説明

読取装置及び認証システム

【課題】非接触ICカードとタグの両方の認証媒体を用いる認証システムにおいて通信障害がなるべく発生しないようにする。
【解決手段】
認証システムは、読取装置と読取装置が識別情報を読み取る非接触ICカードと、アクティブタグとからなる。非接触ICカードとアクティブタグは共に読取装置から、識別情報を要求する要求信号を受けて、識別情報を含む応答信号を送信する。読取装置は、非接触ICカードに対して送信する要求信号を、タグに対して定期的に送信する要求信号の合間に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードに代表される認証媒体から識別情報を読み取る読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、非接触ICカードを利用した認証システムがある。非接触ICカードは、非接触ICカードが有する識別情報を読み取る読取装置(カードリーダ)から無線による電力の供給並びに識別情報を要求する要求信号(質問信号ともいう)を受けて、保持している識別情報を送信する。
この認証システムでは、例えば、ユーザがセキュリティエリアの扉脇に設置された読取装置(カードリーダ)に非接触ICカードをかざすと読取装置が非接触ICカードの識別情報を読み取り、読み取った識別情報が読取装置に予め記憶されている識別情報群に含まれていた場合に、扉に設けられている電気錠を解錠するといった運用がなされる。
【0003】
このような認証システムにおいては、非接触ICカードは読取装置から無線によって供給される電力しか識別情報の送信に用いることができないため、その送信出力では近接通信しかできない。この近距離通信しかできないという制約により、ユーザが読取装置に非接触ICカードをかざさなければならなくなることから、誰がセキュリティエリアに入ろうとしているのかが周囲から認識されやすくなるため、セキュリティが十分確保されることになる。
【0004】
一方で、その近接通信しかできないシステムにおいては、高度のセキュリティ保護が要求されないセキュリティエリアにおいては、ユーザはいちいち読取装置のそばまで行って非接触ICカードをかざすという行動を起こさなくてはいけないため、その運用においてユーザの利便性を欠くという面も有している。
そこで、高度のセキュリティ保護が要求されないセキュリティエリアのユーザの出入りを管理する目的で、電池を内蔵して、読取装置からの識別情報を要求する要求信号を受けて識別情報を含む応答信号をより遠くまで飛ばせる認証媒体(タグ)と当該タグが保持する識別情報を読み取る読取装置(タグリーダ)とを含む認証システムも開発されている。
【0005】
特許文献1には、そのようなタグリーダ及びタグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−177775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ユーザの利便性を高めるために非接触ICカードを認証するシステムに更にタグを認証する機能を追加する、あるいは、その逆にタグを認証するシステムに非接触ICカードを認証する機能を追加して両方を認証する読取装置を構成することが考えられる。
しかしながら、非接触ICカードに対する要求信号と、タグに対する要求信号とは互いにもう一方に対するノイズとなりえるため、非接触ICカードあるいはタグにおいて要求信号が正しく受信できなくなる可能性がある。
【0008】
そこで、本発明においては、2種類以上の認証媒体と異なる周波数帯域で通信を実行する読取装置において、ICカード又はタグにおいてできるだけ正しく信号を受信させることができる読取装置及び当該読取装置を含む認証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る読取装置は、第1の情報を保持し当該第1の情報をUHF帯にて送信するアクティブタグ及び第2の情報を保持し当該第2の情報をHF帯にて送信する非接触ICカードから、それぞれが保持する情報を読み取る読取装置であって、前記第1の情報を要求する第1要求信号をLF帯で送信する第1送信手段と、前記第2の情報を要求する第2要求信号をHF帯で送信する第2送信手段と、前記第1送信手段に前記第1要求信号を所定の第1期間においてのみ送信させ、前記所定の第1期間を除く第2期間においてのみ、前記第2送信手段に前記第2要求信号を送信させる制御手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る認証システムは、アクティブタグと、非接触ICカードと、読取装置を含んで構成される認証システムであって、前記アクティブタグは、第1の情報を保持するメモリと、前記読取装置から前記第1の情報を要求する第1要求信号を受信した場合にUHF帯で前記第1の情報を含む応答信号を送信する送信手段とを備え、前記非接触ICカードは、第2の情報を保持するメモリと、前記読取装置から前記第2の情報を要求する第2要求信号を受信した場合にHF帯で前記第2の情報を含む応答信号を送信する送信手段とを備え、前記読取装置は、前記第1の情報を要求する第1要求信号をLF帯で送信する第1送信手段と、前記第2の情報を要求する第2要求信号をHF帯で送信する第2送信手段と、前記第1送信手段に前記第1要求信号を所定の第1期間においてのみ送信させ、前記所定の第1期間を除く第2期間においてのみ、前記第2送信手段に前記第2要求信号を送信させる制御手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上述のような構成によって、読取装置は、第1要求信号を送信していないタイミングで、第2要求信号を送信するので、第1要求信号と第2要求信号とが互いに対するノイズになることはなく、アクティブタグあるいは非接触ICカードにおいて要求信号が正しく受信されなくなる可能性を低減することができる。
また、前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、前記読取装置は、前記通信方式のいずれかを選択する選択手段を備え、前記第2送信手段は、前記選択手段により選択された通信方式に基づいて、前記第2要求信号を送信することとしてもよい。
【0012】
これにより、読取装置は、例えばユーザからの指示を受け付けて、ユーザ側で所望する非接触ICカードに対する認証を行うことができる。
また、前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、前記複数の通信方式には、ASK(Amplitude Shift Keying)100%で変調される通信方式と、それ以外の通信方式が含まれ、前記制御手段は、前記第2送信手段が前記ASK100%で変調される通信方式で非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合には、それ以外の通信方式と異なり例外的に前記所定の第1期間においてのみ前記第2要求信号を送信することとしてもよい。
【0013】
あるいは、前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、前記複数の通信方式には、ASK(Amplitude Shift Keying)10%で変調される通信方式と、それ以外の通信方式が含まれ、前記制御手段は、前記第2送信手段が前記ASK10%で変調される通信方式以外の通信方式で非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合には、前記ASK10%の通信方式と異なり例外的に前記所定の第1期間においてのみ前記第2要求信号を送信することとしてもよい。
【0014】
これにより、読取装置は、変調度の高いASK100%などの、信号における「0」と判断される振幅と「1」と判断される振幅の差が大きく、ノイズに対して強い通信方式を使用する場合には、非接触ICカードに対する要求信号を第1期間において送信するので、読取装置が情報を読み取れるべき非接触ICカードの通信方式が複数ある場合には、要求信号の送信にあたり、時間をより有効に用いることができる。
【0015】
また、前記非接触ICカードには、第1通信方式で通信を実行するものと、前記第1通信方式とは変調方式が異なる第2通信方式で通信を実行するものとが含まれ、前記第2送信手段は、予め定められた順序に従い前記第1通信方式と前記第2通信方式とを切り替えて、前記第2要求信号を送信することとしてもよい。
これにより、通信方式の異なる非接触ICカードを使用する場合に、その通信方式を切り替えながら要求信号を送信することで、通信方式が違いに異なる非接触ICカードを同一システム内において運用することができる。
【0016】
また、前記アクティブタグは、前記読取装置から非接触で電力を供給されて前記第1の情報を送信する第1通信方式と自機に搭載されている電池から電力を供給されてUHF帯で前記第1の情報を送信する第2通信方式のいずれかを選択して通信を実行するものであり、前記読取装置は、前記第1通信方式と前記第2通信方式のいずれかの通信方式を選択する選択手段を備え、前記第1送信手段は、前記選択手段により選択された通信方式で前記第1要求信号を送信することとしてもよい。
【0017】
これにより、読取装置がアクティブタグに対して非接触で電力を供給することができる通信方式で要求信号を送信することができるので、アクティブタグは電池の電力が切れたとしても、読取装置から電力の供給を受けて認証を行うことができ、例えば、アクティブタグの電池がなくなった状態でのユーザの部屋への閉じ込めといった事態を回避することができる。また、電力を供給する場合と供給しない場合とで切り替えができるように構成することで、例えば、通常は電力を供給しない通信方式でアクティブタグに対する要求信号を送信して、その間電力を供する通信号式では要求信号を送信しないことで読取装置における省電力を図ることもできる。
【0018】
また、前記所定の送信期間は、複数の単位期間からなり、前記停止期間は、当該単位期間の合間に設けられることとしてもよい。
これにより、第1期間と第2期間と繰り返し、適切な時間単位に区切ることにより、アクティブタグと非接触ICカードに対する要求信号を交互に送信する構成をとることになり、アクティタグ、あるいは、非接触ICカードのいずれかに対する要求信号の送信が偏ることを防止できる。つまり、各認証媒体の認証に係る時間即ちレスポンスの最長時間の短縮を図れる。
【0019】
また、前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、前記複数の通信方式は、非接触ICカードが前記要求信号に対する応答信号をサブキャリア負荷変調して送信するものと、非接触ICカードがそれ以外の変調方式で応答信号を送信するものとを含み、前記制御手段は、前記第2送信手段に、前記サブキャリア方式で信号を送信する非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合には、前記それ以外の変調方式で信号を送信する非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合と異なり、例外的に前記第1期間においても、前記第2要求信号を送信させることとしてもよい。
【0020】
非接触ICカードが発するサブキャリア負荷変調で変調された信号は、読取装置にとって、「0」、「1」の区別が容易であり、読取装置が発信している要求信号との間の干渉にかかわらず、正しく受信できる。そこで、サブキャリア負荷変調で変調された応答信号を発する非接触ICカードに対する要求信号については、第1期間、第2期間の両方で要求信号を送信して、読取サイクルを早めることになり、サブキャリア負荷変調で変調された応答信号を発する非接触ICカードを使用するユーザの利便性を高めることができる。
【0021】
また、前記制御手段は、前記サブキャリア負荷変調で信号を送信する非接触ICカードのうち、前記第2送信手段がASK100%で変調した要求信号を受信する非接触カードに対する要求信号については、例外的に前記第1期間においてのみ前記第2送信手段に前記第2要求信号を送信させることとしてもよい。
これによって、サブキャリア負荷変調で変調された応答信号を発する非接触ICカードのうち、ASK100%以外のパーセンテージで変調された要求信号を受信する非接触ICカードの識別子の読取サイクルを早めることになり、当該非接触ICカードを使用するユーザの利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】認証システムのシステム構成を示したシステム図である。
【図2】読取装置の機能構成を示した機能ブロック図である。
【図3】タグの機能構成を示した機能ブロック図である。
【図4】非接触ICカードの機能構成を示した機能ブロック図である。
【図5】読取装置が保持する認証情報のデータ構成を示す図である。
【図6】ハイブリッドリーダや上位装置が保持する認証履歴情報のデータ構成を示す図である。
【図7】実施の形態1に係るハイブリッドリーダ100の要求信号の送信に係る動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1に係る要求信号の送信のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】実施の形態1に係る要求信号の送信のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図10】実施の形態1に係る要求信号の送信のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図11】実施の形態1に係る要求信号の送信のタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図12】実施の形態2に係るハイブリッドリーダ100の要求信号の送信に係る動作を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態2に係る要求信号の送信のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図14】ハイブリッドリーダ−非接触ICカード間の通信における変調方式を示した表である。
【図15】実施の形態3に係るハイブリッドリーダ100の要求信号の送信に係る動作を示すフローチャートである。
【図16】実施の形態3に係る要求信号の送信のタイミングを示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態1>
以下、本発明の一実施形態である読取装置及び読取装置が用いられる認証システムについて図面を用いて説明する。なお、以下、「読取装置」を、非接触ICカードとタグの両方を認証するものであるので、「ハイブリッドリーダ」と呼称する。
<構成>
図1は、認証システムのシステム構成を示すシステム図である。
【0024】
図1に示すように認証システムは、ハイブリッドリーダ100と、第1種の認証媒体であるアクティブタグ110と、第2種の認証媒体である非接触ICカード120と、上位装置130とを含んで構成される。
ここで、認証システムにおける各装置の通常の認証における動作について簡単に説明しておく。ハイブリッドリーダ100は、認証媒体(アクティブタグ110もしくは非接触ICカード120)に対して識別情報を要求する要求信号を送信している。認証媒体は、要求信号を受けると、自身で保持する識別情報を含む応答信号をハイブリッドリーダ100に送信する。するとハイブリッドリーダ100は、自装置で記憶している識別情報群の中に応答信号に含まれていた識別情報があった場合に扉140に設けられた電気錠150を解錠するとともに、認証を行ったことや解錠を行ったことを示す履歴情報を上位装置130に送信し、上位装置130は送信されてきた履歴情報を記録保存する。
【0025】
では、ここから図1に示す認証システムに係る各装置について詳細に説明していく。
<ハイブリッドリーダ100の構成>
まず、図2を用いてハイブリッドリーダ100を説明する。
図2は、ハイブリッドリーダ100の機能構成を示した機能ブロック図である。図2に示すようにハイブリッドリーダ100は、I/F(InterFace)部210と、操作部220と、通知部230と、LF(Low Frequency)帯送受信器240と、UHF(Ultra High Frequency)帯受信器250と、HF(High Frequency)帯送受信器260と記憶部270と、CPU(Central Processing Unit)280とを含んで構成される。
【0026】
I/F部210は、上位装置130及び電気錠150と予め定められた通信規格(例えばRS−485規格)に従って通信を実行する機能を有する。より具体的には、I/F部210は、上位装置130から送信されてくる信号をCPU280に伝達する機能と、CPU280から伝達されてきた履歴情報を上位装置130に送信したり、CPU280から伝達されてきた電気錠150に対する施解錠の指示信号を電気錠150に送信する機能を有する。
【0027】
操作部220は、ハイブリッドリーダ100の化粧パネルに設けられた操作ボタンを含み、当該操作ボタンに対するユーザからの入力に基づいて、LF帯送受信器240に対して、通信方式の切り替えを指示する機能を有する。
通知部230は、ハイブリッドリーダ100の化粧パネルに備えられたLEDあるいはLCD(Liquid Crystal Display)を用いてハイブリッドリーダ100におけるエラーの発生等の状態の通知や、認証に係る情報をユーザに通知する機能を有する。
【0028】
LF帯送受信器240は、アクティブタグ110と通信を実行するものであり、CPU280から伝達されたアクティブタグ110の識別情報を要求する要求信号を変調して、LF帯(135kHz帯)でLFアンテナ241を介して送信する機能と、LF帯で送信されてきた信号を受信してCPU280に伝達する機能とを有する。
UHF帯受信器250は、アクティブタグ110からの信号をUHF帯(400MHz帯)でUHFアンテナ251を介して受信し、受信した信号を復調してCPU280に伝達する機能を有する。
【0029】
HF帯送受信器260は、非接触ICカード120と通信を実行するものであり、CPU280から伝達された非接触ICカード120の識別情報を要求する要求信号を変調して、HF帯(13.56MHz帯)でHFアンテナ261を介して送信する機能と、HF帯で送信されてきた信号を受信してCPU280に伝達する機能とを有する。
記憶部270は、HDD(Hard Disc Drive)、メモリ等を含んで構成され、ハイブリッドリーダ100が動作上必要とする各種データ、プログラムを記憶する機能を有する。また、記憶部270は、認証の際に参照する認証情報271を記憶している。
【0030】
CPU280は、記憶部270に記憶されているプログラムを実行することによりハイブリッドリーダ100の各部を制御する機能を有する。CPU280は、HF帯送受信器260からHF帯送受信器260が読み取った非接触ICカードの識別情報を伝達されて認証情報271を用いて認証を行う機能を有する。
また、CPU280は以下の機能も有する。CPU280は、LF帯送受信器240にアクティブタグの識別情報を要求するための第1要求信号の送信の開始を指示する。当該指示後、所定時間t1が経過すると第1要求信号の送信の停止を指示するとともに、HF送受信器260に非接触ICカードの保持する識別情報を要求するための第2要求信号の送信の開始を指示する。そして、CPU280は、所定時間t2が経過するとHF帯送受信器260に第2要求信号の送信の停止を指示するとともに、LF帯送受信器240に第1要求信号の送信の開始を指示する。CPU280は、上述の要求信号の送信の切り替えの指示を繰り返す。なお、CPU280は、LF帯の要求信号とHF帯の要求信号との送信の切り替えの直前で応答信号を受信した場合には、そこから認証に係る処理のための時間を要し、ハイブリッドリーダ100は認証媒体(アクティブタグ110あるいは非接触ICカード120)との間で通信も行うため、認証処理を行ってから切り替えることとし、この場合、予め定められている時間制限(上述の時間t1及び時間t2)を越えてもよいものとする。
<アクティブタグ110の構成>
次に、アクティブタブ110について説明する。
【0031】
図3は、アクティブタグ110の機能構成を示した機能ブロック図である。図3に示すようにアクティブタグ110は、LF帯送受信器310と、UHF帯送信器320と、メモリ330と、ボタン340と、電池350と、CPU360とを含んで構成される。
LF帯送受信器310は、LFアンテナ311を介して、ハイブリッドリーダ100からの第1要求信号を受信して、受信した第1要求信号を復調してCPU360に伝達する機能と、CPU360から伝達されてきた応答信号を変調してLFアンテナ311を介して送信する機能とを有する。
【0032】
UHF帯送信器320は、CPU360から伝達されてきた第1応答信号を変調してUHFアンテナ321を介して送信する機能を有する。
メモリ330は、識別情報331を記憶する機能を有する。
ボタン340は、ユーザからの操作を受け付けるボタンであり、ユーザの押下を受け付けた場合に、その旨をCPU360に伝達する機能を有する。
【0033】
電池350は、UHF帯で第1応答信号を送信するための電力をUHF帯送信器320とCPU360に供給する機能を有する。
CPU360は、アクティブタグ110の各部を制御する機能を有する。CPU360は、LF帯送受信器310から伝達されてきた第1要求信号に応じて、メモリ330から識別情報331を読み出し、第1応答信号としてUHF帯送信器320に伝達する機能を有する。また、ハイブリッドリーダ100からの要求信号を受信した時のみボタン340の押下による応答信号をUHF帯送信器320に送信させる機能を有する。
<非接触ICカード120の構成>
次に、非接触ICカード120について説明する。
【0034】
図4に示すように、非接触ICカード120は、HF帯送受信器410と、メモリ420と、CPU430とを含んで構成される。
HF帯送受信器410は、HFアンテナ411を介してハイブリッドリーダ100からの第2要求信号を受信して、受信した信号を復調してCPU430に伝達する機能を有する。また、HF帯送受信器410は、CPU430から伝達されてきた第2応答信号を変調してHFアンテナ411を介してHF帯で送信する機能を有する。
【0035】
メモリ420は、識別情報421を記憶する機能を有する。
CPU430は、非接触ICカード120の各部を制御する機能を有する。CPU430は、HF帯送受信器410から伝達されてきた第2要求信号に応じて、メモリ420から識別情報421を読み出し、第2応答信号としてHF帯送信器410に伝達する機能を有する。
<上位装置130>
上位装置130について、簡単に説明しておくと、上位装置130は、ハイブリッドリーダ100で行われてた認証等に係る履歴を保持する装置であり、複数のハイブリッドリーダが接続されていた場合には、各ハイブリッドリーダにおける履歴を保持、管理するものである。上位装置130は、ハイブリッドリーダ100にハイブリッドリーダ100が保持する認証情報271に新たな識別情報の追加を指示したり、認証情報271に記録されている識別情報を削除したりする機能と、ハイブリッドリーダ100から送信される認証履歴情報を記録保持する機能を有する。
<データ>
ここから、認証情報271について説明する。
【0036】
認証情報271は、ハイブリッドリーダ100が認証を行うエリアについての誰の入退室を許可するのかの権限を示すものである。
図5は、認証情報271のデータ概念図である。
図5に示すように、認証情報271は、管理No.501に、識別情報502と、ユーザ名503とを対応付けた情報群である。
管理No.501は、ハイブリッドリーダ100が各認証情報を管理するために便宜上付した管理番号である。
識別情報502は、アクティブタグ、非接触ICカードに固有の識別情報である。当該識別情報の先頭2文字分(ここでは文字列形式で2文字分)のデータで、アクティブタグと非接触ICカードの分別がなされる。即ち、アクティブタグの場合には識別情報は、「ID」からはじまり、非接触ICカードの場合には識別情報は、「IC」からはじまる。
ユーザ名503は、アクティブタグ、非接触ICカードを保持するユーザの名前である。
例えば、管理No.「10687」に対応する非接触ICカードの識別情報は、「IC00006898」であり、その非接触ICカードを保持するユーザの名前は、「佐藤加奈」となっている。
認証情報271へのデータの追加や削除は、上位装置130から行われる。
図6は、ハイブリッドリーダ100及び上位装置130が保持する認証の履歴を示す認証履歴600のデータ概念図である。当該認証履歴600は、ハイブリッドリーダ100及び上位装置130に保持される。ハイブリッドリーダ100には所定数(例えば2万件)の、上位装置130には全ての認証や解錠等のイベントにかかる履歴が残される。
図6に示すように、認証履歴600は、管理No.601に識別情報602と、ユーザ名603と、場所604と、日時605と、イベント606とを対応付けた情報である。
管理No.601は、ハイブリッドリーダ100あるいは上位装置130が各認証情報を管理するために便宜上付した管理番号である。
識別情報602は、認証に使用されたアクティブタグもしくは非接触ICカードに固有の識別情報である。
ユーザ名603は、認証に使用されたアクティブタグもしくは非接触ICカードを保持するユーザの名前である。
場所604は、イベント、例えば認証の実行、鍵のこじ開けや電池電圧の低下など、が発生したエリアあるいは認証装置の情報である。
日時605は、イベントが発生した日時の情報である。
イベント606は、発生したイベントの内容を示す情報である。
例えば、管理No.「087882」に対応する識別情報は、「IC00006897」であり、そのヘッダ部分で認証媒体が非接触ICカードであり、当該非接触ICカードを保持するユーザの名前は、「青井紀子」であり、認証が行われた場所は、「エリアA」であり、認証を行った日時は、「2008年11月12日 12時13分」であり、イベント内容によれば、青井紀子は、エリアAから「退室」したこととなっている。なお、発生したイベントが認証に関わるものでない場合には、識別情報602やユーザ名603に該当するデータはないことになる。図6では、「−」と記載している。
<動作>
ここから、本実施の形態におけるハイブリッドリーダ100の動作を図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0037】
ハイブリッドリーダ100のCPU280は、LF帯送受信器240に、非接触ICカードに対して識別情報を要求する要求信号を送信させる(ステップS701)。
CPU280は、LF帯送受信器240に要求信号の送信を開始させてから、所定時間t1が経過したか否かを判断する(ステップS702)。所定時間が経過していなかった場合には(ステップS702のNO)、ステップS702に戻り、以降の処理を実行する。
【0038】
所定時間が経過していた場合には(ステップS702のYES)、CPU280は、LF帯送受信器240に要求信号の送信の停止を指示する(ステップS703)。
そして、その指示の後にCPU280は、HF帯送受信器260に、非接触ICカードの識別情報を要求する要求信号の送信の開始を指示する(ステップS704)。
HF帯送受信器260は、非接触ICカードが送信した要求信号に対する応答である応答信号を受信した場合に(ステップS705のYES)、当該応答信号を復調してCPU280に伝達する。あるいは、LF送受信器240又はUHF帯受信器250は、アクティブタグが送信した応答信号を受信した場合に(ステップS705のYES)、当該応答信号を復調してCPU280に伝達する。そして、CPU280は、伝達された応答信号に含まれる識別情報が、認証情報271に含まれているか否かを判定する認証処理を実行する(ステップS706)。なお、応答信号を受信していない場合には(ステップS705のNO)、ステップS707に移行する。
【0039】
CPU280は、HF帯送受信器260に、要求信号の送信を開始させてから所定時間t2が経過したか否かを判定する(ステップS707)。所定時間が経過していない場合には(ステップS707のNO)、ステップS705に戻り以降の処理を実行する。
所定時間が経過していた場合には(ステップS707のYES)、HF帯送受信器260に要求信号の送信の停止を指示し(ステップS708)、ステップS701の処理に戻る。
【0040】
以上の動作を行うことで、各周期においてハイブリッドリーダ100が送信している信号のタイミングを図8及び図9を用いて説明する。
まず、図8を用いて、アクティブタグあるいは非接触ICカードのいずれか一方しか認証システムにおいて使用されない場合についての信号の送信タイミングを説明する。
図8(a)は、アクティブタグのみを用いるシステムにおける要求信号の送信タイミングを示しており、図8(a)における時間T0が一周期である。図8(a)において、「LF」で示すブロックが要求信号を送信しているタイミングである。また、図8(a)において、点線で示すブロック「UHF1」から「UHF5」のブロックは、LF帯送受信器240が発信した要求信号に対するアクティブタグからの応答信号が送信されてくる可能性のあるスロットを示している。この周期T0が繰り返されることにより、読取装置におけるアクティブタグの認証が行われる。
【0041】
一方、図8(b)や、図8(c)は、従来において非接触ICカードのみを用いたシステムにおける非接触ICカードに対して送信する要求信号のタイミングを示す図である。ここで説明しておくと、非接触ICカードと読取装置とで通信する際の通信方式には複数あり、通常は、その複数の通信方式の中の一つの通信方式を用いる。
図8(b)は、一つの通信方式でしか非接触ICカードと通信しない場合を示しており、図8(b)においては、その通信方式の一つであるFeliCa(登録商標)を用いるシステムの場合を示している。本図に示すように、非接触ICカードに対する要求信号が定期的に送信される。
【0042】
また、図8(c)は、複数の通信方式の異なる非接触ICカードが使用されるシステムにおける要求信号の送信タイミングを示す図である。非接触ICカードで使用される通信方式には、上述のFeliCa(登録商標)の他にもISO14443typeA(以降typeAと記載する)やISO15693typeB(以降typeBと記載する)、ISO15693という通信方式を用いるものがある。そこで、それらの通信方式のいずれかの通信方式で通信する非接触ICカードが混在するシステムの場合には、図8(c)に示すように、FeliCa(登録商標)タイプの非接触ICカードに対する要求信号、typeAタイプの非接触ICカードに対する要求信号、typeBタイプの非接触ICカードに対する要求信号を、予め定められた順番に従って送信するという手法をとり、図8(c)の時間T1で示す周期を繰り返すことで、読取装置は、非接触ICカードとの通信を実行する。
【0043】
さて、本実施の形態においては、読取装置であるハイブリッドリーダ100は、アクティブタグ及び非接触ICカードの両方に対して要求信号を送信する必要があり、図7に示したフローチャートに従って動作した場合には、図9に示すように要求信号が送信される。
LF帯送受信器240がLF帯で要求信号を送信する場合には、図8(a)に示す場合と同様に要求信号を送信するが、非接触ICカードに対して要求信号を送信するHF帯送受信器260については、図8(b)に示すようなタイミングではなく、図9に示すように、LF帯送受信器240がLF帯で要求信号を送信していないタイミングにおいて、非接触ICカードに対する要求信号を送信する。
【0044】
このように構成することで、LF帯での要求信号と、HF帯での要求信号とが互いに対するノイズとなることがないので、アクティブタグあるいは非接触ICカードにおいて要求信号が正しく受信できないという事態を、LF帯の要求信号とHF帯の要求信号とを同時に送信する場合に比して、軽減できる。
なお、図9においては、HF帯送受信器が送信する要求信号をFeliCa(登録商標)タイプの非接触ICカードに対する要求信号を送信する事例として記載したが、これは、使用される非接触ICカードのタイプに応じて、例えば、図10に示すように、typeBの通信方式に従う非接触ICカードを運用するならば、typeBの通信方式で要求信号を送信してもよいし、通信方式の異なる非接触ICカードを同時に運用するならば、図11に示すように、通信方式の異なる要求信号を予め定められた順番に従ってLF帯の要求信号が送信されていないタイミングで送信することとしてもよい。
<実施の形態2>
上記実施の形態1における信号の送信タイミングについての別の手法を説明する。
【0045】
本実施の形態2は、複数の通信方式による要求信号を送信しなければならない場合の例であり、その場合における非接触ICカードに対する要求信号の送信の効率化を図るものである。
上述した複数の通信方式には、変調度が相異なるものが含まれ、通常ASK100%(TypeA)、ASK10%(FeliCa(登録商標)、TypeB)のいずれかの変調方式をとる。ASK100%の場合信号の振幅の0と1の差が大きいため、0、1の判断が容易であるため、ノイズに強い変調方式と言える。
【0046】
そこで、本実施の形態2におけるハイブリッドリーダ100は、ASK100%の変調方式を用いる通信方式、具体的にはtypeAの通信方式については、LF帯送受信器240がLF帯で要求信号を送信しているタイミングで、HF帯送受信器260がtypeAの通信方式で要求信号を送信し、それ以外の通信方式に従う非接触ICカードに対する要求信号については、上記実施の形態に示したように、LF帯送受信器240が要求信号を送信していないタイミングで要求信号を送信する。
【0047】
では、この場合の構成や動作について、上記実施の形態1と異なる部分について説明する。
<構成>
CPU280は、実施の形態1とは異なり、非接触ICカードに対する要求信号のうち、ASK100%の通信方式であるtypeAの通信方式については、LF帯送受信器240に対する要求信号の送信タイミングと同じタイミングでHF帯送受信器260に対して要求信号の送信と停止を指示し、その他のtypeBやFeliCa(登録商標)などのASK100%ではない通信方式については、実施の形態1と同様に、LF帯で要求信号を送信していないタイミングで、HF帯送受信器260に送信の指示をする。
<動作>
実施の形態2の場合のハイブリッドリーダ100の動作を説明する。
【0048】
ハイブリッドリーダ100のCPU280は、LF帯送受信器240に対して要求信号の逐次送信の開始を指示するとともに、HF帯送受信器260に対してASK100%の通信方式(ここではtypeA)での要求信号の逐次送信を指示する(ステップS1201)。
HF帯送受信器260は非接触ICカードからの応答信号を受信した場合に(ステップS1202のYES)、受信した応答信号を復調して、CPU280に伝達する。CPU280は、伝達された応答信号に含まれる識別情報が、保持していた認証情報271に含まれているか否かの認証処理を実行する(ステップS1203)。なお、送信した要求信号に対する応答信号を受信していない場合には(ステップS1202のNO)、ステップS1204に移行する。
【0049】
CPU280は、LF帯送受信器240に要求信号の送信を開始させてから、所定時間t1が経過したか否かを判断する(ステップS1204)。所定時間が経過していなかった場合には(ステップS1204のNO)、ステップS1202の処理に戻る。
所定時間が経過していた場合には(ステップS1204のYES)、CPU280は、LF帯送受信器240及びHF帯送受信器260に要求信号の送信の停止を指示する(ステップS1205)。
【0050】
そして、その指示の後にCPU280は、HF帯送受信器260に、非接触ICカード120のtypeA以外の通信方式(ここではFeliCa(登録商標)とtypeB)で識別情報を要求する要求信号の送信の開始を指示する(ステップS1206)。
HF帯送受信器260は、送信した要求信号に対する応答である応答信号を受信した場合に(ステップS1207のYES)、当該応答信号を復調してCPU280に伝達する。あるいは、LF送受信器240又はUHF帯受信器250が、アクティブタグが送信した応答信号を受信した場合に(ステップS1207のYES)、当該応答信号を復調してCPU280に伝達する。そして、CPU280は、伝達された応答信号に含まれる識別情報が、認証情報271に含まれているか否かを判定する認証処理を実行する(ステップS1208)。なお、応答信号を受信していない場合には(ステップS1207のNO)、ステップS1209に移行する。
【0051】
CPU280は、HF帯送受信器260に、要求信号の送信を開始させてから所定時間t2が経過したか否かを判定する(ステップS1209)。所定時間が経過していない場合には(ステップS1209のNO)、ステップS1207の処理に戻る。
所定時間が経過していた場合には(ステップS1209のYES)、HF帯送受信器260に要求信号の送信の停止を指示し(ステップS1210)、ステップS1201の処理に戻る。
【0052】
このように、ハイブリッドリーダ100が動作した場合の各信号の送信タイミングを図13を用いて説明する。
LF帯送受信器240がLF帯で要求信号を送信する間は、HF送受信器260はtypeAの通信方式で要求信号を送信している。
そして、LF帯送受信器240が要求信号を送信していない間は、FeliCa(登録商標)とtypeBとの通信方式で交互に要求信号を送信する。
【0053】
実施の形態2におけるハイブリッドリーダ100は、周期T0に示すように要求信号の送信を繰り返すことで、ノイズに弱いFeliCa(登録商標)とtypeBの通信方式については、LF帯で要求信号を送信していないタイミングで送信することで、非接触ICカードにおいて要求信号がLF帯の信号による影響を受けずに受信される。また、ノイズに強いtypeAの通信方式による要求信号をLF帯での要求信号が送信されているタイミングで送信することで、図11の場合に比して、時間に関する通信帯域をより有効に活用することができる。
<実施の形態3>
上記実施の形態2においては、ハイブリッドリーダ100がアクティブタグに送信するHF帯の信号と、通信方式の種別の異なる非接触ICカードに対して送信するLF帯の信号との間の干渉に着目し、通信方式の種別の異なる非接触ICカードに対してそれぞれの信号を送信するタイミングを決定することとした。
【0054】
本実施の形態3においては、更に、非接触ICカードが送信する信号の干渉も考慮して、非接触ICカードへの要求信号の送信タイミングを決定する。
上記実施の形態2においては、ハイブリッドリーダ100は、LF帯の要求信号の送信タイミングにおいて、typeAの非接触ICカードに対しても要求信号を送信することとした。これは、ノイズに強いASK100%で変調するtypeAの通信方式では、非接触ICカードが要求信号を正しく受信できるためであるが、本発明に係る認証システムにおいては、非接触ICカードが要求信号を受信できることよりも重要になってくるのは、ハイブリッドリーダ100が非接触ICカードが送信する応答信号を正しく受信できることであるといえる。これは、ハイブリッドリーダ100がノイズによって誤った識別子を読み取ることになった場合に、本来扉の電気錠を解錠できる識別子を保持する非接触ICカードで認証を行なったのに解錠がされない可能性があるからである。
【0055】
本実施の形態3におけるハイブリッドリーダ100の要求信号の送信タイミングを説明するに当たり、まず、typeA、typeB、Felica(登録商標)の各非接触ICカードの信号の送信方式について説明する。
図14は、各種の非接触ICカードとハイブリッドリーダ間の信号の送信方法を示した表であり、通信速度、符号化方式、変調方式を示している。
【0056】
図14に示すように、ハイブリッドリーダ100は、typeAの非接触ICカードに対しては、変形ミラー符号を用いて、ASK100%で変調した信号を送信している。また、ハイブリッドリーダ100は、typeBの非接触ICカードに対しては、NRZ符号を用いて、ASK10%で変調した信号を送信している。そして、Felica(登録商標)の非接触ICカードに対しては、万チェス他符号を用いて、ASK10%で変調した信号を送信している。
【0057】
一方、非接触ICカードはというと、typeAの非接触ICカードは、マンチチェスタ符号を用いてサブキャリア負荷変調で変調した信号を送信している。typeBの非接触ICカードは、BPSK(Binary Phase Shift Keying)を用いて、サブキャリア負荷変調で変調した信号を、Felica(登録商標)の非接触ICカードは、マンチェスタ符号を用いてASK10%で変調した信号を送信している。
【0058】
なお、typeAの非接触ICカード−ハイブリッドリーダ100間の通信は106kbpsという通信速度で、typeBの非接触ICカード−ハイブリッドリーダ100間の通信は106kbpsという通信速度で、Felica(登録商標)の非接触ICカード−ハイブリッドリーダ100間の通信は212kbpsという通信速度で行なわれる。
サブキャリア負荷変調とは、搬送波を副搬送波で変調する変調方式のことである。即ち、非接触ICカードが送信する信号のうち、typeAの場合は、「0」を意味する成分については、1ビット分に相当するビット期間において後半部分にサブキャリアを発生させ、「1」を意味する成分については、1ビット分に相当するビット期間において前半部分にサブキャリアを発生させる。また、typeBの場合には、全ての期間においてサブキャリアを発生させるが、信号の開始を示すためのガード時間における信号の位相を「1」、スタートビットを「0」として、信号の内容が変化するごとにサブキャリアの位相を180度変化させる(BPSKさせる)ことで、「0」「1」の成分を表現する。サブキャリアの周波数は、847.5kHz帯である。
【0059】
サブキャリア負荷変調を用いることによって、「0」と「1」との差異がより明確になるので、ハイブリッドリーダ100は、信号の内容の区別がより容易にできるようになる。
逆に言えば、ハイブリッドリーダ100が発信するLF帯の要求信号は、非接触ICカードからの応答信号に対するノイズとなって、応答信号を正しく受信できない可能性があるものの、サブキャリア負荷変調で変調された信号はそのようなノイズに対する耐性が高いので、LF帯の要求信号を送信しているタイミングにおいて、サブキャリア負荷変調で変調された応答信号を送信する非接触ICカードに対しても要求信号を送信したとしてもハイブリッドリーダ100は、ノイズの影響を受けることなく正しく応答信号を受信できる。
【0060】
そこで、本実施の形態3に係るハイブリッドリーダ100は以下の構成をとる。なお、以下においては、上記実施の形態2と異なる構成について説明し、上記実施の形態2と共通する動作については割愛する。
<構成>
CPU280は、実施の形態2とは異なり、非接触ICカードに対する要求信号のうち、typeBの通信方式で通信を実行する非接触ICカードについても、LF帯の要求信号を送信しているタイミングで要求信号を送信させる。
【0061】
即ち、CPU280は、LF帯送受信器240に対する要求信号の送信タイミングと同じタイミングでHF帯送受信器260に対して、typeAとtypeBの通信方式で通信を実行する非接触ICカードに対して交互に要求信号を送信させ、LF帯送受信器240に要求信号を送信させていないタイミングでは、HF帯送受信器260に対して、Felica(登録商標)とtypeBの通信方式で通信を実行する非接触ICカードに対して交互に要求信号を送信させる。
【0062】
typeBの非接触ICカードに対してt2期間においても要求信号を送信するのは、上記実施の形態2において説明したように、t1期間においては、非接触ICカードがtypeBの要求信号を正しく受信できない可能性があるためである。
<動作>
図15は、実施の形態3に係るハイブリッドリーダ100の要求信号の送信に係る動作を示すフローチャートである。本実施の形態3に係るハイブリッドリーダ100の動作で実施の形態2に係る動作と異なるのは、図15におけるステップS1501とステップS1506における動作である。よってここでは、ステップS1501とステップS1506について詳細に説明することとし、それ以外の動作については、実施の形態2に準ずるものとしてここでは、説明を割愛する。
【0063】
ステップS1501において、ハイブリッドリーダ100のCPU280は、LF帯送受信器240に対して、要求信号の逐次送信の開始を指示するとともに、HF帯送受信器260に対してサブキャリア負荷変調で変調された信号を送信する非接触ICカードに対する要求信号(ここではtypeA及びtypeB)の逐次送信を指示する(ステップS1501)。
【0064】
当該指示を受け付けて、LF帯送受信器240は、アクティブタグに対する要求信号を逐次送信し、HF帯送受信器260は、typeAの非接触ICカードに対する要求信号と、typeBの非接触ICカードに対する要求信号とを交互に送信する。
一方、t1期間が経過する(ステップS1204のYES)と、ハイブリッドリーダ100のCPU280は、LF帯送受信器240に対して、要求信号の逐次送信の停止を指示する(ステップS1205)。
【0065】
そして、CPU280は、HF帯送受信器260に対してサブキャリア負荷変調で変調された信号を送信する非接触ICカードに対する要求信号のうち、ASK100%で変調された要求信号(typeB)と、サブキャリア負荷変調で変調されていない信号を送信する非接触ICカードに対する要求信号(Felica(登録商標))との逐次送信を指示する(ステップS1506)。
【0066】
当該指示を受けて、HF帯送受信器260は、typeBの非接触ICカードに対する要求信号と、Felica(登録商標)の非接触ICカードに対する要求信号とを交互に送信する。
このようにして、動作した場合にハイブリッドリーダ100が送信する各要求信号の信号タイミングを模式的に示したのが図16である。
図16を見れば分かるように、実施の形態2とは異なり、t1期間においてもtypeBの非接触ICカードに対する要求信号が発せられている。
【0067】
こうすることで、typeBの非接触ICカードに対する要求信号をt1期間においても発信することにより、typeBの非接触ICカードの識別子の読取効率を上げることができる。
<補足>
上記実施の形態において、本発明の実施の手法について説明してきたが、本発明の実施形態がこれに限られないことは勿論である。以下、上記実施形態以外に本発明として含まれる各種の変形例について説明する。
(1)上記実施の形態2においては、ASK100%の場合とASK10%の場合とを例に説明したが、LF帯の要求信号の送信時にHF帯の要求信号を送信する場合のHF帯の通信方式の選定は、ノイズに対する耐性の高い、低いで分けられてよく、例えば、予め定められた変調度の閾値によって分けてもよい。また、上記実施の形態においては、ASKの場合を示したが、これはPSK(Phase Shift Keying)の場合であっても変調度の違いにより分けることが可能である。
(2)上記実施の形態においては、アクティブタグと非接触ICカードの区別を識別情報の先頭2文字の「IC」と「ID」で区別することとしたが、これはアクティブタグがアクティブタグであることを示す情報を識別情報とは別途に保持する、あるいは、非接触ICカードが非接触ICカードであることを示す情報を識別情報とは別途に保持しており、当該情報を応答信号に含むことでハイブリッドリーダ100のCPU280が認証対象となる認証媒体がアクティブタグであるのか非接触ICカードであるかを認識することとしてもよい。
【0068】
あるいは、CPU280は、LF帯送受信器240、HF帯送受信器260、UHF帯受信器250のいずれから応答信号を伝達されたかで、アクティブタグであるか非接触ICカードであるかを認識することとしてもよい。
(3)上記実施の形態においては、ハイブリッドリーダ100−アクティブタグ110間の通信は、ハイブリッドリーダ100からLF帯で要求信号を受けて、アクティブタグ110が応答信号を返すことで通信を行うこととしたが、アクティブタグ110は、自機内蔵の電池350の電力を用いてUHF帯で応答信号を送信する仕様になっていることから、電池350の電力が切れてUHF帯で送信することができないという事態が発生することがある。
【0069】
そこで、ハイブリッドリーダ100−アクティブタグ110間では、上述した通信方式のほかにもハイブリッドリーダ100からアクティブタグ110に対して電力を供給しつつ認証を行うLF帯を用いて近接通信を実行する通信方式で通信することができる。この場合、アクティブタグ110は、LF帯で応答信号を送信する。即ちハイブリッドリーダ100−非接触ICカード120間でHF帯を用いて行われているハイブリッドリーダ100から電力を供給しながら行う通信をLF帯で実行する。
【0070】
このような場合に対応して、ハイブリッドリーダ100には、通信方式を切り替えるスイッチを設けられており、ユーザが当該ボタンを押下している間は、ハイブリッドリーダ100はアクティブタグ110に対して電力を供給しながら認証を行う通信方式に切り替える。
このときも、実施の形態1に示すように、LF帯でアクティブタグに対する要求信号を送信するタイミングでは、HF帯での非接触ICカードに対する要求信号の送信は行わず、LF帯でアクティブタグに対する要求信号を送信しないタイミングでは、HF帯での非接触ICカードに対する要求信号の送信を行う。
(4)上記実施の形態において示したLF帯送受信器240が要求信号を送信する周期(t1中t2)について具体的な時間は示さなかったが、これは、認証システムの運用上実用に耐える時間であればよく、例えばt1を100msec、t2を300msecなどに設定したり、あるいはt1を200msec、t2を500msecなどに設定したりしてもよい。
【0071】
なお、この時間は、ハイブリッドリーダ100において、システム管理者が適宜自由に設定できるように構成してもよい。
(5)上記実施の形態において説明した非接触ICカードの通信方式については、上記実施の形態で示した通信方式に限定されず、認証システムにおいて使用する通信方式に対応してよい。また、複数種類の通信方式を使用する場合でもその組み合わせも上記実施の形態に限定されず、例えば、FeliCa(登録商標)とISO15693の組み合わせであってもよい。
【0072】
また、ハイブリッドリーダ100は、複数の通信方式の中からどの通信方式を使用するかを設定できるように構成されていてもよく、上位装置130から設定できてもよい。
(6)上記実施の形態においては、ハイブリッドリーダ100が認証を行う形態を示した。しかし、認証システムにおいてはハイブリッドリーダ100が認証を行わない形態をとることもある。
【0073】
ここでは、ハイブリッドリーダ100が認証を行わない場合の認証に係る変形例を示す。この変形例の場合、ハイブリッドリーダ100は電気錠150とは接続されず、上位装置130が電気錠に接続される。そして、上記実施の形態ではハイブリッドリーダ100が行っていた電気錠150の施解錠を上位装置130が実行することになる。
まず、ハイブリッドリーダ100は、認証情報271を保持せず、アクティブタグ110あるいは非接触ICカード120から識別情報を取得した場合に、上位装置130に伝達する。
【0074】
上位装置130は、ハイブリッドリーダ100から伝達されてきた識別情報が認証情報の中に登録されている識別情報に一致するかを判定し、肯定的な判定をした場合に電気錠150に対して解錠を指示する。否定的な判定をした場合にハイブリッドリーダ100に対して、認証不可を示す信号を送信し、ハイブリッドリーダ100は、LEDを赤色に点灯させるなどして、認証に失敗したことをユーザに通知する。
(7)上記実施の形態3において、typeAの非接触ICカードに対する要求信号はt1の期間のみ発信することとしたが、これは、t2の期間においても発信することとしてもよい。
(8)上記実施の形態で示した要求信号の送信に係る動作(図7参照)を読取装置のプロセッサ、及びそのプロセッサに接続された各種回路に実行させるためのプログラムコードからなる制御プログラムを、記録媒体に記録すること、又は各種通信路等を介して流通させ頒布させることもできる。このような記録媒体には、ICカード、ハードディスク、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM等がある。流通、頒布された制御プログラムはプロセッサに読み出され得るメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがその制御プログラムを実行することにより、実施の形態で示したような各種機能が実現されるようになる。
【符号の説明】
【0075】
100 ハイブリッドリーダ(読取装置)
110 アクティブタグ
120 非接触ICカード
130 上位装置
140 扉
150 電気錠
210 I/F部
220 操作部
230 通知部
240 LF帯送受信器
241 LFアンテナ
250 UHF受信器
251 UHFアンテナ
260 HF帯送受信器
261 HFアンテナ
270 記憶部
271 認証情報
280 CPU
310 LF帯送受信器
311 LFアンテナ
320 UHF送信器
321 UHFアンテナ
330 メモリ
331 識別情報
340 ボタン
350 電池
360 CPU
410 HF送受信器
411 HFアンテナ
420 メモリ
421 識別情報
430 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の情報を保持し当該第1の情報をUHF帯にて送信するアクティブタグ及び第2の情報を保持し当該第2の情報をHF帯にて送信する非接触ICカードから、それぞれが保持する情報を読み取る読取装置であって、
前記第1の情報を要求する第1要求信号をLF帯で送信する第1送信手段と、
前記第2の情報を要求する第2要求信号をHF帯で送信する第2送信手段と、
前記第1送信手段に前記第1要求信号を所定の第1期間においてのみ送信させ、前記所定の第1期間を除く第2期間においてのみ、前記第2送信手段に前記第2要求信号を送信させる制御手段とを備える
ことを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、
前記読取装置は、前記通信方式のいずれかを選択する選択手段を備え、
前記第2送信手段は、前記選択手段により選択された通信方式に基づいて、前記第2要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項3】
前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、
前記複数の通信方式には、ASK(Amplitude Shift Keying)100%で変調される通信方式と、それ以外の通信方式が含まれ、
前記制御手段は、前記第2送信手段が前記ASK100%で変調される通信方式で非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合には、それ以外の通信方式と異なり例外的に前記所定の第1期間においてのみ前記第2要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項4】
前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、
前記複数の通信方式には、ASK(Amplitude Shift Keying)10%で変調される通信方式と、それ以外の通信方式が含まれ、
前記制御手段は、前記第2送信手段が前記ASK10%で変調される通信方式以外の通信方式で非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合には、前記ASK10%の通信方式と異なり例外的に前記所定の第1期間においてのみ前記第2要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項5】
前記非接触ICカードには、第1通信方式で通信を実行するものと、前記第1通信方式とは変調方式が異なる第2通信方式で通信を実行するものとが含まれ、
前記第2送信手段は、予め定められた順序に従い前記第1通信方式と前記第2通信方式とを切り替えて、前記第2要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項6】
前記アクティブタグは、前記読取装置から非接触で電力を供給されて前記第1の情報を送信する第1通信方式と自機に搭載されている電池から電力を供給されてUHF帯で前記第1の情報を送信する第2通信方式のいずれかを選択して通信を実行するものであり、
前記読取装置は、前記第1通信方式と前記第2通信方式のいずれかの通信方式を選択する選択手段を備え、
前記第1送信手段は、前記選択手段により選択された通信方式で前記第1要求信号を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項7】
前記所定の送信期間は、複数の単位期間からなり、前記停止期間は、当該単位期間の合間に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項8】
前記非接触ICカードは、変調方式が異なる複数の通信方式のうちのいずれかの通信方式で通信を実行するものであって、前記複数の通信方式は、非接触ICカードが前記要求信号に対する応答信号をサブキャリア負荷変調して送信するものと、非接触ICカードがそれ以外の変調方式で応答信号を送信するものとを含み、
前記制御手段は、前記第2送信手段に、前記サブキャリア方式で信号を送信する非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合には、前記それ以外の変調方式で信号を送信する非接触ICカードに対する第2要求信号を送信する場合と異なり、例外的に前記第1期間においても、前記第2要求信号を送信させる
ことを特徴とする請求項1記載の読取装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記サブキャリア負荷変調で信号を送信する非接触ICカードのうち、前記第2送信手段がASK100%で変調した要求信号を受信する非接触カードに対する要求信号については、例外的に前記第1期間においてのみ前記第2送信手段に前記第2要求信号を送信させる
ことを特徴とする請求項8記載の読取装置。
【請求項10】
アクティブタグと、非接触ICカードと、読取装置を含んで構成される認証システムであって、
前記アクティブタグは、
第1の情報を保持するメモリと、
前記読取装置から前記第1の情報を要求する第1要求信号を受信した場合にUHF帯で前記第1の情報を含む応答信号を送信する送信手段とを備え、
前記非接触ICカードは、
第2の情報を保持するメモリと、
前記読取装置から前記第2の情報を要求する第2要求信号を受信した場合にHF帯で前記第2の情報を含む応答信号を送信する送信手段とを備え、
前記読取装置は、
前記第1の情報を要求する第1要求信号をLF帯で送信する第1送信手段と、
前記第2の情報を要求する第2要求信号をHF帯で送信する第2送信手段と、
前記第1送信手段に前記第1要求信号を所定の第1期間においてのみ送信させ、前記所定の第1期間を除く第2期間においてのみ、前記第2送信手段に前記第2要求信号を送信させる制御手段とを備える
ことを特徴とする認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−218532(P2010−218532A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220897(P2009−220897)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】