説明

視線誘導支援装置及び車両用表示システム

【課題】運転中の運転者の視線を大きく外すことなく、誘導位置を確認させることができる。
【解決手段】車両の前景における前記車両の誘導空間に運転者の視線の誘導を支援する視線誘導支援装置20であって、前記車両のウインドシールドに対向するように前記車両のインストルメントパネルの表面に格子状に配置され且つ点灯時に前記ウインドシールドに投射される複数の点光源25と、前記誘導空間を示す誘導情報を取得する誘導情報取得手段21aと、前記取得した誘導情報が示す誘導空間と前記車両のアイポイントとを結ぶ直線が交わる前記ウインドシールドの交叉位置又はその近傍に投射される前記点光源25を、前記複数の点光源25の中から特定する点光源特定手段21bと、点光源特定手段21bが特定した点光源点灯させる表示制御手段21cと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前景における誘導空間に運転者の視線の誘導を支援する視線誘導支援装置及び該視線誘導支援装置を有する車両用表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の視認性向上のために、車両前方の前景に虚像を重畳表示させる、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置と呼ばれる投影型表示ユニットが一部の車種で採用されている。HUD装置は、特許文献1、2等に示すように、車両のインストルメントパネル(以下、インパネともいう)内に表示源と反射部材を配置し、表示源の表示光を反射部材で車両のウインドシールドやインパネの上面から突出するコンバイナ(反射部)等で運転者に向けて反射させ、運転者の運転視界内で表示内容を視認させている。
【0003】
また、HUD装置の他にも、車両の運転席には公知であるカーナビゲーション装置が搭載されている。カーナビゲーション装置は、車両を運転する運転者に対して、現在車両が走行している付近の地図画像を表示し、その地図画像上に車両の現在位置及び車両の進行方向を表示すると共に、運転者等の操作者が入力した目的地、経由地等の検索条件に基づいて検索したルートを前記地図画像上に重畳して表示している。
【特許文献1】特開2002−211274号公報
【特許文献2】特開2004−130916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のカーナビゲーション装置で運転者を目的地に誘導する場合、2次元又は3次元の地図画像上にルートや誘導用のマークを重畳表示していたため、運転者が指示内容を確認するには、カーナビゲーション装置の画面に視線を移動させる必要があった。しかしながら、運転中に視線を車両の前景からカーナビゲーション装置に移動させることは危険であり、安全性の向上を図るために、運転中の運転者の視線の変化を少なくさせることができる装置が望まれていた。また、カーナビゲーション装置の指示を音声で行うことも考えられるが、人間が外部から受け取る情報のメインは視覚を通じてのものであることを考慮すると、指示内容がうまく伝わらない虞があり、その結果、カーナビゲーション装置に視線を移動させる必要が生じてしまう。
【0005】
さらに、カーナビゲーション装置と上述したHUD装置を組み合わせることも考えられるが、従来のHUD装置の表示領域も車両のウインドシールドの一部やコンバイナという限られたものであり、カーナビゲーション装置と比較すれば、運転者の視線の移動量は少なくて済むが、公知であるように、HUD装置は光学系の反射部材が必要であり、車両への組み付け作業の困難性、メンテナンスの必要性等から装置のコストダウンを図るのが困難であった。
【0006】
よって本発明は、上述した問題点に鑑み、運転中の運転者の視線を大きく外すことなく、誘導位置を確認させることができる視線誘導支援装置及び車両用表示システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1記載の視線誘導支援装置は、図1の基本構成図に示すように、車両の前景における前記車両の誘導空間に運転者の視線の誘導を支援する視線誘導支援装置20であって、前記車両のウインドシールドに対向するように前記車両のインストルメントパネルの表面に格子状に配置され且つ点灯時に前記ウインドシールドに投射される複数の点光源25と、前記誘導空間を示す誘導情報を取得する誘導情報取得手段21aと、前記取得した誘導情報が示す誘導空間と前記車両のアイポイントとを結ぶ直線が交わる前記ウインドシールドの交叉位置又はその近傍に投射される前記点光源25を、前記複数の点光源25の中から特定する点光源特定手段21bと、前記点光源特定手段21bが特定した点光源点灯させる表示制御手段21cと、を有することを特徴とする。
【0008】
上記請求項1に記載した本発明の視線誘導支援装置によれば、誘導情報取得手段21aによって誘導情報が取得されると、該誘導情報が示す誘導空間と車両のアイポイントを結ぶ直線が交わるウインドシールドの交叉位置又はその近傍に投射される点光源25が、複数の点光源25の中から点光源特定手段21bによって特定される。そして、その特定された点光源25が表示制御手段21cによって点灯されることで、ウインドシールドに投射された点光源25の虚像を、誘導空間に重畳視認させる、又は誘導空間の近傍に視認させることができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、図1の基本構成図に示すように、請求項1に記載の視線誘導支援装置において、前記誘導情報が、前記車両から前記誘導空間までの距離を示す距離データを有し、前記点光源特定手段21bが、前記誘導情報の距離データに基づいて、前記ウインドシールドの交叉位置の近傍に投射させる前記点光源25の点灯数を決定し、該決定した点灯数となる前記点光源25を前記複数の点光源25の中から特定する手段であることを特徴とする。
【0010】
上記請求項2に記載した本発明の視線誘導支援装置によれば、誘導情報取得手段21aによって誘導情報が取得されると、誘導情報の距離データに基づいて、前記交叉位置の近傍に投射させる点光源の25の点灯数が点光源特定手段21bによって決定され、該点灯数となる点光源25が特定されるので、誘導空間までの距離に応じて点光源25の点灯数を変化させることができる。
【0011】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項3記載の車両用表示システムは、図1の基本構成図に示すように、指定された目的地までのルートを計算し、車両の現在位置と前記ルートを地図上に重畳表示するナビゲーション装置10と、請求項1又は2に記載の視線誘導支援装置20と、を有し、前記ナビゲーション装置10が、前記ルートと前記車両の現在位置に基づいて前記誘導情報を作成する誘導情報作成手段11a1と、前記誘導情報作成手段が作成した誘導情報を前記視線誘導支援装置20に出力する誘導情報出力手段11a2と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記請求項3に記載した本発明の車両用表示システムによれば、ナビゲーション装置10の誘導情報作成手段11a1によって誘導情報が作成されると、該誘導情報は誘導情報出力手段11a2によって視線誘導支援装置20に出力される。そして、視線誘導支援装置20の誘導情報取得手段21aによって当該誘導情報が取得されると、該誘導情報が示す誘導空間と車両のアイポイントを結ぶ直線が交わるウインドシールドの交叉位置又はその近傍に投射される点光源25が、複数の点光源25の中から点光源特定手段21bによって特定される。そして、その特定された点光源25が表示制御手段21cによって点灯されることで、ウインドシールドに投射された点光源25の虚像を、誘導空間に重畳視認させる、又は誘導空間の近傍に視認させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1,3に記載した本発明によれば、視線誘導支援装置は取得した誘導情報が示す誘導空間と車両のアイポイントを結ぶ直線が交わるウインドシールドの交叉位置又はその近傍に投射される点光源を複数の点光源の中から特定して点灯させるようにしたことから、ウインドシールドに投射された点光源の虚像を、誘導空間に重畳視認させる、又は誘導空間の近傍に視認させることができるため、運転中の運転者の視線の移動量を少なくさせることができる。また、複数の点光源を車両のインストルメントパネルに配置するだけで良いため、組み付け作業及びメンテナンスを容易とすることができる。従って、運転中の運転者の視線を大きく外すことなく、誘導空間を運転者に確認させることができる。
【0014】
以上説明したように請求項2に記載した本発明によれば、誘導情報の距離データに基づいて交叉位置の近傍に投射させる点光源の点灯数を決定するようにしたことから、誘導空間までの距離に応じて点光源の点灯数を変化させることができるため、運転者に遠近感を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1に示す本発明に係る視線誘導支援装置を有する車両用表示システムの一実施形態を、図2〜図9の図面を参照して以下に説明する。
【0016】
図2において、車両用表示システム1は、車両2に搭載されたナビゲーション装置10と、このナビゲーション装置10に通信可能に接続されて車両に搭載された視線誘導支援装置20と、を有して構成している。
【0017】
カーナビゲーション装置10は、図3に示すように、マイクロコンピュータ(μCOM)1と、このμCOM1にそれぞれ接続された操作部2、表示部3、音声出力部4、記憶部5、DVD−ROM等6、速度センサ等7、並びにGPS受信機8等を有して構成している。
【0018】
μCOM11は、周知のように、予め定めたプログラムに従って各種の処理や制御などを行う中央演算処理装置(CPU)11a、CPU11aのためのプログラム等を格納した読み出し専用のメモリであるROM11b、各種のデータを格納するとともにCPU11aの処理作業に必要なエリアを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM11c等を有して構成している。
【0019】
また、ROM11bにはカーナビゲーションに関するアプリケーションプログラムを格納しており、このアプリケーションプログラムはDVD−ROM等16に格納される地図データベース16aに基づいて地図画像を生成したり、後述する本実施の形態に関する処理を行う。そして、CPU11aがアプリケーションプログラムを実行することで、CPU11aが図1に示す請求項中の誘導情報作成手段11a1及び誘導情報出力手段11a2として機能する。なお、このアプリケーションプログラムは、予めROM11bに記憶しているが、DVD−ROM等16に格納し、CPU11aの起動時にRAM11bにロードして常駐するなど種々異なる実施の形態とすることができる。
【0020】
操作部12は、検索条件やルート設定等の指令入力用の各種キースイッチを有する。より具体的には、表示部13に表示された地図画像上の所望の位置にカーソルを移動させる矢印キーや、確認又は画定入力を行うエンターキー、メニュー選択キー等を有する。なお、これらと同様の機能を有するものであれば、他のタイプの指令入力装置や音声入力装置を用いても差し支えない。
【0021】
表示部13は、例えば、周知のバックライト付カラーLCD等の表示装置である。この表示部13には、地図画像や車両の現在地点、これに重畳された検索経路(ルート)、この検索経路に関連する経路案内、経由地点等が表示される。また、音声出力部14は、経路案内する際のガイド音声を出力するスピーカ装置等を用いることができる。
【0022】
記憶部15には、ルート検索を行う条件を示す検索条件情報15a、経由地点を含むルート設定点等のルート設定点データ等が格納される。なお、検索条件情報15aは、利用者による検索条件の入力を不要とするために、例えば、移動時間が最短、移動距離が最短、有料道路の利用の有無等の各種検索条件によって構成している。
【0023】
DVD−ROM等16は、周知のDVD(Digital Versatile Disc)−ROMであり、地図データベース16a等が予め格納されている記憶媒体である。この地図データベース16aは、地図画像を生成するための基データとなる地図画像情報や、地図画像に対応する位置情報等を有する。この位置情報は、例えば、各緯度・経度に対応して代表的な地名、ランドマーク等が割り当てられたテーブルである。
【0024】
接続部17は、μCOM11と電気的に接続されており、車両2の速度センサ等が接続されると共に、ケーブル等を介して視線誘導支援装置20と通信可能に接続される。そして、接続部17は、CPU11aからの要求に応じて誘導情報等の各種情報を視線誘導支援装置20に送信し且つ視線誘導支援装置20から受信した各種情報をCPU11aに出力する。
【0025】
GPS受信機8は、この種のカーナビゲーション装置に標準的に装備されている自車両の現在位置を検出するための現在位置検出手段である。そして、前記速度センサ等及びGPS受信機8等を利用してCPU11aによって算出された現在位置は、自車両の現在位置をドライバに認識させるために、所定のポインタにより、表示部13の地図画像上に重畳されて表示される。
【0026】
このように構成したナビゲーション装置10は、CPU11aが図1に示す請求項中の誘導情報作成手段11a1及び誘導情報出力手段11a2と機能することで、例えば左折、右折、等の誘導を行う場合に、ルートと車両2の現在位置に基づいて誘導ポイント(例えば、左折位置、右折位置、目印となる建物の位置、等)となる位置データ、誘導空間Cから車両2までの距離データ、等を有する誘導情報を作成し、該誘導情報を視線誘導支援装置20に出力する。そして、誘導情報の一例としては、車両2の誘導方向(車両の進行方向に対する角度など)、車両2から誘導位置までの距離、車両2の現在位置、等の車両2の誘導空間Cを示す各種データを有しており、装置の仕様等に応じて任意のデータ構造とすることができる。
【0027】
また、誘導空間Cについては、左折、右折等を指示する際に目印となる例えば建物、道路等の位置情報(2次元又は3次元)や、自車両2の進行方向に対する角度及びその距離を有する角度情報等で誘導空間C中の任意の座標、領域を示している。なお、その座標、領域は、車両2のアイポイントEPの高さ、運転者の座高、等に対応させて任意に定めることで、運転者の視線の移動量をより一層小さくすることができる。
【0028】
次に、上述した視線誘導支援装置20は、図2に示すように、制御部20Aと、メモリ部24と、複数の点光源25と、接続部26と、操作部27と、を有して構成している。
【0029】
制御部20Aは、視線誘導支援装置20の制御全体を司り、公知であるCPU(中央処理装置)21、ROM(読み出し専用メモリー)22、及びRAM(随時書き込み読み出しメモリー)23を含むマイクロコンピュータから構成されている。ROM22は、CPU21を図1に示す請求項中の誘導情報取得手段21a、点光源特定手段21b、表示制御手段21c、等の各種手段として機能させるための後述する表示制御処理プログラム等の各種プログラムを記憶している。CPU21はROM22に記憶されている表示制御処理プログラム等にしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。RAM23には、CPU21が各種の処理を実行する上において必要なデータ等が適宜記憶される。
【0030】
制御部20Aには、メモリ部24と複数の点光源25と接続部26と操作部27とが電気的に接続されている。そして、メモリ部24は、装置本体がオフ状態の間も記憶内容の保持が可能な電気的消去/書き換え可能なメモリ(EEPROM)等が用いられる。メモリ部24には、車両2の現在位置、表示モード情報、表示領域定義情報等の各種情報が記憶されている。表示モード情報は、本発明に係る表示を行うか否かを示す情報であり、操作部40による運転者等の操作に応じてON/OFF状態が切り替えられて設定される。
【0031】
メモリ部24はさらに、誘導空間Cから自車両2までの距離と誘導内容(例えば左折、右折、等)に応じた点光源25の点灯数、点灯パターンを、ウインドシールド3に対する点光源25の虚像Vの視認パターンに基づいて定める点灯パターン情報を記憶している。例えば、点灯パターン情報は、図4に示すように、車両2からの距離に応じて、誘導空間Cが50m先を左折の場合は点灯数を3つ、30m先を左折の場合は点灯数を4つ、20mの先を左折の場合は点灯数を5つ、などのように決定するためのデータ構造となっている。また、点光源25の点灯パターンの一例としては、図4及び図5に示すように、誘導内容が示す車両2の誘導方向に複数の虚像Vが延びるように定めている。
【0032】
また、図2に示すように、点灯パターン情報を、点光源25の表示位置までの表示距離L1と焦点距離L2とを関連付け、焦点距離L2のときに運転者輻輳により視認させる点光源25(虚像S)の視認数を特定するための視認数データを、焦点距離L2毎に対応させ、運転者8の輻輳効果により視認される視認数に対応した点光源25を識別するためのパターンデータを有するデータ構造とすることもできる。このようなデータ構造とすれば、表示がダブル(二重若しくは重複して見える)ことがなくなり、運転者等に違和感を感じさせない表示が可能となる。
【0033】
複数の点光源25は、LED、バルブ等の光源が任意に用いられ、図6に示すように、車両2のウインドシールド3に対向するように、車両2のインストルメントパネル(インパネ)4の上面41に設けられている。複数の点光源25は、車両前方の障害物、前景等の実像に重畳表示させる複数の点光源25の虚像Vをウインドシールド3の車両幅方向における全範囲にわたって対向するように、マトリックス状に配置されている。複数の点光源25の各々は、CPU21の制御によって点灯/消灯が制御され、選択的な表示が可能な構成となっている。
【0034】
複数の点光源25は、図示しない配線板に実装され、該配線板を収容するケースがインパネ3に装着されることで、インパネ4の上面41に連なるように、インパネ4の開口部42に位置付けられて配置される。これにより、複数の点光源25はインパネ4の上面41に一体に組み込まれることになる。また、本実施形態では、アイポイントEPと表示装置10との間のインパネ4の上面41には、当該上面41からウインドシールド3に向かって隆起する遮蔽部43を形成している。これにより、複数の点光源25がアイポイントEPから直接目視されるのを防止している。
【0035】
接続部26は、制御部20AのCPU21ケーブル等を介して上記ナビゲーション装置10と通信可能に接続される。接続部26は、CPU21からの要求に応じた各種情報を上記ナビゲーション装置10に送信し且つ上記ナビゲーション装置10から受信した誘導情報等の各種情報をCPU21に出力する。
【0036】
操作部27は、車両用表示装置1における各種設定等を操作するための複数のスイッチ、ボタン等を有して構成しており、運転者等が操作可能なように車内に設けられている。そして、操作部40は、運転者等による操作内容を示す操作信号を制御部20Aに出力する。
【0037】
次に、視線誘導支援装置20のCPU21が実行する表示制御処理の一例を、図7のフローチャートを参照して以下に説明する。なお、この処理は、電源断、終了要求の発生等に応じて強制終了されることを前提としている。そして、説明を簡単化するために、点光源25の消灯については説明を省略する。
【0038】
視線誘導支援装置20の起動に応じてCPU21が表示制御処理プログラムを実行すると、ステップS11において、メモリ部24の表示モード情報の設定状態に基づいて、表示モードがON状態であるか否かが判定される。ON状態ではないと判定された場合(S11でN)、この判定処理が繰り返される。一方、ON状態であると判定された場合(S11でY)、ステップS12に進む。
【0039】
ステップS12において、接続部26を介してナビゲーション装置10から誘導情報を受信したか否かが判定される。誘導情報を受信していないと判定された場合(S12でN)、ステップS11に戻り、一連の処理が繰り返される。一方、誘導情報を受信していると判定された場合(S12でY)、ステップS13に進む。
【0040】
ステップS13において、その誘導情報が取得されてメモリ部24に記憶され、ステップS14において、その誘導情報が示す誘導空間C(例えば、位置、座標等)が特定され、該誘導空間CとアイポイントEPとを結ぶ直線Lが交わるウインドシールド3の交叉位置P、又はその近傍に投射される点光源25が、メモリ部24の点灯パターン情報と誘導情報とに基づいて特定され、その後ステップS15に進む。
【0041】
ステップS15において、特定された点光源25の点灯とそれ以外の点光源25の消灯が図示しない点光源25のドライバに要求されることで、該当する点光源25のみを点灯させて、ウインドシールド3の交叉位置P、又はその近傍に点光源25が投射され、そのドット状の虚像Vがウインドシールド3の前方に運転者等によって視認され、その後ステップS11に戻り、一連の処理が繰り返される。
【0042】
以上説明したようにCPU21は表示制御処理を実行することで、CPU21が請求項中の図1に示す誘導情報取得手段21a、点光源特定手段21b、表示制御手段21cとして機能することになる。そして、図7に示すフローチャート中のステップS13が誘導情報取得手段21a、ステップS14が点光源特定手段21b、ステップS15が表示制御手段21cの相当している。
【0043】
次に、上述した構成の車両用表示システム1におけるナビゲーション装置10と視線誘導支援装置20の本発明に係る動作(作用)の一例を、図8及び図9の図面等を参照して以下に説明する。
【0044】
ナビゲーション装置10は、図8に示すように、運転者が入力した目的地までのルートGと車両2の現在位置を地図画像上に重畳して表示している場合に、車両2が左折ポイント(誘導空間)までの距離が所定距離(例えば50m等)になったことを検出すると、左折を示す左折マークと左折までの距離を地図画像上に重畳して表示すると共に、音声ガイドで運転者に「50m先を左折」を通知する。そして、ナビゲーション装置10は、それらのデータを有する誘導情報を作成し、該誘導情報を視線誘導支援装置20に出力する。
【0045】
視線誘導支援装置20は、その誘導情報を取得すると、誘導情報が示す誘導空間Cと車両2のアイポイントEPとを結ぶ直線Lが交わるウインドシールド3の交叉位置P又はその近傍に投射される点光源25を複数の点光源25の中から特定し、その特定した光源25のみを点灯させる。
【0046】
これにより運転者は、図9に示すように、ナビゲーション装置10の音声ガイドで左折を認識すると、ウインドシールド3の前方における誘導空間Cには3つの虚像Vが表示されることから、運転者は進行方向に向いていた視線を虚像Vの表示に移動させるだけとなり、その虚像Vの表示によって進行方向に向いた視線をナビゲーション装置10に移動させる必要がなくなるので、視線の移動量を少なくすることができる。
【0047】
以上説明した車両用表示システム1によれば、視線誘導支援装置20は取得した誘導情報が示す誘導空間Cと車両2のアイポイントEPを結ぶ直線Lが交わるウインドシールド3の交叉位置P又はその近傍に投射される点光源25を複数の点光源25の中から特定して点灯させるようにしたことから、ウインドシールド3に投射された点光源25の虚像Vを、誘導空間Cに重畳視認させる、又は誘導空間Cの近傍に視認させることができるため、運転中の運転者の視線の移動量を少なくさせることができる。また、複数の点光源25を車両3のインストルメントパネル4に配置するだけで良いため、組み付け作業及びメンテナンスを容易とすることができる。従って、運転中の運転者の視線を大きく外すことなく、誘導空間Cを運転者に確認させることができる。
【0048】
また、視線誘導支援装置20によれば、誘導情報の距離データに基づいて交叉位置Pの近傍に投射させる点光源25の点灯数を決定するようにしたことから、誘導空間Cまでの距離に応じて点光源25の点灯数を変化させることができるため、運転者に遠近感を持たせることができる。
【0049】
なお、上述した本実施形態では、図2に示すように視線誘導支援装置20をナビゲーション装置10とは別体で構成する場合について説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、視線誘導支援装置20が有する複数の点光源25を単独の表示手段として構成し、この表示手段をナビゲーション装置10で制御する構成として、ナビゲーション装置10に視線誘導支援装置20を組み込むこともできる。
【0050】
また、上述した本実施形態において、視線誘導支援装置20が誘導空間Cに車両2が近づくにつれ、点灯させる点光源25の数を変化させることで、運転者に遠近感を与えることが期待できる。さらに、車両2から誘導空間Cまでの距離に応じて点灯時間(点滅)を変化させることで、運転者に違和感を与えることなく表示を行うことができる。そして、視線誘導支援装置20が有する複数の点光源25の大きさを変化させたり、その表示色を変化させる構成とすることで、運転者の視認性の向上を図ることもできる。
【0051】
このように上述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の視線誘導支援装置及び車両用表示システムの基本構成を示す構成図である。
【図2】車両用表示システムにおける視線誘導支援装置の概略構成を示す構成図である。
【図3】図2中のナビゲーション装置の概略構成の一例を示す構成図である。
【図4】車両から誘導空間までの距離に応じた点灯パターンの一例を説明するための図である。
【図5】点光源の点灯パターンの他の一例を説明するための図である。
【図6】点光源の車両に対する配置例を説明するための図である。
【図7】図2のCPUが実行する表示制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】車両の誘導方向の一例を説明するための図である。
【図9】図8に示す誘導例に対する視線誘導支援装置の表示例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両用表示システム
2 車両
3 ウインドシールド
4 インストルメントパネル(インパネ)
10 ナビゲーション装置
10a1 誘導情報作成手段
10a2 誘導情報出力手段
20 視線誘導支援装置
21a 誘導情報取得手段
21b 点光源特定手段
21c 表示制御手段
25 点光源
C 誘導空間
P 交叉位置
V 虚像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前景における誘導空間に運転者の視線の誘導を支援する視線誘導支援装置であって、
前記車両のウインドシールドに対向するように前記車両のインストルメントパネルの表面に格子状に配置され且つ点灯時に前記ウインドシールドに投射される複数の点光源と、
前記誘導空間を示す誘導情報を取得する誘導情報取得手段と、
前記取得した誘導情報が示す誘導空間と前記車両のアイポイントとを結ぶ直線が交わる前記ウインドシールドの交叉位置又はその近傍に投射される前記点光源を、前記複数の点光源の中から特定する点光源特定手段と、
前記点光源特定手段が特定した点光源点灯させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする視線誘導支援装置。
【請求項2】
前記誘導情報が、前記車両から前記誘導空間までの距離を示す距離データを有し、
前記点光源特定手段が、前記誘導情報の距離データに基づいて、前記ウインドシールドの交叉位置の近傍に投射させる前記点光源の点灯数を決定し、該決定した点灯数となる前記点光源を前記複数の点光源の中から特定する手段であることを特徴とする請求項1に記載の視線誘導支援装置。
【請求項3】
指定された目的地までのルートを計算し、車両の現在位置と前記ルートを地図上に重畳表示するナビゲーション装置と、請求項1又は2に記載の視線誘導支援装置と、を有し、
前記ナビゲーション装置が、前記ルートと前記車両の現在位置に基づいて前記誘導情報を作成する誘導情報作成手段と、前記誘導情報作成手段が作成した誘導情報を前記視線誘導支援装置に出力する誘導情報出力手段と、を有することを特徴とする車両用表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−120501(P2010−120501A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295487(P2008−295487)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】