説明

調整可能なテンショナ

調整可能なテンショナは、ベースと、ベースに対して固定されたピボット周りに振動するピボットアームと、ピボットアームに取り付けられたプーリーと、ピボットアームに作用的に取り付けられた第1の端部と、シューに作用的に接続された第2の端部とを有する圧縮パネとを備え、シューは、シューの凸面をピボットアームの凹面に向けて押し、また、力の釣り合いにより、ベースに固定された突起部に接して所定の場所に保持される。調整機構は、あらかじめ定められたベルトのバネ力に関してベースの位置を設定することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンショナに関し、特に、調整可能なベースを備えたテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
同期駆動用に設計されたベルトテンショナでは、長さのあるベルトを備えたベルト駆動システムからベルトのゆるみを適切に取り除くため必要な動きに適応することができない。
【0003】
代表的な従来技術として、サーク(Serkh)の米国特許第5,938,552号(1999年)にテンショナが開示されており、テンショナは、ベースと、ベースに対して固定されたピボット周りに振動するピボットアームと、ピボットアームに取り付けられたプーリーと、ピボットアームに作用的に取り付けられた第1の端部とシューに作用的に接続された第2の端部とを有する圧縮バネとを備え、シューは、シューの凸面をピボットアームの凹面に向けて押し、また、力の釣り合いにより、ベースに固定された突起部に接して所定の場所に保持される。
【0004】
さらに代表的な従来技術として、サクビック(Sajczvk)の米国特許第5,098,347号(1992年)にテンショナが開示されており、テンショナは、バネによって偏倚されたピボットアームに対して回転可能に装着されたプーリーを備える。そして、支持構造物にトルクを与えるためのねじ回し手段が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
あらかじめ定められたベルトのバネ力に関してベースの位置を設定するための調整機構を備えたテンショナが要求される。本発明はこの要求を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴は、あらかじめ定められたベルトのバネ力に関してベースの位置を設定するための調整機構を備えたテンショナを提供することにある。
【0007】
本発明の他の特徴は、以下に示す本発明の記載および添付図面によって指摘され、明らかにされる。
【0008】
調整可能なテンショナは、ベースと、ベースに対して固定されたピボット周りに振動するピボットアームと、ピボットアームに取り付けられたプーリーと、ピボットアームに作用的に取り付けられた第1の端部とシューに作用的に接続された第2の端部とを有する圧縮バネとを備え、シューは、シューの凸面をピボットアームの凹面に向けて押し、また、力の釣り合いにより、ベースに固定された突起部に接して所定の場所に保持される。調整機構は、あらかじめ定められたベルトのバネ力に関してベースの位置を設定することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照するとともに、特定のベルト駆動システムに限定することなく例示すると、同期ベルト、すなわちタイミングベルト駆動システム10は、歯付きベルト12を備え、歯付きベルト12は、クランクプーリー14、アイドラープーリー16、ウォーターポンププーリー18、カムシャフトプーリー20、21、そしてテンショナ24のテンショナプーリー22の周りに掛け回され、張られている。
【0010】
テンショナプーリー22は、ベルト12と係合し、隣接するベルトスパン26、28のベルト張力という形でベルトの負荷を受ける。ベルトスパンによるベルト張力は、いわゆる“ハブ荷重”といわれるベルト力成分BFを生じさせる。ベルト力成分BFは、ベルトスパン26、28によって形成される角度の二等分線に沿って生じる。
【0011】
図2〜図4をさらに参照すると、テンショナは、ベース30と、ピボット34周りに振動するピボットアーム32を備える。ピボット34は、テンショナをエンジン(図示せず)に固定するため使用される留め具であればよい。プーリー22は、ピボットアームに軸受けされ、ベルト12に係合し、ベルト力BFを受ける。圧縮スプリング36は、第1の端部38を備え、第1の端部38は、ピボットに関して作用径42の場所でボス40などによってピボットアーム32と作用的に接続されている。減衰機構43もまた、テンショナに備えられている。ブッシュ44、44’は、従来知られている形式で、ピボット軸とピボットアームとの間に取り付けられている。プーリーも、従来知られている形式でボールベアリング45によりピボットアームに取り付けられている。ベース30はさらに、図5、6に示す工具受け部92を備える。
【0012】
ピボットアーム32は、弧状凹面47として形成された部分、すなわち延長部46を備え、弧状凹面47は、ピボットアームとともに動き、ピボット34から径48の距離だけ離れている。弧状凹面47は、概してピボット34および圧縮スプリング36の第2の端部50に対向するように適応されている。
【0013】
実質的および随意選択的にピボット軸に同軸である弧状凹面47は、より大きな減衰のため、作用径42以上の長さを有する径48を有する。すなわち、径48が大きいほど、減衰力として減衰トルクがより大きくなる。
【0014】
減衰機構43は、弧状摩擦凸面54を有する移動可能なシュー52を備え、弧状凸面54は、ピボットアーム延長部46の弧状凹面47に対して摺動自在に係合する。シューは、円弧状凹面47に係合し、シューに取り付けられるとともにシューによって支持される摩擦材料からなるパッドを備えた2つのパーツから成るように構成してもよい。シュー52は、傾斜面56と、ボス58のようなバネ受け部を有する。バネ受け部は、圧縮バネの第2端部50に対し、対向するとともに接する。傾斜面62は、ベースに固定された、すなわちベースの一部である突起部60と係合する。突起部60は、シューの傾斜面56と係合する摺動自在な傾斜面62を有する。突起部の傾斜面は、バネの長手方向軸64に対して相違角Rの方向に沿って配置される。
【0015】
ピボットアームとシュートの間で偏倚される圧縮バネ36は、減衰させるため、シューの凸面54をピボットアームの凹面47に向けて押す。減衰係数は、バネ36のバネ定数と相関関係にあり、バネ定数が大きいほど減衰係数も大きくなる。
【0016】
図4をさらに参照すると、弧状凹面が時計回りの方向Aと反時計周りの方向Bとの間で振動するとき、シューが傾斜面62へ押された状態で維持されるように、シュー52にかかる力が釣り合っている。また、傾斜面は、ボス58によってベースに対し実質的に固定された位置でバネの第2端部を保持するように作用する。
【0017】
圧縮バネは、シューに対してバネ力SFを与え、これによりシューは、弧状凸面54を弧状凹面47に向かって押すとともに、シューの傾斜面56を突起部60の傾斜面62に向かって押し込む。弧状凹面47は、シューに対して反作用力CFを与え、傾斜面62はシューに対して半作用力RFを与える。これら力の合力は、突起部60によって、ベースに固定された、すなわちベースとして形成された傾斜面62に接した状態でシューを位置決めするように作用する。
【0018】
使用に際し、テンショナ24は自動車エンジンの装着位置付近に配置される。ピボットボルト34や他のピンあるいはボルト66などの留め具により、テンショナ24はエンジン(図示せず)上の固定位置に固定される。そして歯付ベルト12は、クランクプーリー14、アイドラープーリー16、ウォータポンププーリー18、そしてカムプーリー20、21の周りに掛け回される。レンチ面68は、簡易なベルト装備として、ベルトから離れた位置でレンチを使ってテンショナを(ここでは反時計周りの方向Bに)回転させる手段として設けられる。ベルトが適正な位置にあると、ピボットアームは(時計回りの方向Aに)回転させられ、そこでは、図1に示すように、プーリーがベルト係合位置でベルトを押す。プーリーがベルトに対して押しながら係合する位置に定められるため、歯付ベルト12が張られる。そして、ピボット34周りに動く第2のピボットアームとして構成されたともいえるベース30が、留め具34、66によりエンジンに対して固定された位置に保持される。図5、6は、バネ力を調整するための調整機構を示す。
【0019】
圧縮バネが、ピボットアームを時計周りの方向Aへ回転させるようにピボットアームを作用径42の所で押すことにより、プーリーがベルトの係合面へ押される。また、圧縮バネは、互いに係合する傾斜面56、62によりベース30に対して所定の位置で保持される可動シュー52を押す。バネは、シューの弧状凸面54をピボットアームの弧状凹面47へ向けて押す。弧状凹面47は、ピボットアーム32の角運動に反応して、A−Bの間を振り子のように振動する。シューは、ピボットアームの弧状凹面47とシューの弧状凸面54との間で摺動する摩擦面によってピボットアームの角運動を減衰させるように作用する。係合する傾斜面56、62からの力、係合する弧状面からの力、そしてバネからの力の釣り合いは、バネの第2の端部50をベース30に対して実質的に固定した位置で維持させるように作用し、その結果、バネは、ピボットアームを偏倚させてプーリーをベルトに向けて押すように作用できる。
【0020】
エンジンが作動してベルトスパン26、28の張力がすぐに増加すると、ベルトは増加する力BFでプーリーを押し、力BFはピボットアームを反時計周りの方向Bに回転させ、圧縮バネ36を押すように作用してバネ力SFを増加させる。バネ力の増加は、シューに対する増加した力で減衰シューを押すように作用し、これによって、ピボットアームを反時計周りの方向へ移動するのを抑える凸面および凹面47、54間のすべりの摩擦が増加する。ベルトスパンの張力が減少してベルト力BFが減少すると、ベルトの張力を維持するように、プーリーは圧縮バネ36によりベルトスパンに対してすばやく押される。
【0021】
図5は、調整機構を示したテンショナの平面図である。図5、6に示す調整機構によって、テンショナがあらかじめ定められたバネ力SFで装着される。
【0022】
全図を参照すると、工具受け部92は、ピボット34に関してベース30から径方向に延びている。工具受け部は、例えば3/8あるいは1/2ラチェットなど従来知られている工具Tを受けるための穴93を有する。工具受け部92は、容易に使用できるように、工具受け部92に関して減衰機構43を超えて延びている。
【0023】
ベース30は、インジケータ部91を含む。ピボットアーム32は、バネ加重の相対的状態を示すため、インジケータ部91と協同するように配置された指示部90を有する。図5は、スプリング36(ここでは図示せず)が十分に延びた位置、すなわち非圧縮状態の位置にあるテンショナを示す。図5からわかるように、インジケータ部91と指示部91は、装着前の配置において直線状に並んでいない。
【0024】
図6は、調整機構を示したテンショナの平面図である。装着のため、テンショナ24は自動車エンジンに対する装着位置付近に置かれ、ピボットボルト34や他のピン、ボルトなどの留め具によって、テンショナがエンジン(図示せず)の固定位置に取り付け、配置される。歯付ベルト12は、図1に示すように、クランクプーリー14、アイドラープーリー16、ウォーターポンププーリー18、そしてカムプーリー20、21の周りに掛けられる。ピボット34およびボルト66は、装着面に緩く係合していて、十分なトルクは与えられていない。
【0025】
工具(T)は、工具受け部92に挿入される。上述したベルトの適正位置では、ベース30とピボットアームは、プーリーがベルトを図1に示すベルト係合位置でベルトを押すまで、時計周りの方向Aに回転させられる。スロット96は、ピボットアーム32がボルト66周りに往復するのを可能にさせる。そしてベース30は、インジケータ部91が切片90に並ぶまで、工具(T)を使ってさらに回転させられる。スロット95は、ベース30がピボット34周りに回転することを可能にさせる。ピボットアームに対してベース30がピボット34周りに回転することによって、バネ36が圧縮される。インジケータ部90と指示部91が並ぶことは、適切なバネ力SFになっていてベルトの張りが達成されたことを示す。バネ加重、すなわちバネ力SFは、バネ36のバネ定数、そしてインジケータ部90と指標部91とを並べさせるのに必要なバネ圧縮量とに相関関係がある。バネ36のバネ定数は、所望する動作条件に適応するように必要に応じて選択される。ピボット34とボルト66は、トルクが与えられる。ピボットアーム32は、動作中ピボット34周りに軸回転する。ピボット34と連結したボルト66は、装着面に対して動かないようにベース30を取り付ける。工具(T)はその後取り外される。
【0026】
前述した記述は、単に例示の目的でなされたものであり、添付されたクレームによって決定される発明の権利範囲を限定する意図はない。さらに、発明の一実施形態がここには記載されているが、ここに記載した本発明の精神及び範囲から離れることなく、構成および関連するパーツにおいて他のバリエーションが作り出されることは、当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態であるテンショナを備えた自動車用同期(タイミング)ベルト駆動システムの概略的正面図である。
【図2】図3のライン2−2に沿った断面図であって、本実施形態の拡大したテンショナを示した図である。
【図3】図2のライン3−3に沿った断面図である。
【図4】本実施形態の特色である相互関係を示した図である。
【図5】調整機構を示したテンショナの平面図である。
【図6】調整機構を示すテンショナの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに固定されたピボット周りに振動するピボットアームと、
前記ピボットアームに取り付けられ、ベルトと係合するプーリーと、
前記ピボットに対して作用径の場所で前記ピボットアームと作用的に接続される第1の端部を有する圧縮バネと、
前記ピボットアームの振動を抑える減衰機構とを備え、
前記ピボットアームが、前記ピボットアームとともに動き、前記ピボットから所定距離だけ離れていて、概して前記圧縮バネの第2端部と前記ピボットの方向に向けられた弧状凹面を有し、
前記減衰機構は、前記ピボットアームの前記弧状凹面と摺動自在に係合する弧状摩擦凸面と、前記バネの第2の端部を向くとともに前記第2の端部に取り付けられるバネ受け部と、前記ベースに固定された突起部と係合する表面部とを有する可動シューを備え、
前記バネは、前記シューに対してバネ力を作用させ、前記シューは前記弧状凸面を前記弧状凹面に向けて押し、それに対して前記弧状凹面が前記シューに対して反作用の力を生じさせ、前記バネ力と前記反作用が組み合わされて前記シューを前記突起部に向けて押し、
さらに、
工具受け部を有し、前記ベースから延びる調整部と、
前記ピボットアーム上にあるインジケータ部と、
前記ピボットアーム上の前記インジケータ部と協同してあらかじめ定められた圧縮バネの力を示すために前記ベースに配置された指示部と
を備えたことを特徴とする調整可能なテンショナ。
【請求項2】
前記シューの前記表面部と前記突起部が、前記圧縮バネの長手軸方向から所定角度の方向に沿って置かれた互いに自在な傾斜面として構成されることを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記ピボットアームの弧状凹面が実質的に前記ピボットに対して同軸であることを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記工具受け部が、穴を有することを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項5】
前記工具受け部が、前記ピボットに関して前記減衰機構を超えて径方向に延びることを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−516386(P2007−516386A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517524(P2006−517524)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/019939
【国際公開番号】WO2005/010402
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】