説明

貼合加熱板、液体加熱装置、液体加熱システム、給湯システム並びに入浴車両

【課題】この発明は、効率よく液体を加熱する加熱板、及びその加熱板を用いた液体加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】板状の基材の片面に導電性薄膜37を備えた2枚のヒートガラス31を、導電性薄膜37面を対向させて、その間に介在させた絶縁性部材であるシリコーン接着剤39で貼り合わせてデュアルヒートパネル30bを構成し、導電性薄膜37を備えたヒートパネル30を、面部分を対向させ、所定間隔を隔てて複数枚配置し、隣合うヒートパネル30の互い違いの縁部に液体の通過を許容する通過凹部34を備え、該通過凹部34及び隣合うヒートパネル30の間で蛇腹状の液体通過路40を構成し、両端に配置したヒートパネル30以外の前記ヒートパネル30を、デュアルヒートパネル30bを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、温泉水等の液体を加熱するような液体加熱装置やそれに用いる板状加熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多量の吐出量を維持しつつ、地下水等を加熱する流水加熱装置が提案されている(特許文献1参照)。
この流水加温装置は、流水経路を流れる液体に加熱エアを吹きかけて液体を加熱する。しかし、この流水加温装置の加熱エアによる加熱は加熱効率が悪く、この流水加温装置を利用する利用者にとって満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−355914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、液体を効率良く加熱する加熱板、及びその加熱板を用いた液体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、板状の基材の片面に導電性薄膜を備えた2枚の加熱板を、導電性薄膜面を対向させて、その間に介在させた層状の接着部で貼り合わせ、該接着部を、絶縁性部材で構成した貼合加熱板であることを特徴とする。
【0006】
上記板状の基材の片面に導電性薄膜を備えた加熱板は、スプレー式、スパッタリング、スピニング等によって基材の片面に導電性薄膜を蒸着した加熱板であることを含む。
上記基板は、ガラス、セラミック、及び石英からなる群より選ばれる少なくとも1種の基材で構成された基板であることを含む。
【0007】
上記導電性薄膜は、酸化亜鉛や酸化錫を含む多結晶或いは単結晶膜を基礎成分とした薄膜、或いはこの基礎成分に酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、ITO等の金属酸化物が一種類以上含まれた薄膜であることを含む。
上記接着部は、2枚の加熱板を接着固定する層状の接着部であり、加熱板に塗布して形成する接着部、予めシート状に形成した接着部であることを含む。
【0008】
これにより、それぞれの加熱板の導電性薄膜に通電して発熱した場合においても、貼り合せた加熱板の対向する導電性薄膜が電気的に干渉することなく、両加熱板を発熱することができる。したがって、1枚の貼合加熱板として効率良く発熱することができる。
【0009】
この発明の態様として、前記接着部を、所定の肉厚の弾性部材で構成することができる。
上記弾性部材は、シリコーン等で構成した弾性を有する部材であることを含む。
【0010】
これにより、貼合加熱板を構成するそれぞれの加熱板が熱膨張等によって変形し、それぞれの変形に誤差が生じた場合であっても、その変形誤差を弾性部材が吸収するため、貼合加熱板に変形応力が生じることを防止できる。したがって、耐久性のある貼合加熱板を得ることができる。
【0011】
また、この発明の態様として、前記導電性薄膜に通電する帯状電極を、前記導電性薄膜の左右両縁部に沿って備え、少なくとも1枚の加熱板の前記導電性薄膜を、左右方向に偏心して配置することができる。
【0012】
これにより、例えば、それぞれの加熱板に同形状及び同配置の導電性薄膜を備え、導電性薄膜面を対向させて貼り合せた場合、前記導電性薄膜の左右両縁部に備えた帯状電極が重なり合うことを防止できる。したがって、帯状電極が接着部を介して対向して、重なり合う場合と比較して、それぞれの帯状電極の電気的な干渉を確実に防止し、効率良く両加熱板を発熱することができる。
【0013】
また、この発明は、板状部分に導電性薄膜を備えた板状加熱体を、面部分を対向させ、所定間隔を隔てて複数枚配置し、該板状加熱体の縁部に、液体の通過を許容する通過部を備え、該通過部を備える縁部を、隣合う板状加熱体において互い違いに設定し、隣合う板状加熱体の間の空間及び前記通過部で蛇腹状の液体通路を構成した液体加熱装置であることを特徴とする。
【0014】
上記液体は、水、温泉水等の加熱される液体であることを含む。
通過部を備える縁部を隣合う板状加熱体において互い違いに設定は、例えば、一方の板状加熱体の設定した上側縁部に対する隣合う他方の板状加熱体の下側縁部のように、隣合う板状加熱体同士で交互に異なる縁部に設定することを含む。
【0015】
上記通過部は、板状加熱体の縁部に形成した切り欠き凹部であることを含む。
上記隣合う板状加熱体の間の空間は、隔てて配置した板状加熱体同士の所定間隔によって形成された空間であることを含む。
【0016】
蛇腹状の液体通過路は、所定間隔を隔てて配置した板状加熱体同士の間の空間を通り、上記通過部で折れ曲がる蛇腹状の通路であり、装置の奥行き方向に対して、上下方向や左右方向の蛇腹状の液体通路であることを含む。
【0017】
これにより、液体通路を通過する液体を、導電性薄膜が発熱した板状加熱体で加熱することができる。また、液体通路を蛇腹状に形成したため、閉ざされた装置内部において、液体通路の延長を長く形成することができる。したがって、液体が板状加熱体に接触する部分が増大され、さらに効率良く液体を加熱することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記板状加熱体の前記液体通路側面に、通過する液体を分散させる液体分散手段を備えることができる。
上記液体分散手段は、板状加熱体の液体通路に面する表面部分に備えた凹凸で形成する分散手段であることを含む。
【0019】
これにより、液体が部分的に集中して液体通路を通過することを防止し、液体を板状加熱体の面部分に沿って全体に広がりながら通過させることができる。したがって、板状加熱板の略全面で効率良く液体を加熱することができる。
【0020】
また、この発明の態様として、複数枚配置した前記板状加熱体のうち、両端に配置した板状加熱体以外の前記板状加熱体を、上記貼合加熱板で構成することができる。
これにより、貼合加熱板は両面で発熱するため、液体通過路を通過する液体を両側から加熱することができる。
【0021】
また、この発明は、上記液体加熱装置を、2台以上連結して構成した液体加熱システムであることを特徴とする。
上記2台以上連結は、複数台の液体加熱装置の直列連結、複数台の液体加熱装置の並列連結、或いはそれらの連結を組み合わせた連結であることを含む。
これにより、複数台の液体加熱装置を連結することで、1台の液体加熱装置で加熱可能な加熱温度及び加熱量を超える加熱効果を得ることができる。
【0022】
さらに、この発明は、加熱された温水を保温貯水する温水タンクの吐出部に、上記液体加熱装置、又は上記液体加熱システムを接続した給湯システムであることを特徴とする。
上記加熱された温水を保温貯水する温水タンクは、ヒートポンプ給湯器の温水タンクであることを含む。
【0023】
これにより、例えば、電力料が安い夜間にヒートポンプによって加熱され温水タンクに貯水された温水の温度が低下した場合であっても、この温水を液体加熱システムで再加熱して給湯することができる。また、ヒートポンプによる加熱は外気温度によって加熱温度が不安定であるが、液体加熱システムで温水を再加熱することで、一定温度の温水を容易に給湯することができる。
【0024】
さらに、この発明は、上記液体加熱装置、又は上記液体加熱システムを装備した入浴設備を備えた入浴車両であることを特徴とする。
上記入浴車両とは、給湯装置及び移動可能な浴槽等を車載した福祉車両等であることを含み、出張先で浴槽に現地で加熱した温水を給水し、入浴希望者が入浴することのできる車両であることを含む。
【0025】
これにより、必要な湯量及び加熱温度を確保できる液体加熱システム装備した入浴設備を搭載したことによって、利用先で容易に必要量及び必要温度の温水を確保して給湯することができる。したがって、入浴車両を用いて入浴サービスを提供するサービス提供者及び入浴希望者の満足度を向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、効率良く液体を加熱する加熱板、及びその加熱板を用いた液体加熱装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明の一実施の形態を以下図面に基づいて詳述する。
リキッドヒータ1の斜視図を示す図1、ヒートユニット20の斜視図を示す図2、リキッドヒータ1の縦断面図を示す図3、ヒートガラス31を説明する説明図を示す図4、ヒートパネル30の構成を説明する説明図を示す図5とともに、リキッドヒータ1、ヒートユニット20、並びにヒートパネル30について説明する。
【0028】
リキッドヒータ1は、奥行き方向に所定間隔を隔てて配置した5枚のヒートパネル30をユニット化したヒートユニット20と、ヒートユニット20を囲繞する本体ケース11とで構成している。
【0029】
本体ケース11の上面には、ヒートパネル30を温度制御する制御スイッチ12と、リキッドヒータ1のON/OFFを切り替えるON/OFFスイッチ13を備えている。なお、制御スイッチ12は5枚のヒートパネル30のそれぞれに対応して5つ備えており、各ヒートパネル30に対する供給電力量によって温度制御している。
【0030】
本体ケース11の前面下部にはヒートユニット20の供給部22に接続する供給管51の通過を許容する供給管通過孔14を備え、本体ケース11の背面下部には吐出部23に接続する吐出管52の通過を許容する吐出管通過孔15(図3)を備えている。
【0031】
本体ケース11内部に配されたヒートユニット20は、奥行き方向に所定間隔を隔てて配置した5枚のヒートパネル30(30a,30b)を内部に固定するユニットケース21と、ユニットケース21の前面21aの下部に備えた供給部22、ユニットケース21の背面21bの下部に備えた吐出部23とで構成している。
【0032】
ヒートパネル30は、幅50cm×高さ60cmの正面視略四角形状であり、上辺の左右両側に電力を供給するリード線(図示省略)の接続を許容する接続凸部35を備えている。
【0033】
なお、ヒートパネル30は、ユニットケース21の前面21a内側及び背面21b内側に固定するサイドヒートパネル30aと、両サイドヒートパネル30aの間に配設した3枚のデュアルヒートパネル30bとの2種類がある。
各サイドヒートパネル30aの下部には、供給部22或いは吐出部23の貫通を許容する貫通孔33を備えている。
【0034】
3枚のうち両側(図3おいて左右側)のデュアルヒートパネル30bの上辺中央に通過凹部34を備え、3枚のうち間(図3おいて中央)のデュアルヒートパネル30bの下辺中央に通過凹部34を備えている。
【0035】
デュアルヒートパネル30bは、図5に示すように、ヒートガラス31を貼り合せて構成している。ヒートガラス31は、適宜の肉厚の低膨張性ガラス板の背面中央に方形状に蒸着した導電性薄膜37と、導電性薄膜37の左右両端に配した電極リボン36とを備えている(図4(b)参照)。
【0036】
導電性薄膜37は、100ナノメートル(nm)程度の肉厚の薄膜であり、酸化亜鉛や酸化錫を含む多結晶或いは単結晶膜を基礎成分とし、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、ITO等の金属酸化物を一種類以上含んでいる。なお、導電性薄膜37は上記物質を含む溶液を高温下でスプレーして形成されている。
【0037】
また、全面が薄膜で被覆され、導電性薄膜37部分がマスキングされたガラス板にサンドブラストすることによって、薄膜が剥離されて、ヒートガラス31の導電性薄膜37のない余白部分が形成されている(図4(b)参照)。
【0038】
図4(b)に示すように、電極リボン36は、方形状導電性薄膜37の左右両辺に沿って上下方向に長く、上端はヒートガラス31の上辺より接続凸部35側まで突出している。
電極リボン36及び導電性薄膜37は、電極リボン36からヒートガラス31の左右両端までの幅が、背面視右側d1、及び背面視左側d2となるように、ヒートガラス31の左右方向中央より左方向に偏心して配置されている。
【0039】
したがって、ヒートガラス31の正面図である図4(a)に示すように、ヒートガラス31を正面側から見ると、電極リボン36からヒートガラス31の左右両端までの幅が、正面視右側d2、及び正面視左側d1となる。これにより、ヒートガラス31の背面側同士を対向させて貼り合せた状態において、各電極リボン36が重なり合うことを防止している。
また、ヒートガラス31の正面側表面には、適宜の間隔を隔てて千鳥配置した正面視ひし形の分散凸部38を備えている。
【0040】
なお、本実施例においてヒートガラス31の基材として適宜の肉厚のガラス板を用いているが、これに限定されず、前記基材をガラス、セラミック、及び石英からなる群より選ばれる少なくとも1種の基材で構成することができる。これにより、ヒートパネル30から遠赤外線効果を得ることができ、遠赤外線効果と加熱効果との相乗効果を得ることができる。
【0041】
また、本実施例において、導電性薄膜37を酸化亜鉛や酸化錫を含む多結晶或いは単結晶膜を基礎成分として形成したが、これに限定されず、酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、ゲルマニウム(Ge)、及び窒化ゲルマナイトからなる群より選ばれる少なくとも1種を主原料として構成することができる。これにより、加熱温度や、原材料の原価等様々な条件に合わせて基礎成分を採用することができる。
【0042】
上述したように、デュアルヒートパネル30bは、上記構成を有する2枚のヒートガラス31を導電性薄膜37を備えた背面側同士を対向させ、シリコーン接着剤39で接着固定して形成している。なお、シリコーン接着剤39は室温硬化型のシリコーン性接着剤であり、適宜の肉厚を形成している。
なお、サイドヒートパネル30aは、強化ガラスを基材とし、片面に導電性薄膜37を備えたヒートガラス31で構成している。
【0043】
ヒートユニット20は、ユニットケース21の両内側面に導電性薄膜37側面が接するようにサイドヒートパネル30aを嵌合固定し、そのサイドヒートパネル30a間に、それぞれ5mmの間隔を奥行き方向に隔てて、3枚のデュアルヒートパネル30bを等間隔に配設して、ユニットケース21に嵌合固定して構成している。
【0044】
なお、ヒートパネル30の接続凸部35はユニットケース21の上面から突出させ、ユニットケース21内部を密閉し、ヒートユニット20内部の各ヒートパネル30同士の間に、供給部22から吐出部23まで連通する液体通過路40を形成している。
【0045】
詳述すると、液体通過路40は、貫通孔33を貫通する供給部22から、各ヒートパネル30同士の間を通り、3枚のデュアルヒートパネル30bの上下互い違いに備えた通過凹部34で折り返し、吐出部23まで連通する。このように、5mm間隔で奥行き方向に隔てて配設したヒートパネル30によって、これらをユニット化したヒートユニット20の内部に、リキッドヒータ1の奥行き方向に向かって上下方向の蛇腹状の液体通過路40を形成している。
【0046】
なお、各ヒートパネル30において、制御スイッチ12及びON/OFFスイッチ13に接続されたリード線(図示省略)と接続凸部35における電極リボン36の上端とが接続されている。
【0047】
上記構成により、リキッドヒータ1は制御スイッチ12による温度制御によって各ヒートパネル30をそれぞれ独立して発熱することができる。したがって、供給管51から供給され、液体通過路40を通過する液体をヒートパネル30で加熱し、加熱された液体を吐出管52から吐出することができる。
【0048】
なお、リキッドヒータ1はこの液体通過路40内の液体を、液体通過路40を形成する両側のヒートパネル30で加熱するが、供給管51から供給された液体が吐出管52から吐出されるまでの間でロスなく加熱されるように、各ヒートパネル30の発熱量を制御している。詳述すると、各ヒートパネル30において発熱箇所である導電性薄膜37の抵抗値は一定であるため、各制御スイッチ12はヒートパネル30に供給する電力量でヒートパネル30の発熱量を制御している。
【0049】
また、このリキッドヒータ1では、ヒートガラス31の正面側表面に千鳥配置で配設した分散凸部38を備えたことによって、液体通過路40を通過する液体は、分散凸部38によってヒートパネル30表面に沿って分散して流れるため、ヒートパネル30表面全体で効率良く加熱することができる。
【0050】
また、ユニットケース21の上面から突出した接続凸部35部分で電極リボン36とリード線とを接続し、ユニットケース21内部を密閉したため、電極リボン36とリード線とが接続される所謂電極部分が液体通過路40の外部に位置し、液体通過路40を通過する液体が当該電極部分に接触することがなく、当該電極部分で液体が接触することによる漏電を防止することができる。
【0051】
また、ヒートガラス31の導電性薄膜37を蒸着させる基材を耐薬物性が高いガラス板で構成し、導電性薄膜37側面を対向させて貼り合せてデュアルヒートパネル30bを構成し、並びにサイドヒートパネル30aの導電性薄膜37をユニットケース21側に向けて配置したことで、導電性薄膜37が加熱する液体と接触して漏電することを防止している。さらに、液体中に含まれているナトリウムNaや加熱によって導電性薄膜37が腐食、或いは酸化することを防止している。したがって、耐久性の高いヒートパネル30を得ることができる。
【0052】
また、ヒートパネル30をユニットケース21に嵌合固定してヒートユニット20を構成し、当該ヒートユニット20を本体ケース11でカバーしてリキッドヒータ1を構成したため、容易にリキッドヒータ1を分解して清掃することができる。これにより、リキッドヒータ1を清潔な状態を容易に保持して利用することができる。
【0053】
このような構成を有する本実施例のリキッドヒータ1は、例えば、25度の水を毎分12Lの流量で供給管51から供給された場合、吐出管52から73度に加熱された温水を吐出することができる。これが、本実施例のリキッドヒータ1の加熱能力であるが、リキッドヒータ1は消費電力5.5kWで上記加熱を実現することができる。この加熱のための消費電力は、同条件の加熱を従来の棒型ヒータを用いた流水加熱装置で実現する場合と比較して低電力で実現している。これは、ヒートガラス31の基材をガラス板で構成したことによる遠赤外線効果、及び液体通過路40を蛇腹状に形成したことによる液体の対流効果の組合せによって熱効率が向上したため実現可能になっている。
【0054】
しかし、例えば、冷泉を所定温度まで加熱する場合等、1台のリキッドヒータ1の加熱能力を超える加熱が必要な場合がある。このような場合に用いる連結リキッドヒータシステム60について、連結リキッドヒータシステム60の接続方法を説明する図6及び図7とともに説明する。なお、以下の説明において、供給管51からリキッドヒータ1に供給する液体を温度の低い温泉水である冷泉とし、当該冷泉がリキッドヒータ1によって加熱されて吐出管52から吐出する液体を加熱された温泉水である加熱泉として説明する。
【0055】
例えば、必要吐出量が1台のリキッドヒータ1の加熱能力を超えている場合、図6(a)に示すように、複数台のリキッドヒータ1を並列連結した並列連結リキッドヒータシステム60aを用いる。
並列連結リキッドヒータシステム60aは、供給する冷泉を複数に分岐して、各リキッドヒータ1に供給する分岐供給管53と、複数台のリキッドヒータ1と、複数台のリキッドヒータ1から吐出された加熱泉を1つに集合して吐出する集合吐出管54とで構成している。
【0056】
これにより、各リキッドヒータ1にはそれぞれの加熱能力に応じた量の冷泉を供給し、各リキッドヒータ1から吐出した加熱泉を集合吐出管54で集合することによって、各リキッドヒータ1の加熱能力では得ることのできない量の加熱泉を得ることができる。
【0057】
また、加熱温度が1台のリキッドヒータ1の加熱能力を超えている場合、図6(b)に示すように、複数台のリキッドヒータ1を直列連結した直列連結リキッドヒータシステム60bを用いる。
直列連結リキッドヒータシステム60bは、複数台のリキッドヒータ1を直列配置し、供給側のリキッドヒータ1に冷泉を供給する供給管51、リキッドヒータ1同士を連結する連結管55、吐出側のリキッドヒータ1から加熱泉を吐出する吐出管52とで構成している。
【0058】
これにより、冷泉は各リキッドヒータ1において上記加熱能力の加熱温度で加熱され、さらに次のリキッドヒータ1においてさらに加熱され、各リキッドヒータ1の加熱能力では得ることのできない加熱温度まで加熱された加熱泉を得ることができる。
【0059】
このようにして、必要吐出量、加熱温度、並びに1台のリキッドヒータ1で得ることができる加熱能力に応じて、図7に示すように、複数台のリキッドヒータ1を直列連結及び並列連結を組み合わせて連結し、連結リキッドヒータシステム60を構成することにより、必要な吐出量および加熱温度の加熱泉を吐出できる連結リキッドヒータシステム60を得ることができる。
【0060】
これにより、従来から用いられていた化石燃料を燃焼させて冷泉を加熱していたボイラー加熱や流水加熱装置と比較して、加熱効率も良く、環境にやさしい冷泉の液体加熱装置を提供することができる。
【0061】
なお、連結リキッドヒータシステム60の加熱対象は冷泉等の温泉水だけでなく、通常の水を加熱する場合に用いても良い。特に、加熱効率も良く、更に環境にやさしい加熱を提供することができるため、災害時の罹災地における緊急の温水設備に用いても良い。
【0062】
次に、上記連結リキッドヒータシステム60を用いた移動入浴車両100について、移動入浴車両100の一部を開放した斜視図を示す図8とともに説明する。
移動入浴車両100は、所謂ワンボックスタイプの乗用車の車内中央付近に搭載した連結リキッドヒータシステム60と、連結リキッドヒータシステム60に接続された給湯装置111と、車載浴槽110とで構成している。移動入浴車両100は、依頼された場所へ移動し、現地での入浴希望者の車載浴槽110への入浴を可能にする車両である。
【0063】
まず、移動入浴車両100を用いて入浴サービスを提供するサービス提供者は移動入浴車両100を現地まで移動させ、現地で連結リキッドヒータシステム60に水道ホース等の給水設備を接続する。なお、屋外の給水設備が接続される場合が多く、入浴に適した水温まで加熱する必要がある連結リキッドヒータシステム60は、3台のリキッドヒータ1を直列連結して構成している。
これにより、水温の低い場合の多い屋外の給水設備を接続して、電源供給と水供給のみで水を加熱して給湯することができるため、サービス提供者及び入浴希望者の満足度を向上することができる。
【0064】
なお、入浴希望者の数が多く、湯の入替えを急がなければならない等の必要湯量が1台のリキッドヒータ1の加熱能力を超えた場合は、上述したようにリキッドヒータ1を並列結合すればよい。
【0065】
次に、上記連結リキッドヒータシステム60を用いた給湯システム200について、給湯システム200を説明する説明図である図9とともに説明する。
給湯システム200はヒートポンプ式の給湯システムであり、ヒートポンプ201、保温タンク202、浴槽203、給水設備204、並びに連結リキッドヒータシステム60で構成している。
【0066】
ヒートポンプ201はヒートポンプ方式で水を加熱するポンプであり、保温タンク202はヒートポンプ201で加熱された温水を貯水するタンクである。給水設備204は、保温タンク202で貯水された温水を浴槽203に給水する設備である。なお、連結リキッドヒータシステム60は、保温タンク202と給水設備204との間に配置されている。
【0067】
これにより、例えば、電力料の安い深夜電力を用いてヒートポンプ201で加熱し保温タンク202で貯水していた温水を給水設備204から給水する際に、連結リキッドヒータシステム60で再加熱して給水設備204から給水することができる。これにより、効率良く再加熱を行って給水することができる。
【0068】
また、ヒートポンプ201は空気を圧縮・凝縮し、熱を取り出して加熱するため、加熱温度が外気温度に影響され不安定であるが、連結リキッドヒータシステム60で再加熱して給水設備204から給水するため、ヒートポンプ201の外気温によって不安定な温度である温水を一定の温度で給水することができる。これにより、給湯システム200を利用する利用者の満足度を向上することができる。
【0069】
なお、本実施例において、同形状の分散凸部38を等間隔に配置したが、複数種の形状、或いはランダムな形状の分散凸部をランダムに配置してもよく、さらには分散凸部を備えないヒートガラス31を用いても良い。
【0070】
また、液体通過路40を流れる液体の流量を検出する検出センサをリキッドヒータ1に備え、当該検出センサを制御スイッチ12又はON/OFFスイッチ13に接続しても良い。これにより、液体通過路40への液体の供給が停止された場合、検出センサが液体の供給の停止を検出し、制御スイッチ12又はON/OFFスイッチ13によってヒートパネル30への電力供給を停止することができる。したがって、液体通過路40に停滞する液体が過剰に加熱されることを防止できる。また、逆に、液体通過路40への液体の供給開始を検出し、自動的にヒートパネル30に電力を供給し、液体を自動的に加熱する構成としてもよい。
【0071】
なお、本実施例において、ヒートパネル30同士を5mm間隔で配置したが、例えば、含有物の多い温泉水や海水等を加熱する際に加熱による含有物の結晶化によって液体通過路40の閉塞が予測される場合、ヒートパネル30同士の間隔を広げて配置すればよい。このとき、ヒートパネル30同士の間隔を広げたことによって加熱温度が低下するが、時間当たり吐出量を低減することで加熱温度の低下を防止できる。
【0072】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
加熱板は、ヒートガラス31に対応し、
以下同様に、
接着部は、シリコーン接着剤39に対応し、
貼合加熱板は、デュアルヒートパネル30bに対応し、
帯状電極は、電極リボン36に対応し、
板状加熱体は、ヒートパネル30に対応し、
通過部は、接続凸部35に対応し、
液体通路は、液体通過路40に対応し、
液体加熱装置は、リキッドヒータ1に対応し、
液体分散手段は、分散凸部38に対応し、
液体加熱システムは、連結リキッドヒータシステム60、並列連結リキッドヒータシステム60a、並びに直列連結リキッドヒータシステム60bに対応し、
入浴車両は、移動入浴車両100に対応するも、
この発明は、前述の実施態様の構成のみに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】リキッドヒータの斜視図。
【図2】ヒータユニットの斜視図。
【図3】リキッドヒータの縦断面図。
【図4】ヒートガラスを説明する説明図。
【図5】ヒートパネルの構成を説明する説明図。
【図6】連結リキッドヒータシステムの接続方法を説明する説明図。
【図7】連結リキッドヒータシステムの接続方法を説明する説明図。
【図8】移動入浴車両の一部開放斜視図。
【図9】給湯システムを説明する説明図。
【符号の説明】
【0074】
1…リキッドヒータ
30…ヒートパネル
30b…デュアルヒートパネル
31…ヒートガラス
34…通過凹部
36…電極リボン
37…導電性薄膜
38…分散凸部
39…接着シート
40…液体通過路
60…連結リキッドヒータシステム
60a…並列連結リキッドヒータシステム
60b…直列連結リキッドヒータシステム
100…移動入浴車両
200…給湯システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材の片面に導電性薄膜を備えた2枚の加熱板を、導電性薄膜面を対向させて、その間に介在させた層状の接着部で貼り合わせ、
該接着部を、絶縁性部材で構成した
貼合加熱板。
【請求項2】
前記接着部を、所定の肉厚の弾性部材で構成した
請求項1に記載の貼合加熱板。
【請求項3】
前記導電性薄膜に通電する帯状電極を、前記導電性薄膜の左右両縁部に沿って備え、
少なくとも1枚の加熱板の前記導電性薄膜を、左右方向に偏心して配置した
請求項1、2或いは3に記載の貼合加熱板。
【請求項4】
板状部分に導電性薄膜を備えた板状加熱体を、面部分を対向させ、所定間隔を隔てて複数枚配置し、
該板状加熱体の縁部に、液体の通過を許容する通過部を備え、
該通過部を備える縁部を、隣合う板状加熱体において互い違いに設定し、
隣合う板状加熱体の間の空間及び前記通過部で蛇腹状の液体通路を構成した
液体加熱装置。
【請求項5】
前記板状加熱体の前記液体通路側面に、通過する液体を分散させる液体分散手段を備えた
請求項4に記載の液体加熱装置。
【請求項6】
複数枚配置した前記板状加熱体のうち、両端に配置した板状加熱体以外の前記板状加熱体を、
請求項1、2或いは3に記載の貼合加熱板で構成した
請求項4又は5に記載の液体加熱装置。
【請求項7】
請求項4、5或いは6に記載の液体加熱装置を、2台以上連結して構成した
液体加熱システム。
【請求項8】
加熱された温水を保温貯水する温水タンクの吐出部に、
請求項4、5或いは6に記載の液体加熱装置、又は請求項7に記載の液体加熱システムを接続した
給湯システム。
【請求項9】
請求項4、5或いは6に記載の液体加熱装置、又は請求項7に記載の液体加熱システムを装備した入浴設備を備えた
入浴車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−128490(P2008−128490A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310040(P2006−310040)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504422841)株式会社アミティ (3)
【出願人】(506290855)
【Fターム(参考)】