説明

誘導結合通信におけるインダクタンス補償方法及び装置

【課題】
本発明は、誘導結合(inductive coupling)送受信装置に関する。
【解決手段】
本発明の一実施例による誘導結合送受信装置は、データを送信及び/又は受信する誘導結合送受信器と、前記誘導結合送受信器に接続されたインダクタ(inductor)と、前記誘導結合送受信器及び前記インダクタに接続されて前記インダクタのインダクタンス(inductance)変化を補償する共振補償装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導結合(inductive coupling)送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、誘導結合通信は新しい近距離非接触通信方式として脚光を浴びている。 RFID(radio frequency identification;無線周波数認識)などの既存の近距離非接触通信方式は、主に使う周波数帯域が800MHz〜2.4GHz以上の高周波なので電力消耗が多い。周波数が低い13.56MHz RFIDの場合は、データ伝送率が数十〜数百kbpsで非常に低い。一方、誘導結合通信は、データ送信率の範囲が非常に広く(数kbpsから数Gbpsまで)、13.56MHz位の周波数でも数Mbps以上の伝送率を維持することができるという長所がある。
【0003】
このような誘導結合通信は、固定されたインダクタの値を有する応用分野、すなわち、チップ上に具現されたインダクタ(inductor)を利用して生産されたチップを大量にテストする時に使うとか、層構造で積み重ねたチップ間の通信、あるいは生産され/組み立てられた回路基板のテスト及びデータ通信に利用されるなど、その応用分野は電子産業全般に広がっている。
【0004】
一般的に誘導結合通信において、インダクタは固定値を有する。これは、インダクタがチップ又は金属で製作され、丈夫で安定的だからである。しかし、最近、可撓性(flexible) 素材に電子回路を組み入れる技術が発展するにつれ、インダクタの値が固定されないことが発生する場合があり得る。代表的な例として、プリンティング可能な電子回路(Printable Electronics)、例えば、印刷型回路基板などでのインダクタ又は布上に伝導性纎維で製作されたインダクタを挙げられる。このような場合、インダクタの値は時間/空間上の変化により変動され、これにより安定的でエラー率(error rate)の低い通信が難しくなる。
【0005】
これを補うため、従来の位相固定ルーフ回路装置の適用を試みることができる。しかし、従来の位相固定ルーフ装置は、位相周波数測定器から出た波形を低域通過フィルタ(LPF)を通過させた後、これを電荷ポンプ(Charge pump)を経ってADC(analog-to-digital converter;アナログ-デジタル変換器)へ入力して特定デジタルレベルに変換した後、これを評価してキャパシタバンク(capacitor bank)の値を調節するなどの複雑で電力消費が大きい方式を用いる。このようにする理由は、従来の位相固定ルーフ装置は、位相と周波数を固定したまま「連続周波数信号」を用いなければならないからである。このため、精巧で安定したルーフを形成しなければならない。このような理由で、従来技術は、電力消費と面積の点で非効率を我慢しながら複雑な装置を使っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述の問題点を解決するため、誘導結合通信でのインダクタンスを補償する装置及び方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、誘導結合通信でインダクタンス補償に要する時間を短縮し、補償に必要な回路面積及び電力消費が少ないインダクタンス補償装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例による誘導結合送受信装置は、データを送信及び/または受信する誘導結合送受信器と、前記誘導結合送受信器に接続されたインダクタと、前記誘導結合送受信器及び前記インダクタに接続されて前記インダクタのインダクタンス変化を補償する共振補償装置と、を含む。
【0009】
ここで、望ましくは、前記共振補償装置は、複数個の単位キャパシタを含み、前記各単位キャパシタはそれぞれ活性化又は非活性化可能なキャパシタバンクと、前記キャパシタバンクの単位キャパシタを活性化又は非活性化させるデコーダーと、前記キャパシタバンクのキャパシタンス及び前記インダクタのインダクタンスによって一定の周波数で発振する発振器と、前記発振器の発振周波数を予め定められた周波数と比べる位相周波数測定器と、前記位相周波数測定器で測定された測定結果である制御信号を生成するセンス増幅器と、前記制御信号によって前記デコーダーを制御するFSM(有限状態マシン; finite state machine)制御器とを含む。
【0010】
ここで、望ましくは、前記共振補償装置は、位相周波数測定器、センス増幅器(sense amplifier)、FSM制御器、デコーダー及び発振器の中のいずれか一つ、またはこれらの任意の組み合わせの電源供給を制御する電源制御部をさらに含む。
【0011】
本発明の他の実施例による誘導結合送受信装置の共振補償装置は、複数個の単位キャパシタを含み、前記各単位キャパシタはそれぞれ活性化又は非活性化可能なキャパシタバンクと、前記キャパシタバンクの単位キャパシタを活性化又は非活性化させるデコーダーと、前記キャパシタバンクのキャパシタンス及び前記インダクタのインダクタンスにより一定の周波数で発振する発振器と、前記発振器の発振周波数を予め定められた周波数と比べる位相周波数測定器と、前記位相周波数測定器で測定された測定結果である制御信号を生成するセンス増幅器と、前記制御信号により前記デコーダーを制御するFSM制御器とを含む。
【0012】
ここで、望ましくは、前記誘導結合送受信装置の共振補償装置は、位相周波数測定器、センス増幅器、FSM制御器、デコーダー及び発振器の中でいずれか一つ、またはこれらの任意の組み合わせの電源供給を制御する電源制御部をさらに含む。
【0013】
本発明の他の実施例よるインダクタンス補償方法は、可変キャパシタ、インダクタ及び送受信器を含む誘導結合送受信装置のインダクタンス補償方法として、前記可変キャパシタ及び前記インダクタに接続された発振器の発振周波数を予め定められた基準周波数と比べる段階と、前記周波数比較結果により前記可変キャパシタのキャパシタンスを変化させる段階とを含む。
【0014】
ここで、望ましくは、前記キャパシタンスを変化させる段階は、前記発振周波数の周波数が前記基準周波数より高い場合、前記キャパシタンスを増加させ、前記発振周波数が前記基準周波数より低い場合、前記キャパシタンスを減少させ、前記発振周波数が前記基準周波数と同一な場合、前記キャパシタンスを維持する段階を含む。
【0015】
ここで、望ましくは、前記キャパシタンスを増加させる場合、前記キャパシタンスの増加後の値が前記キャパシタンスの増加前の値の1.5倍になるように増加させて、 前記キャパシタンスを減少させる場合、前記キャパシタンスの減少後の値が前記キャパシタンスの減少前の値の0.5倍になるように減少させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、誘導結合通信でのインダクタンスの値が時間/空間的に変化する場合、これを補償して安定的で低いエラー率を有する通信を果たすことができる。
【0017】
又、このような目的を果たすためのキャパシタバンクをオン・オフする方法において、既存の複雑な方式の代わりに簡単なセンス増幅器とFSMのみを使うことで、電力消費と面積の消耗を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるインダクタンス補償装置を用いることのできる誘導結合通信の例を示す図である。
【図2】衣服に設置されたインダクタの写真を示す図である。
【図3】(a)は、図2に示した二つのインダクタの相対的な位置、距離を説明する図であり、(b)は、二つのインダクタの相対的な位置、距離、曲げなどによる相互インダクタンス(mutual inductance)の変化を示すグラフである。
【図4】衣服に設置されたインダクタの不均一性による偏差を示す図である。
【図5】本発明の一実施例による共振補償装置200のブロック図である。
【図6】例示的なセンス増幅器204を示す図である。
【図7】本発明の一実施例によるFSM制御器の作動手順を示したフローチャートである。
【図8】本発明の一実施例によるデコーダー206及びキャパシタバンク201を示した図である。
【図9】キャパシタバンク201の一つのユニットセル201-1とデ−コト206の入力によるキャパシタバンク201の動作を示した図である。
【図10】本発明による共振補償装置200を採用する場合(b)と採用しない場合(a)との誘導結合送受信器220の動作結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<誘導結合通信でのインダクタンスの補償>
本発明は、誘導結合通信において、インダクタのインダクタンス値の変化量を感知し、インダクタンス値の補償のためキャパシタ値を変更することで、継続的に安定的な通信を可能にするインダクタンス補償に関する。
【0020】
本発明による送受信装置は、データを送信及び/又は受信する誘導結合送受信器と、誘導結合送受信器に接続されたインダクタと、誘導結合送受信器及びインダクタに接続されてインダクタのインダクタンス変化を補償する共振補償装置とを含む。ここで、インダクタのインダクタンスの変化を補うということは、インダクタンスの変化が誘導結合送受信器に及ぶ影響を相殺させるという意味である。
【0021】
図1は、本発明によるインダクタンス補償装置を利用することができる誘導結合通信の例を示す図面である。重ねて着られる上衣2枚、例えば下着110と上着の120に、それぞれ送信器112と受信器220を設置することができる。送信器112と受信器220は、誘導結合によってお互いに通信可能である。人がこのような下着110と上着の120を重ねて着て、下着110の送信器112に、例えば、MP3プレーヤーを接続して、上着の120の受信器220にイヤホンを接続し、MP3プレーヤーとイヤホンの間の複雑なワイヤリング(wiring)なしで音楽を聞くことができる。誘導結合のために、下着110及び上着120には、それぞれインダクタ114及びインダクタ210が設置され、インダクタ114、210それぞれは送信器112及び受信器220に接続される。
【0022】
ここで、下着110と上着の120にそれぞれ設置されるインダクタ114、210は、その位置的特性上、インダクタンスの値が変化し得る。
【0023】
図2は、衣服に設置されたインダクタの写真を示す図である。図3(a),(b)は、図2に示したインダクタの動的(dynamic)偏差を誘発する項目(parameter)などを示す図である。二つのインダクタの相対的な位置(△x又は△y)、相対的な距離(△z)、曲げなどにより、各インダクタのインダクタンス及び二つのインダクタの相互インダクタンス(mutual inductance)が変わる。図4はインダクタの静的(static)偏差を示す図である。インダクタの静的偏差は複数のインダクタ(30個)を測定して得たものである。衣服にインダクタを設置するため、衣服に伝導性の糸を縫う方式などを利用しており、インダクタの不均一性は、この縫うことなどの誤差に起因する。
【0024】
このように、下着110と上着120にそれぞれ設置されるインダクタ114、210は、インダクタンスの値が可変的なので、本発明は誘導結合通信でのインダクタンス変化を補償することができる共振補償装置116、200を採用する。
【0025】
本発明による共振補償装置116、200は、L-C共振においてインダクタンスLの変化につれてキャパシタンスCを適切に変更することで、周波数領域でLが固定されるような効果を達成する。
【0026】
また、本発明による共振補償装置116、200は、キャパシタンスCを変化させるため、電荷ポンプ、ADC、デコーダーなどの複雑な装置を利用せず、センス増幅器(sense amp)とFSM制御器を利用して共振周波数の増加あるいは減少のみを検出する。このようにすることでインダクタンス補償のための必要な電力消費とチップ面積を減らすことができる。
【0027】
以下、本発明による共振補償装置200について、詳しく説明する。共振補償装置116の構成は共振補償装置200の構成と同一である。
【0028】
<共振補償装置200>
図5は、本発明の一実施例による共振補償装置200のブロック図である。
【0029】
共振補償装置200は、誘導結合送受信器220及びインダクタ210に接続される。誘導結合送受信器220は、図1の送信器112又は受信器220であり得る。または、誘導結合送受信器220は、送信と受信がすべて可能な誘導結合通信手段であり得る。インダクタ210は、そのインダクタンスが可変的であり、製造工程、環境によってインダクタンスが偏差を有する。
【0030】
共振補償装置200は、キャパシタバンク201、発振器202、位相周波数測定器203、センス増幅器204、FSM制御器205、デコーダー206を含む。また、共振補償装置200は電源制御部207を含むことができる。
【0031】
キャパシタバンク201は、複数個の単位キャパシタを含み、各単位キャパシタは、それぞれ活性化又は非活性化が可能である。各単位キャパシタの活性化されたか否か によってキャパシタバンク201のキャパシタンスが変わる。よって、キャパシタバンク201は可変キャパシタと類似するものである。
【0032】
デコーダー206は、キャパシタバンクの単位キャパシタを活性化又は非活性化させる。デコーダー206の動作については後述する。
【0033】
発振器202は、キャパシタバンク201のキャパシタンス及びインダクタ210のインダクタンスによって一定の周波数で発振する。発振器202の有効出力周波数feffは、発振器202に接続されたインダクタ210のインダクタンスLeff及びキャパシタバンク201のキャパシタンス(Cbank)によって決まる。ここで有効出力周波数は、次のような式によって決まる。
【0034】


【0035】
位相周波数測定器203は、発振器202の発振周波数と予め定められた基準クロック周波数を比べる。位相周波数測定器203は、発振器202の発振周波数が基準クロックより高ければ、キャパシタバンクの有効キャパシタンスを高めて発振出力周波数を低めるため、第2出力を通じてセンス増幅器204へ「減少(DN)」信号を出力する。これとは逆に、位相周波数測定器203は、発振器202の発振周波数が基準クロックより低ければ、キャパシタバンク201の有効キャパシタンスを減らして発振出力周波数を高めるため、第1出力を通じてセンス増幅器204へ「増加(UP)」信号を出力する。図5に示したように、例示的な位相周波数測定器203は、このような動作のために、2個のD-フリップフロップ(flip-flop)、一つのアンド(AND)論理回路を含む。第1D-フリップフロップにクロック信号が入力され、第2D-フリップフロップに発振器202の出力が入力させる。クロック信号が入力される。第1D-フリップフロップの出力端子が位相周波数測定器203の第1出力端子の役目をして、第2D-フリップフロップの出力端子が位相周波数測定器203の第2出力端子の役目をする。第1出力端子と第2出力端子はアンド(AND)論理回路に接続されて、アンド論理回への出力が第1及び第2D-フリップフロップのクロックとして入力される。センス増幅器204は、位相周波数測定器203の「増加」信号(第1出力)または「減少」信号(第2出力)を受信して、FSM 制御器205へ「加算(ADD)」信号または「減算(SUB)」信号を出力する。図6に例示的なセンス増幅器204を示す。
【0036】
位相周波数測定器203の第1出力(UP)及び第2出力(DN)は、それぞれセンス増幅器の入力トランジスターMN1、MN2のゲートに入力され、クロス-結合(cross-couple)されているフィードバック(feedback)トランジスターMN3、MP3、MN4、MP4を通じてポジティブフィードバック(positive feedback)ルーフが形成される。よって、位相周波数測定器203の第1出力(UP)が先にハイ(high)に上がると(すなわち、周波数を上げなければならないとすると)、センス増幅器204の第1出力(SUB)をハイ(high)にさせる。これと反対に、位相周波数測定器203の第2出力(DN)が先にハイ(high)に上がると(すなわち、周波数を下げなければならないとすると)、センス増幅器204の第2出力(ADD)をハイ(high)にさせる。トランジスターMP1及びMP2はポジティブフィードバックを補強し、早くて安定的なセンス増幅器出力結果が出るようにする。
【0037】
FSM制御器205は、位相周波数測定器203の測定結果である「加算(ADD)」信号または「減算(SUB)」信号によりデコーダー206を制御する。または、FSM制御器205はセンス増幅器204の出力によりデコーダー206を制御する。ここで、FSM制御器の作動手順を図7に示した。
【0038】
FSM制御器205は、図7に示した過程の繰り返し回数が10回以下であるか把握する(S501)。繰り返し回数が10回を超過した場合、キャパシタ調整過程を終わらせる。繰り返し回数が10回以下の場合、FSM制御器205はキャパシタ行(capacitor row)の下位ビットが安定化されているか否かを判断し(S502)、キャパシタ行の下位ビットが安定化している場合、キャパシタ調整過程を終わらせる。キャパシタ行の下位ビットが安定化していない場合、現在の共振周波数と基準周波数を比べる(S503)。現在の共振周波数が基準周波数より高い場合、キャパシタを追加で活性化させることを決定する(S504)。現在の共振周波数が基準周波数より低い場合、活性化したキャパシタの中で一部を非活性化させることを決定する(S505)。S504で、活性化させるキャパシタの個数は((NCUR-NPREV)/2)個である。ここで、NCURは現在活性化するキャパシタの数であり、NPREVは以前の段階(キャパシタ調整過程の繰り返しの中で以前繰り返し)で活性化したキャパシタの数である。S505で、非活性化させるキャパシタの個数は((NCUR-NPREV)/2)個である。ここで、NCURは現在活性化するキャパシタの数であり、NPREVは以前の段階(キャパシタ調整過程の繰り返しの中で以前繰り返し)で活性化したキャパシタの数である。
【0039】
次に、段階S504、S505で決定したように、キャパシタを活性化または非活性化させるべきかの可否、活性化または非活性化させるべき個数に基づいて、FSM制御器205はキャパシタバンク201のどの行又は列のキャパシタを活性化又は非活性化させるべきかを計算する(S506)。次に、FSM制御器205はS506での計算結果に基づいて、キャパシタバンクの特定行または列を活性化又は非活性化させる(S507)。
【0040】
このような動作を通じて、FSM制御器205は、現在の共振周波数が基準周波数より高ければ、キャパシタバンクのキャパシタを追加で活性化させて共振周波数を低くし、現在の共振周波数が基準周波数より低ければ、キャパシタバンク201のキャパシタを追加で減少させて共振周波数を高くする。キャパシタバンク201のキャパシタが総1024個である場合、FSM制御器205は図7に示したキャパシタ調整過程を最大10回まで繰り返す。キャパシタ個数及びFSM制御器205のキャパシタ調整過程の繰り返し回収は例示的なものであり、キャパシタ個数は任意の個数を有することができ、キャパシタ個数がN個の場合、キャパシタ調整過程は最大でn回(nはlog(N)/log(2)以下の定数の中で最大値)繰り返される。
【0041】
図8は、本発明の一実施例によるデコーダー206、及びキャパシタバンク201を示した図面である。図8に示した例示的なキャパシタバンク201は、横及び縦それぞれ32個のキャパシタで成り立っている。すなわち、キャパシタバンク201は32行(row)、32列(column)のキャパシタで成り立っている。デコーダー206は行デコーダー(row decoder;206-1)及び列デコーダー(column decoder;206-2)を含む。行デコーダー206-1は、キャパシタバンク201の各行に「活性行(active row)信号」及び「現在行(current row)信号」を出力する。活性行信号と現在行信号はそれぞれ「ロー(low)」または「ハイ(high)」の値を有することができる。列デコーダー206-2は、キャパシタバンク201の各列に「ロー(low)」又は「ハイ(high)」の値を有する「列(column)信号」を出力する。
【0042】
図9にキャパシタバンク201の一つのユニットセル201-1とデコーダー206の入力によるキャパシタバンク201の動作が表で示されている。図9(b)に示すように、 キャパシタバンク201の特定行(例えば、X番目の行)への活性行信号が「ハイ」であり、現在行信号が「ロー」の場合、列信号と無関係にX番目の行信号のすべてのキャパシタが活性化になる。又、キャパシタバンク201の特定行(例えば、X番目の行)への活性行信号が「ロー」であり、現在行信号が「ロー」の場合、列信号と無関係にX番目の行信号のすべてのキャパシタが非活性化される。また、キャパシタバンク201の特定行(例えば、X番目の行)への現在行信号が「ハイ」であり、キャパシタバンク201の特定列(例えば、Y番目熱)への列信号が「ハイ」の場合、X番目の行への活性行信号と無関係に、X番目の行、Y番目の列のキャパシタが活性化になる。
【0043】
このような動作のためのキャパシタバンク201のユニットセル201-1の例示的な構成を図9(a)に示す。ユニットセル201-1は、第1及び第2パストランジスター(pass transistor)、インバーター(inverter)、スィッチ(switch)及びキャパシタを含む。第1パストランジスターの入力端に行デコーダー206-1の活性行信号が入力される。第1パストランジスターの反転端子、インバーター及び第2パストランジスターの非反転端子に行デコーダー206-1の現在行信号が入力される。第2パストランジスターの入力端に列デコーダー206-2の列信号が入力される。インバーターの出力は第1パストランジスターの非反転端子及び第2パストランジスターの反転端子に接続される。第1パストランジスターの出力及び第2パストランジスターの出力は、スィッチの入力に接続される。スィッチがオン(on)となればキャパシタが活性化される。
【0044】
本発明による共振補償装置200の動作は、二つのモードで分けられて成り立つ。第一は、補償モードであり、現在のインダクタンスの値を探り出し、意図した値と差がある場合、その差分、共振補償装置200を利用してインダクタンス値を補償する。補償モードでは、共振補償装置200は、現在のインダクタンスの値の入力により発振した発振器202で作った出力と外部クロックとを比べる。外部クロックは、使用者が意図した基準点であり、共振補償装置200はこれを基準にしてインダクタンスの値を測定する。
【0045】
共振補償装置200が動作を始めると、キャパシタバンク201のキャパシタの中で半分のみが活性化される。位相周波数測定器203は、発振器202の有効周波数を基準周波数と比べた後、発振周波数を上げるかあるいは下げるかを決定する。もし、発振出力周波数を下げなければならない場合、位相周波数測定器203、センス増幅器204及びFSM制御器205は、デコーダー206を通じて現在活性化になっているキャパシタ個数の半分の個数のキャパシタをさらに活性化させる。もし、反対に出力周波数を上げなければならない場合、位相周波数測定器203、センス増幅器204及びFSM制御器205はデコーダー206を通じて現在活性化になっているキャパシタの半分を非活性化させる。
【0046】
すなわち、発振周波数の周波数が基準周波数より高い場合、キャパシタンスを増加させて、発振周波数が基準周波数より低い場合、キャパシタンスを減少させて、発振周波数が基準周波数と同一の場合、キャパシタンスを維持する。
【0047】
この際、キャパシタンスを増加させる場合、キャパシタンスの増加後の値がキャパシタンスの増加前の値の1.5倍となるように増加させて、キャパシタンスを減少させる場合、キャパシタンスの減少後の値がキャパシタンスの減少前の値の0.5倍となるように減少させる。
【0048】
このように、二進接近方式で進行をすれば、1024個のユニットセルに成り立つキャパシタバンク201の場合、2^10=1024なので、最大総10回さえ繰り返ると、求める値に合わせることができる。よって、インダクタンス補償にかかる時間が短縮される。
【0049】
本発明による共振補償装置200の他のモードは、送受信モードである。送受信モードは、補償モードを通じてキャパシタバンク201のキャパシタンスの値が調整された後、送受信器220を通じて送受信が成り立つモードである。送受信モードの間には、位相周波数測定器203、センス増幅器204、FSM制御器205、デコーダー206及び発振器202の電源がオフ(off)となる。送受信モードの間、位相周波数測定器203、センス増幅器204、FSM制御器205、デコーダー206及び発振器202の電源をオフ(off)にするために、発振補償装置200は電源制御部207を含む。電源制御部207は送受信モードが一定時間持続された後、位相周波数測定器203、センス増幅器204、FSM制御器205、デコーダー206及び発振器202の電源をオン(on)させ、そうすると補償モードが始まる。このように、送受信モードの間には共振補償装置200のキャパシタバンク201と電源制御部207以外には電力が供給されないので、共振補償装置200の電力消費を節減させることができる。
【0050】
電源制御部207は、位相周波数測定器203、センス増幅器204、FSM制御器205、デコーダー206及び発振器202の電源をすべてオフすることができ、位相周波数測定器203、センス増幅器204、FSM制御器205、デコーダー206及び発振器202中いずれか一つまたはこれらの任意の組み合わせの電源をオフすることもできる。
【0051】
電源制御部207は、位相周波数測定器203、センス増幅器204、FSM制御器205、デコーダー206及び発振器202のそれぞれの電源供給をオン・オフするためのスィッチ、補償モード及び送受信モードが持続した時間を測定するためのタイマー(timer)、及びタイマーの時間測定に基づいて各スィッチをオン・オフする制御部を含む。
【0052】
図10は、本発明による共振補償装置200を採用した場合(b)と採用しない場合(a)の誘導結合送受信器200の動作結果を示す図面である。共振補償装置200を採用することで、これを採用しなかった場合に発生した受信側インダクタンスのインピーダンス偏差を81%まで減らすことができる。これによって、パルスに基づく誘導結合通信における受信側信号の強さ(電圧)の偏差が減少する。この効果として、図10の例示では受信信号が14%増加しており、お互いに異なるインダクタンス間の偏差がほとんどないことを分かる。
【0053】
本発明の実施例として、階層構造になっている衣服型MP3伝送装置を例であげたが、本発明による共振補償装置は任意の誘導結合送受信装置に利用されることができる。例えば、本発明による共振補償装置は、誘導結合装置が装着された携帯電話と車両用ハンズフリーシステムに利用することができる。
【0054】
このように、これらの実施例は例示的なものであり、本発明を限定しない。本発明の範囲は以下の特許請求範囲により決めるべきであり、前述の実施例だけではなく、当業者が前述した実施例を参照して変形可能な変更例なども本発明の権利範囲に含まれることと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0055】
200 共振補償装置
201 キャパシタバンク
202 発振器
203 位相周波数測定器
204 センス増幅器
205 FSM制御器
206 デコーダー
220 電源制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信及び/又は受信する誘導結合(inductive coupling)送受信器と、
前記誘導結合送受信器に接続されたインダクタ(inductor)と、
前記誘導結合送受信器及び前記インダクタに接続され、前記インダクタのインダクタンス(inductance)変化を補償する共振補償装置とを含む誘導結合送受信装置。
【請求項2】
前記共振補償装置は、
複数個の単位キャパシタを含み、前記各単位キャパシタは各々活性化又は非活性化可能なキャパシタバンクと、
前記キャパシタバンクの単位キャパシタを活性化又は非活性化させるデコーダーと、
前記キャパシタバンクのキャパシタンス及び前記インダクタのインダクタンスにより、一定の周波数で発振する発振器と、
前記発振器の発振周波数を予め定められた周波数と比べる位相周波数測定器と、
前記位相周波数測定器で測定された測定結果である制御信号を生成するセンス増幅器と、
前記制御信号により、前記デコーダーを制御するFSM(finite state machine)制御器と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の誘導結合送受信装置。
【請求項3】
前記共振補償装置は、
前記位相周波数測定器、前記センス増幅器、前記FSM制御器、前記デコーダー及び前記発振器の中のいずれか一つ、又はこれらの任意の組み合せの電源供給を制御する電源制御部をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の誘導結合送受信装置。
【請求項4】
複数個の単位キャパシタを含み、前記各単位キャパシタは各々活性化又は非活性化が可能なキャパシタバンクと、
前記キャパシタバンクの単位キャパシタを活性化又は非活性化させるデコーダーと、
前記キャパシタバンクのキャパシタンス及び前記インダクタのインダクタンスにより、一定の周波数で発振する発振器と
前記発振器の発振周波数を予め定められた周波数と比べる位相周波数測定器と、
前記位相周波数測定器で測定された測定結果である制御信号を生成するセンス増幅器と、
前記制御信号により、前記デコーダーを制御するFSM制御器とを含む誘導結合送受信装置の共振補償装置。
【請求項5】
前記位相周波数測定器、前記センス増幅器、前記FSM制御器、前記デコーダー及び前記発振器の中のいずれか一つ、又はこれらの任意の組み合わせの電源供給を制御する電源制御部をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の誘導結合送受信装置の共振補償装置。
【請求項6】
可変キャパシタ、インダクタ及び送受信器を含む誘導結合送受信装置のインダクタンス補償方法において、
前記可変キャパシタ及び前記インダクタに接続された発振器の発振周波数を予め定められた基準周波数と比べる段階と、
前記周波数比較結果により、前記可変キャパシタのキャパシタンスを変化させる段階とを含むインダクタンス補償方法。
【請求項7】
前記キャパシタンスを変化させる段階は、
前記発振周波数の周波数が前記基準周波数より高い場合、前記キャパシタンスを増加させ、前記発振周波数が前記基準周波数より低い場合、前記キャパシタンスを減少させて、前記発振周波数が前記基準周波数と同一な場合、前記キャパシタンスを維持する段階を含むことを特徴とする請求項6に記載のインダクタンス補償方法。
【請求項8】
前記キャパシタンスを増加させる場合、前記キャパシタンスの増加後の値が前記キャパシタンスの増加前の値の1.5倍になるように増加させ、前記キャパシタンスを減少させる場合、前記キャパシタンスの減少後の値が前記キャパシタンスの減少前の値の0.5倍になるように減少させることを特徴とする請求項7に記載のインダクタンス補償方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−189002(P2009−189002A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19697(P2009−19697)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】