説明

貫通電極基板

【課題】 貫通電極を細くすると、基板に形成した貫通孔を金属材料で埋め込むことが困難になる。また、体積の大きな金属部材が基板内に埋め込まれると、熱膨張係数の差に起因して、機械的な破壊が生じやすくなる。
【解決手段】 基板の第1の表面に、第1の導電膜を含む積層膜が形成されている。基板の、第1の表面とは反対側の第2の表面から内部に向かって、第1の表面までは達しない凹部が形成されている。凹部の底面から第1の表面まで達する貫通孔が形成されている。この貫通孔は、凹部よりも細い。貫通孔内に第2の導電膜が埋め込まれている。第2の導電膜は、第1の導電膜に接続され、凹部の側面及び底面を覆うが、凹部を完全には埋め尽くしていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の一方の表面から他方の表面まで貫通する電極を有する貫通電極基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの集積化は、2次元から3次元に移行している。積層された複数の半導体チップを電気的に接続するために、半導体基板を貫通する貫通電極が形成される。素子形成面側の一部を、背面側の部分より細くした貫通電極が公知である。素子形成面側一部を細くすることにより、貫通電極近傍の配線の集積度を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−294577号公報
【特許文献2】特開2008−21739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貫通電極は、半導体基板に形成される素子や配線等に比べて、大きな体積を有する。このため、貫通電極を形成する金属材料の使用量が多くなり、材料のコストが上昇してしまう。貫通電極を細くすると、基板に形成した貫通孔を金属材料で埋め込むことが困難になる。また、体積の大きな金属部材が基板内に埋め込まれると、熱膨張係数の差に起因して、機械的な破壊が生じやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によると、
基板と、
前記基板の第1の表面に形成され、第1の導電膜を含む積層膜と、
前記基板の、前記第1の表面とは反対側の第2の表面から内部に向かって形成され、前記第1の表面までは達しない凹部と、
前記凹部の底面から前記第1の表面まで達し、前記凹部よりも細い貫通孔と、
前記貫通孔内に埋め込まれて前記第1の導電膜に接続され、前記凹部の側面及び底面を覆うが、前記凹部を完全には埋め尽くしていない第2の導電膜と
を有する貫通電極基板が提供される。
【発明の効果】
【0006】
貫通孔を凹部より細くすることにより、第2の導電膜、基板、及び積層膜の熱膨張係数の差に起因する応力により生じる積層膜の変形を小さくすることができる。凹部を形成しておくことにより、太さが均一な貫通孔を形成する場合に比べて、貫通孔のアスペクト比を小さくすることができる。これにより、第2の導電膜の充填を容易に行うことができる。また、凹部が第2の導電膜で完全には埋め尽くされていないため、第2の導電膜の材料の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(1A)は実施例による貫通電極基板の断面図であり、(1B)及び(1C)は、それぞれ(1A)の一点鎖線1B−1B、1C−1Cにおける断面図である。
【図2−1】(2A)〜(2B)は、実施例による貫通電極基板の、製造途中段階における断面図である。
【図2−2】(2C)〜(2D)は、実施例による貫通電極基板の、製造途中段階における断面図である。
【図2−3】(2E)〜(2F)は、実施例による貫通電極基板の、製造途中段階における断面図である。
【図2−4】(2G)〜(2H)は、実施例による貫通電極基板の、製造途中段階における断面図である。
【図2−5】(2I)〜(2J)は、実施例による貫通電極基板の、製造途中段階における断面図である。
【図2−6】(2K)〜(2M)は、実施例による貫通電極基板の、製造途中段階における断面図である。
【図3−1】(3A)〜(3D)は、評価実験の対象となる試料A〜Dの断面図である。
【図3−2】(3E)〜(3G)は、評価実験の対象となる試料E〜Gの断面図であり、(3Ga)は、試料Gの貫通孔部分の平断面図である。
【図4】(4A)は、変形量の定義を表した試料の断面図であり、(4B)は、評価結果を示すグラフである。
【図5】実施例の変形例による貫通電極基板の断面図である。
【図6】実施例の他の変形例による貫通電極基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1Aに、実施例による貫通電極基板の部分断面図を示す。この貫通電極基板は、例えばCMOS−LSI、半導体メモリ、センサ素子、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)素子等に適用される。
【0009】
シリコン等の半導体の基板10の表面に、素子分離絶縁膜11が形成されている。素子分離絶縁膜11により画定された活性領域にトランジスタ13が形成されている。素子分離絶縁膜11の表面を、基板10の「第1の表面10A」ということとする。基板10の第1の表面10Aとは反対側の表面を、「第2の表面10B」ということとする。
【0010】
基板10の第1の表面10Aの上に、多層の配線を含む積層膜14が形成されている。積層膜14は、第1の表面10Aの上に直接配置された第1の導電膜(ランド)18を含む。積層膜14の上に電極パッド15及び保護膜16が形成されている。電極パッド15は、保護膜16に形成された開口内に露出している。
【0011】
基板10の第2の表面10Bから基板10の内部に向かって、凹部20が形成されている。凹部20は、第1の表面10Aまでは達しない。凹部20の底面から第1の表面10Aまで達する少なくとも1つの貫通孔21が形成されている。貫通孔21は、凹部20よりも細い。
【0012】
基板10の第2の表面10B、凹部20の側面及び底面、貫通孔21の側面が、酸化シリコン等の絶縁膜25で覆われている。第2の導電膜28が、貫通孔21内に充填され、さらに凹部20の側面及び底面を覆っている。ただし、凹部20は、第2の導電膜28で完全には埋め尽くされていない。第2の導電膜28は、第1の導電膜18に電気的に接続されている。第2の導電膜28の表面形状は、凹部20の側面及び底面の形状を反映している。さらに、第2の導電膜28は、凹部20の開口部の縁に接する第2の表面10Bの一部の領域を覆う。第2の表面10Bの上の第2の導電膜28が、ランド28Aを構成する。
【0013】
第2の導電膜28は、シード層26と、シード層26を覆うめっき膜27とを含む。シード層26は、めっき膜27を形成するための電解めっき時に電極として用いられる。シード層26及びめっき膜27には、銅または銅合金が用いられる。
【0014】
絶縁膜25及び第2の導電膜28の上に、保護膜40が形成されている。保護膜40に、ランド28Aを露出させる開口が形成されている。この開口内に露出したランド28Aの上に、バンプ41が配置されている。保護膜40の表面形状も、凹部20の側面及び底面の形状を反映している。
【0015】
図1Bに、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図を示す。図1Bの一点鎖線1A−1Aにおける断面図が図1Aに相当する。平面形状がほぼ円形の凹部20の側面に、絶縁膜25、シード層26、めっき膜27、及び保護膜40が、この順番に積層されている。保護膜40の内側には空洞が残っている。
【0016】
図1Cに、図1Aの一点鎖線1C−1Cにおける断面図を示す。図1Cの一点鎖線1A−1Aにおける断面図が図1Aに相当する。凹部20の底面に、少なくとも1つの貫通孔21が配置されている。図1Cでは、5個の貫通孔21が配置された例を示している。貫通孔21の側面にシード層26が形成されており、残りの部分が、めっき膜27で埋め尽くされている。
【0017】
次に、図2A〜図2Mを参照して、上記実施例による貫通電極基板の製造方法について説明する。
【0018】
図2Aに示すように、基板10の表面に、素子分離絶縁膜11及びトランジスタ13を形成する。素子分離絶縁膜11の表面(基板10の第1の表面10A)の上に、多層の配線を含む積層膜14、電極パッド15、及び保護膜16を形成する。積層膜14は、素子分離絶縁膜11の上に直接形成された第1の導電膜18を含む。保護膜16をグラスハンドルウエハ30に対向させ、例えば有機系仮接着剤を用いて、基板10をグラスハンドルウエハ30に接着する。
【0019】
図2Bに示すように、基板10を、その第2の表面10B(背面)から研削することにより、基板10の厚さを例えば200μmまで薄くする。
【0020】
図2Cに示すように、基板10の第2の表面10Bに、フォトレジスト膜31を形成する。フォトレジスト膜31を、露光及び現像することにより、開口31Aを形成する。開口31Aは、凹部20(図1A)に対応する平面形状を有する。開口31Aの直径は、例えば200μmとする。
【0021】
図2Dに示すように、レジスト膜31をエッチングマスクとして、基板10をエッチングすることにより、凹部20を形成する。基板10がシリコンである場合には、例えば基板10のエッチングに、SFとCとを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を適用することができる。シリコンのエッチングレートは、例えば20μm/分であり、エッチング時間を制御することにより、凹部20の深さを調節することができる。凹部20の深さは、例えば150μmとする。凹部20を形成した後、レジスト膜31を除去する。
【0022】
図2Eに示すように、基板10の第2の表面10B、及び凹部20の側面及び底面に、フォトレジスト膜33を形成する。フォトレジスト膜33の形成には、例えばナノスプレーコーティングが適用される。フォトレジスト膜33を露光及び現像することにより、凹部20の底面内に、例えば5個の開口33Aを形成する。図2Eに示した断面内には、2個の開口33Aが現れている。開口33Aの各々の直径は、例えば50μmとする。
【0023】
図2Fに示すように、フォトレジスト膜33をエッチングマスクとして、基板10をエッチングすることにより、第1の表面10Aまで達し、基板10を貫通する貫通孔21を形成する。このエッチング条件は、凹部20を形成するときのエッチング条件と同一である。貫通孔21の底面に、第1の導電膜18が露出する。貫通孔21を形成した後、フォトレジスト膜33を除去し、基板洗浄を行う。
【0024】
図2Gに示すように、基板10の第2の表面10B、凹部20の側面及び底面、及び貫通孔21の側面及び底面に、絶縁膜25を形成する。絶縁膜25には、例えば酸化シリコン等が用いられる。絶縁膜25の形成には、例えば化学気相成長(CVD)を適用することができる。貫通孔21の底面、すなわち第1の導電膜18の表面に堆積した絶縁膜25は、凹部20の底面や第2の表面10Bに堆積した絶縁膜25よりも薄くなる。
【0025】
図2Hに示すように、貫通孔21の底面、すなわち第1の導電膜18の上に堆積している絶縁膜25を、異方性エッチングにより除去する。この異方性エッチングには、例えばエッチングガスとしてCを用いたRIEが適用される。このエッチングにより、貫通孔21の底面に、第1の導電膜18が露出する。
【0026】
第2の表面10B及び凹部20の底面に堆積している絶縁膜25は、貫通孔21の底面に堆積している絶縁膜25より厚いため、第2の表面10B及び凹部20の底面には、絶縁膜25が残る。また、異方性エッチングを用いているため、凹部20の側面及び貫通孔21の側面にも、絶縁膜25が残る。
【0027】
図2Iに示すように、絶縁膜25の上、及び貫通孔21の底面に露出した第1の導電膜18の上に、Tiからなるライナー(図示せず)、及びCuからなるシード層26を形成する。ライナーの厚さは、例えば20nmとし、シード層26の厚さは、例えば100nmとする。ライナー及びシード層26の成膜には、例えばスパッタリングが適用される。
【0028】
シード層26の上に、フォトレジスト膜35を形成する。フォトレジスト膜35の形成には、例えばスプレーコーティング法を適用することができる。フォトレジスト膜35を、露光及び現像することにより、開口35Aを形成する。開口35Aは、形成すべきめっき膜27(図1A)の平面形状に整合する。
【0029】
図2Jに示すように、シード層26を電極として用い、開口35A内のシード層26の上に銅を電解めっきすることにより、めっき膜27を形成する。めっき膜27の厚さは、例えば20μmとする。直径約50μmの貫通孔21は、めっき膜27で完全に埋め尽くされる。凹部20の直径は200μmであるため、凹部20がめっき膜27で埋め尽くされることはない。このため、めっき膜27の表面に、凹部20の側面及び底面の形状を反映した窪みが現れる。
【0030】
図2Kに示すように、フォトレジスト膜35(図2J)を除去する。めっき膜27が形成されていない領域に、シード層26が露出する。フォトレジスト膜35を除去した後、基板10をグラスハンドルウエハ30から分離する。
【0031】
図2Lに示すように、めっき膜27が形成されていない領域のシード層26(図2K)を除去する。シード層26とめっき膜27との2層からなる第2の導電膜28が形成される。第2の導電膜28が形成されていない領域には、絶縁膜25が露出する。
【0032】
図2Mに示すように、絶縁膜25及び第2の導電膜28の上に、保護膜30を形成する。保護膜30は、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)を用いたCVDにより形成される。保護膜30の厚さは、例えば2μmとする。図1に示したように、保護膜30に開口を形成する。この開口の底面に、第2の導電膜28の一部であるランド28Aが露出する。ランド28Aの上にバンプ41を形成する。
【0033】
上記実施例による方法では、貫通孔21の深さは、凹部20を形成した位置に残っている基板10の厚さ(約50μm)と等しい。このため、基板10の第2の表面10Bから第1の表面10Aまで達し、貫通孔21と同径の太さが均一な貫通孔に比べて、貫通孔21のアスペクト比が小さくなる。これにより、貫通孔21内を銅等の金属で容易に埋め込むことが可能になる。
【0034】
貫通孔のアスペクト比を小さくするためには、第2の表面10Bから第1の表面10Aまで達する太さが均一な貫通孔を太くすればよい。ところが、貫通孔を太くすると、貫通孔内の金属と基板10との熱膨張率の差に起因して、貫通孔内の金属に接する積層膜14に加わる応力により、積層膜14が変形し易くなる。実施例では、積層膜14に接する部分の貫通孔21を、凹部20より細くしているため、積層膜14に加わる応力を低減させ、積層膜14の変形を少なくすることができる。
【0035】
さらに、凹部20は、第2の導電膜28で完全には埋め尽くされていないため、凹部20が導電膜で埋め尽くされる場合に比べて、金属材料の使用量を少なくすることができる。
【0036】
次に、積層膜の変形を低減させる効果の評価結果について説明する。図3A〜図3Gに、評価対象の試料の貫通電極部分の断面図を示す。いずれの試料においても、基板(図1Aの基板10に対応)の厚さを200μm、積層膜(図1Aの積層膜14に対応)の厚さを10μm、第1の導電膜(図1Aの第1の導電膜18に対応)の厚さを5μm、第2の表面10Bを覆う第2の導電膜(図1Aの第2の導電膜28に対応)の厚さを10μmとした。基板の材料をSiとし、第1及び第2の導電膜の材料をCuとした。Si及びCuの熱膨張係数は、それぞれ2.3ppm及び16ppmとした。積層膜は、通常、低誘電率絶縁材料と銅配線との積層構造を有する。このため、積層膜の熱膨張係数として、両者の熱膨張係数の中間値を採用し、8ppmとした。
【0037】
図3Aに示した試料Aでは、直径50μの貫通孔が基板の一方の表面から他方の表面まで貫通している。貫通孔は、第2の導電膜で完全に埋め尽くされている。第1の導電膜の直径は60μmとした。
【0038】
図3Bに示した試料Bでは、直径50μの貫通孔が第2の導電膜で埋め尽くされてはおらず、その側面のみに第2の導電膜が形成されている。側面上の第2の導電膜の厚さを5μmとした。第1の導電膜の直径は、図3Aの試料と同一である。
【0039】
図3Cに示した試料Cでは、凹部(図1Aの凹部20に対応)、及び凹部よりも細い貫通孔(図1Aの貫通孔21に対応)が形成されている。凹部の直径を50μm、深さを150μmとした。貫通孔の直径を10μmとした。凹部及び貫通孔は、第2の導電膜で完全に埋め尽くされている。第1の導電膜の直径は、図3Aの試料と同一である。
【0040】
図3Dに示した試料Dでは、直径200μmの貫通孔が、基板の一方の表面から他方の表面まで貫通している。貫通孔は、第2の導電膜で完全に埋め尽くされている。第1の導電膜は、貫通孔の平面形状に一致する。
【0041】
図3E〜図3Gに示した試料E〜Gでは、凹部(図1Aの凹部20に対応)、及び凹部より細い貫通孔(図1Aの貫通孔21に対応)が形成されている。凹部の直径を200μm、深さを150μmとした。凹部の側面及び底面に形成された第2の導電膜の厚さは10μmとした。
【0042】
図3E及び図3Fに示した試料E、Fでは、1つの貫通孔が形成されており、図3Gに示した試料Gでは、21個の貫通孔が形成されている。図3Gaに、図3Gの一点鎖線3Ga−3Gaにおける断面図を示す。凹部の底面にほぼ一様に21個の貫通孔が分布している。図3Eに示した試料Eの貫通孔の直径は50μmであり、図3F及び図3Gに示した試料F、Gの貫通孔の直径は20μmである。図3E及び図3Fに示した試料E、Fの第1の導電膜の直径は60μmであり、図3Gに示した試料Gの第1の導電膜の直径は200μmである。
【0043】
温度が約250℃で銅が再結晶化すると考えられるため、温度250℃のときに基板、積層膜、第1及び第2の導電膜の応力が0であると仮定した。温度25℃、200℃、及び500℃のときの変形量を、シミュレーションにより算出した。
【0044】
図4Aに示すように、積層膜の表面の持ち揚がり量Phを算出することにより、変形量の低減効果を評価することとした。
【0045】
図4Bに、図3A〜図3Gに示した試料A〜Gの持ち揚がり量Phの算出結果を示す。横軸は温度を単位「℃」で表し、縦軸は持ち揚がり量Phを単位「μm」で表す。負の持ち揚がり量Phは、積層膜に窪みが生じることを意味する。図4Bの各折れ線に付した符号A〜Gは、それぞれ図3A〜図3Gに示した試料A〜Gに対応する。試料Dは、積層膜に接している貫通電極が太いため、他の試料に比べて大きな変形が生じている。
【0046】
積層膜に接している部分の貫通電極の太さが等しい試料Aと試料Eとを対比すると、両者の変形量の大きさはほぼ等しいことがわかる。ただし、試料Aの貫通孔のアスペクト比は、試料Eの貫通孔のアスペクト比よりも大きい。形成すべき貫通孔のアスペクト比が大きくなると、貫通孔の形成プロセスが困難になる。さらに、貫通孔内を金属材料で充填するプロセスも困難になる。試料Eのように、凹部を形成することにより、試料Aに比べて貫通孔のアスペクト比を小さくし、かつ積層膜に生じる変形量は同程度に抑えることができる。
【0047】
試料C、F、Gの積層膜の変形量は、他の試料に比べて小さい。これは、積層膜に接している部分の貫通電極が細いためである。試料F、Gの凹部は、試料Cの凹部よりも大きいが、試料F、Gにおいては、凹部が第2の導電膜で埋め尽くされていない。このため、凹部内の第2の導電膜の体積収縮が積層膜に与える影響は小さい。このように、凹部を大きくしても、凹部内を第2の導電膜で埋め尽くすことなく、空洞を残しておくことにより、積層膜に生じる変形量の増大を抑制することができる。
【0048】
また、試料FとGとを対比すると、貫通孔の数を増やしても、積層膜の変形量は増大しないことがわかる。貫通孔の数を増加させることは、電気抵抗低減の点で好ましい。また、1つの貫通孔で充填不良が発生しても、他の貫通孔で電気的接続が確保されるため、複数の貫通孔を配置することは、歩留まりの点でも好ましい。
【0049】
図1Aにおいて、凹部20の側面に堆積している第2の導電膜28が薄くなりすぎると、電気抵抗が大きくなってしまう。凹部20の側面に堆積している第2の導電膜28の平断面の面積を、貫通孔21の平断面の合計の面積以上にすることが好ましい。この構成を採用すると、凹部20の側面に堆積している第2の導電膜28を深さ方向に流れる電流の電流密度が、貫通孔21内の第2の導電膜28を流れる電流の電流密度よりも高くなることが防止される。
【0050】
次に、第2の導電膜28の厚さの好適な範囲について説明する。貫通孔21が第2の導電膜28で完全に埋め尽くされるために、第2の導電膜28の厚さを、貫通孔21の直径の1/2以上にすることが好ましい。第2の導電膜28が厚くなりすぎると、凹部20が第2の導電膜28で完全に埋め尽くされてしまう。凹部20が埋め尽くされないようにするために、第2の導電膜28は、凹部20の深さよりも薄くすることが好ましい。
【0051】
次に、凹部20の深さの好適な範囲について説明する。凹部20を深くすると、凹部20が形成された領域に残っている基板10の一部が薄くなる。基板10の残っている部分が薄くなりすぎると、基板10の薄くなった部分に第2の導電膜20の応力が作用して変形が生じ易くなる。また、凹部20の直径が大きくなると、基板10の薄くなった部分も大きくなり、変形し易くなる。基板10の薄くなった部分に変形が生じ難くするために、薄くなった部分の厚さを、凹部20の直径の1/10以上にしておくことが好ましい。
【0052】
凹部20の平面形状が円形ではない場合には、上記「凹部20の直径」を、凹部20の平面図形に内包される最大の円の直径と読み替えればよい。
【0053】
上記実施例では、第2の導電膜28に銅または銅合金を用いたが、その他の金属を用いてもよい。また、基板10にシリコンを用いたが、化合物半導体を用いてもよい。
【0054】
図5に、上記実施例の変形例による貫通電極基板の断面図を示す。図5では、貫通電極基板の構成部分に、図1Aに示した対応する構成部分に付された参照符号と同一の参照符号を付している。上記実施例では、図1Aに示したように、凹部20の側面が、第2の表面10Bに対してほぼ垂直であった。図5に示した変形例では、第2の表面から深くなるに従って凹部20が細くなるように、凹部20の側面がテーパ形状にされている。凹部20を形成するときのエッチングガスとして、例えばSFのみを用いることにより、テーパ形状を形成することができる。
【0055】
凹部20の側面をテーパ形状にすることにより、貫通孔21内に第2の導電膜28を充填し易くなるという効果が得られる。
【0056】
図6に、上記実施例の他の変形例による貫通電極基板の断面図を示す。上記実施例では、トランジスタ等が形成された半導体基板に貫通電極を形成したが、図6に示した変形例では、インターポーザに貫通電極を形成する。
【0057】
インターポーザには、例えば絶縁性の樹脂からなる基板50が用いられる。基板50の第1の表面50Aに、再配線を含む積層膜51が形成されている。積層膜51は、第1の表面50Aに接触する第1の導電膜52を含む。積層膜51の上に、ランド53及び保護膜54が形成されている。保護膜54には、ランド53を露出させる開口が形成されている。この開口内に露出したランド53の上にバンプ55が形成されている。
【0058】
ランド53は、積層膜51内の配線により、第1の導電膜52に接続されている。積層膜51内に、デカップリングキャパシタ等を配置してもよい。
【0059】
基板50に、その第2の表面50Bから内部に向かう凹部60が形成されている。凹部60の底面から第1の表面50Aまで達する貫通孔61が形成されている。第2の導電膜65が、凹部60の側面及び底面を覆うと共に、貫通孔61内に充填されている。第2の導電膜65は、第1の導電膜52に電気的に接続される。
【0060】
第2の導電膜65は、凹部60の開口部の縁から第2の表面50Bの一部の領域まで延在し、ランド65Aを構成する。保護膜66が、第2の表面50B及び第2の導電膜65を覆う。保護膜65には、ランド65Aを露出させる開口が形成されている。この開口内のランド65Aの上にバンプ67が形成されている。
【0061】
図6に示した変形例においても、図1Aに示した実施例と同様に、積層膜51の変形を抑制することができる。さらに、貫通孔61のアスペクト比が小さくなるため、貫通孔61内を第2の導電膜65で容易に埋め込むことが可能になる。
【0062】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0063】
10 基板
10A 第1の表面
10B 第2の表面
11 素子分離絶縁膜
13 トランジスタ
14 積層膜
15 電極パッド
16 保護膜
18 第1の導電膜(ランド)
20 凹部
21 貫通孔
25 絶縁膜
26 シード層
27 めっき膜
28 第2の導電膜
28A ランド
30 グラスハンドルウエハ
31 フォトレジスト膜
31A 開口
33 フォトレジスト膜
33A 開口
35 フォトレジスト膜
35A 開口
40 保護膜
41 バンプ
50 基板
50A 第1の表面
50B 第2の表面
51 積層膜
52 第1の導電膜
53 ランド
54 保護膜
55 バンプ
60 凹部
61 貫通孔
65 第2の導電膜
65A ランド
66 保護膜
67 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1の表面に形成され、第1の導電膜を含む積層膜と、
前記基板の、前記第1の表面とは反対側の第2の表面から内部に向かって形成され、前記第1の表面までは達しない凹部と、
前記凹部の底面から前記第1の表面まで達し、前記凹部よりも細い貫通孔と、
前記貫通孔内に埋め込まれて前記第1の導電膜に接続され、前記凹部の側面及び底面を覆うが、前記凹部を完全には埋め尽くしていない第2の導電膜と
を有する貫通電極基板。
【請求項2】
前記第2の導電膜の表面の一部は、前記凹部の底面及び側面を反映した形状を有する請求項1に記載の貫通電極基板。
【請求項3】
さらに、前記凹部の底面から前記第1の表面まで達し、前記凹部よりも細く、前記第2の導電膜で埋め尽くされた少なくとも1つの他の貫通孔を有する請求項1または2に記載の貫通電極基板。
【請求項4】
前記凹部の底面から前記第1の表面までの厚さが、前記凹部の平面図形に内包される最大の円の直径の1/10以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の貫通電極基板。
【請求項5】
前記凹部の側面は、前記第2の表面から前記第1の表面に向かって細くなるテーパ形状を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の貫通電極基板。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−99518(P2012−99518A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243279(P2010−243279)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】