説明

調整可能解像力干渉リソグラフィシステム

【課題】慣用の干渉リソグラフィシステムの整合の複雑さのない、調整可能な解像力を備えたシステムを提供する。
【解決手段】レーザビーム106を出力するレーザと、レーザビーム106を複数のビーム107に分割するビームスプリッタ103と、複数のビームを使用して基板上に干渉フリンジを形成するプリズム101とが設けられており、リソグラフィシステムの解像力が、リソグラフィシステムの光路におけるあらゆる光学コンポーネントを交換することなく調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィシステム、特に調整可能な解像力を備えた干渉リソグラフィシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
干渉リソグラフィシステムにおいて、レーザビームがビームスプリッタへ送られ、ビームスプリッタはレーザビームを分割し、次いでレーザビームは、露光される基板において再結合され、パターンを形成する。通常、形成されるパターンは、フォトレジスト等のコンポーネントを試験するために使用される線又はルーリングを含んでいる。
【0003】
すなわち、干渉リソグラフィシステムにおいて、基板平面においてフリンジを形成するために2つのレーザビームがコヒーレントに合致させられる。フリンジパターンはフォトレジストを露光し、グレーティングパターンの1つのタイプを形成する。種々異なる干渉リソグラフィシステムは、最終的に基板において干渉フリンジを生ぜしめる2つのレーザビームを発生する種々異なる方法を有する。
【0004】
慣用の干渉リソグラフィシステムにおいて、システムの解像力を変更するために、一般的に光学系のパラメータの数値を変更する必要がある。通常、このことは光学系モジュールの幾つかのエレメントを交換することを伴う。この作業は時間のかかるものである可能性がある。さらに、光学素子若しくは光学コンポーネントを交換することは、しばしばコンポーネントの再整合を必要とし、さらにこの作業が必要とする時間を増大する。
【0005】
例えば、システムの解像力を変更するために変化させる必要のあるパラメータのうちの1つは、レーザビームが基板に衝突する角度である。このことは、光学系の開口数を変更するのと同じであると考えることができる(しかしながら、レンズは干渉システムにおける像の形成には含まないので、問題となる開口数はより派生的な概念のものである)。
【0006】
変更される必要のある別のパラメータは、どのようにビームが分離されるかと、干渉フリンジを生ぜしめるために必要とされる様々な光学コンポーネントの整合とを含む。レーザの比較的小さな可干渉距離により、概して、2つのレーザビームが実際に所要のフリンジを形成することを保証する場合に、一緒に働くための光学デザイナのための余地はほとんどない。換言すれば、整合は正確でなければならず、このことは、実際のシステムにおいて、特にシステムにおける光学コンポーネントが交換されなければならない場合には達成するのがしばしば極めて困難である。
【0007】
変更可能な光学素子を有することは、システムをより複雑にし、コストを増大させる。ユーザがビームスプリッタ又は光学モジュールを変更しなければならないたびに、決定的な整合を失う危険性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、この分野においては、慣用の干渉リソグラフィシステムの整合の複雑さのない、調整可能な解像力を備えたシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、関連する技術分野の欠点の1つ又は2つ以上を実質的に排除する調整可能解像力干渉リソグラフィシステムに関する。
【0010】
特に、本発明の典型的な実施形態において、リソグラフィシステムは、レーザビームを出力するレーザと;レーザビームを複数のビームに分割するビームスプリッタと;複数のビームを使用して基板に干渉フリンジを形成するためのプリズムとを有している。リソグラフィシステムの解像力は、リソグラフィシステムの光路におけるいかなる光学コンポーネントをも交換することなく調整可能である。ビームスプリッタは、解像力を調整するために光路に沿って可動である。システムはファセットの複数のセットを有しており、それぞれのファセットのセットは特定の解像力に対応している。それぞれのファセットのセットは、光路に沿った特定のビームスプリッタ位置、及び/又は特定の解像力に対応している。ビームスプリッタは、リニアグレーティング又はチェッカー盤グレーティングを含む。ビームは、二方向対称、四方向対称又はN方向対称である。解像力は、例えば90nm、65nm、45nm又は35nmのうちのいずれかに調整可能である。システムの開口数は、ビームスプリッタを光路に沿って移動させることにより調整可能である。レーザビームは、193nmの光、248nmの光又は157nmの光のうちのいずれかを含んでいる。液体が基板とプリズムとの間に存在することができる。
【0011】
発明の付加的な特徴及び利点は、以下の詳細な説明において説明され、一部は詳細な説明より明らかになるか、発明の実施によって学習されることができる。発明の利点は、記載された詳細な説明及び請求項並びに添付図面において特に指摘された構造によって実現及び達成されるであろう。
【0012】
前記一般的な説明及び以下の詳細な説明は典型的かつ説明的なものであり、請求項に記載された発明のさらなる説明を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明のさらなる理解を提供するために含まれかつ本明細書の一部に組み込まれかつ本明細書の一部を構成した添付の図面は、発明の実施形態を例示しており、詳細な説明と共に発明の原理を説明するために働く。
【0014】
ここで本発明の好適な実施形態を詳細に参照し、実施形態の例が添付の図面に例示されている。
【0015】
1つの実施形態において、本発明は、例えば図1に示されたような、マルチファセットピラミッド状プリズムと可動なビームスプリッタとを使用することによって干渉リソグラフィシステムの可変解像力を達成する。図1に示されているように、プリズム101は、光軸102を有する光路に取り付けられている。光軸102は、システムのZ軸として考えることができる。ビームスプリッタ103は、光路におけるさらに上流に位置決めされている。プリズム101は、ウェハ(若しくは基板)104の上方に取り付けられており、システムが液浸リソグラフィシステムであるならば、通常は液体(図示せず)がプリズム101とウェハ104との間を循環させられる。本発明は液浸リソグラフィシステムに限定されず、プリズム101とウェハ104との間における空気又はその他の気体と共に使用されることもできる。
【0016】
図1には、ビームスプリッタ103によって2つ以上のビームに分割されるレーザビーム106も示されている。図1には二方向対称のケースが示されている。すなわち、ビーム106は2つのビームに分割される。例えば、ビームスプリッタ103が所定の位置にある場合に、ビーム106は2つのビーム107Aに分割される。ビームスプリッタが位置Bにある場合には、レーザビーム106は2つのビーム107B等に分割される。ビーム107A〜107Dは、ビームスプリッタ103(A〜Dの何れの位置に配置されていても)を横切ることにより、プリズム101に進入し、内部において、面105A〜105Dのうちの1つにおいて反射する。次いで、ビームはウェハ104において干渉フランジを形成する。
【0017】
ビームスプリッタ103は、例えばZ軸ステージ(図示せず)に取り付けられることにより、Z軸に沿って可動である。ビームスプリッタ103のそれぞれの位置(位置A〜D)は、プリズム101の適切なファセット105において反射されるビームに対応する。193nm入力レーザビーム106のための90nm、65nm、45nm及び35nmの解像力に対応するビームスプリッタ103の4つの位置が図1に示されているが、本発明は、これらの特定の解像力、又はこの特定のレーザビーム波長に限定されない。365nm、248nm又は157nm等のその他の波長が可能である。また、ビームスプリッタ103のより多くの又はより少ないZ軸位置に対応するように、より多くの又はより少ないプリズムファセット105を使用することができる。実際の解像力は、ビームスプリッタ103角度位置と、プリズムファセット105角度とによって規定される。
【0018】
解像力を向上させるために、概してレーザビーム106の波長が減じられる必要がある。さらに、ウェハ104とプリズム101との間の流体の屈折率が変化されることができる。水は(193nmにおいて)約1.43の屈折率を有しているが、他の媒体はより高い屈折率を有することができ、これにより、さらに解像力を向上させることができる。屈折率をさらに高めるために、塩又は同様のものを水に加えることができる。
【0019】
図1に示された実施形態は二方向対称システムの例であるが、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、四方向対称リソグラフィシステムが設計されることもでき、このシステムは、矩形断面を有するプリズム101(上方へプリズム101内を見た場合)と、集合的にウェハ104上に干渉パターンを形成する4つのレーザビームを生ぜしめるビームスプリッタ106とを備えている。
【0020】
あらゆる数のビームスプリッタがビームスプリッタ103として使用されることができる。この用途における最も一般的なタイプのビームスプリッタはグレーティングである。この場合のグレーティングの典型的なピッチは約0.5〜2ミクロンであるが、本発明はあらゆる特定のグレーティング寸法に限定されない。
【0021】
図1に示されたようなプリズムを使用する利点は、プリズム101が一旦製造されると、整合の困難さがないということである。光学系にプリズム101を配置することにより、唯一の調整はビームスプリッタ103のZ軸調整であり、この調整は、ビームスプリッタ013がZ軸ステージに配置されているならば比較的直線的な操作である。
【0022】
プリズム101は、N方向対称を有するように一般化されることができる。例えば、六方向対称干渉リソグラフィシステムが使用される場合があってよい。数Nは偶数である必要はなく、換言すれば、(プリズム101の三角形又は五角形の断面に対応する)三方向又は五方向対称も可能である。
【0023】
プリズム101の典型的な寸法は、約100mmの長さ×底面における約25mm、上面における約50mmであるが、本発明はこれらの特定の寸法に限定されないことが理解されるであろう。概して、プリズムの正確な寸法と、ビームスプリッタ103のグレーティングのピッチと、プリズムファセット105の寸法及び向きとは、所望の解像力と、レーザビーム波長と、プリズム101の間の媒体の屈折率と、コンポーネントとウェハ104との間の距離と、その他の整合問題とに依存する。
【0024】
本発明は、解像力と等価開口数との調整を許容する。多くの状況において(全ての状況ではない)、これらの調整は互いに依存するが、等価開口数と解像力とが独立して調整可能であるような状況があってよい。
【0025】
図2は本発明の択一的な実施形態を示しており、この場合プリズム101の代わりにミラー202が使用されている。ミラー202は、種々異なるビームスプリッタ103位置のために交換されることができるか、又は角度を調整するたに二回転及び移動させられることができる。ミラー202の効果は図1におけるプリズムファセット105の効果と実質的に同じである。ミラー202の使用は著しくより多くの独立した整合調整を必要とするのでより困難であると現時点では発明者たちによって考えられている。
【0026】
特に、図2を参照すると、1つおきの回折されたビームに対するそれぞれの回折されたビームの経路長さは、正確に合致させられなければならない。これは、ミラー202の調整を、角度の自由度及び空間の自由度において極めて決定的にする。
【0027】
現時点では、193nmレーザビームのためには図1に示したような光学系が約34nmの解像力限界を有する(液浸媒体として水を使用する)と考えられている。主要な限界要因は、(底面における)プリズム101内の内部反射角度と、達成されることができる角度とである。概して、解像力をさらに高めるために、より高い屈折率を有する液浸媒体か、又はより小さな波長を有するレーザビーム、又はこれらの両方を使用する必要がある。これらの要因を考慮して、このアプローチによって約20nmの解像力を達成することができる。
【0028】
グレーティングは一般的にクロム・オン・ガラスタイプのグレーティングであるが、本発明はこの特定のタイプのグレーティングに、又は概してグレーティングの使用に限定されない。例えば、位相シフトされたエッチングされたガラスビームスプリッタを使用することができる。ビームの四方向対称セットを生ぜしめるために、チェッカー盤タイプグレーティングが使用される必要がある。
【0029】
図示された寸法(90nm、65nm、45nm及び35nm)は、基板104上にイメージ形成されることができる最小のフィーチャ寸法を表すが、本発明は特定の寸法に限定されない。
【0030】
したがって、ビーム107がプリズム101における所要のプリズムファセット105において反射するように上部ユニットビームスプリッタ103をZ軸において移動させることによって解像力が変化させられる。解像力は主に、最後に干渉するビームにおける角度、ひいてはプリズム101における反射面におけるファセット角度によって制御される。図1に示された設計において、4つのプリセット解像力:90nm、65nm、45nm及び38nmがある。これらの解像力は、マルチファセットプリズム101を、種々異なる所定のファセット角度を備えた別のマルチファセットプリズムと交換することによって変化されることができる。解像力の変更は、コンピュータ制御によって、ビームスプリッタ103を備えた電動式Z軸を駆動することによって行われることができる。予め規定されることができる種々異なるファセット角度の数値に関して設計はフレキシブルである。示された実施例において、ファセットの4つのセット(105A〜105D)がある。ファセット105A〜105Dは、2倍、4倍又は6倍対称に基づくことができる。実際の対称要求は、ビームスプリッタ103の設計によって規定される。
【0031】
全体的に反射するファセット105は、最後の反射されたウェハ分極が入射/インプット分極と同じであるように、又はあらゆる所望の分極状態を生ぜしめるために、薄膜によってコーティングされることができる。同様に、所望の極性状態を保存するために、他の面がコーティングされることができる。
【0032】
ここに説明された設計を使用することは、極めて単純な光路を提供し、コストを削減し、解像力変化との整合を維持し、解像力のコンピュータ制御を提供する。
【0033】
システム及び方法の好適な実施形態を説明したが、説明された方法及び装置のある利点が達成されたことは当業者に明らかである。本発明の範囲及び思想の範囲で様々な習性、適応、及び択一的な実施態様が行われることができることも認められるべきである。さらに、本発明は請求項によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の典型的な干渉リソグラフィシステムを示す図である。
【図2】ミラーが使用される場合の、本発明の択一的な実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
101 プリズム、 102 光軸、 103 ビームスプリッタ、 104 ウェハ、 105 面、 106 レーザビーム、 107 ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィシステムにおいて、
レーザビームを出力するレーザと、
レーザビームを複数のビームに分割するビームスプリッタと、
複数のビームを使用して基板上に干渉フリンジを形成するプリズムとが設けられており、
リソグラフィシステムの解像力が、リソグラフィシステムの光路におけるあらゆる光学コンポーネントを交換することなく調整可能であることを特徴とする、リソグラフィシステム。
【請求項2】
ビームスプリッタが、解像力を調整するために光路に沿って可動である、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
プリズムがファセットの複数のセットを含んでおり、それぞれのファセットのセットが、特定の解像力に対応している、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
プリズムが複数のファセットのセットを含んでおり、それぞれのファセットのセットが、光路に沿った特定のビームスプリッタ位置に対応している、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
それぞれのファセットのセットが特定の解像力に対応している、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
ビームスプリッタがリニアグレーティングを含んでいる、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
ビームスプリッタがチェッカー盤グレーティングを含んでいる、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
複数のビームが二方向対称である、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
複数のビームが四方向対称である、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
複数のビームがN方向対称である、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
解像力が、90nm、65nm、45nm又は35nmのうちのいずれかに調整可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
システムの開口数が、ビームスプリッタを光路に沿って移動させることによって調整可能である、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
レーザビームが、193nm光、248nm光又は157nm光のうちのいずれかを含んでいる、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
基板とプリズムとの間に液体を含んでいる、請求項1記載のシステム。
【請求項15】
リソグラフィシステムにおいて、
レーザビームの供給源と、
レーザビームを複数のビームに分割するビームスプリッタと、
複数のビームを使用して基板上に干渉フリンジを形成する複数の反射面とが設けられており、
リソグラフィシステムの解像力が反射面の角度配向を調整することによって調整可能であることを特徴とする、リソグラフィシステム。
【請求項16】
リソグラフィシステムにおいて、
レーザビームの供給源と、
レーザビームを複数のビームに分割するビームスプリッタとが設けられており、該ビームスプリッタが、リソグラフィシステムの解像力を調整するためにリソグラフィシステムの光軸に沿って可動であり、
複数のビームを使用して基板上に干渉フリンジを形成するプリズムが設けられていることを特徴とする、リソグラフィシステム。
【請求項17】
リソグラフィシステムにおいて、
レーザビームの供給源と、
レーザビームを四方向対称のビームに分割するビームスプリッタとが設けられており、該ビームスプリッタが、リソグラフィシステムの解像力を調整するために可動であり、
複数のビームを使用して基板上に干渉フリンジを形成するプリズムが設けられていることを特徴とする、リソグラフィシステム。
【請求項18】
リソグラフィシステムにおいて、
レーザビームの供給源と、
レーザビームを四方向対称のビームに分割するビームスプリッタとが設けられており、該ビームスプリッタがリソグラフィシステムの解像力を調整するために可動であり、
四方向対称のビームを使用して基板上に干渉フリンジを形成するプリズムが設けられていることを特徴とする、リソグラフィシステム。
【請求項19】
リソグラフィシステムにおいて、
レーザビームの供給源と、
レーザビームを複数のビームに分割するビームスプリッタと、
複数のビームを使用して基板上に干渉フリンジを形成するプリズムとが設けられており、
リソグラフィシステムの等価開口数が、リソグラフィシステムの光路におけるあらゆる光学コンポーネントを交換することなく調整可能であることを特徴とする、リソグラフィシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−76937(P2009−76937A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323797(P2008−323797)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【分割の表示】特願2005−246663(P2005−246663)の分割
【原出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(503195263)エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ. (232)
【Fターム(参考)】