説明

走行可能距離推定システム

【課題】電気自動車の車載バッテリの残存容量に基づいて走行可能な距離を精緻に推定することができる走行可能距離推定システムを提供する。
【解決手段】走行可能距離推定システム1は、複数の電気自動車2とデータセンタ3とより構成され、電気自動車2は車載バッテリの残存容量等を計測可能なバッテリ管理装置22と、地図情報が保存された記憶媒体28と、通信装置24と、目的地または経路を設定可能で推定走行可能距離を表示する表示入力装置21とを備え、データセンタ3はリンク番号とバッテリ消費量等が対応付けて記憶され、地図情報が記憶されたデータベース35と、経路を選定可能なナビゲーションサーバ32と、経路に属するリンクごとのバッテリ消費量を読み出す分析サーバ33とを備え、車載バッテリの残存容量と経路に属するリンクごとのバッテリ消費量とを比較して電気自動車2の走行可能距離の推定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行可能距離推定システムに係り、特に、電気自動車において車載バッテリの残存容量で走行可能できる距離を推定する走行可能距離推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両とデータセンタとをインターネット等の通信網で結び、車両の燃費やエネルギー消費量を管理するシステムの開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のシステムでは、車両の走行時の燃費を所定時間または所定距離走行ごとに計測して、この燃費情報と計測した位置や時刻の情報とを対応させてデータセンタに送信し、データセンタでは送信されてきた燃費情報を地図情報の各地点ごとに対応させ或いは路線ごとに対応させてデータベースに記憶しておき、車両からの要求に応じてその地点や路線の燃費情報を開示し、ユーザが指定した経路や自動設定された経路について総合された燃費を表示する。
【0004】
また、特許文献2に記載のシステムでは、ユーザが使用している車両の走行経路を記憶しておき、そのユーザが自動車の車種を指定すると、通信網を介してその要求を受け取ったデータセンタが予めデータベースに記憶された車種データに基づいてその走行経路を走行した場合の指定車種のエネルギー消費に関する量を演算して、その結果をユーザに提供する。
【0005】
さらに、特許文献3に記載のシステムでは、給油施設等が設けられたサービスステーションに走行距離とユーザIDとを入力する入力部を設けておき、データセンタでは、サービスステーションから送信されてきた走行距離と給油量から燃費を算出し、同じユーザの過去のデータと平均してこれまでの平均燃費等を求めて、同じ型式の自動車の平均燃費とともにユーザに送信することで、ユーザが自分の自動車の燃費の良し悪しを判断する。
【0006】
これらのシステムは、燃費効率やエネルギー消費を改善させたいと願う運転者や他の車種への買い替えを考えている運転者には便利であり、また、例えば、エネルギー消費量のより少ない路線を自動選択して走行する等の車両の自動制御にもつながる可能性を有している。
【0007】
しかし、以上のようなガソリン自動車等の運転者は、燃費やエネルギー消費量には注意を払うことはあっても、サービスステーションはどこにでもあるから、現在タンクに残存する燃料でどのくらいの距離を走行することができるかといった問題にはあまり関心を払わない。
【0008】
その点、電気自動車の場合は事情が異なる。現時点では、充電設備が必ずしも十分に普及が進んでいない等の事情もあって、電気自動車の運転者にとっては、車載バッテリの残存容量で目的地に到達できるのか、到達できないとすれば充電設備がある所まで走行できるのかといった問題、すなわち走行可能距離の推定の問題は非常に重要な問題となる。
【0009】
このような電気自動車における問題点を考慮した発明としては、車載のナビゲーションシステムについての発明ではあるが、目的地までの経路検索を行い、選定された経路について距離と勾配情報から残存容量で到達可能か否かを判断するナビゲーションシステムが提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−350152号公報
【特許文献2】特開2004−145727号公報
【特許文献3】特開2002−167000号公報
【特許文献4】特開2001−112121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献4に記載のナビゲーションシステムでは、目的地に向けて走行を開始した後に運転者のアクセルペダルの踏みすぎや渋滞等の予想外の変化が生じた場合にそなえて再度目的地に到達可能か否かの判断を行い、到達不可能であると判断されると、通常の走行モードから電力消費を抑えたエコノミー走行モードに切り替えることが提案されている。
【0011】
しかしながら、電気自動車のバッテリやモータは経時劣化するため、電気自動車の燃費は経時的に悪化する。また、電気自動車の燃費やバッテリ消費量は電気自動車の型式によっても異なる。そのため、電気自動車が前記のようなエコノミー走行モードの機能を有さない場合、前記ナビゲーションシステムで目的地や充電設備に到達できると判断されたにもかかわらず、目的地や充電設備の手前でバッテリの残存容量が0になってしまい、いわゆるガス欠状態で動けなくなるという事態が生じ得る。
【0012】
一方、前記のようにアクセルペダルの踏みすぎや道路の渋滞等で走行距離や燃費は確かに大きく変わり得るが、それらの要素を予想外の変化と捉えずに、それらの要素も考慮した燃費やバッテリ消費量の計算を行い、走行可能距離をより精緻に推定し得る走行可能距離推定システムの構築が望まれる。
【0013】
そこで、本発明は、電気自動車の車載バッテリの残存容量に基づいて走行可能な距離を精緻に推定することができる走行可能距離推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の走行可能距離推定システムは、
車載バッテリの残存容量およびバッテリ消費量を計測可能なバッテリ管理装置と、
ノードの位置および前記ノード間を結ぶ識別コードが付されたリンクが設定された地図情報が保存された記憶媒体と、
前記リンクの識別コードとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と自車両の型式とを対応付けてデータセンタに送信する通信装置と、
目的地または経路を設定可能な入力装置と、
推定走行可能距離を表示する表示装置と
を備え、
前記表示装置は、前記リンクの識別コードとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と前記電気自動車の型式とが対応付けて記憶されているデータセンタのデータベースから、ノードの位置および前記ノード間を結ぶ識別コードが付されたリンクが設定されて前記データベースに記憶された地図情報と前記入力装置で設定された前記目的地に基づいて選定された経路または前記入力装置で設定された経路に属するリンクごとのバッテリ消費量が読み出され、前記車載バッテリの残存容量と前記経路に属するリンクごとのバッテリ消費量との比較によって推定された前記電気自動車が前記経路に沿って走行した場合の前記電気自動車の走行可能距離を表示することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の走行可能距離推定システムは、
電気自動車とデータセンタとより構成され、
前記電気自動車は、
車載バッテリの残存容量およびバッテリ消費量を計測可能なバッテリ管理装置と、
ノードの位置および前記ノード間を結ぶリンクが設定された地図情報が保存された記憶媒体と、
前記リンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と自車両の型式とを対応付けて前記データセンタに送信する通信装置と、
を備え、
前記データセンタは、
前記リンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と前記電気自動車の型式とが対応付けて記憶されているデータベースと、
前記リンクの結合によって形成される経路に属するリンクごとのバッテリ消費量を前記データベースから読み出す分析サーバと、
を備え、
前記車載バッテリの残存容量と前記リンクごとのバッテリ消費量を比較して、前記電気自動車の走行可能な距離の推定を行うことを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の走行可能距離推定システムは、
複数の電気自動車とデータセンタとより構成され、
前記電気自動車は、
車載バッテリの残存容量およびバッテリ消費量を計測可能なバッテリ管理装置と、
ノードの位置および前記ノード間を結ぶ番号が付されたリンクが設定された地図情報が保存された記憶媒体と、
前記リンクの番号とそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と自車両の型式とを対応付けて前記データセンタに送信する通信装置と、
目的地または経路を設定可能な入力装置と、
推定走行可能距離を表示する表示装置と
を備え、
前記データセンタは、
前記リンクの番号とそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と前記電気自動車の型式とが対応付けて記憶され、かつ、ノードの位置および前記ノード間を結ぶ番号が付されたリンクが設定された地図情報が記憶されているデータベースと、
前記入力装置で設定された前記目的地に基づいて、前記目的地に誘導するための経路を選定可能なナビゲーションサーバと、
前記選定された経路または前記入力装置で設定された経路に属するリンクごとのバッテリ消費量を前記データベースから読み出す分析サーバと
を備え、
前記車載バッテリの残存容量と前記経路に属するリンクごとのバッテリ消費量とを比較して、前記電気自動車が前記経路に沿って走行した場合に走行可能な距離の推定を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項1乃至請求項3に記載の発明によれば、電気自動車は、地図情報のリンクに相当する道路を実際に走行した際のバッテリ消費量のデータをバッテリ管理装置から読み出して通信装置を介してデータセンタに送信する。データセンタは、そのバッテリ消費量のデータをリンクおよび電気自動車の年式を含む型式ごとに分けて収集し蓄積する。また、例えば、電気自動車で設定された経路やナビゲーションの結果選定された経路などリンクの結合によって形成される経路についてそれらのバッテリ消費量のデータを活用して走行可能距離の推定が行われる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の走行可能距離推定システムにおいて、前記電気自動車は、前記データセンタから送信される前記経路に属するリンクごとのバッテリ消費量に基づいて前記走行可能な距離の推定を行う推定装置を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、電気自動車は、データセンタから送信されてくる経路に属するリンクごとのバッテリ消費量のデータに基づいて推定装置で走行可能な距離の推定を行う。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の走行可能距離推定システムにおいて、前記データセンタの前記分析サーバは、前記電気自動車から送信される前記車載バッテリの残存容量に基づいて前記走行可能な距離の推定を行い、前記電気自動車に送信するように構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、データセンタは、電気自動車から送信されてくる車載バッテリの残存容量のデータに基づいて、データベースから経路に属するリンクごとのバッテリ消費量のデータを読み出すと同時に走行可能距離の推定を行って電気自動車に送信する。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の走行可能距離推定システムにおいて、
前記電気自動車は、自車両の加速および減速に関する運転特性を分類可能な加減速測定装置を備え、
前記データセンタの前記データベースは、前記リンクとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量とを前記加減速測定装置で分類された前記運転特性にも対応付けて記憶するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、電気自動車で運転者の加減速に関する運転特性を分類し、データセンタでは電気自動車から送信されてくるバッテリ消費量のデータをリンクの識別コードや電気自動車の型式のほかにさらに運転特性にも対応付けて記憶する。
【発明の効果】
【0024】
請求項1乃至請求項3に記載の発明によれば、電気自動車は、地図情報のリンクに相当する道路を実際に走行した際のバッテリ消費量のデータをバッテリ管理装置から読み出して通信装置を介してデータセンタに送信する。データセンタは、そのバッテリ消費量のデータをリンクおよび電気自動車の年式を含む型式ごとに分けて収集し蓄積する。また、例えば、電気自動車で設定された経路やナビゲーションの結果選定された経路などリンクの結合によって形成される経路についてそれらのバッテリ消費量のデータを活用して走行可能距離の推定が行われる。
【0025】
このように、本発明の走行可能距離推定システムでは、データセンタに蓄積されるバッテリ消費量のデータが現実に即したデータとなり、データをリンクごとに年式を含む型式などバッテリの消費量に影響し得る要素に分けてデータを詳細に分類することができるため、これからそのリンクに相当する道路を走行しようとする電気自動車の車載バッテリの消費量を現実的な数値で推定することができる。また、データは電気自動車の年式等を含む型式ごとに分けて蓄積されるため、その型式特有のバッテリの消費傾向に基づいた推定を行うことができると同時に、バッテリや駆動モータ等の経時劣化をも加味した推定を行うことが可能となる。
【0026】
そのため、このようなデータをその道路を実際に走行した電気自動車から多数収集することにより、走行可能距離の推定の基となるデータをより信頼性が高くより現実に即したものとすることができる。また、運転者が設定した経路やナビゲーションの結果選定された経路について、個々の電気自動車自体の状態およびその走行状態に即したテーブルを選び、その詳細に分類されたバッテリの平均消費量のデータの中からその電気自動車の状態に適合する分類のデータに基づいて走行可能距離を推定するため、推定された走行可能距離の信頼性が非常に高いものとなり、電気自動車の車載バッテリの残存容量で走行可能な距離を非常に精緻に推定して、運転者に表示することが可能となる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、電気自動車は、データセンタから送信されてくる経路に属するリンクごとのバッテリ消費量のデータに基づいて推定装置で走行可能な距離の推定を行うため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、データセンタで個々の電気自動車について走行可能距離の推定を行わずに済み、データセンタでの処理の負担が軽減されると同時に、電気自動車側でデータセンタから送信されたデータを加工して種々の処理を行うことが可能となる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、データセンタは、電気自動車から送信されてくる車載バッテリの残存容量のデータに基づいて、データベースから経路に属するリンクごとのバッテリ消費量のデータを読み出すと同時に走行可能距離の推定を行って電気自動車に送信するため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、電気自動車における走行可能距離の推定作業による負担が軽減されると同時に、データセンタの大型コンピュータで処理を行うことができ処理速度の向上を図ることができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、電気自動車で運転者の加減速に関する運転特性を分類し、データセンタでは電気自動車から送信されてくるバッテリ消費量のデータをリンクの識別コードや電気自動車の型式のほかにさらに運転特性にも対応付けて記憶するため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、データセンタのデータベースに記憶されるバッテリ消費量のデータを電気自動車の運転者の加減速のしかた、すなわち、加減速を激しく行うか緩やかに行うかの運転特性によっても分類してより詳細に収集することが可能となり、走行可能距離の推定においては、バッテリの消費に影響する運転者の運転特性をも反映させた状態で推定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の走行可能距離推定システムに係る実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係る走行可能距離推定システムの全体構成を説明する図である。走行可能距離推定システム1は、複数の電気自動車2および電気自動車2と移動体通信網等を介して通信可能なデータセンタ3とより構成されており、本実施形態の走行可能距離推定システム1は、電気自動車2における条件設定に基づいてデータセンタ3がナビゲーション情報を送信するナビゲーションシステムをも兼ねている。
【0032】
電気自動車2には、ナビゲーション装置21と、バッテリ管理装置22と、走行制御装置23と、通信装置24とが備えられており、各装置21〜24は車内LANで接続されている。また、各装置21〜23は、通信装置24および移動体通信網を介してデータセンタ3と通信可能とされている。
【0033】
ナビゲーション装置21には、ナビゲーションのために目的地等を設定可能な入力装置としての操作ボタン25や表示パネル26が設けられており、種々の情報を表示する表示装置の役割をも果たすようになっている。ナビゲーション装置21は、通常のいわゆるカーナビと同様に種々のナビゲーション操作を行うことが可能とされており、ナビゲーション装置21には、GPS受信機やジャイロセンサ等の自車位置計測装置27が接続されており、自車位置計測装置27は、GPS航法や自律航法の手法を用いて自車両の位置を割り出すように構成されている。
【0034】
さらに、ナビゲーション装置21は、ハードディスクやDVD等の記憶媒体28から情報を読み取り或いは情報を記憶させるように構成されている。記憶媒体28には、少なくとも図2に示すようなノードの位置およびノード間を結ぶリンクが設定された地図情報が保存されており、リンクにはそれぞれ識別コードとしてのリンク番号が付されている。本実施形態では、この地図情報には充電設備の位置情報も含まれている。
【0035】
ナビゲーション装置21は、自車位置計測装置27による自車両の位置情報に基づいて自車両が地図情報中のどのリンクを走行中であり、ノードに到達したか否かを判断できるように構成されている。また、ナビゲーション装置21の表示パネル26には、記憶媒体28から読み取った地図情報に基づいて地図が表示されるようになっている。
【0036】
さらに、本実施形態では、ナビゲーション装置21は、走行可能距離の推定を行う推定装置として機能するように構成されている。すなわち、後述するように、電気自動車2にはデータセンタ3からナビゲーションの結果としての経路の情報と、経路に属するリンクごとのバッテリの各平均消費量のデータと、前記各データの合計の値が送信されてくるようになっており、ナビゲーション装置21は、経路に属するリンクごとのバッテリの各平均消費量とバッテリ管理装置22から送信されてくる自車両の車載バッテリの残存容量とを対比させ、前記経路に沿って走行した場合に残存容量で目的地まで到達できるか否かを判断し、目的地に到達できない場合には走行可能距離はどの程度であり、どこまで走行可能かの推定を行うように構成されている。ナビゲーション装置21は、推定の結果を表示パネル26に表示するようになっている。
【0037】
バッテリ管理装置22は、電気自動車2の図示しない車載バッテリの残存容量と走行によるバッテリ消費量を計測して管理するように構成されている。また、バッテリ管理装置22は、データセンタ3からの問い合わせに応じて電気自動車2の車載バッテリの残存容量やバッテリ消費量をプローブ情報として出力するようになっている。
【0038】
走行制御装置23は、電気自動車2の走行全般を制御するための装置であり、運転者のペダル操作等の各種操作に応じて図示しない車輪の駆動モータの回転駆動など各種制御を行うように構成されている。また、電気自動車2の図示しないアクセルペダルには、アクセルペダルの踏み込み度合を示すアクセル開度を監視する図示しないアクセルセンサが設けられている。
【0039】
走行制御装置23は、例えば、10ms等の一定期間ごとにアクセルセンサから送信されてくるアクセル開度のデータの変化率、すなわち、ある時刻のアクセル開度の値とその一定期間後のアクセル開度の値との差をその一定期間で割った値を監視し、変化率の絶対値を予め設定された2つの閾値で3段階に分け、自車両の運転者の運転特性として、加減速の少ない運転をする人を特性A、一般的な運転をする人を特性B、加減速の激しい運転をする人を特性Cに分類するように構成されている。このように、本実施形態では、走行制御装置23は、自車両の加減速に関する運転者の運転特性を分類可能な加減速測定装置の役割を果たしている。
【0040】
また、本実施形態では、走行制御装置23は、車内の空調用のエアコンをも管理するようになっており、エアコンが使用されている際にはエアコンの使用信号を発信するようになっている。なお、走行制御装置23は、車内LANを介して送信されてくる前記ナビゲーション装置21からの目的地設定情報や前記バッテリ管理装置22からの車載バッテリの残存容量やバッテリ消費量の情報等に応じて電気自動車2の走行を自動的に制御し、或いは移動体通信網を介したデータセンタ4からの指示に応じて電気自動車2の自動走行制御を行うことができるように構成されていてもよい。
【0041】
通信装置24には、自車両の年式等を含む型式の情報が記憶されており、通信装置24は、前記ナビゲーション装置21から送信されてくる自車両が走行したリンクのリンク番号と、前記バッテリ管理装置22から送信されてくるそのリンクを走行するために消費した車載バッテリのバッテリ消費量と、前記走行制御装置23から送信されてくる自車両の運転者の運転特性と、エアコンが使用されている場合にはエアコンの使用信号と自車両の型式とを対応付けて移動体通信網を介してデータセンタ3に送信するように構成されている。また、通信装置24は、その他の情報についても適宜電気自動車2からデータセンタ3に送信し、データセンタ3から送信されてきた情報を電気自動車2の各装置21〜23に送信するようになっている。
【0042】
一方、データセンタ3には、データベースサーバ31と、ナビゲーションサーバ32と、分析サーバ33と、通信サーバ34とが備えられており、それぞれがLANで接続されている。
【0043】
データベースサーバ31には、データベース35が接続されており、データベース35には、図3に示すように、リンク番号と電気自動車の型式とで規定され、バッテリの平均消費量がそれぞれ記憶されたテーブルが保存されている。テーブルは、区画整理や路線変更等によりリンク番号が変更され或いは追加されると、そのリンク番号で規定されるレコードが変更または追加されるようになっている。
【0044】
また、データベースサーバ31は、電気自動車2から前述したリンク番号、バッテリ消費量および型式が送信されてくると、前記テーブルのリンク番号と電気自動車の型式とで規定される部分にそのバッテリ消費量を書き込むようになっている。すなわち、テーブルの各部分には、図3に示したような前述したバッテリの平均消費量のほか、他の電気自動車から送信されてきて蓄積されているバッテリ消費量のデータと今回電気自動車2から新たに送信されてきたバッテリ消費量のデータがそれぞれ記憶されている。
【0045】
また、データベースサーバ31は、テーブルの各部分に記憶されているバッテリ消費量のデータのうち、予め設定された期限を超過した古いデータや予め設定されたデータ数を越えて古くなったデータを消去してデータの更新をするように構成されている。また、データベースサーバ31は、テーブルの各部分に記憶されている他の電気自動車から送信されてきて蓄積されているバッテリ消費量のデータと今回電気自動車2から新たに送信されてきたバッテリ消費量のデータとの平均値を算出してバッテリの平均消費量として記憶するようになっている。
【0046】
本実施形態では、前述したように、電気自動車2からさらに運転者の運転特性とエアコンの使用信号が送信されてくるので、テーブルとしては図4に示すようにリンク番号や電気自動車の型式のほか、さらに運転特性によって規定されたテーブルが用いられている。また、エアコンを使用した場合のテーブルがさらにもう1セット作成されて用いられている。
【0047】
また、データベース35には、ナビゲーションのために用いられるノードの位置およびノード間を結ぶ識別コードとしてのリンク番号が付されたリンクが設定された地図情報が記憶されている。データベースサーバ31は、区画整理等により路線が変更されたりノードやリンク等が変更され或いは追加されると、データベース35の地図情報を書き換えるようになっている。また、データベースサーバ31は、ナビゲーションサーバ32等からの要求に応じて、データベース35から地図情報の必要な部分を読み出すように構成されている。
【0048】
ナビゲーションサーバ32は、電気自動車2からの要求に応じてナビゲーションを行うためのコンピュータであり、電気自動車2に搭載されたナビゲーション装置21から送信されてきた目的地や電気自動車2の現在位置の情報等に基づいてデータベース35に記憶された地図情報を参照して目的地に誘導するための経路を探索するように構成されている。
【0049】
本実施形態では、ナビゲーションサーバ32は、データベース35に記憶された前記テーブルを参照して、電気自動車2の現在位置から目的地に到達することが可能なノードおよびリンクの組み合わせのうち、各リンクの距離の合計が最小となる経路、すなわち目的地までの距離が最短距離になる経路を選定するように構成されている。選定された経路は、ノードおよびリンクの組として電気自動車2に送信され、同時に、分析サーバ33に送信されるようになっている。
【0050】
なお、経路の選定においては、各リンクに対応するバッテリ消費量の合計が最小になるような経路を選定する方法もあるが、ほとんどの場合、どちらの選定方法で選定しても結果的には同じ経路が選定される。また、本実施形態のように、単に各リンクの距離を合計する方法の方がテーブルを参照する必要がなく処理時間を短縮できる効果がある。
【0051】
分析サーバ33は、電気自動車2から送信されてきたエアコン使用信号に基づいて、データベース35に記憶されているエアコン使用時のテーブルとエアコン不使用時のテーブルのいずれかを参照して、前記選定された経路に属する各リンクについて、電気自動車2の型式および運転特性に対応する各バッテリの平均消費量をそれぞれ抽出するように構成されている。
【0052】
分析サーバ33は、各バッテリの平均消費量の合計を算出し、その合計の値と各バッテリの平均消費量のそれぞれを電気自動車2に送信するように構成されている。
【0053】
通信サーバ34は、電気自動車2との通信を管理するための通信装置であり、ルータ等36を介してデータセンタ3に送信されてきた前記各数値を各サーバ31〜33に配信し、また、各サーバ31〜33から出力された結果をルータ等36を介して電気自動車2に送信するように構成されている。
【0054】
次に、本実施形態に係る走行可能距離推定システムの作用について説明する。
【0055】
電気自動車2からデータセンタ3へのバッテリ消費量の送信およびデータセンタ3におけるデータの蓄積は、図5に示すフローチャートに従って行われる。
【0056】
まず、電気自動車2では、バッテリ管理装置22のバッテリ消費量の値がリセットされ(ステップS1)、ナビゲーション装置21で、自車位置測定装置27から送信されてくる自車両の現在位置の緯度および経度と記憶媒体28から読み取った地図情報とに基づいて緯度および経度で規定されているノードに到達したか否かが判断される(ステップS2)。ナビゲーション装置21は、自車両がノードに到達したと判断すると、バッテリ管理装置22に開始信号を送り、バッテリ管理装置22は予め設定された時間ごとにバッテリ消費量を積算する(ステップS3)。
【0057】
ナビゲーション装置21が次のノードに到達したと判断すると(ステップS4)、ナビゲーション装置21はバッテリ管理装置22と走行制御装置23に送信信号を送り、自らは自車両が走行してきたリンクのリンク番号を出力する。また、バッテリ管理装置22は、それまでのバッテリ消費量の積算値をバッテリ消費量として出力し、走行制御装置23は、分類した運転者の運転特性とエアコンが使用された場合にはエアコン使用信号を出力する。
【0058】
通信装置24は、各装置から出力されたリンク番号と、バッテリ消費量と、運転特性と、エアコンが使用されていればエアコン使用信号とを自車両の型式と対応付けて移動体通信網を介してデータセンタ3に送信する(ステップS5)。電気自動車側では、以上の手順が繰り返される。
【0059】
データセンタ3のデータベースサーバ31は、データベース35に記憶されている前記テーブルのデータのうち予め設定された期限を超過した古いデータや予め設定されたデータ数を越えて古くなったデータをテーブルから削除する(ステップS6)。
【0060】
また、電気自動車2からデータセンタ3に送信があると(ステップS7)、データベースサーバ31は、データベース35のテーブルのリンク番号と電気自動車の型式と運転特性とで規定される部分に送信されてきたバッテリ消費量を追加して記憶させる(ステップS8)。また、データベースサーバ31は、テーブルの各部分に記憶されている以前のバッテリ消費量の各データと今回送信されてきたバッテリ消費量の平均値を算出してバッテリの平均消費量としてデータベース35に記憶させる(ステップS9)。
【0061】
このようにしてデータセンタ3におけるデータの蓄積が行われ、情報提供の準備が整う(ステップS10)。なお、データセンタ3は、以上の手順を繰り返して絶えずデータの更新と蓄積が行われる。
【0062】
次に、このようにしてデータセンタ3に蓄積されたリンク番号等で規定されたバッテリの平均消費量のデータに基づいて電気自動車2の走行可能距離の推定が行われる手順について、図6のフローチャートに基づいて説明する。以下の説明では、電気自動車2の現在位置と地図情報とを整合させて目的地に誘導するための経路選択、すなわちナビゲーションとともに走行可能距離の推定を行う場合について述べる。
【0063】
電気自動車2の運転者は、データセンタ3にナビゲーションを行わせるために、まず、表示入力装置21の操作ボタン25等で目的地を設定し(ステップS11)、出発地を設定したり目的地に向かう途中の経由地を設定する必要がある場合にはこの段階で設定が行われる。そして、目的地まで走行する際にエアコンを使用するか否かを設定する(ステップS12)。これらの設定内容は、通信装置24に記憶された自車両の型式と走行制御装置23から読み出された運転者の運転特性とともにデータセンタ3に送信される(ステップS13)。
【0064】
データセンタ3では、電気自動車2からのナビゲーションの要求があると(ステップS14)、ナビゲーションサーバ32は、目的地と電気自動車2の現在位置または出発地、および経由地設定がなされていれば経由地の情報に基づいて、データベース35から地図情報の必要な部分を読み出してリンクの距離等を参照して目的地に誘導するための経路を探索し(ステップS15)、目的地までのリンクの距離の合計が最短になる経路を選定する(ステップS16)。
【0065】
分析サーバ33は、電気自動車2から送信されてきた設定内容にエアコン使用信号が含まれるか否かを判断し(ステップS17)、電気自動車2の型式および運転者の運転特性に基づいて、エアコン使用信号が含まれる場合はデータベース35のエアコン使用時のテーブルを参照し(ステップS18)、エアコン使用信号が含まれない場合はデータベース35のエアコン不使用時のテーブルを参照して(ステップS19)、ナビゲーションサーバ32で選定された経路に属するリンクごとのバッテリの平均消費量を抽出する(ステップS20)。
【0066】
分析サーバ33は、選定された経路に属する全リンクのバッテリの平均消費量の合計を計算し(ステップS21)、経路に属するノードおよびリンクの組が経路情報として電気自動車2に送信され、さらに、経路に属するリンクごとのバッテリの平均消費量およびその合計の値が電気自動車2に送信される(ステップS22)
【0067】
データセンタ3から電気自動車2に送信があると(ステップS23)、送信されてきた経路がナビゲーション装置21に設定され(ステップS24)、表示パネル26に表示された地図上にノードの位置に沿うように経路が線状に重畳表示される。
【0068】
そして、ナビゲーション装置21は、経路に属するリンクごとのバッテリの各平均消費量とバッテリ管理装置22から送信されてくる自車両の車載バッテリの残存容量とを対比させて、経路に沿って走行した場合に残存容量で目的地まで到達できるか否かを判断し、目的地に到達できない場合には走行可能距離はどの程度であり、どこまで走行可能かの推定を行う(ステップS25)。
【0069】
具体的には、ナビゲーション装置21は、自車両の車載バッテリの残存容量をバッテリ管理22から読み取り、データセンタ3から送信されてきた経路に属するリンクごとのバッテリの平均消費量の合計と比較して、図7に示す残存容量Aや残存容量Bのように、残存容量がバッテリの平均消費量の合計より大きければ目的地に到達可能であると推定する。
【0070】
そして、残存容量Aのように、残存容量の90%未満で目的地に到達できる場合は、表示パネル26の地図上の経路をすべて黒色で表示する。
【0071】
また、残存容量Bのように、残存容量で目的地には到達可能であると推定されるが、目的地に到達するまでに残存容量の90%以上を消費すると推定される場合は、残存容量の90%で到達可能なノードNmまでの経路を黒色で表示し、ノードNmから目的地までの経路を黄色で表示して、運転者に車載バッテリの残存容量が少なくなり充電を行った方がよいことを知らせる。
【0072】
図7に示す残存容量Cのように、車載バッテリの残存容量がバッテリの平均消費量の合計より小さい場合には、ナビゲーション装置21は目的地に到達不可能であると推定する。そして、残存容量の90%で到達可能なノードNm-2までの経路を黒色で表示し、ノードNm-2から残存容量100%で到達可能なノードNm-1までの経路を黄色で表示して充電が必要であることを運転者に知らせ、ノードNm-1から目的地までの経路を赤色で表示して到達不可能であることを知らせる。
【0073】
図8は、図7の残存容量Cの場合に表示パネルに表示される地図および経路を説明する図である。本実施形態では、このように、経路はノードNm-2までは黒線で表示され、ノードNm-2より先は黄色で示される。なお、ノードNm-2より先の部分は、図8では説明のために黒色の点線で示されているが、実際には黄色の実線で表示される。また、地図上の「ノードNm-2」の表示は説明のために記載されたものであり実際には表示されず、ノードNm-1は表示パネル上のこの地図には含まれていない。
【0074】
本実施形態では、ナビゲーション装置21は、図8に示すように、このように経路を黄色で表示することにより充電が必要であるとの注意を喚起すると同時に、記憶媒体28の地図情報から充電設備の位置情報を読み出して表示パネル26の地図上に重畳表示する。また、ナビゲーション装置21は、経路に属する各リンクの距離を合計して目的地までの距離を算出し、その目的地までの距離と現在までの走行距離との差を算出して、表示パネル26の下方に「目的地まであと」としてその差を表示する。
【0075】
また、ナビゲーション装置21では、運転者の注意を喚起するために、表示パネル26の下方に現在位置からの「推定走行可能距離」が表示される。この「推定走行可能距離」の算出は、図7において残存容量Cで到達可能なノードNm-1までの各リンクの距離を合計し、さらにノードNm-1から走行可能な距離をバッテリの消費量から算出して前記合計に加算することで、まず、残存容量Cで走行可能と推定される推定走行可能距離を算出する。そして、その推定走行可能距離から現在までの走行距離を減じて前記「推定走行可能距離」を求めて表示する。
【0076】
推定走行可能距離は、電気自動車2の出発時点における車載バッテリの残存容量Cから一義的に算出される定数値であるから、電気自動車2の走行距離が増加するにつれて表示される「推定走行可能距離」の数値は減少していく。
【0077】
以上のように、本実施形態の走行可能距離推定システムによれば、データセンタ3の地図情報のリンクに相当する道路を実際に走行した多数の電気自動車2からそのリンクを走行した場合のバッテリ消費量のデータを収集し、それをすべてのリンクについて行ってデータを蓄積する。さらに、そのデータを電気自動車2の年式等を含む型式ごとに分けて蓄積する。
【0078】
そのため、データセンタ3に蓄積されるバッテリ消費量のデータをより現実に即したデータとすることができ、これからそのリンクに相当する道路を走行しようとする電気自動車2の車載バッテリの消費量を現実的な数値で推定することができる。また、データは電気自動車2の年式等を含む型式ごとに分けて蓄積されるため、その型式特有のバッテリの消費傾向に基づいた推定を行うことができると同時に、バッテリや駆動モータ等の経時劣化をも加味した推定を行うことが可能となる。
【0079】
さらに、電気自動車2の運転者の加減速のしかた、すなわち、加減速を激しく行うか緩やかに行うかによってバッテリの消費量は比較的大きく変わってくるが、そのような運転者の運転特性に基づいてデータをさらに細かく分類して収集することで、運転者の運転特性をも含めた形で推定を行うことが可能となる。
【0080】
このように、本実施形態の走行可能距離推定システムでは、データセンタでのデータの蓄積において、データをリンクごとに年式を含む型式、運転特性、エアコンの使用の有無などバッテリの消費量に影響し得る要素に分けてデータを詳細に分類することができる。また、このようなデータをその道路を実際に走行した電気自動車2から多数収集することにより、走行可能距離の推定の基となるデータをより信頼性が高くより現実に即したものとすることができる。
【0081】
また、走行可能距離の推定においては、ナビゲーションの結果選定された経路について、個々の電気自動車自体の状態およびその走行状態に即したテーブルを選び、その詳細に分類されたバッテリの平均消費量のデータの中からその電気自動車2の状態に適合する分類のデータに基づいて走行可能距離を推定するため、推定された走行可能距離の信頼性が非常に高いものとなる。
【0082】
さらに、このように詳細に分類され、かつ信頼性の高いデータに基づいて推定するため、電気自動車の車載バッテリの残存容量で走行可能な距離を精緻に推定することが可能となる。
【0083】
なお、前記走行可能距離の推定を、前記実施形態のように電気自動車2で行う代わりに、データセンタ3で行わせるように構成することも可能である。すなわち、図6に示した走行可能距離の推定の手順において、電気自動車2からデータセンタ3に設定内容や型式、運転特性を送信する際に(ステップS13)、電気自動車2の車載バッテリの残存容量をも同時に送信し、データセンタ3から送信された経路に属する各リンクのバッテリの平均消費量等に基づいて電気自動車2で行っていた前記走行可能距離の推定をすべてデータセンタ3の分析サーバ33で行い、その結果を電気自動車2に送信するように構成してもよい。
【0084】
また、本実施形態では、電気自動車2で設定された目的地まで誘導する経路をデータセンタ3のナビゲーションサーバ32によるナビゲーションによって選定する場合について述べたが、入力装置としてのナビゲーション装置21で運転者側が予め経路を設定し、その経路の情報をデータセンタ3に送信し、データセンタ3ではその設定された経路に基づいて処理を行うように構成することも可能である。この場合、ナビゲーション装置21の表示パネル26には運転者が設定した経路が前述したように色分けされて表示される。
【0085】
さらに、本実施形態では、電気自動車2における運転者の運転特性は、走行制御装置23で過去のアクセル開度のデータから分類して電気自動車ごとに決められた値であることが前提とされているが、このほかにも、例えば、所定時間内のアクセル開度のデータの変化率からその都度運転特性が更新されるように構成してもよく、また、リンクごとに運転特性を分類してデータセンタ3に送信するように構成してもよい。
【0086】
また、アクセル開度のいわゆる生データをデータセンタ3に送信して、データセンタ3で分類を行うように構成することも可能である。また、運転特性をアクセル開度の変化率で分類する代わりに、例えば、電気自動車2に加速度センサを取り付けて、閾値以上の加減速が測定される頻度等で運転特性を分類するように構成することもでき、運転者が緩やかに加減速するのか激しく加減速を行うのかを分類可能なデータを収集できるものであればよい。
【0087】
一方、データセンタ3のデータベース35に記憶されているテーブルを、さらに道路の混雑状況等を反映させるために時間帯で分類したり、或いはエアコン以外にも、例えば、CDやMD、ラジオ等の使用の有無などバッテリの消費量に影響し得る他の要素でさらに細かく分類することも可能である。
【0088】
また、データセンタ3の各サーバ31〜34は、複数のサーバの機能を1つに集約したサーバを用いて構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本実施形態に係る走行可能距離推定システムの全体構成を説明する図である。
【図2】地図情報におけるノードとリンクを説明する図である。
【図3】バッテリの消費量に関するテーブルを説明する図である。
【図4】運転特性についてさらに細かく分類したテーブルを説明する図である。
【図5】電気自動車からデータセンタへのデータの蓄積の手順を示すフローチャートである。
【図6】データセンタに蓄積されたバッテリの平均消費量のデータに基づいて電気自動車の走行可能距離が推定される手順を示すフローチャートである。
【図7】推定走行可能距離を反映した経路の表示パネルへの表示のさせ方の原理を説明する図である。
【図8】図7の残存容量Cの場合に表示パネルに表示される地図および経路を説明する図である。
【符号の説明】
【0090】
1 走行可能距離推定システム
2 電気自動車
21 ナビゲーション装置
22 バッテリ管理装置
23 走行制御装置
24 通信装置
28 記憶媒体
3 データセンタ
32 ナビゲーションサーバ
33 分析サーバ
35 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載バッテリの残存容量およびバッテリ消費量を計測可能なバッテリ管理装置と、
ノードの位置および前記ノード間を結ぶ識別コードが付されたリンクが設定された地図情報が保存された記憶媒体と、
前記リンクの識別コードとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と自車両の型式とを対応付けてデータセンタに送信する通信装置と、
目的地または経路を設定可能な入力装置と、
推定走行可能距離を表示する表示装置と
を備え、
前記表示装置は、前記リンクの識別コードとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と前記電気自動車の型式とが対応付けて記憶されているデータセンタのデータベースから、ノードの位置および前記ノード間を結ぶ識別コードが付されたリンクが設定されて前記データベースに記憶された地図情報と前記入力装置で設定された前記目的地に基づいて選定された経路または前記入力装置で設定された経路に属するリンクごとのバッテリ消費量が読み出され、前記車載バッテリの残存容量と前記経路に属するリンクごとのバッテリ消費量との比較によって推定された前記電気自動車が前記経路に沿って走行した場合の前記電気自動車の走行可能距離を表示することを特徴とする走行可能距離推定システム。
【請求項2】
電気自動車とデータセンタとより構成され、
前記電気自動車は、
車載バッテリの残存容量およびバッテリ消費量を計測可能なバッテリ管理装置と、
ノードの位置および前記ノード間を結ぶリンクが設定された地図情報が保存された記憶媒体と、
前記リンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と自車両の型式とを対応付けて前記データセンタに送信する通信装置と、
を備え、
前記データセンタは、
前記リンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と前記電気自動車の型式とが対応付けて記憶されているデータベースと、
前記リンクの結合によって形成される経路に属するリンクごとのバッテリ消費量を前記データベースから読み出す分析サーバと、
を備え、
前記車載バッテリの残存容量と前記リンクごとのバッテリ消費量を比較して、前記電気自動車の走行可能な距離の推定を行うことを特徴とする走行可能距離推定システム。
【請求項3】
電気自動車とデータセンタとより構成され、
前記電気自動車は、
車載バッテリの残存容量およびバッテリ消費量を計測可能なバッテリ管理装置と、
ノードの位置および前記ノード間を結ぶ識別コードが付されたリンクが設定された地図情報が保存された記憶媒体と、
前記リンクの識別コードとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と自車両の型式とを対応付けて前記データセンタに送信する通信装置と、
目的地または経路を設定可能な入力装置と、
推定走行可能距離を表示する表示装置と
を備え、
前記データセンタは、
前記リンクの識別コードとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量と前記電気自動車の型式とが対応付けて記憶されているデータベースと、
ノードの位置および前記ノード間を結ぶ識別コードが付されたリンクが設定されて前記データベースに記憶された地図情報と前記入力装置で設定された前記目的地に基づいて選定された経路、または前記入力装置で設定された経路に属するリンクごとのバッテリ消費量を前記データベースから読み出す分析サーバと
を備え、
前記車載バッテリの残存容量と前記経路に属するリンクごとのバッテリ消費量とを比較して、前記電気自動車が前記経路に沿って走行した場合の走行可能な距離の推定を行うことを特徴とする走行可能距離推定システム。
【請求項4】
前記電気自動車は、前記データセンタから送信される前記経路に属するリンクごとのバッテリ消費量に基づいて前記走行可能な距離の推定を行う推定装置を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の走行可能距離推定システム。
【請求項5】
前記データセンタの前記分析サーバは、前記電気自動車から送信される前記車載バッテリの残存容量に基づいて前記走行可能な距離の推定を行い、前記電気自動車に送信するように構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の走行可能距離推定システム。
【請求項6】
前記電気自動車は、自車両の加速および減速に関する運転特性を分類可能な加減速測定装置を備え、
前記データセンタの前記データベースは、前記リンクとそのリンクを走行するために消費した前記バッテリ消費量とを前記加減速測定装置で分類された前記運転特性にも対応付けて記憶するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の走行可能距離推定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−115623(P2006−115623A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300966(P2004−300966)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】