説明

走行位置検知装置

【課題】移動体の位置の検出精度を向上させる。
【解決手段】GPS電波受信アンテナ11の傾斜装置21は、回動軸および三角形状の板であるフレームを有する。走行位置検知装置10の装置本体には、回動軸が装置本体を貫通して移動体5の移動方向に軸方向が沿うように取り付けられる。フレームは、一頂点付近を回動軸が貫通して平板方向が回動軸の軸方向に対して直交するように回動軸に取り付けられる。移動体5が傾斜した場合には、GPS電波受信アンテナ11の平板方向が水平方向に沿ってGPS電波受信アンテナ11の受信面が重力に従って天頂方向を向くように、GPS電波受信アンテナ11がフレームおよび回動軸を介して移動体5に対して当該移動体5の移動方向に直交した方向に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜する移動体の走行位置を検出する走行位置検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車やオートバイ、人間などの移動体の走行位置を監視するための移動体監視システムが構築されている。
【0003】
具体的には、GPS(Global Positioning System:全地上的測位システム)衛星の電波を受信する走行位置検知装置が移動体に搭載され、GPS衛星から受信した電波に基づいて装置本体の位置データが求められる。この位置データが通信手段を介して無線基地局に送信されることにより移動体監視システムが構築される。
【0004】
例えば特許文献1に開示される位置情報管理システムにおいては、GPS測位装置、ジャイロセンサや加速度センサからなる方向検出装置、携帯電話回線やPHS回線などを用いた通信手段および電波マーカーを用いた自律測位手段などを有している。
【特許文献1】特開平10−281801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動体の一種であるオートバイは直線では車体が路面に対して垂直な姿勢で走行を行うが、カーブを曲がる際には車体を大きく傾けて曲がる特徴がある。このため、カーブでは移動体に搭載されたGPS電波受信アンテナも傾斜してしまい当該GPS電波受信アンテナの指向性が変化してしまうので捕捉しているGPS衛星が変化してしまう。また、指向性の変化に伴ってGPS電波受信アンテナが周辺や道路から反射した電波も受信してしまうので精度が大幅に低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、移動体の位置の検出精度を向上させることが可能になる走行位置検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係わる走行位置検知装置は、GPS衛星からのGPS衛星データを受信するGPS電波受信アンテナと、移動体に取り付けられて、移動体が移動方向と直交する方向に傾斜した場合でもGPS電波受信アンテナの受信面がGPS衛星データを正常に受信可能な方向を向くように当該GPS電波受信アンテナを移動体に対し移動方向と直交する方向に回動させる回動機構とを備え、GPS電波受信アンテナにより受信したGPS衛星データに基づいて装置本体の位置を示すGPS位置データを算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動体の位置の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態における走行位置検知装置10の構成を示す模式図である。なお本実施形態においては、移動体5としてオートバイを例にとって説明する。また、複数のGPS衛星7A,7B,7C,7Dが地上に向けてGPS衛星データを発信しており、走行位置検知装置10はGPSを利用可能となっている。なお衛星の個数は単なる例示であり4個に限られるものではない。
【0010】
走行位置検知装置10は移動体5に搭載されて当該移動体5の走行位置を検知する。ここでは、走行位置検知装置10は、GPS電波受信アンテナ11とGPS位置測位処理部12、3次元加速度センサ13、傾斜センサ15、加速度修正部16、自律位置測位処理部17、接地位置算出部18、傾斜装置21、傾斜速度センサ22とを備える。
【0011】
また、GPS位置測位処理部12、加速度修正部16、自律位置測位処理部17、接地位置算出部18は中央演算処理部20に組み込まれる。記憶装置19は、例えば不揮発性メモリなどの記憶媒体である。
【0012】
GPS電波受信アンテナ11は、GPS衛星7A〜7Dが発信するGPS衛星データを受信する。なおGPS衛星データには時間や衛星軌道などを示す情報が含まれる。GPS電波受信アンテナ11が受信したGPS衛星データは、GPS位置測位処理部12に送出される。
【0013】
GPS位置測位処理部12は、GPS電波受信アンテナ11が受信したGPS衛星データに基づいて、走行位置検知装置10の位置を示すGPS位置データを一定時間毎に算出する。具体的には、GPS位置測位処理部12は、GPS衛星データをもとに走行位置検知装置10の設置位置の緯度経度データを生成し、当該緯度経度のデータをX軸とY軸とからなる2次元座標の位置データに変換することによりGPS位置データを算出する。また、GPS位置測位処理部12は求めたGPS位置データを自律位置測位処理部17および接地位置算出部18に送出する。
【0014】
3次元加速度センサ13は、装置本体の3次元的な加速度を示す加速度データを検出し、当該検出した加速度データを加速度修正部16に送出する。
【0015】
傾斜センサ15は、装置本体の路面Rに対する傾きを示す傾斜データを検出する。傾斜センサ15は例えばロータリエンコーダである。また、傾斜センサ15は、ロータリエンコーダに限らず回転角度を計測できるセンサであれば他のセンサであってもよい。また傾斜センサ15は、検出した傾斜データを加速度修正部16と接地位置算出部18とに送出する。
【0016】
図2は、本発明の実施形態における、傾斜面を走行する移動体5の概念を示す図である。図3は、本発明の実施形態における、傾斜面を走行する移動体5のGPS位置データの計測誤差を説明するための図である。図4は、本発明の実施形態における3次元加速度センサ13の計測軸の修正を説明するための図である。
加速度修正部16は、傾斜センサ15により検出された傾斜データに基づいて3次元加速度データを修正した修正加速度データを算出する。
【0017】
移動体であるオートバイは直線では車体が路面に対して垂直な姿勢で走行する。一方、図2に示すように、バンクなど傾斜を持った道路を移動体5が走行する場合、3次元加速度センサ13の計測軸は、その移動体5の傾きにあわせて傾く。
【0018】
ところが、計測される加速度は、装置本体に設置した3次元加速度センサ13を基準にしたX軸、Y軸、Z軸方向への加速度である。それゆえ、この加速度を用いて位置計測を行なうと、図3に示すように、GPS測位で使用される緯度経度の表示方式における位置とのズレが生じる。
【0019】
そこで、加速度修正部16により、前述したズレを修正した修正加速度データを算出する。詳しくは、加速度修正部16は、傾斜センサ15から得られた移動体5の傾斜データに基づいて、加速度センサ13により検出された加速度データをGPS測位の表示形式の座標に変換する。この変換は、図4に示すように3次元加速度センサ13の計測軸を仮想的に修正することを意味する。すなわち、傾斜センサ15が角度θの傾きを検知した場合には、角度θだけ修正した計測軸が設定されることなる。
【0020】
このような修正加速度データを求めることにより、移動体5が傾斜を持った道路を走行する場合やカーブを傾いて走行する場合でも測位誤差を抑えることができる。また、アップダウンのある道路を移動体が走行する場合はX軸方向の加速度の修正をすることにより測位誤差を抑えることができる。また、Z軸方向の加速度の修正も同様に可能である。なお、ここでは一例として傾斜センサ15により検出した傾斜データを用いて加速度データを修正しているが、その他のセンサから得られた移動体5の傾斜データを用いて加速度データの修正を行ってもよい。
【0021】
自律位置測位処理部17は、GPS位置測位処理部12から受け取ったGPS位置データと、傾斜速度センサ22から受け取った傾斜速度データと、加速度修正部16から受け取った修正加速度データとに基づいて自律位置データを算出し、当該算出した自律位置データを接地位置算出部18に送出する。
【0022】
図5は、本発明の実施形態におけるGPS位置データと自律位置データとの軌跡を説明するための図である。
具体的には、自律位置測位処理部17は、GPS位置測位処理部12により前回のGPS位置データが算出されてから新たなGPS位置データが算出されるまでの間、修正加速度データと傾斜速度データとに基づいて移動体5の旋回半径を判定し、前回の位置データ(GPS位置データまたは後述する自律位置データ)および旋回半径をもとに装置本体の新たな位置を示す自律位置データを一定時間毎に算出する。これにより、図5に示したマル印であるGPS位置データの軌跡に、図5に示したバツ印である自律位置データの軌跡を補足することができるので、移動体5の位置を高精度に求めることができる。
【0023】
接地位置算出部18は、GPS位置データおよび自律位置データに対して傾斜データにより路面Rの傾きを補正することで移動体5の接地位置を示す接地位置データを算出し、当該算出した接地位置データを記憶装置19に送出する。
【0024】
図6は、本発明の実施形態における走行位置検知装置10の設置位置と移動体5の接地位置とのズレを説明するための図である。
接地位置データを算出するのは、オートバイ等の移動体5が傾斜のある場所を走行する場合や移動体5が車体を傾けてカーブを曲がる場合に、GPSで計測したGPS位置データで示される位置と実際の走行位置との間に誤差が生じるからである。補足すると、GPS測位では、装置本体の鉛直下向きの位置の緯度経度のデータを計測する。しかし、移動体5が傾斜のある場所を走行する場合やカーブを走行する場合には、図6に示すように、GPS測位による計測位置である移動体5における装置本体の設置位置と、移動体5であるオートバイのタイヤが実際に接地している位置とに図5に示した距離Tのズレが生じる。例えば、移動体であるオートバイが道路を曲がる際に車体が大きく傾くために当該車体が道路からはみ出していても車輪は接地している場合がある。
【0025】
そこで、傾斜センサ15からの傾斜データおよび移動体5における装置本体の設置位置を示すデータから移動体5の接地位置、ここではオートバイのタイヤの接地位置を求め、当該求めた接地位置を移動体5の位置とみなすことにより、傾斜のある場所等であっても移動体5の位置を正確に検知できるようにしている。
【0026】
記憶装置19は、接地位置算出部18から送出された接地位置データを算出時刻と関連付けて記憶する。
【0027】
傾斜装置21は、移動体5が移動方向に直交する方向に傾斜しても、重力に従って、GPS電波受信アンテナ11の受信面がGPS衛星データを正常に受信可能な方向である天頂方向を向くように移動体5に対してGPS電波受信アンテナ11の向きを傾斜させる回動機構である。
【0028】
また、傾斜速度センサ22は、傾斜装置21によるGPS電波受信アンテナ11の傾斜速度を検出し、当該検出した速度の情報を自律位置測位処理部17に送出する。
【0029】
GPSの受信電波を用いた移動体の位置の解析精度を向上する方法として、処理過程で位置の予測を行なう方法が採られるが、オートバイのように速い速度から急激な旋回が可能な移動体では予測補正の結果と実際の位置との間に大きなずれが発生してしまう。自動車のカーナビ等では3次元ジャイロや加速度センサまたは速度パルスを用いて補正を行うことで位置の解析精度を向上させるが、オートバイのように傾くことで旋回し、かつ、旋回半径が傾きの角度やハンドルの舵角だけでは計測できない移動体では補正ができないのでカーブでは位置検出の精度が低下していた。
【0030】
自律位置測位処理部17は、3次元加速度センサ13からの加速度データおよび傾斜速度センサ22からの傾斜速度の情報をもとに車両である移動体5の旋回半径を判定して自律位置の補正を行うことで位置検出の精度向上を行なう機能を有する。なお、加速度で示される方向のみでは旋回半径の判定はできないので傾斜速度を確認して移動体5が旋回中であるかを判定している。
【0031】
図7は、本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第1の例の外観を示す図である。
図7に示した例では、GPS電波受信アンテナ11の傾斜装置21は、回動軸31および三角形状の板であるフレーム32を有する。走行位置検知装置10の装置本体には、回動軸31が装置本体を貫通して移動体5の移動方向に軸方向が沿うように取り付けられる。フレーム32は、一頂点付近を回動軸31が貫通して平板方向が回動軸31の軸方向に対して直交するように回動軸31に取り付けられ、回動軸31を中心に移動体5に対して当該移動体5の移動方向に直交した方向に回動可能になっている。
【0032】
フレーム32のうち回動軸31の取り付け箇所付近の頂点からみた底辺部分にはGPS電波受信アンテナ11が当該GPS電波受信アンテナ11の平板方向が前述した底辺部分の方向に沿うように取り付けられる。
【0033】
移動体5が傾いていない場合には、重力に従って、フレーム32の底辺部分の方向および当該フレーム32に当該取り付けられたGPS電波受信アンテナ11の平板方向が水平方向に沿ってGPS電波受信アンテナ11の受信面が天頂方向を向くようになっている。
【0034】
また、移動体5が傾斜した場合でもGPS電波受信アンテナ11の平板方向が水平方向に沿ってGPS電波受信アンテナ11の受信面が重力に従って天頂方向を向くように、GPS電波受信アンテナ11がフレーム32および回動軸31を介して移動体5の移動方向に直交した方向に回動するようになっている。
【0035】
また、回動軸31にはダンパが設けられる。ダンパを設けることで、移動体5が速い動きで傾いた場合の傾斜装置21のフレーム32およびGPS電波受信アンテナ11の回動速度を減衰させる。よって移動体5が傾く速度が速い場合に、フレーム32およびGPS電波受信アンテナ11が大きく振られて振り子運動が発生することを防止している。
【0036】
図8は、本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第2の例の外観を示す図である。
図8に示した例では、GPS電波受信アンテナ11の傾斜装置21は、回動軸41、支持板42、第1アーム43、第2アーム44および錘45が組み合わされてなる。この例ではGPS電波受信アンテナ11側からアーム43,44が伸ばされて錘45が吊り下げられる構造となっている。
【0037】
具体的には、走行位置検知装置10の装置本体には、回動軸41が装置本体を貫通して移動体5の移動方向に軸方向が沿うように取り付けられる。支持板42は、当該支持板42の中央部分を回動軸41が貫通して平板方向が回動軸41の軸方向に対して直交するように回動軸41に取り付けられ、回動軸41を中心に移動体5に対して当該移動体5の移動方向に直交した方向に回動可能になっている。支持板42の上部にはGPS電波受信アンテナ11が当該GPS電波受信アンテナ11の平板方向が支持板42の平板方向に沿うように載置される。なお、GPS電波受信アンテナ11の受信機能および支持板42の支持機能をともに有する一体物を用いても良い。
【0038】
第1アーム43の一端部は支持板42の一端部に回動可能に固定される。また、第2アーム44の一端部は支持板42の他端部に回動可能に固定される。
錘45は棒状の錘であり、錘45の一端部は第1アーム43の他端部に回動可能に固定される。また、錘45の他端部は第2アーム44の他端部に回動可能に固定される。錘45の重量はGPS電波受信アンテナ11の重量より重い。
【0039】
移動体5が傾いていない場合には、重力に従って、支持板42の平板方向および錘45の平板方向は水平方向に沿ってGPS電波受信アンテナ11の受信面が天頂方向を向くようになっている。
【0040】
また、移動体5が傾斜した場合でもGPS電波受信アンテナ11の受信面が天頂方向を向くように、移動体5の傾斜にしたがって錘45が第1アームおよび第2アームとともにGPS電波受信アンテナ11の支持板42に対し移動体5の移動方向に直交した方向に回動するようになっている。
【0041】
図9は、一般的な取り付け形態のGPS電波受信アンテナ11を説明するための図である。
図10は、本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第1の例を用いた場合の受信時における概念を示す図である。
図11は、本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第2の例を用いた場合の受信時における概念を示す図である。
GPS電波受信アンテナ11は図9に示すように平面形状であるので、傾斜のある場所を移動体5が走行する場合や車体を傾けてコーナーを通過する場合には、GPS電波受信アンテナ11も同じように傾斜角の方向に傾くことになる。そうすると、図9に示すように仰角が高くなってしまい、それまで捕捉していたGPS衛星7CのGPS衛星データをロストする事態が起こりうる。これにより、測位精度が低下もしくは不能になる。
【0042】
しかし、図7で説明したように、移動体5が傾斜した場合でもGPS電波受信アンテナ11の平板方向が水平方向に沿ってGPS電波受信アンテナ11の受信面が重力に従って天頂方向を向くように、GPS電波受信アンテナ11がフレーム32および回動軸31を介して移動体5の移動方向に直交した方向に回動する構成であれば、図10に示したように移動体5が傾いてもGPS電波受信アンテナ11が天頂方向を向くことになる。それゆえ捕捉しているGPS衛星、ここではGPS衛星7Cをロストすることがなくなる。
【0043】
また、図8で説明したように、移動体5が傾斜した場合でも支持板42の平板方向が水平方向に沿ってGPS電波受信アンテナ11の受信面が重力に従って天頂方向を向くように、錘45が第1アームおよび第2アームとともに移動体5の移動方向に直交した方向に回動する構成であれば、図11に示したように移動体5が急激に傾いた場合には、錘45がGPS電波受信アンテナ11や支持板42よりも先に回動して、GPS電波受信アンテナ11や支持板42はゆっくり回動する。
【0044】
例えば、移動体5が当該移動体5の正面からみて左側に急激に傾斜した場合には、錘45が移動体5の正面からみて右側に移動してからGPS電波受信アンテナ11は回動軸41を中心に回転して受信面が天頂方向を向き、移動体5の傾きが安定すると、錘45の平板方向は図11(A)に示すように支持板42の平板方向に平行になる。
【0045】
移動体5がゆっくり傾いた場合にはGPS電波受信アンテナ11や支持板42は錘45の回動と同期してゆっくり回動するので、GPS電波受信アンテナ11の受信面は重力に従って天頂方向を向くことになる。よって、捕捉しているGPS衛星7Cをロストすることがなくなる。
【0046】
次に、図1に示した構成の走行位置検知装置10の動作について説明する。
図12は、本発明の実施形態における走行位置検知装置10の処理動作の一例を示すフローチャートである。
始めに、走行位置検知装置10の本体電源がON状態になると(ステップS1)、GPS電波受信アンテナ11がGPS衛星データの受信を開始する(ステップS2)。
【0047】
GPS電波受信アンテナ11がGPS衛星データを受信すると(ステップS2のYES)、3次元加速度センサ13、傾斜センサ15、傾斜速度センサ22のそれぞれがデータ計測を開始する(ステップS3)。
【0048】
ここで、位置データは予め設定された算出周期毎に算出される。それゆえ、位置データを算出している時間を算出周期で割ると算出回数iとなり、算出回数iから位置データに対応する時刻を求めることができる。なお初期の算出回数iは便宜上1に設定される(ステップS4)。
【0049】
次に、GPS電波受信アンテナ11が最新のGPS衛星データを受信した場合(ステップS5のYES)、装置本体の位置を示す位置データとしてGPS位置データが算出される。具体的には、GPS位置測位処理部12により緯度経度データが生成される(ステップS6)。そして、緯度経度データは、X軸とY軸とからなる2次元座標の座標データに変換される(ステップS7)。これによりGPS位置データが求められる。
【0050】
一方、GPS電波受信アンテナ11が最新のGPS衛星データを受信しなかった場合(ステップS5のNO)、装置本体の位置データとして自律位置データが算出される。具体的には、まず、3次元加速度センサ13により加速度データが検出される(ステップS8)。検出された加速度データは、加速度修正部16により修正加速度データに修正される(ステップS9)。
【0051】
また、傾斜速度センサ22により傾斜装置21の傾斜速度が検出され、移動体の旋回半径が判定される(ステップS11)。次に、前回の位置データを基点として、旋回半径を反映させた位置を自律位置データとして求める(ステップS12)。
【0052】
続いて、GPS位置データあるいは自律位置データに対して傾斜データによる路面Rの傾きを補正して、移動体5の接地位置データが接地位置算出部18により算出される(ステップS13)。
次に、算出された接地位置データが、現在の位置データとして記憶装置19に記憶される(ステップS14,S15)。
【0053】
そして、装置本体の電源がOFF状態に切り替わるまで、上述したステップS5〜S14までの処理が繰り返される(ステップS16のNO)。この際、算出回数iは1ずつインクリメントされることになる(ステップS17)。
【0054】
以上説明したように、本発明の実施形態における走行位置検知装置10は、移動体5の傾斜に伴ってGPS電波受信アンテナ11が移動体5の移動方向に直交した方向に回動する構成であれば、移動体5が傾斜した場合でも、重力にしたがってGPS電波受信アンテナ11の平板方向が水平方向に沿ってGPS電波受信アンテナ11の受信面が天頂方向を向くようになる。よって、GPS電波受信アンテナ11が捕捉しているGPS衛星をロストすることを防止できる。
【0055】
加えて、走行位置検知装置10は、メインの測位をGPS測位で行ない、GPS衛星が捕捉できない環境下で測位する場合やGPS測位を補間する場合に、加速度データおよび傾斜データに基づいて自律測位を行なう。
【0056】
なお、3次元加速度センサ13、傾斜センサ15において、計測データが得られなかったり、不適切なデータが計測されたりすると、自律位置データには誤差が含まれる場合がある。このような場合でも、走行位置検知装置10においては、GPS位置データが算出される度に自律測位データの基点が書き換えられるので、自律測位で誤差が発生したとしてもGPS測位が行なわれる度に、その誤差がクリアされることになる。また、道路上または路側に位置データを発する位置データ通知装置を設置し、その位置データ通知装置から受信した位置データに基づいて自律位置データの誤差をクリアすることもできる。
【0057】
また、本実施形態における走行位置検知装置10は、加速度修正部16や接地位置算出部18を備えているので、移動体5が斜面を走行している場合でも加速度やタイヤの接地位置を正しく得ることができるので、走行するエリアや車種に関わらず正確な位置測位を行なうことができる。
【0058】
なお、GPS測位は常に行なわれており、移動体5が建物に入った場合には、その建物の入り口の位置データを無線基地局に伝送する。また、建物の中での位置検知を行なう場合は、GPS測位ができないため、自律測位による位置検知を行なうことになる。また、走行位置検知装置10からの自律位置データを受信する無線通信装置を建物内の各部屋に設置すれば、その無線通信装置の識別番号から人間がどの部屋にいるのかを判定することも可能である。
【0059】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を省略してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態における走行位置検知装置10の構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施形態における、傾斜面を走行する移動体5の概念を示す図。
【図3】本発明の実施形態における、傾斜面を走行する移動体5のGPS位置データの計測誤差を説明するための図。
【図4】本発明の実施形態における3次元加速度センサ13の計測軸の修正を説明するための図。
【図5】本発明の実施形態におけるGPS位置データと自律位置データとの軌跡を説明するための図。
【図6】本発明の実施形態における走行位置検知装置10の設置位置と移動体5の接地位置とのズレを説明するための図。
【図7】本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第1の例の外観を示す図。
【図8】本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第2の例の外観を示す図。
【図9】一般的な取り付け形態のGPS電波受信アンテナ11を説明するための図。
【図10】本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第1の例を用いた場合の受信時における概念を示す図。
【図11】本発明の実施形態における走行位置検知装置に搭載されるGPS電波受信アンテナの傾斜装置の第2の例を用いた場合の受信時における概念を示す図。
【図12】本発明の実施形態における走行位置検知装置10の処理動作の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0061】
5…移動体、7A〜7D…GPS衛星、10…走行位置検知装置、11…GPS電波受信アンテナ、12…GPS位置測位処理部、13…3次元加速度センサ、15…傾斜センサ、16…加速度修正部、17…自律位置測位処理部、18…接地位置算出部、19…記憶装置、20…中央演算処理部、21…傾斜装置、22…傾斜速度センサ、31,41…回動軸、32…フレーム、42…支持板、43…第1アーム、44…第2アーム、45…錘。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星からのGPS衛星データを受信するGPS電波受信アンテナと、
移動体に取り付けられて、前記移動体が移動方向と直交する方向に傾斜した場合でも前記GPS電波受信アンテナの受信面が前記GPS衛星データを正常に受信可能な方向を向くように当該GPS電波受信アンテナを前記移動体に対し前記移動方向と直交する方向に回動させる回動機構と、
前記GPS電波受信アンテナにより受信したGPS衛星データに基づいて装置本体の位置を示すGPS位置データを算出するGPS位置測位手段と
を備えたことを特徴とする走行位置検知装置。
【請求項2】
前記回動機構は、
前記GPS電波受信アンテナを前記移動体の前記移動方向と直交する方向への傾斜にしたがって前記移動体に対し前記移動方向と直交する方向に回動可能に支持する回動軸、および前記移動体が前記移動方向と直交する方向に傾斜した場合の前記回動軸を介した前記GPS電波受信アンテナの回動速度を減衰させる減衰機構を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行位置検知装置。
【請求項3】
前記回動機構は、
前記GPS電波受信アンテナを前記移動体の前記移動方向と直交する方向への傾斜にしたがって前記移動体に対し前記移動方向と直交する方向に回動可能に支持する回動軸、および前記移動体が前記移動方向と直交する方向に傾斜した場合の前記回動軸を介した前記GPS電波受信アンテナの回動速度が減衰するように前記移動体の前記移動方向と直交する方向への傾斜にしたがって前記移動方向と直交する方向に回動可能に前記GPS電波受信アンテナ側から吊り下げられる重量物を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の走行位置検知装置。
【請求項4】
装置本体の加速度データを検出する加速度センサと、
前記移動体が移動方向と直交する方向への傾斜によって前記GPS電波受信アンテナが回動して傾斜する速度を検出するための傾斜速度検出センサと、
前記GPS位置測位手段により前回のGPS位置データが算出されてから新たなGPS位置データが算出されるまでの間、前記傾斜速度検出センサにより検出した速度および前記検出した加速度データに基づいて前記移動体の旋回半径を判定することで前記装置本体の自律位置データを算出する自律位置測位手段とをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の走行位置検知装置。
【請求項5】
装置本体の加速度データを検出する加速度センサと、
装置本体の路面に対する傾斜データを検出するための傾斜センサと、
前記加速度センサの計測軸を前記傾斜データに基づいて修正することで修正加速度データを算出する加速度修正手段とをさらに備え、
前記自律位置測位手段が前記装置本体の自律位置データの算出の為に用いる加速度データは、前記加速度修正手段により算出した修正加速度データである
ことを特徴とする請求項4に記載の走行位置検知装置。
【請求項6】
装置本体の路面に対する傾斜データを検出するための傾斜センサと、
前記前回のGPS位置データおよび前記自律位置データに対して前記傾斜データにより路面の傾きを補正して、前記移動体の接地位置データを算出する接地位置算出手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の走行位置検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−19637(P2010−19637A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179325(P2008−179325)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】