説明

試料搬送システム

【課題】ウェーハ等の精密な検査を、製造工程を大きく変化させることなく、製造インラインで行うことができるウェーハ搬送システムを提供する。
【解決手段】ウェーハ等の半導体試料Wの製造工程に用いられるものであって、前記半導体試料Wを一の工程場所から他の工程場所へ搬送する搬送機構2と、その搬送機構2による搬送路上に設けられたSEM3と、を備え、前記搬送路の途中に設定した分析位置Pにおいて、搬送機構2による半導体試料Wの移動を一時的に停止し、その停止時にSEM3による分析検査が行われるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体等の試料製造プロセスにおいて用いられる搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハや液晶基板など(以下、半導体試料とも言う)の量産プロセスでは、特許文献1に示すように、半導体試料は、搬送機構によって、あるプロセスチャンバから他のプロセスチャンバに搬送されて次々と製造される。ところで、かかる半導体試料の微細加工化が進む近時では、その製造プロセス中での検査においても高精度な検査が必要とされるため、CD−SEMなどの走査型電子顕微鏡を用いることが多くなってきている。その場合、従来は、SEMを製造ラインから切り離して配置し、あるプロセスが終了したロットの中から一部のウェーハ等を抜き取って検査するようにしている。
【特許文献1】特開2003−174069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなシステムでは、抜き取り検査であるがゆえに、ロット生産後に検査を行う必要が生じ、その検査で仮に不具合が認められた場合には、生産されたロット全体を廃棄しなければならなくなる。また、抜き取りの際には、製造工程を一部変えなければならないなど不具合もある。
【0004】
本発明はかかる不具合を鑑みて行われたものであって、半導体試料の製造に係る搬送機構にSEMを付帯させることで、ウェーハ等の精密な検査を、製造工程を大きく変化させることなく、製造インラインで行うことができる半導体試料搬送システムを提供することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために本発明は次のような手段を講じたものである。
【0006】
すなわち、本発明にかかる半導体試料搬送システムは、前記半導体試料を一の工程場所から他の工程場所へ搬送する搬送機構と、その搬送機構による搬送路上に設けられたSEMと、を備え、前記搬送路の途中に設定した分析位置において、搬送機構による半導体試料の移動を一時的に停止し、その停止時にSEMによる分析検査が行われるように構成している。なお工程場所とは、成膜工程や洗浄工程などが行われるプロセスチャンバ内の他に、一時保管が行われる保管容器内などの場所も含む。
【0007】
一方、搬送機構という完全に固定されていないものにウェーハが保持されているため、分析位置でウェーハの移動を停止させ、見かけ上の静止状態を保っても、SEMによる解像度のレベルで言えば、停止の際の振動が収まっていなかったり、搬送機構の駆動部等からのわずかな振動が伝わっていたりして、このような振動がSEMによる分析に悪影響を及ぼす可能性がある。これを回避するには、前記分析位置において、搬送機構により保持された半導体試料の振動を検知する振動検知手段と、その振動検知手段が検知した振動に基づいて、SEMによる撮像画像の振動ブレを補正するブレ補正部と、をさらに備えているものが好ましい。
【0008】
半導体試料の所望箇所を検査できるようにするには、半導体試料の所定箇所に設けられたノッチ等の基準ポイントに基づいて、半導体試料の位置、姿勢を検出する位置姿勢検出機構をさらに備えているものが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
このように構成した本発明によれば、半導体試料の製造ラインにおける搬送路上にSEMが設置されているので、1つ1つの半導体試料をインラインで検査することが可能になる。したがって、その検査によって不具合のある半導体試料が発生しても、その時点で製造を中断して、その不具合発生原因を解消すればよく、従来のように、無駄にウェーハ等を製造するような事態を回避して、歩留まりの向上などを図ることができる。
【0010】
さらに、製造工程間に検査工程を行う本システムを介在させるだけなので、製造工程を大きく変化させることがなく、しかも抜き取りなどをおこなう必要がないので、検査に係る観察や分析が簡便になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る搬送システム1は、量産型の半導体製造プロセスシステムにおける真空プロセスチャンバAと別の真空プロセスチャンバBとの間に組み込まれるものであり、図1に示すように、半導体試料であるウェーハWをチャンバA、B間で搬送するための搬送機構2と、その搬送機構2による搬送路上に設けたSEM3とを備えている。
【0013】
搬送機構2は、ウェーハWを把持するための把持部21と、その把持部21を移動させる駆動部22と、その駆動部22を制御する制御部23とからなる。駆動部22は、複数のアーム221、222、223をXY平面上で互いに回転可能に直列結合したもので、これらが回転することで、把持部21をXY方向に自在に移動させる。また、基端に位置するアーム223は図示しない支軸によってZ方向に移動可能に支持されており、このような構成により、この駆動部22は、前記把持部21を位置で言えばXYZ方向の3自由度、姿勢で言えばXY方向の2自由度をもって移動させることができるように構成されている。そして、少なくともそれら把持部21及び駆動部22は、真空引き可能な搬送チャンバ4内に収容されている。この搬送チャンバ4につき、より具体的に説明すると、各プロセスチャンバA、Bには、プロセス前又はプロセス後のウェーハWを載置するための真空引き可能なプレチャンバA1、B1がそれぞれ設けられているが、本実施形態の搬送チャンバ4は、各プレチャンバA1、B1間に外部との気密性を保った状態で架け渡してある。そして、前記搬送機構2がプレチャンバA1、B1に載置されたウェーハWを把持し、この搬送チャンバ4内を通して別のプロセスチャンバB(A)まで搬送するように構成している。
【0014】
前記SEM3は、前記搬送チャンバ4の上部に設けられて、下方に向かって電子線を照射し、そこを通過するウェーハWを分析する例えば走査型のものである。
【0015】
しかして、この実施形態では、次々搬送されてくる各ウェーハWを、前記搬送路上に設定した所定の分析位置Pにおいて、分析に要する一定時間だけ、制御部23からの指令によって都度停止させ、その間、搬送機構2によって保持されているウェーハWをSEM3によって分析検査するように構成している。なお、分析位置変更や調整などのために、必要に応じて前記制御部23により、駆動部22を動作させ、把持部21をXYZ方向に動かすこともある。
【0016】
したがって、このように構成した搬送システム1によれば、検査によって不具合のあるウェーハWが発生しても、その時点で製造を中断して、その不具合発生原因を解消すればよく、従来のように、無駄にウェーハを製造するような事態を回避することができる。またウェーハWの製造工程間に本システム1が直列に介在するだけなので、ウェーハ製造工程を大きく変化させることもない。
【0017】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、SEMによる解像度レベルで言えば、搬送機構という完全に固定されていないものにウェーハが保持されているため、分析位置でウェーハの移動を停止させ、見かけ上の静止状態を保っても、停止の際の振動が収まっていなかったり、搬送機構の駆動部等からのわずかな振動が伝わっていたりして、このような振動がSEMによる分析に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、例えば前記分析位置において、搬送機構により保持されたウェーハの振動を検知する振動検知手段と、その振動検知手段が検知した振動に基づいて、SEMによる撮像画像の振動ブレを補正するブレ補正部と、をさらに設けてもよい。
【0018】
また半導体試料の所定箇所に設けられたノッチ等の基準ポイントに基づいて、半導体試料の位置、姿勢を検出する位置姿勢検出機構を設けてもよい。このようにすれば、その位置姿勢検出機構からの情報に基づいて、搬送機構を駆動し、半導体試料の所望箇所を、SEMによる電子線照射位置に合わせ込み、そこを分析することが可能になる。
【0019】
さらに言えば、検査対象は、半導体試料に限られず、その他の材料試料でもよく、特に量産の製造ラインに適用して本発明の効果は顕著となる。
【0020】
その他、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態における試料搬送システムを示す模式的全体図。
【符号の説明】
【0022】
1・・・半導体試料搬送システム
2・・・搬送機構
3・・・SEM
W・・・半導体試料(ウェーハ)
P・・・分析位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ等の半導体試料の製造工程に用いられるものであって、
前記半導体試料を一の工程場所から他の工程場所へ搬送する搬送機構と、その搬送機構による搬送路上に設けられたSEMと、を備え、
前記搬送路の途中に設定した分析位置において、搬送機構による半導体試料の移動を一時的に停止し、その停止時にSEMによる分析検査が行われるように構成している半導体試料搬送システム。
【請求項2】
前記分析位置において、搬送機構により保持された半導体試料の振動を検知する振動検知手段と、
その振動検知手段が検知した振動に基づいて、SEMによる分析画像のブレを補正するブレ補正部と、をさらに備えている請求項1記載の試料搬送システム。
【請求項3】
半導体試料の所定箇所に設けられたノッチ等の基準ポイントに基づいて、半導体試料の位置、姿勢を検出する位置姿勢検出機構をさらに備えている請求項1又は2記載の試料搬送システム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−141141(P2008−141141A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328722(P2006−328722)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【出願人】(502128800)株式会社オクテック (83)
【Fターム(参考)】