説明

触媒使用染料系

本発明は、基質に適用するための染料系に関し、この染料系は、(a)少なくとも1種の染料前駆体、(b)酸化剤および(c)触媒を含有して成りかつ前記触媒は均一触媒または不均化触媒である。好適には、前記触媒は少なくとも1種の金属含有化合物を含んで成る。本発明は、また、基質を着色する方法も意図し、この方法は、前記基質を本発明の染料系で処理することを含んで成る。本発明の好適な態様における基質は、人毛、天然もしくは合成重合体または織物繊維を含んで成る。好適なさらなる態様における少なくとも1種の染料前駆体は有機前駆体であり、触媒として用いる少なくとも1種の金属誘導体は少なくとも1種の無機金属化合物または少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体を含んで成りそして酸化剤は過酸化水素である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に織物繊維、最も特別には人毛の染色に適用可能な多成分触媒使用染料系に関する。最も詳細には、本発明は酸化染料系に関する。
【背景技術】
【0002】
織物繊維の染色は世界中の主要な産業であり、この目的で用いるに適していて経済性、染色特性、および健康、安全および環境上の考慮などの如き要因に関して改善をもたらし得る改良された新規な物質を見つけだす努力が継続して行われている。特に、織物繊維に有効かつ便利に適用可能でありかつ良好な堅牢特性を有する非常に強い色合いを妥当なコストでもたらす染料の開発に興味が持たれている。
【0003】
社会的観点から毛髪の着色は重要なビジネスであることから、専門のサロンおよび家庭の両方で毛髪を染めようとする人の数は着実に増えている(http://www.pg.com; http://www.henkel.com)。しかしながら、着色剤を毛髪に付けて毛髪を染めようとする人は、使用時の材料の性質の観点で有意な健康上の危険にさらされることから、人の健康に対する如何なる潜在的危険も最小限にする目的で、毛髪を染める代替の天然で無毒の非発癌性手段を開発することは好ましいことである。加うるに、現在入手可能な毛髪着色剤は環境を壊さず利用可能な源に由来するものではなく、それらの製造で化石燃料を消費することから、毛髪着色産業で天然植物が基になった染料を代わりに用いることができるようになれば、これは好ましいことである。
【0004】
今日では永久毛髪着色が毛髪着色市場の少なくとも80%を占めている(非特許文献1)。その系は、未着色前駆体を毛髪の中に拡散させてその中でそれの酸化反応を起こさせて所望の色をインサイチューで生じさせることに依存しており、その着色剤は一般に少なくとも24回の洗髪に耐える。永久酸化毛髪着色は典型的に下記の如き3成分を伴う:
(a)主要中間体(または「基材」)[これは一般にオルソ−もしくはパラ−置換(ヒドロキシ、アミン、置換アミン)芳香族アミン(例えば1−5である]
(b)カップラー[これは一般に電子供与基を少なくとも1個(通常は2個のメタ−)有する芳香族化合物(例えば6−13)である]、および
(c)酸化剤[これはほとんど常に過酸化水素(H)である]。
【0005】
【化1】

【0006】
しかしながら、その用いられている成分、特に用いられている主要中間体のほぼ全部に存在する芳香族アミンが示す潜在的な毒物学的影響に関して有意な懸念が存在する、と言うのは、それらの多くは発癌物質、腫瘍誘発物質または突然変異誘発物質であると疑われておりかつ生殖に影響を与える可能性があるからである(http://hazard.com/msds/tox)。実際、前記主要中間体およびカップラーの多くはほぼ近い将来に人への使用が禁止される可能性があると考えられている。2008年に、世界保健機関は、毛髪染料成分であるp−フェニレンジアミン(PPD;1)は膀胱ガンの危険性を増大させる(Cancer Research UK, http://www.cancerhelp.org.uk/help/default.asp?page=4124)ことと、PPDは大部分の毛髪着色剤配合物の重要な成分であることと、それは単独、過酸化水素の存在下およびカップラーが存在しない時に発癌物質であると疑われていると同時にそれは三量体[即ち、スキーム1に示す如き「Bandrowski塩基」、これは非特許文献2で考察されていて、突然変異誘発物質であることが知られている(非特許文献3)]を形成し得ると言った証拠を発表した。
【0007】
【化2】

【0008】
また、PPDおよび他の化合物、例えばp−トルエンジアミン(PTD;2)、レゾルシノール(6)およびアンモニアなども毛髪および皮膚の着色で用いるとひどい副反応を引き起こす可能性がある(非特許文献4、5、6)。アレルギー性接触皮膚炎は一般に非特許文献7に示されているようにp−フェニレンジアミンとの接触に関連している。
そのような疑わしい化合物が大部分の毛髪着色剤配合物に用いられていて、最も大衆向けの色である褐色および黒色の色合いに必須である。従って、有意な健康障害を引き起こさない着色剤の使用が好ましくかつ潜在的に必要であり、これは必ずあまり有害ではない合成成分とより多い使用量の天然化合物の組み合わせを伴うことになるであろう。
【0009】
加うるに、数多くの酸化毛髪着色系は、染料前駆体が毛髪の中により容易に染み込むように毛髪のキューティクルを上昇させると同時にまた過酸化水素を活性化させることをアルカリ性作用剤、典型的にはアンモニアの使用に依存している。明らかに、また、アンモニアを使用する必要がないように改良された系が得られたならば、これも好ましいことである。
【0010】
p−フェニレンジアミンを用いない毛髪用酸化染料系が特許文献1に開示されており、それは、毛髪用染料、推定有機金属化合物および酸化剤を含有して成る。その推定有機金属化合物は好適には有機チタネート化合物、特にテトラアルキルチタネートまたはチタネートキレートであると述べられている。そのような化合物は体に塗布する局所的組成物の直染性を向上させる目的で用いるに有用であると述べられており、そのような組成物は、1種以上の化粧品的および/または治療的に有益な作用剤、加水分解性もしくは交換可能配位子を有する結合剤および担体を含有して成る。
【0011】
本発明者らは、潜在的に有害な物質の使用を回避する目的で、より幅広い範囲の金属含有触媒を毛髪染色系で使用することを調査した。本発明者らは、有機前駆体と金属含有触媒と酸化剤の組み合わせが基になった適切な系が存在し得ることを見いだした。また、そのような染料系の多くは織物繊維基質の染色に適用可能であることも見いだした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO-A-2006/106366
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】J.S. Anderson, J. Soc. Dyers Col., 2000, 116, 193
【非特許文献2】M. Picard, C. Cannistraci, A. Cristaudo, C. de LucaおよびB. Santucci (Dermatologica, 1990, 181, 104)
【非特許文献3】B.N. Ames, H.O. KammenおよびE. Yamasaki, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1975, 72, 2423
【非特許文献4】C.J. Le Coz, C. Lefebvre, F. Keller, E. Grosshans, Arch. Dermatol. 2000, 136, 1515
【非特許文献5】C.J. Le Coz, Rev. Fr. Aller. Immunol. Clin. 2001, 41, 504
【非特許文献6】M. Onder, C.A. Atahan, P. Oztas, M.O. Oztas, Int. J. Dermatol. 2001, 40, 577
【非特許文献7】E.M. Coulter, C. Jenkinson, Y. Wu, J. Farrell, B. Foster, A. Smith, C. McGuire, C. Pease, D. Basketter, C. King, P.S. Friedman, M. Pirmohamed, B.K. ParkおよびD.J. Naisbett (J. Investig. Dermatol. 2008, 128, 897
【発明の概要】
【0014】
従って、本発明の1番目の面に従い、基質に適用するための染料系を提供し、前記染料系は、
(a)少なくとも1種の染料前駆体、
(b)酸化剤、および
(c)触媒、
を含有して成り、かつ前記触媒は均一触媒または不均化触媒である。
【0015】
本発明の好適な態様において、前記触媒は少なくとも1種の金属含有化合物を含んで成る。
【0016】
本発明の1つの好適な態様において、前記基質は人毛を含んで成る。本発明の代替態様において、前記基質は天然もしくは合成高分子基質を含んで成る。本発明の追加的態様は、織物繊維である基質の使用を意図する。
【0017】
本発明の1つの好適な態様において、前記少なくとも1種の染料前駆体は有機前駆体である。前記態様は特に前記染料系を人毛に適用することを意図する時に好適である。
【0018】
典型的には、前記少なくとも1種の染料前駆体は芳香族アミノ化合物、フェノール化合物またはアミノフェノール化合物を含んで成る。
【0019】
本発明の別の好適な態様において、触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物は少なくとも1種の無機金属化合物を含んで成る。
【0020】
本発明の代替態様において、触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物は少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体を含んで成る。
【0021】
典型的な酸化剤、特に織物基質を染色するための酸化剤には、過炭酸塩、過硫酸塩、有機過酸および有機ヒドロパーオキサイドが含まれる。特定の状況下では、また、酸素分子(空気を包含)も使用可能である。しかしながら、好適な酸化剤は過酸化水素である
本発明の2番目の面に従い、基質を着色する方法を提供し、前記方法は、
(a)前記基質を少なくとも1種の染料前駆体で処理し、
(b)前記基質を酸化剤で処理し、そして
(c)前記基質を触媒で処理する、
ことを含んで成り、かつ前記触媒は均一触媒または不均化触媒である。
【0022】
本発明の2番目の面の最も好適な態様において、前記触媒は少なくとも1種の金属含有化合物を含んで成る。
【0023】
本発明の2番目の面の好適な態様において、少なくとも1種の染料前駆体、酸化剤および触媒による前記基質の前記処理を同時に実施する。本発明の代替態様として、前記処理を順次実施する。
【0024】
好適には、前記基質を前記染料系が入っている水溶液中で処理することで前記方法を実施する。
【0025】
本発明の好適な態様として、前記基質を人毛、天然もしくは合成高分子基質または織物繊維である基質から選択する。前記基質が人毛を含んで成る場合には、前記方法を周囲温度で実施するのが好適である。天然もしくは合成高分子基質および織物繊維の場合には、前記方法を適切な温度および圧力のいずれかで実施してもよい。このように、特定の態様では、織物繊維の着色を大気圧下で好適には20°−110℃の範囲内の温度で実施する。代替態様では、織物繊維の着色を高圧で実施してもよい。1−500バールの範囲内のいずれかの圧力を用いてもよいが、典型的に適切な圧力は1−20バールの範囲内であると思われ、適宜、100°−200℃の範囲内の相当する高温を用いてもよい。
【0026】
本発明の2番目の面に従う方法の好適な態様では、下記の条件の中の少なくとも1つを適用する:
・前記少なくとも1種の染料前駆体が有機前駆体(これは好適には易酸化性有機前駆体であり、例えば芳香族アミノ化合物、フェノール化合物またはアミノフェノール化合物から選択可能である)を含んで成ること、
・触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の無機金属化合物または少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体を含んで成ること、および
・前記酸化剤が過酸化水素であること。
【0027】
発明の説明
最も好適な態様では、本発明の染料系を人毛に適用する。
【0028】
前記少なくとも1種の染料前駆体の好適な例には、存在する毛髪染色用成分、例えばp−アミノフェノール(4)、o−アミノフェノール(5)、p−アミノ−o−クレゾール(8)、m−アミノフェノール(9)、p−クロロレゾルシノール(10)、2,3−ジヒドロキシナフタレン(11)および3−メチルカテコール(12)など、毛髪染色用成分として現在は用いられていない同様な官能化前駆体、例えば4−メチルレゾルシノール(14)、p−アミノ安息香酸(15)(これはまたある種のサンスクリーンに入れる紫外線フィルターとしても用いられている)、1,3−ジヒドロキシナフタレン(16)および1,4−ジヒドロキシナフタレン(17)などに加えて、それらの天然に存在する化合物および誘導体が含まれ、それの例には、フェノール化合物、例えば没食子酸(18)、タンニン酸(19)、バニリン(20)、フロログルシノール(21)およびオルシノール(22)など、およびこれらの誘導体が含まれる。
【0029】
【化3】

【0030】
そのような物質は全部本発明の1番目の面に従う染料系の成分として酸化剤および触媒と組み合わせて本発明の2番目の面に従う方法で使用可能である。従って、特定の態様では、そのような誘導体の各々に試験を個別に少なくとも1種の金属含有触媒および酸化剤(通常は過酸化水素の形態)を含有して成る(各々を漂白しておいた白色の毛髪見本に加えた)系に入れる毛髪用染料前駆体として受けさせた。m−アミノフェノールおよびp−アミノ−o−クレゾールを用いると結果として暗赤色/褐色の色合いがもたらされ、o−アミノフェノールは褐色の色合いをもたらし、そしてp−アミノフェノールはほとんど黒色の着色をもたらした。加うるに、p−クロロレゾルシノールおよび2,3−ジヒドロキシナフタレンは両方とも金髪色を与えたが、3−メチルカテコールを用いる結果として中程度に褐色の色合いがもたらされた。没食子酸およびタンニン酸(これらは両方とも特定の木および茶葉に存在するポリフェノールである)は両方とも結果として有意な赤色/褐色着色をもたらした。フロログルシノール(果実の木の樹皮から単離可能である)、オルシノール(これは様々な種の地衣類に存在する)およびカテコール(果実および植物、例えばリンゴおよびジャガイモなどに存在)は全部が金髪色をもたらしたが、バニリンはバニラの天然の香りがする金髪色をもたらし、これは潜在的に有用な追加的特徴を与えるものである。
【0031】
そのような天然に存在するフェノール化合物の適切な誘導体には、サリチル酸の誘導体、例えば5−アミノサリチル酸(23)などが含まれる一方、また、芳香族アミノ誘導体、例えばイサチン(24)、1−メチルインドール(25)および2−メチルインドール(26)なども本発明に従って使用可能である:
【0032】
【化4】

【0033】
5−アミノサリチル酸を触媒および酸化剤と組み合わせて漂白しておいた白色の毛髪見本に適用すると明褐色の色がもたらされたが、イサチンおよび2−メチルインドールは両方とも結果として淡黄色をもたらしそして1−メチルインドールは緑色をもたらした。
【0034】
本発明の好適なさらなる態様において、触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物は少なくとも1種の無機金属化合物を含んで成る。好適な無機金属化合物はd−ブロックの遷移金属、例えばスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウムおよび亜鉛などの化合物を含んで成り、それには、これらに限定するものでないが、そのような金属の酢酸塩、アセチルアセトネート、アルミン酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、臭素酸塩、炭酸塩、亜塩素酸塩、シアン化物、ジエチルクエン酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、燐酸二水素塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、硫化水素塩、亜硫酸水素塩、水酸化物、次亜塩素酸塩、ヨウ素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、しゅう酸塩、酸化物、パーフルオロフタロシアニン、過酸化物、燐酸塩、フタロシアニン、ピロ燐酸塩、ケイ酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、酒石酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、チオシアン酸塩、チオレート、チオ硫酸塩、トシレートおよびトリフレートが含まれる。
【0035】
これに関連して特に好適な化合物には、TiBr2, TiBr4, TiCl2, TiCl3, TiCl4, TiF3, T
iF4, Ti2O3, TiO(SO4), (TiO2)(SiO2), TiS2, VBr3, VCl2, VCl3, VCl4, V2O3, V2O4, V2O5, VO(SO4), VOCl3, VOF3, V(C5H7O2)3, VO(C5H7O2)2, VO(OR)3, Mo2(OCOCH3)4, Mo(CO)6, MoCl3, MoCl5, MoO2Cl2, MoF6,MoO2, MoO3, MoS2, MoOCl4, MoSO4, Mn(OCOCH3)2, Mn(OCOCH3)2.xH2O, Mn(C5H7O2)2, MnBr2,MnBr2.xH2O, MnCO3, MnCO3.xH2O, Mn2(CO)10, MnCl2, MnCl2.xH2O,MnF2, MnF3, Mn(HCO2)2.xH2O, Mnl2, Mn(NO3)2, Mn(NO3)2.xH2O, Mn3O4, Mn2O3, MnO2, Mn(C32H16N8), MnSO4, MnSO4.xH2O, MnS, Fe(OCOCH3)2, Fe(OCOCH3)3, FeBr2, FeBr3, FeCl2, FeCl2.xH2O, FeCl3, FeCl3.xH2O, Fe(OEt)3, FeSO4.NH3CH2CH2NH3SO4.4H2O, Fe4[Fe(CN)6]3, FeF2, FeF3, FeF3.xH2O, Fel2, Fe(CH3CHOHCOO)2.xH2O, Fe(NO3)3.xH2O, Fe(C2O4).xH2O, FeO, Fe2O3, Fe3O4, FePO4.xH2O, Fe(C32H16N8), FeSO4.xH2O, FeS, Fe(BF)4.xH2O, FeO3Ti, Fe(SCN)2, Co(OCOCH3)2, Co(OCOCH3)2.xH2O, Co(C5H7O2)2,
Co(C5H7O2)2.xH2O, Al2CoO4, CoBr2, CoBr2.xH2O, CoCO3, CoCO3.xH2O, Co2(CO)8,CoCl2, CoCl2.xH2O, CoF2, Co[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2, Co(OH)2, Col2, Co(NO3)2, Co(NO3)2.xH2O, Co(C2O4), Co(C2O4).xH2O, CoSO4, CoSO4.xH2O, Co(BF4)2, Co(BF4)2.xH2O, Co(SCN)2, Ni(OCOCH3)2, Ni(OCOCH3).xH2O, Ni(C5H7O2)2, NiBr2, NiBr2.xH2O, NiCO3, Ni(CO3).xNi(OH)2, NiCl2, NiCl2.xH2O, NiOCoO, Ni[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2, NiF2, Ni(OH)2, Nil2, Ni(NO3)2, Ni(NO3)2.xH2O, Ni(C2O4), Ni(C2O4).xH2O, NiO2, NiO2.xH2O, Ni(C32H16N8), Ni(SO3NH2)2, Ni(SO3NH2)2.xH2O, NiSO4, NiSO4.xH2O, Ni3S2, NiZnFe4O4, CuOCOCH3, Cu(OCOCH3)2, Cu(OCOCH3)2.xH2O, Cu(C5H7O2)2, CuBr, CuBr2, CuCO3, CuCO3.Cu(OH)2, CuCl, CuCl2, CuCl2.xH2O, Cu[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2, CuF2, CuF2.xH2O, Cu(HCO2)2, Cu(HCO2)2.xH2O, Cu(OH)2, Cu2(OH)PO4, Cul, CuFe2O4, Cu(NO3)2, Cu(NO3)2.xH2O, Cu2O, CuO, Cu(C32H16N8), Cu2P2O7.XH2O, CuSO4, CuSO4.xH2O, CuS, Cu[O2CCH(OH)CH(OH)CO2].xH2O, Cu(BF4)2, Cu(BF4).xH2O, Cu(SCN), Zn(OCOCH3)2, Zn(OCOCH3)2.xH2O, Zn(C5H7O2)2, Zn(C5H7O2)2.xH2O, ZnBr2, ZnBr2.xH2O, ZnCl2, ZnF2, Zn(C32F16N8), Zn(C5HF6O2)2, Zn(C5HF6O2)2.xH2O, ZnSiF6.xH2O, Znl2, ZnFe2O4,Zn(NO3)2, Zn(NO3)2.xH2O, Zn(C2O4), Zn(C2O4).xH2O, ZnO, ZnO.xH2O, ZnO2, Zn3(PO4)2, Zn(C32H16N8), ZnSO4, ZnSO4.xH2O, ZnS, Zn(BF4)2, Zn(BF4)2.xH2O, Zn2TiO4, Zr(OCOCH3)4, Zr(OCOCH3)x(OH)4-x, Zr(C5H7O2)4, Zr(C26H44O16), ZrCO3(OH2)2.ZrO2, ZrCl4, ZrF4, ZrF4.xH2O, Zr(HPO4)2, Zr(OH)4, Zrl4, ZrO(NO3)2, ZrO(NO3)2.xH2O, Zr(SO4)2, Zr(SO4)2.xH2O, ZrOCl2 および ZrOCl2.xH2Oが含まれる。そのような化合物を例えば容易に入手可能なアミノフェノール化合物、例えばp−もしくはm−アミノフェノールなどおよび酸化剤、例えば過酸化水素などと組み合わせて適用してもよい。
【0036】
このように、p−アミノフェノールおよび過酸化水素と組み合わせて適用する場合、Fe化合物は暗褐色の色をもたらす一方、ZnClおよびZnFは非常に強い赤褐色の色をもたらしそしてZrClOおよびMnClは非常に暗い褐色、即ちほとんど黒色の色をもたらした。しかしながら、そのような物質をm−アミノフェノールと組み合わせて用いると特定の差が観察され、その結果として、Fe化合物は再びZrClOおよびMnClと同様に暗褐色の色をもたらしたが、ZnClおよびZnFは全く着色をもたらさなかった。このような挙動の差は、その2種類の有機種の間の酸化の容易さの差によるものであると考えており、p−アミノフェノールの方がm−アミノフェノールよりもずっと容易に酸化され易い。
【0037】
触媒として用いるに適した代替の金属観化合物は、1族のアルカリ金属、例えばカリウムなどまたは2族のアルカリ土類金属、例えばマグネシウムなどの塩を含んで成る。適切な塩の具体例には、酢酸塩、アセチルアセトネート、アルミン酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、臭素酸塩、炭酸塩、亜塩素酸塩、シアン化物、ジエチルクエン酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、燐酸二水素塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、硫化水素塩、亜硫酸水素塩、水酸化物、次亜塩素酸塩、ヨウ素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、しゅう酸塩、酸化物、パーフルオロフタロシアニン、過酸化物、燐酸塩、フタロシアニン、ピロ燐酸塩、ケイ酸塩、スルファミン酸塩、
硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、酒石酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、チオシアン酸塩、チオレート、チオ硫酸塩、トシレートおよびトリフレート、例えばKAl(SO4)2 K2CO3, K3PO4, KNO3, KCl, MgSO4, Mg3(PO4)2, MgCO3, Mg(NO3)2 および MgCl2などが含まれる。
【0038】
p−アミノフェノールおよび過酸化水素と組み合わせて適用する場合、MgSOは非常に強い赤褐色の色をもたらす一方、KAl(SOは非常に暗い褐色、即ちほとんど黒色の色をもたらした。しかしながら、そのような塩をm−アミノフェノールと組み合わせて用いると再び差が観察され、KAl(SOは単に淡褐色の色をもたらしそしてMgSOは全く着色をもたらさなかった。
【0039】
前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の無機金属化合物を含んで成る本発明の特定の態様における前記触媒は、少なくとも1種の鉱物または粘土を含んで成る。前記鉱物または粘土の好適な例には、アナターゼ、板チタン石、ユージアライト、イルメナイト、ペロブスカイト、ルチル、サバイト(sabaite)、チタン石、ジルコン、ジルコノライト(zirconolite)、ジルコヒライト(zircohylite)またはザーケライトが含まれる。
【0040】
本発明の好適な態様として、前記基質を人毛、天然もしくは合成高分子基質または織物繊維である基質から選択する。好適には、前記基質を前記染料系が入っている水溶液中で処理することで前記方法を実施する。前記基質が人毛を含んで成る場合には、前記方法を周囲温度で実施するのが好適である。天然もしくは合成高分子基質または織物繊維の場合には、前記方法を適切な温度および圧力のいずれかで実施してもよい。このように、特定の態様では、織物繊維の着色を大気圧下で好適には20°−110℃の範囲内の温度で実施する。代替態様では、織物繊維の着色を高温で実施してもよい。1−500バールの範囲内のいずれかの圧力を用いてもよいが、典型的に適切な圧力は1−20バールの範囲内であると思われ、適宜、100°−200℃の範囲内の相当する高温を用いてもよい。
【0041】
人毛を処理する目的で本発明の2番目の面に従う方法を実施する時、下記の条件の中の少なくとも1つを適用するのが好適である:
・前記少なくとも1種の染料前駆体が有機前駆体(これは好適には易酸化性有機前駆体であり、例えば本明細書の上に開示した天然に存在するフェノール化合物、芳香族アミノ化合物、フェノール化合物またはアミノフェノール化合物の群から選択可能である)を含んで成ること、
・触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の無機金属化合物、最も好適にはd−ブロックの遷移金属、例えば鉄、マンガン、ジルコニウムおよび亜鉛などの化合物または1族のアルカリ金属、例えばカリウムなどまたは2族のアルカリ土類金属、例えばマグネシウムなどの塩を含んで成ること、および
・前記酸化剤が過酸化水素であること。
【0042】
本発明の代替態様では、本発明の染料系を織物繊維を含んで成る基質に適用する。本発明に従う染料系を織物繊維に適用する場合、これは、前記繊維を本発明の1番目の面の染料系で本発明の2番目の面の方法に従って処理することで達成可能である。典型的には、染料の適用をある基質をある方法を用いて少なくとも1種の染料前駆体、酸化剤および触媒(この触媒は少なくとも1種の金属含有化合物を含んで成る)で処理することで達成するが、この方法では、前記処理を同時に実施する。しかしながら、別法として、前記処理を順次実施してもよい。
【0043】
前記染料系を織物繊維に適用する場合、触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体を含んで成るのが好適である。また、前記少なくとも1種の染料前駆体が芳香族アミノ化合物、フェノール化合物またはアミノフェノール化合物、例えばp−もしくはm−アミノフェノ
ールなどを含んで成りそして前記酸化剤が過酸化水素であるのも好適である。
【0044】
本発明に関連して、少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体を含んで成る特に適切な触媒は、金属キレート、最も好適には少なくとも1種の有機配位子を含有して成るチタン錯体である。典型的な配位子には、場合により置換されていてもよいアルキル配位子が含まれる。そのような触媒の特に好適な例は、チタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体である。
【0045】
本発明の染料系を織物繊維を含んで成る基質に適用する本発明の特定の態様では、芳香族アミノ化合物、フェノール化合物および/またはアミノフェノール化合物を含んで成る染料前駆体を用いてもよい。このように、例えば硫酸N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン(27)を用いた時に優れた結果を達成し、特に適切なアミノフェノール化合物にはm−アミノフェノール(9)およびp−アミノ−o−クレゾール(8)が含まれる。
【0046】
【化5】

【0047】
そのような染料前駆体の少なくとも1種を織物繊維基質に金属含有触媒および過酸化水素の存在下で適用すると織物基質に有望な結果が与えられることを見いだし、そのような織物基質には、羊毛、綿、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルケトン、p−アラミド、m−アラミドおよびリヨセルが含まれる。羊毛の場合に特に印象的な結果を観察した。
【0048】
このように、羊毛基質に対してm−アミノフェノールおよび硫酸N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミンを染料前駆体として用いると室温で2時間の間に有意な着色がもたらされることでそれぞれ褐色および黄色/緑色の染色が得られることが観察される一方で羊毛の染色をp−アミノフェノールおよびm−アミノフェノールを前駆体として用いて行うと褐色の色がもたらされそしてp−アミノ−o−クレゾールを用いると羊毛に赤色の色合いが観察された。
【0049】
しかしながら、羊毛にm−アミノフェノールおよび硫酸N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミンを染料前駆体として組み合わせて還流条件下で適用すると有意により強い着色が観察され、非常に暗い褐色の色合いが得られた。
【0050】
本発明に従う染料系をまた天然および合成高分子基質、例えばポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ゴムおよび革などばかりでなく紙にも成功裏に適用した。
【0051】
本発明の1番目の面の染料を本発明の2番目の面の方法に従って適用する場合、これを好適には毛髪染色の場合と同じ基本的手順を用いて実施するが、ここでは、当該基質に処理を典型的には本染料系の3成分が入っている水性混合物中で受けさせる。最も好適には、前記処理を1段階工程で同時に実施する。しかしながら、別法として、前記処理を2段階工程で順次実施することも可能である。このように、1段階染色工程では当該染料前駆体、触媒および過酸化水素を同時に加える一方で2段階工程では当該染料前駆体を最初に
約30分かけて加えた後に触媒および過酸化水素を加える。
【0052】
前記処理は適切な如何なる温度でも実施可能であるが、好適な温度範囲は20°−110℃である。羊毛の染色に好適なpH条件は5−8の範囲内である。
【0053】
ここに以下の実施例を言及することで本発明を更に例示するが、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0054】
実施例1 − 毛髪の染色
染料前駆体(100mg)とZrOCl(100mg)が水(20ml)に入っている溶液を調製した後、ガラスジャーに加えた。各ジャーの中に漂白しておいた金髪色毛髪見本を入れて懸濁させた。過酸化水素(0.1ml)を加え、ジャーを密封し、その混合物を60分間振とうした後、前記見本を取り出し、温水で濯いだ後、空気で乾燥させた。その結果を表1に要約する。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例2 − 毛髪の染色
m−アミノフェノール(30mg)が水(10ml)に入っている溶液を調製した後、ガラスジャーに加えた。各ジャーの中に触媒(30g)を加えた後、漂白しておいた金髪色毛髪見本を入れて懸濁させた。過酸化水素(0.1ml)を加え、ジャーを密封し、その混合物を60分間振とうした後、前記見本を取り出し、温水で濯いだ後、空気で乾燥させた。その結果を表2に要約する。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例3 − 毛髪の染色
p−アミノ−o−クレゾール(30mg)が水(10ml)に入っている溶液を調製した後、ガラスジャーに加えた。各ジャーの中に触媒(30mg)を加えた後、漂白しておいた金髪色毛髪見本を入れて懸濁させた。過酸化水素(0.1ml)を加え、ジャーを密封し、その混合物を60分間振とうした後、前記見本を取り出し、温水で濯いだ後、空気で乾燥させた。その結果を表3に要約する。
【0059】
【表3】

【0060】
実施例4 − 羊毛の染色
最初に羊毛に洗い上げを2g dm−3のSandozin NINを用いて60℃で15分間受けさせた。次に、その布に染色を下記の手順に従って受けさせた:
1)染料前駆体(繊維の重量を基準にして10%)を水性染浴に20:1の浴液比で加えて混合し、
2)布を湿らせて前記染浴に加え、
3)チタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、
4)過酸化水素(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、そして
5)乾燥を下記の乾燥プロファイルに従って実施した:
【0061】

【0062】
結果を表4に要約する。染色によって調和した色合いがもたらされることが分かった。
【0063】
【表4】

【0064】
実施例5 − 綿の染色
綿布に染色を下記の手順に従って受けさせた:
1)染料前駆体(繊維の重量を基準にして10%)を水性染浴に20:1の浴液比で加えて混合し、
2)布を湿らせて前記染浴に加え、
3)チタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、
4)過酸化水素(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、そして
5)乾燥を下記の乾燥プロファイルに従って実施した:
【0065】

【0066】
結果を表5に要約する。染色によって調和した色合いがもたらされることが分かった。
【0067】
【表5】

【0068】
実施例6 − リヨセルの染色
最初にリヨセルに洗い上げを2g dm−3のSandozin NINおよび1g dm−3のNaCOを用いて60℃で15分間受けさせた。次に、その布に染色を下記の手順に従って受けさせた:
1)染料前駆体(繊維の重量を基準にして10%)を水性染浴に20:1の浴液比で加えて混合し、
2)布を湿らせて前記染浴に加え、
3)チタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、
4)過酸化水素(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、
5)乾燥を下記の乾燥プロファイルに従って実施した:
【0069】

【0070】
結果を表6に要約する。染色によって調和した色合いがもたらされることが分かった。
【0071】
【表6】

【0072】
実施例7 − p−アラミドの染色
p−アラミド繊維に染色を下記の手順に従って受けさせた:
1)染料前駆体(繊維の重量を基準にして10%)を水性染浴に20:1の浴液比で加えて混合し、
2)布を湿らせて前記染浴に加え、
3)チタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、
4)過酸化水素(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、そして
5)乾燥を下記の乾燥プロファイルに従って実施した:
【0073】

【0074】
結果を表7に要約する。染色によって調和した色合いがもたらされることが分かった。
【0075】
【表7】

【0076】
実施例8 − ポリプロピレンの染色
この重合体に染色を下記の手順に従って受けさせた:
1)染料前駆体(繊維の重量を基準にして10%)を水性染浴に20:1の浴液比で加えて混合し、
2)布を湿らせて前記染浴に加え、
3)チタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、
4)過酸化水素(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、そして
5)乾燥を下記の乾燥プロファイルに従って実施した:
【0077】

【0078】
結果を表8に要約する。染色によって調和した色合いがもたらされることが分かった。
【0079】
【表8】

【0080】
実施例9 − PET/綿混合物の染色
この布に染色を下記の手順に従って受けさせた:
1)染料前駆体(繊維の重量を基準にして10%)を水性染浴に20:1の浴液比で加えて混合し、
2)布を湿らせて前記染浴に加え、
3)チタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、
4)過酸化水素(10ml dm−3)を前記染浴に加えて混合し、そして
5)乾燥を下記の乾燥プロファイルに従って実施した:
【0081】

【0082】
結果を表9に要約する。染色によって調和した色合いがもたらされることが分かった。
【0083】
【表9】

【0084】
本明細書の説明および請求項の全体に渡って、言葉「含んで成る」および「含有する」およびこれらの変形は「限定するものでないが包含」を意味し、それらは他の部分、添加剤、成分、整数または段階を排除することを意図したものではない(排除しない)。本明細書の説明および請求項の全体に渡って、文脈で別に要求されない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定の冠詞を用いる場合、文脈で別に要求されない限り、その明細は単数形ばかりでなく複数形も意図すると理解されるべきである。
【0085】
本発明の個々の面、態様または実施例に関連して記述した特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、それらに適合する限り、本明細書に記述する他の如何なる面にも態様にも実施例にも適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示した特徴(如何なる添付請求項、要約および図も包含)の全部および/またはそのように開示した全ての方法または工程の段階の全部を如何なる組み合わせで組み合わせてもよいが、但しそのような特徴および/または段階の中の少なくともいくつかが互いに排除される組み合わせは除く。本発明を前述したいずれかの態様の詳細に限定するものではない。本発明は本明細書(如何なる添付請求項、要約および図も包含)に開示した特徴の中の新規ないずれか1つまたは新規ないずれかの組み合わせまたはそのように開示したいずれかの方法または工程の段階の中の新規ないずれか1つまたは新規ないずれかの組み合わせに及ぶ。
【0086】
読者の注目は本出願に関連して本明細書と同時または以前に提出されかつ本明細書と一
緒に公衆の閲覧に付されたあらゆる論文および資料に向けられそしてそのような論文および資料全部の内容は引用することによって本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質に適用するための染料系であって、
(a)少なくとも1種の染料前駆体、
(b)酸化剤、および
(c)触媒、
を含有して成っていて前記触媒が均一触媒または不均化触媒である染料系。
【請求項2】
前記基質が人毛を含んで成る請求項1記載の染料系。
【請求項3】
前記基質が天然もしくは合成高分子基質を含んで成る請求項1記載の染料系。
【請求項4】
前記基質が織物繊維基質を含んで成る請求項1記載の染料系。
【請求項5】
前記触媒が少なくとも1種の金属含有化合物を含んで成る請求項1から4のいずれか1項記載の染料系。
【請求項6】
触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の無機金属化合物を含んで成る請求項5記載の染料系。
【請求項7】
前記少なくとも1種の無機金属化合物がd−ブロックの遷移金属の少なくとも1種の化合物を含んで成る請求項6記載の染料系。
【請求項8】
前記d−ブロックの遷移金属がスカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウムまたは亜鉛を含んで成る請求項7記載の染料系。
【請求項9】
前記少なくとも1種の無機金属化合物が酢酸塩、アセチルアセトネート、アルミン酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、臭素酸塩、炭酸塩、亜塩素酸塩、シアン化物、ジエチルクエン酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、燐酸二水素塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、硫化水素塩、亜硫酸水素塩、水酸化物、次亜塩素酸塩、ヨウ素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、しゅう酸塩、酸化物、パーフルオロフタロシアニン、過酸化物、燐酸塩、フタロシアニン、ピロ燐酸塩、ケイ酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、酒石酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、チオシアン酸塩、チオレート、チオ硫酸塩、トシレートまたはトリフレートを含んで成る請求項7または8記載の染料系。
【請求項10】
前記少なくとも1種の化合物がTiBr2, TiBr4, TiCl2, TiCl3, TiCl4, TiF3, TiF4, Ti2O3, TiO(SO4), (TiO2)(SiO2), TiS2, VBr3, VCl2, VCl3, VCl4, V2O3, V2O4, V2O5, VO(SO4), VOCl3, VOF3, V(C5H7O2)3, VO(C5H7O2)2, VO(OR)3, Mo2(OCOCH3)4, Mo(CO)6, MoCl3, MoCl5, MoO2Cl2, MoF6,MoO2, MoO3, MoS2, MoOCl4, MoSO4, Mn(OCOCH3)2, Mn(OCOCH3)2.xH2O, Mn(C5H7O2)2, MnBr2,MnBr2.xH2O, MnCO3, MnCO3.xH2O, Mn2(CO)10, MnCl2, MnCl2.xH2O,MnF2, MnF3, Mn(HCO2)2.xH2O, Mnl2, Mn(NO3)2, Mn(NO3)2.xH2O, Mn3O4, Mn2O3, MnO2, Mn(C32H16N8), MnSO4, MnSO4.xH2O, MnS, Fe(OCOCH3)2, Fe(OCOCH3)3, FeBr2, FeBr3, FeCl2, FeCl2.xH2O, FeCl3, FeCl3.xH2O, Fe(OEt)3, FeSO4.NH3CH2CH2NH3SO4.4H2O, Fe4[Fe(CN)6]3, FeF2, FeF3, FeF3.xH2O, Fel2, Fe(CH3CHOHCOO)2.xH2O, Fe(NO3)3.xH2O, Fe(C2O4).xH2O, FeO, Fe2O3, Fe3O4, FePO4.xH2O, Fe(C32H16N8), FeSO4.xH2O, FeS, Fe(BF)4.xH2O, FeO3Ti, Fe(SCN)2, Co(OCOCH3)2, Co(OCOCH3)2.xH2O, Co(C5H7O2)2, Co(C5H7O2)2.xH2O, Al2CoO4, CoBr2, CoBr2.xH2O, CoCO3, CoCO3.xH2O, Co2(CO)8,CoCl2, CoCl2.xH2O, CoF2, Co[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2, Co(OH)2, Col2, Co(NO3)2, Co(NO3)2.xH2O, C
o(C2O4), Co(C2O4).xH2O, CoSO4, CoSO4.xH2O, Co(BF4)2, Co(BF4)2.xH2O, Co(SCN)2, Ni(OCOCH3)2, Ni(OCOCH3).xH2O, Ni(C5H7O2)2, NiBr2, NiBr2.xH2O, NiCO3, Ni(CO3).xNi(OH)2, NiCl2, NiCl2.xH2O, NiOCoO, Ni[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2, NiF2, Ni(OH)2, Nil2, Ni(NO3)2, Ni(NO3)2.xH2O, Ni(C2O4), Ni(C2O4).xH2O, NiO2, NiO2.xH2O, Ni(C32H16N8),
Ni(SO3NH2)2, Ni(SO3NH2)2.xH2O, NiSO4, NiSO4.xH2O, Ni3S2, NiZnFe4O4, CuOCOCH3, Cu(OCOCH3)2, Cu(OCOCH3)2.xH2O, Cu(C5H7O2)2, CuBr, CuBr2, CuCO3, CuCO3.Cu(OH)2, CuCl, CuCl2, CuCl2.xH2O, Cu[CH3(CH2)3CH(C2H5)CO2]2, CuF2, CuF2.xH2O, Cu(HCO2)2, Cu(HCO2)2.xH2O, Cu(OH)2, Cu2(OH)PO4, Cul, CuFe2O4, Cu(NO3)2, Cu(NO3)2.xH2O, Cu2O, CuO, Cu(C32H16N8), Cu2P2O7.XH2O, CuSO4, CuSO4.xH2O, CuS, Cu[O2CCH(OH)CH(OH)CO2].xH2O, Cu(BF4)2, Cu(BF4).xH2O, Cu(SCN), Zn(OCOCH3)2, Zn(OCOCH3)2.xH2O, Zn(C5H7O2)2, Zn(C5H7O2)2.xH2O, ZnBr2, ZnBr2.xH2O, ZnCl2, ZnF2, Zn(C32F16N8), Zn(C5HF6O2)2,
Zn(C5HF6O2)2.xH2O, ZnSiF6.xH2O, Znl2, ZnFe2O4,Zn(NO3)2, Zn(NO3)2.xH2O, Zn(C2O4), Zn(C2O4).xH2O, ZnO, ZnO.xH2O, ZnO2, Zn3(PO4)2, Zn(C32H16N8), ZnSO4, ZnSO4.xH2O, ZnS, Zn(BF4)2, Zn(BF4)2.xH2O, Zn2TiO4, Zr(OCOCH3)4, Zr(OCOCH3)x(OH)4-x, Zr(C5H7O2)4, Zr(C26H44O16), ZrCO3(OH2)2.ZrO2, ZrCl4, ZrF4, ZrF4.xH2O, Zr(HPO4)2, Zr(OH)4, Zrl4, ZrO(NO3)2, ZrO(NO3)2.xH2O, Zr(SO4)2, Zr(SO4)2.xH2O, ZrOCl2 および ZrOCl2.xH2Oから選択される請求項7、8または9記載の染料系。
【請求項11】
前記少なくとも1種の無機金属化合物が1族のアルカリ金属または2族のアルカリ土類金属の塩から選択される請求項6記載の染料系。
【請求項12】
前記1族のアルカリ金属または2族のアルカリ土類金属がカリウムまたはマグネシウムを含んで成る請求項11記載の染料系。
【請求項13】
前記少なくとも1種の塩が酢酸塩、アセチルアセトネート、アルミン酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、臭素酸塩、炭酸塩、亜塩素酸塩、シアン化物、ジエチルクエン酸塩、ハロゲン化物、ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロケイ酸塩、燐酸二水素塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、硫化水素塩、亜硫酸水素塩、
水酸化物、次亜塩素酸塩、ヨウ素酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、しゅう酸塩、酸化物、パーフルオロフタロシアニン、過酸化物、燐酸塩、フタロシアニン、ピロ燐酸塩、ケイ酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、酒石酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、チオシアン酸塩、チオレート、チオ硫酸塩、トシレートまたはトリフレートである塩を含んで成る請求項11または12記載の染料系。
【請求項14】
前記少なくとも1種の塩がKAl(SO4)2 K2CO3, K3PO4, KNO3, KCl, MgSO4, Mg3(PO4)2, MgCO3, Mg(NO3)2 または MgCl2を含んで成る請求項12または13記載の染料系。
【請求項15】
前記触媒が鉱物または粘土を含んで成る請求項1から14のいずれか1項記載の染料系。
【請求項16】
前記鉱物または粘土がアナターゼ、板チタン石、ユージアライト、イルメナイト、ペロブスカイト、ルチル、サバイト、チタン石、ジルコン、ジルコノライト、ジルコヒライトまたはザーケライトの中の少なくとも1種を含んで成る請求項15記載の染料系。
【請求項17】
触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体を含んで成る請求項5記載の染料系。
【請求項18】
前記少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体が少なくとも1種の金属キレートを含んで成る請求項17記載の染料系。
【請求項19】
前記少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体が少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種のチタン錯体を含んで成る請求項17または18記載の染料系。
【請求項20】
前記少なくとも1種の有機配位子が少なくとも1種の場合により置換されていてもよいアルキル配位子を含んで成る請求項17、18または19記載の染料系。
【請求項21】
前記少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体がチタントリエタノールアミンイソプロピルキレート錯体である請求項17から20のいずれか1項記載の染料系。
【請求項22】
前記少なくとも1種の染料前駆体が有機前駆体である請求項1から21のいずれか1項記載の染料系。
【請求項23】
前記少なくとも1種の染料前駆体が少なくとも1種の芳香族アミノ化合物、フェノール化合物またはアミノフェノール化合物を含んで成る前請求項のいずれか記載の染料系。
【請求項24】
前記少なくとも1種の染料前駆体がp−アミノフェノール(4)、o−アミノフェノール(5)、p−アミノ−o−クレゾール(8)、m−アミノフェノール(9)、p−クロロレゾルシノール(10)、2,3−ジヒドロキシナフタレン(11)および3−メチルカテコール(12):
【化1】

から選択される請求項22または23記載の染料系。
【請求項25】
前記少なくとも1種の染料前駆体が4−メチルレゾルシノール(14)、p−アミノ安息香酸(15)、1,3−ジヒドロキシナフタレン(16)および1,4−ジヒドロキシナフタレン(17):
【化2】

から選択される請求項22または23記載の染料系。
【請求項26】
前記少なくとも1種の染料前駆体が少なくとも1種の天然に存在する化合物またはこれの誘導体を含んで成る請求項22または23記載の染料系。
【請求項27】
前記少なくとも1種の天然に存在する化合物またはこれの誘導体が少なくとも1種のフェノール化合物またはこれの誘導体を含んで成る請求項26記載の染料系。
【請求項28】
前記少なくとも1種の天然に存在するフェノール化合物またはこれの誘導体が没食子酸(18)、タンニン酸(19)、バニリン(20)、フロログルシノール(21)またはオルシノール(22):
【化3】

から選択される請求項27記載の染料系。
【請求項29】
前記少なくとも1種の天然に存在するフェノール化合物またはこれの誘導体が5−アミノサリチル酸(23):
【化4】

を含んで成る請求項27記載の染料系。
【請求項30】
前記少なくとも1種の有機前駆体がイサチン(24)、1−メチルインドール(25)または2−メチルインドール(26):
【化5】

を含んで成る請求項22記載の染料系。
【請求項31】
前記少なくとも1種の芳香族アミノ化合物がN,N−ビス(ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン(27):
【化6】

を含んで成る請求項23記載の染料系。
【請求項32】
前記酸化剤が過炭酸塩、過硫酸塩、有機過酸、有機ヒドロパーオキサイド、酸素分子および空気から選択される前請求項いずれか記載の染料系。
【請求項33】
前記酸化剤が過酸化水素である請求項1から31のいずれか1項記載の染料系。
【請求項34】
基質を着色する方法であって、
(a)前記基質を少なくとも1種の染料前駆体で処理し、
(b)前記基質を酸化剤で処理し、そして
(c)前記基質を触媒で処理する、
ことを含んで成っていて前記触媒が均一触媒または不均化触媒である方法。
【請求項35】
前記基質が人毛を含んで成る請求項34記載の方法。
【請求項36】
周囲温度で実施する請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記基質が紙を含んで成る請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記基質が天然もしくは合成高分子基質を含んで成る請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記基質をポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ゴムまたは革から選択する請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記基質が織物繊維基質を含んで成る請求項34記載の方法。
【請求項41】
前記織物繊維が綿、羊毛、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテルケトン、p−アラミド、m−アラミドまたはリヨセルの中の少なくとも1種を含んで成る請求項40記載の方法。
【請求項42】
1−500バールの圧力で実施する請求項38から41のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
大気圧下20°−110℃の範囲内の温度で実施する請求項38から41のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
1−20バールの圧力下100°−200℃の範囲内の高温で実施する請求項38から42のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記織物繊維が羊毛を含んで成りそして5−8の範囲内のpHで実施する請求項41記
載の方法。
【請求項46】
少なくとも1種の染料前駆体、酸化剤および触媒による前記基質の前記処理を同時に実施する請求項34から45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
前記処理を順次実施する請求項34から45のいずれか1項記載の方法。
【請求項48】
前記基質を前記染料系が入っている水溶液中で処理することで実施する請求項34から47のいずれか1項記載の方法。
【請求項49】
前記触媒が少なくとも1種の金属含有化合物を含んで成る請求項34から48のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の無機金属化合物を含んで成る請求項49記載の方法。
【請求項51】
触媒として用いる前記少なくとも1種の金属含有化合物が少なくとも1種の有機配位子を含有して成る少なくとも1種の金属錯体を含んで成る請求項49記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1種の染料前駆体が有機前駆体を含んで成る請求項34から51のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1種の染料前駆体が少なくとも1種の芳香族アミノ化合物、フェノール化合物またはアミノフェノール化合物を含んで成る請求項34から52のいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
前記酸化剤を過炭酸塩、過硫酸塩、有機過酸、有機ヒドロパーオキサイド、酸素分子および空気から選択する請求項34から53のいずれか1項記載の方法。
【請求項55】
前記酸化剤が過酸化水素である請求項34から53のいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
基質を着色する方法であって、基質を請求項1から33のいずれか1項記載の染料系で処理することを含んで成る方法。

【公表番号】特表2012−531512(P2012−531512A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518900(P2012−518900)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059322
【国際公開番号】WO2011/000892
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(505008073)ユニバーシテイ・オブ・リーズ (2)
【Fターム(参考)】