説明

貫通電極の製造方法および構造

【課題】 導通不良や絶縁不良の発生を抑制し、簡易で信頼性の高い貫通電極の製造方法および構造を提供する。
【解決手段】 前記課題は、貫通電極用の孔3内に導電体5が充填された半導体基板1を用意し、前記半導体基板1を加工して前記半導体基板1の半導体および前記孔3内の導電体5を同一面内に露呈させる工程と、前記導電体5の露呈部5a直上に保護部材8を形成したのち、前記半導体の露呈部1bおよび保護部材8を覆うように絶縁膜6を形成する工程と、前記保護部材8を、該保護部材8上に形成された絶縁膜6と一緒に除去する工程とを備える貫通電極10の製造方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路(IC)やメモリ等を積層する高密度3次元実装および配線に関し、特に、シリコン基板などの半導体基板の表裏をつなぐ貫通電極の製造方法および構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板の表面側と裏面側との間で電気的な接続を行うため、貫通電極が設けられている(例えば特許文献1〜5参照)。
従来の貫通電極の製造方法としては、例えば、図2、図4、図5に示す手順が用いられている。この製造方法では、まず、図2(a)に示すように、シリコンウエハなどの半導体基板1の上にブラインドビアホールのマスク用の保護層2を形成する。
次に、図2(b)に示すように半導体基板1にブラインドビアホール3を形成したのち、保護層2を除去する。
次に、図2(c)に示すように、ブラインドビアホール3の内壁および半導体基板1の表面1aに絶縁層4を形成する。
【0003】
次に、図2(d)、図4(a)、図5(a)に示すように、絶縁層4が形成されたブラインドビアホール3内に導電体5(金属)を充填する。
次に、図2(e)、図4(b)に示すように、半導体基板1のブラインドビアホール3が開口した側の面1aとは反対側から研磨を行い、導電体5を半導体基板1の裏面1bに露出させる。また、研磨のあと、図5(b)に示すように、半導体基板1の裏面1bで導電体5以外の半導体(シリコン)をエッチングによってわずかに(数μm程度)除去し、導電体5を裏面1bから突出させてもよい。
次に、図4(c)、図5(c)に示すように、半導体基板1の裏面1bに絶縁膜6を形成したのち、図4(d)、図5(d)に示すように、孔3内の導電体5に対応する部分の絶縁膜6をエッチングや研磨により除去する。
【特許文献1】特開2004−221338号公報
【特許文献2】特開2003−297917号公報
【特許文献3】特開2003−273155号公報
【特許文献4】特開2004−221349号公報
【特許文献5】特開2004−221357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電体5上の絶縁膜6をエッチングで除去する場合、フォトリソグラフィーのアライメント精度により、コンタクトホール7は導電体5よりも内側に形成され、コンタクトホール7の内径は導電体5の直径よりも小さくなりやすい。このとき、絶縁膜6(特にシリコン酸化膜)は導電体5(金属)との密着が悪いため、導電体5上に残された絶縁膜6は構造的に不安定になる。
コンタクトホール7をウエットエッチングで形成する場合、エッチング液が導電体5と絶縁膜6との界面に侵入し、絶縁膜6を異常に(過度に)エッチングすると、絶縁不良の原因となる。
また、ドライエッチングでは、絶縁膜6を完全に除去することは困難であり、コンタクトホール7となる部分に絶縁膜6が残ると、導通不良を引き起こす。
【0005】
導電体5上の絶縁膜6を研磨で除去する場合、導電体5上の絶縁膜6のみを半導体基板1の面内で均一に除去することは困難である。このため、導電体5上への絶縁膜6の残りによる導通不良や、導電体5上以外の絶縁膜6まで研磨してしまうことによる絶縁不良の心配がある。
【0006】
また、絶縁膜6上に配線(図示略)を形成して貫通電極となる導電体5と導通させるとき、図4(d)に示すように、コンタクトホール7の周囲の絶縁膜6の厚みが大きかったり、図5(d)に示すように、導電体5が絶縁膜6から突出している場合、導電体5と絶縁膜6との間の段差により、導通不良となるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導通不良や絶縁不良の発生を抑制し、簡易で信頼性の高い貫通電極の製造方法および構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、貫通電極用の孔内に導電体が充填された半導体基板を用意し、前記半導体基板を加工して前記半導体基板の半導体および前記孔内の導電体を同一面内に露呈させる工程と、前記導電体の露呈部直上に保護部材を形成したのち、前記半導体の露呈部および保護部材を覆うように絶縁膜を形成する工程と、前記保護部材を、該保護部材上に形成された絶縁膜と一緒に除去する工程とを備えることを特徴とする貫通電極の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の貫通電極の製造方法において、前記保護部材は、逆テーパー状になっていることが好ましい。
前記保護部材は、フォトレジストによって形成することが好ましい。
前記貫通電極用の孔内に導電体が充填された半導体基板を用意する工程は、半導体基板に孔を形成する工程と、前記孔の内面に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層が形成された孔内に導電体を充填する工程とを備えた方法によって行うこともできる。
【0010】
また、本発明は、貫通電極用の孔内に導電体が充填され、前記半導体基板の半導体および前記孔内の導電体が同一面内にあり、前記半導体の上に形成された絶縁膜が前記孔と整合する位置で開口して前記導電体が露呈されている貫通電極の構造であって、前記絶縁膜の厚みが、前記孔と整合する開口部の周縁に向かって薄くなっていることを特徴とする貫通電極の構造を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の貫通電極の製造方法によれば、貫通電極となる導電体上へのコンタクトホールの形成を従来に比べて簡単なプロセスによって実現することができ、導電体上への絶縁膜の残りによる導通不良や、導電体上以外の絶縁膜まで研磨してしまうことによる絶縁不良を低減することができる。
本発明の貫通電極の構造によれば、導電体と絶縁膜との間の段差が小さくなり、絶縁膜上に形成される配線が貫通電極の導電体とスムーズに接続され、断線が起こりにくい構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、最良の形態に基づき、図1、図2を参照して本発明の貫通電極の製造方法の1形態例を説明する。
本発明において、貫通電極用の孔3内に導電体5が充填された半導体基板1の詳細な構成や作製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図2に例示した作製方法を用いることができる。
この作製方法では、まず、図2(a)に示すように、シリコンウエハなどの半導体基板1の一方の面1a上に、ブラインドビアホールのマスク用の保護層2を形成する。保護層2には、ブラインドビアホール3が形成される部分に対応した穴2aを設ける。
半導体基板1の厚さは例えば300〜700μm程度である。
【0013】
次に、図2(b)に示すように半導体基板1の一方の面1aから孔(ブラインドビアホール)3を形成する。ブラインドビアホール3の深さは、例えば200〜400μm程度である。孔3を形成したあと、不要になった保護層2は除去する。
ブラインドビアホール3の形成方法の一例を示すならば、厚さ525μmのシリコン基板1を用いてドライエッチングにより直径が100μm、深さが350μm程度の微細孔を形成する。
微細孔の形成方法としては、ドライエッチングの他にも、水酸化カリウム(KOH)などを用いたウェットエッチング、マイクロドリルを用いた機械加工なども適用することが可能である。
【0014】
次に、図2(c)に示すように、熱酸化処理によってブラインドビアホール3の内壁および半導体基板1の一方の面1aに、酸化シリコンからなる絶縁層4を形成する。
なお、絶縁層4を形成する方法としては、熱酸化処理のほかにも、プラズマCVD法により酸化シリコンを形成する方法もある。
【0015】
次に、図2(d)に示すように、溶融金属吸引法によってブラインドビアホール3内に導電体5(金属)を充填する。
導電体5として用いられる金属としては、例えば、錫(Sn)やインジウム(In)などの金属、適宜の組成の金−錫(Au−Sn)合金系、錫−鉛(Sn−Pb)合金系、錫(Sn)基、鉛(Pb)基、金(Au)基、インジウム(In)基、アルミニウム(Al)基などのハンダを使用することができる。
【0016】
溶融金属吸引法による金属の充填は、例えば、下記の手順によって行うことができる。まず、導電性物質である金−錫合金(Au(80質量%)−Sn(20質量%))を溶融状態で貯留した溶融金属槽と、孔3が形成された半導体基板1とを減圧チャンバーに収容し、この減圧チャンバー内を減圧する。減圧状態を保ったまま、孔3が開口した面1aを上側として半導体基板1を溶融金属槽の溶融金属中に浸漬する。次いで減圧チャンバー内を加圧することによって、半導体基板1に形成された孔3内に溶融金属を充填させることができる。充填後、半導体基板1を溶融金属槽から引き上げ、溶融金属を冷却固化する。
なお、孔3内に導電体5を充填する方法としては、溶融金属吸引法のほかにも、めっき法、真空印刷法なども適用可能である。
【0017】
次に、図2(e)に示すように、半導体基板1のブラインドビアホール3が開口した側の面1aとは反対側から半導体基板1の研磨を行い、導電体5が露呈するまで半導体基板1の半導体および導電体5を除去する。そして、図1(a)に示すように、半導体基板1の半導体および孔3内の導電体5を同一面内に露呈させる。
この研磨工程により、ブラインドビアホール3は、半導体基板1の両面1a,1bに貫通した貫通孔となる。
なお、半導体基板1の半導体および孔3内の導電体5を同一面内に露呈させる工程は、研磨のみで行う方法に限定されるものではなく、エッチングなどの他の方法を用いたり、研磨と併用したりする方法を適用してもよい。
導電体5が充填された孔3は、ブラインドビアホールに限定されるものではなく、半導体基板1の両面に貫通した貫通孔に導電体5を充填し、その後、半導体基板1の半導体および孔3内の導電体5を同一面内に露呈させる加工を行ってもよい。
【0018】
次に、図1(b)に示すように、導電体5の露呈部5a直上に保護部材8を形成する。
保護部材8の面積は、後工程において形成される絶縁膜6が孔3内の絶縁層4とつながるようにするため、絶縁層4の直上には及ばないようにする。
保護部材8の厚みは、上に形成する絶縁膜6(図1(c)参照)の厚さよりも大きいものとする。これにより、半導体の露呈部1b上に形成された絶縁膜6と、保護部材8上に形成された絶縁膜6とがつながらず、保護部材8が絶縁膜6の隙間9から露出される。
保護部材8は、導電体5の露呈部5aに接した面8aよりも、その反対側の面8b(図1(c)において上に絶縁膜6が形成される面)の方が面積が大きい、逆テーパー状になっていることが好ましい。これにより、絶縁膜6の隙間9をより広く確保することができ、後工程における保護部材8の除去が容易になる。
保護部材8としては、絶縁膜6の形成後に除去可能であればいずれの材料も適用可能である。なかでもフォトレジストは、逆テーパー状の形状を容易に形成できるので好ましい。
【0019】
次に、図1(c)に示すように、半導体基板1の裏面に、半導体の露呈部1bおよび保護部材8を覆うように絶縁膜6を形成する。
絶縁膜6を形成する方法としては、例えば、テトラエトキシシランを原料としてプラズマCVD法により、厚さ1〜2μm程度のシリコン酸化膜(SiOの膜)を形成する方法が好ましいが、このほか、スパッタ法によりシリコン酸化膜を形成する方法、絶縁樹脂をコーティングする方法などを用いることも可能である。
【0020】
保護部材8によって導電体5の露呈部5aを覆っているので、絶縁膜6の厚みは、孔3と整合する開口部7の周縁7aに向かって薄くなる構造を形成することができる。
絶縁膜6の厚さは、絶縁耐圧や機械的強度等の点で、最も薄い箇所でも0.3μm以上とするのが望ましい。絶縁膜6の最大の厚さは、半導体との熱膨張係数の差による反りやコスト増大などの問題を避けるため、5μm以下が好ましい。
【0021】
次に、図1(d)に示すように、保護部材8を、該保護部材8上に形成された絶縁膜6と一緒に除去する。保護部材8の除去は、例えば保護部材8がフォトレジストである場合、洗浄液によって溶解する方法を用いることができる。
導電体5に接して設けられた保護部材8を除去すると、該保護部材8上に形成された絶縁膜6も一緒に除去される(すなわちリフトオフ)。
以上の工程により、半導体基板1の裏面1bに絶縁膜6が形成され、導電体5上にコンタクトホール7が形成された貫通電極10が形成される。
【0022】
本発明の貫通電極の製造方法によれば、導電体5上にコンタクトホール7を形成する工程を従来に比べて簡単なプロセスによって実現することができ、導電体5上への絶縁膜6の残りによる導通不良や、導電体上以外の絶縁膜6まで研磨してしまうことによる絶縁不良を低減することができる。従って、製造コストの削減や歩留まりの向上が期待できる。
導電体5上にコンタクトホール7を形成する工程中、絶縁膜6をエッチングするエッチング液を使用することがないので、絶縁膜6の過剰なエッチングによる絶縁不良や絶縁膜6の不完全なエッチングによる導通不良を防止することができる。
また、導電体5上にコンタクトホール7を形成する工程中、絶縁膜6を除去する研磨が必要ないので、工程を簡略化し、コストを低減する効果が大きい。
【0023】
本形態例の貫通電極10によれば、絶縁膜6の厚みは、孔3と整合する開口部7の周縁7aに向かって薄くなっているので、導電体5と絶縁膜6との間の段差が小さい。このため、図3に示すように、半導体基板1の裏面側の絶縁膜6上に配線11を形成して貫通電極10の導電体5と導通させるとき、絶縁膜6上に形成される配線11が貫通電極10の導電体5とスムーズに接続されるため、断線が起こりにくい構造となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、集積回路(IC)やメモリ等を積層する高密度3次元実装および配線等に用いられる貫通電極に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)〜(d) 本発明の貫通電極の製造方法を説明する断面工程図である。
【図2】(a)〜(e) 本発明の貫通電極の製造方法を説明する断面工程図である。
【図3】本発明の貫通電極を配線と接続した状態を説明する断面図である。
【図4】(a)〜(d) 従来の貫通電極の製造方法を説明する断面工程図である。
【図5】(a)〜(d) 従来の貫通電極の製造方法を説明する断面工程図である。
【符号の説明】
【0026】
1…半導体基板、1b…半導体の露呈部、3…貫通電極用の孔(ブラインドビアホール)、4…絶縁層、5…導電体、5a…導電体の露呈部、6…絶縁膜、7…絶縁膜の開口部(コンタクトホール)、7a…周縁、8…保護部材、10…貫通電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通電極用の孔内に導電体が充填された半導体基板を用意し、前記半導体基板を加工して前記半導体基板の半導体および前記孔内の導電体を同一面内に露呈させる工程と、
前記導電体の露呈部直上に保護部材を形成したのち、前記半導体の露呈部および保護部材を覆うように絶縁膜を形成する工程と、
前記保護部材を、該保護部材上に形成された絶縁膜と一緒に除去する工程と
を備えることを特徴とする貫通電極の製造方法。
【請求項2】
前記保護部材は、逆テーパー状になっていることを特徴とする請求項1に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項3】
前記保護部材は、フォトレジストによって形成することを特徴とする請求項1または2に記載の貫通電極の製造方法。
【請求項4】
前記貫通電極用の孔内に導電体が充填された半導体基板を用意する工程は、
半導体基板に孔を形成する工程と、
前記孔の内面に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層が形成された孔内に導電体を充填する工程と
を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の貫通電極の製造方法。
【請求項5】
貫通電極用の孔内に導電体が充填され、前記半導体基板の半導体および前記孔内の導電体が同一面内にあり、前記半導体の上に形成された絶縁膜が前記孔と整合する位置で開口して前記導電体が露呈されている貫通電極の構造であって、
前記絶縁膜の厚みが、前記孔と整合する開口部の周縁に向かって薄くなっていることを特徴とする貫通電極の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−216747(P2006−216747A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27373(P2005−27373)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】