説明

複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔構造の長尺状積層体の製造方法

【課題】加熱圧着装置を用いて複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔の構造の長尺状積層体を同時、かつ連続的に製造する場合に、隣接する組の積層体が互いに局所的な貼り付きを起こさないようにさせる。
【解決手段】加熱圧着装置を用いて、金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体を複数組同時に製造する方法において、加熱圧着操作を、厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置した状態にて実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体を同時に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミドフィルムに代表される高耐熱性で熱圧着性を有する樹脂フィルムと銅箔に代表される高導電性金属箔とを積層熱圧着した積層体は、たとえば、各種電子部品のプリント配線基板の製造に利用されている。この積層体の代表的な構成としては、金属箔/樹脂フィルム/金属箔の構成の三層積層体および金属箔/樹脂フィルムの構成の二層積層体がある。本明細書では、これらの三層積層体と二層積層体は、総称して金属箔/樹脂フィルム積層体と呼ぶ。
【0003】
上記のような金属箔/樹脂フィルム積層体は、その積層体自体の製造の効率、そして積層体を利用するプリント配線基板などの各種部品の製造の効率を考慮して、長尺状積層体として製造するのが一般的である。このための方法としては、ロール状に巻かれた長尺状の金属箔と同じくロール状に巻かれた長尺状の樹脂フィルムのそれぞれを連続的に、上側ロールと下側ロールとを含む一対の加熱圧着装置に対して、互いに重ね合わせた状態で、あるいは加熱圧着装置の入口で重ね合わされるようにして供給し、次いで加熱圧着装置により積層圧着された長尺状の積層体を巻き取りロールにより巻き取る方法が一般的に利用されている。加熱圧着装置としては、上側ロールと下側ロールのそれぞれを単ロールとした従来タイプの加熱圧着装置、そして上側ドラムと下側ドラムのそれぞれを前方ドラムと後方ドラム、そして両ドラムの周囲をドラムと同期して回転するベルトから構成したダブルベルトプレスが代表的である。
【0004】
長尺状金属箔/樹脂フィルム積層体は、上記のように、加熱圧着装置を用いて連続的に製造されるが、近年、金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状三層積層体の需要の増加に応じて、そしてまた、その製造コストの低減を図るために、二組もしくはそれ以上の複数組の積層体を同時に製造することが検討されている。
【0005】
特許文献1には、ダブルベルトプレス装置に熱圧着性の多層ポリイミドフィルムと金属箔との二組以上を供給して、加圧下に熱圧着と冷却を行なうことにより多層ポリイミドフィルムと金属箔とを同時に貼り合わせることによって、二組以上のフレキシブル金属箔積層体を製造する方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、ダブルベルトプレス装置を用いて外観が良好なフレキシブル金属箔積層体を安定的に製造する方法の記載があり、その記載中に、複数の長尺状金属箔/樹脂フィルム積層体を同時に製造することが可能であることの記載がある。また、ダブルベルトプレス装置の具体的構成の記載もある。
【特許文献1】特開2001−270039号公報
【特許文献2】特開2005−306002号公報
【0007】
一方、近年の各種電子部品の小型化への要求に答えて、積層体を構成する金属箔と樹脂フィルムの双方を薄膜化して、積層体の薄膜化を図る動向が一般的になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、上記の薄膜積層体の近年の需要の動向を考慮して、これまでに利用されている加熱圧着装置を用いて複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状三層積層体を同時に製造する技術の検討を行なった。
【0009】
その検討の過程で、本発明者は、一般的な加熱圧着装置を用いて金属箔/樹脂フィルム/金属箔の三層構成の長尺状積層体の複数組を同時に製造した場合に、加熱圧着操作の実施の際に隣接していた金属箔同士、特に圧延銅箔同士がそれぞれの両側端部近傍にて噛み込み等による剥離(分離)不良が発生し、各組の長尺状積層体を互いに分離しにくくさせる現象が発生することを見出した。
【0010】
次に、本発明者の上記検討結果を、添付図面の図1を参照しながら説明する。
図1は、加熱圧着装置の一例であるダブルベルトプレスを用いて金属箔/樹脂フィルム/金属箔の三層構成の長尺状積層体を同時に二組を製造する過程で現われるダブルベルトプレスの上側ベルトと下側ベルト(ダブルベルトプレスの構成は公知であり、本明細書において後に詳しく述べる)、そして互いに積層された二組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔の三層構成の長尺状積層体の幅方向に沿った層構成を示す模式図である。すなわち、図1には、金属箔1a、樹脂フィルム2a、そして金属箔3aの三層構成の上側長尺状積層体4aと金属箔1b、樹脂フィルム2b、そして金属箔3bの三層構成の下側長尺状積層体4bとが重ね合わされた積層体を形成し、その上下をダブルベルトプレス(図示なし)の上側ベルト5aと下側ベルト5bで挟んだ状態が示されている。この積層体構造は、金属箔と樹脂シートとがダブルベルトプレスにて加熱圧着されて、冷却されて、その後に各長尺状積層体毎に互いに分離されるまで維持される。
【0011】
図1は、金属箔と樹脂シートとがダブルベルトプレスにて加熱圧着された状態の積層体の原理的な構造を示している。樹脂フィルム側端部の位置において、各積層体に局部的な強い圧力がかかり、その局部的な強い圧力が、中央部にて互いに接触し、重ねられた状態にある上側積層体の下側金属箔3aと下側積層体の上側金属箔1bとの間の噛み込みが発生することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の知見に基づいて、本発明者は、さらに検討を続けた結果、上記加熱圧着操作を、互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの幅方向の側端部の位置を互いに少しずらして、それぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置した状態にて実施することにより、互いに接触し、重ねられた状態にある上側積層体の下側金属箔と下側積層体の上側金属箔との間の噛み込みが回避できることを見出した。この好ましい現象は、樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置した状態にて加熱圧着操作を実施すると、金属箔間に局所的に掛る圧力が分散され、各積層体への圧力の不均一性が緩和されることによるものと理解される。
【0013】
従って、本発明は、加熱圧着装置、該加熱圧着装置の前方に設けられた複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体の製造に必要な複数の長尺状金属箔と複数の長尺状樹脂フィルムとを該加熱圧着装置に供給する複数の巻き出しロール、該加熱圧着装置での加熱圧着操作の終了後に生成した複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体のそれぞれを巻き取る複数個の巻き取りロールからなる積層体製造装置を用いて、複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体を同時に製造する方法において、上記加熱圧着操作を、厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置した状態にて実施することを特徴とする製造方法にある。なお、上記の厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置する方法としては、好ましくは、互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの幅方向の位置を互いにずらす方法を利用することができる。
【0014】
本発明はまた、複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体であって、厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないような配置にある積層体にもある。
【発明の効果】
【0015】
加熱圧着装置、該加熱圧着装置の前方に設けられた複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体の製造に必要な複数の長尺状金属箔と複数の長尺状樹脂フィルムとを該加熱圧着装置に供給する複数の巻き出しロール、該加熱圧着装置での加熱圧着操作の終了後に生成した複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体のそれぞれを巻き取る複数個の巻き取りロールからなる積層体製造装置を用いて、複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体を同時に製造する方法において、本発明の改良方法を用いることにより、互いに接触し、重ねられた状態にある上側積層体の下側金属箔と下側積層体の上側金属箔との間の噛み込みの発生が回避でき、重ねられた積層体間の分離がしやすい。本発明では、隣接する金属箔が共に圧延銅箔である場合に特に効果が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい態様を次に記載する。
(1)厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置のずれが、一方の樹脂フィルムの側端部と他方の樹脂フィルムの側端部との相対距離として、0.5〜5mm(さらに好ましくは1〜3mm)の範囲にある。
(2)同時に製造される金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体が二組である。
(3)複数組の積層体の互いに隣接して配置される金属箔が共に圧延銅箔である。
(4)長尺状樹脂フィルムが長尺状芳香族ポリイミドフィルムである。
(5)長尺状樹脂フィルムが、非熱圧着性芳香族ポリイミドフィルムとその両側表面に形成された熱圧着性芳香族ポリイミド層とを含む長尺状の熱圧着性多層ポリイミドフィルムである。
(6)加熱圧着装置が、ダブルベルトプレスである。
【0017】
次に本発明の複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔構造の長尺状積層体の製造方法を、添付図面の図2を参照しながら説明する。なお、図2では、金属箔として銅箔を用いて、金属箔/樹脂フィルム/金属箔構造の長尺状積層体を二組同時に製造する方法を代表例として説明する。
【0018】
図2は、複数組の銅箔/樹脂フィルム/銅箔からなる構造の長尺状積層体の製造方法を、公知のダブルベルトプレスを用いて実施する場合を説明するための図面である。すなわち、図2では、銅箔/樹脂フィルム/銅箔からなる構成の長尺状積層体の二組をダブルベルトプレスを用いて、同時にかつ連続的に製造する方法が示されている。
【0019】
図2において、ダブルベルトプレス11は、一対の前方上側ドラム12aと前方下側ドラム12bそして一対の後方上側ドラム13aと後方下側ドラム13b、そして更に、二個の上側ドラムの組と二個の下側ドラムの組のそれぞれの周囲に張り渡されたベルト14a、14bから構成されている。図2のダブルベルトプレス11では、二個の前方ドラム12a、12bが加熱ドラムであり、二個の後方ドラム13a、13bが冷却ドラムである。この加熱加圧装置は、上下に設けられた加熱加圧具15a、15bから構成されており、ダブルベルトプレス内を上下のベルト14a、14bにより挟まれて搬送される積層体に対して上下の加熱加圧具15a、15bの互いの接近により圧力を付与するように構成されている。図2のダブルベルトプレスではさらに、加圧冷却装置16a、16bが加圧装置の後方に備えられており、高温にて加圧処理が施された積層体を冷却するようにしている。
【0020】
ダブルベルトプレス11の前方には、一組の銅箔/樹脂フィルム/銅箔構成の長尺状積層体を製造するための、上側銅箔21a、樹脂フィルム22a、そして下側銅箔23aがそれぞれ巻かれている、上側銅箔ロール31a、樹脂フィルムロール32a、そして下側銅箔ロール33aが配置され、さらに他の一組の銅箔/樹脂フィルム/銅箔構成の長尺状積層体を製造するための、上側銅箔21b、樹脂フィルム22b、そして下側銅箔23bがそれぞれ巻かれている、上側銅箔ロール31b、樹脂フィルムロール32b、そして下側銅箔ロール33bが配置されている。
【0021】
ダブルベルトプレス11の後方には、製造された一組の銅箔/樹脂フィルム/銅箔構成の長尺状積層体41aを巻き取るための巻き取りロール51aが補助ロール52aを介して配置されており、さらに製造された他の一組の銅箔/樹脂フィルム/銅箔構成の長尺状積層体41bを巻き取るための巻き取りロール51bが補助ロール52bを介して配置されている。
【0022】
図2において、例えば、銅箔21aと銅箔23aとは共に電解銅箔であって、樹脂フィルム22aは、熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルムであり、銅箔21bと銅箔23bとは共に圧延銅箔であって、樹脂フィルム22bは、熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルムとする。すなわち、23aの銅箔と21bの銅箔とが、一方の銅箔が電解銅箔であって、他方の銅箔が圧延銅箔であるように組合わせることができる。このような組合わせにより、23aの銅箔と21bの銅箔との間の噛み込みの発生を低減できるという利点がある。あるいは、銅箔の全て、すなわち、銅箔21a、銅箔23a、銅箔21b、銅箔23bを圧延銅箔とすることも有利である。ただし、このような金属箔の特定の組合わせ配置は本発明の製造方法においては必須ではない。
【0023】
電解銅箔および圧延銅箔は共に市販されており、目的に応じて任意の厚みの電解銅箔と圧延銅箔を製造業者から入手して本発明の積層体の製造に用いることができる。
【0024】
また、金属箔は銅箔に限定されるものではなく、アルミ箔などの各種の金属箔(特に導電性の金属箔)を目的に応じて用いることができる。そして、銅箔などの金属箔として、ポリイミド、エポキシ樹脂などの熱圧着性或は接着性の樹脂被覆層を表面に有する金属箔を用いることができる。これらの樹脂被覆層を表面に有する金属箔は、通常、その表面の樹脂被覆層が樹脂フィルムと対面するようにして配置して用いる。
【0025】
熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルムは、非熱圧着性芳香族ポリイミドフィルムとその一方もしくは両方の表面に形成された熱圧着性芳香族ポリイミド層とからなるフィルムであって、例えば、宇部興産株式会社から市販されており、容易に入手できる。熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルムについての詳しい記載は、前述の特許文献1に見られる。
【0026】
なお、図2に関する説明では、樹脂フィルムとして熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルムを用いた例をとり挙げたが、樹脂フィルムは、加熱条件下で金属箔と圧着可能な樹脂フィルムであれば特に限定はない。目的に応じて使用することが可能な樹脂フィルムとしては、単層の熱圧着性芳香族ポリイミドフィルム、熱圧着性ポリエステルフィルム、熱圧着性ビニルエステルフィルム、熱圧着性フッ素樹脂フィルムなどを挙げることができる。
【0027】
図2に示したダブルベルトプレスを用いて本発明の長尺状積層体を製造する方法を次に説明する。
【0028】
長尺状樹脂フィルム22a、22b、そして長尺状銅箔21a、23a、21b、23bは、それぞれのロールから巻き出されダブルベルトプレス11の一対の前方加熱ドラム12a、12bの間にベルト14a、14bにより送り込まれる。樹脂フィルムと銅箔は、送り込まれた上下関係にて、前方ドラム12a、12bにより積層されて加熱され、さらにベルト14a、14bに挟まれた状態にて、そのまま後方ドラム13a、13bに向かって搬送される。そして、その搬送の途中で、加熱加圧具15a、15bにより熱圧着処理が施され、その後、加圧冷却装置16a、16bにより冷却される。積層体はさらに後方に搬送され、後方ドラム13a、13bを通過した後、補助ロール52bの位置にて、上側長尺状積層体41a(銅箔21a/樹脂フィルム22a/銅箔23aの構成を持つ積層体)と下側長尺状積層体41b(銅箔21b/樹脂フィルム22b/銅箔23bの構成を持つ積層体)とに分離される。
【0029】
分離される前の上側長尺状積層体41aと下側長尺状積層体41bとの積層体の構成を図3に示す。この積層体は、圧延銅箔23aと圧延銅箔21bとが接触した状態で積層されている。
【0030】
上側長尺状積層体41aは、ついで、補助ロール52aを介して巻き取りロール51aに巻き取られる。同様に、下側長尺状積層体41bは、ついで、補助ロール52bを介して巻き取りロール51bに巻き取られる。
【0031】
なお、ダブルベルトプレスを用いる複数組の長尺状銅箔/樹脂フィルム積層体の製造に際してのダブルベルトプレスの種々の形態や改良、そしてダブルベルトプレスを用いての積層体の製造条件については、前掲の特許文献1と特許文献2の記載を参考にすることができる。
【0032】
次に、本発明の特徴的な要件である長尺状金属箔と長尺状樹脂フィルムとの幅方向(長尺状シートの長さ方向に直角な方向)の積層条件を図3を用いて説明する。
【0033】
図3は、図2で説明した銅箔/樹脂フィルム/銅箔からなる構成の長尺状積層体の二組が積層されて形成された本発明の積層体(すなわち、二組の長尺状積層体が互いに分離される前に現われる積層体)に従う構成を示す模式図である。すなわち、積層体は、上側銅箔21a、樹脂フィルム22a、そして下側銅箔23aとからなる上側積層体41aと上側銅箔21b、樹脂フィルム22b、そして下側銅箔23bとからなる下側積層体41bの二組の積層体から構成されている。そして、上側積層体41aの樹脂フィルム22aと下側積層体41bの樹脂フィルム22bとは、それらの幅方向の位置が互いにずらされて、それぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置した状態にある。樹脂フィルム22aの側端部と樹脂フィルム22b側端部とのずらしの距離(互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの幅方向の位置のずれが、一方の樹脂フィルムの側端部と他方の樹脂フィルムの側端部との相対距離)は、0.5〜5mmの範囲にあることが好ましく、1〜3mmの範囲にあることが特に好ましい。
【0034】
次に、銅箔/樹脂フィルム/銅箔からなる構成の長尺状積層体の三組を同時に連続的に製造する場合の本発明に従う積層体の構成を図4により説明する。
【0035】
図4は、図3で説明した長尺状積層体の二組が積層されて形成された積層体に更に一組の長尺状積層体が下側に積層された積層体の構成を示す模式図である。すなわち、図4の積層体は、上側銅箔21a、樹脂フィルム22a、そして下側銅箔23aとからなる上側積層体41aと上側銅箔21b、樹脂フィルム22b、そして下側銅箔23bとからなる中間積層体41b、そして上側銅箔21c、樹脂フィルム22c、そして下側銅箔23cとからなる下側積層体41cの三組の積層体から構成されている。そして、上側積層体41aの樹脂フィルム22aと中間積層体41bの樹脂フィルム22b、そして下側積層体41cの樹脂フィルム22cとは、それらの幅方向の位置が互いにずらされて、それぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置した状態にある。ただし、樹脂フィルム22aと樹脂フィルム22cとの関係においては幅方向の位置は必ずしもずれていなくてもよい。樹脂フィルム22aの側端部と樹脂フィルム22b側端部とのずらしの距離(互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの幅方向の位置のずれが、一方の樹脂フィルムの側端部と他方の樹脂フィルムの側端部との相対距離)、そして樹脂フィルム22bの側端部と樹脂フィルム22c側端部とのずらしの距離はいずれも0.5〜5mmの範囲にあることが好ましく、1〜3mmの範囲にあることが特に好ましい。
【0036】
上記の図4では、樹脂フィルム22bを樹脂フィルム22aの左側に配置し、ついで樹脂フィルム22cを樹脂フィルム22bの更に左側に配置しているが、このような上側から順に下側へと一方の方向にずれる配置の代わりに、樹脂フィルム22bを樹脂フィルム22aの右側に配置し、次に樹脂フィルム22cを樹脂フィルム22bの左側に配置するようなジグザグ型の配置を利用することもできる。
【0037】
なお、図2では、本発明の長尺状積層体の製造方法を、ダブルベルトプレスを用いる方法として説明したが、本発明の長尺状積層体の製造方法は、上側ロールと下側ロールとを含む一対の加熱圧着装置(特に表面が弾性材料からなるロールを用いる加熱圧着装置)を含む公知の加熱圧着装置、あるいは公知の加熱圧着装置の変形もしくは改良からなる加熱圧着装置を用いて同様に実施することができることは勿論である。また、同時に製造する長尺状積層体は二組に限られることはなく、三組あるいは四組の同時製造も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ダブルベルトプレスを用いて金属箔/樹脂フィルム/金属箔の三層構成の長尺状積層体を同時に二組を製造する過程で現われるダブルベルトプレスの上側ベルトと下側ベルト、そして互いに積層された二組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔の三層構成の長尺状積層体の幅方向に沿った層構成を示す模式図である。
【図2】本発明の複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔構造の長尺状積層体の製造方法を説明するための図である。
【図3】図2で説明した長尺状積層体の二組が積層されて形成された本発明の積層体に従う構成を示す模式図である。
【図4】長尺状積層体の三組が積層されて形成された本発明の積層体に従う構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1a 金属箔
1b 金属箔
2a 樹脂フィルム
2b 樹脂フィルム
3a 金属箔
3b 金属箔
4a 長尺状積層体
4b 長尺状積層体
5a ベルト
5b ベルト
11 ダブルベルトプレス
12a 前方上側ドラム
12b 前方下側ドラム
13a 後方上側ドラム
13b 後方下側ドラム
15a 加熱加圧具
15b 加熱加圧具
16a 加圧冷却装置
16b 加圧冷却装置
21a 銅箔
21b 銅箔
21c 銅箔
22a 樹脂フィルム(熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルム)
22b 樹脂フィルム(熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルム)
22c 樹脂フィルム(熱圧着性多層芳香族ポリイミドフィルム)
23a 銅箔
23b 銅箔
23c 銅箔
31a 銅箔巻き出しロール
31b 銅箔巻き出しロール
32a 樹脂フィルム巻き出しロール
32b 樹脂フィルム巻き出しロール
33a 銅箔巻き出しロール
33b 銅箔巻き出しロール
41a 長尺状積層体
41b 長尺状積層体
41c 長尺状積層体
51a 巻き取りロール
51b 巻き取りロール
52a 補助ロール
52b 補助ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱圧着装置、該加熱圧着装置の前方に設けられた複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体の製造に必要な複数の長尺状金属箔と複数の長尺状樹脂フィルムとを該加熱圧着装置に供給する複数の巻き出しロール、該加熱圧着装置での加熱圧着操作の終了後に生成した複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体のそれぞれを巻き取る複数個の巻き取りロールからなる積層体製造装置を用いて、複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体を同時に製造する方法において、上記加熱圧着操作を、厚み方向に互いに隣接する組の樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないように配置した状態にて実施することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置のずれが、一方の樹脂フィルムの側端部と他方の樹脂フィルムの側端部との相対距離として、0.5〜5mmの範囲にある請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体を二組同時に製造する方法である請求項1もしくは2に記載の製造方法。
【請求項4】
厚み方向に互いに隣接して配置される金属箔が共に圧延銅箔である請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項5】
長尺状樹脂フィルムが長尺状芳香族ポリイミドフィルムである請求項1乃至4のうちのいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項6】
長尺状樹脂フィルムが、非熱圧着性芳香族ポリイミドフィルムとその両側表面に形成された熱圧着性芳香族ポリイミド層とを含む長尺状の熱圧着性多層ポリイミドフィルムである請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項7】
加熱圧着装置が、ダブルベルトプレスである請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項8】
複数組の金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体であって、厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置が重ならないような配置にある積層体。
【請求項9】
厚み方向に互いに隣接する組のそれぞれの樹脂フィルムの側端部の位置のずれが、一方の樹脂フィルムの側端部と他方の樹脂フィルムの側端部との相対距離として、0.5〜5mmの範囲にある請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
金属箔/樹脂フィルム/金属箔からなる構造の長尺状積層体が二組積層されている請求項8もしくは9に記載の積層体。
【請求項11】
隣接して配置されている金属箔が共に圧延銅箔である請求項8乃至10のうちのいずれかの項に記載の積層体。
【請求項12】
長尺状樹脂フィルムが長尺状芳香族ポリイミドフィルムである請求項8乃至11のうちのいずれかの項に記載の積層体。
【請求項13】
長尺状樹脂フィルムが、非熱圧着性芳香族ポリイミドフィルムとその両側表面に形成された熱圧着性芳香族ポリイミド層とを含む長尺状の熱圧着性多層ポリイミドフィルムである請求項8乃至12のうちのいずれかの項に記載の積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−30383(P2008−30383A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208294(P2006−208294)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000120010)宇部日東化成株式会社 (203)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】