説明

貫通孔を有するガラス部品およびその製造方法

一様かつ微細な径の貫通孔を有するガラス部品を得る。 感光性ガラス100の貫通孔を形成する部分に集光光束21を照射して潜像を形成し、この感光性ガラスを熱処理して潜像が形成された部分を結晶化させ、この結晶化した部分を溶解除去することにより貫通孔を形成することによって、貫通孔の直径が該貫通孔の部位によらず略一定で、該貫通孔の長さ(L)と該貫通孔の直径(d)との比率(L/d)が15以上であり、かつ該直径(d)が30μm以下である貫通孔を有するガラス部品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一様かつ微細な径の貫通孔を有するガラス部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、微細な貫通孔を有するガラス基板、あるいはガラス部品が、プリント配線基板、インクジェットプリント用ヘッド、あるいはガスフローメーター等に応用されつつあり、特にガラス材料として、感光性ガラスを用いたものが注目されている。感光性ガラスに貫通孔を形成する方法として、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されている方法が知られている。
【0003】
図8は特許文献1に開示の貫通孔を有するガラス部品の製造方法の説明図である。以下、図8を参照にしながら、特許文献1に開示の貫通孔を有するガラス部品の製造方法を説明する。図8は、基板状をなした感光性ガラスに貫通孔を形成する工程のプロセス流れ図及び各工程における状態を模式的に示した側断面図である。図中、符号100は感光性ガラス、101aは露光結晶化部、101は貫通孔、102はフォトマスク、102aはフォトマスクの遮光膜、103はコリメートされた紫外光である。なお、遮光膜102aは、所望の貫通孔の形状及びその配列に対応したパターンとして、フォトマスク102に形成されている。
【0004】
まず、図8(a)に示すように、フォトマスクを感光性ガラス100の上に設置し、コリメートされた紫外光103を照射する。この紫外光照射により、感光性ガラス100内に、露光結晶化部101aが潜像として形成される。潜像のパターンは、図8(a)に示したように、フォトマスクの遮光膜102aパターンのネガ型パターンに対応する。潜像が形成された感光性ガラス100を加熱熱処理した後、露光結晶化部101a、所謂潜像が形成された領域をフッ化水素酸系溶液によりエッチング除去し、図8(b)に示した所望の貫通孔パターンを得る。
【0005】
また、特許文献2に開示されている方法は、上記特許文献1に開示の方法とレーザー加工による貫通孔形成方法とを併用する方法である。すなわち、レーザー加工法により、所望の貫通孔径よりも小さい貫通孔をあらかじめ形成し、その後、前述した紫外光照射による潜像形成、熱処理、エッチングの各工程を経て貫通孔を形成するものである。あらかじめ形成する貫通孔は、熱処理後に行われるエッチング除去の際、エッチング液の貫通孔内における循環を改善する作用をなす。
【特許文献1】特開2001−44639号公報
【特許文献2】特開2001−105398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プリント配線基板の高密度化、あるいは印刷画像の高精細化の技術潮流は留まる所を知らず、これに呼応して、微細貫通孔を有するガラス部品に対する要求は、益々強くなってきている。しかしながら、前述したように、従来の感光性ガラスに貫通孔を形成する方法は、所望の貫通孔形状、あるいは配列に対応したパターンを有するフォトマスクを用い、かつフォトリソグラフィック技術を踏襲するパターン形成法であり、貫通孔の微細化の点において、充分対応できるものではなかった。
【0007】
図6は従来のフォトマスクを用いた紫外線露光による潜像形成工程の説明図である。図6(a)は、紫外線露光により潜像が形成される様子を模式的に示した概略断面図であり、図中、符号102bはフォトマスクの開口部、81は潜像が形成される領域を示す包絡線、AA’は感光性ガラス100の表面位置を示す線、BB’、CC’は基板内部の任意の位置を示す線であり、CC’はBB’に比べてフォトマスク102からより離れた箇所に位置する。他の番号を付した部分は、前述したとおりである。なお、図6(a)はフォトマスク102と感光性ガラスとが密着した状態で露光が行われる、所謂密着露光方式の場合を示している。
【0008】
また、図6(b)から(d)は、AA’、BB’、及びCC’線に沿った方向での露光量分布を示す模式的な分布曲線であり、横軸は距離、縦軸は露光量を表す。ここで、原点Oは、フォトマスクにおける開口部102bの中心に対応する位置である。開口部を透過した紫外光(図示せず)は、感光性ガラス基板内部を進行するに従い、遮光膜102aの真下に相当する部分にまで滲みだし、結果として、遮光膜102aで覆われた部分まで露光されることになる(以下、本明細書において、光が滲みだす現象を「滲み出し効果」という)。図6(b)から図6(d)に、この様子を模式的に示す。
【0009】
図6(b)は、感光性ガラス100表面(AA’線)での露光量分布である。前述したように、フォトマスク102と感光性ガラス100とは密着していることから、表面における露光量分布は箱形関数で表される。この場合、露光量分布の幅は、開口部102bの幅に等しく、遮光膜102aの直下に対応する部分は露光されない。フォトマスクから離れたBB’位置においては、図6(c)に示したように、光の滲み出し効果により、露光量の分布幅が広がり、かつ感光性ガラス基板内の光の吸収により露光量は減衰する。この状況は、図6(d)に示すように、CC’位置においては、より顕在化する。
【0010】
図7は潜像を形成した後に加熱熱処理を経て潜像形成領域をエッチング除去した場合に形成される孔を模式的に示す図である。図7はエッチング除去後の形状を示す概略側断面図で、符号91は孔である。一般的に、エッチングは基板の表面から進行する。また、潜像が形成されていない部分のエッチング速度は、潜像が形成された領域の速度に比べて小さいが、完全に零ではなく、エッチング液によって浸食される。潜像が形成されていない部分のエッチング速度は、潜像形成部の約1/50程度である。このことから、潜像形成領域のエッチングの進行と共に、感光性ガラスの表面における平面的なエッチングも合わせて進行し、結果として、図7に示したように、貫通孔の径は、その深さ方向で分布することとなる。
【0011】
このように、従来の露光方法を適用した貫通孔形成工程においては、貫通孔の径は、フォトマスクにおける開口部の径と光の滲み出し効果の両者に依存する。勿論、フォトマスクの開口径を小さくすれば、得られる貫通孔の最小値も減少する。しかし、以下に説明するように、貫通孔径の減少と共に、その深さ方向に対する一様性は、相対的に損なわれてゆく。光の滲み出し効果は、照射する光の平行度、光の回折効果、あるいは感光性ガラス100内部における散乱等の要因によって決定される。また、これ等の要因は、フォトマスクの開口部102bの大きさ、換言すると貫通孔の径には殆ど依存しない。つまり、貫通孔径が充分大きい場合には、貫通孔径と光の滲み出し効果に起因する貫通孔径の拡大量との比率、あるいは貫通孔径と貫通孔径の一様性の欠如量との比率は小さくなる。従って、貫通孔径が充分大きい場合には、光の滲み出し効果による、これ等貫通孔径の変動は無視できる程度の値となる。しかしながら、貫通孔径の減少と共に当該比率は増加し、結果として、一様な径を有する貫通孔の形成が極めて困難となる。
【0012】
以上の通り、上述の従来の方法では、貫通孔径の減少と共に、光の回折効果により、貫通孔の深さ方向に一様な径を有する貫通孔を形成することが極めて困難となる。勿論、貫通孔の深さが浅い場合、すなわち、感光性ガラス基板の厚さが薄い場合には、容易に数μmの径を有する貫通孔を形成することができるが、この場合の基板厚さは数十μm程度になる。斯かる状況においては、貫通孔を有するガラス部品の機械的耐久性の低下は免れず、その用途は極めて限定されることになる。例えば、機械的強度が確保できる基板厚さである350μmの場合、換言すると貫通孔の深さが350μmの場合、前述した従来の方法を用いて、径が約30μm以下、アスペクト比(貫通孔の深さをその径で除した値)で云うならば約12以上で、かつ深さ方向に一様な径を有する貫通孔の形成は極めて困難となる。本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、感光性ガラス基板をその基体材料とし、高アスペクト比で、かつ径が30μm以下の一様な微細貫通孔が形成されたガラス部品及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明により提供されるガラス部品は、
貫通孔を有するガラス部品において、前記ガラス部品の基体が感光性ガラスからなり、かつ前記貫通孔の直径が貫通孔の部位によらず略一定で、貫通孔の長さ(L)と貫通孔の直径(d)との比率(L/d)が15以上であり、かつ直径(d)が30μm以下であることを特徴とする貫通孔を有するガラス部品である。
また、本発明により提供されるガラス部品は、
前記感光性ガラスは、感光性材料として、0.001〜0.05重量%のAu、0.001〜0.5重量%のAg、0.001〜1重量%のCuO、0.001〜0.1重量%のPtのうちのいずれか1種以上を含み、さらに、光増感剤としてCeOを0.001〜0.2重量%含む感光性ガラスであることを特徴とするガラス部品である。
前記ガラス部品を製造する第1の手段は、
感光性ガラス基体の貫通孔を形成する部分に集光光束を照射して潜像を形成する第1の工程、第1の工程で集光光束を照射した感光性ガラスを熱処理して潜像が形成された部分を結晶化させる第2の工程、第2の工程で結晶化した部分を溶解除去することにより貫通孔を形成する第3の工程を含むことを特徴とする貫通孔を有するガラス部品の製造方法である。
第2の手段は、第1の手段にかかる貫通孔を有するガラス部品の製造方法において、前記第1の工程で集光光束を照射する際、該集光光束のビームウェストが、前記感光性ガラスの内部に位置することを特徴とする貫通孔を有するガラス部品の製造方法である。
第3の手段は、
第1の手段にかかる貫通孔を有するガラス部品の製造方法において、前記第1の工程で集光光束を照射する際、該集光光束のビームウエストの位置が該集光光束の光軸に沿って間欠的又は連続的に前記感光性ガラス基体の内部を移動しつつ、かつ連続的又は間欠的に前記集光光束が照射されることを特徴とする貫通孔を有するガラス部品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
感光性ガラスに貫通孔を形成する方法において、光照射による潜像形成と潜像が形成された部分をエッチング除去する方法を基本とする場合、貫通孔の径、アスペクト比、あるいは径の深さ方向の一様性、と云った貫通孔形状は、潜像の形成工程とエッチング除去工程との両条件因子に依存し、場合によっては、後者の影響の方が前者に比べて大きいと考えられる。本発明者等は、前述した両因子に関し、鋭意検討した結果、微細貫通孔を形成する際、実現し得る貫通孔径の最小値を決定すると云う点において、上述した潜像形成工程の諸因子が、エッチング除去工程の諸因子に比べてより支配的であることを見出し、その結果を基に本発明を完成させるに至った。本発明により、感光性ガラスに、孔径が一様かつ微細で高アスペクト比(同比が15以上)を有する貫通孔を形成することが可能となるととともに、当該貫通孔を有する感光性ガラスを基体とするガラス部品の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の第1の実施の形態にかかる貫通孔を有するガラス部品の製造方法の説明図である。図1(a)は、露光時における光の照射状態を模式的に示した概略側断面図、図1(b)は、感光性ガラスの各部位における露光量の分布を模式的に示したものである。図中、符号21は集光光束、21aは集光光束のビームウエスト、AA’は、基板状をなした感光性ガラス100の中央部を示す線、BB’は感光性ガラス100の表面の位置を示す線、CC’は感光性ガラス100の裏面位置を示す線、22はAA’線に沿った方向での露光量分布、23は同BB’に沿った方向での同分布、E,Rは露光量分布22と23の交点における露光量と位置である。なお、図1(b)において、原点(距離が0の位置)は集光光束21の光軸とAA’もしくはBB’線との交点に相当する位置に対応し、横軸はAA’もしくはBB’線に沿った距離(原点からの距離)、縦軸は露光量を示す。
【0016】
本実施の形態と上述の従来技術との重要な相違点は、露光時にフォトマスクを用いず、かつコリメートされた光束を用いずに、レンズ等の光学系により集束された集光光束21を用いている点にある。一般的に集光光束による露光量分布は、ガウス分布によって近似される。図1で符号22で示したように、ビームウェスト21aの位置(AA’線に対応)における分布が最も先鋭であり、露光量のピーク値も最大となる。一方、ビームウェスト21aの位置から離れた箇所、例えば、基板表面BB’線に対応する位置では、図1(b)中符号23で示したような形となり、分布幅は拡大し、かつ露光量のピーク値も低下する。
【0017】
また、露光量の分布は、ビームウェスト位置を対称中心とする点対称の関係にあり、例えば、CC’線に沿った露光量の分布は、BB’線に沿った分布に等しい。図2は図1の集光光束21による露光量Eを感光性ガラス100の潜像形成に必要な露光臨界値に設定した場合に形成される潜像及びこの潜像に基づいて形成される貫通孔の説明図である。ここで、図2aは、露光後の潜像が形成された状態、図2(b)は潜像をエッチング除去した後の状態を示す。図において、符号31aは潜像形成領域、31は形成された貫通孔である。
【0018】
図1(b)に示したように、露光量がEとなる位置は、AA’線に沿った感光性ガラスの内部中心部、BB’線に沿った基板表面部及びCC’線に沿った感光性ガラスの裏面部において、いずれも位置Rである。このことから、図2(a)に示したように、感光性ガラス100の厚さ方向に一様な半径Rを有する円柱状の潜像領域31aが形成される。斯かる状態の感光性ガラス100を加熱熱処理後、エッチングを施すことにより、図2(b)にしたような断面形状を有する貫通孔31が形成される。なお、感光性ガラス100の表裏面近傍で、貫通孔31の径が拡大している原因は、前述したように、潜像が形成されていない領域においても、潜像形成領域のエッチングの進行と共に、感光性ガラス100の表面における平面的なエッチングも合わせて進行するためである。
【0019】
この場合、孔径が拡大した部分については、研削もしくはラップ法等の機械加工法、又はイオンミリング法もしくはRIE(Reactive Ion Etching)法等のドライエッチング法等により除去すれば、一様な貫通孔径を有するガラス基板を得ることができる。また、この場合、厳密には、基板内部の全ての位置での露光量分布が一点で交わることはない。例えば、図1(a)において、AA’線とBB’線との間に位置する部位での露光量分布は、図1(b)における露光量分布22と23との中間の形状を示す分布となり、この分布と露光量分布22と23との交点は、露光量Eにおいて距離Rとはならず、異なった値となる。しかし、距離Rとのずれ量は僅少であり、ほぼ図2(b)に示したように、一様な径を有する円柱状の潜像が形成される。
【0020】
図3は本発明の第2の実施の形態にかかる貫通孔を有するガラス部品の製造方法の説明図である。図3aは、露光時における光の照射状態を模式的に示した概略側断面図、図3bは、感光性ガラスの各部位における露光量の分布を複式的に示したものである。図中DD’は感光性ガラス100の表面から感光性ガラスの厚さの1/4に相当する位置を示す線、EE’は感光性ガラス100の表面から感光性ガラスの厚さの3/4に相当する位置を示す線、24はDD‘線に沿った露光量分布、41aは潜像形成領域、E2は露光量分布24のピーク値、R2は露光量分布22において露光量がE2となる位置である。
【0021】
また、集光光束21のビームウェスト21aは、AA’線上に位置している。潜像形成領域41aは、E2を感光性ガラス100において潜像を形成するための臨界露光量と一致する値に設定し、かつ露光量E2で露光した場合に得られる潜像である。この場合、形成される潜像形成領域41aの形状は略回転楕円体形状であり、その短径はR2に一致する。さらに、このR2は、第1の実施の形態におけるRに比べて小さい。しかしながら、この潜像の状態では、基板の表裏面に連通する孔である貫通孔を形成することはできない。
【0022】
そこで、感光性ガラスの露光を以下に説明する2段階のプロセスにて行うことが有効となる。図4は2段階露光プロセスの説明図であり、図5は2段階露光によって形成された潜像を示す図である。図中、符号51、51a,51bは、潜像形成領域である。図4aは、集光光束21のビームウエスト21aをDD’線上に位置するように設定して露光した場合、図4bは、同ビームウェスト21aをEE’線上に位置するように設定して露光した場合を模式的に示している。なお、露光量は前述した場合と同様、E2である。すなわち、2段階露光プロセスとは、第1段目の露光プロセスで、図4aに示したように、感光性ガラス100の表面側から中央部にかけて潜像51を形成し、これに引き続き、図4bに示したように、第2段目の露光プロセスで、感光性ガラス100の中央部から底面にかけて潜像51bを形成するものである。
【0023】
以上説明した2段階露光プロセスを経ることにより、図5に示すように、感光性ガラス表面から底面にかけて連続した潜像形成領域を得ることができる,感光性ガラス100を、第1の実施形態と同様、熱処理を施し、潜像形成領域をエッチング除去することにより、第1の実施形態に比べて、小さい径を有する貫通孔を形成することができる。なお、本第2の実施形態については、2段階の露光プロセスについて説明したが、2段階にとらわれることなく、2段階以上の露光プロセスでも可能である。すなわち多段階の露光プロセスにおいては、その照射露光量に応じて、集光光束のビーム位置を、光軸に沿った基板内部の任意の位置に設定することが可能であり、かつ必要な場合には、ビームウエストの位置を基板外部にも設定することが可能である。また、ビームウェスト位置を変化させる方法についても、間欠的あるいは連続的に変化させることが可能である。
【0024】
また、本発明の実施形態において、レーザー光あるいは通常の紫外光のいずれも光源として用いることができる。以下、本発明について実施例に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
この実施例は、上述の実施の形態1の実施例である。感光性ガラス100として下記の組成を有し、かつ厚さが0.5mmのガラス基板(商品名:HOYA株式会社製PEG3)を用いた。
SiO:78.0重量%
LiO:10.0重量%
AI:6.0重量%
O:4.0重量%
NaO:1.0重量%
ZnO:1.0重量%
Au:0.003重量%
Ag:0.08重量%
CeO:0.08重量%
【0025】
用いた光源は、波長が355nmのYAGレーザーの3倍高調波であり、当該光を用いて感光性ガラス基板を露光するに際しては、集光光束のNAを0.4とした、また、露光に際しては、パルス光(パルス幅:約6nsec)を用い、パルス照射回数を制御することにより積算の露光量を制御した。なお、集光光束のビームウェストは、感光性ガラスの内部中央部(基板表面から0.25mmの位置)に位置するように設定した。以下に示す所定の積算光量で露光した後、感光性ガラス基板全体を、580℃で4時間熱処理した。
この際の昇温速度は1℃/分で、降温速度は0.2℃/分である。熱処理後、エッチング液として希フッ化水素酸水溶液(約7%)を用い、当該エッチング液を感光性ガラス基板の表裏にスプレーすることにより貫通孔を形成した。
【0026】
この際、エッチング液の温度は、特に制御しなかった。表1に、積算露光量と感光性ガラスの基板中央部近傍における貫通孔径及びアスペクト比との関係を示す。なお、本実施例において形成された貫通孔の形状は、図2bに示した形状と同様、基板表裏面近傍の孔径は、基板中央部近傍に比べて大きくなっており、かつ一様な貫通孔径が得られる部分は、基板表裏面から約75μm内側に入った部分からであった。この原因は、前述したように、潜像が形成されていない領域においても、潜像形成領域のエッチングの進行と共に、感光性ガラスの表面における平面的なエッチングも進行するためである。
【0027】
従って、表1に示したアスペクト比は、基板の厚さを0.35mmとして算出したものである。同表に示したように、積算露光量の増大に伴い、貫通孔径は拡大している。これは、積算露光量の増大と共に、潜像が形成される領域が拡大したことに起因するものである。
【表1】

【実施例2】
【0028】
この実施例は、上述の実施の形態2にかかる実施例である。本実施例における貫通孔の形成条件は、露光プロセスを除いて実施例1に記載した条件と同様である。本実施例においては、感光性ガラス基板の露光を第1及び第2の露光プロセスに分けて行った。第1の露光プロセスにおいては、図に示したように、集光光束のビームウエストの位置を感光性ガラス基板の表面から基板厚さの1/4の位置に設定して露光し、第2の露光プロセスでは、図4bに示したように、同位置を感光性ガラス基板の表面から基板厚さの3/4の位置に設定して露光した。なお、第1及び第2の積算露光量等の露光条件は同一である。表2に、積算露光量と感光性ガラス基板中央部における貫通孔径及びアスペクト比との関係を示す。アスペクト比の求め方は、実施例1と同様である。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、一様かつ微細な径の貫通孔を有するガラス部品及びその製造方法に関するものであり、プリント配線基板、インクジェットプリント用ヘッド、あるいはガスフローメーター用の部品等として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる貫通孔を有するガラス部品の製造方法の説明図である。
【図2】図1の集光光束21による露光量Eを感光性ガラス100の潜像形成に必要な露光臨界値に設定した場合に形成される潜像及びこの潜像に基づいて形成される貫通孔の説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態にかかる貫通孔を有するガラス部品の製造方法の説明図である。
【図4】2段階露光プロセスの説明図である。
【図5】2段階露光プロセスの説明図である。
【図6】従来のフォトマスクを用いた紫外線露光による潜像形成工程の説明図である。
【図7】潜像を形成した後に加熱熱処理を経て潜像形成領域をエッチング除去した場合に形成される孔を模式的に示す図である。
【図8】特許文献1に開示の貫通孔を有するガラス部品の製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0031】
100 感光性ガラス
21 集光光束
21a ビームウエスト
22 AA’線に沿った光量分布
23 BB’線に沿った光量分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するガラス部品において、前記ガラス部品の基体が感光性ガラスからなり、かつ前記貫通孔の直径が貫通孔の部位によらず略一定で、貫通孔の長さ(L)と貫通孔の直径(d)との比率(L/d)が15以上であり、かつ直径(d)が30μm以下であることを特徴とする貫通孔を有するガラス部品。
【請求項2】
前記感光性ガラスは、主成分として、SiOを55〜85重量%、Alを2〜20重量%、LiOを5〜15重量%含み、かつ、SiO+Al+LiO>85重量%であり、また、感光性材料として、0.001〜0.05重量%のAu、0.001〜0.5重量%のAg、0.001〜1重量%のCuO、0.001〜0.1重量%のPtのうちのいずれか1種以上を含み、さらに、光増感剤としてCeOを0.001〜0.2重量%含むことを特徴とする請求項1記載の貫通孔を有するガラス部品。
【請求項3】
請求項1又は2記載の貫通孔を有するガラス部品の製造方法であって、感光性ガラス基体の貫通孔を形成する部分に集光光束を照射して潜像を形成する第1の工程、第1の工程で集光光束を照射した感光性ガラスを熱処理して潜像が形成された部分を結晶化させる第2の工程、第2の工程で結晶化した部分を溶解除去することにより貫通孔を形成する第3の工程を含むことを特徴とする貫通孔を有するガラス部品の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の貫通孔を有するガラス部品の製造方法において、前記第1の工程で集光光束を照射する際、該集光光束のビームウェストが、前記感光性ガラスの内部に位置することを特徴とする貫通孔を有するガラス部品の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載の貫通孔を有するガラス部品の製造方法において、前記第1の工程で集光光束を照射する際、該集光光束のビームウエストの位置を該集光光束の光軸に沿って間欠的又は連続的に前記感光性ガラス基体の内部を移動させることによって連続的又は間欠的に前記集光光束が照射されるようにしたことを特徴とする貫通孔を有するガラス部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/033033
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514386(P2005−514386)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013508
【国際出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】