計測装置
【課題】簡易な構成でありながら、参照面と被検面との間の絶対距離を高精度に計測することができる計測装置を提供する。
【解決手段】第1の光源から射出される光の波長を、既知の真空波長である第1の基準波長又は第1の基準波長とは異なる既知の真空波長である第2の基準波長に設定するための波長基準素子と、参照面と被検面との間の空間の群屈折率を検出する屈折率検出部と、参照面で反射された光と被検面で反射された光との干渉信号を検出して、干渉信号から参照面と被検面との間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部と、波長基準素子を用いて第1の光源から射出される光の波長を第1の基準波長から第2の基準波長に連続的に変更させながら第1の基準波長及び第2の基準波長のそれぞれについて、参照面と被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように位相検出部を制御して、絶対距離を求める処理部とを有する計測装置。
【解決手段】第1の光源から射出される光の波長を、既知の真空波長である第1の基準波長又は第1の基準波長とは異なる既知の真空波長である第2の基準波長に設定するための波長基準素子と、参照面と被検面との間の空間の群屈折率を検出する屈折率検出部と、参照面で反射された光と被検面で反射された光との干渉信号を検出して、干渉信号から参照面と被検面との間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部と、波長基準素子を用いて第1の光源から射出される光の波長を第1の基準波長から第2の基準波長に連続的に変更させながら第1の基準波長及び第2の基準波長のそれぞれについて、参照面と被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように位相検出部を制御して、絶対距離を求める処理部とを有する計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
参照面と被検面との間の絶対距離を計測する装置として、波長走査型の光波干渉計測装置が知られている。波長走査による絶対距離の計測は、一般的に、計測精度が低いため、固定波長による相対距離の計測と組み合わせることで計測精度を向上させている。従って、波長走査型の光波干渉計測装置では、波長走査(波長の走査量)の精度、固定波長の精度、相対距離を計測する際の位相の計測精度が主な精度要因となる。
【0003】
波長走査による絶対距離の計測方式の1つであるFMヘテロダイン法では、単一の干渉信号の強度を計測し、波長走査によって生じる干渉信号の強度変化から絶対距離を算出する。例えば、特許文献1には、FMヘテロダイン法において、基準干渉計を用いて(即ち、基準干渉計の長さを基準として)大気波長の走査量を保証すると共に、エタロンやガスセルなどの波長基準を用いて固定波長を保証する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、FMヘテロダイン法よりも高精度に絶対距離を計測する技術として、位相が90度ずれた2つの干渉信号の強度からリサージュ波形を求めることで位相を計測する技術が開示されている。特許文献2では、波長の走査量と固定波長に関して、共通の基準干渉計を用いることで大気波長の走査量を保証すると共に、大気波長を一定にするように固定波長を制御することで大気の屈折率の変動も保証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2725434号公報
【特許文献2】特許第2810956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光波干渉計測装置では、位相の計測精度が低いため、相対距離の計測と組み合わせても十分な計測精度(即ち、要求される計測精度)を実現することができない。更に、位相の計測精度が低い場合には、絶対距離の計測と相対距離の計測とを組み合わせるために波長の走査量を大きくしなければならず、干渉計の構成において光源の選定に制約がかかってしまう。
【0007】
また、特許文献1及び2に開示された技術では、基準干渉計が必要となるため、光波干渉計測装置の構成が複雑になると共に、基準となる基準干渉計の長さの変動によって計測精度が低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、簡易な構成でありながら、参照面と被検面との間の絶対距離を高精度に計測することができる技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての計測装置は、参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置であって、第1の光源から射出される光の波長を、既知の真空波長である第1の基準波長又は前記第1の基準波長とは異なる既知の真空波長である第2の基準波長に設定するための波長基準素子と、前記第1の光源からの光を、第1の偏光方向を有する光と前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向を有する光とに分離して、前記第1の偏光方向を有する光を前記参照面に入射させ、前記第2の偏光方向を有する光を前記被検面に入射させる偏光ビームスプリッタと、前記参照面と前記被検面との間の空間の群屈折率を検出する屈折率検出部と、前記参照面で反射された前記第1の偏光方向を有する光と前記被検面で反射された前記第2の偏光方向を有する光との干渉信号を検出して、前記干渉信号から前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部と、前記波長基準素子を用いて前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更させながら前記第1の基準波長及び前記第2の基準波長のそれぞれについて、前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように前記位相検出部を制御して、前記絶対距離を求める処理を行う処理部と、を有し、前記第1の基準波長をλ1、前記第2の基準波長をλ2、前記第1の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ1、前記第2の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ2、前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更した際に発生する位相飛び数をM、λ1・λ2/|λ1−λ2|で表される前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長をΛ12、前記屈折率検出部で検出される群屈折率をng、前記第2の偏光方向を有する光が前記被検面で反射される回数をkとすると、前記処理部は、前記絶対距離D1を、
に従って求めることを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、簡易な構成でありながら、参照面と被検面との間の絶対距離を高精度に計測する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示すフローチャートのS204及びS208を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図5】図4に示す計測装置の位相検出部の詳細な構成を示す図である。
【図6】図4に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図8】図7に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図10】図9に示す計測装置において、ガスセルの透過スペクトル、ファブリペローエタロンの透過スペクトル及び2つの光源から射出される光のスペクトルを示す図である。
【図11】図9に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の計測装置1の構成を示す概略図である。計測装置1は、参照面と被検面との間の絶対距離を計測する光波干渉計測装置である。計測装置1は、図1に示すように、光源102と、ビームスプリッタ104a及び104bと、波長シフト部106と、波長基準素子としてのファブリペローエタロン108と、強度検出部110とを有する。更に、計測装置1は、光源制御部112と、無偏光ビームスプリッタ114と、基準信号検出部116と、偏光ビームスプリッタ118と、計測信号検出部120と、環境検出部122と、処理部124とを有する。
【0014】
後述するように、計測装置1は、計測波長(例えば、真空波長)を長期的に安定化し、且つ、被検面の近傍の気体の屈折率を求めることで、参照面と被検面との間の絶対距離を高精度に計測する。また、被検面及び参照面のそれぞれで反射する光を互いに直交する偏光方向を有する光とすることで、高精度なヘテロダイン検出による位相検出を実現している。
【0015】
第1の光源としての光源102から直線偏光で射出された光は、2つのビームスプリッタ104a及び104bを介して、3つの光に分離(分岐)される。光源102は、計測に使用する波長帯域(真空波長)において連続的に波長を変化させることが可能な波長可変光源である。本実施形態では、光源102として、光通信用に量産され、容易、且つ、安価に入手可能なDFB(Distributed Feed−Back)半導体レーザを用いる。但し、光源102は、DFB半導体レーザに限定されるものではなく、外部共振器型の半導体レーザやファイバレーザなどを用いてもよい。
【0016】
ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、ビームスプリッタ104aを透過する光は無偏光ビームスプリッタ114に入射し、ビームスプリッタ104aで反射される光はビームスプリッタ104bに入射する。また、ビームスプリッタ104bで分離される2つの光のうち、ビームスプリッタ104bで反射される光は波長シフト部106に入射し、ビームスプリッタ104bを透過する光はファブリペローエタロン108に入射する。
【0017】
波長シフト部106は、本実施形態では、音響光学素子などで構成されるシフタ106aと、波長板などで構成される変更部106bとを含む。シフタ106aは、入射する光の周波数(入射波長)を既知(一定量)の周波数dνだけシフトさせる。変更部106bは、シフタ106aを通過した光の偏光方向を変更して(具体的には、90度回転させて)、入射光の偏光方向に直交する偏光方向を有する成分の光を射出する。波長シフト部106から射出された光は、無偏光ビームスプリッタ114に入射する。
【0018】
強度検出部110は、ファブリペローエタロン108を透過した光の強度(エタロン透過強度)を検出する。光源制御部112は、強度検出部110で検出されたエタロン透過強度に基づいて、光源102から射出される光の波長を制御する。例えば、光源制御部112は、光源102の温度を変調させたり、光源102に与える電流を変調させたりすることで、光源102から射出される光の波長を制御(調整)する。
【0019】
なお、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルについては、真空波長の絶対値が保証されていることが必要である。そこで、本実施形態では、ファブリペローエタロン108として、透過スペクトル間隔の保証された真空媒質のエタロンを用いる。真空媒質のエタロンは、内部媒質の屈折率及び分散がないため、真空波長の絶対値を容易に保証することができる。更に、エタロンの材質として低熱膨張ガラスなどを用いれば、温度に対する膨張率を低減して、長期的に安定した波長基準素子を実現することができる。但し、ファブリペローエタロン108は、真空媒質のエタロンに限定されるものではなく、エアギャップのエタロンやソリッドエタロンなどを用いてもよい。この場合、エタロンの温度を計測するなどして内部屈折率及び分散を保証する必要がある。また、更に安定した基準波長を得るために、エタロンとガスセルとを組み合わせてもよい。
【0020】
ビームスプリッタ104aを透過した光と波長シフト部106を通過した光とは、無偏光ビームスプリッタ114において再び共通光路になると共に、2つの光に分離される。無偏光ビームスプリッタ114で分離された光のうち一方の光は、基準信号検出部116に入射する。
【0021】
基準信号検出部116は、ビームスプリッタ104aを透過した光と波長シフト部106を通過した光との干渉信号として、これらの光の周波数差に相当するビート信号を検出する。基準信号検出部116は、偏光子を含み、ビームスプリッタ104aを透過した光と波長シフト部106を通過した光との間で共通する偏光方向を有する光を抽出することで干渉信号を検出する。また、基準信号検出部116は、更なる高精度化が必要な場合には、偏光子と波長板とを組み合わせて180度異なる干渉信号を生成することによって差動検出を行ってもよい。以下、基準信号検出部116で検出される干渉信号を基準信号と称する。
【0022】
無偏光ビームスプリッタ114で分離された光のうち他方の光は、偏光ビームスプリッタ118に入射する。偏光ビームスプリッタ118は、光源102からの光を、第1の偏光方向を有する光と第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向を有する光とに分離する機能を有する。偏光ビームスプリッタ118は、本実施形態では、ビームスプリッタ104aを透過した光を透過し、波長シフト部106を通過した光を反射する。
【0023】
偏光ビームスプリッタ118で反射された光は、参照面RSで反射され、偏光ビームスプリッタ118で再び反射されて、計測信号検出部120に入射する。参照面RSは、複数の反射面からなるコーナキューブで構成され、偏光ビームスプリッタ118と共に距離計測の基準となる基準構造体に固定されている。以下、参照面RSで反射された光を参照光と称する。
【0024】
また、偏光ビームスプリッタ118を透過した光は、被検面TSで反射され、偏光ビームスプリッタ118を再び透過して、計測信号検出部120に入射する。被検面TSは、参照面RSと同様に、コーナキューブで構成され、距離計測の対象物体(被検物体)に固定されている。以下、被検面TSで反射された光を被検光と称する。
【0025】
本実施形態では、計測装置1において、参照光と被検光との光路長差が1往復となる(即ち、被検光が被検面TSで反射される回数が1回である)ような干渉計を構成しているが、他の干渉計を構成してもよい。例えば、参照面RS及び被検面TSを平面とし、被検光及び参照光のそれぞれの光路にλ/4板を挿入すると共に、1往復光を反射するためのコーナキューブを配置することで、参照光と被検光との光路長差が2往復となるような干渉計を構成してもよい。
【0026】
計測信号検出部120は、基準信号検出部116と同様な構成を有し、参照光と被検光との干渉信号を検出する。以下、計測信号検出部120で検出される干渉信号を計測信号と称する。計測信号は、参照光と被検光との周波数差に相当するビート信号である点に関しては基準信号と同一であるが、参照光と被検光との光路長差により干渉信号の位相が基準信号と異なる。
【0027】
参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置1の光分離素子として、偏光方向に応じて光を分離可能な偏光ビームスプリッタ118を用いることによって、参照面と被検面のそれぞれで反射される光を偏光方向に応じて分離することができる。従って、互いに直交する偏光方向を有する2つの光の間に僅かに周波数シフト差を付加することで、参照面と被検面との間のヘテロダイン検出が可能となり、高精度な位相検出を実現することができる。
【0028】
環境検出部122は、被検面TSの近傍に配置され、被検面TSの近傍、具体的には、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境を計測する。本実施形態では、環境検出部122は、参照面RSと被検面TSとの間の空間(即ち、大気)の群屈折率を検出する屈折率検出部として機能する。環境検出部122は、例えば、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の温度を検出する温度計と、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気圧を検出する気圧計とを含む。大気の屈折率の温度敏感度及び気圧敏感度のそれぞれは1ppm/℃及び0.3ppm/hPaであるため、比較的安価な温度計及び気圧計で環境検出部122を構成したとしても、0.1ppm程度の屈折率の保証は容易に実現可能である。
【0029】
処理部124は、基準信号検出部116で検出された基準信号、計測信号検出部120で検出された計測信号、及び、環境検出部122で検出された屈折率を用いて、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理を行う。また、処理部124は、光源制御部112を介して、光源102から射出される光の波長を制御する。
【0030】
本実施形態の計測装置1では、1つの光源102に対して1つの干渉計を構成しているが、1つの光源102に対して複数の干渉計を構成することも可能である。具体的には、無偏光ビームスプリッタ114と偏光ビームスプリッタ118の間で光を分離(分岐)し、それぞれの光に対して干渉計を構成する。一般には、干渉計を構成する位置によって、それぞれの干渉計の被検光路近傍の屈折率(大気屈折率)は異なるが、それぞれの干渉計ごとに屈折率を検出することで、それぞれの干渉計ごとに屈折率を補正することが可能である。このような構成では、複数の計測軸(干渉計)に対して1つの光源を設ければよいため、コストを抑えながら参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置を実現することができるという利点がある。
【0031】
図2を参照して、計測装置1の計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。計測装置1の計測処理は、S204乃至S214の干渉次数決定処理と、S216乃至S220の相対距離計測処理とに分類される。
【0032】
S202では、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。例えば、絶対距離の計測開始直後や光源102からの光が遮光されるなどして過去の位相検出履歴が失われた場合(即ち、相対距離計測処理の維持が不可能になった場合)には、干渉次数決定処理を実施することが必要となる。なお、干渉次数決定処理を実施するかどうかの判定は、処理部124によって自動的に行われ、干渉次数決定処理を実施すると判定された場合には、S204に移行し、干渉次数決定処理を実施しないと判定された場合には、S216に移行する。
【0033】
S204では、光源102から射出される光の波長を第1の基準波長λ1に設定する(即ち、第1の基準波長λ1における波長安定化制御を開始する)。ここで、図3を参照して、第1の基準波長λ1について説明する。図3(a)はファブリペローエタロン108の透過スペクトルを示し、図3(b)は光源102から射出される光のスペクトルを示す。ファブリペローエタロン108は、図3(a)に示すように、均等な周波数間隔FSRで周期的な透過特性を有し、上述したように、その真空波長の絶対値は保証されている。第1の基準波長λ1には、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルの1つを用いる。換言すれば、第1の基準波長λ1に相当するファブリペローエタロン108の透過スペクトルに対して、光源102から射出される光の波長を安定化する。なお、波長の安定化は、強度検出部110で検出されるエタロン透過強度が一定となるように、光源制御部112(処理部124)によって光源102を制御することで行われる。なお、ファブリペローエタロン108への入射光量の変動が影響する場合には、かかる入射光量を検出し、入射光量が一定になるように(即ち、入射光量が変動しないように)補正すればよい。
【0034】
S206では、第1の基準波長λ1における位相φ1を検出する。位相の検出とは、基準信号と計測信号との位相差を検出することである。従って、処理部124において基準信号の位相と計測信号の位相を位相計で検出し、それらの差分を求めることで第1の基準波長λ1における位相φ1が得られる。このように、基準信号検出部116、計測信号検出部120及び処理部124は、干渉信号から参照面RSと被検面TSとの間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部として機能する。
【0035】
ここで、第1の基準波長λ1における位相について説明する。光源102から無偏光ビームスプリッタ114までの被検光と参照光との光路長差をL1、無偏光ビームスプリッタ114から計測信号検出部120までの被検光と参照光との光路長差を2n(λ)Dとする。なお、n(λ)は被検光の光路の屈折率であり、Dは参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離である。この場合、基準信号Iref及び計測信号Itestのそれぞれは、以下の式1で表される。
【0036】
【数1】
【0037】
式1を参照するに、S206で検出される第1の基準波長λ1における位相φ1は、以下の式2で表される。なお、式2において、「mod(u,k)」は、第1引数uの第2引数kに対する剰余を表すものとする。
【0038】
【数2】
【0039】
S208では、光源102から射出される光の波長を第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更(走査)しながら(即ち、第1の基準波長λ1における波長安定化制御を解除して)位相の飛び数を計測する。なお、第2の基準波長λ2には、第1の基準波長λ1と同様に、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルの1つを用いる。
【0040】
なお、S208は、第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更することで発生する積算位相を計測する工程であるとも言える。光源102から射出される光の波長が第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更する(図3(b)参照)ことに伴って、位相は、図3(c)に示すように、単調に変化する。位相計で検出可能な位相の範囲は±πであるため、±πを超えると位相飛びが発生する。積算位相を計測することは、位相飛びをカウントすることに相当する。以下、S208で計測される位相の飛び数をMとする。
【0041】
S210では、光源102から射出される光の波長が第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に変更された時点で、第2の基準波長λ2における波長安定化制御を開始する。換言すれば、第2の基準波長λ2に相当するファブリペローエタロン108の透過スペクトルに対して、光源102から射出される光の波長を安定化する。
【0042】
S212では、第2の基準波長λ2における位相φ2を検出する。S212で検出される第2の基準波長λ2における位相φ2は、以下の式3で表される。
【0043】
【数3】
【0044】
式2及び式3を参照するに、位相の飛び数Mは、以下の式4で表される。ここで、Λ12は、λ1・λ2/|λ1−λ2|で表される第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との合成波長である。なお、式4に示すように、位相の飛び数Mは、合成波長Λ12の干渉次数に相当するため、以下では、合成波長の干渉次数Mと称する。また、ng(λ1,λ2)は、波長λ1及びλ2に対する群屈折率を表す。
【0045】
【数4】
【0046】
S214では、第2の基準波長λ2における干渉次数(位相の変化量)N12を算出する。まず、第1の絶対距離D1を、合成波長Λ12を用いて、以下の式5に従って求める。なお、本実施形態では、被検光が被検面TSで反射される回数kが1回であるため、式5においてkを省略しているが、実際には、D1=Λ12/{2k・ng(λ1,λ2)}・(M+{(φ2−φ1)/2π})となることに注意されたい。
【0047】
【数5】
【0048】
一方、絶対距離Dは、第2の基準波長λ2を用いて、以下の式6で表現することも可能であり、第2の基準波長λ2は合成波長Λ12よりも短いため、絶対距離Dを高精度に求めることができる。
【0049】
【数6】
【0050】
式5を用いれば、干渉次数N12は、以下の式7から求めることができる。なお、「round()」は、引数を整数に丸める関数を表す。また、式7では、屈折率と群屈折率との比を表す項が存在するが、1+10−6程度のオーダーであるため1に近似することができる。但し、屈折率と群屈折率との比が無視できない場合(例えば、合成波長Λ12と第2の基準波長λ2との比が大きい場合)には、S206及びS212において位相を検出する際に、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境の検出(S216)を行えばよい。これにより、屈折率と群屈折率との比を算出することが可能となる。
【0051】
【数7】
【0052】
ここで、干渉次数N12を誤差なく決定(算出)するためには、式7におけるround()の引数の誤差が1/2未満であればよい。位相の検出誤差をdφ、第2の基準波長λ2の誤差(設計値からの誤差)をdλ2、合成波長Λ12の誤差(設計値からの誤差)をdΛ12、M>>1、Λ12/λ2とすると、以下の式8を満たせばよい。
【0053】
【数8】
【0054】
式8において、絶対距離Dが1.5mであり、第2の基準波長λ2が1.5μmである場合には、D/λ2は106となる。一方、dΛ12/Λ12及びdλ2/λ2は、ファブリペローエタロン108を用いることで、10−7を実現することができる。従って、左辺の第1項が式7の不等式における制約条件となる。但し、式8は、全ての絶対距離D、即ち、計測装置1で計測可能な絶対距離の範囲Dmaxに対して成り立たなければならない。
【0055】
本実施形態の計測装置1が採用するヘテロダイン方式では、高精度な位相検出が可能であるため、10−4[wave]程度の検出精度を得ることは容易である。このように、高精度な位相検出を実現することができる場合には、合成波長Λ12は、第2の基準波長λ2の103倍まで拡大が可能となる。第2の基準波長λ2が1.5μmである場合、合成波長Λ12を1.5mmまで拡大することができるため、第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との波長差(波長変更量)は1.5nmとなる。1.5nm程度の少ない波長差であれば、DFB半導体レーザでも波長変更(波長走査)が可能であるため、外部共振器型の半導体レーザなどの特殊で複雑な光源を用いることなく、簡易な構成で計測装置1を実現することができる。
【0056】
S216では、被検面TSの近傍、即ち、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境を検出する。本実施形態では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の湿度は保証されているものとし、環境検出部122は、かかる空間の温度t[℃]と気圧p[Pa]を検出して、検出結果を処理部124に入力する。
【0057】
S218では、S212と同様に、第2の基準波長λ2における位相φ2を検出する。これにより、参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相φ2が得られる。
【0058】
S220では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率(大気屈折率)を算出して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。まず、乾燥空気の屈折率(大気屈折率)nは、温度t[℃]及び気圧p[Pa]からEdlenの式を用いて、以下の式9で算出される。
【0059】
【数9】
【0060】
なお、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体が乾燥気体でない場合も考えられる。このような場合には、環境検出部122は、かかる気体の湿度を検出する湿度計を含む必要があり、式9の代わりに湿度補正項を含むEdlenの式を用いればよい。
【0061】
また、絶対距離Dは、S214で算出された干渉次数N12、S218で検出された位相φ2、及び、屈折率n(λ2)を用いて、以下の式6で求めることができる。特に、干渉次数決定処理を実施して最初に絶対距離Dを求める際には、以下の式10(式5、式6及び式7参照)に従って絶対距離D(絶対距離D2)を求める。
【0062】
【数10】
【0063】
S222では、計測処理(参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)を終了するかどうかを判定する。計測処理を終了すると判定された場合には、計測処理を終了する。また、計測処理を終了しないと判定された場合には、S202に移行して、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。この際、干渉次数決定処理を実施しないと判定された場合には、S216乃至S220が繰り返し実行されることになる。そこで、被検面TSの移動により発生する干渉次数の変化は、位相検出履歴を用いて補正する。具体的には、i回目の位相検出の結果をφ2(i)とし、i−1回目の位相検出の結果をφ2(i−1)とすると、i番目の絶対距離を求める際の干渉次数N12(i)は、以下の式11で表される。
【0064】
【数11】
【0065】
このように、本実施形態の計測装置1によれば、簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態の計測装置1Aの構成を示す概略図である。計測装置1Aは、基本的には、計測装置1と同様な構成を有する。但し、計測装置1Aは、被検面TSの近傍の気体の屈折率を検出する環境検出部122Aとして、光源132と、光源132から射出される光を用いて参照面RSと被検面TSとの光路長差を検出する位相検出部134bとを有する。また、計測装置1Aは、位相検出部134aと、分光素子136a及び136bと、光量検出部138a及び138bとを有する。
【0066】
計測装置1Aにおいては、2色法により被検面TSの近傍での屈折率(大気屈折率)の積分値を検出することが可能であるため、計測光路方向に対して温度分布が大きい場合であっても、実効的な屈折率(大気屈折率)を正確に求めることができる。また、位相検出方式として、ヘテロダイン方式ではなく、ホモダイン方式を採用することで、より簡易な構成を実現している。
【0067】
光源102から射出された光は、ビームスプリッタ104aで分離(分岐)される。また、第3の光源としての光源132から射出された光もビームスプリッタ104aに入射して、光線軸が光源102からの光と同軸(同一光路)になると共に、ビームスプリッタ104aで分離される。光源132は、光源102からの光の波長と異なる波長の光を射出する光源である。本実施形態では、光源132として、光源102と同様に、DFB半導体レーザを用いる。
【0068】
ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、一方の光はファブリペローエタロン108を透過して、分光素子136aで光源102からの光と光源132からの光とに分離される。ファブリペローエタロン108を透過した光の光量に関しては、光源102からの光の光量は光量検出部138aで検出され、光源132からの光の光量は光量検出部138bで検出される。
【0069】
光量検出部138a及び138bのそれぞれで検出された光量は、光源制御部112に入力される。光源制御部112は、光源102から射出される光の波長及び光源132から射出される光の波長のそれぞれがファブリペローエタロン108の異なる透過スペクトル(基準波長)に対して安定化するように、光源102及び光源132を独立して制御する。なお、本実施形態では、光源102及び光源132のそれぞれに独立した光源を用いているが、光源132の代わりに、光源102から2倍波を射出するようにしてもよい。この場合には、光源132から射出される光の波長を制御する必要はない。また、波長変換素子として、導波路型PPLNを用いれば、2倍波を容易に生成することが可能である。
【0070】
一方、ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、他方の光は、偏光ビームスプリッタ118に入射する。偏光ビームスプリッタ118で反射された光は、参照面RSで反射され、偏光ビームスプリッタ118で再び反射されて、参照光として分光素子136bに入射する。偏光ビームスプリッタ118を透過した光は、被検面TSで反射され、偏光ビームスプリッタ118を再び透過して、被検光として分光素子136bに入射する。
【0071】
分光素子136bは、例えば、ダイクロイックミラーで構成され、同軸で入射した光源102からの光と光源132からの光とを分離する。但し、分光素子136bは、ダイクロイックミラーに限定されるものではなく、プリズム、バルク型の回折格子、アレイ導波路型の回折格子などで構成してもよく、必要な波長分解能及びコストから選択することが可能である。
【0072】
光源102からの光は、分光素子136bを透過して、位相検出部134aに入射する。位相検出部134aは、光源102からの光の波長における参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。一方、光源132からの光は、分光素子136bで反射され、位相検出部134bに入射する。位相検出部134bは、光源132からの光の波長における参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。
【0073】
本実施形態においても、計測装置1Aの光分離素子として、偏光ビームスプリッタ118を用いているため、参照面と被検面のそれぞれで反射される光を偏光方向に応じて分離することができる。従って、偏光方向の差を用いた位相差制御によるホモダイン検出が可能となり、高精度な位相検出が実現する。
【0074】
図5は、位相検出部134a及び134bの詳細な構成を示す図である。位相検出部134a及び134bのそれぞれは、被検光と参照光の偏光軸角度に対して45度の進相軸を有するλ/4板502と、グレーティングビームスプリッタ504と、偏光子アレイ506と、複数の光量検出器508a、508b及び508cとを含む。λ/4板502は、入射光に対して複数の既知の位相差を付与する位相差付与部としての機能を有し、本実施形態では、被検光と参照光のそれぞれの偏光方向を右回り円偏光と左回り円偏光に変換する。λ/4板502を通過した光は、グレーティングビームスプリッタ504によって、0次回折光と±1次回折光の3つの等しい光量の光に分離される。かかる3つの光は、それぞれの光に対して透過する偏光方向(偏光子角度)が異なるように配置された偏光子アレイ506を通過して、光量検出器508a、508b及び508cで検出される。
【0075】
ここで、偏光子アレイ506のそれぞれの偏光子角度を120度ピッチとすると、光量検出器508a、508b及び508cのそれぞれで検出される光量Ia、Ib及びIcは、以下の式12で表される。
【0076】
【数12】
【0077】
なお、式11では、参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に伴う干渉信号の位相をφとしている。式12を参照するに、位相φは、以下の式13で求めることができる。
【0078】
【数13】
【0079】
処理部124は、位相検出部134a及び134bで検出された検出結果から位相を求める。具体的には、処理部124は、式13を用いて、光源102からの光の波長における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相、及び、光源132からの光の波長における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相を求める。
【0080】
本実施形態では、上述したように、位相検出部134a及び134bのそれぞれにおいて、3つの既知の位相差における干渉信号の強度を検出しているが、複数の既知の位相差における干渉信号の強度を検出してもよい。また、複屈折を有するプリズムを用いて被検光と参照光との間にティルト縞を発生させ、空間的に位相差を付与してもよい。なお、既知の位相差の数や既知の位相差の間隔は、必要な精度に応じて適宜選択することが可能である。
【0081】
なお、ホモダイン検出では、高周波の信号が存在しないため、ヘテロダイン検出よりも安価に検出系を構成することが可能である。位相検出の精度に関しては、光量検出器508a、508b及び508cの利得、オフセット及び位相特性を補正することで、ヘテロダイン検出と同等な10−4[wave]程度を実現することができる。
【0082】
図6を参照して、計測装置1Aの計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。なお、図6に示すS602乃至S614は、図2に示すS202乃至S214と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、干渉次数N12は、S614において算出(決定)されているものとする。
【0083】
S616では、第2の基準波長λ2における位相φ2、及び、光源132からの光の波長λ22における位相φ22の2つの位相を検出する。
【0084】
S618では、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。本実施形態では、2つの波長の空気の分散を用いて参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の屈折率を補正して、絶対距離Dを求める。第2の基準波長λ2における光路長差OPD(λ2)及び波長λ22における光路長差OPD(λ22)のそれぞれは、以下の式14で表される。なお、式14において、N22は、波長λ22における干渉次数である。
【0085】
【数14】
【0086】
また、以下の式15で表されるAはA係数と呼ばれ、乾燥気体の温度や気圧の変動に依存せず一定となることが知られている。従って、第2の基準波長λ2と波長λ22に対するA係数を予め求めることが可能である。
【0087】
【数15】
【0088】
式14及び式15から、以下の式16が得られる。そして、絶対距離Dは、S614で算出された干渉次数N12、S616で検出された位相φ2及びφ22、及び、予め求めたA係数を用いて、式16で求めることができる。
【0089】
【数16】
【0090】
式16を参照するに、干渉次数N22を算出するためには、第2の基準波長λ2における屈折率n(λ2)と波長λ22における屈折率n(λ22)との比が必要になる。但し、かかる比は、一般的な条件では、1+10−5のオーダーとなるため、1に近似することができる。このような近似ができない場合には、S604乃至S614と同様に、光源132から射出される光の波長を変更(走査)して、干渉次数N22を算出(決定)すればよい。
【0091】
また、参照面RSと被検面TSとの間の空間が乾燥気体でない場合には、参照面RSと被検面TSとの間の空間の湿度を検出し、かかる湿度の変化に応じてA係数を更新することで絶対距離Dを求めることができる。なお、参照面RSと被検面TSとの間の空間の湿度を検出するためには、湿度計及び温度計を被検面TSの近傍に配置することが必要となる。
【0092】
S620では、計測処理(参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)を終了するかどうかを判定する。計測処理を終了すると判定された場合には、計測処理を終了する。また、計測処理を終了しないと判定された場合には、S602に移行して、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。
【0093】
このように、本実施形態の計測装置1Aによれば、簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の屈折率の変動を保証して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施形態の計測装置1Bの構成を示す概略図である。計測装置1Bは、基本的には、計測装置1又は1Aと同様な構成を有する。但し、計測装置1Bは、被検面TSの近傍の気体の屈折率を検出する環境検出部として干渉計140を有する。干渉計140は、既知の長さの真空雰囲気の真空参照光路(第1の光路)と、かかる真空参照光路と同じ長さの大気雰囲気の大気参照光路(第2の光路)との光路長差に相当する干渉信号を検出する。また、計測装置1Bは、位相検出部152a及び152bを有する。
【0094】
計測装置1Bにおいては、被検面TSの近傍の気体の屈折率(大気屈折率)を検出する環境検出部として干渉計140を用いることで、屈折率の分散式などを仮定することなく、屈折率を検出することができる。また、干渉計の長さの誤差の影響に関しては、真空参照光路と大気参照光路との光路長差を計測する干渉計を構成することで、誤差敏感度を低減し、高精度な屈折率の検出を実現している。
【0095】
光源102から射出された光は、ビームスプリッタ104aで分離(分岐)される。ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、ビームスプリッタ104aで反射される光は、ファブリペローエタロン108を透過して、強度検出部110に入射する。光源制御部112は、強度検出部110で検出されるエタロン透過強度に基づいて、光源102から射出される光の波長を制御する(即ち、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルに対して波長を安定化させる)。
【0096】
ビームスプリッタ104aを透過した光は、無偏光ビームスプリッタ114で分離される。無偏光ビームスプリッタ114で分離される2つの光のうち、無偏光ビームスプリッタ114を透過する光は、偏光ビームスプリッタ118に入射する。偏光ビームスプリッタ118で反射された光は、参照面RSで反射され、偏光ビームスプリッタ118で再び反射されて、参照光として位相検出部152に入射する。偏光ビームスプリッタ118を透過した光は、被検面TSで反射され、偏光ビームスプリッタ118を再び透過して、被検光として位相検出部152aに入射する。位相検出部152aは、第2の実施形態における位相検出部134a及び134bと同様な構成を有し、参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相を検出する。
【0097】
無偏光ビームスプリッタ114で分離される2つの光のうち、無偏光ビームスプリッタ114で反射される光は、干渉計140に入射する。干渉計140では、第1の基準面146と第2の基準面147との間を真空媒質とした真空参照光路と、大気媒質とした大気参照光路との光路長差が生成される。なお、真空参照光路と大気参照光路との光路長差に相当する位相は、位相検出部152bで検出される。
【0098】
ここで、干渉計140の構成について説明する。干渉計140に入射した光は、ビームディスプレーサ141で偏光方向に応じて分離される。以下、ビームディスプレーサ141を直進する光を大気参照光と称し、ビームディスプレーサ141のウォークオフにより横ずれする光を真空参照光と称する。ビームディスプレーサ141は、例えば、YVO4などの一軸性結晶で構成される。また、複数の偏光ビームスプリッタを配置することでビームディスプレーサ141を構成することも可能である。
【0099】
ビームディスプレーサ141を通過した真空参照光は、λ/2板142で大気参照光と同一の偏光方向に変換され、偏光ビームスプリッタ143に入射する。一方、ビームディスプレーサ141を通過した大気参照光は、λ/2板142を介さずに、偏光ビームスプリッタ143に入射する。真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143を通過し、λ/4板145で円偏光に変換されて、第1の基準面146を透過する。第1の基準面146と第2の基準面147との間には、真空セル148が固定されており、真空参照光は真空セル148の内部を伝播し、大気参照光は大気中を伝播する。真空参照光及び大気参照光は、第2の基準面147で反射され、λ/4板145で往路と直交する偏光方向に変換されて、偏光ビームスプリッタ143に入射する。真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143で反射され、コーナキューブ144に入射する。コーナキューブ144で反射された真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143で再び反射され、偏光ビームスプリッタ143から第2の基準面147までを往復する。偏光ビームスプリッタ143から第2の基準面147までを往復した真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143を透過して、大気参照光のみλ/2板142で偏光方向を直交方向に変換され、ビームディスプレーサ141に入射する。ビームディスプレーサ141においては、大気参照光のみにウォークオフが発生する。従って、ビームディスプレーサ141を通過した真空参照光及び大気参照光は、共軸となり、位相検出部152bに入射する。真空参照光及び大気参照光は、第1の基準面146と第2の基準面147との間の光路を除いて共通な光路長となるため、位相検出部152bでは、第1の基準面146と第2の基準面147との間の媒質差(真空と大気)に相当する光路長差が検出される。
【0100】
図8を参照して、計測装置1Bの計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。なお、図8に示すS802、S804及びS810は、図2に示すS202、S204及びS210と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。但し、本実施形態では、干渉計140の位相検出履歴が失われた場合にも、干渉次数決定処理を実施することが必要となる。また、S804乃至S814については、干渉次数N12の算出は第1の実施形態と同様であり、干渉計140の干渉次数Nri12の算出が追加されている。
【0101】
S806では、第1の基準波長λ1における位相φ1及び干渉計140の位相φri1のそれぞれを検出する。同様に、S812では、第2の基準波長λ2における位相φ2及び干渉計140の位相φri2のそれぞれを検出する。第1の基準面146と第2の基準面147との間の幾何学的な距離をDriとすると、位相φri1及びφri2のそれぞれは、以下の式17で表される。
【0102】
【数17】
【0103】
S808では、光源102から射出される光の波長を第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更(走査)しながら合成波長Λ12の干渉次数Mriを算出する。干渉次数Mriは、以下の式18で表される。
【0104】
【数18】
【0105】
S814では、第2の基準波長λ2における干渉次数N12及び干渉次数Nri12を算出する。干渉次数Nri12は、式17及び式18から、以下の式19で表される。干渉次数Nri12を算出することによって、真空参照光路と大気参照光路との光路長差を2πの曖昧さなしに決定することが可能となる。なお、干渉次数N12の算出については、第1の実施形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0106】
【数19】
【0107】
S816では、第2の基準波長λ2における位相φ2及び干渉計140の位相φri2のそれぞれを検出する。
【0108】
S818では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率(大気屈折率)を算出して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率nは、S814で算出された干渉次数Nri12、及び、S816で検出された位相φri2を用いて、以下の式20で算出される。
【0109】
【数20】
【0110】
ここで、第1の基準面146と第2の基準面147との間の幾何学的な距離Driは、既知であるとする。式20の右辺の第1項は、大気屈折率の真空屈折率からの差分となるため、一般的には、3×10−4程度となる。従って、距離Driの誤差ΔDriによって発生する大気屈折率の誤差は3×10−4×ΔDri/Driのオーダーとなる。真空参照光路を含まない基準干渉計の誤差のオーダーはΔDri/Driであるため、同じ距離の誤差に対しては3×10−4だけ精度的に有利となる。
【0111】
また、絶対距離Dは、S814で算出された干渉次数N12、S816で検出された位相φ2、及び、式20を用いて、上述した式6で求めることができる。
【0112】
S820では、計測処理(参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)を終了するかどうかを判定する。計測処理を終了すると判定された場合には、計測処理を終了する。また、計測処理を終了しないと判定された場合には、S802に移行して、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。
【0113】
このように、本実施形態の計測装置1Bは、基準干渉計の距離誤差の影響が低減された構成を有し、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の屈折率の変動を保証している。従って、本実施形態の計測装置1Bは、簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
<第4の実施形態>
図9は、本発明の第4の実施形態の計測装置1Cの構成を示す概略図である。計測装置1Cは、基本的には、計測装置1、1A又は1Bと同様な構成を有する。但し、計測装置1Cは、光源162と、ガスセル164と、光量検出部166a、166b及び166cと、分光素子168a及び168bと、位相検出部172a及び172bとを有する。
【0114】
計測装置1Cにおいては、光源102から射出される光の波長と光源162から射出される光の波長との合成波長を用いることで、光源102からの光の波長変更量及び波長変更精度の低減を実現している。また、光源に対して複数の干渉計を構成する場合には、光源162を用いて常に安定した計測が可能となる。これにより、任意の計測軸の干渉次数を決定するための波長変更の際に、干渉次数を決定することが不要な干渉軸(干渉計)については、波長変更が影響しない構成を実現することができる。
【0115】
光源102から射出された光及び光源162から射出された光のそれぞれはビームスプリッタ104aで分離(分岐)され、一方の光はファブリペローエタロン108に入射し、他方の光は偏光ビームスプリッタ118に入射する。更に、第2の光源としての光源162から射出された光は、ビームスプリッタ104bで分離され、ガスセル164にも入射する。
【0116】
なお、本実施形態では、光源102と光源162とを独立した光源で構成しているが、例えば、光通信に用いられる多波長光源と同様に、複数の半導体レーザを1つの素子に集積して構成してもよい。この場合、コストや装置寸法の面で有利となる。
【0117】
ガスセル164を透過した光(光源162からの光)は、光量検出部166aで光量を検出される。本実施形態では、光源102から射出される光の波長として1.5μm近傍の波長を使用し、ガスセル164の封入ガスとしてアセチレンを使用する。但し、ガスセル164の封入ガスはアセチレンに限定されるものではなく、一酸化炭素やシアン化水素などの1.5μm近傍の波長帯域において使用可能な封入ガスであればよい。それぞれの封入ガスは、波長帯域及び中心波長精度が異なるため、必要に応じて選択すればよい。
【0118】
一方、ファブリペローエタロン108を透過した光は、分光素子168aで光源102からの光と光源162からの光とに分離される。ファブリペローエタロン108を透過した光の光量に関しては、光源102からの光の光量は光量検出部166bで検出され、光源162からの光の光量は光量検出部166cで検出される。
【0119】
図10(a)乃至図10(c)のそれぞれは、ガスセル164の透過スペクトル、ファブリペローエタロン108の透過スペクトル及び光源102と光源162から射出される光のスペクトルを示す。光源制御部112は、光量検出部166aで検出された光量に基づいて、光源162から射出される光の波長がガスセル164の吸収線である第3の基準波長λ3に安定化するように、光源162を制御する。また、光源制御部112は、光量検出部166cで検出された光量に基づいて、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルが第3の基準波長λ3に一致するように、ファブリペローエタロン108の光路長を制御する。なお、ファブリペローエタロン108の内部媒質は真空とし、光路長の制御にはエタロンの温度を用いるものとする。更に、光源制御部112は、光量検出部166bで検出された光量に基づいて、光源102から射出される光の波長がファブリペローエタロン108の透過スペクトルに安定化するように、光源102を制御する。このように、光源102から射出される光の波長は、第1の基準波長λ1又は第2の基準波長λ2に安定化させることが可能であり、且つ、第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との間で変更(走査)可能である。
【0120】
本実施形態では、ガスセル164に加えて、ファブリペローエタロン108を用いることで、基準波長の精度を向上させているが、後述する干渉次数を決定するための条件を満たせば、ファブリペローエタロン108を用いなくてもよい。
【0121】
偏光ビームスプリッタ118に入射した光は、それぞれの光源(光源102又は光源162)からの光の波長における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する干渉信号を生成する。位相検出部172aは、分光素子168bを介して、第1の基準波長λ1における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。また、位相検出部172bは、分光素子168bを介して、第3の基準波長λ3における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。
【0122】
本実施形態では、光源102からの光に対する位相検出部172aと光源162からの光に対する位相検出部172bとを独立して構成することで、第1の基準波長λ1における位相と第3の基準波長λ3における位相とを同時に検出している。但し、1つの位相検出部を用いて、光源102と光源162とを切り換えてもよい。この場合、計測装置1Cの構成をより簡易にすることができる。
【0123】
図11を参照して、計測装置1Cの計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。なお、図11に示すS1102乃至S1112は、図2に示すS202乃至S212と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0124】
S1114では、第3の基準波長λ3における位相φ3を検出する。第3の基準波長λ3における位相φ3は、以下の式21で表される。
【0125】
【数21】
【0126】
S1116では、第3の基準波長λ3における干渉次数N3を算出する。λ1・λ3/|λ1−λ3|で表される第1の基準波長λ1と第3の基準波長λ3との合成波長をΛ13とする。この場合、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dと、第3の基準波長λ3と、合成波長Λ13との関係は、以下の式22及び式23で表される。
【0127】
【数22】
【0128】
【数23】
【0129】
式5、式22及び式23において、それぞれの波長及び合成波長には、λ3<<Λ13<<Λ12の関係があるため、干渉次数N3及びM13は、以下の式24で表される。
【0130】
【数24】
【0131】
また、位相の検出誤差をdφとすると、干渉次数N3及びM13を誤差なく決定(算出)するための条件は、以下の式25及び式26で表される。
【0132】
【数25】
【0133】
【数26】
【0134】
式25において、絶対距離Dが1.5mであり、第3の基準波長λ3が1.5μmである場合には、D/λ3は106となる。一方、dΛ13/Λ13及びdλ3/λ3は、ファブリペローエタロン108及びガスセル164を用いることで、10−7を実現することができる。従って、左辺の第1項が式25の不等式における制約条件となる。また、dφ/2πが10−4[wave]程度であるとすると、Λ13が1.5mmとなるように第1の基準波長λ1を選択することで、式25を満たすことが可能となる。
【0135】
上述した条件下では、式26において、D/Λ13は103となる。従って、dΛ12/Λ12については10−4程度が必要条件となり、第1の実施形態に比べて、2桁の合成波長精度の緩和が実現する。また、上述した条件で必要なΛ12の最大値は1.5m程度であり、第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との波長差(波長変更量)に換算すると、1.5pmの非常に小さい値となる。
【0136】
本実施形態では、第1の基準波長λ1及び第2の基準波長λ2をファブリペローエタロン108の透過スペクトルに安定化させるため、ファブリペローエタロン108の周波数間隔FSRを上述した波長変更量相当に小さくする必要がある。また、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルに安定化させることなく、上述したdΛ12/Λ12の精度を実現できる場合には、第2の基準波長λ2のファブリペローエタロン108による安定化を行わなくてもよい。この場合、電流変調又は温度変調などで合成波長Λ12の精度を保証することになるため、上述した波長変更量の最小値による波長変更が実現する。なお、DFB半導体レーザで大きな波長変更を実現するためには温度変調が必要であり、波長変更に時間がかかるという問題があるが、上述したように、波長変更量が小さくなれば、電流変調で高速な波長変更が実現できるという利点がある。
【0137】
S1118では、S216と同様に、被検面TSの近傍、即ち、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境を検出する。
【0138】
S1120では、第3の基準波長λ3における位相φ3を位相検出部172bで検出する。
【0139】
S1122では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率(大気屈折率)を算出して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。具体的には上述した式22に従って絶対距離Dを求める。但し、特に、干渉次数決定処理を実施した後、絶対距離Dを求める際には、以下の式27に従って絶対距離D(絶対距離D3)を求める。
【0140】
【数27】
【0141】
S1124は、S222と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0142】
このように、本実施形態の計測装置1Cによれば、波長変更量及び波長変更精度の低減が可能となるため、基準干渉計を不要とする簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
【0143】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
参照面と被検面との間の絶対距離を計測する装置として、波長走査型の光波干渉計測装置が知られている。波長走査による絶対距離の計測は、一般的に、計測精度が低いため、固定波長による相対距離の計測と組み合わせることで計測精度を向上させている。従って、波長走査型の光波干渉計測装置では、波長走査(波長の走査量)の精度、固定波長の精度、相対距離を計測する際の位相の計測精度が主な精度要因となる。
【0003】
波長走査による絶対距離の計測方式の1つであるFMヘテロダイン法では、単一の干渉信号の強度を計測し、波長走査によって生じる干渉信号の強度変化から絶対距離を算出する。例えば、特許文献1には、FMヘテロダイン法において、基準干渉計を用いて(即ち、基準干渉計の長さを基準として)大気波長の走査量を保証すると共に、エタロンやガスセルなどの波長基準を用いて固定波長を保証する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、FMヘテロダイン法よりも高精度に絶対距離を計測する技術として、位相が90度ずれた2つの干渉信号の強度からリサージュ波形を求めることで位相を計測する技術が開示されている。特許文献2では、波長の走査量と固定波長に関して、共通の基準干渉計を用いることで大気波長の走査量を保証すると共に、大気波長を一定にするように固定波長を制御することで大気の屈折率の変動も保証している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2725434号公報
【特許文献2】特許第2810956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光波干渉計測装置では、位相の計測精度が低いため、相対距離の計測と組み合わせても十分な計測精度(即ち、要求される計測精度)を実現することができない。更に、位相の計測精度が低い場合には、絶対距離の計測と相対距離の計測とを組み合わせるために波長の走査量を大きくしなければならず、干渉計の構成において光源の選定に制約がかかってしまう。
【0007】
また、特許文献1及び2に開示された技術では、基準干渉計が必要となるため、光波干渉計測装置の構成が複雑になると共に、基準となる基準干渉計の長さの変動によって計測精度が低下してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、簡易な構成でありながら、参照面と被検面との間の絶対距離を高精度に計測することができる技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての計測装置は、参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置であって、第1の光源から射出される光の波長を、既知の真空波長である第1の基準波長又は前記第1の基準波長とは異なる既知の真空波長である第2の基準波長に設定するための波長基準素子と、前記第1の光源からの光を、第1の偏光方向を有する光と前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向を有する光とに分離して、前記第1の偏光方向を有する光を前記参照面に入射させ、前記第2の偏光方向を有する光を前記被検面に入射させる偏光ビームスプリッタと、前記参照面と前記被検面との間の空間の群屈折率を検出する屈折率検出部と、前記参照面で反射された前記第1の偏光方向を有する光と前記被検面で反射された前記第2の偏光方向を有する光との干渉信号を検出して、前記干渉信号から前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部と、前記波長基準素子を用いて前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更させながら前記第1の基準波長及び前記第2の基準波長のそれぞれについて、前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように前記位相検出部を制御して、前記絶対距離を求める処理を行う処理部と、を有し、前記第1の基準波長をλ1、前記第2の基準波長をλ2、前記第1の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ1、前記第2の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ2、前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更した際に発生する位相飛び数をM、λ1・λ2/|λ1−λ2|で表される前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長をΛ12、前記屈折率検出部で検出される群屈折率をng、前記第2の偏光方向を有する光が前記被検面で反射される回数をkとすると、前記処理部は、前記絶対距離D1を、
に従って求めることを特徴とする。
【0010】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、簡易な構成でありながら、参照面と被検面との間の絶対距離を高精度に計測する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示すフローチャートのS204及びS208を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図5】図4に示す計測装置の位相検出部の詳細な構成を示す図である。
【図6】図4に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図8】図7に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第4の実施形態の計測装置の構成を示す概略図である。
【図10】図9に示す計測装置において、ガスセルの透過スペクトル、ファブリペローエタロンの透過スペクトル及び2つの光源から射出される光のスペクトルを示す図である。
【図11】図9に示す計測装置の計測処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の計測装置1の構成を示す概略図である。計測装置1は、参照面と被検面との間の絶対距離を計測する光波干渉計測装置である。計測装置1は、図1に示すように、光源102と、ビームスプリッタ104a及び104bと、波長シフト部106と、波長基準素子としてのファブリペローエタロン108と、強度検出部110とを有する。更に、計測装置1は、光源制御部112と、無偏光ビームスプリッタ114と、基準信号検出部116と、偏光ビームスプリッタ118と、計測信号検出部120と、環境検出部122と、処理部124とを有する。
【0014】
後述するように、計測装置1は、計測波長(例えば、真空波長)を長期的に安定化し、且つ、被検面の近傍の気体の屈折率を求めることで、参照面と被検面との間の絶対距離を高精度に計測する。また、被検面及び参照面のそれぞれで反射する光を互いに直交する偏光方向を有する光とすることで、高精度なヘテロダイン検出による位相検出を実現している。
【0015】
第1の光源としての光源102から直線偏光で射出された光は、2つのビームスプリッタ104a及び104bを介して、3つの光に分離(分岐)される。光源102は、計測に使用する波長帯域(真空波長)において連続的に波長を変化させることが可能な波長可変光源である。本実施形態では、光源102として、光通信用に量産され、容易、且つ、安価に入手可能なDFB(Distributed Feed−Back)半導体レーザを用いる。但し、光源102は、DFB半導体レーザに限定されるものではなく、外部共振器型の半導体レーザやファイバレーザなどを用いてもよい。
【0016】
ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、ビームスプリッタ104aを透過する光は無偏光ビームスプリッタ114に入射し、ビームスプリッタ104aで反射される光はビームスプリッタ104bに入射する。また、ビームスプリッタ104bで分離される2つの光のうち、ビームスプリッタ104bで反射される光は波長シフト部106に入射し、ビームスプリッタ104bを透過する光はファブリペローエタロン108に入射する。
【0017】
波長シフト部106は、本実施形態では、音響光学素子などで構成されるシフタ106aと、波長板などで構成される変更部106bとを含む。シフタ106aは、入射する光の周波数(入射波長)を既知(一定量)の周波数dνだけシフトさせる。変更部106bは、シフタ106aを通過した光の偏光方向を変更して(具体的には、90度回転させて)、入射光の偏光方向に直交する偏光方向を有する成分の光を射出する。波長シフト部106から射出された光は、無偏光ビームスプリッタ114に入射する。
【0018】
強度検出部110は、ファブリペローエタロン108を透過した光の強度(エタロン透過強度)を検出する。光源制御部112は、強度検出部110で検出されたエタロン透過強度に基づいて、光源102から射出される光の波長を制御する。例えば、光源制御部112は、光源102の温度を変調させたり、光源102に与える電流を変調させたりすることで、光源102から射出される光の波長を制御(調整)する。
【0019】
なお、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルについては、真空波長の絶対値が保証されていることが必要である。そこで、本実施形態では、ファブリペローエタロン108として、透過スペクトル間隔の保証された真空媒質のエタロンを用いる。真空媒質のエタロンは、内部媒質の屈折率及び分散がないため、真空波長の絶対値を容易に保証することができる。更に、エタロンの材質として低熱膨張ガラスなどを用いれば、温度に対する膨張率を低減して、長期的に安定した波長基準素子を実現することができる。但し、ファブリペローエタロン108は、真空媒質のエタロンに限定されるものではなく、エアギャップのエタロンやソリッドエタロンなどを用いてもよい。この場合、エタロンの温度を計測するなどして内部屈折率及び分散を保証する必要がある。また、更に安定した基準波長を得るために、エタロンとガスセルとを組み合わせてもよい。
【0020】
ビームスプリッタ104aを透過した光と波長シフト部106を通過した光とは、無偏光ビームスプリッタ114において再び共通光路になると共に、2つの光に分離される。無偏光ビームスプリッタ114で分離された光のうち一方の光は、基準信号検出部116に入射する。
【0021】
基準信号検出部116は、ビームスプリッタ104aを透過した光と波長シフト部106を通過した光との干渉信号として、これらの光の周波数差に相当するビート信号を検出する。基準信号検出部116は、偏光子を含み、ビームスプリッタ104aを透過した光と波長シフト部106を通過した光との間で共通する偏光方向を有する光を抽出することで干渉信号を検出する。また、基準信号検出部116は、更なる高精度化が必要な場合には、偏光子と波長板とを組み合わせて180度異なる干渉信号を生成することによって差動検出を行ってもよい。以下、基準信号検出部116で検出される干渉信号を基準信号と称する。
【0022】
無偏光ビームスプリッタ114で分離された光のうち他方の光は、偏光ビームスプリッタ118に入射する。偏光ビームスプリッタ118は、光源102からの光を、第1の偏光方向を有する光と第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向を有する光とに分離する機能を有する。偏光ビームスプリッタ118は、本実施形態では、ビームスプリッタ104aを透過した光を透過し、波長シフト部106を通過した光を反射する。
【0023】
偏光ビームスプリッタ118で反射された光は、参照面RSで反射され、偏光ビームスプリッタ118で再び反射されて、計測信号検出部120に入射する。参照面RSは、複数の反射面からなるコーナキューブで構成され、偏光ビームスプリッタ118と共に距離計測の基準となる基準構造体に固定されている。以下、参照面RSで反射された光を参照光と称する。
【0024】
また、偏光ビームスプリッタ118を透過した光は、被検面TSで反射され、偏光ビームスプリッタ118を再び透過して、計測信号検出部120に入射する。被検面TSは、参照面RSと同様に、コーナキューブで構成され、距離計測の対象物体(被検物体)に固定されている。以下、被検面TSで反射された光を被検光と称する。
【0025】
本実施形態では、計測装置1において、参照光と被検光との光路長差が1往復となる(即ち、被検光が被検面TSで反射される回数が1回である)ような干渉計を構成しているが、他の干渉計を構成してもよい。例えば、参照面RS及び被検面TSを平面とし、被検光及び参照光のそれぞれの光路にλ/4板を挿入すると共に、1往復光を反射するためのコーナキューブを配置することで、参照光と被検光との光路長差が2往復となるような干渉計を構成してもよい。
【0026】
計測信号検出部120は、基準信号検出部116と同様な構成を有し、参照光と被検光との干渉信号を検出する。以下、計測信号検出部120で検出される干渉信号を計測信号と称する。計測信号は、参照光と被検光との周波数差に相当するビート信号である点に関しては基準信号と同一であるが、参照光と被検光との光路長差により干渉信号の位相が基準信号と異なる。
【0027】
参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置1の光分離素子として、偏光方向に応じて光を分離可能な偏光ビームスプリッタ118を用いることによって、参照面と被検面のそれぞれで反射される光を偏光方向に応じて分離することができる。従って、互いに直交する偏光方向を有する2つの光の間に僅かに周波数シフト差を付加することで、参照面と被検面との間のヘテロダイン検出が可能となり、高精度な位相検出を実現することができる。
【0028】
環境検出部122は、被検面TSの近傍に配置され、被検面TSの近傍、具体的には、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境を計測する。本実施形態では、環境検出部122は、参照面RSと被検面TSとの間の空間(即ち、大気)の群屈折率を検出する屈折率検出部として機能する。環境検出部122は、例えば、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の温度を検出する温度計と、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気圧を検出する気圧計とを含む。大気の屈折率の温度敏感度及び気圧敏感度のそれぞれは1ppm/℃及び0.3ppm/hPaであるため、比較的安価な温度計及び気圧計で環境検出部122を構成したとしても、0.1ppm程度の屈折率の保証は容易に実現可能である。
【0029】
処理部124は、基準信号検出部116で検出された基準信号、計測信号検出部120で検出された計測信号、及び、環境検出部122で検出された屈折率を用いて、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理を行う。また、処理部124は、光源制御部112を介して、光源102から射出される光の波長を制御する。
【0030】
本実施形態の計測装置1では、1つの光源102に対して1つの干渉計を構成しているが、1つの光源102に対して複数の干渉計を構成することも可能である。具体的には、無偏光ビームスプリッタ114と偏光ビームスプリッタ118の間で光を分離(分岐)し、それぞれの光に対して干渉計を構成する。一般には、干渉計を構成する位置によって、それぞれの干渉計の被検光路近傍の屈折率(大気屈折率)は異なるが、それぞれの干渉計ごとに屈折率を検出することで、それぞれの干渉計ごとに屈折率を補正することが可能である。このような構成では、複数の計測軸(干渉計)に対して1つの光源を設ければよいため、コストを抑えながら参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置を実現することができるという利点がある。
【0031】
図2を参照して、計測装置1の計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。計測装置1の計測処理は、S204乃至S214の干渉次数決定処理と、S216乃至S220の相対距離計測処理とに分類される。
【0032】
S202では、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。例えば、絶対距離の計測開始直後や光源102からの光が遮光されるなどして過去の位相検出履歴が失われた場合(即ち、相対距離計測処理の維持が不可能になった場合)には、干渉次数決定処理を実施することが必要となる。なお、干渉次数決定処理を実施するかどうかの判定は、処理部124によって自動的に行われ、干渉次数決定処理を実施すると判定された場合には、S204に移行し、干渉次数決定処理を実施しないと判定された場合には、S216に移行する。
【0033】
S204では、光源102から射出される光の波長を第1の基準波長λ1に設定する(即ち、第1の基準波長λ1における波長安定化制御を開始する)。ここで、図3を参照して、第1の基準波長λ1について説明する。図3(a)はファブリペローエタロン108の透過スペクトルを示し、図3(b)は光源102から射出される光のスペクトルを示す。ファブリペローエタロン108は、図3(a)に示すように、均等な周波数間隔FSRで周期的な透過特性を有し、上述したように、その真空波長の絶対値は保証されている。第1の基準波長λ1には、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルの1つを用いる。換言すれば、第1の基準波長λ1に相当するファブリペローエタロン108の透過スペクトルに対して、光源102から射出される光の波長を安定化する。なお、波長の安定化は、強度検出部110で検出されるエタロン透過強度が一定となるように、光源制御部112(処理部124)によって光源102を制御することで行われる。なお、ファブリペローエタロン108への入射光量の変動が影響する場合には、かかる入射光量を検出し、入射光量が一定になるように(即ち、入射光量が変動しないように)補正すればよい。
【0034】
S206では、第1の基準波長λ1における位相φ1を検出する。位相の検出とは、基準信号と計測信号との位相差を検出することである。従って、処理部124において基準信号の位相と計測信号の位相を位相計で検出し、それらの差分を求めることで第1の基準波長λ1における位相φ1が得られる。このように、基準信号検出部116、計測信号検出部120及び処理部124は、干渉信号から参照面RSと被検面TSとの間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部として機能する。
【0035】
ここで、第1の基準波長λ1における位相について説明する。光源102から無偏光ビームスプリッタ114までの被検光と参照光との光路長差をL1、無偏光ビームスプリッタ114から計測信号検出部120までの被検光と参照光との光路長差を2n(λ)Dとする。なお、n(λ)は被検光の光路の屈折率であり、Dは参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離である。この場合、基準信号Iref及び計測信号Itestのそれぞれは、以下の式1で表される。
【0036】
【数1】
【0037】
式1を参照するに、S206で検出される第1の基準波長λ1における位相φ1は、以下の式2で表される。なお、式2において、「mod(u,k)」は、第1引数uの第2引数kに対する剰余を表すものとする。
【0038】
【数2】
【0039】
S208では、光源102から射出される光の波長を第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更(走査)しながら(即ち、第1の基準波長λ1における波長安定化制御を解除して)位相の飛び数を計測する。なお、第2の基準波長λ2には、第1の基準波長λ1と同様に、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルの1つを用いる。
【0040】
なお、S208は、第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更することで発生する積算位相を計測する工程であるとも言える。光源102から射出される光の波長が第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更する(図3(b)参照)ことに伴って、位相は、図3(c)に示すように、単調に変化する。位相計で検出可能な位相の範囲は±πであるため、±πを超えると位相飛びが発生する。積算位相を計測することは、位相飛びをカウントすることに相当する。以下、S208で計測される位相の飛び数をMとする。
【0041】
S210では、光源102から射出される光の波長が第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に変更された時点で、第2の基準波長λ2における波長安定化制御を開始する。換言すれば、第2の基準波長λ2に相当するファブリペローエタロン108の透過スペクトルに対して、光源102から射出される光の波長を安定化する。
【0042】
S212では、第2の基準波長λ2における位相φ2を検出する。S212で検出される第2の基準波長λ2における位相φ2は、以下の式3で表される。
【0043】
【数3】
【0044】
式2及び式3を参照するに、位相の飛び数Mは、以下の式4で表される。ここで、Λ12は、λ1・λ2/|λ1−λ2|で表される第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との合成波長である。なお、式4に示すように、位相の飛び数Mは、合成波長Λ12の干渉次数に相当するため、以下では、合成波長の干渉次数Mと称する。また、ng(λ1,λ2)は、波長λ1及びλ2に対する群屈折率を表す。
【0045】
【数4】
【0046】
S214では、第2の基準波長λ2における干渉次数(位相の変化量)N12を算出する。まず、第1の絶対距離D1を、合成波長Λ12を用いて、以下の式5に従って求める。なお、本実施形態では、被検光が被検面TSで反射される回数kが1回であるため、式5においてkを省略しているが、実際には、D1=Λ12/{2k・ng(λ1,λ2)}・(M+{(φ2−φ1)/2π})となることに注意されたい。
【0047】
【数5】
【0048】
一方、絶対距離Dは、第2の基準波長λ2を用いて、以下の式6で表現することも可能であり、第2の基準波長λ2は合成波長Λ12よりも短いため、絶対距離Dを高精度に求めることができる。
【0049】
【数6】
【0050】
式5を用いれば、干渉次数N12は、以下の式7から求めることができる。なお、「round()」は、引数を整数に丸める関数を表す。また、式7では、屈折率と群屈折率との比を表す項が存在するが、1+10−6程度のオーダーであるため1に近似することができる。但し、屈折率と群屈折率との比が無視できない場合(例えば、合成波長Λ12と第2の基準波長λ2との比が大きい場合)には、S206及びS212において位相を検出する際に、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境の検出(S216)を行えばよい。これにより、屈折率と群屈折率との比を算出することが可能となる。
【0051】
【数7】
【0052】
ここで、干渉次数N12を誤差なく決定(算出)するためには、式7におけるround()の引数の誤差が1/2未満であればよい。位相の検出誤差をdφ、第2の基準波長λ2の誤差(設計値からの誤差)をdλ2、合成波長Λ12の誤差(設計値からの誤差)をdΛ12、M>>1、Λ12/λ2とすると、以下の式8を満たせばよい。
【0053】
【数8】
【0054】
式8において、絶対距離Dが1.5mであり、第2の基準波長λ2が1.5μmである場合には、D/λ2は106となる。一方、dΛ12/Λ12及びdλ2/λ2は、ファブリペローエタロン108を用いることで、10−7を実現することができる。従って、左辺の第1項が式7の不等式における制約条件となる。但し、式8は、全ての絶対距離D、即ち、計測装置1で計測可能な絶対距離の範囲Dmaxに対して成り立たなければならない。
【0055】
本実施形態の計測装置1が採用するヘテロダイン方式では、高精度な位相検出が可能であるため、10−4[wave]程度の検出精度を得ることは容易である。このように、高精度な位相検出を実現することができる場合には、合成波長Λ12は、第2の基準波長λ2の103倍まで拡大が可能となる。第2の基準波長λ2が1.5μmである場合、合成波長Λ12を1.5mmまで拡大することができるため、第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との波長差(波長変更量)は1.5nmとなる。1.5nm程度の少ない波長差であれば、DFB半導体レーザでも波長変更(波長走査)が可能であるため、外部共振器型の半導体レーザなどの特殊で複雑な光源を用いることなく、簡易な構成で計測装置1を実現することができる。
【0056】
S216では、被検面TSの近傍、即ち、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境を検出する。本実施形態では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の湿度は保証されているものとし、環境検出部122は、かかる空間の温度t[℃]と気圧p[Pa]を検出して、検出結果を処理部124に入力する。
【0057】
S218では、S212と同様に、第2の基準波長λ2における位相φ2を検出する。これにより、参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相φ2が得られる。
【0058】
S220では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率(大気屈折率)を算出して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。まず、乾燥空気の屈折率(大気屈折率)nは、温度t[℃]及び気圧p[Pa]からEdlenの式を用いて、以下の式9で算出される。
【0059】
【数9】
【0060】
なお、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体が乾燥気体でない場合も考えられる。このような場合には、環境検出部122は、かかる気体の湿度を検出する湿度計を含む必要があり、式9の代わりに湿度補正項を含むEdlenの式を用いればよい。
【0061】
また、絶対距離Dは、S214で算出された干渉次数N12、S218で検出された位相φ2、及び、屈折率n(λ2)を用いて、以下の式6で求めることができる。特に、干渉次数決定処理を実施して最初に絶対距離Dを求める際には、以下の式10(式5、式6及び式7参照)に従って絶対距離D(絶対距離D2)を求める。
【0062】
【数10】
【0063】
S222では、計測処理(参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)を終了するかどうかを判定する。計測処理を終了すると判定された場合には、計測処理を終了する。また、計測処理を終了しないと判定された場合には、S202に移行して、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。この際、干渉次数決定処理を実施しないと判定された場合には、S216乃至S220が繰り返し実行されることになる。そこで、被検面TSの移動により発生する干渉次数の変化は、位相検出履歴を用いて補正する。具体的には、i回目の位相検出の結果をφ2(i)とし、i−1回目の位相検出の結果をφ2(i−1)とすると、i番目の絶対距離を求める際の干渉次数N12(i)は、以下の式11で表される。
【0064】
【数11】
【0065】
このように、本実施形態の計測装置1によれば、簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態の計測装置1Aの構成を示す概略図である。計測装置1Aは、基本的には、計測装置1と同様な構成を有する。但し、計測装置1Aは、被検面TSの近傍の気体の屈折率を検出する環境検出部122Aとして、光源132と、光源132から射出される光を用いて参照面RSと被検面TSとの光路長差を検出する位相検出部134bとを有する。また、計測装置1Aは、位相検出部134aと、分光素子136a及び136bと、光量検出部138a及び138bとを有する。
【0066】
計測装置1Aにおいては、2色法により被検面TSの近傍での屈折率(大気屈折率)の積分値を検出することが可能であるため、計測光路方向に対して温度分布が大きい場合であっても、実効的な屈折率(大気屈折率)を正確に求めることができる。また、位相検出方式として、ヘテロダイン方式ではなく、ホモダイン方式を採用することで、より簡易な構成を実現している。
【0067】
光源102から射出された光は、ビームスプリッタ104aで分離(分岐)される。また、第3の光源としての光源132から射出された光もビームスプリッタ104aに入射して、光線軸が光源102からの光と同軸(同一光路)になると共に、ビームスプリッタ104aで分離される。光源132は、光源102からの光の波長と異なる波長の光を射出する光源である。本実施形態では、光源132として、光源102と同様に、DFB半導体レーザを用いる。
【0068】
ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、一方の光はファブリペローエタロン108を透過して、分光素子136aで光源102からの光と光源132からの光とに分離される。ファブリペローエタロン108を透過した光の光量に関しては、光源102からの光の光量は光量検出部138aで検出され、光源132からの光の光量は光量検出部138bで検出される。
【0069】
光量検出部138a及び138bのそれぞれで検出された光量は、光源制御部112に入力される。光源制御部112は、光源102から射出される光の波長及び光源132から射出される光の波長のそれぞれがファブリペローエタロン108の異なる透過スペクトル(基準波長)に対して安定化するように、光源102及び光源132を独立して制御する。なお、本実施形態では、光源102及び光源132のそれぞれに独立した光源を用いているが、光源132の代わりに、光源102から2倍波を射出するようにしてもよい。この場合には、光源132から射出される光の波長を制御する必要はない。また、波長変換素子として、導波路型PPLNを用いれば、2倍波を容易に生成することが可能である。
【0070】
一方、ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、他方の光は、偏光ビームスプリッタ118に入射する。偏光ビームスプリッタ118で反射された光は、参照面RSで反射され、偏光ビームスプリッタ118で再び反射されて、参照光として分光素子136bに入射する。偏光ビームスプリッタ118を透過した光は、被検面TSで反射され、偏光ビームスプリッタ118を再び透過して、被検光として分光素子136bに入射する。
【0071】
分光素子136bは、例えば、ダイクロイックミラーで構成され、同軸で入射した光源102からの光と光源132からの光とを分離する。但し、分光素子136bは、ダイクロイックミラーに限定されるものではなく、プリズム、バルク型の回折格子、アレイ導波路型の回折格子などで構成してもよく、必要な波長分解能及びコストから選択することが可能である。
【0072】
光源102からの光は、分光素子136bを透過して、位相検出部134aに入射する。位相検出部134aは、光源102からの光の波長における参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。一方、光源132からの光は、分光素子136bで反射され、位相検出部134bに入射する。位相検出部134bは、光源132からの光の波長における参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。
【0073】
本実施形態においても、計測装置1Aの光分離素子として、偏光ビームスプリッタ118を用いているため、参照面と被検面のそれぞれで反射される光を偏光方向に応じて分離することができる。従って、偏光方向の差を用いた位相差制御によるホモダイン検出が可能となり、高精度な位相検出が実現する。
【0074】
図5は、位相検出部134a及び134bの詳細な構成を示す図である。位相検出部134a及び134bのそれぞれは、被検光と参照光の偏光軸角度に対して45度の進相軸を有するλ/4板502と、グレーティングビームスプリッタ504と、偏光子アレイ506と、複数の光量検出器508a、508b及び508cとを含む。λ/4板502は、入射光に対して複数の既知の位相差を付与する位相差付与部としての機能を有し、本実施形態では、被検光と参照光のそれぞれの偏光方向を右回り円偏光と左回り円偏光に変換する。λ/4板502を通過した光は、グレーティングビームスプリッタ504によって、0次回折光と±1次回折光の3つの等しい光量の光に分離される。かかる3つの光は、それぞれの光に対して透過する偏光方向(偏光子角度)が異なるように配置された偏光子アレイ506を通過して、光量検出器508a、508b及び508cで検出される。
【0075】
ここで、偏光子アレイ506のそれぞれの偏光子角度を120度ピッチとすると、光量検出器508a、508b及び508cのそれぞれで検出される光量Ia、Ib及びIcは、以下の式12で表される。
【0076】
【数12】
【0077】
なお、式11では、参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に伴う干渉信号の位相をφとしている。式12を参照するに、位相φは、以下の式13で求めることができる。
【0078】
【数13】
【0079】
処理部124は、位相検出部134a及び134bで検出された検出結果から位相を求める。具体的には、処理部124は、式13を用いて、光源102からの光の波長における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相、及び、光源132からの光の波長における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相を求める。
【0080】
本実施形態では、上述したように、位相検出部134a及び134bのそれぞれにおいて、3つの既知の位相差における干渉信号の強度を検出しているが、複数の既知の位相差における干渉信号の強度を検出してもよい。また、複屈折を有するプリズムを用いて被検光と参照光との間にティルト縞を発生させ、空間的に位相差を付与してもよい。なお、既知の位相差の数や既知の位相差の間隔は、必要な精度に応じて適宜選択することが可能である。
【0081】
なお、ホモダイン検出では、高周波の信号が存在しないため、ヘテロダイン検出よりも安価に検出系を構成することが可能である。位相検出の精度に関しては、光量検出器508a、508b及び508cの利得、オフセット及び位相特性を補正することで、ヘテロダイン検出と同等な10−4[wave]程度を実現することができる。
【0082】
図6を参照して、計測装置1Aの計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。なお、図6に示すS602乃至S614は、図2に示すS202乃至S214と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、干渉次数N12は、S614において算出(決定)されているものとする。
【0083】
S616では、第2の基準波長λ2における位相φ2、及び、光源132からの光の波長λ22における位相φ22の2つの位相を検出する。
【0084】
S618では、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。本実施形態では、2つの波長の空気の分散を用いて参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の屈折率を補正して、絶対距離Dを求める。第2の基準波長λ2における光路長差OPD(λ2)及び波長λ22における光路長差OPD(λ22)のそれぞれは、以下の式14で表される。なお、式14において、N22は、波長λ22における干渉次数である。
【0085】
【数14】
【0086】
また、以下の式15で表されるAはA係数と呼ばれ、乾燥気体の温度や気圧の変動に依存せず一定となることが知られている。従って、第2の基準波長λ2と波長λ22に対するA係数を予め求めることが可能である。
【0087】
【数15】
【0088】
式14及び式15から、以下の式16が得られる。そして、絶対距離Dは、S614で算出された干渉次数N12、S616で検出された位相φ2及びφ22、及び、予め求めたA係数を用いて、式16で求めることができる。
【0089】
【数16】
【0090】
式16を参照するに、干渉次数N22を算出するためには、第2の基準波長λ2における屈折率n(λ2)と波長λ22における屈折率n(λ22)との比が必要になる。但し、かかる比は、一般的な条件では、1+10−5のオーダーとなるため、1に近似することができる。このような近似ができない場合には、S604乃至S614と同様に、光源132から射出される光の波長を変更(走査)して、干渉次数N22を算出(決定)すればよい。
【0091】
また、参照面RSと被検面TSとの間の空間が乾燥気体でない場合には、参照面RSと被検面TSとの間の空間の湿度を検出し、かかる湿度の変化に応じてA係数を更新することで絶対距離Dを求めることができる。なお、参照面RSと被検面TSとの間の空間の湿度を検出するためには、湿度計及び温度計を被検面TSの近傍に配置することが必要となる。
【0092】
S620では、計測処理(参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)を終了するかどうかを判定する。計測処理を終了すると判定された場合には、計測処理を終了する。また、計測処理を終了しないと判定された場合には、S602に移行して、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。
【0093】
このように、本実施形態の計測装置1Aによれば、簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の屈折率の変動を保証して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
<第3の実施形態>
図7は、本発明の第3の実施形態の計測装置1Bの構成を示す概略図である。計測装置1Bは、基本的には、計測装置1又は1Aと同様な構成を有する。但し、計測装置1Bは、被検面TSの近傍の気体の屈折率を検出する環境検出部として干渉計140を有する。干渉計140は、既知の長さの真空雰囲気の真空参照光路(第1の光路)と、かかる真空参照光路と同じ長さの大気雰囲気の大気参照光路(第2の光路)との光路長差に相当する干渉信号を検出する。また、計測装置1Bは、位相検出部152a及び152bを有する。
【0094】
計測装置1Bにおいては、被検面TSの近傍の気体の屈折率(大気屈折率)を検出する環境検出部として干渉計140を用いることで、屈折率の分散式などを仮定することなく、屈折率を検出することができる。また、干渉計の長さの誤差の影響に関しては、真空参照光路と大気参照光路との光路長差を計測する干渉計を構成することで、誤差敏感度を低減し、高精度な屈折率の検出を実現している。
【0095】
光源102から射出された光は、ビームスプリッタ104aで分離(分岐)される。ビームスプリッタ104aで分離される2つの光のうち、ビームスプリッタ104aで反射される光は、ファブリペローエタロン108を透過して、強度検出部110に入射する。光源制御部112は、強度検出部110で検出されるエタロン透過強度に基づいて、光源102から射出される光の波長を制御する(即ち、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルに対して波長を安定化させる)。
【0096】
ビームスプリッタ104aを透過した光は、無偏光ビームスプリッタ114で分離される。無偏光ビームスプリッタ114で分離される2つの光のうち、無偏光ビームスプリッタ114を透過する光は、偏光ビームスプリッタ118に入射する。偏光ビームスプリッタ118で反射された光は、参照面RSで反射され、偏光ビームスプリッタ118で再び反射されて、参照光として位相検出部152に入射する。偏光ビームスプリッタ118を透過した光は、被検面TSで反射され、偏光ビームスプリッタ118を再び透過して、被検光として位相検出部152aに入射する。位相検出部152aは、第2の実施形態における位相検出部134a及び134bと同様な構成を有し、参照面RS(参照光)と被検面TS(被検光)との光路長差に相当する位相を検出する。
【0097】
無偏光ビームスプリッタ114で分離される2つの光のうち、無偏光ビームスプリッタ114で反射される光は、干渉計140に入射する。干渉計140では、第1の基準面146と第2の基準面147との間を真空媒質とした真空参照光路と、大気媒質とした大気参照光路との光路長差が生成される。なお、真空参照光路と大気参照光路との光路長差に相当する位相は、位相検出部152bで検出される。
【0098】
ここで、干渉計140の構成について説明する。干渉計140に入射した光は、ビームディスプレーサ141で偏光方向に応じて分離される。以下、ビームディスプレーサ141を直進する光を大気参照光と称し、ビームディスプレーサ141のウォークオフにより横ずれする光を真空参照光と称する。ビームディスプレーサ141は、例えば、YVO4などの一軸性結晶で構成される。また、複数の偏光ビームスプリッタを配置することでビームディスプレーサ141を構成することも可能である。
【0099】
ビームディスプレーサ141を通過した真空参照光は、λ/2板142で大気参照光と同一の偏光方向に変換され、偏光ビームスプリッタ143に入射する。一方、ビームディスプレーサ141を通過した大気参照光は、λ/2板142を介さずに、偏光ビームスプリッタ143に入射する。真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143を通過し、λ/4板145で円偏光に変換されて、第1の基準面146を透過する。第1の基準面146と第2の基準面147との間には、真空セル148が固定されており、真空参照光は真空セル148の内部を伝播し、大気参照光は大気中を伝播する。真空参照光及び大気参照光は、第2の基準面147で反射され、λ/4板145で往路と直交する偏光方向に変換されて、偏光ビームスプリッタ143に入射する。真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143で反射され、コーナキューブ144に入射する。コーナキューブ144で反射された真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143で再び反射され、偏光ビームスプリッタ143から第2の基準面147までを往復する。偏光ビームスプリッタ143から第2の基準面147までを往復した真空参照光及び大気参照光は、偏光ビームスプリッタ143を透過して、大気参照光のみλ/2板142で偏光方向を直交方向に変換され、ビームディスプレーサ141に入射する。ビームディスプレーサ141においては、大気参照光のみにウォークオフが発生する。従って、ビームディスプレーサ141を通過した真空参照光及び大気参照光は、共軸となり、位相検出部152bに入射する。真空参照光及び大気参照光は、第1の基準面146と第2の基準面147との間の光路を除いて共通な光路長となるため、位相検出部152bでは、第1の基準面146と第2の基準面147との間の媒質差(真空と大気)に相当する光路長差が検出される。
【0100】
図8を参照して、計測装置1Bの計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。なお、図8に示すS802、S804及びS810は、図2に示すS202、S204及びS210と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。但し、本実施形態では、干渉計140の位相検出履歴が失われた場合にも、干渉次数決定処理を実施することが必要となる。また、S804乃至S814については、干渉次数N12の算出は第1の実施形態と同様であり、干渉計140の干渉次数Nri12の算出が追加されている。
【0101】
S806では、第1の基準波長λ1における位相φ1及び干渉計140の位相φri1のそれぞれを検出する。同様に、S812では、第2の基準波長λ2における位相φ2及び干渉計140の位相φri2のそれぞれを検出する。第1の基準面146と第2の基準面147との間の幾何学的な距離をDriとすると、位相φri1及びφri2のそれぞれは、以下の式17で表される。
【0102】
【数17】
【0103】
S808では、光源102から射出される光の波長を第1の基準波長λ1から第2の基準波長λ2に連続的に変更(走査)しながら合成波長Λ12の干渉次数Mriを算出する。干渉次数Mriは、以下の式18で表される。
【0104】
【数18】
【0105】
S814では、第2の基準波長λ2における干渉次数N12及び干渉次数Nri12を算出する。干渉次数Nri12は、式17及び式18から、以下の式19で表される。干渉次数Nri12を算出することによって、真空参照光路と大気参照光路との光路長差を2πの曖昧さなしに決定することが可能となる。なお、干渉次数N12の算出については、第1の実施形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0106】
【数19】
【0107】
S816では、第2の基準波長λ2における位相φ2及び干渉計140の位相φri2のそれぞれを検出する。
【0108】
S818では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率(大気屈折率)を算出して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率nは、S814で算出された干渉次数Nri12、及び、S816で検出された位相φri2を用いて、以下の式20で算出される。
【0109】
【数20】
【0110】
ここで、第1の基準面146と第2の基準面147との間の幾何学的な距離Driは、既知であるとする。式20の右辺の第1項は、大気屈折率の真空屈折率からの差分となるため、一般的には、3×10−4程度となる。従って、距離Driの誤差ΔDriによって発生する大気屈折率の誤差は3×10−4×ΔDri/Driのオーダーとなる。真空参照光路を含まない基準干渉計の誤差のオーダーはΔDri/Driであるため、同じ距離の誤差に対しては3×10−4だけ精度的に有利となる。
【0111】
また、絶対距離Dは、S814で算出された干渉次数N12、S816で検出された位相φ2、及び、式20を用いて、上述した式6で求めることができる。
【0112】
S820では、計測処理(参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)を終了するかどうかを判定する。計測処理を終了すると判定された場合には、計測処理を終了する。また、計測処理を終了しないと判定された場合には、S802に移行して、干渉次数決定処理を実施するかどうかを判定する。
【0113】
このように、本実施形態の計測装置1Bは、基準干渉計の距離誤差の影響が低減された構成を有し、参照面RSと被検面TSとの間の空間の気体の屈折率の変動を保証している。従って、本実施形態の計測装置1Bは、簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
<第4の実施形態>
図9は、本発明の第4の実施形態の計測装置1Cの構成を示す概略図である。計測装置1Cは、基本的には、計測装置1、1A又は1Bと同様な構成を有する。但し、計測装置1Cは、光源162と、ガスセル164と、光量検出部166a、166b及び166cと、分光素子168a及び168bと、位相検出部172a及び172bとを有する。
【0114】
計測装置1Cにおいては、光源102から射出される光の波長と光源162から射出される光の波長との合成波長を用いることで、光源102からの光の波長変更量及び波長変更精度の低減を実現している。また、光源に対して複数の干渉計を構成する場合には、光源162を用いて常に安定した計測が可能となる。これにより、任意の計測軸の干渉次数を決定するための波長変更の際に、干渉次数を決定することが不要な干渉軸(干渉計)については、波長変更が影響しない構成を実現することができる。
【0115】
光源102から射出された光及び光源162から射出された光のそれぞれはビームスプリッタ104aで分離(分岐)され、一方の光はファブリペローエタロン108に入射し、他方の光は偏光ビームスプリッタ118に入射する。更に、第2の光源としての光源162から射出された光は、ビームスプリッタ104bで分離され、ガスセル164にも入射する。
【0116】
なお、本実施形態では、光源102と光源162とを独立した光源で構成しているが、例えば、光通信に用いられる多波長光源と同様に、複数の半導体レーザを1つの素子に集積して構成してもよい。この場合、コストや装置寸法の面で有利となる。
【0117】
ガスセル164を透過した光(光源162からの光)は、光量検出部166aで光量を検出される。本実施形態では、光源102から射出される光の波長として1.5μm近傍の波長を使用し、ガスセル164の封入ガスとしてアセチレンを使用する。但し、ガスセル164の封入ガスはアセチレンに限定されるものではなく、一酸化炭素やシアン化水素などの1.5μm近傍の波長帯域において使用可能な封入ガスであればよい。それぞれの封入ガスは、波長帯域及び中心波長精度が異なるため、必要に応じて選択すればよい。
【0118】
一方、ファブリペローエタロン108を透過した光は、分光素子168aで光源102からの光と光源162からの光とに分離される。ファブリペローエタロン108を透過した光の光量に関しては、光源102からの光の光量は光量検出部166bで検出され、光源162からの光の光量は光量検出部166cで検出される。
【0119】
図10(a)乃至図10(c)のそれぞれは、ガスセル164の透過スペクトル、ファブリペローエタロン108の透過スペクトル及び光源102と光源162から射出される光のスペクトルを示す。光源制御部112は、光量検出部166aで検出された光量に基づいて、光源162から射出される光の波長がガスセル164の吸収線である第3の基準波長λ3に安定化するように、光源162を制御する。また、光源制御部112は、光量検出部166cで検出された光量に基づいて、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルが第3の基準波長λ3に一致するように、ファブリペローエタロン108の光路長を制御する。なお、ファブリペローエタロン108の内部媒質は真空とし、光路長の制御にはエタロンの温度を用いるものとする。更に、光源制御部112は、光量検出部166bで検出された光量に基づいて、光源102から射出される光の波長がファブリペローエタロン108の透過スペクトルに安定化するように、光源102を制御する。このように、光源102から射出される光の波長は、第1の基準波長λ1又は第2の基準波長λ2に安定化させることが可能であり、且つ、第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との間で変更(走査)可能である。
【0120】
本実施形態では、ガスセル164に加えて、ファブリペローエタロン108を用いることで、基準波長の精度を向上させているが、後述する干渉次数を決定するための条件を満たせば、ファブリペローエタロン108を用いなくてもよい。
【0121】
偏光ビームスプリッタ118に入射した光は、それぞれの光源(光源102又は光源162)からの光の波長における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する干渉信号を生成する。位相検出部172aは、分光素子168bを介して、第1の基準波長λ1における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。また、位相検出部172bは、分光素子168bを介して、第3の基準波長λ3における参照面RSと被検面TSとの光路長差に相当する位相(干渉位相)を検出する。
【0122】
本実施形態では、光源102からの光に対する位相検出部172aと光源162からの光に対する位相検出部172bとを独立して構成することで、第1の基準波長λ1における位相と第3の基準波長λ3における位相とを同時に検出している。但し、1つの位相検出部を用いて、光源102と光源162とを切り換えてもよい。この場合、計測装置1Cの構成をより簡易にすることができる。
【0123】
図11を参照して、計測装置1Cの計測処理(即ち、処理部124による参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を求める処理)について説明する。なお、図11に示すS1102乃至S1112は、図2に示すS202乃至S212と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0124】
S1114では、第3の基準波長λ3における位相φ3を検出する。第3の基準波長λ3における位相φ3は、以下の式21で表される。
【0125】
【数21】
【0126】
S1116では、第3の基準波長λ3における干渉次数N3を算出する。λ1・λ3/|λ1−λ3|で表される第1の基準波長λ1と第3の基準波長λ3との合成波長をΛ13とする。この場合、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dと、第3の基準波長λ3と、合成波長Λ13との関係は、以下の式22及び式23で表される。
【0127】
【数22】
【0128】
【数23】
【0129】
式5、式22及び式23において、それぞれの波長及び合成波長には、λ3<<Λ13<<Λ12の関係があるため、干渉次数N3及びM13は、以下の式24で表される。
【0130】
【数24】
【0131】
また、位相の検出誤差をdφとすると、干渉次数N3及びM13を誤差なく決定(算出)するための条件は、以下の式25及び式26で表される。
【0132】
【数25】
【0133】
【数26】
【0134】
式25において、絶対距離Dが1.5mであり、第3の基準波長λ3が1.5μmである場合には、D/λ3は106となる。一方、dΛ13/Λ13及びdλ3/λ3は、ファブリペローエタロン108及びガスセル164を用いることで、10−7を実現することができる。従って、左辺の第1項が式25の不等式における制約条件となる。また、dφ/2πが10−4[wave]程度であるとすると、Λ13が1.5mmとなるように第1の基準波長λ1を選択することで、式25を満たすことが可能となる。
【0135】
上述した条件下では、式26において、D/Λ13は103となる。従って、dΛ12/Λ12については10−4程度が必要条件となり、第1の実施形態に比べて、2桁の合成波長精度の緩和が実現する。また、上述した条件で必要なΛ12の最大値は1.5m程度であり、第1の基準波長λ1と第2の基準波長λ2との波長差(波長変更量)に換算すると、1.5pmの非常に小さい値となる。
【0136】
本実施形態では、第1の基準波長λ1及び第2の基準波長λ2をファブリペローエタロン108の透過スペクトルに安定化させるため、ファブリペローエタロン108の周波数間隔FSRを上述した波長変更量相当に小さくする必要がある。また、ファブリペローエタロン108の透過スペクトルに安定化させることなく、上述したdΛ12/Λ12の精度を実現できる場合には、第2の基準波長λ2のファブリペローエタロン108による安定化を行わなくてもよい。この場合、電流変調又は温度変調などで合成波長Λ12の精度を保証することになるため、上述した波長変更量の最小値による波長変更が実現する。なお、DFB半導体レーザで大きな波長変更を実現するためには温度変調が必要であり、波長変更に時間がかかるという問題があるが、上述したように、波長変更量が小さくなれば、電流変調で高速な波長変更が実現できるという利点がある。
【0137】
S1118では、S216と同様に、被検面TSの近傍、即ち、参照面RSと被検面TSとの間の空間の環境を検出する。
【0138】
S1120では、第3の基準波長λ3における位相φ3を位相検出部172bで検出する。
【0139】
S1122では、参照面RSと被検面TSとの間の空間の屈折率(大気屈折率)を算出して、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離Dを求める。具体的には上述した式22に従って絶対距離Dを求める。但し、特に、干渉次数決定処理を実施した後、絶対距離Dを求める際には、以下の式27に従って絶対距離D(絶対距離D3)を求める。
【0140】
【数27】
【0141】
S1124は、S222と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0142】
このように、本実施形態の計測装置1Cによれば、波長変更量及び波長変更精度の低減が可能となるため、基準干渉計を不要とする簡易な構成でありながら、参照面RSと被検面TSとの間の絶対距離を高精度に計測することができる。
【0143】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置であって、
第1の光源から射出される光の波長を、既知の真空波長である第1の基準波長又は前記第1の基準波長とは異なる既知の真空波長である第2の基準波長に設定するための波長基準素子と、
前記第1の光源からの光を、第1の偏光方向を有する光と前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向を有する光とに分離して、前記第1の偏光方向を有する光を前記参照面に入射させ、前記第2の偏光方向を有する光を前記被検面に入射させる偏光ビームスプリッタと、
前記参照面と前記被検面との間の空間の群屈折率を検出する屈折率検出部と、
前記参照面で反射された前記第1の偏光方向を有する光と前記被検面で反射された前記第2の偏光方向を有する光との干渉信号を検出して、前記干渉信号から前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部と、
前記波長基準素子を用いて前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更させながら前記第1の基準波長及び前記第2の基準波長のそれぞれについて、前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように前記位相検出部を制御して、前記絶対距離を求める処理を行う処理部と、
を有し、
前記第1の基準波長をλ1、前記第2の基準波長をλ2、前記第1の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ1、前記第2の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ2、前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更した際に発生する位相飛び数をM、λ1・λ2/|λ1−λ2|で表される前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長をΛ12、前記屈折率検出部で検出される群屈折率をng、前記第2の偏光方向を有する光が前記被検面で反射される回数をkとすると、
前記処理部は、前記絶対距離D1を、
に従って求めることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記第2の基準波長の設計値からの誤差をdλ2、前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長の設計値からの誤差をdΛ12、前記位相検出部の検出誤差をdφとすると、前記計測装置で計測可能な前記絶対距離の範囲をDmaxにおいて、
を満たし、
前記処理部は、前記絶対距離D2を、
に従って求めることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1の基準波長及び前記第2の基準波長と異なる第3の基準波長の光を射出する第2の光源を更に有し、
前記偏光ビームスプリッタは、前記第2の光源からの光を、前記第1の偏光方向を有する光と前記第2の偏光方向を有する光とに分離して、前記第1の偏光方向を有する光を前記参照面に入射させ、前記第2の偏光方向を有する光を前記被検面に入射させ、
前記処理部は、前記第3の基準波長について、前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように前記位相検出部を制御し、
前記第3の基準波長をλ3、前記第3の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ3、λ1・λ3/|λ1−λ3|で表される前記第1の基準波長と前記第3の基準波長との合成波長をΛ13、前記第3の基準波長の設計値からの誤差をdλ3、前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長の設計値からの誤差をdΛ12、前記第1の基準波長と前記第3の基準波長との合成波長の設計値からの誤差をdΛ13、前記位相検出部の検出誤差をdφとすると、前記計測装置で計測可能な前記絶対距離の範囲をDmaxにおいて、
を満たし、
前記処理部は、前記絶対距離D3を、
に従って求めることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記参照面で反射される前記第1の偏光方向を有する光の周波数をシフトさせるシフタと、
前記シフタを通過した前記第1の偏光方向を有する光の偏光方向を変更する変更部と、
を更に有し、
前記位相検出部は、前記参照面で反射された前記第1の偏光方向を有する光と前記被検面で反射された前記第2の偏光方向を有する光との干渉信号を検出するための光量検出器を含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記位相検出部は、
前記第1の偏光方向を有する光及び前記第2の偏光方向を有する光のそれぞれに、複数の既知の位相差を付与する位相差付与部と、
前記位相差付与部が付与する前記複数の既知の位相差における干渉信号を検出するための複数の光量検出器と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記波長基準素子は、ファブリペローエタロンを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記波長基準素子は、前記既知の真空波長に吸収線を有するガスセルを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記屈折率検出部は、
前記参照面と前記被検面との間の空間の温度を検出する温度計と、
前記参照面と前記被検面との間の空間の気圧を検出する気圧計と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記屈折率検出部は、
前記第1の光源からの光の波長と異なる波長の光を射出する第3の光源と、
前記第3の光源からの光を用いて、前記第1の光源からの光と同一光路における前記参照面と前記被検面との間の光路長差を検出する検出部と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項10】
前記屈折率検出部は、既知の長さの真空雰囲気の第1の光路と、前記第1の光路と同じ長さの大気雰囲気の第2の光路との光路長差に相当する干渉信号を検出する検出部を含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項1】
参照面と被検面との間の絶対距離を計測する計測装置であって、
第1の光源から射出される光の波長を、既知の真空波長である第1の基準波長又は前記第1の基準波長とは異なる既知の真空波長である第2の基準波長に設定するための波長基準素子と、
前記第1の光源からの光を、第1の偏光方向を有する光と前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向を有する光とに分離して、前記第1の偏光方向を有する光を前記参照面に入射させ、前記第2の偏光方向を有する光を前記被検面に入射させる偏光ビームスプリッタと、
前記参照面と前記被検面との間の空間の群屈折率を検出する屈折率検出部と、
前記参照面で反射された前記第1の偏光方向を有する光と前記被検面で反射された前記第2の偏光方向を有する光との干渉信号を検出して、前記干渉信号から前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出する位相検出部と、
前記波長基準素子を用いて前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更させながら前記第1の基準波長及び前記第2の基準波長のそれぞれについて、前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように前記位相検出部を制御して、前記絶対距離を求める処理を行う処理部と、
を有し、
前記第1の基準波長をλ1、前記第2の基準波長をλ2、前記第1の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ1、前記第2の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ2、前記第1の光源から射出される光の波長を前記第1の基準波長から前記第2の基準波長に連続的に変更した際に発生する位相飛び数をM、λ1・λ2/|λ1−λ2|で表される前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長をΛ12、前記屈折率検出部で検出される群屈折率をng、前記第2の偏光方向を有する光が前記被検面で反射される回数をkとすると、
前記処理部は、前記絶対距離D1を、
に従って求めることを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記第2の基準波長の設計値からの誤差をdλ2、前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長の設計値からの誤差をdΛ12、前記位相検出部の検出誤差をdφとすると、前記計測装置で計測可能な前記絶対距離の範囲をDmaxにおいて、
を満たし、
前記処理部は、前記絶対距離D2を、
に従って求めることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1の基準波長及び前記第2の基準波長と異なる第3の基準波長の光を射出する第2の光源を更に有し、
前記偏光ビームスプリッタは、前記第2の光源からの光を、前記第1の偏光方向を有する光と前記第2の偏光方向を有する光とに分離して、前記第1の偏光方向を有する光を前記参照面に入射させ、前記第2の偏光方向を有する光を前記被検面に入射させ、
前記処理部は、前記第3の基準波長について、前記参照面と前記被検面との間の光路長に相当する位相を検出するように前記位相検出部を制御し、
前記第3の基準波長をλ3、前記第3の基準波長において前記位相検出部で検出される位相をφ3、λ1・λ3/|λ1−λ3|で表される前記第1の基準波長と前記第3の基準波長との合成波長をΛ13、前記第3の基準波長の設計値からの誤差をdλ3、前記第1の基準波長と前記第2の基準波長との合成波長の設計値からの誤差をdΛ12、前記第1の基準波長と前記第3の基準波長との合成波長の設計値からの誤差をdΛ13、前記位相検出部の検出誤差をdφとすると、前記計測装置で計測可能な前記絶対距離の範囲をDmaxにおいて、
を満たし、
前記処理部は、前記絶対距離D3を、
に従って求めることを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
前記参照面で反射される前記第1の偏光方向を有する光の周波数をシフトさせるシフタと、
前記シフタを通過した前記第1の偏光方向を有する光の偏光方向を変更する変更部と、
を更に有し、
前記位相検出部は、前記参照面で反射された前記第1の偏光方向を有する光と前記被検面で反射された前記第2の偏光方向を有する光との干渉信号を検出するための光量検出器を含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記位相検出部は、
前記第1の偏光方向を有する光及び前記第2の偏光方向を有する光のそれぞれに、複数の既知の位相差を付与する位相差付与部と、
前記位相差付与部が付与する前記複数の既知の位相差における干渉信号を検出するための複数の光量検出器と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記波長基準素子は、ファブリペローエタロンを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記波長基準素子は、前記既知の真空波長に吸収線を有するガスセルを含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項8】
前記屈折率検出部は、
前記参照面と前記被検面との間の空間の温度を検出する温度計と、
前記参照面と前記被検面との間の空間の気圧を検出する気圧計と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記屈折率検出部は、
前記第1の光源からの光の波長と異なる波長の光を射出する第3の光源と、
前記第3の光源からの光を用いて、前記第1の光源からの光と同一光路における前記参照面と前記被検面との間の光路長差を検出する検出部と、
を含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項10】
前記屈折率検出部は、既知の長さの真空雰囲気の第1の光路と、前記第1の光路と同じ長さの大気雰囲気の第2の光路との光路長差に相当する干渉信号を検出する検出部を含むことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−99756(P2011−99756A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254452(P2009−254452)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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