止することとなり、昇圧機での空気不足を防止して昇圧機のサージングを確実に抑制することができる。
【0019】
請求項3の発明の複合発電システムによれば、抽気元弁より上流側の抽気圧力を検出する圧力センサと、圧力センサが検出した圧力が予め設定された圧力上限値より高くなったときに抽気元弁の異常を判定する異常判定手段を設け、異常判定手段が抽気元弁の異常を判定したときに、異常停止制御手段は昇圧機及びガスタービンを停止するので、抽気元弁の異常時に、抽気元弁より上流側の抽気圧力が圧力上限値より高くなった状態で昇圧機及びガスタービンを停止することとなり、昇圧機での空気不足を防止して昇圧機のサージングを確実に抑制することができる。
【0020】
請求項4の発明の複合発電システムによれば、昇圧機から排出された昇圧空気を昇圧機の入口側に戻す循環ラインを設け、異常判定手段が抽気元弁の異常を判定したときに、異常停止制御手段はこの循環ラインを開放するので、抽気元弁の異常時に、昇圧機から排出された昇圧空気を循環ラインにより入口側に戻すこととなり、昇圧機での空気不足を防止して昇圧機のサージングを確実に抑制することができる。
【0021】
請求項5の発明の複合発電システムによれば、昇圧機から排出された昇圧空気を大気に排出する排出ラインを設け、異常判定手段が抽気元弁の異常を判定したときに、異常停止制御手段はこの排出ラインを開放するので、抽気元弁の異常時に、昇圧機から排出された昇圧空気を排出ラインにより大気に排出することとなり、昇圧機での空気不足を防止して昇圧機のサージングを確実に抑制することができる。
【0022】
また、請求項6の発明の複合発電システムの運転方法によれば、抽気元弁の開度と開度指令値との偏差が予め設定された基準値より大きいときに抽気元弁の異常を判定し、この抽気元弁の異常判定時に、昇圧機を停止すると共に、抽気元弁の閉止速度に応じた設定された停止遅延時間の経過後に前記ガスタービンを停止するようにしたので、抽気元弁の異常時における昇圧機での空気不足を防止して昇圧機のサージングを確実に抑制することができる。
【0023】
請求項7の発明の複合発電システムの運転方法によれば、抽気元弁より上流側の抽気圧力が予め設定された圧力上限値より高くなったときに抽気元弁の異常を判定し、この抽気元弁の異常判定時に昇圧機及びガスタービンを停止するようにしたので、抽気元弁の異常時における昇圧機での空気不足を防止して昇圧機のサージングを確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る複合発電システム及び複合発電システムの運転方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の実施例1に係る複合発電システムにおけるガスタービンの燃料供給ライン及び抽気ラインを表す概略図、図2は、実施例1の複合発電システムの概略構成図、図3は、実施例1の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定処理の制御ブロック図、図4は、実施例1の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定制御を表すフローチャートである。
【0026】
実施例1の複合発電システムは、図2に示すように、ガス化炉11、ガス精製設備12、ガスタービン13、排熱回収ボイラ(HRSG)14、蒸気タービン15から構成されている。ガスタービン13は、圧縮機21と燃焼器22とタービン23とを有しており、圧縮機21及びタービン23はタービン軸24を介して連結されている。蒸気タービン15は、ガスタービン13のタービン軸24と同軸上に連結されており、このタービン軸24の端部に発電機25が連結されている。そして、ガスタービン13における圧縮機21に入口側には、空気を吸入する吸気ライン26が連結される一方、タービン23の出口側には排気ライン27が連結されている。
【0027】
ガスタービン13の排気管27は、排熱回収ボイラ14を介して煙突28に連結されている。この排熱回収ボイラ14は、例えば、高圧ボイラと中圧ボイラと低圧ボイラを有しており、ガスタービン13からの排気ガスにより各ボイラでそれぞれ蒸気を発生させることができる。上述した蒸気タービン15は、排熱回収ボイラ14で発生した蒸気が供給されることで駆動し、連結された発電機25を運転することができる。そして、この蒸気タービン15に供給された蒸気は復水器29に送られて凝縮された後、復水ポンプ30により排熱回収ボイラ14に送られるようになっている。
【0028】
ガス化炉11は、固体燃料としての微粉炭(石炭)を不完全燃焼して未燃ガス(H2,CO,CO2,N2など)を生成するものであり、ガス精製設備12は、ガス化炉11で生成された未燃ガスから浄化処理などを行うことで、不純物を除去して石炭ガスを精製するものである。即ち、ガス化炉11は、ガス化炉本体31と熱交換器(冷却塔)32が隣接して設けられており、ガス化炉本体31に対して搬送空気供給ライン33、酸素供給ライン34、窒素供給ライン35が接続されており、窒素ライン35に微粉炭を供給する供給ホッパ36が設けられている。そして、搬送空気供給ライン33は、基端部に第1昇圧機37が接続され、酸素供給ライン34及び窒素供給ライン35は、基端部に空気分離装置38及び第2昇圧機39が接続されており、第1昇圧機37には、ガスタービン13の圧縮機21からの抽気ライン40が接続されている。
【0029】
また、熱交換器32には、チャー回収装置としてのポーラスフィルタ41が連結され、このポーラスフィルタ41で回収されたチャー(主に、固定炭素と灰分から成る)は、窒素によりチャー回収ライン42からガス化炉本体31に戻される。ガス精製設備12は、第1、第2ガスガスヒータ43,44、COS(硫化カルボニル)変換器45、第3、第4ガスガスヒータ46,47、ガス冷却塔48、ガス洗浄塔49、H2S(硫化水素)吸収塔50、吸収液再生塔51、H2S燃焼炉52、脱硫装置53、熱交換器54などを有している。従って、ガス化炉11で生成された未燃ガスをガス精製設備12の各種装置に通過させることで、自身のもつ熱により硫黄分化合物、窒素化合物、その他の有害物質を除去することができる。
【0030】
そして、ガス精製設備12からガスタービン13の燃焼器22に対して、石炭ガスを供給する石炭ガスライン55が設けられ、この石炭ガスライン55に石炭ガスの供給量を調整する流量調整弁56が装着されている。
【0031】
ここで、上述した複合発電プラントの作動について説明する。ガス化炉11では、ガス化炉本体31に酸素供給ライン34から酸素が供給されると共に、窒素供給ライン35から窒素及び微粉炭が供給されており、内部で微粉炭が燃焼して未燃ガスが生成される。そして、この未燃ガスは、搬送空気供給ライン33からガス化炉本体31に供給された搬送空気により熱交換器32に送給され、ここで冷却されてからポーラスフィルタ41によりチャーが除去され、その後、ガス精製設備12で硫黄分化合物、窒素化合物、その他の有害物質が除去させて石炭ガスが精製される。
【0032】
ガスタービン13では、吸気ライン26を通して圧縮機21に取り込まれた空気が圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、この圧縮空気が燃焼器22に送られると共に、ガス精製設備12で精製された石炭ガスが石炭ガスライン55から燃焼器22に送られ、ここで圧縮空気と石炭ガスの混合気に着火されて燃焼する。この燃焼器22で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン23に送られて図示しない複数の静翼及び動翼を通過することでタービン軸15を駆動回転する。そして、タービン23から排出された排気ガスは、排気ライン27を通って排熱回収ボイラ14に送られ、ここで、高温・高圧の排気ガスにより蒸気を生成する。ここで生成された蒸気は蒸気タービン15に送られ、この蒸気タービン15を駆動することで発電機25を回転駆動して発電を行う。この蒸気タービン15に供給された蒸気は復水器29で凝縮された後、復水ポンプ30により排熱回収ボイラ14に戻される。
【0033】
このように構成された複合発電プラントでは、上述したように、ガス化炉11で微粉炭を燃焼して未燃ガスを生成し、ガスタービン13の圧縮機21から抽気した圧縮空気を第1昇圧機37で昇圧し、この昇圧ガスを搬送空気供給ライン33からガス化炉11に供給することで、ガス化炉11の未燃ガスをガス精製設備12に送って精製し、精製された石炭ガスをガスタービン13に送給している。ところが、複合発電プラントの起動時に、ガス化炉11では未燃ガス(石炭ガス)を直ちに生成することはできず、ガスタービン13の起動時には、石炭ガスに代えて液体燃料(軽油など)を燃焼器22に供給している。このとき、ガスタービン13の圧縮機21から第1昇圧機37への抽気ライン40を閉止し、圧縮機21からの圧縮空気の抽気を停止している。そして、ガス化炉11で未燃ガス(石炭ガス)が生成可能となると、抽気ライン40を開放して圧縮機21から抽気した圧縮空気を第1昇圧機37で昇圧し、この昇圧空気ガス化炉11に送給して石炭ガスをガスタービン13に供給するようにしている。
【0034】
即ち、図1に示すように、ガスタービン13の燃焼器22に対して石炭ガスを供給する石炭ガスライン55と、軽油を供給する軽油ライン61が設けられており、石炭ガスライン55に圧力調整弁62、流量調整弁56、過速遮断弁63が装着される一方、軽油ライン61に圧力調整弁64、流量調整弁65が装着されている。また、ガスタービン13の圧縮機21に対して大気を吸入する吸気ライン26が設けられ、この吸気ライン26にIGV(Inlet Guide Vane)66が装着されている。
【0035】
一方、ガスタービン13の圧縮機21から第1昇圧機37に至る抽気ライン40には、抽気元弁67、第1〜第3抽気空気冷却器68,69,70、IGV71が装着されている。この第1抽気空気冷却器68は、第1昇圧機37からガス化炉11に至る搬送空気供給ライン33を交差することで、抽気空気と昇圧空気との間で熱交換(冷却)可能となっている。第2抽気空気冷却器69は、蒸気タービン15の復水器29からの復水により冷却可能となっている。第3抽気空気冷却器70は、軸冷水(海水)により冷却可能であり、この第3抽気空気冷却器70に対して冷却器バイパスライン72が設けられ、ここにバイパス弁73が装着されている。なお、抽気ライン40から分岐して排気ライン27に接続する抽気バイパスライン74が設けられ、ここにバスパス弁75が装着されている。
【0036】
また、第1昇圧機37からガス化炉11に至る搬送空気供給ライン33にて、第1抽気空気冷却器68の上流側から抽気ライン40における第1、第2抽気空気冷却器68,69の間至る循環ライン76が設けられ、この循環ライン76にアンチサージ弁77が装着されている。更に、搬送空気供給ライン33における第1抽気空気冷却器68の下流側から分岐して大気に連通する排出ライン78が設けられ、この排出ライン78に放風弁79が装着されている。
【0037】
ここで、上述した複合発電プラントの起動時における作動について説明する。図1及び図2に示すように、複合発電プラントの起動時に、ガス化炉11では、ガス化炉本体31に酸素供給ライン34から酸素が供給されると共に、窒素供給ライン35から窒素及び微粉炭が供給され、内部で微粉炭を燃焼することで未燃ガスを生成する。但し、このとき、未燃ガスを直ちに精製できないため、ガス化炉11への第1昇圧機37による搬送空気供給ライン33を通した昇圧空気の供給を停止し、ガスタービン13への石炭ガスの供給を停止している。
【0038】
即ち、抽気元弁67を閉止することで抽気ライン40を閉止し、圧縮機21からの圧縮空気の抽気を停止している。また、第1昇圧機37を起動すると共にアンチサージ弁77を開放することで、抽気ライン40と搬送空気供給ライン33を循環ライン76によりループ状態とし、第1昇圧機37に十分な空気を確保してサージングの発生を防止している。更に、放風弁79を開放することで排出ライン78を開放し、ガス化炉11への空気の供給を停止している。
【0039】
一方、ガスタービン13では、石炭ガスライン55における流量調整弁56を閉止する一方、軽油ライン61の圧力調整弁64、流量調整弁65を所定角度に開放し、ガスタービン13の燃焼器22に対して軽油ライン61から軽油を供給する。そして、吸気ライン26を通して圧縮機21に取り込まれた空気が圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、この圧縮空気が燃焼器22に送られると共に、軽油が軽油ライン61から燃焼器22に送られて噴射されることで、圧縮空気に軽油が混合した混合気が形成され、この混合気に着火されて燃焼する。
【0040】
その後、所定時間が経過してガス化炉11で、未燃ガスを生成可能となると、ガス化炉11への第1昇圧機37による搬送空気供給ライン33を通した昇圧空気の供給を開始し、ガスタービン13への石炭ガスの供給を開始する。即ち、抽気元弁67を開放することで抽気ライン40を開放し、圧縮機21からの圧縮空気の抽気を行う。また、アンチサージ弁77を閉止することで循環ライン76を遮断し、抽気ライン40と搬送空気供給ライン33のループ状態を解除する。更に、放風弁79を閉止することで排出ライン78を閉止し、ガス化炉11への空気の供給を可能とする。すると、圧縮機21の圧縮空気が抽気ライン40を通して第1昇圧機37へ供給され、この第1昇圧機37では、圧縮空気を昇圧し、搬送空気供給ライン33を通してガス化炉本体31に昇圧空気を供給することで、ガス化炉11で生成された未燃ガスをガス精製設備12に送給し、石炭ガスを精製することができる。
【0041】
一方、ガスタービン13では、軽油ライン61における流量調整弁65を閉止する一方、石炭ガスライン55の圧力調整弁62、流量調整弁56を所定角度に開放すると共に、過速遮断弁63を開放し、ガスタービン13の燃焼器22に対して軽油の供給を停止すると共に、石炭ガスライン55から石炭ガスの供給を開始する。すると、吸気ライン26を通して圧縮機21に取り込まれた空気が圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、この圧縮空気が燃焼器22に送られると共に、石炭ガスが石炭ガスライン55から燃焼器22に送られることで、圧縮空気に石炭ガスが混合した混合気が形成され、この混合気に着火されて燃焼する。
【0042】
ところで、上述した複合発電プラントにて、起動後は、ガス化炉11及びガス精製設備12で生成された石炭ガスを石炭ガスライン55からガスタービン13に送給して燃焼する一方、ガスタービン13の圧縮機21から圧縮空気を抽気して第1昇圧機37で昇圧してからガス化炉11に送給することで、この昇圧空気を石炭ガスの搬送空気として使用している。即ち、このとき、抽気ライン40に装着された抽気元弁67は開放状態に保持されている。
【0043】
ところが、この抽気元弁67は、油圧または空気圧により作動可能となっており、油圧漏れや空気圧漏れなどの故障が発生したときには、抽気元弁67が閉止してしまい、第1昇圧機37に圧縮空気が送られずにサージングが発生しまう。そのため、本実施例では、故障により抽気元弁67が閉止してしまうときには、ガスタービン13及び第1昇圧機37を緊急停止すると共に、ガス化炉11やガス精製設備12なども停止するようにしている。そして、この場合、抽気元弁67が故障により徐々に閉止したときに、ガスタービン13及び第1昇圧機37を緊急停止しても、第1昇圧機37はその慣性力により所定時間だけ継続して作動する。そこで、本実施例では、抽気元弁67の開度に応じてガスタービン13を停止する時間を遅延するようにしている。
【0044】
即ち、図1及び図3に示すように、抽気元弁67には、その開度を検出する開度センサ81が設けられており、開度センサ81は、検出した抽気元弁67の開度を異常停止制御装置82に出力し、この異常停止制御手段82は、抽気元弁67の開度に応じて第1昇圧機37及びガスタービン13を停止するようにしている。
【0045】
具体的に説明すると、異常停止制御装置82は異常判定回路(異常判定手段)83を有しており、異常判定回路83は、開度センサ81が検出した抽気元弁67の開度θと複合発電プラントの運転状態に応じて設定された開度指令値θdとの偏差に基づいて抽気元弁67の異常を判定し、この異常判定回路83が抽気元弁67の異常を判定したときには、異常停止制御装置82は、第1昇圧機37を停止すると共に、抽気元弁67の閉止速度に応じたガスタービン13のトリップ遅延時間(停止遅延時間)を設定し、このトリップ遅延時間の経過後にガスタービン13を停止するようにしている。
【0046】
この場合、異常停止制御装置82は、予め抽気元弁67の閉止速度に対するトリップ遅延時間のマップを有している。このマップは、抽気元弁67の閉止速度が速くなるのに伴ってトリップ遅延時間を短く設定するマップであるが、抽気元弁67の閉止速度が所定速度以下である領域では、安全性を考慮してトリップ遅延時間が一定となるように設定している。従って、異常停止制御装置82は、開度センサ81が検出した抽気元弁67の開度θを継続的に読み込むことで抽気元弁67の閉止速度を算出し、算出した抽気元弁67の閉止速度により上述したマップを用いてトリップ遅延時間を設定し、このトリップ遅延時間の経過後にガスタービン13を停止ためのトリップ信号を出力する。
【0047】
また、異常判定回路83が抽気元弁67の異常を判定したとき、異常停止制御装置82は、第1昇圧機37を停止すると共に、アンチサージ弁77を開放して抽気ライン40と搬送空気供給ライン33を循環ライン76によりループ状態とする。更に、放風弁79を開放して排出ライン78を開放する。
【0048】
ここで、上述した異常停止制御装置82による抽気元弁67の異常判定制御について図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0049】
本実施例の複合発電プラントにおける抽気元弁67の異常判定制御において、図4に示すように、ステップS1にて、異常停止制御装置82は、開度センサ81が検出した抽気元弁67の開度θを読み込み、ステップS2にて、抽気元弁67の開度θと開度指令値θdとの偏差の絶対値が開度閾値(例えば、開度指令値θdの10%)θsより大きいかどうかを判定する。このステップS2にて、抽気元弁67の開度θと開度指令値θdとの偏差の絶対値が開度閾値θsより大きいと判定されたときには、開度指令値θdに対して抽気元弁67の開度θが小さく閉止している状態にあるとして、ステップS3で抽気元弁67の異常と判定する。一方、抽気元弁67の開度θと開度指令値θdとの偏差の絶対値が開度閾値θsより大きくないと判定されたときには、ステップS10で抽気元弁67の正常と判定する。
【0050】
ステップS3で抽気元弁67の異常と判定されると、ステップS4では、トリップ遅延時間を設定する。即ち、抽気元弁67の開度θから閉止速度を算出し、この抽気元弁67の閉止速度により前述したマップを用いてトリップ遅延時間を設定する。そして、異常停止制御装置82は、ステップS5にて、第1昇圧機37を停止し、ステップS6にて、アンチサージ弁77を開放し、ステップS7にて、放風弁79を開放する。続いて、ステップS8にて、抽気元弁67の異常が判定されてからトリップ遅延時間が経過したかどうかを判定し、トリップ遅延時間が経過したら、ステップS9にて、石炭ガスライン55の流量調整弁56を閉止することで、ガスタービン13を停止する。なお、抽気元弁67の異常が判定されたとき、ガス化炉11、ガス精製設備12、排熱回収ボイラ14、蒸気タービン15なども停止する。
【0051】
従って、抽気元弁67の異常が検出されたとき、第1昇圧機37を停止してから、抽気元弁67の閉止速度に応じたトリップ遅延時間の経過後に、ガスタービン13を停止することで、慣性力で作動している第1昇圧機37に対して空気を供給し続けることができ、第1昇圧機37のサージングの発生が防止される。そして、このとき、アンチサージ弁77を開放することで、抽気ライン40と搬送空気供給ライン33が循環ライン76によりループ状態となり、抽気元弁67を通った微小の空気を循環することで、第1昇圧機37に十分な空気を確保してサージングの発生が抑制される。また、放風弁79を開放することで、排出ライン78が開放され、停止しているガス化炉11への空気の供給が停止される。
【0052】
このように実施例1の複合発電システムにあっては、微粉炭(石炭ガス)を燃焼してガス化するガス化炉11と、ガス化炉11で生成された未燃ガスから有害成分を除去して石炭ガスを精製するガス精製設備12と、圧縮機21で圧縮した圧縮空気とガス化炉11及びガス精製設備12で生成された石炭ガスの混合気を燃焼器22で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービン23を駆動して発電機25により発電するガスタービン13を設け、圧縮機21から抽気ライン40を通して抽気した圧縮空気を第1昇圧機37により昇圧してガス化炉11へ送給可能とすると共に、この抽気ライン40に抽気元弁67を設け、異常停止制御装置82は、抽気元弁67の開度に応じて第1昇圧機37及びスタービン13を停止するようにしている。
【0053】
従って、異常停止制御装置82は、抽気元弁67の開度に応じて抽気元弁67の異常を判定して第1昇圧機37及びガスタービン13の停止時期を設定することが可能となり、抽気元弁67の故障における第1昇圧機37のサージングを抑制し、安全性を向上することができる。
【0054】
この場合、本実施例では、抽気元弁67の開度を検出する開度センサ81を設け、異常判定回路83は、開度センサ81が検出した開度θと開度指令値θdとの偏差の絶対値が開度閾値θsより大きいときに抽気元弁67の異常を判定し、異常停止制御装置82は、第1昇圧機37を停止すると共に抽気元弁37の閉止速度に応じたトリップ遅延時間を設定し、トリップ遅延時間の経過後にガスタービン13を停止するようにしている。従って、抽気元弁67の異常時に、第1昇圧機37を停止してトリップ遅延時間の経過後にガスタービン13を停止することとなり、第1昇圧機37での空気不足を防止してサージングを確実に抑制することができる。
【0055】
また、実施例1の複合発電システムでは、第1昇圧機37から排出された空気を第1昇圧機の入口側に戻す循環ライン76を設けると共にここにアンチサージ弁77を設け、抽気元弁67の異常時に、異常停止制御装置82は、このアンチサージ弁77により循環ラインを開放している。従って、抽気元弁67の異常時に、第1昇圧機37から排出された空気を循環ライン76により入口側に戻すこととなり、第1昇圧機37での空気不足を防止してサージングを確実に抑制することができる。
【0056】
更に、実施例1の複合発電システムでは、第1昇圧機37から排出された空気を大気に排出する排出ライン78を設けると共にここに放風弁79を設け、抽気元弁67の異常時に、異常停止制御装置82は、この放風弁79により排出ライン78を開放している。従って、抽気元弁67の異常時に、第1昇圧機37から排出された空気を排出ライン78により大気に排出することとなり、第1昇圧機37での空気不足を防止してサージングを確実に抑制することができる。
【実施例2】
【0057】
図5は、本発明の実施例2に係る複合発電システムにおけるガスタービンの燃料供給ライン及び抽気ラインを表す概略図、図6は、実施例2の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定処理の制御ブロック図、図7は、実施例2の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定制御を表すフローチャートである。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0058】
実施例2の複合発電システムでは、図5に示すように、故障により抽気元弁67が閉止してしまうときには、ガスタービン13及び第1昇圧機37を緊急停止すると共に、ガス化炉11やガス精製設備12なども停止するようにしている。そして、この場合、抽気元弁67が故障により徐々に閉止したときに、ガスタービン13及び第1昇圧機37を緊急停止しても、第1昇圧機37はその慣性力により所定時間だけ継続して作動する。そこで、本実施例では、抽気元弁67より上流側の抽気圧力に応じてガスタービン13を停止するようにしている。
【0059】
即ち、図5及び図6に示すように、抽気ライン40における抽気元弁67の上流側には、抽気した圧縮空気の圧力(以下、抽気空気圧)を検出する圧力センサ91が設けられており、圧力センサ91は、検出した抽気ライン40の抽気空気圧を異常停止制御装置82に出力し、この異常停止制御手段82は、抽気ライン40の抽気空気圧に応じて第1昇圧機37及びガスタービン13を停止するようにしている。
【0060】
具体的に説明すると、異常停止制御装置82は異常判定回路(異常判定手段)92を有しており、異常判定回路92は、圧力センサ91が検出した抽気ライン40を流れる抽気空気圧Pと複合発電プラントの運転状態に応じて設定された上限値Psとの偏差に基づいて抽気元弁67の異常を判定し、この異常判定回路92が抽気元弁67の異常を判定したときには、異常停止制御装置82は、第1昇圧機37及びガスタービン13を停止するようにしている。
【0061】
また、異常判定回路92が抽気元弁67の異常を判定したとき、異常停止制御装置82は、第1昇圧機37を停止すると同時に、アンチサージ弁77を開放して抽気ライン40と搬送空気供給ライン33を循環ライン76によりループ状態とする。更に、放風弁79を開放して排出ライン78を開放する。
【0062】
ここで、上述した異常停止制御装置82による抽気元弁67の異常判定制御について図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0063】
本実施例の複合発電プラントにおける抽気元弁67の異常判定制御において、図7に示すように、ステップS11にて、異常停止制御装置82は、圧力センサ91が検出した抽気ライン40の抽気空気圧Pを読み込み、ステップS12にて、抽気空気圧Pが上限値Psより大きいかどうかを判定する。このステップS12にて、抽気空気圧Pが上限値Psより大きいと判定されたときには、抽気ライン40における抽気元弁67よりも上流側の圧力が高くなって抽気元弁67が閉止している状態にあるとして、ステップS13で抽気元弁67の異常と判定する。一方、抽気空気圧Pが上限値Psより大きくないと判定されたときには、ステップS18で抽気元弁67の正常と判定する。
【0064】
ステップS13で抽気元弁67の異常と判定されると、ステップS14にて、第1昇圧機37を停止し、ステップS15にて、アンチサージ弁77を開放し、ステップS16にて、放風弁79を開放する。続いて、ステップS17にて、石炭ガスライン55の流量調整弁56を閉止することで、ガスタービン13を停止する。なお、抽気元弁67の異常が判定されたとき、ガス化炉11、ガス精製設備12、排熱回収ボイラ14、蒸気タービン15なども停止する。
【0065】
従って、抽気元弁67の異常が検出されたとき、抽気空気圧が高い状態で、第1昇圧機37及びガスタービン13を停止することで、慣性力で作動している第1昇圧機37に対して空気を供給し続けることができ、第1昇圧機37のサージングの発生が防止される。そして、このとき、アンチサージ弁77を開放することで、抽気ライン40と搬送空気供給ライン33が循環ライン76によりループ状態となり、抽気元弁67を通った微小の空気を循環することで、第1昇圧機37に十分な空気を確保してサージングの発生が抑制される。また、放風弁79を開放することで、排出ライン78が開放され、停止しているガス化炉11への空気の供給が停止される。
【0066】
このように実施例2の複合発電システムにあっては、抽気ライン40における抽気元弁67より上流側の抽気空気圧Pを検出する圧力センサ91を設け、異常判定回路92は、圧力センサ91が検出した抽気空気圧Pが上限値Psより大きいときに抽気元弁67の異常を判定し、異常停止制御装置82は、第1昇圧機37を停止すると共にガスタービン13を停止するようにしている。
【0067】
従って、異常停止制御装置82は、抽気元弁67の異常時に、抽気元弁67より上流側の抽気圧力Pが上限値Psより高くなった状態で、第1昇圧機37及びガスタービン13を停止することとなり、ガスタービン13が停止しても圧縮機21から第1昇圧機37への抽気が可能となり、この第1昇圧機37での空気不足を防止してサージングを確実に抑制することができる。
【0068】
なお、上述したこの実施例2では、抽気ライン40における抽気元弁67より上流側の抽気空気圧Pを検出する圧力センサ91を設けたが、装着位置は限定されるものではなく、ガスタービン13の圧縮機から抽気ライン40の抽気元弁67までの間に設ければよく、圧縮機21の車室圧であっても良い。
【0069】
また、上述した各実施例では、複合発電システムをガス化炉11とガス精製設備12とガスタービン13と排熱回収ボイラ14と蒸気タービン15により構成したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、排熱回収ボイラ14を排気再熱ボイラとしたり、過給ボイラ、給水加熱ボイラなどとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る複合発電システム及び複合発電システムの運転方法は、抽気元弁の異常時に昇圧機及びガスタービンの停止時期を最適化してサージングを防止するものであり、いずれの種類の複合発電システム及びその運転方法にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施例1に係る複合発電システムにおけるガスタービンの燃料供給ライン及び抽気ラインを表す概略図である。
【図2】実施例1の複合発電システムの概略構成図である。
【図3】実施例1の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定処理の制御ブロック図である。
【図4】実施例1の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定制御を表すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例2に係る複合発電システムにおけるガスタービンの燃料供給ライン及び抽気ラインを表す概略図である。
【図6】実施例2の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定処理の制御ブロック図である。
【図7】実施例2の複合発電システムにおける抽気元弁の異常判定制御を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
11 ガス化炉
12 ガス精製設備
13 ガスタービン
14 排熱回収ボイラ(HRSG)
15 蒸気タービン
21 圧縮機
22 燃焼器
23 タービン
24 タービン軸
25 発電機
33 搬送空気供給ライン
37 第1昇圧機
40 抽気ライン
55 石炭ガスライン
56 流量調整弁
61 軽油ライン
67 抽気元弁
76 循環ライン
77 アンチサージ弁
78 排出ライン
79 放風弁
81 開度センサ
82 異常停止制御装置(異常停止制御手段)
83 異常判定回路(異常判定手段)
91 圧力センサ
92 異常判定回路(異常判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料または液体燃料をガス化するガス化炉と、圧縮機で圧縮した圧縮空気と該ガス化炉で生成したガスの混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電するガスタービンと、前記圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧して前記ガス化炉へ送給する昇圧機と、前記圧縮機と前記昇圧機との抽気ラインに設けられた抽気元弁とを具えた複合発電システムにおいて、前記抽気元弁の開度または該抽気元弁より上流側の抽気圧力に応じて前記昇圧機及び前記ガスタービンを停止する異常停止制御手段が設けられたことを特徴とする複合発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の複合発電システムにおいて、前記抽気元弁の開度を検出する開度センサと、該開度センサが検出した開度と開度指令値との偏差に基づいて前記抽気元弁の異常を判定する異常判定手段を設け、該異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記昇圧機を停止すると共に前記抽気元弁の閉止速度に応じた停止遅延時間を設定し、該停止遅延時間の経過後に前記ガスタービンを停止することを特徴とする複合発電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の複合発電システムにおいて、前記抽気元弁より上流側の抽気圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサが検出した圧力が予め設定された圧力上限値より高くなったときに前記抽気元弁の異常を判定する異常判定手段を設け、該異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記昇圧機及び前記ガスタービンを停止することを特徴とする複合発電システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の複合発電システムにおいて、前記昇圧機から排出された昇圧空気を該昇圧機の入口側に戻す循環ラインを設け、前記異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記循環ラインを開放することを特徴とする複合発電システム。
【請求項5】
請求項2または3に記載の複合発電システムにおいて、前記昇圧機から排出された昇圧空気を大気に排出する排出ラインを設け、前記異常判定手段が前記抽気元弁の異常を判定したときに、前記異常停止制御手段は、前記排出ラインを開放することを特徴とする複合発電システム。
【請求項6】
固体燃料または液体燃料をガス化するガス化炉と、圧縮機で圧縮した圧縮空気と該ガス化炉で生成したガスの混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電するガスタービンと、前記圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧して前記ガス化炉へ送給する昇圧機と、前記圧縮機と前記昇圧機との抽気ラインに設けられた抽気元弁とを具えた複合発電システムにおいて、前記抽気元弁の開度と開度指令値との偏差が予め設定された基準値より大きいときに前記抽気元弁の異常を判定し、該抽気元弁の異常判定時に、前記昇圧機を停止すると共に、該抽気元弁の閉止速度に応じた設定された停止遅延時間の経過後に前記ガスタービンを停止することを特徴とする複合発電システムの運転方法。
【請求項7】
固体燃料または液体燃料をガス化するガス化炉と、圧縮機で圧縮した圧縮空気と該ガス化炉で生成したガスの混合気を燃焼器で燃焼して発生した燃焼ガスによりタービンを駆動して発電するガスタービンと、前記圧縮機から抽気した圧縮空気を昇圧して前記ガス化炉へ送給する昇圧機と、前記圧縮機と前記昇圧機との抽気ラインに設けられた抽気元弁とを具えた複合発電システムにおいて、前記抽気元弁より上流側の抽気圧力が予め設定された圧力上限値より高くなったときに前記抽気元弁の異常を判定し、該抽気元弁の異常判定時に、前記昇圧機及び前記ガスタービンを停止することを特徴とする複合発電システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−162627(P2007−162627A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362225(P2005−362225)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】