説明

記録再生装置及び記録再生方法

【課題】回路規模や消費電力を増大させることなく、記録クロック及び再生クロックを安定して生成できるようにする。
【解決手段】ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段と、前記ウォブル信号検出手段によって検出されたウォブル信号に基いて、ウォブル周期に関連した周波数を有する第1のクロックを生成する第1のクロック生成手段と、前記第1のクロック生成手段が前記第1のクロックを生成する際の制御信号に予め設定された処理が施された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するチャネルクロックを生成する第2のクロック生成手段とを有し、前記第1のクロック生成手段に組み込む電圧制御発振器と、前記第2のクロック生成手段に組み込む電圧制御発振器とを同一の構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録再生装置及び記録再生方法に関し、特に、ディスク状記録媒体にデジタルデータを記録再生するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DVDなどの光ディスクに対してデジタルデータを記録再生する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。DVDでは、ディスクの中心から外周に向かってスパイラル状のレーザービームの案内溝(グルーブ)が形成され、ここにデータが記録される。案内溝は、半径方向に所定の振幅と単一の周期でわずかに蛇行(ウォブル)している。
【0003】
ここで、記録クロック・再生クロックを生成する場合のブロック構成図を図2に示す。
まず、記録クロック生成について説明する。光ディスク201上に形成されているウォブルを光ピックアップ部202により読み取る。そして、光ピックアップ部202で読み取ったウォブルをウォブル検出部203に出力し、ウォブル検出部203によりウォブル信号を検出する。すなわち、本実施形態の記録再生装置において、光ピックアップ部202及びウォブル検出部203がウォブル信号検出手段として機能する。
【0004】
ウォブル検出部203により検出されたウォブル信号はコンパレータ部204に出力される。そして、コンパレータ部204においてウォブル信号を所定のスライスレベルと比較され、ウォブル信号のゼロクロス点が検出される。
【0005】
コンパレータ部204において検出されたゼロクロス点は位相検出部205に出力される。位相検出部205は、入力されたウォブル信号のゼロクロス点のタイミングと、分周器208から出力される出力信号の位相差とを比較し、位相差に応じた位相誤差信号を出力する。
【0006】
位相検出部205から出力された位相誤差信号は、ループフィルタ部206を介してVCO部207に与えられ、位相ロックしたクロックを生成するようVCO部207を制御する。VCO部207の出力は、分周器208を経由して位相検出部205へ入力される。データ記録には、VCO部207から発生されたクロックが用いられる。
【0007】
次に、再生クロック生成について説明する。光ディスク201上に記録されたデジタルデータを光ピックアップ部202により読み取る。そして、この読み取ったデジタルデータを再生信号検出部209に供給する。再生信号検出部209は入力されたデジタルデータから再生信号を検出する。
【0008】
再生信号検出部209により検出された再生信号はコンパレータ部210に与えられる。コンパレータ部210は、入力された再生信号を所定のスライスレベルと比較し、再生信号のゼロクロス点を検出し、これを位相検出部211に出力する。
【0009】
位相検出部211は、入力されたゼロクロス点のタイミングと、分周器214から与えられる出力信号との位相差を比較し、位相差に応じた位相誤差信号を出力する。位相検出部211から出力される位相誤差信号は、ループフィルタ部212を介してVCO部213に与えられ、位相ロックしたクロックを生成するようVCO部213を制御する。VCO部213の出力は、分周器214を経由して位相検出部211へ入力される。再生処理には、VCO部213から発生されたクロックが用いられる。
【0010】
【特許文献1】特開2002−32962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来の構成では、回転に同期した記録クロックと再生データに同期した再生クロックを得るために2つのアナログVCO部を備える必要があるので、回路規模や消費電力が増大してしまう問題点があった。また、回路規模の増大に伴って製造コストが上昇してしまうという問題点があった。
本発明は前述の問題点に鑑み、回路規模や消費電力を増大させることなく、記録クロック及び再生クロックを安定して生成できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の記録再生装置は、ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段と、前記ウォブル信号検出手段によって検出されたウォブル信号に基いて、ウォブル周期に関連した周波数を有する第1のクロックを生成する第1のクロック生成手段と、前記第1のクロック生成手段が前記第1のクロックを生成する際の制御信号に予め設定された処理が施された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するチャネルクロックを生成する第2のクロック生成手段とを有し、前記第1のクロック生成手段に組み込む電圧制御発振器と、前記第2のクロック生成手段に組み込む電圧制御発振器とを同一の構成にしたことを特徴とする。
また、本発明の記録再生装置の他の特徴とするところは、ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段と、前記ディスク状記録媒体に形成された基準位相信号を検出する基準位相信号検出手段と、前記ディスク状記録媒体に記録されたデータを読み取って再生信号を検出する再生信号検出手段と、前記ウォブル信号検出手段によって検出されたウォブル信号を用いて、ウォブル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第1のクロック生成手段と、前記第1のクロック生成手段により生成されたクロックに基づいて、アドレス情報を検出するアドレス情報検出手段と、前記第1のクロック生成手段の制御信号にゲイン処理を施してノイズ成分を除去するフィルタ手段と、前記フィルタ手段によりゲイン処理が施されてノイズ成分が除去された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第2のクロック生成手段と、前記基準位相信号検出手段により検出された基準位相信号と、前記第2のクロック生成手段により生成された記録クロックとの時間差を検出する時間差検出手段と、前記時間差検出手段により検出された時間差から前記基準位相信号と記録クロックとの周波数ずれをオフセット値として算出するオフセット算出手段と、前記オフセット算出手段により算出されたオフセット値を前記第2のクロック生成手段の制御信号に付加するオフセット付加手段と、前記再生信号検出手段により検出された再生信号を等化する等化手段と、前記等化手段により等化された出力データを平滑化する平滑化手段と、前記平滑化手段の出力信号と前記フィルタ手段により行われたゲイン処理のゲイン処理結果とを加算する加算手段と、前記加算手段の加算結果を前記第2のクロック生成手段の制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有する再生クロックを生成する第3のクロック生成手段と、外部から与えられる切替信号に従って前記第2のクロック生成手段が生成するクロックを切り替える切り替え手段とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の記録再生方法は、ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出工程と、前記ウォブル信号検出工程において検出されたウォブル信号に基いて、ウォブル周期に関連した周波数を有する第1のクロックを生成する第1のクロック生成工程と、前記第1のクロック生成工程において前記第1のクロックを生成する際の制御信号に予め設定された処理が施された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するチャネルクロックを生成する第2のクロック生成工程とを有し、前記第1のクロック生成工程において使用する電圧制御発振器と、前記第2のクロック生成工程において使用する電圧制御発振器とを同一の構成にしたことを特徴とする。
また、本発明の記録再生方法の他の特徴とするところは、ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出工程と、前記ディスク状記録媒体に形成された基準位相信号を検出する基準位相信号検出工程と、前記ディスク状記録媒体に記録されたデータを読み取って再生信号を検出する再生信号検出工程と、前記ウォブル信号検出工程において検出されたウォブル信号を用いて、ウォブル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第1のクロック生成工程と、前記第1のクロック生成工程において生成されたクロックに基づいて、アドレス情報を検出するアドレス情報検出工程と、前記第1のクロック生成工程の制御信号にゲイン処理を施してノイズ成分を除去するフィルタ工程と、前記フィルタ工程においてゲイン処理が施されてノイズ成分が除去された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第2のクロック生成工程と、前記基準位相信号検出工程において検出された基準位相信号と、前記第2のクロック生成工程において生成された記録クロックとの時間差を検出する時間差検出工程と、前記時間差検出工程において検出された時間差から前記基準位相信号と記録クロックとの周波数ずれをオフセット値として算出するオフセット算出工程と、前記オフセット算出工程において算出されたオフセット値を前記第2のクロック生成工程の制御信号に付加するオフセット付加工程と、前記再生信号検出工程において検出された再生信号を等化する等化工程と、前記等化工程において等化された出力データを平滑化する平滑化工程と、前記平滑化工程から出力される出力信号と前記フィルタ工程において行われたゲイン処理のゲイン処理結果とを加算する加算工程と、前記加算工程における加算結果を前記第2のクロック生成工程の制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有する再生クロックを生成する第3のクロック生成工程と、外部から与えられる切替信号に従って前記第2のクロック生成工程において生成するクロックを切り替える切り替え工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、切替信号によりクロック生成手段が生成するクロックの種類を切り替えることで、ディスクの回転に高精度に同期し、安定した記録クロックと再生クロックを、回路規模や消費電力を増大させることなく生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
【0016】
次に、本発明の実施形態について図1を用いて詳細に説明する。
例えば、前述した光ピックアップ部及びウォブル検出部により構成され、ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段によってウォブル信号が生成される。このウォブル信号は入力端子101に供給され、トラッキング制御用のウォブル信号として用いられる。また、入力端子124にはディスク状記録媒体に記録されたデータの再生信号が供給される。このデータの再生信号は、前述したディスク状記録媒体に記録されたデータを、例えば、図2で説明した光ピックアップ部202及び再生信号検出部209等により構成される再生信号検出手段により読み取って検出されたものである。
【0017】
また、入力入力端子129には第1のモード切替信号Aが外部から入力される。この外部から与えられる第1のモード切替信号Aに従って、記録処理の場合には入力端子130に接続するように制御される。また、再生処理の場合には入力端子131に接続するように制御される。また、どちらでもない場合、すなわちディスクを挿入してアドレス検出を行っている場合には入力端子134に接続するよう切り替え制御が行われる。ここでは、DVD−Rディスク2倍速を例とし、ウォブル信号のクロック周波数を281.29KHz、記録・再生データの周波数を52.32MHzとする。
【0018】
次に、記録クロック生成について説明する。
AD変換部102においてディジタル信号に変換されたウォブル信号と、ウォブルDVCO部(デジタル電圧制御発振器)105の出力信号とを位相比較部103において乗算して低域を抜き出して位相比較部103(位相比較器)により位相比較する。そして、位相比較部103から出力される位相誤差結果をループフィルタ部104に入力し、ループフィルタ部104を介して、位相ロックしたクロックを生成するようウォブルDVCO部105を制御する。
【0019】
アドレス情報検出手段として機能するアドレス検出部122では、規定の位相タイミングでアドレス情報を検出する。記録クロック生成は、ウォブルPLL部107のループフィルタ部104の積分器出力を増幅器108に与えてゲインを掛ける。次に、ノイズ成分を除去するローパスフィルタ部(LPF部)109を通し、チャネルDVCO部112に周波数誤差値として加算することで、チャネル周期に関連した周波数を有するチャネルクロックをアナログPLL部114から出力する。ここでは、ノイズ成分を抑えた更なる安定化を目的としてループフィルタ部104の積分器出力を用いたが、ループフィルタ部104の出力値そのものを接続しても動作上問題はない。
【0020】
次に、記録クロックタイミングの補正について説明する。
AD変換部102から出力されたディジタル信号は基準位相信号検出部115に与えられ、基準位相信号検出部115において、基準位相信号を検出し、検出タイミングに合わせてカウンタ部116を動作させる。
【0021】
基準位相信号は、ディスク状記録媒体にプリフォーマットとしてあらかじめ記録されているものである。例えばDVD−R、DVD−RWディスクの場合なら基準位相信号のランドプリピットを検出するランドプリピット検出回路、DVD+R、DVD+RWディスクの場合なら基準位相信号のADIPを検出するADIP検出回路を用いて基準位相信号を検出する。
【0022】
アナログPLL部114から出力されるチャネルクロックで動作するカウンタ部116のカウント値に基づいて、変調器117はチャネルデータを変調し、端子118を介して記録データをレーザー制御部(図示せず)へ出力する。
【0023】
次に、再生クロック生成について説明する。AD変換部125は、アナログPLL部114から出力されるチャネルクロックのタイミングで再生信号をディジタル信号に変換し、等化器126へ出力する。
【0024】
等化器126は、所定の高域成分を持ち上げる周波数特性を持ち、例えば7タップのFIRフィルタで構成される。後述する位相比較部127において、等化器126から出力されたデジタルデータとアナログPLL部114が出力する再生クロックとの位相差を検出する位相差検出手段として機能する。そして、この位相差検出手段による位相差検出結果に基いて位相誤差信号をループフィルタ部128に出力する。前記位相差検出手段は、ウォブルクロックと、ウォブル周期に関連した周波数を有するクロック(第1のクロック)との位相差を周波数誤差に変換する機能(変換手段)を有している。また、記録クロックとチャネル周期に関連した周波数を有するクロック(第2のクロック)との位相差、及び再生クロックと第1のクロックとの位相差を各々周波数誤差に変換する機能を有している。
【0025】
ウォブルPLL部107のループフィルタ部104の積分器出力に、増幅器108でゲイン処理を施す。再生クロック生成は、入力端子129に与えられる第1のモード切替スイッチ信号Aに応じて、入力端子131に接続した際に、ループフィルタ部128出力とゲイン処理結果により得られた値とを加算器133で加算する。
【0026】
加算器133の加算結果は、チャネルDVCO部112の周波数誤差値として加算することでアナログPLL部114から再生クロック(チャネルクロック)を出力する。また、ゲイン処理値は、再生処理へ切り替えた際の値をホールドするように構成されている。ここでは、ノイズ成分を抑えた更なる安定化を目的としてループフィルタ部104の積分器出力を用いたが、ループフィルタ部104の出力値そのものを接続しても動作上問題はない。
【0027】
次に、図7を用いて、位相比較部127の動作について説明する。位相比較部127は、パーシャルレスポンス(PR(1,1)処理回路)702、パターン検出回路703、傾き補正回路704等により構成されている。端子701から入力される等化されたデジタルデータをパーシャルレスポンスPR(1,1)処理回路702においてPR(1,1)演算を施す。
【0028】
その演算結果をパターン検出回路703において、2値判定し、得られるデータ列の中から位相差に比例した傾きをもつゼロクロス点に対応する特定パターンを検出する。傾き補正回路704は、パターン検出回路703の検出結果から入力されるデジタルデータの傾きを判定し、その判定結果に応じて傾きを一定にするよう補正し、位相誤差信号を出力する。
【0029】
次に、第1のモード切替スイッチ信号Aが入力端子129に与えられる時の動作について説明する。
図6に、入力端子129に与えられる第1のモード切替スイッチ信号Aの切替時のタイミングチャートを示す。図6において、(a)はチャネルクロック、(b)は再生処理へ切り替える際に入力端子129に与えられる第1のモード切替スイッチ信号Aの切替信号を表している。
【0030】
図6(b)に示すように、第1のモード切替スイッチ信号Aは、記録時には、「0」、再生時には「1」のように変化する。再生処理に切り替える場合には、(a)のチャネルクロックのタイミングに合わせて、(b)の第1のモード切替スイッチ信号Aが、「0」から「1」になる。
【0031】
図6(c)は、ウォブルPLL部107のループフィルタ部104の積分器出力であり、ウォブルDVCO部105とチャネルDVCO部112の中心周波数設定値の比から、(c)の値に、ゲイン処理を施しゲイン処理値(d)を得る。例えば、DVD−Rディスクを例にすると中心周波数設定値の比は、23.25倍となる。
【0032】
入力端子129に与えられる第1のモード切替スイッチ信号Aは、再生処理へ切替時のゲイン処理値(d)をホールドする構成となっているので、加算器133に入力される値は(f)となる。再生系のループフィルタ部128出力値(e)は、加算器133において、加算値(f)と加算され、加算結果(g)をチャネルDVCO部112の周波数誤差値として加算することで、アナログPLL部114から再生クロックを生成する。
【0033】
次に、図3及び図4を用いて、ウォブルDVCO部105、チャネルDVCO部112の動作について説明する。ウォブルDVCO部105及びチャネルDVCO部112とそれに続くΔΣDA変換部113は、水晶発振器により供給される81MHzのクロックで動作している。
【0034】
図3(a)は、ウォブルDVCO部105の具体的な構成を示す図である。図3(a)において、端子301には、クロックの目標周波数に対応した設定値が供給される。ここでは、光ディスクとしてDVD−Rディスク2倍速を例とし、目標とするクロックの周波数を281.290KHzとし、3640を設定する。この場合、「3640×81e6÷2^20=281181Hz」となる。
【0035】
端子301からの中心周波数の値と、入力端子302からの周波数誤差値が加算器303で加算される。加算器303の加算結果は、更に加算器304に加えられる。加算器304のもう一方の端子にはレジスタ305に保持されている20ビットの値が加えられており、加算結果が再びレジスタ305に加えられる積分器構成になっている。
【0036】
レジスタ305の加算結果はオーバーフローする場合があるが、ここでは桁上げせずに無視する。レジスタ305の上位7ビットが、サインテーブル部306に入力される。サインテーブル部306は、例えば7ビットの値、「0〜127の値」で、「0°〜360°の位相」を表現している。すなわち、「入力値1」が、「360°÷128=2.8°」を表している。サインテーブル部306は、入力の位相に応じた8ビットのサイン波の値(正弦波信号の周波数値)を端子307に出力する。これらの回路構成は正弦波信号生成手段として機能している。
【0037】
ビット割り振りの様子を図3(b)に示す。図3(b)のA〜Dが図3(a)の各信号に対応している。例えば、入力端子302に与えられている周波数誤差が「0」、端子301に与えられている中心周波数が「3640」だとすると、図中のAは「3640」となっている。
【0038】
レジスタ305は20ビット、クロックは水晶発振器から発振される周波数81MHzなので、レジスタ305は、「81e6×3640÷2^20=281181Hz」周期でオーバーフローする。しかしながら、本実施形態においては、桁上げせずにこのレジスタ305の上位7ビットを取り出して、その結果をサインテーブル部306に出力する。
【0039】
また、入力端子302に「1」を与えれば、図3のAが「3641」となるので、クロック周波数は、「81e6×3641÷2^20=281258Hz」となり、入力が「1」変化するごとにクロック周波数は、「77Hz」ずつ変化する。
【0040】
図4(a)は、チャネルDVCO部112の具体的な構成例を示す図である。
図4(a)において、端子401には、クロックの目標周波数に対応した設定値が供給される。ここでは、光ディスクとしてDVD−Rディスク2倍速を例とし、目標とするクロックの周波数を、8逓倍して52.32MHzとなる「6.54MHz」とし、「84630」を設定する。すなわち、「84630×81e6÷2^20=6537466Hz」となる。
【0041】
端子401から入力される中心周波数の値と、入力端子402から入力される周波数誤差値が加算器403で加算される。加算器403の加算結果は、更に加算器404に加えられる。加算器404のもう一方の端子には加算用配線が接続されていて、この加算用配線を介して、レジスタ405に保持されている20ビットの値が加えられている。そして、加算結果がレジスタ405に再び加えられる積分器構成になっている。
【0042】
レジスタ405の加算結果はオーバーフローする場合があるが、ここでは桁上げせずに無視する。レジスタ405の上位7ビットがサインテーブル部406に加えられる。サインテーブル部406は、例えば7ビットの値、「0〜127の値」で「0°〜360°」の位相を表現している。すなわち、「入力値1」が、「360°÷128=2.8°」を表している。サインテーブル部406は、入力の位相に応じた8ビットのサイン波の値(正弦波信号の周波数値)を端子407に出力する。これらの回路構成は正弦波信号生成手段として機能している。本実施形態においては、正弦波信号の目標周波数に関連した設定値と前記変換手段によって変換された周波数誤差とを加算する加算手段として機能するとともに、前記加算手段の加算値を予め定められた周期で積算動作する機能を有している。
【0043】
図4(b)に、ビット割り振りの様子を示す。図4(b)のA〜Dが図4(a)の各信号に対応している。例えば、入力端子402に与えられている周波数誤差が「0」、端子401に与えられている中心周波数が「84630」だとすると、図4中のAは「84630」となっている。
【0044】
レジスタ405は20ビット、クロックは水晶発振器から発振される周波数81MHzなので、レジスタ405は、「81e6×84630÷2^20=6537466Hz」周期でオーバーフローする。しかしながら、本実施形態において、桁上げせずに、このレジスタ405の上位7ビットを取り出して、その結果をサインテーブル部406に入力してサイン波を生成する。
【0045】
ΔΣDA変換部113は、サイン波出力結果をアナログ電圧に変換し、アナログPLL部114へ出力する。アナログPLL部114は、位相比較器、ループフィルタ部、VCO部、分周器(何れも図示せず)で構成されており、公知のクロック逓倍用のPLL部である。
【0046】
ΔΣDA変換部113が出力する、例えば6.54MHzの正弦波を8逓倍することで、「52.32MHz」のクロックを生成し、記録用のクロック信号として用いる。なお、本実施形態では、分周器の分周比を1/8としたが、これ以外の値をとることも可能である。例えば、DVD−Rディスク4倍速の場合には、分周比を1/16にするとよい。また、水晶発振器の発振周波数を「81MHz」としたが、これ以外の値をとることも可能である。
【0047】
ここで、ウォブルDVCO部105、チャネルDVCO部112の中心周波数設定値と増幅器108の設定値について説明する。
例えば、DVD−Rディスク2倍速を例とすると、入力端子106に入力される、ウォブルDVCO部105の中心周波数設定値には「3640」、入力端子111から入力される、チャネルDVCO部112の中心周波数設定値には「84630」を設定した。
【0048】
よって、ウォブルDVCO部105の中心周波数設定値とチャネルDVCO部112の中心周波数設定値とは、「23.25倍」の関係にある。よって、増幅器108には、「23.25」を設定する。この場合、「3640×23.25=84630」となる。
【0049】
本実施形態においては、ウォブルDVCO部105とチャネルDVCO部112の構成を同一のものとした。このため、ウォブルDVCO部105の周波数誤差値(図3の入力端子302に入力される周波数誤差値)と、チャネルDVCO部112の周波数誤差値(図4の入力端子402に与えられる周波数誤差値)にも、23.25倍の関係があてはまる。例えば記録時に、ウォブルPLL部107のループフィルタ部104の積分器出力値が「12」であったとすると、チャネルDVCO部112の制御信号は、「12×23.25+84630=84909」となる。したがって、「81e6×84909÷2^20×8=52472145Hz」がチャネル周期に関連した周波数成分を有するチャネルクロックとなる。
【0050】
また、例えば再生時に、ループフィルタ部128の出力値が「16」、ウォブルPLL部107のループフィルタ部104の積分器出力値が「12」であったとする。この場合は、チャネルDVCO部112の制御信号は、「16+12×23.25+84630=84925」となるので、「81e6×84925÷2^20×8=52482032Hz」が再生クロック周波数となる。
【0051】
次に、図5を用いて時間差検出部119の動作について説明する。
時間差検出部119には、基準位相信号検出部115から基準信号検出フラグが入力され、アナログPLL部114からチャネルクロックタイミングが入力される。基準信号検出フラグは、基準信号が検出された場合に「1」、検出されなかった場合に「0」となる。基準信号検出フラグは信号sとしてオフセット算出部120に出力する。
【0052】
チャネルクロックと基準位相信号の同期が取れている場合は、図5(a)に示すように、カウンタ値0と基準位相信号検出フラグのタイミングが一致している。図5(b)は、基準位相信号検出フラグが、3チャネルクロック分早い場合、図5(c)は、基準位相信号検出フラグが3チャネルクロック分遅い場合を示している。
【0053】
チャネルクロックと基準位相信号のクロック数のずれが何クロック分であったかを信号tとしてオフセット算出部120に出力する。例えば、図5(c)のように基準位相信号検出フラグが3チャネルクロック分遅い場合には、「3」を信号tとしてオフセット算出部120に出力する。
【0054】
オフセット算出部120は、時間差検出部119から基準位相信号検出フラグ信号sと基準位相信号とチャネルクロックの時間ずれ量を「信号t」として供給される。例えば、信号s=「1」、t=「3」が入力された場合には、チャネルクロックを3チャネルクロック分遅くしなければならない。つまり、正常に同期している場合には、1フレームに1488クロック分のところを、1フレームに1491クロック分カウントされたことになる。このため、チャネルDVCO部112の制御信号に対して、3チャネルクロック分のオフセットを付加し、基準位相信号との同期を取るように動作させる。例えば、チャネルDVCO部112の制御信号(=中心周波数設定値+周波数誤差値)が、84630だとすれば、「84630×(3/1488)=170」となる。これにより、予め設定された処理が施された周波数成分を生成することができる。
【0055】
よって、「−170のオフセット」をチャネルDVCO部112の制御信号に付加することで、基準位相信号とチャネルクロックの同期が取れることとなる。また、時間差検出部119から基準位相信号検出フラグs=「0」が入力された場合には、オフセット算出部120は値をホールドする構成とする。入力端子121を介して、オフセット算出部120に入力されている第2のモード切り替え信号Bは、オフセットの付加量を変更できるようゲイン値が切り替え可能な構成となっている。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の記録再生装置では、ウォブルPLLとチャネルPLLに同一の構成のDVCO部を組み込むようにした。これにより、2つのアナログVCO部を設けずに、アナログVCO部を1つ設けるだけで回路を構成することが可能となり、回路規模や消費電力の増大を防ぐことができた。更には、コストを低く押さえることを可能とした。
【0057】
また、記録時において、ウォブルDVCO部制御信号をゲイン処理した信号から低域成分を抜き出した信号をチャネルDVCO部112の制御信号とした。更には、基準位相信号とチャネルクロックの時間ずれを算出し、チャネルDVCO部112の制御信号にオフセット量として付加する。このようすることで、ディスクの回転に正確に同期した、チャネル周期に関連した周波数を有する高精度な記録クロック信号を生成することを可能とした。
【0058】
また、再生時において、再生データの位相誤差信号をループフィルタによって平滑化した信号と、ウォブルDVCO部制御信号をゲイン処理した信号とを加算し、加算結果をチャネルDVCO部112の制御信号とした。これにより、再生PLLのロックレンジを仮想的に広くして、安定した再生クロック信号を生成することを可能とした。
【0059】
(本発明に係る他の実施形態)
前述した本発明の実施形態における記録再生装置を構成する各手段、並びに記録再生方法の各ステップは、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明に含まれる。
【0060】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施形態も可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態における記録再生装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】従来の記録再生装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態におけるウォブルDVCO部及びその動作例を説明する図である。
【図4】本実施形態におけるチャネルDVCO部及びその動作例を説明する図である。
【図5】本実施形態における時間差検出回路の動作を示す図である。
【図6】本実施形態における再生処理へ切替時のタイミングを説明する図である。
【図7】本実施形態における位相比較部の構成及び動作について説明するブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
101 端子
102 AD変換部
103 位相比較部
104 ループフィルタ部
105 ウォブルDVCO部
106 入力端子
107 ウォブルPLL部
108 増幅器
109 ローパスフィルタ部
110 加算器
111 入力端子
112 チャネルDVCO部
113 ΔΣDA変換部
114 アナログPLL部
115 基準位相信号検出部
116 カウンタ部
117 変調器
118 端子
119 時間差検出部
120 オフセット算出部
121 入力端子
122 アドレス検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段と、
前記ウォブル信号検出手段によって検出されたウォブル信号に基いて、ウォブル周期に関連した周波数を有する第1のクロックを生成する第1のクロック生成手段と、
前記第1のクロック生成手段が前記第1のクロックを生成する際の制御信号に予め設定された処理が施された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するチャネルクロックを生成する第2のクロック生成手段とを有し、
前記第1のクロック生成手段に組み込む電圧制御発振器と、前記第2のクロック生成手段に組み込む電圧制御発振器とを同一の構成にしたことを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出手段と、
前記ディスク状記録媒体に形成された基準位相信号を検出する基準位相信号検出手段と、
前記ディスク状記録媒体に記録されたデータを読み取って再生信号を検出する再生信号検出手段と、
前記ウォブル信号検出手段によって検出されたウォブル信号を用いて、ウォブル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第1のクロック生成手段と、
前記第1のクロック生成手段により生成されたクロックに基づいて、アドレス情報を検出するアドレス情報検出手段と、
前記第1のクロック生成手段の制御信号にゲイン処理を施してノイズ成分を除去するフィルタ手段と、
前記フィルタ手段によりゲイン処理が施されてノイズ成分が除去された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第2のクロック生成手段と、
前記基準位相信号検出手段により検出された基準位相信号と、前記第2のクロック生成手段により生成された記録クロックとの時間差を検出する時間差検出手段と、
前記時間差検出手段により検出された時間差から前記基準位相信号と記録クロックとの周波数ずれをオフセット値として算出するオフセット算出手段と、
前記オフセット算出手段により算出されたオフセット値を前記第2のクロック生成手段の制御信号に付加するオフセット付加手段と、
前記再生信号検出手段により検出された再生信号を等化する等化手段と、
前記等化手段により等化された出力データを平滑化する平滑化手段と、
前記平滑化手段の出力信号と前記フィルタ手段により行われたゲイン処理のゲイン処理結果とを加算する加算手段と、
前記加算手段の加算結果を前記第2のクロック生成手段の制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有する再生クロックを生成する第3のクロック生成手段と、
外部から与えられる切替信号に従って前記第2のクロック生成手段が生成するクロックを切り替える切り替え手段とを有することを特徴とする記録再生装置。
【請求項3】
前記第1のクロック生成手段及び前記第2のクロック生成手段は、前記第1のクロックとウォブルクロック、前記第2のクロックと記録クロック、または前記第2のクロックと再生クロックとの位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段から出力される位相差検出結果に基づき、正弦波信号を生成する正弦波信号生成手段と、
前記正弦波信号生成手段から出力される正弦波の周波数値に基づいて、クロック生成手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
前記位相差検出手段は、ウォブルクロックと前記第1のクロックとの位相差、及び記録クロックと第2のクロックとの位相差、及び再生クロックと第2のクロックとの位相差を各々周波数誤差に変換する変換手段を有し、
前記正弦波信号生成手段は、前記正弦波信号の目標周波数に関連した設定値と前記変換手段によって変換された周波数誤差とを加算する加算手段と、前記加算手段の加算値を予め定められた周期で積算する積算手段とを有することを特徴とする請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項5】
前記第2のクロック生成手段は、位相比較器と前記位相比較器から出力される位相誤差結果を入力するループフィルタと、前記ループフィルタの出力に応じた周波数の信号をクロックとして出力する発振器と、前記発振器から出力されたクロックを分周する分周器とからなるPLL回路を備え、
前記正弦波信号生成手段から出力された正弦波信号と前記分周器の出力信号を前記位相比較器に入力することを特徴とする請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項6】
前記第1のクロック生成手段及び前記第2のクロック生成手段は、所定の動作クロック周波数を生成する水晶発振器を備え、前記積算手段は前記水晶発振器から出力される動作クロックに応じて、前記積算動作を行うことを特徴とする請求項2に記載の記録再生装置。
【請求項7】
ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出工程と、
前記ウォブル信号検出工程において検出されたウォブル信号に基いて、ウォブル周期に関連した周波数を有する第1のクロックを生成する第1のクロック生成工程と、
前記第1のクロック生成工程において前記第1のクロックを生成する際の制御信号に予め設定された処理が施された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するチャネルクロックを生成する第2のクロック生成工程とを有し、
前記第1のクロック生成工程において使用する電圧制御発振器と、前記第2のクロック生成工程において使用する電圧制御発振器とを同一の構成にしたことを特徴とする記録再生方法。
【請求項8】
ディスク状記録媒体に形成されたウォブル信号を検出するウォブル信号検出工程と、
前記ディスク状記録媒体に形成された基準位相信号を検出する基準位相信号検出工程と、
前記ディスク状記録媒体に記録されたデータを読み取って再生信号を検出する再生信号検出工程と、
前記ウォブル信号検出工程において検出されたウォブル信号を用いて、ウォブル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第1のクロック生成工程と、
前記第1のクロック生成工程において生成されたクロックに基づいて、アドレス情報を検出するアドレス情報検出工程と、
前記第1のクロック生成工程の制御信号にゲイン処理を施してノイズ成分を除去するフィルタ工程と、
前記フィルタ工程においてゲイン処理が施されてノイズ成分が除去された周波数成分を制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有するクロックを生成する第2のクロック生成工程と、
前記基準位相信号検出工程において検出された基準位相信号と、前記第2のクロック生成工程において生成された記録クロックとの時間差を検出する時間差検出工程と、
前記時間差検出工程において検出された時間差から前記基準位相信号と記録クロックとの周波数ずれをオフセット値として算出するオフセット算出工程と、
前記オフセット算出工程において算出されたオフセット値を前記第2のクロック生成工程の制御信号に付加するオフセット付加工程と、
前記再生信号検出工程において検出された再生信号を等化する等化工程と、
前記等化工程において等化された出力データを平滑化する平滑化工程と、
前記平滑化工程から出力される出力信号と前記フィルタ工程において行われたゲイン処理のゲイン処理結果とを加算する加算工程と、
前記加算工程における加算結果を前記第2のクロック生成工程の制御信号とし、チャネル周期に関連した周波数を有する再生クロックを生成する第3のクロック生成工程と、
外部から与えられる切替信号に従って前記第2のクロック生成工程において生成するクロックを切り替える切り替え工程とを有することを特徴とする記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−176834(P2008−176834A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7339(P2007−7339)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】