説明

視覚装置

【課題】より明瞭に撮像できる視覚装置を提供する。
【解決手段】被撮像物1を撮像する撮像手段11と、照明光を発生する照明光発生手段12と、照明光を拡散させる照明光拡散手段13とを備え、照明光拡散手段13は、撮像手段11の光軸の延長上に配置された筒状の部材であり、照明光発生手段12は、照明光拡散手段13の筒壁の外面に照明光を照射できる位置に配置され、照明光拡散手段13の筒壁は、照明光発生手段12から照射された照明光を照明光拡散手段13の内部に透過させ、照明光拡散手段13の内部に透過した照明光を反射・拡散させることができるように形成されており、照明光拡散手段13の内部で反射・拡散された照明光が被撮像物1に当たり、被撮像物1に反射した照明光が照明光拡散手段13の内部を通じて撮像手段11に送られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被撮像物を撮像する視覚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視覚装置では、被撮像物に照明光を当てることによって、被撮像物を明瞭に撮像できるようにしている。具体的には、カメラ撮像方向に対し斜め横に照明を取り付けたり、カメラを囲うようにLEDの照明リングなどを用いている。
【0003】
ちなみに、特許文献1には、照明手段からの照明光を容器の上方、下側および側方のいずれかの方向から容器に導く導光部を有して容器内の液体を照射する液照射手段を備える異物検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−69099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラ撮像方向に対し斜め横に照明を取り付けたり、カメラを囲うようにLEDの照明リングなどを用いる視覚装置は、制約のある環境下では被撮像物を明瞭に撮像するのが困難である。例えば、被撮像物が奥深い箇所にあったり、物理的に巾の狭い箇所にあったりすると、光が通りにくく、被撮像物全体を明るく照射することが困難である。
【0006】
例えば視覚装置を製品検査に用いる場合には、被撮像物全体を明るく照射できないと、検出したい部位が暗くなって正確に撮像することができずに誤判定をすることになる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、より明瞭に撮像できる視覚装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、被撮像物(1)を撮像する撮像手段(11)と、
照明光を発生する照明光発生手段(12)と、
照明光を拡散させる照明光拡散手段(13)とを備え、
照明光拡散手段(13)は、撮像手段(11)の光軸の延長上に配置された筒状の部材であり、
照明光発生手段(12)は、照明光拡散手段(13)の筒壁の外面に照明光を照射できる位置に配置され、
照明光拡散手段(13)の筒壁は、照明光発生手段(12)から照射された照明光を照明光拡散手段(13)の内部に透過させ、照明光拡散手段(13)の内部に透過した照明光を反射・拡散させることができるように形成されており、
照明光拡散手段(13)の内部で反射・拡散された照明光が被撮像物(1)に当たり、被撮像物(1)に反射した照明光が照明光拡散手段(13)の内部を通じて撮像手段(11)に送られることを特徴とする。
【0009】
これによると、照明光拡散手段(13)で拡散された照明光を被撮像物(1)に照射するので、被撮像物(1)を明るく照射することができる。また、照明光拡散手段(13)の内部を通じて被撮像物(1)を撮像するので、照明光拡散手段(13)が被撮像物(1)の撮像の妨げになることを回避できる。このため、被撮像物(1)をより明瞭に撮像することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、照明光拡散手段(13)は、被撮像物(1)側における先端部が被撮像物(1)の周囲を囲うことができるようになっていることを特徴とする。
【0011】
これによると、照明光拡散手段(13)の先端部からの光の漏れを抑制することができるので、被撮像物(1)に光を効果的に当てることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、照明光拡散手段(13)のうち被撮像物(1)側における先端部には、被撮像物(1)との干渉を回避するための切り欠き(13a)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、照明光拡散手段(13)の先端部からの光の漏れをより効果的に抑制することができる。
【0014】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発明において、具体的には請求項4に記載の発明のように、照明光拡散手段(13)の筒壁はハーフミラーになっていればよい。
【0015】
以上では、本発明を視覚装置の発明として把握した場合について説明したが、本発明を視覚装置用拡散筒の発明として把握することも可能である。
【0016】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態における視覚装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1の模式図である。
【図3】図1の拡散筒の単体図である。
【図4】第1実施形態による撮像画像を模式的に示す図である。
【図5】第2実施形態における視覚装置の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を説明する。図1は、本実施形態の視覚装置10の全体構成を示す断面図であり、図2は図1の模式図である。図1、図2の上下の矢印は、視覚装置の設置状態における上下方向(鉛直方向)を示している。
【0019】
視覚装置10は、半導体モジュールのパワー端子とバスバーとの溶接部の検査や、高圧端子の溶接部の検査等に用いられるものであり、主な構成機器としてカメラ11、照明12、拡散筒13および補助照明14を有している。これらの構成機器11〜14は、ロボットの搬送アーム20に支持されており、ロボットの可動範囲内において撮像場所を移動できるようになっている。
【0020】
カメラ11は、被撮像物1を撮像する撮像手段をなすものであり、本例では被撮像物1を上方から撮像するように配置されている。具体的には、カメラ11は、光軸が鉛直方向と平行になるように、被撮像物1の上方に配置されている。
【0021】
カメラ11からの出力信号は、図示しない画像処理装置に入力されるようになっている。画像処理装置は、例えばカメラ11による撮像画像に対して拡大や輝度補正等の画像処理を適宜行った後、溶接部の溶接良否を判定する。
【0022】
照明12、拡散筒13および補助照明14は、カメラ11と被撮像物1との間に配置されている。照明12は、照明光を発生する照明光発生手段をなすものであり、本例ではLEDのドーム照明が用いられている。
【0023】
拡散筒13は、照明光を拡散させる照明光拡散手段をなすものであり、カメラ11の光軸の延長上に配置されている。具体的には、拡散筒13は、中空の筒状の部材であり、細長く真っ直ぐに形成され、カメラ11の光軸と同軸状に配置されている。拡散筒13の先端部(下端部)は、被撮像物1にできるだけ近づけられている。
【0024】
拡散筒13の上部(カメラ11側の部位)は照明12で囲われている。本例では、拡散筒13の全周が照明12で囲われているが、必ずしも全周にわたって囲われている必要はない。すなわち、照明12は、拡散筒13の筒壁の外面に照明光を照射できる位置に配置されている。
【0025】
本例では、照明12は、拡散筒13の軸方向(上下方向)に対してほぼ斜め45°の角度で上方から光を当てるようになっている。拡散筒13に対する照明12の照射角度は適宜変更が可能である。
【0026】
拡散筒13の筒壁は、ハーフミラーに加工されている。これにより、拡散筒13の筒壁を透過する光と、拡散筒13の筒壁で反射する光の割合が1:1になる。本例では、拡散筒13は、透明アクリルからなる筒状の樹脂材の内周側にブラスト処理をかけて形成されており、白く濁った色あいになっている。また、本例では、拡散筒13の上端部、具体的には照明12の光が当てられない部位は、ハーフミラーに加工されておらず透明になっている。
【0027】
補助照明14は、照明光の光量を補うための補光手段であり、本例ではLEDのリング照明が用いられている。具体的には、補助照明14は、拡散筒13の下部(被撮像物1側の部位)を囲い、拡散筒13の軸方向に対して斜め上方から光を当てるようになっている。本例では、補助照明14は、照明12に比べて拡散筒13の軸方向に近い角度で光を当てるようになっている。
【0028】
なお、補助照明14は必須のものではなく、照明12によって光量を十分確保できる場合には補助照明14を用いる必要はない。
【0029】
図3は、拡散筒13の単体図(二面図および断面図)である。図3の例では、3本の管状部材をつなぎ合わせることによって拡散筒13を形成しており、3本の管状部材のうち被撮像物1側の2本の管状部材にハーフミラー加工を施し、残りの1本の管状部材(すなわちカメラ11側の管状部材)にはハーフミラー加工を施していない。
【0030】
拡散筒13の先端部および残余の部位の断面形状は、円でも四角形でも形状は問わない。図3の例では、拡散筒13の先端部の形状及び大きさを被撮像物1に合わせている。具体的には、略矩形状で、被撮像物1より少し大きくしてある。また、図3の例では、拡散筒13の先端部以外の部位の形状および大きさを、先端部よりも少し大きな円形にしている。
【0031】
次に上記構成における作動を説明する。まず、図示しないロボットにより、拡散筒13の先端部を被撮像物1に近づける。次いで、照明12および補助照明14を点灯し、カメラ11で被撮像物1を撮像する。
【0032】
本例では、視覚装置10は、半導体モジュールのパワー端子とバスバーとの溶接部の検査や、高圧端子の溶接部の検査等に用いられるものであるので、カメラ11の撮像画像を図示しない画像処理装置で画像処理した後、溶接部の溶接良否を判定する。
【0033】
図4は、本実施形態による撮像画像を模式的に示す図である。カメラ11の視覚エリアAにおいて、被撮像物1は拡散筒13の内部を通して撮像される。
【0034】
このとき、図2に示すように、照明12から斜め下方に向かって発せられた照明光A1は拡散筒13の筒壁から内部に透過する。本例では、拡散筒13はハーフミラーに加工されているので、半分の照明光が拡散筒13の筒壁から内部に透過し、残りの半分は拡散筒13の筒壁で反射する。拡散筒13の筒壁で反射した光の一部は、拡散筒13の外部を伝って被撮像物1を照射する。
【0035】
そして拡散筒13の内部に浸透した光は拡散筒13の内部において筒壁で乱反射を繰り返した後、下方側の被撮像物1に当たる。なお、図2は、拡散筒13の内部で乱反射する光を模式的に示しており、実際にはこの図のように直進性ではない。
【0036】
被撮像物1に反射した光A2は拡散筒13の内部を通して上方側のカメラ11に送られるので、被撮像物1全体がはっきり明るく見えるようになる。
【0037】
すなわち、本実施形態によると、拡散筒13で拡散された光を被撮像物1に照射するので、被撮像物1を明るく照射することができる。また、拡散筒13の内部を通じて被撮像物1を撮像するので、拡散筒13が被撮像物1の撮像の妨げになることを回避できる。
【0038】
したがって、被撮像物1が奥深い箇所にあったり、物理的に巾の狭い箇所にあったりといった制約のある環境下であっても、被撮像物1を明瞭に撮像することができる。
【0039】
なお、本実施形態のように溶接部の検査に用いる場合には、溶接部に光が当たりすぎると溶接部が強く光って不明瞭になってしまうので、照明12および補助照明14の光量・配置や拡散筒13の太さ・長さ等を適宜調整することで溶接部に柔らかな光が当たるようにするのが好ましい。
【0040】
また、図1、図2の例では、拡散筒13の先端部(下端部)を被撮像物1にできるだけ近づけているが、拡散筒13の先端部を被撮像物1側にさらに近づけて、拡散筒13の先端部を被撮像物1側に沈めてもよい。換言すれば、拡散筒13の先端部が被撮像物1の周囲を囲うようにしてもよい。
【0041】
これにより、拡散筒13の先端部からの光の漏れを防止して、被撮像物1の細部まで光が効果的に当たるようにすることができる。例えば、被撮像物1が半導体モジュールのパワー端子とバスバーとの溶接部や高圧端子の溶接部である場合、溶接の頂部のみならず溶接の裾野部まで光が効果的に当たって明瞭に視認できるようになる。
【0042】
(第2実施形態)
本第2実施形態では、図5に示すように拡散筒13の先端部(下端部)を被撮像物1側に沈めることによって、被撮像物1全体を一層明瞭に見えるようにしている。具体的には、拡散筒13の先端部に、被撮像物1との干渉を回避するための切り欠き13aが形成されており、切り欠き13a以外の部分(壁部)で被撮像物1を囲うようにしている。
【0043】
これにより、被撮像物1との干渉を回避して、拡散筒13の先端部を被撮像物1側に沈めることができるので、拡散筒13の先端部からの光の漏れを防止して、被撮像物1の細部まで光が効果的に当たるようにすることができる。
【0044】
なお、切り欠き13aの形状、配置および個数等は、被撮像物1との干渉箇所に応じて適宜変更すればよい。
【0045】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、拡散筒13をハーフミラーに加工しているが、これに限定されるものではなく、光の入る箇所だけを透明などにして反射することなく全透過させるようにしたり、光の入る箇所を除いて全ミラーにしたりしてもよい。ちなみに、拡散筒13のうち光が入る箇所よりもカメラ11側の部位は、光を反射する必要はない。
【0046】
また、上記実施形態は、拡散筒13の具体的構成の一例を示したものに過ぎず、拡散筒13の具体的構成を種々変形可能である。要するに、拡散筒13は、照明光を内部に透過させる透過部と、内部に透過した光を反射・拡散させる反射部とを有し、拡散した光を被撮像物に当て、被撮像物に反射した光をカメラに送ることができるようになっていればよい。
【0047】
また、上記実施形態では、視覚装置10を半導体モジュールのパワー端子とバスバーとの溶接部の検査や、高圧端子の溶接部の検査等に用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、視覚装置10を種々の被撮像物の撮像に用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 被撮像物
11 カメラ(撮像手段)
12 照明(照明光発生手段)
13 拡散筒(照明光拡散手段)
13a 切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被撮像物(1)を撮像する撮像手段(11)と、
照明光を発生する照明光発生手段(12)と、
前記照明光を拡散させる照明光拡散手段(13)とを備え、
前記照明光拡散手段(13)は、前記撮像手段(11)の光軸の延長上に配置された筒状の部材であり、
前記照明光発生手段(12)は、前記照明光拡散手段(13)の筒壁の外面に前記照明光を照射できる位置に配置され、
前記照明光拡散手段(13)の筒壁は、前記照明光発生手段(12)から照射された前記照明光を前記照明光拡散手段(13)の内部に透過させ、前記照明光拡散手段(13)の内部に透過した前記照明光を反射・拡散させることができるように形成されており、
前記照明光拡散手段(13)の内部で反射・拡散された前記照明光が前記被撮像物(1)に当たり、前記被撮像物(1)に反射した前記照明光が前記照明光拡散手段(13)の内部を通じて前記撮像手段(11)に送られることを特徴とする視覚装置。
【請求項2】
前記照明光拡散手段(13)は、前記被撮像物(1)側における先端部が前記被撮像物(1)の周囲を囲うことができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の視覚装置。
【請求項3】
前記照明光拡散手段(13)の前記先端部には、前記被撮像物(1)との干渉を回避するための切り欠き(13a)が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の視覚装置。
【請求項4】
前記筒壁はハーフミラーになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の視覚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−11448(P2013−11448A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142719(P2011−142719)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】