説明

複数の色彩の発光体による光学式認識データの表示方法及びマーキング方法、並びに発光デバイス、並びにデータ及び位置検出方法

【課題】離間した被印物の位置を測定し、その対象物が自動認識データを表示することを可能にする技術を提供する。
【解決手段】所定のR(赤)の発光体、G(緑)の発光体、Bの発光体、これらの点灯状態を制御する制御装置、とを含む発光デバイスを被印物に取り付け、所定の発光パターンで発光させる。発光パターンは所定の記憶手段に格納しておく。この発光パターンは、時間軸に沿って色彩が変化することによって所望のデータを表す時間変化型光学式認識コードを形成する。この結果、従来の複数の色彩を多数並べて構成する2次元的な光学式認識コードと比較して、小面積で光学式認識コードを実現している。また、CCDカメラ等でこの発光デバイスを撮像することによって、その発光デバイスの位置、すなわち被印物の位置を知ることができる。この動作を継続的に行えば、被印物の動きの追尾が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間軸で推移する所定の発光様式(発光パターン)を定め、送り手(発光側)から受け手(キャプチャ側)に対して、所定の発光体をその発光様式によって発光させ、その発光様式によって定められるデータを送る方法に関する。
【0002】
また、本発明は、物体に取り付けられた発光体を所定の発光様式に基づいて発光させ、その物体に特有のID等を示すことを実現する光学的自動認識技術分野、及び、光学的な通信の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
物品(被印物と呼ぶ)にID等の所定のデータを付す用途は数多く存在する。古典的にはバーコードなどの光学的自動認識コードが広く用いられているが、近年、電磁波を用いたRFIDなども利用されている。光学式認識コードは、光学的に所定のマークを読み取り原データを得るものであり、視覚的に見える範囲にコードが存在すればデータを読み取ることができる。また、RFIDは、電磁波で、RFIDから原データを読み取るものであり、RFIDが視覚的に陰になっていても読み取ることができるという特徴がある。
【0004】
さて、例えば商店等で用いられる販売時点情報管理(POS)システムでは、商品に光学的自動認識コードを用いたものが一般的である。この光学的自動認識コードとしては、上述したバーコードやカラーバーコードが用いられる。バーコードは、白バーと黒バーの2色からなるコードである、有彩色も含めてより多くの種類の色彩(赤、青、黄など)を利用した光学式認識コードが種々提案されている。
【0005】
本発明の発明者も、特許出願(特願2006−196705号等)で「1Dカラービットコード」と呼ぶカラーバーコードを提案している。
【0006】
用語
有彩色を含めた光学式認識コードをここでは、便宜上、「カラーバーコード」と呼ぶ。また、単に「バーコード」と言う場合は、白バーと黒バーの古典的なバーコードを表すものとする。
【0007】
光学式認識コードは、一般に対象物そのものや、その容器・包装等に付される場合が多い。この付す行為を「マーキング」と呼ぶ。
【0008】
マーキングを行ってそのマークを具現化している物体・手段を、一般に「媒体」と呼ぶ。例えば、対象物に光学式認識コードをマーキングする際に用いる「インク」が媒体の好適な一例である。また、対象物が衣類等の場合は、厚紙の「タグ」等が用いられ、そのタグにバーコードなどの光学式認識コードが表されていることも多い。この場合は、その「タグ」が媒体の好適な一例となる。また、対象物を特に「被印物」と呼ぶ場合もある。特に、従来、バーコードは印字によってマーキングされる場合が多かったので、対象物を「バーコードが印字される物」(=被印物)として認識する場合が多かったことに由来する。
【0009】
光以外の例
光学式認識コードは、「光」を用いてデータを表示しているが、他の物理的手段を用いてデータを表す手段も知られている。
【0010】
例えば、RFIDのように、電波を使用した自動認識手段なども開発され、実用化されてきている。このRFIDを用いた例としては、例えば鉄道の非接触ICカード乗車券などが知られている。
【0011】
通信の例
また、データを「表示」する技術と関連する技術として、データ「通信」技術の分野が存在する。このデータ通信技術の観点に立てば、さらに他の物理的手段を用いた例が多く知られている。
【0012】
例えば、光学式認識コードと同様に光を用いた手段として、光ファイバを用いた光通信が知られている。また、単に「光」と言っても、赤外光、レーザー光、可視光など種々の光を媒介とした通信手段が知られている。
【0013】
位置の把握
ところで、光学式認識コードを、データの「表示」だけでなく、対象物の「位置」を把握する用途にも用いることが従来から知られている。
【0014】
例えば以下の先行技術文献(特許文献1、特許文献2)に記載されているように、赤外線を媒介とした位置計測・データ通信システムが挙げられる。
【0015】
先行技術文献
下記特許文献1には、位置表示用の発光部材とデータ送信用の発光部材とを設け、撮像手段によりそれらの発光状態を撮影し、その画像から位置計測を行い、発光部材の明滅によってデータ通信を行う位置計測・データ通信システムが開示されている。
【0016】
また、下記特許文献2には、マーカーと個体識別コード出力手段とを設け、個体識別コードを赤外線・電磁波等によって送信し、この個体識別コード送信と同時に、マーカー輝度/色相を所定のパターンで変化させることにより、個体識別コードの受信と同時に個体の位置を判定する位置検出システムが開示されている。
【0017】
【特許文献1】特開2001−208511号公報
【特許文献2】特開2004−226227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
位置の把握を実現するために
(1)まず、バーコードやカラーバーコードのように、自動認識手段として光学技術を使うものは、コードシンボルの位置を把握することによって対象の位置は把握できる。
【0019】
しかしながら、コードをマーキングするためには、対象物の表面上にある程度の面積を確保することが必要である。また、キャプチャされたコードシンボルの画像にボケが生じた場合や、マーキング面の向きなどが変化した場合には、そのコードを読み取れない場合も想定される
(2)また、電波を用いたRFIDを利用する場合には、光学技術を用いる場合に比べて、対象の位置の自由度は大であるが、そのため、その対象の位置を正確に特定するのは技術的に容易ではない場合が多い。実際の用途では、読み取り機を多数備えて、どの読み取り機で読み取れたかを知り、その位置から対象物の位置を推定することが行われている。そのため、「あの陳列棚にある」等の大雑把な位置特定しかできない場合が多く、その精度も余り高いものではなかった。
【0020】
(3)また、通信手段として、赤外線やレーザー光などの光を使用するものは、本来的にデータの送信・受信を念頭に置いたものであり、光を発する対象(発信体)の位置を正確に把握することが一般に困難である。
【0021】
しかしながら、ある物体が遠方にある場合や、物体の動きが激しい場合、等に置いて、位置を特定するために結局その物体を追跡する必要性がしばしば生じる。さらに、そのような追跡の必要がある場合は、その追跡対象が「追跡対象」であることを認識する必要が一般にはある。
【0022】
例えば、飛行機を追跡する場合、その飛行機が追跡対象であるABC0123便であることを何らかの手段で知る必要があり、且つ、その知った飛行機の位置を追跡する必要がある。
【0023】
(4)上で述べたように、何か物体を追跡するという場合に必要となる情報を厳密に述べれば、
(a)その物体が「何であるのか」を表す情報と、
(b)その物体の「位置」を表す位置情報と、
の2種の情報となることが非常に多い。
【0024】
これら2種の情報を得るために、古典的には、例えば、電波を用いた通信等で飛行機の情報を知り、レーダーやテレビカメラ等でその飛行機の位置を確認するという手法が比較的多く用いられてきた。飛行機と飛行機との間隔が十分に広ければ、これでも十分な精度で飛行機を追跡できよう。
【0025】
また、RFID等を用いた場合は、物体の位置は大雑把にしかわからないが、物体の種類や数が少ない場合は、位置の特定を誤ることは比較的少ないと考えられる。
【0026】
従って、対象となる物体の数が少なく、それらの間隔が十分に開いていれば従来の手法でも追跡をすることは可能であった。
【0027】
しかしながら、物体が非常に遠方にある場合や、その物体の動きが激しい場合、にその物体を追跡することは従来の技術では困難な場合がしばしば生じた。
【0028】
(5)さらに、物流の分野においても、物流の速度の向上に伴い、非常に他種類の物品がコンベアの上を流れることも珍しくなくなってきている。このような場合には従来の古典的なバーコードでは読み取りが困難であるので、上述のように、RFIDが使用されつつある。
【0029】
しかし、RFIDでは、どの対象物を読み取っているのか大雑把にしかわからないため、対象物の移動速度が極めて速い場合は、どの対象物の情報を読み取っているのか不明となりがちであり、結局、対象物の移動速度をそれほど上げることはできない場合も想定される。この欠点を解消すべく、なるべく同種類の対象物だけをまとめて流す等の工夫が必要であったが、いずれにしても、RFIDを用いたシステムのボトルネックとなりがちであった。
【0030】
このように、物流の分野においても、対象物を追跡してその位置を特定しつつ、その内容を知ることができる技術が広く求められている。
【0031】
(6)また、電波ではなく、光学的な技術で物体を追跡する場合には、まずその物体を撮影しキャプチャ画像を得て、そのキャプチャ画像に対して複雑な処理を行う必要がある。しかし、その処理の結果得られる物体の位置情報及びその物体を特定する情報の精度は限定的であることが多かった。
【0032】
(7)従って、対象物の位置を把握し、またその対象物を特定できる新たな技術が広く切望されていたが、有望な手法は未だ見いだされていない。
【0033】
(8)本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学的に対象を特定し、その位置を容易に特定でき、且つ、その対象の動きを容易に追尾することが可能な自動認識データの表示方法、及び、その自動認識データを表示する装置その他の関連技術を提供することである。
【0034】
(9)また、本発明は、被印物上に光学式認識コードをマーキングするための大きな面積を必要としない技術を実現することを目的とする。
【0035】
特に、大きな面積が必要になると、光学式認識コードを撮像する場合、光学式認識コードを表示する媒体を大きく撮影する必要が生じ、被印物が複数存在する場合や、被印物が移動している場合の追尾等を行う際に、自由度が減少してしまう恐れがある。
【0036】
そこで、撮像した場合に画像上大きな面積が占めないより小さな媒体で光学式認識コードをマーキングできることが好ましい。
【0037】
後述するように、この目的を実現するために、本発明は、時間軸で色彩が変化する新しい光学式認識コードを提案するものである。具体的な内容は、後の実施の形態等において詳述する。
【課題を解決するための手段】
【0038】
具体的には、本発明は、以下のような手段を採用する。
【0039】
(1)本発明は、上記課題を解決するために、第1の色彩を発光する第1の発光体と、第2の色彩を発光する第2の発光体と、第3の色彩を発光する第3の発光体と、所定の発光パターンで前記第1、第2及び第3の発光体をそれぞれ点灯/消灯させる制御手段と、を含み、前記発光パターンで所定のデータを表示することを特徴とする発光デバイスである。
【0040】
(2)また、本発明は、上記課題を解決するために、第1から第nまでの色彩をそれぞれ発光する第1から第nまでのn種の発光体と、所定の発光パターンでn種の前記第1から第nまでの発光体それぞれ点灯/消灯させる制御手段と、を含み、前記発光パターンで所定のデータを表示することを特徴とする発光デバイスである。ここで、前記nは、2以上の整数である。
【0041】
(3)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)又は(2)記載の発光デバイスにおいて、前記発光パターンは、その色彩の変化・遷移・点灯点滅の順番によってデータを表示することを特徴とする発光デバイスである。
【0042】
(4)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)又は(2)記載の発光デバイスにおいて、前記発光パターンは、その色彩によってデータを表示することを特徴とする発光デバイスである。
(5)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)又は(2)記載の発光デバイスにおいて、前記発光パターンは、一度にたかだか1色のみの点灯状態が変化することを特徴とする発光デバイスである。
【0043】
(6)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)又は(2)記載の発光デバイスにおいて、前記発光パターンは、常に、少なくともいずれか1個以上の前記発光体が点灯状態であり、全ての前記発光体が同時に消灯状態とはならないことを特徴とする発光デバイスである。
【0044】
(7)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)又は(2)記載の発光デバイスにおいて、前記発光パターンは、前記所定のデータを表す単位パターンと、前記単位パターンの境界を示す余白パターンと、を含むことを特徴とする発光デバイスである。
【0045】
(8)また、本発明は、上記課題を解決するために、(7)記載の発光デバイスにおいて、前記余白パターンは、常に、少なくともいずれか1個以上の前記発光体が点灯状態であり、全ての前記発光体が消灯状態とはならないことを特徴とする発光デバイスである。
【0046】
(9)また、本発明は、上記課題を解決するために、(8)記載の発光デバイスにおいて、前記余白パターンは、いずれかの前記発光体が常に点灯状態であることを特徴とする発光デバイス。
【0047】
(10)また、本発明は、上記課題を解決するために、(9)記載の発光デバイスにおいて、前記余白パターンは、常に点灯状態である前記発光体以外のいずれかの発光体が、所定のタイミングで点灯/消灯を繰り返すことを特徴とする発光デバイスである。
【0048】
(11)また、本発明は、上記課題を解決するために、(7)記載の発光デバイスにおいて、前記単位パターンは、前記単位パターンの開始を表すスタートパターンと、前記単位パターンの終了を表すエンドパターンと、を含み、前記単位パターンは、前記スタートパターンから開始し、前記エンドパターンで終了することを特徴とする発光デバイスである。
【0049】
(12)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)又は(2)記載の発光デバイスにおいて、前記発光パターンは、前記発光体の点灯/消灯のタイミングが予め定められたタイミングであることを特徴とする発光デバイスである。
【0050】
(13)また、本発明は、上記課題を解決するために、(12)記載の発光デバイスにおいて、前記発光体の点灯/消灯のタイミングの間隔は、短い周期から、長い周期へ変化していき、この変化を順次繰り返すことを特徴とする発光デバイスである。
【0051】
(14)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)記載の発光デバイスにおいて、前記第kの発光体は、第kの色彩を発光する1個又は複数個の小発光体からなることを特徴とする発光デバイスである。ここで、前記kは、1から3までの整数である。
【0052】
(15)また、本発明は、上記課題を解決するために、(2)記載の発光デバイスにおいて、前記第kの発光体は、第kの色彩を発光する1個又は複数個の小発光体からなることを特徴とする発光デバイス。ここで、前記kは、1からnまでの整数である。
【0053】
(16)また、本発明は、上記課題を解決するために、(14)又は(15)記載の発光デバイスにおいて、前記第kの色彩を発光する1個又は複数個の小発光体は、それら相互の位置が固定又は準固定であることを特徴とする発光デバイスである。
【0054】
ここで、準固定とは実施の形態において後述するように、ロープ等で結びつけられる等のように、ある程度自由度がある範囲で結びつけられる等の状態を言い、完全に「固定」されて動かせない状態とは区別するために準固定と呼んでいる。
【0055】
(17)また、本発明は、上記課題を解決するために、(1)又は(2)記載の発光デバイスにおいて、前記発光体は、それら相互の位置が固定又は準固定であることを特徴とする発光デバイスである。
【0056】
(18)本発明は、上記課題を解決するために、(1)〜(17)のうち、いずれか1項に記載の発光デバイスを用いて、時間軸に沿って色彩が変化する光学式認識コードを被印物にマーキングする方法において、前記発光デバイスを被印物上に配置する配置ステップと、前記発光デバイスに所定の発光パターンで発光させる発光ステップと、を含み、前記発光体の発する光が、所定のデータを表す光学式認識コードを形成することを特徴とする光学式認識コードマーキング方法である。
【0057】
(19)また、本発明は、上記課題を解決するために、(18)記載の光学式認識コードマーキング方法において、前記発光デバイスは、外部から入力した発光パターンを記憶する記憶手段、を含み、前記制御手段は、この記憶手段が記憶する発光パターンに従って、前記発光体の発光状態を変化させて前記光学式認識コードを表示することを特徴とする光学式認識コードマーキング方法である。
【0058】
(20)本発明は、上記課題を解決するために、(1)〜(17)のうち、いずれかに記載の発光デバイスを用いて、時間軸に沿って色彩が変化する光学式認識コードを表示する表示方法において、前記発光デバイスは、外部から入力した発光パターンを記憶する記憶手段、を含み、前記制御手段は、この記憶手段が記憶する発光パターンに従って、前記発光体の発光状態を変化させて前記光学式認識コードを表示することを特徴とする光学式認識コード表示方法である。
【0059】
(21)本発明は、上記課題を解決するために、(1)〜(17)のうち、いずれかに記載の発光デバイスを被印物に取り付け、この発光デバイスが表す光学式認識コードを用いて、前記被印物の位置を認識するデータ及び位置検出方法において、表示する光学式認識コードを表示している前記発光デバイスを含む画像を撮像するステップと、前記撮像した画像から、前記光学式認識コードを認識し、その位置を求めるステップと、前記認識した光学式認識コードを読み取り、前記光学式認識コードが表すデータを復元する読み取りステップと、を含み、前記光学式認識コードがマーキングされている被印物の位置と、前記光学式認識コードが表すデータとを、を得るデータ及び位置検出方法である。
【発明の効果】
【0060】
以上述べたように、本発明によれば、離れた対象物の位置を把握し、その被印物に関する自動認識データを認識することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、上記課題を解決するためになされた実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0062】
第1 概要・原理
本実施の形態においては、発光体を対象物に付して、この発光体が発する光の発光パターンで、その対象物に関する自動認識データを表示するとともに、その対象物の位置をも特定する例を説明する。
【0063】
(1)まず、3つの異なる色彩の光を所定のパターンで明滅させる3種の発光体を対象物上に配置する。この動作は、発光体配置ステップとも呼ぶ。
【0064】
本実施の形態において、3種の発光体は、赤色に発光するLED(以下、Rと記す)、緑色に発光するLED(以下、Gと記す)、青色に発光するLED(以下、Bと記す)、である。
【0065】
これらの3種のLEDは、小型の発光手段であって、容易に入手することができるものである。本実施の形態においては、これらのLED(発光体)が発する3色の光(赤色の光、緑色の光、青色の光)によって自動認識データを表現する。
【0066】
また、これらの3種のLEDには、集積回路やプログラム等から構成される制御装置が備えられている。この制御装置は、LEDを制御し、所定の発光パターンを表示する。本実施の形態では、1個の制御装置が3種のLEDの制御を全て行う。しかし、各LED毎に制御装置をそれぞれ設け、それらの間でしかるべき手段によって同期をとる(明滅のタイミングを合わせる)ように構成することも好適である。
【0067】
本実施の形態では、上述した3種のLED(発光体)と、上記制御装置と、所定の小型の乾電池等の電源と、から、所定の発光パターンを表示する発光デバイス(発光ユニットとも呼ぶ)が構成されている。
【0068】
(2)次に、この3種の発光体を所定の発光明滅パターンに基づいて明滅させる(発光ステップ)。この動作を発光ステップとも呼ぶ。
【0069】
これらの処理(発光体配置ステップ、発光ステップ)によってその対象物に関して自動認識データを表示させる。
【0070】
発光パターンの記憶
なお、制御装置は、発光パターンを記憶するための記憶手段が備えられているものとする。この記憶手段には、予め発光パターンを記録しておくことも好ましいし、外部から所定の発光パターンを書き込むことができるように構成することも好ましい。
【0071】
発光パターン
本実施の形態において、3種のLED(発光体)は、時間と色彩によって定義された発光パターン10に基づいて明滅する。図1には、この発光パターン10の説明図が示されている。
【0072】
点滅について
なお、本実施の形態において、点滅とは、1個の発光体が点灯/消灯を行う動作を言う。また、明滅とは、これに加えて中間的な明るさまで含めた明るさの変化を伴う動作を言う。すなわち、明滅は、点滅を含む概念である。
【0073】
本実施の形態では、説明をわかりやすくするために、点滅の例を主として示すが、中間的な明るさも含めて発光パターンとすることも好適である。この場合を含めるために、「明滅」の言葉を使用する。
【0074】
さて、図1に示されるように、発光パターン10は2次元のタイムチャートによって表される。このタイムチャートの縦軸は3種の色彩(赤、青、緑)を表し、横軸は時間(の経過)を表す。
【0075】
縦軸は、各色彩を表す3個の段に区分けされている(図1参照)。最上段は、赤の発光パターン13rを表す。図1に示すように、この発光パターン13rは、期間t0においては消灯であり、期間t1、t2、t3、〜t11において点灯である。なお、このように本実施の形態では、t0、t1等は所定の期間を表す。
【0076】
従って、Rは、期間t1から期間t11までの間点灯する。以下、図1に示すパターンに従って、Rは時間t12〜t41の間、点灯/消灯を繰り返す。
【0077】
また、この図1の発光パターン10の縦軸の中段にはGの発光パターン13gが示され、また最も下部の段にはBの発光パターン13bが示されている。
【0078】
明滅、点滅
本実施の形態では、「点滅」を、点灯と消灯とを表す言葉として用いている。すなわち、明るさ0%と100%を表す。これに加えて、中間的な明るさ(50%など)の変化まで含めて「明滅」と呼んでいる。すなわち、明滅とは点滅を含む言葉として用いている。
【0079】
時間変化型光学式認識コード
本実施の形態において特徴的なことは、この発光パターンが光学式認識コードを形成していることである。特に特徴的なことは、本実施の形態のこの光学式認識コードは、時間軸で色彩が変化するコードであることである。これを、ここでは、時間変化型光学式認識コードと呼ぶ。
【0080】
従来の光学式認識コードは、いわば「空間上」で種々の色彩を配置したものである。実際には、ここで言う空間は、1次元又は2次元である場合が多く、平面(2次元)上で所定の色彩を(1次元的に又は2次元的に)並べたものが従来の光学式認識コードである。つまり、空間上の位置に応じて色彩が変化していき、この変化していく色彩によってデータが表現されている。
【0081】
これに対して、本実施の形態の上記時間変化型光学式認識コードは、時間の経過に従って所定のパターンで色彩が変化していき、この変化パターンでデータが表現されている。
【0082】
このような時間変化型光学式認識コードは、空間的に色彩が変化するのではなく、時間的に変化するため、光学式認識コードの物品状に占める面積が少なくて済むという特徴を有する。
【0083】
一方、従来の光学式認識コードが空間的に色彩を「並べる」必要があることから、そのコードを対象物に付する(マーキングする)ために一定の面積が必要であった。しかし、本実施の形態の時間変化型光学式認識コードにおいては、時間と共に色彩が変化するので、一般に、対象物上の専有面積が少なくて済む。
【0084】
この図1に示される発光パターン10は、本発明の発明者が別途出願した特許出願特願2006−196705号に記載の「1.5D色彩配列コード」の規則に習って作成されたコードである。
【0085】
この「1.5D色彩配列コード」は2次元平面上のコードであり、これを時間軸上のコードに変換したものが図1に示すパターンである。図1に示すパターンをそのまま平面上に表現すれば、それが「1.5D色彩配列コード」である。
【0086】
このように、本実施の形態においては、発光パターンを、時間の経過と、色彩の種類とを軸とする2次元のタイムチャート上に表現し、それを「1.5D色彩配列コード」の規則に基づき、所定のデータを表現したものである。
【0087】
なお、具体的な規則は、以下のとおりである。
【0088】
(a)各期間の途中では、色彩は変化せず、期間の境界で色彩が変化する。
(b)R、G、Bのうち、上記区切りにおいては、必ずたかだか1色のみが変化する(つまり、2色又は3色が同時に変化することはない) 。
【0089】
(c)発光パターンを表示する最中に、R、G、Bの全てが同時に消えることはない。
【0090】
また、この図1に示されるように、本実施の形態においては、この発光パターン10は、「単位パターン」と「余白パターン」とから構成される。
【0091】
まず、「単位パターン」とは、単一の自動認識データを表す部分である。1つの「単位パターン」は、上述した期間の数によって規定されている。特願2006−196705号の記載に習えば、これはモジュールに相当する。この期間の数とは、すなわち、色彩の点灯状態の変化の回数と実質的に同意である。
【0092】
この単位パターンを連続して表示したのではその切れ目が不明瞭となりがちなので、間に余白を入れている。これが、「余白パターン」であり、各「単位パターン」の間に設けられている。
【0093】
一般に、1回の単位パターンの「発光」だけでは、データの表示として足りないので、通常は、その単位パターンを何度も繰り返して表示することになる。この場合に各単位パターンの切れ目を明確にするために、余白パターンを挿入する。
【0094】
そこで、本実施の形態では、それぞれの「単位パターン」の区切りとして、「単位パターン」の間に、一定のパターンで「余白パターン」を設けている。
【0095】
また、同一の単位パターンだけでなく、複数種の「単位パターン」を連続して織り交ぜて表示した場合も同様に、余白パターンを挿入する。
【0096】
本実施の形態においては、この「余白パターン」の発光パターンは、「必ずR、G、Bのいずれかが発光している」という規則を満たせば良いものと定めている。なお、本実施の形態においては、この「余白パターン」を「余白部分」とも呼んでいる。
【0097】
この規則を満たせば、どのようなパターンでも余白パターンとして用いることができる。
【0098】
もし、「余白パターン」の発光パターンが、所定の期間において全ての発光体が消灯する場合を含む場合には、その消灯の前後で、その発光パターンが同一の(対象物の)発光パターンであるか否かを識別することが困難になるからである。これを回避するために、「余白パターン」において上述のように、R、G、Bのうち少なくとも1つを点灯させ続けることが有効である。
【0099】
そこで、本実施の形態における発光パターン10においては、Rが常時点灯し、Gが明滅を繰り返す余白パターンを採用した。このことが図1の発光パターン10に示されている。
【0100】
一方、「単位パターン」の発光パターンにおいても、上の段落で述べたようなことを回避するために、常に少なくとも1つの発光体が点灯している(上述した規則c)。そこで、本実施の形態においては、常に少なくとも1つの発光体が点灯し、上述した1.5D色彩配列コードの規則に基づく発光パターンを作成した。
【0101】
なお、「1.5D色彩配列コード」においては、各「期間」の長さについては特に規定はない。本実施の形態でもR、G、Bの発光時間(期間)は自由に設定することができる。表現する自動認識データは、発光体の明滅の順番・変化・遷移のみに基づいて表され、各色彩の発光期間(の長さ)には直接関係ない。この結果、本実施の形態においては、単に色彩の変化のみを検出すれば、原データを復元することができる。
【0102】
このように、基本的に「期間」の長さについては特段の規定を設けない体系を採用しているので、上記余白パターンも単に「点灯した状態を所定期間続けたもの」とはせずに、所定の期間で、明滅を繰り返す「パターン」を採用したものである。
以上述べたように、本実施の形態においては、「単位パターン」を1.5D色彩配列コードの規則に基づいた発光パターンで定め、「余白パターン」についてもまた上述したような所定の期間で、明滅を繰り返す「パターン」を採用したものである。
【0103】
なお、「余白パターン」に対して、上述したような発光パターンを定めた場合、「単位パターン」において、この余白パターンと同一の発光パターンを含まないような発光パターンを作成することが好適である。
また、本実施の形態において時間変化型光学式認識コードを認識するための認識手段は、少なくともキャプチャカメラと、画像処理等を行うコンピュータシステムと、から構成される自動認識データの読み取り装置で構成することが好ましい。
【0104】
単位パターン
なお、単位パターンは、所定の予め定められたスタートパターンと、同じく予め定められたエンドパターンとを備えている。スタートパターンは、単位パターンの開始を表し、エンドパターンは、単位パターンの終了を表す。これらのスタートパターン、エンドパターンによって、読み取り手段等は、単位パターンの開始、終了を知ることができる。
【0105】
第2 発光体R、G、Bの配置
本実施の形態において発光体R、G、Bの配置(レイアウト)は、認識手段に対して発光体R、G、Bの光を呈示することができれば、実施者が自由に決定することができる。
【0106】
一般的には、RGBを近接させて配置し、対象物の所定の箇所にまとめて取り付けることによって、マーキングを行うことが好ましい。すなわち、RGBを備えた小型の発光デバイス(発光ユニット)を対象物に接着する、ひも等で掛ける、テープ等で留める、等の手法でマーキングするのである。
【0107】
ところで、RGBは1カ所に近接して配置する以外にも種々の配置方法が考えられる。以下、説明する。
【0108】
図2には、認識手段のキャプチャ手段(CCDカメラ等)がR、G、Bを含む対象物をキャプチャした3種のキャプチャ画像例が示されている。
例えば図2(1)のキャプチャ画像20に示すように、R、G、Bを、一列に配置することも好ましい一例である。
また、図2(2)のキャプチャ画像22に示すように、Rと、Gと、Bとを、三角形を描くように配置することも好ましい一例である。
また、図2(3)のキャプチャ画像24に示すように、複数のR群と、複数のG群と、複数のB群とを渾然として配置することも好ましい一例である。
【0109】
なお、この図2(3)において、複数のR群中に含まれる各R(赤色LED)は、同期して明滅を行う。同様に、複数のG群中に含まれる各G(緑色LED)も、同期して明滅を行う。同様に、複数のB群中に含まれる各B(青色LED)も、同期して明滅を行う。これらの同期は、上述した所定の制御手段が実行する。
【0110】
このように、一つの色彩を複数の発光体で構成する場合、その発光体を特に小発光体と呼ぶ。
【0111】
なお、これら図2(1)(2)(3)のいずれにおいても、R、G、Bを近接させて配置するレイアウトが一般には好ましい。これは、R、G、Bを一度にキャプチャしやすくなり、また、対象物上に占める面積も少なくすることができる場合が多いからである。R、G、Bを一度にキャプチャすることができれば、その後の処理が容易となり、発光パターンを画像処理的に認識することが容易となろう。
【0112】
また、特に図2(3)のレイアウトは、R、G、Bのうちいくつかの発光体が障害物に遮られ、認識手段に対して光を呈示できない状態になった場合であっても、遮られたR、G、Bと同色の別の発光体が認識手段に対して光を呈示できる可能性が高まる。従って、図2(3)のようなレイアウトによれば、図2(1)や(2)のレイアウトに比べ、障害物の影響を受けにくくなるという効果が得られる。
【0113】
位置関係(固定・準固定)
このように、R、G、Bの各発光体は、近接して「固定」しておくことが好ましいが、ロープ等により連結されている場合は、その位置関係は、ある程度柔軟性を持たせることができる。このように位置関係に柔軟性がある場合を、固定と区別して特に「準固定」と呼んでいる。
これは、図2(3)のように、1つの色彩が複数の小発光体から構成されているばあいも同様であり、これら複数の小発光体の位置関係は「固定」しておくことも好ましいし、布上に設ける等の構成によってある程度柔軟性を持たせた「準固定」とすることも好ましい。
【0114】
第3 追尾
本実施の形態においては、認識手段が認識できる範囲内で発光体(R、G、B)が移動する場合に、認識手段が発光体(R、G、B)を追尾しながらそれらの位置を把握し、発光体(R、G、B)が表示する発光パターンを認識することも好適である。
【0115】
なお、これまで発光体R、発光体G、発光体B、とそれぞれ呼んでいるが、実際はこれらは3色のLEDと、制御装置と、電源と、を備えた1個の発光デバイス(発光ユニットとも呼ぶ)を用いていることを既に述べた。この制御装置は、外部から与えた所定の点灯パターンを記憶しており、その点灯パターンで発光体である各LED(R、G、B)を点灯/消灯させる。
【0116】
図3には、移動する発光体(R、G、B)を認識手段がキャプチャした3つのキャプチャ映像30、32、34が示されている。
【0117】
単純移動
まず、図3(1)のキャプチャ映像30について説明する。このキャプチャ映像30には、発光ユニット40が、キャプチャ映像30の左上部から中央部に向かって矢印に沿って移動した様子の映像が映されている。
【0118】
この発光ユニット40は、R40rと、G40gと、B40bとが近接して配置された発光ユニットであり、これまで説明したように、制御装置、電源を含んでいる。
R40r、G40g、B40bは、移動の間、これまで説明した発光パターンに則て発光するし、所定のコードを表示する。
【0119】
この発光パターンによれば、上で説明したように、常にいずれかの発光体(RGB)が点灯している。従って、認識手段は、発光ユニット40が発する光を追尾し、発光ユニット40の位置を把握することができる。また、発光ユニット40が表示する発光パターンを認識することによって、発光ユニット40が表示するコードを認識し、そのコードが表すデータを読み取ることができる。
【0120】
距離の変化を伴う動き
次に、図3(2)のキャプチャ映像32には、発光ユニット42を撮影した映像が示されている。この発光ユニット42は、R42rと、G42rと、B42rとが近接し配置された1組の発光体である。このキャプチャ映像32において、発光ユニット42は、遠方から認識手段に接近し、再び認識手段から遠ざかるという移動を行っている。
【0121】
具体的には、キャプチャ映像32上では、最初にキャプチャ映像32の左上部に小さく発光ユニット42が映し出され、その後キャプチャ映像32の中央部に近づくにつれて大きく映し出され、さらにキャプチャ映像32の右上部に移動しながら小さくなるように映し出されている(図3(2)参照)。
【0122】
この発光ユニット42のR42r、G42g、B42bは、所定の発光パターンで明滅し、上で述べたように、いわば時間軸上で1.5D色彩配列コードを実現している。1.5D色彩配列コードは、本来的には空間上(平面上)で色彩が変化することによって所定のデータを表すコードであるが、これを時間軸上の変化に置き換えたものである。
【0123】
認識手段は、この明滅を把握・認識することによって、発光ユニット31の位置を検出するとともに(同時に)そのコードが表すデータを読み取ることができる。
【0124】
複数の発光ユニットの存在
また、図3(3)のキャプチャ映像34には、3種の発光ユニット44、46、48を撮影した映像が示されている。
発光ユニット44は、R44rと、G44gと、B44bとを近接・配置して構成されている発光ユニットである。発光ユニット46、48も同様の構成を採用している。
【0125】
さて、このキャプチャ映像34においては、最初に全てのユニット44、46、48がキャプチャ映像34の中央部に集合している。
そして、発光ユニット44は、キャプチャ映像34の中央部から左上部に向かって移動していく。また、発光ユニット46は、キャプチャ映像34の中央部から右上部に向かって矢印に沿って移動する。また、発光ユニット48は、キャプチャ映像34の中央部から右下部に向かって矢印に沿って移動する。各発光ユニット44、46、48は、同時に移動しながら、上で述べた1.5D色彩配列コードの規則に則ってそれぞれ異なる発光パターンを表示する。すなわち、それぞれ異なるデータ(その物品のIDなど)を表示している。
【0126】
本実施の形態において、認識手段は、予め定められた距離基準に基づき、その距離基準以上に離れて位置する光(発光体)は、それぞれ異なる発光ユニットに属すると認識し、その距離基準よりも近くに位置する発光体を同一の発光ユニットに属する発光体であると認識する。
【0127】
上で述べたキャプチャ映像34(図3(3))においては、この距離基準を各発光ユニット26、31、35間の距離を、この距離基準より大きくしているので、認識手段は、各発光ユニット44、46、48を区別して追尾することができ、それぞれの位置と、表示されるコードを認識し、そのコードが表すデータを読み取っている。
また、発光ユニット44のに属するR44rと、G44gと、B44bとの距離は、上記距離基準より短く設定されている。
【0128】
第4 発光デバイス(発光ユニット)の配置位置
本実施の形態においては、発光デバイス(発光ユニットとも呼ぶ)とは、発光体であるR、G、Bと、所定の制御装置と、電源とを組み合わせて構成した自動認識データの表示装置であることは既に述べたとおりである。
【0129】
これまで述べてきたように、本実施の形態における自動認識データの表示方法の特徴の1つは、発光パターンが表すコードと、発光体の位置と、を同時に認識している点である。
【0130】
本実施の形態における発光デバイスは、対象物にマーキングすることを前提としたものであり、この結果、認識手段が取得した発光デバイスの位置は、発光デバイスがマーキングされた(取り付けられた)対象物の位置と見なすことができる。このことによって、発光デバイスが表示するIDなどのデータを認識できることができると共に、その位置を把握することができたものである。
【0131】
このようなことが成立するためには、発光デバイスが対象物上に配置されていることを暗黙のうちに前提としている。言い換えれば、対象物の位置を把握するには、発光デバイスが、対象物の表面上に固定された状態、もしくはそれに準じた状態で装着されていることが必要である。
【0132】
この観点から、本節では、対象物に発光デバイスを配置する位置について詳細に説明する。
【0133】
ヘルメット
図4には、ヘルメットの外側にR、G、Bを備える発光デバイスを装着した例の説明図が2種示されている。
【0134】
まず、図4(1)は、ヘルメット50の所定の方向(例えば前方のみ)に、発光デバイス52を装着した例を示す説明図である。この発光デバイス42は、R42rと、G42gと、B42bとを備え、上で述べたように1.5D色彩配列コードの規則に則って明滅する。
また、図4(2)は、ヘルメット50の周囲に、発光デバイス54を装着した例を示す説明図である。この発光デバイス54は、R54rと、G54gと、B54bとをそれぞれ複数個備え、各色彩を複数個の発光体によって表示する。そして、所定のデータを表すための所定の発光パターンで明滅を行う。
認識手段は、これらの明滅に基づいて、発光デバイス52、54の位置と、それらの発光パターンが表すコードを読み取る。
【0135】
この図4に示すように、ヘルメット50の外側表面上に発光デバイス52、54を装着した場合には、認識手段が把握する位置情報は、ヘルメット41の位置情報とほとんど同一と見なすことができる。
【0136】
この結果、認識手段が発光デバイス52、54の明滅を読み取ることによって、ヘルメット41の位置情報と、発光デバイス42が表示するコードと、を同時に認識することができるのである。
【0137】
特に図4(2)には、発光デバイス54がヘルメット50を周回するように装着されているので、ヘルメット50から上の位置からこのヘルメット50を見れば、どのような位置・角度からでも発光デバイス54の明滅を認識することができる。
これによって、所定の作業場において、認識手段であるカメラを、作業場の天井等に設けることによって、常に作業員の位置と、作業員のIDとを把握することも可能となる。その結果、「作業員の佐藤が奥の現場にいる」ということや、「作業員の鈴木が長時間見えなない。事故かもしれない」等の判断も可能となり、作業場の管理を円滑に行う個とができ、効率的な作業とともに事故を未然に防ぐ安全な作業場を実現することが可能である。
【0138】
また、図4(1)(2)には発光デバイス52、54をヘルメット50本体「上」に装着した例が示されている。しかし、例えば発光デバイス52、54を顎紐のように柔軟な部材状に構成し、ヘルメット50の顎紐として装着し利用した場合でも、上で述べたようにヘルメット41本体上に発光デバイス43を装着した場合と同様の効果が得られる。但し、この場合は、ヘルメット50の情報からの認識はやや困難になるかと思われるので認識手段であるカメラ等は、作業者と同様の高さに設置することが好ましいであろう。
【0139】
衣服
図5は、衣服60の左の袖上に、R70rと、G70gと、B70bとを備える発光デバイス70が装着された例を示す説明図である。この図5に示される例においても、多くの場合、図示されない認識手段が取得する発光デバイス70の位置情報は、衣服49の位置情報とほとんど同一であると認定することができよう。
従って、認識手段がデバイス50の明滅を認識することによって、衣服49の位置情報と、その発光パターンが表すコードが示すデータ(着用者の個人情報等)とを同時に把握することができる。衣服が作業服の場合は、上記ヘルメットと同様のMくてきに使用することができ、より安全な作業環境の構築に資することができる。
【0140】
なお、衣類60を販売する売り場においては、上記データとして、衣服60の情報(値段・サイズ・材質)等を利用することが好適である。
【0141】
道路標識
また、図6には、一方通行であることを示す道路標識80が示されている。この道路標識80の支柱の表面上には、R90rと、G90gと、B90bとを備える発光デバイス90が2個設けられている。この道路標識53は、道路等に固定されて静止しているものではあるが、例えば動いている自動車に備えられた認識手段からこの道路標識80を見れば、この道路標識53は移動する物体と同様に「移動する物体」として認識される。
【0142】
この認識手段は、発光デバイス54の位置と、発光デバイス54が表示するコードを認識することによって、例えば「この道路は一方通行です」などの音声を自動車内に流し、運転者に注意を喚起することができる。
【0143】
第5 発光体の発光パターン
本実施の形態において、R、G、Bが表すデータは、上で述べたように、R、G、Bの明滅の順序(色彩の変化、遷移、点灯/点滅の順序等を含む)のみに基づいて表される。従って、実施者は、R、G、Bが明滅する時間間隔(期間)を原理的には任意に決定することが可能である。
【0144】
ところで、例えば図7(1)に示すクリスマスツリー100のように、多数の装飾体によって複数の色彩の明滅を表示するような装飾が行われることがある。このクリスマスツリー100に、データを表すR、G、Bを装着して明滅させた場合には、例えば図7(2)に示すように、データを表すために設けた発光体であるR110r、G110g、B110bと、データとは関係のない発光する装飾体120とが混在する場合が多い。特に、クリスマスツリーは、一般に光を発する装飾物(電球やLED)が多いので、このような場合が頻繁に発生すると考えられる。
このように、データとは関係のない様々な色彩が存在し、しかもそれらの色彩が明滅している(或いは、明滅しているように見える)場合においては、R110r、G110g、B110bの発光パターンと、背景(データを表さない装飾体)とを混同してしまう可能性が小さくない。
【0145】
そこで、本実施の形態においては、R110r、G110g、B110bを、その周囲の装飾体120の明滅間隔とは異なる期間で明滅させている。このような構成によって、R110r、G110g、B110bと、装飾体20とを区別することを可能としている。
【0146】
従って、R、G、Bが明滅する時間間隔(期間)は原理的には任意に決定することができるが、クリスマスツリー等の装飾体との区別のため、期間を、装飾体の明滅間隔と異なる値の中から選び・決定することとなる。装飾体の明滅間隔は、数Hz〜0.数Hz程度の場合が多いので、発光デバイス中の発光体が明滅する間隔はこの範囲以外の期間を選択することが好ましい。
【0147】
このように、期間を予め決定した場合の発光パターンの例を以下に示す。
【0148】
図8には、上述したR110r、G110g、B110bの発光パターンの好ましい一例が示されている。この図8に示す発光パターンは、上で述べた図1と同様に、縦軸が時間Tの経過を表し、横軸が3つの色彩を表す2次元のタイムチャートによって表されている。
【0149】
この図8に示すように、R110r、G110g、B110bの発光パターン中の各期間(点灯状態が変化する期間)は、期間T1、T2、T3、T4、T1の順にサイクリックに繰り返して変化している。
【0150】
この期間T1は、本発光パターン中の明滅時間の基本単位期間(基本長)であり、以下の時間T2、T3、T4はこの基本単位期間の整数倍の期間に設定している。
例えば、期間T2は、期間T1の2倍の期間である。また、期間T3は期間T1の3倍の期間であり、期間T4は期間T1の4倍の期間である。
【0151】
これらR110r、G110g、B110bは、この時間T1又はT2、T3、T4が経過したとき(各期間の境界で)、いずれか1つの状態が変化する。変化は、消灯状態から点灯状態に移行するか、又は、点灯状態から消灯状態へ移行するか、のいずれかの変化である。
【0152】
一方、データを表示しない単なる装飾体が、上で述べた期間T1、T2、T3、T4というサイクリック的な期間をおいて点灯又は消灯することは、確率的に非常に低いと考えられるので、認識手段は、期間T1、T2、T3、T4というサイクリック的な期間で点灯/消灯する発光パターンを示すものを選択することによって、他の装飾としての発光物から区別して発光デバイスを見つけ出すことができる。
【0153】
また、上記期間T1、T2、T3、T4というサイクリック的な期間をおいて点灯又は消灯しているので、単位期間であるT1と同様のサンプリング周期でサンプリングを行い、各期間T1、T2、T3、T4において色彩が変化していないものを見つけることによって、所望の発光デバイスを効率よく発見することが可能である。
【0154】
第6 変形例
以上、発光体を明滅させることによって、所望のデータを表示する技術について述べたが、本発明は、種々のバリエーションが考えられる。
【0155】
(1)色彩
上の例では、発光体が示す色彩の変化・遷移でデータを表すコードを主として説明したが、色彩その物にデータを割り当ててもかまわない。例えば、
R → 0
G → 1
B → 2
等のように割り当ててデータを表現しても良い。
【0156】
(2)
また、上の例では、発光体が示す色彩の変化・遷移のみでデータを表し、変化の時間間隔はデータとは無関係な例を説明したが、時間間隔を所定の期間に定めても良い。特に、周囲との区別のために、上述したような所定の時間間隔の組み合わせ(例えば、サイクリックな時間間隔)を採用することも好ましい。
【0157】
(2−a)
また、(2)のように色彩変化の時間間隔を予め定めた場合は、その予め定めた時間間隔(時間パターンと呼ぶ)によって、各発光体を識別することも好ましい。
【0158】
また、予め上記時間パターンが定められている場合は、(1)で示したように色彩にデータを割り当てること好ましい。
【0159】
(3)色彩の数
これまで、主にR、G、Bの3色の例を説明してきたが、シアン、マゼンタ、イエローでももちろんかまわないし、他の3色でも利用可能である。
【0160】
また、3色に限られず、2色でも良いし、また4色以上を用いることも好適である。
【0161】
(4)フルカラー発光体
上で述べた例では、1個の発光体は1色の色彩を発光するものとして説明を行ってきたが、1個の発光体で複数色の色彩を発光する発光体を用いても好ましい。
【0162】
それらは、2種の光源を一体に構成したものや、RGB3色の光源を一体に構成し、フルカラーを表現できる用に構成したもの等が知られている。それらは主にLEDを利用したものが多く、赤緑2色LED、フルカラーLED、マルチカラーLEDなどの名称で呼ばれることが多い。
【0163】
これらの複数色の色彩を発光する発光体を用いても、請求の範囲の発明と「均等」であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】発光パターンのタイムチャートを示す図である。
【図2】キャプチャ画像を示す図である。
【図3】キャプチャ映像を表す図である。
【図4】デバイスを装着したヘルメットを示す図である。
【図5】デバイスを装着した衣服を示す図である。
【図6】デバイスを設けた道路標識を示す図である。
【図7】クリスマスツリーを示す図である。
【図8】発光パターンのタイムチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0165】
10 発光パターン
13r 赤色の発光体の発光パターン
13g 緑色の発光体の発光パターン
13b 青色の発光体の発光パターン
20、22、24 キャプチャ画像
30、32、34 キャプチャ映像
40、42、44 ユニット
40r、42r、44r 赤色発光体
40g、42g、44g 緑色発光体
40b、42b、44b 青色発光体
50 ヘルメット
52、54 デバイス
52r、54r 赤色発光体
52g、54g 緑色発光体
52b、54b 青色発光体
60 衣服
70 デバイス
70r 赤色発光体
70g 緑色発光体
70b 青色発光体
80 道路標識
90 デバイス
90r 赤色発光体
90g 緑色発光体
90b 青色発光体
100 クリスマスツリー
110r 赤色発光体
110g 緑色発光体
110b 青色発光体
120 装飾体
t0、t1、t2、・・・、t40、t41、t42 時間
T1、T2、T3、T4 時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色彩を発光する第1の発光体と、
第2の色彩を発光する第2の発光体と、
第3の色彩を発光する第3の発光体と、
所定の発光パターンで前記第1、第2及び第3の発光体をそれぞれ点灯/消灯させる制御手段と、
を含み、前記発光パターンで所定のデータを表示することを特徴とする発光デバイス。
【請求項2】
第1から第nまでの色彩をそれぞれ発光する第1から第nまでのn種の発光体と、
所定の発光パターンでn種の前記第1から第nまでの発光体それぞれ点灯/消灯させる制御手段と、
を含み、前記発光パターンで所定のデータを表示することを特徴とする発光デバイス。ここで、前記nは、2以上の整数である。
【請求項3】
請求項1又は2記載の発光デバイスにおいて、
前記発光パターンは、その色彩の変化・遷移・点灯点滅の順番によってデータを表示することを特徴とする発光デバイス。
【請求項4】
請求項1又は2記載の発光デバイスにおいて、
前記発光パターンは、その色彩によってデータを表示することを特徴とする発光デバイス。
【請求項5】
請求項1又は2記載の発光デバイスにおいて、
前記発光パターンは、一度にたかだか1色のみの点灯状態が変化することを特徴とする発光デバイス。
【請求項6】
請求項1又は2記載の発光デバイスにおいて、
前記発光パターンは、常に、少なくともいずれか1個以上の前記発光体が点灯状態であり、全ての前記発光体が同時に消灯状態とはならないことを特徴とする発光デバイス。
【請求項7】
請求項1又は2記載の発光デバイスにおいて、
前記発光パターンは、
前記所定のデータを表す単位パターンと、
前記単位パターンの境界を示す余白パターンと、
を含むことを特徴とする発光デバイス。
【請求項8】
請求項7記載の発光デバイスにおいて、
前記余白パターンは、常に、少なくともいずれか1個以上の前記発光体が点灯状態であり、全ての前記発光体が消灯状態とはならないことを特徴とする発光デバイス。
【請求項9】
請求項8記載の発光デバイスにおいて、
前記余白パターンは、いずれかの前記発光体が常に点灯状態であることを特徴とする発光デバイス。
【請求項10】
請求項9記載の発光デバイスにおいて、
前記余白パターンは、常に点灯状態である前記発光体以外のいずれかの発光体が、所定のタイミングで点灯/消灯を繰り返すことを特徴とする発光デバイス。
【請求項11】
請求項7記載の発光デバイスにおいて、
前記単位パターンは、
前記単位パターンの開始を表すスタートパターンと、
前記単位パターンの終了を表すエンドパターンと、
を含み、
前記単位パターンは、前記スタートパターンから開始し、前記エンドパターンで終了することを特徴とする発光デバイス。
【請求項12】
請求項1又は2記載の発光デバイスにおいて、
前記発光パターンは、
前記発光体の点灯/消灯のタイミングが予め定められたタイミングであることを特徴とする発光デバイス。
【請求項13】
請求項12記載の発光デバイスにおいて、
前記発光体の点灯/消灯のタイミングの間隔は、短い周期から、長い周期へ変化していき、この変化を順次繰り返すことを特徴とする発光デバイス。
【請求項14】
請求項1記載の発光デバイスにおいて、
前記第kの発光体は、第kの色彩を発光する1個又は複数個の小発光体からなることを特徴とする発光デバイス。ここで、前記kは、1から3までの整数である。
【請求項15】
請求項2記載の発光デバイスにおいて、
前記第kの発光体は、第kの色彩を発光する1個又は複数個の小発光体からなることを特徴とする発光デバイス。ここで、前記kは、1からnまでの整数である。
【請求項16】
請求項14又は15記載の発光デバイスにおいて、
前記第kの色彩を発光する1個又は複数個の小発光体は、それら相互の位置が固定又は準固定であることを特徴とする発光デバイス。
【請求項17】
請求項1又は2記載の発光デバイスにおいて、
前記発光体は、それら相互の位置が固定又は準固定であることを特徴とする発光デバイス。
【請求項18】
請求項1〜17のうち、いずれか1項に記載の発光デバイスを用いて、時間軸に沿って色彩が変化する光学式認識コードを被印物にマーキングする方法において、
前記発光デバイスを被印物上に配置する配置ステップと、
前記発光デバイスに所定の発光パターンで発光させる発光ステップと、
を含み、前記発光体の発する光が、所定のデータを表す光学式認識コードを形成することを特徴とする光学式認識コードマーキング方法。
【請求項19】
請求項18記載の光学式認識コードマーキング方法において、
前記発光デバイスは、外部から入力した発光パターンを記憶する記憶手段、
を含み、前記制御手段は、この記憶手段が記憶する発光パターンに従って、前記発光体の発光状態を変化させて前記光学式認識コードを表示することを特徴とする光学式認識コードマーキング方法。
【請求項20】
請求項1〜17のうち、い1ずれか1項に記載の発光デバイスを用いて、時間軸に沿って色彩が変化する光学式認識コードを表示する表示方法において、
前記発光デバイスは、外部から入力した発光パターンを記憶する記憶手段、
を含み、
前記制御手段は、この記憶手段が記憶する発光パターンに従って、前記発光体の発光状態を変化させて前記光学式認識コードを表示することを特徴とする光学式認識コード表示方法。
【請求項21】
請求項1〜17のうち、いずれか1項に記載の発光デバイスを被印物に取り付け、この発光デバイスが表す光学式認識コードを用いて、前記被印物の位置を認識するデータ及び位置検出方法において、
表示する光学式認識コードを表示している前記発光デバイスを含む画像を撮像するステップと、
前記撮像した画像から、前記光学式認識コードを認識し、その位置を求めるステップと、
前記認識した光学式認識コードを読み取り、前記光学式認識コードが表すデータを復元する読み取りステップと、
を含み、前記光学式認識コードがマーキングされている被印物の位置と、前記光学式認識コードが表すデータとを、を得るデータ及び位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−186203(P2009−186203A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23651(P2008−23651)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(506226175)ビーコア株式会社 (39)
【Fターム(参考)】