説明

負荷駆動装置及びこれを用いた電気機器

【課題】本発明は、複数の負荷に各々駆動電流を供給する複数のドライバ回路を備えた負荷駆動装置において、各ドライバ回路相互間における異常保護動作の連携を図ることで、その安全性や信頼性を向上することが可能な負荷駆動装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る負荷駆動装置1は、複数の負荷2に各々駆動電流を供給する複数のドライバ回路11〜15を備えた多チャンネルの負荷駆動装置であって、前記複数のドライバ回路11〜15のうち、少なくとも一は、自身に異常が生じたときだけでなく、他のドライバ回路に異常が生じたときにも、自身の出力動作を制限または停止する構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の負荷に各々駆動電流を供給する複数のドライバを備えた負荷駆動装置及びこれを用いた電気機器(例えば、光ディスク駆動装置)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVD[Digital Versatile Disc]、CD[Compact Disc]、MD[Mini Disc]などの光ディスクを再生する光ディスク駆動装置を備えたカーナビゲーションシステムやカーオーディオシステム、或いは、ポータブルナビゲーションシステムなどにおいて、光ディスクの駆動に関わるモータドライバICが何らかの外的要因(例えば、埃の付着)によってその出力端子に天絡や地絡などの異常を生じた場合、モータドライバICの安全動作領域(ASO[Area of Safe Operation])を超えた過大電流が流れて、モータドライバICの破壊を招き、最悪の場合には発煙や発火に至るおそれがあった。
【0003】
そのため、従来より、モータドライバICを異常状態から保護するための技術が種々開示・提案されている(特許文献1、2などを参照)。
【0004】
なお、特許文献1には、モータに電流が供給されている状態にあって、モータ周辺温度が上昇すると、モータへの電流供給を遮断する熱保護回路が開示・提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、一方の端子から負荷を通して他方の端子に電流を流す駆動回路において、他方の端子に流れ込む電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段の検出電流が所定値を超えると、一対の端子それぞれから電流を流出する上側トランジスタの出力電流を制限する電流制限手段と、を有する駆動回路が開示・提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−252768号公報
【特許文献2】特開2005−20278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、上記従来の保護技術をモータドライバICに適用すれば、その出力端子に異常が生じた場合でも、ICの破壊や発熱・発火を未然に回避する可能性を向上することが可能である。
【0008】
しかしながら、上記従来の保護技術は、あくまで、単一のモータを駆動するモータドライバICの保護を想定したものであり、複数のモータやアクチュエータに各々駆動電流を供給する多チャンネルのモータドライバICの保護を想定したものではなかった。
【0009】
そのため、上記従来の保護技術を多チャンネルのモータドライバICに単純に適用しただけでは、一のドライバ回路に異常が生じた場合、当該ドライバ回路については、迅速にその保護動作を発動し得るものの、その余のドライバ回路については、各々の異常が実際に生じるまで、何らその保護動作が発動されないことになる。その結果、一のドライバ回路に出力異常を引き起こした原因が万一、その余のドライバ回路の出力異常をも誘引するものであった場合、先の出力異常が生じた時点で、これに続く異常発生を予見し得たにも関わらず、未然の保護機会を逸失して、以後の保護動作が後手に回るおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑み、複数の負荷に各々駆動電流を供給する複数のドライバ回路を備えた負荷駆動装置において、各ドライバ回路相互間における異常保護動作の連携を図ることで、その安全性や信頼性を向上することが可能な負荷駆動装置、及び、これを用いた電気機器(例えば、ディスク駆動装置)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成すべく、本発明に係る負荷駆動装置は、複数の負荷に各々駆動電流を供給する複数のドライバ回路を備えた多チャンネルの負荷駆動装置であって、前記複数のドライバ回路のうち、少なくとも一は、自身に異常が生じたときだけでなく、他のドライバ回路に異常が生じたときにも、自身の出力動作を制限または停止する構成(第1の構成)とされている。
【0012】
なお、上記第1の構成から成る負荷駆動装置は、前記複数のドライバ回路として、メディアやヘッドの駆動に関わる第1群のドライバ回路のほか、前記メディアのローディングに関わる第2群のドライバ回路を有して成り、第2群のドライバ回路は、自身に異常が生じたときにのみ、その出力動作を制限または停止する構成(第2の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1または第2の構成から成る負荷駆動装置において、前記複数のドライバ回路は、各々、異なる2電源間に直列接続された上側スイッチ及び下側スイッチの接続ノードが前記負荷を接続するための外部端子として引き出されたトーテムポール型の出力回路を複数有して成るものであり、かつ、その異常保護手段として、前記複数の出力回路のうち、いずれか一の外部端子に地絡が生じたときに、全ての出力回路の上側スイッチに対して出力電流の抑制制御を行う地絡保護回路、及び/または、いずれか一の外部端子に天絡が生じたときに、全ての出力回路の下側スイッチに対して出力電流の抑制制御を行う天絡保護回路を有して成る構成(第3の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第3の構成から成る負荷駆動装置において、前記地絡保護回路は、前記外部端子の電圧が所定値を下回っているときに、当該外部端子の上側スイッチに流れる電流が所定値を上回っていれば、地絡が生じていると判断するものであり、また、前記天絡保護回路は、前記外部端子の電圧が所定値を上回っているときに、当該外部端子の下側スイッチに流れる電流が所定値を上回っていれば、天絡が生じていると判断するものである構成(第4の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成る負荷駆動装置において、前記複数のドライバ回路相互間における連携的な異常保護動作は、装置外部からの制御信号によって許可/禁止される構成(第5の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第1〜第5いずれかの構成から成る負荷駆動装置において、前記複数のドライバ回路のうち、少なくとも一は、自身に異常が生じたときに、その旨を示す異常検出信号を送出する構成(第6の構成)にするとよい。
【0017】
また、本発明に係る電気機器は、上記第6の構成から成る負荷駆動装置と、前記負荷駆動装置から駆動電流の供給を受ける複数の負荷と、前記負荷駆動装置から前記異常検出信号の入力を受けるマイコンと、を有して成る構成(第7の構成)とされている。
【0018】
なお、上記第7の構成から成る電気機器において、前記マイコンは、前記異常検出信号の入力を受けたとき、メモリに前記負荷駆動装置の異常履歴情報を格納する構成(第8の構成)にするとよい。
【0019】
また、上記第7または第8の構成から成る電気機器において、前記マイコンは、前記異常検出信号の入力を受けたとき、ディスプレイ及び/またはスピーカを用いて、前記負荷駆動装置の異常を報知する構成(第9の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の負荷に各々駆動電流を供給する複数のドライバ回路を備えた負荷駆動装置において、各ドライバ回路相互間における異常保護動作の連携を図ることで、その安全性や信頼性を向上することが可能な負荷駆動装置、及び、これを用いた電気機器(例えば、ディスク駆動装置)を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、光ディスク駆動装置に搭載されるモータドライバICに本発明を適用した場合を例に挙げて詳細な説明を行う。
【0022】
図1は、本発明に係る光ディスク駆動装置の一実施形態を示すブロック図である。
【0023】
本図に示す通り、本実施形態の光ディスク駆動装置は、モータドライバIC1と、負荷2と、ディジタル信号処理装置3(以下では、DSP[Digital Signal Processor]3と呼ぶ)と、マイコン4と、メモリ5と、を有して成る。
【0024】
モータドライバIC1は、スピンドルモータドライバ回路11と、スレッドモータドライバ回路12と、フォーカスサーボドライバ回路13と、トラッキングサーボドライバ回路14と、ローディングモータドライバ回路15と、を備えて成り、DSP3からの駆動信号N2に基づき、複数の負荷2(スピンドルモータ21、スレッドモータ22、フォーカスサーボコイル23、トラッキングサーボコイル24、並びに、ローディングモータ25)に対して、各々駆動電流を供給する多チャンネル負荷駆動装置である。
【0025】
上記複数のドライバ回路11〜15を光ディスクや光ピックアップの駆動に関わる第1群と光ディスクのローディング(出し入れ)に関わる第2群に分類した場合、スピンドルモータドライバ回路11、スレッドモータドライバ回路12、フォーカスサーボドライバ回路13、及び、トラッキングサーボドライバ回路14は、いずれも第1群に分類され、ローディングモータドライバ回路15のみ、第2群に分類される。
【0026】
なお、上記第2群に分類されるドライバ回路の他の一例としては、ディスクチェンジャ搭載の光ディスク駆動装置において、ディスクマガジンケースとターンテーブルとの間で光ディスクを搬送するための搬送モータに駆動電流を供給する搬送モータドライバ回路を挙げることができる。また、光ディスク駆動装置の中には、光ピックアップのスレッド駆動と光ディスクのローディング駆動を一のモータで実現しているものも存在し、例えば、一の共用モータを用いて光ピックアップを光ディスクの最内周側までスレッド駆動させた後、ギヤを介するなどして、上記の共用モータでローディング機構を動作させ、光ディスクのローディング駆動を行う場合もある。この場合、スレッドモータとローディングモータは1つであり、上記の共用モータは第2群に分類される。
【0027】
また、上記複数のドライバ回路11〜15は、いずれも、自身に異常が生じたときに、その出力動作を制限または停止した上で、その旨を示す異常検出フラグN4を送出する異常保護部11a〜15aを備えて成る。なお、異常保護部11a〜15aの構成及び動作については、後ほど詳細に説明する。
【0028】
一方、負荷2について、スピンドルモータ21は、光ディスクが載置されるターンテーブル(不図示)を線速度一定または回転速度一定で回転駆動させる手段であり、ブラシ付きDCモータや3相ブラシレスモータを用いることができる。スレッドモータ22は、光ピックアップ(不図示)を光ディスクの半径方向に駆動させる手段であり、ブラシ付きDCモータや2相ブラシレスステッピングモータを用いることができる。フォーカスサーボコイル23は、光ピックアップの対物レンズを駆動させて、光ディスク上に形成されるビームスポットのフォーカス制御を行う手段である。トラッキングサーボコイル24は、光ピックアップの対物レンズを駆動させて、光ディスク上に形成されるビームスポットのトラッキング制御を行う手段である。ローディングモータ25は、光ディスクが載置されるローディングトレイ(不図示)を前後駆動させる手段であり、ブラシ付きDCモータを用いることができる。
【0029】
DSP3は、マイコン4からの制御信号N1に基づいて、複数のドライバ回路11〜15に各々駆動信号N2を送出する手段である。
【0030】
マイコン4は、装置各部の動作を統括制御する手段であり、特に、本発明に関連して、DSP3に対する制御信号N1の送出、モータドライバIC1から送出される異常検出フラグN4の監視、メモリ5を用いた異常履歴情報N3の格納及び参照、並びに、モータドライバIC1に対する遮断信号N5(或いは解除信号N5’)の送出を行う。
【0031】
メモリ5は、マイコン4のプログラム格納領域や作業領域として用いられるほか、モータドライバIC1の異常履歴情報N3を格納するための記憶手段としても用いられる。
【0032】
上記構成から成る本実施形態の光ディスク駆動装置において、モータドライバIC1に搭載される複数のドライバ回路11〜15は、いずれも、自身に異常が生じたときに、その出力動作を制限または停止した上で、その旨を示す異常検出フラグN4を送出する異常保護部11a〜15aを備えて成る。
【0033】
また、上記した複数のドライバ回路11〜15のうち、第1群に分類されるスピンドルモータドライバ回路11、スレッドモータドライバ回路12、フォーカスサーボドライバ回路13、及び、トラッキングサーボドライバ回路14は、いずれも、自身に異常が生じたときだけでなく、他のドライバ回路から送出される異常検出フラグN4に基づいて、当該他のドライバ回路に異常が生じたときにも、自身の出力動作を制限または停止する構成とされている。
【0034】
このような構成とすることにより、一のドライバ回路に異常が生じた場合、当該ドライバ回路について、迅速にその保護動作を発動し得るだけでなく、その余のドライバ回路についても、各々の異常が実際に生じる前の段階で、未然の保護動作を発動することが可能となる。従って、本実施形態のモータドライバIC1であれば、多チャンネルのドライバ回路相互間における異常保護動作の連携を図ることで、その安全性や信頼性を向上することが可能となる。
【0035】
なお、本実施形態のモータドライバIC1において、上記複数のドライバ回路11〜15相互間における連携的異常保護動作(すなわち、マイコン4の制御を要することなく、異常検出フラグN4に基づいて、モータドライバIC1単体で行われる連携的異常保護動作)は、IC外部(例えばマイコン4)からの制御信号(不図示)によって許可/禁止される構成とされている。このような構成とすることにより、一のドライバ回路に異常が生じた場合に、モータドライバIC1単体で異常保護動作を行うか、或いは、マイコン4からの遮断信号N5に応じて異常保護動作を行うかについて、ユーザの任意で設定することが可能となる。
【0036】
一方、本実施形態のモータドライバIC1において、第2群に分類されるローディングモータドライバ回路15は、異常を生じたドライバ11〜14から送出される異常検出フラグN4(或いは、ドライバ回路11〜14での異常発生に伴ってマイコン4から送出される遮断信号N5)に依ることなく、自身に異常が生じたときにのみ、その出力動作を制限または停止する構成とされている。このような構成とすることにより、ドライバ回路11〜14に異常が生じた場合でも、ローディングモータドライバ回路15に異常が生じない限り、光ディスクのローディング(出し入れ)は実行可能な状態に維持される。
【0037】
従って、本実施形態の光ディスク駆動装置であれば、ドライバ回路11〜14に異常が生じた場合に、これらの出力動作をいずれも制限/停止して、装置の安全性や信頼性を高める一方、ローディングモータドライバ回路15の出力動作については、これを維持してユーザによる光ディスクの迅速な取出しを可能とし、当該光ディスクを損傷させてしまう危険性を極力低減することが可能となる。
【0038】
また、本実施形態の光ディスク駆動装置において、マイコン4は、異常検出フラグN4の入力を受けたとき、メモリ5にモータドライバIC1の異常履歴情報N3を格納する構成とされている。このように、モータドライバIC1の異常状態をマイコン4に伝達し、これを異常履歴情報N3として蓄積する構成であれば、今後の技術力向上や安全性向上に寄与することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の光ディスク駆動装置において、マイコン4は、異常検出フラグN4の入力を受けたとき、ディスプレイ及び/またはスピーカ(いずれも不図示)を用いて、モータドライバIC1の異常を報知する構成とされている。このような構成とすることにより、ユーザはモータドライバIC1の異常を遅滞なく認識することができるので、迅速な復旧作業が可能となり、延いては、装置の安全性や信頼性を高めることが可能となる。
【0040】
次に、上記した異常保護部11a〜15aの代表として、異常保護部11aの構成及び動作についての詳細な説明を行う。
【0041】
図2は、異常保護部11aの一構成例を示すブロック図である。なお、図2(a)は、地絡保護回路GSP1を導入した構成を示しており、図2(b)は、天絡保護回路VSP1を導入した構成を示している。
【0042】
図2(a)、(b)に示すように、スピンドルモータドライバ回路11は、スピンドルモータ21の両端に一対のトーテムポール型出力回路OUT1〜OUT2が接続された構成、より具体的に述べると、上記の出力回路OUT1〜OUT2を出力段とする一対のB級プッシュプルアンプを用いて、スピンドルモータ21の両端電圧を任意に制御するブリッジ接続負荷方式(BTL[Bridged Tied Load]方式)を採用した構成とされている。
【0043】
出力回路OUT1は、異なる2電源(Vcc・GND)間に、上側スイッチQH1と下側スイッチQL1(いずれもNPN型バイポーラトランジスタ)を直列接続して成り、両スイッチ間の接続ノードがスピンドルモータ21の一端を接続するための外部端子T1として引き出された構成とされている。
【0044】
同様に、出力回路OUT2は、異なる2電源(Vcc・GND)間に、上側スイッチQH2と下側スイッチQL2(いずれもNPN型バイポーラトランジスタ)を直列接続して成り、両スイッチ間の接続ノードがスピンドルモータ21の他端を接続するための外部端子T2として引き出された構成とされている。
【0045】
ここで、図2(a)に示すスピンドルモータドライバ回路11は、異常保護部11aとして、出力回路OUT1の外部端子T1に地絡(GNDショートなど、意図しない低電位点への短絡)が生じたときに、出力回路OUT1の上側スイッチQH1だけでなく、出力回路OUT2の上側スイッチQH2に対しても、出力電流の抑制制御を行う地絡保護回路GSP1を有して成る。なお、図2(a)には明示されていないが、スピンドルモータドライバ回路11は、外部端子T2側にも、上記と同様の地絡保護回路を有して成る。
【0046】
一方、図2(b)に示すスピンドルモータドライバ回路11は、異常保護部11aとして、出力回路OUT1の外部端子T1に天絡(Vccショートなど、意図しない高電位点への短絡)が生じたときに、出力回路OUT1の下側スイッチQL1だけでなく、出力回路OUT2の下側スイッチQL2に対しても、出力電流の抑制制御を行う天絡保護回路VSP1を有して成る。なお、図2(b)には明示されていないが、スピンドルモータドライバ回路11は、外部端子T2側にも、上記と同様の天絡保護回路を有して成る。
【0047】
上記した図2(a)、(b)に示すように、外部端子T1〜T2の一方に地絡や天絡が生じた場合に、異常サイドの出力回路だけでなく、正常サイドの出力回路に対しても、その電流制限も行う構成であれば、異常サイドの出力回路に流れる過大な短絡電流(異なる2電源間に流れる貫通電流)を抑制することはもちろん、正常サイドの出力回路に流れる意図しない駆動電流についても、その抑制を行うことが可能となる。
【0048】
従って、本実施形態のスピンドルモータドライバ回路11であれば、外部端子T1〜T2に地絡や天絡が生じたまま、その負荷駆動が継続されたとしても、スピンドルモータ21や回路基板、或いは、光ディスクに損傷を与えるおそれを低減することが可能となる。
【0049】
また、図2(a)、(b)に示すように、スピンドルモータドライバ回路11の異常保護部11aは、外部端子T1〜T2の地絡や天絡が所定時間内に回復しない場合に限り、先述の異常検出フラグN4を送出する異常検知タイマ回路TMR1を有して成る。
【0050】
このような構成とすることにより、外部端子T1〜T2の異常保護動作(出力回路OUT1〜OUT2の電流制限動作)については、これを即時に実行する一方、異常検出フラグN4の送出については、外部端子T1〜T2の地絡や天絡が所定時間内に回復しない場合に限り、これを実行する形となる。
【0051】
従って、本実施形態のスピンドルモータドライバ回路11であれば、外部端子T1〜T2に一時的な地絡や天絡が生じた程度で、ドライバ回路相互間の連携的異常保護動作が発動されたり、或いは、マイコン4への異常報告(延いては、マイコン4からモータドライバIC1に対する遮断信号N5の送出動作)が行われることはないので、装置動作の安定性を高めることが可能となる。
【0052】
なお、異常保護部11aの構成は、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、図3(a)、(b)に示すように、外部端子T1〜T2の地絡や天絡が生じたとき、出力回路OUT1〜OUT2の電流制限動作については、これを即時に実行する一方、当該異常が所定時間内に回復しない場合に限り、出力回路OUT1〜OUT2の駆動を遮断して、異常検出フラグN4の送出を行い、以後、装置外部(例えばマイコン4)からの解除信号N5’が入力されるまで、出力回路OUT1〜OUT2の駆動を停止させるラッチ式のシャットダウン回路SHD1を設けても構わない。
【0053】
次に、地絡保護回路GSP1の構成及び動作について、詳細な説明を行う。
【0054】
図4は、地絡保護回路GSP1の一具体例を示す回路図である。
【0055】
本図に示すように、本実施形態のスピンドルモータドライバ回路11において、上側トランジスタQH1のベース電流を生成するベース電流生成回路BG1は、抵抗R1〜R2と、PNP型バイポーラトランジスタP1〜P2と、を有して成り、上側トランジスタQH2のベース電流を生成するベース電流生成回路BG2は、抵抗R3〜R4と、PNP型バイポーラトランジスタP3〜P4と、を有して成る。
【0056】
一方、地絡保護回路GSP1は、抵抗R5と、PNP型バイポーラトランジスタP5〜P7と、NPN型バイポーラトランジスタN1と、コンパレータCMP1と、直流電圧源E1と、を有して成る。
【0057】
ベース電流生成回路BG1について、トランジスタP1のエミッタは、Vccラインに接続されている。トランジスタP1のコレクタは、抵抗R1を介して、GNDラインに接続される一方、上側トランジスタQH1のベースにも接続されている。トランジスタP1のベースは、抵抗R2を介して、Vccラインに接続される一方、トランジスタP2のエミッタにも接続されている。トランジスタP2のコレクタは、GNDラインに接続されている。トランジスタP2のベースは、駆動信号SH1の印加端に接続されている。
【0058】
ベース電流生成回路BG2について、トランジスタP3のエミッタは、Vccラインに接続されている。トランジスタP3のコレクタは、抵抗R3を介して、GNDラインに接続される一方、上側トランジスタQH2のベースにも接続されている。トランジスタP3のベースは、抵抗R4を介して、Vccラインに接続される一方、トランジスタP4のエミッタにも接続されている。トランジスタP4のコレクタは、GNDラインに接続されている。トランジスタP4のベースは、駆動信号SH2の印加端に接続されている。
【0059】
地絡保護回路GSP1について、トランジスタN1のコレクタは、抵抗R5を介して、Vccラインに接続されている。トランジスタN1のエミッタは、上側トランジスタQH1のエミッタに接続されている。トランジスタN1のベースは、上側トランジスタQH1のベースに接続されている。
【0060】
コンパレータCMP1の反転入力端(−)は、外部端子T1に接続されている。コンパレータCMP1の非反転入力端(+)は、直流電圧源E1の正極端に接続されている。直流電圧源E1の負極端は、GNDラインに接続されている。コンパレータCMP1の出力端は、トランジスタP5のベースに接続されている。
【0061】
トランジスタP5〜P7のエミッタは、Vccラインに接続されている。トランジスタP5のコレクタ、トランジスタP6のベース、及び、トランジスタP7のベースは、いずれも、トランジスタN1のコレクタに接続されている。トランジスタP6のコレクタは、トランジスタP1のベースに接続されている。トランジスタP7のコレクタは、トランジスタP3のベースに接続されている。
【0062】
上記構成から成る地絡保護回路GSP1の動作について説明する。
【0063】
外部端子T1に地絡が発生すると、スピンドルモータ21の一端電圧V1aが所定の閾値電圧(直流電圧源E1の起電圧)を下回り、コンパレータCMP1の出力論理がローレベルからハイレベルに遷移されるので、トランジスタP5がオン状態からオフ状態に遷移され、抵抗R5のバイパスが解除される。
【0064】
従って、以後、抵抗R5に流れる参照電流(上側トランジスタQH1に流れる短絡電流と同等の挙動を示す参照電流)が大きいほど、その一端電圧V1bが低下して、トランジスタP6及びトランジスタP7が開く形(すなわち、トランジスタP1及びトランジスタP3のベース電位がハイレベル側にシフトされる形)となる。
【0065】
その結果、抵抗R5に流れる参照電流が大きいほど、トランジスタP1及びトランジスタP3が閉じる形、延いては、上側トランジスタQH1〜QH2が閉じる形となるので、これに流れる短絡電流或いは駆動電流が制限または遮断される。
【0066】
このように、本実施形態の地絡保護回路GSP1は、外部端子T1の電圧V1aが所定値を下回っているときに、外部端子T1の上側スイッチQH1に流れる電流が所定値(通常想定される電流値)を上回っていれば、地絡が生じていると判断して、上側スイッチQH1〜QH2双方の出力電流を制限する構成とされている。
【0067】
なお、図4には明示されていないが、スピンドルモータドライバ回路11は、外部端子T2側にも、これと同構成の地絡保護回路を有して成り、その動作も上記と同様である。
【0068】
また、図4には明示されていないが、図2(b)や図3(b)で示した天絡保護回路VSP1(並びに、他方サイドの天絡保護回路)も、上記と同様の考え方に基づき、外部端子の電圧が所定値(通常想定される電流値)を上回っているときに、当該外部端子の下側スイッチに流れる電流が所定値を上回っていれば、天絡が生じていると判断して、下側スイッチQL1〜QL2双方の出力電流を制限する構成とされている。
【0069】
このような構成とすることにより、極めて簡易な回路構成で、地絡保護回路や天絡保護回路を実現することが可能となる。
【0070】
なお、先述の異常検出フラグN4の生成に関しては、例えば、抵抗R5の一端電圧V1bが所定時間に亘って所定値を下回っているか否かを判定すればよい。
【0071】
以上、上記の実施形態では、光ディスク駆動装置に搭載されるモータドライバICに本発明を適用した場合を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、その他の負荷駆動装置や電気機器にも広く適用することが可能である。
【0072】
また、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、図1では、マイコン4からモータドライバIC1に対して、遮断信号N5が入力される構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、DSP3への制御信号N1を介して、モータドライバIC1に対する同様の制御を行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、DVD、CD、MDなどの光ディスクを再生する光ディスク駆動装置を備えたカーナビゲーションシステムやカーオーディオシステム、或いは、ポータブルナビゲーションシステムなどの安全性や信頼性を高める上で有用な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】は、本発明に係る光ディスク駆動装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】は、異常保護部11aの一構成例を示すブロック図である。
【図3】は、異常保護部11aの別の構成例を示すブロック図である。
【図4】は、地絡保護回路GSP1の一具体例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0075】
1 モータドライバIC(多チャンネル負荷駆動装置)
11 スピンドルモータドライバ回路
12 スレッドモータドライバ回路
13 フォーカスサーボドライバ回路
14 トラッキングサーボドライバ回路
15 ローディングモータドライバ回路
11a〜15a 異常保護部
2 負荷
21 スピンドルモータ
22 スレッドモータ
23 フォーカスサーボコイル
24 トラッキングサーボコイル
25 ローディングモータ
3 ディジタル信号処理装置
4 マイコン
5 メモリ
OUT1〜OUT2 トーテムポール型出力回路
QH1〜QH2 上側スイッチ(NPN型バイポーラトランジスタ)
QL1〜QL2 下側スイッチ(NPN型バイポーラトランジスタ)
T1〜T2 外部端子
GSP1 地絡保護回路
VSP1 天絡保護回路
TMR1 異常検知タイマ回路
SHD1 ラッチ式シャットダウン回路
BG1〜BG2 ベース電流生成回路
P1〜P7 PNP型バイポーラトランジスタ
N1 NPN型バイポーラトランジスタ
R1〜R5 抵抗
CMP1 コンパレータ
E1 直流電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の負荷に各々駆動電流を供給する複数のドライバ回路を備えた多チャンネルの負荷駆動装置であって、前記複数のドライバ回路のうち、少なくとも一は、自身に異常が生じたときだけでなく、他のドライバ回路に異常が生じたときにも、自身の出力動作を制限または停止することを特徴とする負荷駆動装置。
【請求項2】
前記複数のドライバ回路として、メディアやヘッドの駆動に関わる第1群のドライバ回路のほかに、前記メディアのローディングに関わる第2群のドライバ回路を有して成り、第2群のドライバ回路は、自身に異常が生じたときにのみ、その出力動作を制限または停止することを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動装置。
【請求項3】
前記複数のドライバ回路は、各々、異なる2電源間に直列接続された上側スイッチ及び下側スイッチの接続ノードが前記負荷を接続するための外部端子として引き出されたトーテムポール型の出力回路を複数有して成るものであり、かつ、その異常保護手段として、前記複数の出力回路のうち、いずれか一の外部端子に地絡が生じたときに、全ての出力回路の上側スイッチに対して出力電流の抑制制御を行う地絡保護回路、及び/または、いずれか一の外部端子に天絡が生じたときに、全ての出力回路の下側スイッチに対して出力電流の抑制制御を行う天絡保護回路を有して成ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の負荷駆動装置。
【請求項4】
前記地絡保護回路は、前記外部端子の電圧が所定値を下回っているときに、当該外部端子の上側スイッチに流れる電流が所定値を上回っていれば、地絡が生じていると判断するものであり、また、前記天絡保護回路は、前記外部端子の電圧が所定値を上回っているときに、当該外部端子の下側スイッチに流れる電流が所定値を上回っていれば、天絡が生じていると判断するものであることを特徴とする請求項3に記載の負荷駆動装置。
【請求項5】
前記複数のドライバ回路相互間における連携的な異常保護動作は、装置外部からの制御信号によって許可/禁止されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の負荷駆動装置。
【請求項6】
前記複数のドライバ回路のうち、少なくとも一は、自身に異常が生じたときに、その旨を示す異常検出信号を送出することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の負荷駆動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の負荷駆動装置と、前記負荷駆動装置から駆動電流の供給を受ける複数の負荷と、前記負荷駆動装置から前記異常検出信号の入力を受けるマイコンと、を有して成ることを特徴とする電気機器。
【請求項8】
前記マイコンは、前記異常検出信号の入力を受けたとき、メモリに前記負荷駆動装置の異常履歴情報を格納することを特徴とする請求項7に記載の電気機器。
【請求項9】
前記マイコンは、前記異常検出信号の入力を受けたとき、ディスプレイ及び/またはスピーカを用いて、前記負荷駆動装置の異常を報知することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−306637(P2007−306637A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129142(P2006−129142)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】