説明

規則配列したナノ構造材料およびその製造方法

【課題】安価に製造可能で大面積に渡って規則配列したナノ構造材料を提供する。
【解決手段】凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、粒径10〜200nmのポリスチレン粒子が規則配列していることを特徴とするナノ構造材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ構造材料、特に、ポリスチレン粒子が規則配列しているナノ構造材料、ナノホールが規則配列しているナノ構造材料、およびナノ粒子を充填したナノホールが規則配列しているナノ構造材料に関する。
【背景技術】
【0002】
物質を微細化していったとき、直径10〜数ナノメートルオーダーの微粒子になった時点でバルク状態とは異なる性質が発現することが一般によく知られている。例えば、融点の大幅な降下や量子効果の発現などであり、これらの現象を活用した応用技術の開発も活発に行われている。具体的な応用例としては、高機能な複合材料、触媒、非線形光学材料、記憶素子などがあり、応用は多方面の技術分野に及んでいる。
【0003】
こうした微粒子の特異な性質を効率的に活用するために、ひとつひとつの粒子を整然と配列させた2次元または3次元のアレイを作製し、それを利用したデバイスを作ることは極めて自然な発想であり、近年盛んに研究されている。
【0004】
近年の走査プローブ顕微鏡等の発達により、微粒子のひとつひとつをマニピュレートして配列させることが可能になっているが、生産性が悪いため工業的利用は現実的でない。
【0005】
微粒子の配列を促すために、予めパターン化した基板上に微粒子の配列する方法も考えられる。パターニングの方法としては光リソグラフィーが有効であるが、100nm未満の寸法に対する従来のリソグラフィー・パターン化の限界はよく知られている(例えば非特許文献1)。
【0006】
数十〜数ナノメートルのサイズの微粒子に適合するパターニングのためには、光源の短波化が必要となるが、深紫外(DUV)光源でも50nm程度が限界と言われている。さらに短波化した極紫外線リソグラフィー、X線リソグラフィーや、電子ビームおよび走査プローブによるリソグラフィーを含む直接書込みシステムも開発中であるが、いずれも線源および支援光学系の両方に莫大な資本投資を必要とし、直接書込みシステムに至っては逐次方式ゆえに膨大な製造時間がかかるという欠点もある。
【0007】
特許文献1には合成DNAの格子を利用した配列法が開示されているが、この方法には、格子作製のための工程やDNA自動合成等に高価な設備投資が必要である。
【0008】
特許文献2〜5には、陽極酸化アルミナを用いたナノ構造体が開示されているが、この方法では、大面積の規則構造は難しく、不規則なドメイン構造の集合になってしまう欠点を有する。
【0009】
特許文献6〜8には、チオール分子による吸着を利用した規則配列膜が開示されているが、この方法でも、大面積の規則構造は難しく、不規則なドメイン構造の集合になってしまう欠点を有する。
【0010】
特許文献9には、デンドリマーを利用した自己組織化膜が開示されているが、この方法も前記のチオール分子の場合と同様に不規則なドメイン構造を有し、大面積の規則配列膜ができない欠点を有する。
【0011】
さらに、特許文献10には、ブロックコポリマーなどのミクロ相分離を利用した規則的なパターン材料が開示されているが、この方法でも、大面積の規則構造は難しく、不規則なドメイン構造の集合になってしまう欠点を有する。
【0012】
特許文献11には、角錐状の圧子を有するナノインデンターを用いて、材料層に細孔を作る方法が開示されている。大面積の規則構造は作製しやすいが、基となる角錐状圧子にナノ構造体を形成できる間隔に加工することが非常に困難である。
【0013】
特許文献12には、ポリスチレン粒子を配列して規則構造を作る方法が開示されており、また、特許文献13には、疎水性ポリマーと両親媒性ポリマーの混合溶液を基板上に塗設後、高湿度の気体を一定流速で送り、有機溶媒の蒸発に伴い凝結した水蒸気の微小水滴を蒸発させることで規則的な構造体を形成する方法が開示されている。両方法とも不規則なドメイン構造を無くすことができず、改良が望まれていた。
【特許文献1】米国特許第6,265,021号明細書
【特許文献2】特開平10−261244号公報
【特許文献3】特開2002−353432号公報
【特許文献4】特開2004−193523号公報
【特許文献5】特開2003−268592号公報
【特許文献6】特開2001−168317号公報
【特許文献7】特開2003−67919号公報
【特許文献8】特開2003−168606号公報
【特許文献9】特開2003−247081号公報
【特許文献10】特開2001−151834号公報
【特許文献11】特開2004−122283号公報
【特許文献12】特開2003−183849号公報
【特許文献13】特開2003−318010号公報
【非特許文献1】Lithography for ULSI (岡崎、Proceedings of SPIE 2440巻 p.18)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような従来技術の課題に鑑みて、本発明は、大面積に渡って規則配列したナノ構造材料を提供することを目的とする。特に、安価に製造可能な大面積に渡って規則配列したナノ構造材料を提供することを目的とする。また、本発明は、このような特徴を有するナノ構造材料を安価で簡便に製造する方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、基板上に耐熱性膜形成材料を塗設、乾燥した後、パターン付モールドを押し付けて加熱成形したパターン基板の凹部、または、基板上にパターン付モールドを押し付けて、該基板と該モールドとの間の空隙に耐熱性膜形成材料を流し込んで加熱成形した前記パターン基板の凹部に、粒径10〜200nmのポリスチレン粒子を規則配列させることにより、優れたナノ構造材料を製造しうることを見出して、本発明を提供するに至った。
【0016】
すなわち、上記課題は下記の構成を有する本発明により解決される。
【0017】
(態様1)
凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、粒径10〜200nmのポリスチレン粒子が規則配列していることを特徴とするナノ構造材料。
(態様2)
凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、粒径10〜200nmのホールが規則配列していることを特徴とするナノ構造材料。
(態様3)
凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、規則配列している粒径10〜200nmのホール内にナノ粒子が充填されていることを特徴とするナノ構造材料。
(態様4)
前記パターン基板と前記ゾルゲル膜とが、単一の材料からなり一体化していることを特徴とする態様1〜3のいずれか一項に記載のナノ構造材料。
(態様5)
前記ナノ粒子が、金属、金属硫化物、金属酸化物およびポリマーからなる群より選択される材料からなることを特徴とする態様1〜4のいずれか一項に記載のナノ構造材料。
【0018】
(態様6)
アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を少なくとも凹部に有するパターン基板を用意し、前記パターン基板の凹部に粒径10〜200nmのポリスチレン粒子を規則配列させる工程を有することを特徴とする態様1〜5のいずれか一項に記載のナノ構造材料の製造方法。
(態様7)
基板上に耐熱性膜形成材料を塗設、乾燥した後、パターン付モールドを押し付けて加熱成形することにより凹凸を有するパターン基板を作製する工程を有することを特徴とする態様6に記載のナノ構造材料の製造方法。
(態様8)
基板上にパターン付モールドを押し付けて、該基板と該モールドとの間の空隙に耐熱性膜形成材料を流し込んで加熱成形することにより凹凸を有するパターン基板を作製する工程を有することを特徴とする態様6に記載のナノ構造材料の製造方法。
(態様9)
前記パターン基板が、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜から構成されることを特徴とする態様7または8に記載のナノ構造材料の製造方法。
(態様10)
規則配列した前記ポリスチレン粒子の層の上に耐熱性膜形成材料を塗設して加熱成形した後、エッチングとポリスチレン粒子の溶解を行って耐熱性ナノホールを形成させる工程をさらに有することを特徴とする態様6〜9のいずれか一項に記載のナノ構造材料の製造方法。
(態様11)
態様6〜10のいずれか一項に記載の製造方法により製造したナノ構造材料。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、大面積に渡って規則配列したナノ構造材料を安価で簡便に提供することができる。本発明のナノ構造材料は、高機能な複合材料、触媒、非線形光学材料、記憶素子など多方面で効果的に利用され得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下において、本発明のナノ構造材料について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
以下において、ポリスチレン粒子が規則配列しているナノ構造材料、ナノホールが規則配列しているナノ構造材料、ナノ粒子を充填したナノホールが規則配列しているナノ構造材料の順に本発明を詳しく説明する。
【0021】
<<ポリスチレン粒子が規則配列しているナノ構造材料>>
本発明の第1の態様によるナノ構造材料は、凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、粒径10〜200nmのポリスチレン粒子が規則配列していることを特徴とする。
本発明で用いる凹凸を有するパターン基板は、表面の凹凸がパターン化されているものであれば、その詳細は特に制限されない。また、本発明で用いるパターンも制限は無く、用途に応じて決めることができる。パターン基板の製造方法も特に制限されないが、通常は、基板上に耐熱性膜形成材料を塗設、乾燥した後、パターン付モールドを押し付けて加熱成形したパターン基板、または、基板上にパターン付モールドを押し付けて、該基板と該モールドとの間の空隙に耐熱性膜形成材料を流し込んで、加熱成形したパターン基板を作製する方法を採用することが好ましい。
このときに用いる耐熱性膜形成材料は、オルガノシリカゾル、オルガノチタニアゾル、シリコーン樹脂および無機・有機ハイブリッドゾルからなる群より選択される少なくとも1種の膜形成材料であることが好ましい。
オルガノシリカゾルおよびオルガノチタニアゾルの分散溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールおよびn−ブタノールなどのアルコール類や、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどのアルカン類が好ましい。
シリコーン樹脂としては、トレフィルR910(東レ・シリコーン(株)製)、アデカナノハイブリッドシリコーン(旭電化工業(株)製)のような各種有機溶媒に溶解可能なものが好ましい。
無機・有機ハイブリッドゾルには、分散型、ペンダント型、共重合体型の3つのタイプがあるが、本発明ではいずれを用いても構わない。高い耐熱性を考慮すると、ペンダント型あるいは共重合体型を用いることが好ましい。
【0022】
本発明において好ましく用いられる無機・有機ハイブリッドゾルは、一般式(1)で表されるシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物である。
一般式(1)
(R10m−Si(X)4-m
【0023】
式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン(例えば塩素、臭素、ヨウ素等)、またはR2COO(R2は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。mは0〜3の整数を表す。R10もしくはXが複数存在するとき、複数のR10もしくはXはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。mとして好ましくは1、2であり、特に好ましくは1である。
【0024】
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル基、エチル基、i−プロピル基、プロピル基、tert−ブチル基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、芳香族ヘテロ環基(フリル基、ピラゾリル基、ピリジル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基等)、アルケニル基(ビニル基、1−プロペニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N−メチル−N−オクチルカルバモイル基等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、アクリルアミノ基、メタクリルアミノ基等)等が挙げられ、これら置換基はさらに置換されていても良い。
【0025】
10が複数ある場合は、少なくとも一つが、置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましく、中でも、一般式(2)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
一般式(2)においてR1は水素もしくはメチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素、塩素を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素もしくはメチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素、塩素が好ましく、水素もしくはメチル基、メトキシカルボニル基、フッ素、塩素がさらに好ましく、水素もしくはメチル基が特に好ましい。
Yは単結合もしくはエステル基、アミド基、エーテル基、ウレア基を表す。単結合もしくはエステル基、アミド基が好ましく、単結合もしくはエステル基がさらに好ましく、エステル基が特に好ましい。
【0028】
Lは2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル基、エステル基、アミド基など)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、エーテル基あるいはエステル基を有するアルキレン基がさらに好ましく、無置換のアルキレン基かエーテルあるいはエステル基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基はさらに置換されていても良い。
nは0または1を表す。Xが複数存在するとき、複数のXはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。nとして好ましくは0である。
【0029】
10は一般式(1)と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基がさらに好ましい。
Xは一般式(1)と同義であり、ハロゲン、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基がさらに好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基がさらに好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
一般式(1)、一般式(2)の化合物は2種類以上を併用しても良い。以下に一般式(1)、一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
【化5】

【0034】
【化6】

【0035】
シラン化合物の加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。溶媒はシラン化合物と触媒を溶解させるものが好ましい。また、溶媒を塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましい。
【0036】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0037】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
【0038】
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1質量%〜90質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜70質量%の範囲である。
【0039】
シラン化合物の加水分解・縮合反応は、触媒の存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類等が挙げられるが、ゾル液の製造安定性やゾル液の保存安定性の点から、酸触媒(無機酸類、有機酸類)が好ましい。無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸がさらに好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸がさらに好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸がさらに好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
【0040】
加水分解/縮合反応は、通常、シラン化合物の加水分解性基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして好ましくは触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
加水分解性基がアルコキシドで触媒が有機酸の場合には、有機酸のカルボキシル基やスルホ基がプロトンを供給するために、水の添加量を減らすことができる。シラン化合物のアルコキシド基1モルに対する水の添加量は、通常0〜2モル、好ましくは0〜1.5モル、より好ましくは0〜1モル、特に好ましくは0〜0.5モルである。アルコールを溶媒に用いた場合には、実質的に水を添加しない場合も好適である。
【0041】
触媒の使用量は、触媒が無機酸の場合には加水分解性基に対して通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、触媒が有機酸の場合には、水の添加量によって最適な使用量が異なるが、水を添加する場合には加水分解性基に対して通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%であり、実質的に水を添加しない場合には、加水分解性基に対して通常1〜500モル%、好ましくは10〜200モル%であり、より好ましくは20〜200モル%であり、さらに好ましくは50〜150モル%であり、特に好ましくは50〜120モル%である。
反応は通常25〜100℃で撹拌することにより行われるがシラン化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0042】
本発明で用いられるシラン化合物の加水分解物およびまたはその部分縮合物ゾルを用いたゲル膜の膜厚は、通常2〜100nm、好ましくは、5〜50nmである。
【0043】
本発明のシラン化合物の加水分解物およびまたはその部分縮合物ゾルをゲル化して膜にするための加熱温度は、通常100〜250℃、好ましくは、120〜200℃である。
【0044】
本発明で用いるモールドのパターン形状は、1辺が通常0.1〜100μm、好ましくは0.1〜60nm、より好ましくは0.1〜30nmの同心円弧、台形、長方形または正方形の突起を有し、それらの間に、通常、幅が10nm〜10μmで深さが2〜100nmである溝を有する。溝の幅は、好ましくは10nm〜6μmであり、さらに好ましくは10nm〜3μmである。また、溝の深さは、好ましくは2〜60nmであり、さらに好ましくは2〜30nmである。
【0045】
本発明で用いるモールドは、剥離しやすい表面を有していることが好ましく、石英ガラス、シリコンウェハーおよびこれらを金属あるいは有機物で表面処理したモールドが好ましい。
【0046】
本発明で用いる基板は、無機物、有機物あるいはコンポジットからなる基板のいずれでも良い。具体的には、アルミニウム、マグネシウム合金、ガラス、石英、カーボン、シリコン、セラミックス、ポリエステル類(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン類、セルロ−ストリアセテート、ポリカ−ボネート、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリベンゾオキサゾールなどが用いられる。
基板の耐熱温度は、300℃以上が好ましく、上記の中から、該当する基板を用いることがさらに好ましい。
【0047】
基板は、平滑であることが好ましく、表面粗さ(Ra)が5nm以下、さらには2nm以下が好ましい。平滑でない基板に下地層を塗設して平滑化したものも好ましい。
【0048】
本発明のナノ構造材料は、凹凸を有するパターン基板の凹部にアルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有する点に特徴がある。
【0049】
本発明におけるアルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を形成させる材料は、シランカップリング剤を含む材料であり、具体的には、オクタデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(上記化合物例(46)〜(53)に相当)、(3−アミノプロピル)ジメチルエトキシシラン、(3−アミノプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アミノプロピル)エチルジエトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。これらは市販品を用いることができる。
【0050】
凹部のゾルゲル膜は、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するが、アミノ基を有することがよりい。アルキル基の炭素数は、3〜20が好ましく、5〜18がより好ましい。アルキル基、フェニル基、エポキシ基、アミノ基を構成する水素原子は、水素原子以外の置換基で置換されていてもよいが、置換されていないものが好ましい。
【0051】
本発明では、上記の工程により凹凸を有するパターン基板を作製した後に、その凹部にさらにアルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を形成してもよい(第1の製法)。また、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜からなる凹凸を有するパターン基板を直接作製してもよい(第2の製法)。本発明では、いずれの方法も好ましく用いることができる。
【0052】
第1の製法を用いる場合、パターン基板の凹部にアルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を形成する方法として、例えば、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、ディップコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。中でもスピンコートおよびディップコートを採用することが好ましい。
【0053】
第1の製法では、パターン基板を製造する際に用いる耐熱性膜形成材料と、ゾルゲル膜を形成する際に用いる材料は同一であっても異なっていてもよいが、異なっていることが好ましい。具体的には、パターン基板を製造する際に用いる耐熱性膜形成材料に比べて、ゾルゲル膜を形成する際に用いる材料はポリスチレン粒子を吸着しやすい性質を有するものであることが好ましい。
【0054】
第2の製法は、第1の製法と異なり1段階で製造することができる点で、簡便であり経済的である。第2の製法によれば、パターン基板とゾルゲル膜とが単一の材料からなり一体化したものを製造することができる。ここで単一の材料からなるとは、第2の製法で製造したときのようなパターン基板とゾルゲル膜との間の材料組成の変化がないことを意味するものであり、製造後に表面が酸化等により組成変化を起こした場合は含まれない。第2の製法の詳細については、上記の凹凸を有するパターン基板の製造方法の記載をそのまま引用することができる。
【0055】
本発明のナノ構造材料では、粒径10〜200nmのポリスチレン粒子が規則配列している。規則配列しているポリスチレン粒子は、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜上に吸着状態で配列される。吸着層を有さない基板上に塗設する場合は、凝集が起きやすく、規則配列しにくいナノ構造材料になり得る。
本発明におけるポリスチレン粒子は、粒径10〜200nmのものが用いられるが、好ましくは10〜100nm、より好ましくは10〜50nmである。粒径が大きすぎるとナノ構造材料としての意味が薄れ、他の手段でも作製が可能となるため利点が少ない。一方、粒径が小さすぎるとポリスチレン粒子を均一に作製しにくくなるため難しい。ポリスチレン粒子の粒径分布は狭いことが好ましく、変動係数(標準偏差を平均粒径で除した値の百分率)として、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。変動係数が大きすぎると規則配列ができにくくなるため好ましくない。また、本発明におけるポリスチレン粒子は球状であることが好ましい。
【0056】
本発明におけるポリスチレン粒子分散液の塗布方法は、各種方法を用いることができ、具体的には、上記のゾルゲル膜形成と同様の方法が用いられる。
【0057】
<<ナノホールが規則配列しているナノ構造材料>>
本発明の第2の態様によるナノ構造材料は、凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、粒径10〜200nmのホール(ナノホールという)が規則配列していることを特徴とする。
本発明における規則配列したナノホールは、上記のポリスチレン粒子の規則配列層の上に前記耐熱性膜形成材料を塗設して、加熱成形した後、エッチングとポリスチレン粒子の溶解を行って形成させることが好ましい。
エッチングはイオンエッチングなどのドライエッチングまたは膜を溶解する薬品でのウェットエッチングのどちらを用いてもかまわない。
ポリスチレン粒子の溶解には各種有機溶媒を利用することが可能であるが、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどを用いることが好ましい。
【0058】
<<ナノ粒子を充填したナノホールが規則配列しているナノ構造材料>>
本発明の第3の態様によるナノ構造材料は、凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、規則配列している粒径10〜200nmのホール内にナノ粒子が充填されていることを特徴とすることを特徴とする。
本発明に用いるナノ粒子は、目的とするナノ構造材料によって任意に選択できるが、好ましくは、金属、金属硫化物、金属酸化物およびポリマーからなる群より選択される1以上のナノ粒子である。
金属の具体例としては、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Ruなどの単独および合金が用いられる。金属硫化物の具体例としては、ZnS、CdS、PdS、In23、Au2S、Ag2S、FeSなどが用いられる。金属酸化物の具体例としては、TiO2、SiO2、Ag2O、Cr23、ZrO2、SnO2、MnOなどが用いられる。ポリマーとしては任意のポリマーを利用できる。
本発明に用いるナノ粒子として、さらに、平均直径2〜20nmのナノ磁性粒子を用いることが好ましい。ナノ磁性粒子の具体例としては、FePt、CoPt、FePd、Fe23、Fe34、Sm2Fe173、SmCo5、Nd2Fe14Bなどが用いられる。これらのナノ磁性粒子は磁気異方性定数が高く、小サイズでも高い保磁力と熱安定性を示すことで、磁気記録用として有効に用いられる。規則的なナノ構造体を形成させることで、超高密度、高容量の磁気記録媒体として用いることができる。
【0059】
ナノ粒子は、その分散液を前記の規則配列したナノホール上に塗布することにより充填することができる。塗布方法は、前記のポリスチレン粒子分散液の場合と同様の方法が用いられる。
【0060】
ナノ粒子分散液には、アミノ基またはカルボキシ基、スルホン酸基またはスルフィン酸基を1〜3個有する少なくとも1種の分散剤を、ナノ粒子1モル当たり、0.001〜10モル添加することが好ましい。かかる分散剤を添加することで、より単分散で凝集の無いナノ粒子分散液を得ることが可能となる。
分散剤としては、R−NH2、NH2−R−NH2、NH2−R(NH2)−NH2、R−COOH、COOH−R−COOH、COOH−R(COOH)−COOH、R−SO3H、SO3H−R−SO3H、SO3H−R(SO3H)−SO3H、R−SO2H、SO2H−R−SO2H、SO2H−R(SO2H)−SO2Hで表される化合物等を挙げることができる。式中のRは直鎖、分岐または環状の飽和、不飽和の炭化水素である。
【0061】
分散剤として特に好ましい化合物はオレイン酸である。オレイン酸はコロイドの安定化において周知の界面活性剤であり、鉄等の金属粒子を保護するのに用いられてきた。オレイン酸の比較的長い(たとえば、オレイン酸は18炭素鎖を有し長さは約2nmである。オレイン酸は脂肪族ではなく二重結合が1つある)鎖は粒子間の強い磁気相互作用を打ち消す重要な立体障害を与える。
【0062】
エルカ酸やリノール酸など類似の長鎖カルボン酸もオレイン酸同様に(たとえば、8〜22の間の炭素原子を有する長鎖有機酸を単独でまたは組み合わせて用いることができる)用いられる。オレイン酸は(オリーブ油など)容易に入手できる安価な天然資源であるので好ましい。また、オレイン酸から誘導されるオレイルアミンもオレイン酸同様有用な分散剤である。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0064】
〔実施例1〕
(オルガノシランのゾル組成物の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器内において、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(化合物例(18))100gをメチルエチルケトン121gに溶解し、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.125g、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート(30質量%)5.86gおよび水(H2O)23.0gを加え混合したのち、60℃で3時間反応させた後、室温まで冷却してゾル組成物を得た。このゾルは、すべてオリゴマー成分以上(重量平均分子量1000〜2000)であった。
【0065】
(ポリスチレン球粒子が規則配列しているナノ構造材料の作製1)
中心からの距離25mmから60mmの間の円周上に、中心側の弧長が5μmで幅2μmの同心円弧を、幅250nm、深さ20nmの溝で隔離されるように全面に配置した形状に加工した石英ガラスモールドを表面粗さ(Ra)が0.5nmのガラス基板上にプレス器で押し付けた空隙に、前記のゾル組成物を2−エトキシエタノールで希釈した濃度1質量%のゾルを流し込み、そのまま150℃で25分加熱した。その後、急冷しながら超音波剥離して、同心円弧が規則配列したゾルゲル膜を形成した。
次いで、本ゾルゲル膜にγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.005質量%2−エトキシエタノール溶液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させてゾルゲル膜の溝に塗設して、60℃で25分乾燥した。
その後さらに、平均粒径50nm(変動係数10%)のポリスチレン球粒子の0.4質量%分散液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させて塗設した後、60℃で25分乾燥した。
本試料をSEM(走査型電子顕微鏡、日立製作所製S−5200)観察した結果、同心円弧内の溝に規則配列したポリスチレン球粒子のナノ構造材料が作製できた。
【0066】
〔実施例2〕
(ポリスチレン球粒子が規則配列しているナノ構造材料の作製2)
中心からの距離25mmから60mmの間の円周上に、中心側の弧長が2μmで幅500nmの同心円弧を、幅250nm、深さ20nmの溝で隔離されるように全面に配置した形状に加工した石英ガラスモールドを表面粗さ(Ra)が0.5nmのガラス基板上にプレス器で押し付けた空隙に、トレフィルR910(東レ・シリコーン(株)製)の1質量%オクタン溶液を流し込み、そのまま150℃で25分加熱した。その後、急冷しながら超音波剥離して、同心円弧が規則配列したポリマー膜を形成した。
次いで、本ポリマー膜にγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランの0.005質量%2−エトキシエタノール溶液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させてゾルゲル膜の溝に塗設して、60℃で25分乾燥した。
その後さらに、平均粒径20nm(変動係数10%)のポリスチレン球粒子の0.4質量%分散液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させて塗設した後、60℃で25分乾燥した。
本試料をSEM観察した結果、同心円弧内の溝に規則配列したポリスチレン球粒子のナノ構造材料が作製できた。
【0067】
〔実施例3〕
(ナノホールが規則配列しているナノ構造材料の形成1)
実施例2で作製したナノ構造材料を、表面からArクラスタイオンビームを照射して、ポリスチレン球粒子の半径位置まで削り取った。その後残ったポリスチレン球粒子をシクロヘキサノンで溶解して除去した。
作製したナノホール構造材料をSEM観察した結果、規則配列したナノホールを有するナノ構造材料が作製されたことが確認できた。
【0068】
〔実施例4〕
(ナノ粒子を充填したナノホールが規則配列しているナノ構造材料の作製1)
平均直径5nm(変動係数8%)のFePtナノ粒子にオレイン酸を吸着させて分散したデカン分散液を実施例3の規則配列したナノホール構造材料上にスピンコートした。250℃で20分乾燥してナノ構造体を形成した。
完成したナノ構造体をSEM観察した結果、規則配列したナノホール内に、FePtナノ粒子が充填された規則配列したナノ構造材料が観察できた。
さらに、本ナノ構造材料をN2+H2(5%)ガス雰囲気中で500℃で30分間加熱処理し、冷却後、その上に、前記ゾル組成物を0.05質量%に希釈した液を4000rpmでスピンコートし、150℃で20分乾燥した。
その結果、平均表面粗さ(Ra)0.8nm、保磁力4200Oe(エルステッド)の平滑な強磁性媒体が得られた。
【0069】
〔比較例1〕
実施例1において、同心円弧の構造を形成せずに、直接ガラス基板上にγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.005質量%2−エトキシエタノール溶液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させてゾルゲル膜の溝に塗設して、60℃で25分乾燥した。その後、実施例1と同様にポリスチレン球粒子を塗設した後、60℃で25分乾燥した。
このものをSEM観察した結果、ランダムなドメイン構造を有する、部分的に規則配列したポリスチレン球粒子の構造材料であった。
【0070】
〔比較例2〕
実施例1において、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを塗設せずにポリスチレン球粒子を塗設した後、60℃で25分乾燥した。
このものをSEM観察した結果、ポリスチレン球粒子が規則配列せず、凝集を含む海島構造の構造材料であった。
【0071】
〔実施例5〕
(ナノ粒子を充填したナノホールが規則配列しているナノ構造材料の作製2)
平均直径10nm(変動係数8%)のAuナノ粒子にドデカンチオールを吸着させて分散した3質量%のオクタン分散液を実施例3の規則配列したナノホール内に3000rpmでスピンコートした後、100℃で20分乾燥してナノ構造材料を形成した。
完成したナノ構造材料をSEM観察した結果、規則配列したナノホール内に、Auナノ粒子が規則配列して充填されたナノ構造材料が観察できた。
【0072】
〔実施例6〕
(ポリスチレン球粒子が規則配列しているナノ構造材料の作製3)
表面粗さ(Ra)が0.5nmのガラス基板上に、トレフィルR910(東レ・シリコーン(株)製)の0.5質量%オクタン溶液を塗設、乾燥した後、中心からの距離25mmから60mmの間の円周上に、中心側の弧長が2μmで幅500nmの同心円弧を、幅250nm、深さ20nmの溝で隔離されるように全面に配置した形状に加工した石英ガラスモールドをプレス器で押し付けて200℃で25分加熱した。その後、急冷しながら超音波剥離して、同心円弧が規則配列したポリマー膜を形成した。
次いで、本ポリマー膜にオクタデシルトリメトキシシランの0.05質量%2−エトキシエタノール溶液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させて上記の溝に塗設して、150℃で25分乾燥した。
その後さらに、平均粒径20nm(変動係数10%)のポリスチレン球粒子の0.4質量%分散液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させて塗設した後、60℃で25分乾燥した。
本試料をSEM観察した結果、同心円弧内の溝に規則配列したポリスチレン球粒子のナノ構造材料が作製できた。
【0073】
〔実施例7〕
(ポリスチレン球粒子が規則配列しているナノ構造材料の作製4)
表面粗さ(Ra)が0.5nmのガラス基板上に、オクタデシルトリメトキシシラン(東京化成(株)製)の0.5質量%オクタン溶液を塗設、乾燥した後、中心からの距離25mmから60mmの間の円周上に、中心側の弧長が2μmで幅500nmの同心円弧を、幅250nm、深さ20nmの溝で隔離されるように全面に配置した形状に加工した石英ガラスモールドをプレス器で押し付けて150℃で25分加熱した。その後、急冷しながら超音波剥離して、同心円弧が規則配列し、凹部にアルキル基を有するゾルゲル膜を直接形成した。
次いで、平均粒径20nm(変動係数10%)のポリスチレン球粒子の0.4質量%分散液を滴下し、スピンコータ上で4000rpm回転させて塗設した後、60℃で25分乾燥した。
本試料をSEM観察した結果、同心円弧内の溝に規則配列したポリスチレン球粒子のナノ構造材料が作製できた。
【0074】
〔実施例8〕
(ナノホールが規則配列しているナノ構造材料の形成2)
実施例7で作製したナノ構造材料を、表面からArクラスタイオンビームを照射して、ポリスチレン球粒子の半径位置まで削り取った。その後残ったポリスチレン球粒子をシクロヘキサノンで溶解して除去した。
作製したナノホール構造材料をSEM観察した結果、規則配列したナノホールを有するナノ構造材料が作製されたことが確認できた。
【0075】
〔実施例9〕
(ナノ粒子を充填したナノホールが規則配列しているナノ構造材料の作製2)
平均直径5nm(変動係数8%)のFePtナノ粒子にオレイン酸を吸着させて分散したデカン分散液を実施例8で作製した規則配列したナノホール構造材料上にスピンコートした。250℃で20分乾燥してナノ構造体を形成した。
完成したナノ構造体をSEM観察した結果、規則配列したナノホール内に、FePtナノ粒子が充填された規則配列したナノ構造材料が観察できた。
さらに、本ナノ構造材料をN2+H2(5%)ガス雰囲気中で500℃で30分間加熱処理し、冷却後、その上に、オクタデシルトリメトキシシランの0.01質量%2−エトキシエタノール液を4000rpmでスピンコートし、150℃で20分乾燥した。
その結果、平均表面粗さ(Ra)0.8nm、保磁力4200Oe(エルステッド)の平滑な強磁性媒体が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、大面積に渡って規則配列したナノ構造材料を安価で簡便に提供することができる。本発明のナノ構造材料は、高機能な複合材料、触媒、非線形光学材料、記憶素子など多方面で効果的に利用され得るものである。したがって、本発明の産業上の利用可能性は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、粒径10〜200nmのポリスチレン粒子が規則配列していることを特徴とするナノ構造材料。
【請求項2】
凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、粒径10〜200nmのホールが規則配列していることを特徴とするナノ構造材料。
【請求項3】
凹凸を有するパターン基板の凹部に、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を有しており、かつ、規則配列している粒径10〜200nmのホール内にナノ粒子が充填されていることを特徴とするナノ構造材料。
【請求項4】
前記パターン基板と前記ゾルゲル膜とが、単一の材料からなり一体化していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ構造材料。
【請求項5】
前記ナノ粒子が、金属、金属硫化物、金属酸化物およびポリマーからなる群より選択される材料からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ構造材料。
【請求項6】
アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜を少なくとも凹部に有するパターン基板を用意し、前記パターン基板の凹部に粒径10〜200nmのポリスチレン粒子を規則配列させる工程を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノ構造材料の製造方法。
【請求項7】
基板上に耐熱性膜形成材料を塗設、乾燥した後、パターン付モールドを押し付けて加熱成形することにより凹凸を有するパターン基板を作製する工程を有することを特徴とする請求項6に記載のナノ構造材料の製造方法。
【請求項8】
基板上にパターン付モールドを押し付けて、該基板と該モールドとの間の空隙に耐熱性膜形成材料を流し込んで加熱成形することにより凹凸を有するパターン基板を作製する工程を有することを特徴とする請求項6に記載のナノ構造材料の製造方法。
【請求項9】
前記パターン基板が、アルキル基、フェニル基、エポキシ基およびアミノ基からなる群より選択される1以上の基を有するゾルゲル膜から構成されることを特徴とする請求項7または8に記載のナノ構造材料の製造方法。
【請求項10】
規則配列した前記ポリスチレン粒子の層の上に耐熱性膜形成材料を塗設して加熱成形した後、エッチングとポリスチレン粒子の溶解を行って耐熱性ナノホールを形成させる工程をさらに有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のナノ構造材料の製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項に記載の製造方法により製造したナノ構造材料。

【公開番号】特開2007−190899(P2007−190899A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91712(P2006−91712)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】