説明

超音波検査システム

【課題】正確なアライメントを必要とせず、検査物体の硬さや重さに関する情報を取得することができる超音波検査システムを供給する。
【解決手段】超音波送受波器1から広帯域変調波を検査対象物体11に送波し、検査対象物体11にラム波を励起する、ラム波3は円筒形状の検査対象物体11を円周方向に周回し、超音波受波器2によってラム波3周回周期に同期した周期性をもった受信信号が獲られる。これらの周期性を解析することによって、ラム波の伝搬速度が推定され、検査対象物体11の硬さ、重さなどが推定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査システムに関する。特に超音波を用いて、検査対象物の構造的な硬さを調査するための検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場のラインなどの管理された環境下では、ロボットハンドを用いて物体をハンドリングすることが行われている。この場合、ロボットハンドによる把持の対象となる物体(以下、「ワーク」と称する。)が特定されており、ワークの形状や硬さが決まっているため、把持力などの制御パラメータは事前に決定しておくことができる。
【0003】
一方、ロボットハンドを家庭に導入し、食器洗いや掃除などの家事支援に利用することが検討されている。このような場合、一般的にはワークが特定されていないため、ハンドリング時における把持力などのパラメータを前って決定しておくことができない。したがって、把持を行う前に、ワークに関する情報をセンシングし、センシング情報に基づいて把持力などのパラメータを決定することが好ましい。このように、把持を行う前に対象となるワークに関する情報を取得することを、「事前センシング」と称することにする。ハンドリングに必要な把持力などのパラメータの決定には、ワークの構造的な硬さに関わる情報が重要であるため、事前センシングにより、ワークの硬さに関する情報を取得することが好ましい。
【0004】
ワークの構造的な硬さとは、ワークを構成する素材のヤング率、剛性率などの物理パラメータのみで決定されるものではなく、ワークの形状や寸法に関係する物体自体の強さ(特に「たわみ剛性」)のことである。例えば、ヤング率や剛性率などの物理パラメータは、厚さに依存しないため、厚さ100μmのアルミニウム板でも厚さ数cmのアルミニウムバルク材でも、共通の値を示すが、厚さ100μmのアルミニウム板はバルク材に比べて柔軟であり、容易に変形させることができる。また、形状の違いによっても、物体自体の強さが異なる。すなわち、同じアルミニウム板でも、張力が付与されている場合と付与されていない場合とでは、強さが異なる。具体的には、アルミニウム板の両端に適当な張力を印加しておくと、張力と直交する方向に力を与えても、アルミニウム板は容易に変形せず、変形したとしても元の形状に復元する。また、アルミニウム缶は、上部または底部に剛性の高いリブ構造を有し、缶の側面に張力が印加されているため、通常のアルミニウム板に比べて物体自体の強さが高められている。
【0005】
硬さに関わる情報をセンシングする手法として、弾性波を利用する各種の方式が知られている。バルク物体については、縦波、横波の精密測定からヤング率やポアソン比が求められる。一方、板状物体については、板波(ラム波)の伝搬特性から弾性特性や内部欠陥などを推定する試みが行われている。板状物体の弾性的あるいは構造的性質を被接触で検出する方式としては、特許文献1に記載の方式が知られている。
【0006】
図16を参照して、特許文献1に開示されている超音波検査方式を説明する。
【0007】
図16に示されている超音波送波器1は、板状物体102に対して設定された周波数の超音波パルス108を送波する。超音波パルス108は、伝搬経路104aを通って、角度θで板状物体102の表面に到達する。超音波送波器1から送波される超音波の周波数および送波角度θは、板状物体102において所望のラム波109を励起するように予め設定されている。超音波パルス108によって励起されたラム波109は、伝搬経路103に沿って板状物体102を伝搬する。
【0008】
伝搬経路103を伝搬するラム波109は、板状物体102を伝搬しながら周囲媒質(この場合は空気)に対して角度θで超音波111を放射する。放射された超音波111は、伝搬経路104bに沿って伝搬し、超音波受波器2に到達する。超音波受波器2は、超音波111を電気信号に変換する。
【0009】
超音波111が放射される角度は、励起超音波パルス108が入射した角度θに等しい。したがって、受波器2は、板状物体102から角度θで放射された超音波111を適切に受け取れるように配置されている。
【0010】
板状物体102には内部欠陥105が存在しているため、内部欠陥105が広がる領域106の境界においてラム波の多重反射現象107が発生する。したがって、受波される信号には多重反射107に起因する多数の超音波パルス110が含まれる。受波信号中の多数のパルスを制御手段100で解析することにより、内部欠陥の位置および寸法が推定され、推定結果が表示手段101に表示される。
【特許文献1】特開2002−195987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された方式は、検査対象物体である板状物体102の厚さや材質が予め明らかである場合に用いられ、超音波送波器1および超音波受波器2と板状物体102との位置関係や角度θが事前に正確に調整されている。そのため、家事支援ロボットなどにおいて想定される不定の対象物体(厚さや材質等がわからない)の把持・ハンドリングに対して、ロボットハンドが対象物体を把持するための非接触状態での事前センシングに使用することは困難である。
【0012】
家事支援ロボットによる把持・ハンドリングを行う場合は、ワーク(検査対象物)が未知であり、検査対象物体に対する超音波送波器および超音波受波器の相対的な位置決め精度が低い。このため、特許文献1に記載されている超音波送受波器を家事支援用のロボットハンドに組み込んだ場合は、送受波器と検査対象物体との間の相対位置関係や送受波角度θの位置決めの精度が著しく低下し、送受波角度θや使用される周波数を事前に決定できない。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、家庭内にあり得るような多種多様で不特定の検査対象物体について、その構造的な硬さなどの情報を事前センシングよって推定できる超音波検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の超音波検査システムは、検査対象物体に超音波を照射し、前記検査対象物体上にラム波を励起する超音波送波器と、前記検査対象物体を前記ラム波が伝搬することによって前記検査対象物体から周囲空間に放射される超音波の少なくとも一部を受け、受波信号を出力する超音波受波器と、前記超音波送波器および前記超音波受波器を保持し、前記検査対象物に対する相対位置関係を決定する保持・移動機構と、前記ラム波の伝搬経路を推定するために必要な前記検査対象物体の寸法に関する情報を取得する寸法情報取得部と、前記情報と前記超音波受波器から出力された前記受波信号とに基づいて、前記検査対象物体のたわみ剛性に関する情報を取得する信号解析部とを備える。
【0015】
好ましい実施形態において、前記保持・移動機構を移動させ、前記検査対象物体に対する前記超音波送波器および超音波受波器の相対位置関係を制御する機構制御部と、前記超音波送波器に広帯域変調駆動信号を供給することにより、前記超音波送波器から超音波を放射させる送信部と、前記超音波受波器から出力された前記受波信号を受け取り、出力信号を前記信号解析部に入力する受信部と、前記機構制御部、送信部、受信部、および信号解析部の動作を制御する中央処理部とを備える。
【0016】
好ましい実施形態において、(i)前記検査対象物体に励起される前記ラム波の伝搬経路を推定するための前記検査対象物体の寸法パラメータの情報を取得するステップと、(ii)前記機構制御部の制御により、前記保持・移動機構を移動させ、前記超音波送波器ならびに超音波受波器を前記検査対象物体に対して適切な相対位置に配置するステップと、(iii)前記送信部の駆動信号によって前記超音波送波器から広帯域変調波を前記検査対象物体の表面に向けて所定の角度で送信するステップと、(iv)前記検査対象物体に到達した前記広帯域変調波によって前記検査対象物体に前記ラム波を励起するステップと、(v)前記検査対象物体に励起された前記ラム波が前記検査対象物体を伝搬することによって周囲媒体に超音波を送波させるステップと、(vi)前記ラム波伝搬によって前記検査対象物体から発生した超音波を前記超音波受波器で受波するステップと、(vii)前記受信部を介して前記超音波受波器の出力する受波信号を前記信号解析部へ伝達し、前記信号解析部において前記検査対象物体の情報を抽出するステップとを実行する。
【0017】
好ましい実施形態において、前記広帯域変調波は周波数変調されたチャープ信号である。
【0018】
好ましい実施形態において、前記超音波受波器は、前記ラム波の伝搬方向を含む面内方向に広い指向性を有している。
【0019】
好ましい実施形態において、前記信号解析部は、前記受波信号の周期性を解析することにより、前記ラム波の伝搬速度を推定する。
【0020】
好ましい実施形態において、前記検査対象物体は円筒形状、または円筒形状を一部含む形状を有しており、前記ラム波の伝搬方向が上記円筒形状の円周方向である。
【0021】
好ましい実施形態において、前記寸法パラメータは、前記円筒形状の径方向サイズを含む。
【0022】
本発明のロボットは、上記何れかに記載の超音波検査システムと、検査対象物体を把持することのできるロボットアームと、前記ロボットアームを駆動するアーム制御部とを備える。
【0023】
本発明による超音波検査方法は、(i)検査対象物体に励起されるラム波の伝搬経路を推定するための前記検査対象物体の寸法パラメータを計測するステップと、(ii)超音波送波器ならびに超音波受波器を前記検査対象物体に対して適切な相対位置に配置するステップと、(iii)超音波送波器から広帯域変調波を前記検査対象物体の表面に向けて所定の角度で送信するステップと、(iv)前記検査対象物体に到達した前記広帯域変調波によって前記検査対象物体に前記ラム波を励起するステップと、(v)前記検査対象物体に励起された前記ラム波が前記検査対象物体を伝搬することによって周囲媒体に超音波を送波させるステップと、(vi)前記ラム波伝搬によって前記検査対象物体から発生した超音波を前記超音波受波器で受波するステップと、(vii)前記寸法パラメータと前記超音波受波器の出力する受波信号に基づいて、前記検査対象物体のたわみ剛性に関する情報を取得するステップとを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明の超音波検査システムは、検査対象物が未知であって、かつ家事支援ロボットに実装されるセンシングシステムのように検査対象物体と超音波送波器および超音波受波器の相対的な位置決め精度がからなずしも高くない場合においても、検査対象物体の構造的な硬さなどの情報を推定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明による超音波検査システムの実施形態を説明する前に、本発明の動作原理を説明する。
【0026】
本発明の超音波検査システムは、基本的な構成要素として、超音波送波器、超音波受波器、ならびに超音波送波器および超音波受波器を保持し、検査対象物に対する相対位置関係を決定する保持・移動機構とを備えている。
【0027】
本発明では、超音波送波器から検査対象物体に超音波を照射し、検査対象物体上にラム波を励起する。そして、励起されたラム波の伝搬によって周囲空間に放射される超音波の少なくとも一部を超音波受波器で受波することにより、物体情報を収集する。収集される物体情報の1つは、検査対象物体上を伝搬するラム波の伝搬時間である。ラム波の伝搬経路を対象物体の外観情報から推定すれば、ラム波の伝搬時間からラム波の伝搬速度が推定できる。ラム波は進行方向に対して垂直な振動変位成分をもつ弾性波であり、その伝搬速度は、検査対象物体の硬さにかかわる「たわみ剛性」に依存する。したがって、伝搬速度を推定することにより、物体の硬さ(たわみ剛性)を非接触で推定することができる。
【0028】
本発明による超音波検査システムは、以下のステップ(i)からステップ(vii)を実行することによって行われる。
【0029】
(i)検査の最初に、ラム波の伝搬経路の長さを推定するために、伝搬経路に関係する検査物体の寸法パラメータの情報を取得する。この情報の取得は、超音波、光、磁気などを応用した測距システムや、近接センサ、あるいはステレオカメラや距離画像センサなどによる計測で実行することができる。本発明による超音波検査システム以外の計測装置や計測システムによって求められた寸法パラメータのデータを取得するために本発明の超音波検査システムは寸法情報取得部を備えている。家事支援ロボットなどのロボットには、カメラシステムが搭載されている場合が多く、カメラシステムの画像出力から画像処理により、物体寸法、形状を求め、ラム波の伝搬経路およびその長さを推定することができる。こうして得た寸法パラメータに関する情報が寸法情報取得部に入力される。なお、本発明の超音波検査システムを使って物体表面との距離を計測し、保持・移動機構を移動させながら物体形状を把握することができるため、これらの情報からラム波の伝搬経路およびその長さを推定することもできる。この場合、寸法情報取得部そのものが計測装置として機能することになる。寸法パラメータとしては、必ずしも全体にわたる寸法パラメータを計測する必要はなく、伝搬経路およびその長さに関する寸法パラメータが計測できれば充分である。例えば、カメラシステムの画像出力を解析して、検査対象が円筒形であると判断できた場合には、円筒の直径情報が推定できれば円周方向のラム波の伝搬経路およびその長さが推定できる。
【0030】
(ii)保持・移動機構を移動させ、超音波送波器および超音波受波器を検査対象物体に対して適切な相対位置に配置する。「適切な相対位置」とは、超音波送波器の送波方向が検査対象物体の側面の一部に斜めに交わり、かつ超音波受波器の受波方向中心が検査対象物体の側面の他の一部に斜めに交わることにより、ラム波による放射方向に対向する位置関係である。本発明では、検査対応物体を正確に固定する保持機構は想定していないため、生産ラインなどにおいて実現されている正確な精度での相対位置決めは必要ない。したがって、検査対象物体と超音波の送受波の角度を含めた位置情報を検出して位置決めに利用する必要はない。本位置決めプロセスに関しては、カメラによって取得できる画像情報や、他の測距センサを利用してもよい。また、超音波送波器および超音波受波器を用いて「エコーロケーション」を実行することにより、検査対象物体に対する位置関係を計測して適切な位置関係を決定してもよい。
【0031】
(iii)送信部から超音波送波きに広帯域の駆動信号を送出することにより、超音波送波器から広帯域変調波(超音波)を検査対象物体の表面に向けて斜めに送信する。広帯域変調波は周波数変調されたチャープ信号が好適である。周波数は、例えば100kHz〜1MHz程度の周波数帯域である。
【0032】
(iv)検査対象物体に斜めに到達した広帯域変調波(励起超音波)により、検査対象物体にラム波を励起する。ラム波は、検査対象物体の材質および周波数と、表面への入射角度とが特定の条件を満たす場合に効率よく励起される。すなわち、ラム波励起メカニズムそのものが入射角度および周波数を選択するメカニカルフィルタの機能を有する。したがって、周波数や入射角度を正確に限定しなくても、広帯域変調波によって特定(未知)の周波数帯域のラム波が効率的に励起される。
【0033】
(v)検査対象物体に励起されたラム波が検査対象物体を伝搬することにより、周囲媒体に超音波を送波(放射)する。ラム波は、周波数と検査対象物体の材料特性および厚さによって決定される伝搬速度で検査対象物体表面を伝搬する。このラム波の伝搬に伴い、周囲媒質(ここでは空気)への超音波の放射が行われる。放射角度はステップ(iii)においてラム波の励起に使われた超音波の入射方向と一致する。
【0034】
(vi)ラム波伝搬によって検査対象物体から発生した超音波を超音波受波器によって受波する。ステップ(i)の超音波送波器および超音波受波器の位置決めは正確ではない
ため、超音波受波器と検査対象物体表面との角度が励起超音波の入射角度に一般には一致しない。本発明では、超音波受波器のラム波伝搬面内での指向性を広げることにより、放射角度の影響を抑制するため、放射超音波を受波できる。受波超音波信号は、励起超音波の周波数帯域全域に感度を持つ広帯域な受波器を用いる。
【0035】
(vii)超音波受波器から出力された受波信号を信号解析部によって解析し、検査対象物体の情報を抽出する。超音波受波器から出力され受波信号は、受信部によって増幅されることが好ましい。受信部は適当な増幅度で受波信号を増幅し、信号解析部に出力する。信号解析部では、受波信号をA/D変換によってデジタル化し、FFT、デジタル検波などの処理を行う。そして、保持・移動機構の位置情報を含む他の情報を利用することにより、ラム波の伝搬速度、振幅変化率などを解析して物体情報を抽出する。
【0036】
なお、検査対象物体は、円筒形状または円筒形状を一部に含む形状を有していることが最も好ましい。円筒形状の円周方向にラム波を伝搬させると、ラム波が円筒形状を周回することによって、周期性をもった複数回の受波信号取得することができるからである。これらの周期性を解析することにより、簡便にラム波伝搬速度などの検査対象物体の構造に関する情報を推定することが可能になる。この場合には、必要な寸法パラメータは円筒の直径情報だけでよい。
【0037】
また、検査対象物体が円筒形状に近い楕円形状の検査対象物体や、角をもつ多角形形状を有している場合にも、本検査システムは適用可能である。楕円形状の場合には、長軸および短軸の情報から伝搬経路が推定でき、また円筒形状と同様にラム波が楕円を周回する周期を解析することが可能となる。多角形形状については、連続形状であれば角を越えてラム波は伝搬することが可能である。また、角を越えてラム波が全く観測できない場合には、角には、構造的な不連続(例えば、接触しているだけ)の可能性があるといった情報を抽出することができる。これらの情報は、ロボットハンドの把持・ハンドリング作業にとって、極めて重要な情報である。
【0038】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0039】
(第1の実施形態)
まず、図面を参照しながら、本発明による超音波検査システムの第1の実施形態を説明する。以下の各図において、同じ構成要素については同じ符号を用い、重複する説明を省略する場合がある。
【0040】
最初に図1を参照する。図1は、本実施形態における超音波検査システムの検査状態の一例と、制御処理系の機能ブロック図とを示している。
【0041】
図示されている超音波送波器1および超音波受波器2は、保持・移動機構9によって保持されている。保持・移動機構9の移動・静止は、機構制御部8によって制御される。保持・移動機構9による位置決め機能により、超音波送波器1および超音波受波器2は、それぞれ、検査対象物体11の表面における異なる2つの領域12および13に対して適当な角度を形成するよう対向している。本実施形態における検査対象物体11は、円筒形状の検査対象(アルミニウム缶)である。図示されている状態では、超音波送波器1の送波の中心軸14が領域12を向いているが、超音波受波器2の受波の中心軸15は領域13を向いている。このような位置決めは、高い精度で実行される必要はなく、家事支援ロボットで使用可能なセンサおよび制御装置で容易に実現可能である。
【0042】
超音波送波器1は送信部5によって駆動され、検査対象物体11に向けて励起超音波信号4aであるチャープ信号波を送波する。検査対象物体11の表面における領域12で励起されたラム波3は、図の点線矢印方向に沿って領域13に伝搬し、伝搬に伴い放射超音波4bを放射する。領域13から放射された超音波4bは、超音波受波器2によって受波される。超音波受波器2から出力される信号は、受信部6によって増幅処理された後、信号解析部7によって解析される。信号解析部7は、寸法情報取得部17に接続されており、この寸法情報取得部17は、ラム波の伝搬経路を推定するために必要な検査対象物体11の寸法パラメータに関するデータを取得する。送信部5、受信部6、信号解析部7、機構制御部8、および寸法情報取得部17は、中央処理部10によって制御される。
【0043】
次に、図2から図5を参照しながら、励起超音波によるラム波の励起および放射超音波の発生を説明する。
【0044】
まず、図2を参照する。図2は、ラム波の励起および伝搬・放射現象を模式的に示した図である。
【0045】
図2に示される検査対象物体11は、平面形状を有しているが、以下の説明は、他の形状を有している場合にも成立する。超音波送波器1は、送波の中心軸14が検査対象物体11の法線に対して角度θを形成するように斜めに配置されている。同様に、超音波送波器1は、受波の中心軸15が検査対象物体11の法線に対して角度θを形成するように斜めに配置されている。より具体的には、超音波送波器1および超音波受波器2は、検査対象物体11の表面を垂直に横切る平面に対して対称な関係を有するように配置されており、超音波送波器1の送波の中心軸14の先端は検査対象物体11の点P1と一致し、超音波受波器2の受波の中心軸15の後端は検査対象物体11の点P2に一致している。
【0046】
超音波送波器1は指向性20を有し、超音波受波器2は指向性21を有している。検査対象物体11と指向性20とが重なる部分が、図1における領域12に相当し、検査対象物体11と指向性21とが重なる部分が領域13に相当する。図2において示していない励起超音波は、点P1付近においてラム波3を励起する。
【0047】
次に図3を参照する。図3は、ラム波励起現象における励起超音波とラム波の関係を模式的に示した図である。図3に示すように、励起超音波4aの波長をλ1、ラム波の波長をλ2とする場合、λ2・Sinθ=λ1の条件が成立するときに効率よくラム波が励起される。入射角度θ=90の場合、ラム波の波長λ2は励起超音波4aの波長λ1に等しくなるが、入射角度θ<90の場合、ラム波の波長λ2は励起超音波4aの波長λ1よりも長くなる。
【0048】
次に図4を参照する。図4は、板状の検査対象物体の断面図であり、ラム波の伝搬に伴って検査対象物体が上下に弾性的に変形している様子を示している。図4に示すように、ラム波の伝搬には、非対称モード(Aモード)と対称モード(Sモード)とが存在する。図4では、それぞれのモードにおける最低次のモード(A0モードおよびS0モード)が示されている。
【0049】
ラム波は、強い周波数分散性を示し、周波数によって伝搬速度が大きく変化する。図5は、一般的なアルミニウム板(縦波CL=6300m/s、横波CT=3100m/s)の場合のラム波の分散曲線(計算結果)を示すグラフである。グラフの横軸は「周波数と板厚の積」を示し、縦軸は「位相速度」を示している。ここで、「位相速度」は、伝搬速度と同意義である。
【0050】
図5のグラフにおけるA0モードの曲線に注目すると、「周波数と板厚の積」が2×103(Hz・m)以下の領域で位相速度が大きく低下し、特に分散性が大きいことがわかる。この分散性が大きい領域におけるラム波を用いることにより、構造体の硬さ(強さ)に関する情報を精度よく得ることが可能になる。
【0051】
上述したように、励起超音波4aの入射角度θが90°のとき、励起されるラム波の伝搬速度が最も低くなる。計測可能な最も遅い伝搬速度は、空気中における音波の伝搬速度(約340m/s)である。本発明による超音波検査システムでは、空気中の音波の伝搬速度以上の伝搬速度を計測できれば、ハンドリングできる強度を有する構造体であると判断できると考えられる。本実施形態では、伝搬モードとしてA0モードを利用し、計測したラム波の音速に基づいて構造体の硬さを推定する。
【0052】
次に、図6および図7を参照しながら、本実施形態の検査過程を説明する。図6は、本実施形態における筒体の直径計測の過程を模式的に示す図であり、図7は、本実施形態におけるラム波伝搬現象を計測する過程を示す図である。
【0053】
図示されている査対象物体11は、円筒状物体である。一般に、検査対象物体11は種々の形状を有し得るため、検査に必要な寸法パラメータを推定するのは、簡単ではない。しかし、円筒状物体は、その直径を計測すれば、円周方向のラム波伝搬経路を推定できるため、必要な寸法パラメータを比較的容易に取得することが可能である。円筒状物体の直径は、カメラや他の測距センサ等によって計測し得るが、本実施形態では、超音波送波器1および超音波受波器2を送受信モードで利用することによって測定する。言い換えると、本実施形態における寸法情報取得部17(図1)は、送信部5、受信部6、信号解析部7、機構制御部8、および中央処理部10によって実現されているとも言える。
【0054】
まず、本実施形態では、図6に示すように、保持・移動機構(図6において不図示)を用いて超音波送波器1および超音波受波器2を移動させつつ、超音波の送受信を行う。
【0055】
最初、超音波送波器1から超音波受波器2への送受信モードだけを使う(位置A−B)。次に、保持・移動機構を制御して、超音波送受波器1、2を位置C−Dに移動させる。この位置で、超音波送波器1から送波された超音波は、検査対象物体11によって反射されて超音波受波器2には到達しない。この時点で、超音波送受波器1、2をそれぞれ送受信モードに切り替えて反射波のレベルと伝搬時間を計測する。これにより、超音波送受波器1から検査対象物体11までの距離、および超音波受波器2から検査対象物体11までの距離を求めることができる。
【0056】
さらに保持・移動機構を用いて超音波送波器1および超音波受波器2を位置E−Fに移動させると、超音波送波器1および超音波受波器2の出力が最大になり、伝搬時間も最小になる。このとき、超音波送波器1と超音波受波器2とを結ぶ直線上に検査対象物体11の最大径(直径)が重なることになる。その結果、超音波送受波器1から検査対象物体11までの距離、および超音波受波器2から検査対象物体11までの距離の合計値(隙間距離)を求めることができる。
【0057】
つぎに、超音波送波器1および超音波受波器2を位置G−Hに移動させると、位置C−Dにおける状態と同様の状態になり、超音波送波器1および超音波受波器2の双方で出力が観測されなくなる。
【0058】
以上の一連の計測動作によって得た位置E−Fにおける隙間距離を、超音波送波器1と超音波受波器2との間隔から差し引くことにより、検査対象物体11の直径を求めることが可能になる。このようにして、検査に必要な寸法パラメータを推定した後、検査のためのプロセスを実行する。
【0059】
図7を参照して、検査プロセスを説明する。
【0060】
まず、図7(a)に示すように、超音波送波器1および超音波受波器2の検査のための位置に移動させる。具体的には、以下のようにして超音波送波器1および超音波受波器2を移動させる。
【0061】
まず、図6を参照して説明した動作により、図1に示す機構制御部8が検査対象物体11に対する超音波送波器1および超音波受波器2の位置関係を把握している。図7(a)における超音波送波器1および超音波受波器2は、図6の位置E−Hでは、超音波送波器1の送波の中心軸および超音波受波器2の受波の中心軸が相互にほぼ一致している。そして、超音波送波器1の送波の中心軸と検査対象物体11との交点は、検査対象物11に関して、超音波受波器2の受波の中心軸と検査対象物体11との交点の正反対の位置にある。この状態では、超音波送波器1の送波の中心軸と検査対象物体11との交点に入射する励起超音波4aの入射角度θは90°にほぼ等しくなる。
【0062】
図7(a)では、上記交点を中心に超音波送波器1の送波の中心軸を回転させるように超音波送波器1の位置を制御し、それによって励起超音波4aの入射角度θを適切な値に設定する。同様に、上記交点を中心に超音波受波器2の受波の中心軸を回転させるように超音波受波器2の位置を制御する。ただし、家庭内で作業する家事支援ロボットでは、ロボットアームの高精度の位置あわせが難しい。また、検査対象物は未知であるので、ラム波の励起効率の高い角度に設定することはできない。したがって、この場合には、予め設定された角度(例えば20〜30°)をなすように移動させればよい。
【0063】
図7(a)の状態では、図1の送信部5から周波数変調信号(チャープ信号)16が駆動信号として超音波送波器1に印加される。図7(a)におけるチャープ信号16は、低周波から高周波に周波数が変化する信号であり、その周波数変調は任意である。
【0064】
チャープ信号16の印加により、図7(b)に示すように、超音波送波器1から送波された励起超音波4aが検査対象物体11の表面に到達する。到達した励起超音波4aは、ラム波のA0モードを励起する。最も効率的に励起されるA0モードのラム波の周波数は、検査対象物体11と超音波送波器1との間に設定された角度θ1、検査対象物体11の材料特性、板厚、構造体としての力学的構造に依存して定まる。ここで、構造体としての力学的構造とは、例えば構造体にかかる張力や斥力、加工時の残留応力などである。
【0065】
図7(c)は、ラム波3が伝搬しながら放射超音波4bを発生させている状況を表している。特定の周波数付近で励起されたラム波3は、検査対象物体11の円周形状を周回すると同時に、放射超音波4bを周囲媒質(この場合は空気)に放射する。放射超音波4bの一部は、超音波受波器2によって受波される。超音波受波器2は、ラム波3が伝搬する円周面に対して広い指向性21を持つように設計されており、受波軸の角度θ2か送波軸角度θ1と一致しなくても、高い感度で放射超音波4bが受波できる。
【0066】
ラム波は、空気だけではなく、検査対象物の内容物へ超音波を放射、また伝搬に伴う吸収損失が生じる。そのため、ラム波が検査対象物11の円周面を周回するに従って、その放射振幅は小さくなってゆく。その結果、超音波受波器2から出力される受波信号22の出力は周期Tで増減し、この周期Tは、ラム波が検査対象物体11の円筒形状を1周回するのに必要な時間に一致する。
【0067】
図8は、本実施形態の超音波検査システムにより、アルミニウム缶を検査対象としたときに得られた受波信号の一例を示すグラフである。図に示すように、アルミニウム缶から放射される超音波の出力は、ラム波の周回周期(約0.23ms)に応じて増減している。アルミニウム缶の直径は65mm(円周204mm)であり、励起される超音波の周波数は200kHz付近であった。したがって、ラム波A0モードの伝搬速度は、約887m/sと計算される。
【0068】
一般に、アルミニウム缶の板圧は0.1〜0.2mm程度である。図5の分散曲線から計算される0.1mm厚のアルミニウム板におけるラム波の伝搬速度は約460m/sになる。計測値は計算値に比べて約2倍の値になっている。この差がアルミニウム缶の構造的な硬さをあらわしている。すなわち、アルミニウム缶の底の部分のリブ構造や絞り加工に起因する張力や残留応力により、一般のアルミニウム板に比べて大きな強度を有していることがわかる。
【0069】
図9は、板厚が相対的に薄い領域におけるA0モードの分散曲線を示すグラフである。アルミニウム板(実線:縦波音速:6300m/s、横波音速3100m/s)を対象として周波数を変化(100kHz、200kHz、300kHz)させた場合の計算値データを示している。また、参考のため、樹脂(破線:縦波音速2200m/s、横波音速1000m/s)を対象として周波数200kHzでの計算値データをも示している。
【0070】
グラフに示されているアルミニウムのデータは、比較的軟らかい金属材料(ヤング率の小さな)に相当しているが、アクリル、ABSなど樹脂材料に関しては、グラフに示される音速で代表させることができる。
【0071】
図9には、空気中の音波の伝搬速度(約340m/s)が示されている。理論的に空気中の伝搬速度よりも遅いラム波は励起することができないので、この伝搬速度により計測不能領域が規定される。
【0072】
本発明の超音波検査システムでは、検査対象物体を特定しないので、その材質および円筒構造の厚さは事前にわかっていない。このような場合には、図9に示すような分散曲線を予めデータベースとして検査システム内に持っておけば、位相速度を測定することにより、板圧を推定することができる。例えば、アルミニウム板の場合、周波数200kHzで板厚が0.2mmであれば、観測されるラム波A0モードの伝搬速度は、650m/sである。このとき、一般的なアルミニウムの厚さ0.2mm、高さ10mm、直径64mm(現在売られているアルミニウム缶直径とほぼおなじ)であれば、1Nの力で直径方向の圧縮力を受けても、直径方向の変形は10mm程度で弾性限界の範囲内である。
【0073】
同じ伝搬速度を示す樹脂の場合には、厚さは0.95mm程度と推定される。上記のアルミニウムと同じ計算をした場合には、直径方向の変形は2mm程度である。樹脂の場合には、厚さの増加にともない曲げ剛性が大きくなっている。さらに、アルミニウムとスチールの判断や、アルミニウムと樹脂などの材質を特定したい場合には、超音波送波器1の角度θ1を変化させて、励起されるラム波の周波数を変化させて伝搬速度の変化から推定することや、またラム波の周回にともなう振幅の減衰率の違いから金属材料と樹脂材料を推定することが可能である。
【0074】
図8に示す例では、周回周期から887m/sの伝搬速度が求められる。板状物体として換算される厚さは、0.5mm程度になる。実際の厚さは0.11mm程度であるので、この差が計測される構造的な物体の硬さに相当する。板の曲げ剛性は、厚さの3乗に比例するので、曲げ剛性はアルミニウム缶の全体構成により100倍以上大きくなっていることが示唆される。
【0075】
このように分散曲線のデータベースをいくつかの材料について検査システム内に予め有しておくことにより、計測された伝搬速度からロボットハンドの把持走査などに重要な曲げ剛性を推定することができる。検査システムの使用環境により、データベースの種類、検査対象物体の種類、寸法などをある程度限定できる場合には、より精度の高い精度で物体に関する情報が得られ、これらの情報はロボットハンドの物体把持や、それ以前の接触動作の制御に関して重要な判断情報を与えることができる。
【0076】
次に、図1および図10を参照しながら、本実施形態の超音波検査システムの動作フローを説明する。図10は、受信部および信号解析部における信号処理のフローチャートを示している。
【0077】
まず、超音波受波器2が放射超音波を受信すると、超音波受波器2から出力される受信信号15が受信部6に入力される。受信部6は、ステップS1において、受信信号15を増幅して信号解析部7に入力する。信号解析部7は、ステップS2において、ナイキストフィルタによるフィルタリングを受信信号15に対して行なった後、ステップS3において、A/Dでデジタル信号に変換する。
【0078】
デジタル信号は信号解析部7において2系統に分けて処理される。一方の系統では、ステップS4に進み、デジタル信号の周波数解析(FFT)により、ラム波の伝搬周波数を求める。他方の系統では、ステップS5に進み、デジタル信号の検波を行った後、さらに2系統の処理に分けられる。すなわち、デジタル検波によって得られた信号の一方は、ステップS6において振幅情報解析の対象となり、「減衰情報」が算出される。デジタル検波によって得られた信号の他方は、ステップS7において、周波数解析(FFT)の対象となり、ステップS8で低周波のピークが検知される。ステップS9では、検知された低周波のピークに基づいて周回周期解析が行われ、円周方向の周回周期が推定される。
【0079】
ステップS10では、入力された「直径情報」および「周回周期」に基づいて、ラム波の伝搬速度解析が行われ、「ラム波伝搬速度」が算出される。ステップS11では、こうして得られた「ラム波伝搬速度」、「減衰情報」、および「伝搬周波数」に基づいて、検査対象物体11の構造的な硬さが推定される。
【0080】
なお、上記のステップS3からステップS11の信号処理は、信号解析部7で実行されるが、信号解析部7は、ハードウェアによって上記処理を行ってもよいし、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって上記処理を実行するように構成されていてもよい。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、本発明による超音波検査システムの第2の実施形態を説明する。
【0082】
まず、図11を参照する。図11は、本実施形態における超音波検査システムによる検査状態の一例を模式的に示す図である。
【0083】
本実施形態においても、円周形状の検査対象物体を想定する。図11に示すように、検査対象物体11は、内容物の存在する下部分30と内容物の存在しない上部分31とから構成されており、容物の上限32が図示されている。
【0084】
本実施形態では、保持・移動機構9を上下方向に移動させることにより、検査対象物体11の下部分30および上部分31の各々に対して、第1の実施形態について説明した検査を実行する。この検査により、例えば検査対象物体11の内容物に関する情報を取得することが可能である。また、取得された情報から、検査対象物体11の重さに関する情報を推定することができる。これらの情報は、ロボットハンドによる物体把持に対する情報として極めて有用である。
【0085】
図12(a)は、内容物のない部分30から得られた円周部分での受波信号を示している。一方、図12(b)は、内容物がある部分31から得られた円周部分での受波信号を示している。図12(a)および図12(b)に示されるように、内容物の有無により、信号振幅に明瞭な違いが観測される。図12(b)に示される信号の振幅が相対的に小さくなっている理由は、内容物がある状態では、内容物側への超音波の放射が極めて大きくなるためである。すなわち、インピーダンスの整合性により、内容物(主として水)への放射は、空気に対する放射に比べて容易に行われるため、内容物がある部分31ではラム波が減衰しやすいと考えられる。検査対象物体11がアルミニウム缶などである場合、その内部構造を画像などによって推測することはできないが、本検査システムによれば、内部構造に関する情報を取得できる。
【0086】
画像などの他の情報に基づいて、検査対象物体がアルミニウム缶その他の円筒容器であることが検査前に推測されると、検査システムが予め有するデータベースから内容物の材質その他を予測できる場合がある。そのような場合には、図11に示す保持・移動機構9を下から上方向に移動させながら受波信号を検出すると、その受波信号の振幅が例えば図12(a)に示す大きさから図12(b)に示す大きさに遷移する位置を求めることができる。そのような遷移位置は、図11に示す上限32に相当するため、この方法により、検査対象物体において内容物が存在しているか否か、内容物がある場合は、その内容物に関する情報をハンドリング前に取得することが可能になる。
【0087】
内容物の有無によるラム波伝搬情報をデータベースとして事前に用意できていれば、位置32が計測できない場合においても、その振幅情報や周回に伴う減衰情報、あるいは周波数分散特性から、内容物の有無を判断できる。これらの情報から内容物の量が推定されれば、円筒容器全体の重量を推定することができ、ロボットハンドによる物体把持に対する情報として極めて有用である。
【0088】
図13は、本実施形態における超音波検査システムの検査状態の他の一例を模式的に示す図である。図13には、内容物の独立した複数の円筒容器40が縦方向に積層された状態が示されている。参照符号「41」は、積まれた円筒容器41の境界を示している。
【0089】
この例では、保持・移動機構9を上下方向に移動させながら前述の測定動作を繰り返すとき、円筒容器の中央部をラム波が伝搬する場合と、境界41付近を伝搬する場合とで、ラム波の伝搬特性が大きく異なることになる。円筒容器の境界41付近らは、通常、構造強化のためにリブ構造などが設けられているため、表面状態が複雑でラム波の励起困難になる。したがって、境界41付近では、観察されるラム波伝搬が極めて小さくなるか、あるいは計測不能になる。これらの情報により、円筒容器41が上下方向に積まれた状況であるか否かを判断することができる。
【0090】
画像情報だけでは、円筒容器が積まれた状況にあるのか、それとも、一体構造であるのかを判断することは困難である。一方、図13に示すような状況は、家庭内においては頻繁に発生すると想定される。したがって、一見したところ、一体化されていると見える物体の連続状態または分離状態に関する情報は、ロボットハンドによる物体把持を行うとき、あるいは、それ以前の接触制御に対する情報として極めて有用である。
【0091】
(第3の実施形態)
次に、本発明による超音波検査システムの第3の実施形態を説明する。
【0092】
図14は、本実施形態における超音波検査システムの検査状態の一例を模式的に示す図である。本実施形態は、検査対象物体11が円筒形ではなく、楕円形状の断面をもつ物体である点で他の実施形態と異なっている。その他の点では異なる点がないため、同一構成および動作については、説明を繰り返さない。
【0093】
本実施形態では、ラム波の伝搬経路の推定が問題になる。画像などの他のセンシングシステムから、ラム波の伝搬経路およびその長さが推定できる場合には、それらの情報を使用できる。
【0094】
図15を参照して、超音波送波器1を送受信モードで利用する方式を説明する。図15に示すように、楕円形状断面の検査対象物体11の表面を超音波送波器1によって走査することにより、ラム波の伝搬経路に関する情報を取得する。すなわち、図中にあるように例えば、位置(a)を初期の位置として(a)⇒(b)⇒(c)⇒(d)⇒(a)の経路に沿って周回走査を行いながら、検査対象物体11と超音波送波器1との距離情報、ならびに超音波送波器1の位置および角度情報が得られれば、検査対象物体11の表面形状、ならびにラム波の伝搬経路およびその長さを計測できる。その際、超音波送波器1における受信信号が常に最大になるように向きを制御することが必要である。このとき得られる寸法パラメータは、伝搬経路の長さそのものである。
【0095】
本方式では、検査対象物体の形状は、基本的に任意である。ただし、検査対象物体11の表面における法線角度が変動する場合(表面にうねりがある場合)には、ラム波が検査対象物体11の表面における同一平面内を周回することが困難になる。ラム波が周回するかどうかは、図15に示す計測によってある程度は判断でき、超音波送波器1で周回走査を行ったとき、位置(a)にもどれば、ラム波の周回伝搬が可能であると考えられる。ラム波の周回伝搬が出来ない場合には、ラム波の励起および受信ができる間隔で部分的に物体情報の取得を数回に分けて行い、それらの情報から全体の情報を推定することができる。
【0096】
なお、ラム波の周回現象は、検査対象物体が楕円形状断面などの滑らかな表面形状を有する場合には充分に可能である。また、検査対象物体に角がある場合、ラム波の一部のエネルギーは角を越えて伝搬するが、角による影響によって大きく振幅が低下するので、周回現象の利用が難しくなる。これらの場合には、上記の部分的な検査が必要になる。
【0097】
角を越えてラム波が全く観察されない場合には、角構造において物体の連続性が極めて悪い状態であると判断できる。例えば、角において接触する面どうしが接合されていない状況である可能性がある。これは箱にふたが載っている状況や、扉が設けられた箱などで発生し、角自体の剛性が極めて低い状況であると判断できる。これらの情報は、ロボットハンドを用いた不特定物体の把持あるいは事前の接触制御などに対する情報として極めて有用である。
【0098】
(第4の実施形態)
以下、図17(a)、(b)を参照しながら、本発明によるロボットの実施形態を説明する。
【0099】
本実施形態のロボットは、上述の超音波検査システムを用いたロボットアーム110を備えている点に特徴を有し、他の部分は公知の構成を任意に採用し得る。このため、以下の説明では、ロボットアーム110の構成および動作を説明する。
【0100】
本実施形態におけるロボットアーム110は、図17(a)に示すように、ロボットアーム本体部112と、ロボットアーム本体部112に支持されるロボットハンド111とを備えている。ロボットアーム本体部112は、好適には不図示の移動手段(例えば車輪など)を備えており、屋内を移動することができる。
【0101】
ロボットハンド111は、第1指200および第2指201を備えており、第1指200には、前述の実施形態における超音波送波器1が設けられ、第2指201には超音波受波器2が設けられている。第1指200および第2指201は、それぞれ、第1指関節210および第1指関節211を備えている。この例では、2本の指200、201を備えているが、3本以上の指を備えていても良く、また、各々の指が複数の間接を有していてもよい。本実施形態では、ロボットハンド111の本実施形態におけるロボットアーム本体部112は、図17(b)に示すように、前述の実施形態における送信部5、受信部6、信号解析部7、機構制御部8、中央処理部10、および寸法情報取得部17を備え、また、把持力決定部113、物体位置検出部114、物体把持場所決定部115、ロボットハンド制御部116、ロボットアーム制御部117を備えている。ロボットアーム110における各部の運動により、物体220に対する超音波送波器1および超音波受波器2の相対位置関係が決定される。このため、ロボットアーム110の機構部分が超音波検査システムの「保持・移動機構」として機能することになる。物体220は、把持前において、その「たわみ剛性」に関する情報が取得されるため、「検査対象物」として機能する。
【0102】
把持力決定部113は、信号解析部7によって得られた物体の構造的な硬さの情報に基づき、ロボットハンド111によって物体220を把持する力を決定する。例えば、物体の把持力を一義的に決定できる関数を有することにより、物体220の構造的な硬さの情報に基づいて物体220を把持する力を決定することができる。また、構造的な硬さと物体220を把持する力とが対応付けられた把持力決定データベースを有することにより、物体220を把持する力を決定できる。把持力決定データベースが、把持する物体220の材質に応じて異なる規則を有していれば、より物体220の剛性に適した把持力を決定できる。
【0103】
物体位置検出部114は、不図示のカメラ等によって物体220を撮像し、物体220の位置情報を取得する。例えば、物体220の高さ、幅、奥行きに関する情報を取得する。撮像した画像情報と実空間の座標とを予め対応付けておくことにより、これらの情報の取得が可能となる。画像座標と実空間の座標との対応付けは、物体220が存在する3次元空間における位置座標を撮影画像内の座標値に変換する座標変換Tを用いて行う。予め座標変換Tを求めておくことにより、画像座標と実空間の座標とを対応付けることができる。
【0104】
物体把持場所決定部115は、物体位置検出部114が取得した物体の位置情報に基づいて、ロボットハンド111が物体220を掴む場所を決定する。例えば、物体220の高さに関する情報から物体220の高さ方向における中心位置と、物体220の奥行き情報から物体の奥行き方向における中心位置を把持点と決定する。こうすることにより、物体220を安定して把持することができる。
【0105】
ロボットハンド制御部116は、把持力決定部113が決定した把持力と、物体把持場所決定部115が決定した物体の把持場所とに基づいて、ロボットハンド111による物体把持の動作を制御する。具体的には、ロボットハンド111が、物体把持場所決定部115により決定された物体の2つの把持点に第1指関節210および第1指関節211を移動させ、把持力決定部113が決定した把持力で物体220を把持する。
【0106】
ロボットアーム制御部117は、物体位置検出部114が取得した物体の位置情報に基づいて、物体220の把持前にはロボットアーム110を物体220に近づけ、物体220を把持した後は、ユーザの所望の場所に物体220を移動させる。把持前においては、ロボットハンド111の超音波送波器1と超音波受波器2の位置を制御し、物体220の構造的な固さの情報を超音波送波器1および超音波受波器2によって取得可能な位置までロボットアーム110を近づける。物体220の構造的な固さの情報を取得可能な位置の例は、超音波送波器1と超音波受波器2とを直線で結んだ中心の位置から、物体220の中心の位置までの間である。具体的な距離に関する情報を保持することにより、ロボットアーム110による自律的な移動が可能となる。
【0107】
以下、図17および18を参照しつつ、ロボットアーム110が物体220を把持する動作を説明する。図18はロボットアーム110の動作を示すフローチャートである。
【0108】
まず、ステップS100において、物体位置検出部114が物体220の位置情報を取得する。ステップS101では、この位置情報に基づいてロボットアーム110を物体220に近づける。その後、前述の実施形態について説明したように、図10に示すステップS1〜ステップS11を実行し、物体220の構造的な硬さを取得する(ステップS102)。
【0109】
把持力決定部113は、ステップS102で取得した物体220の構造的な硬さに基づいて、物体220を把持する力を決定する(ステップS103)。その後、物体把持場所決定部115は、物体位置検出部114が取得した物体220の位置情報に基づいて、物体を掴む場所を決定する(ステップS104)。
【0110】
ロボットハンド制御部116は、把持力決定部113が決定した把持力と、物体把持場所決定部115が決定した物体220の把持場所とに基づいて、物体220を把持するようにロボットハンド111の動作を制御する(ステップS105)。ロボットハンド111によって物体220を把持した状態で、ロボットアーム制御部117は物体220をユーザの所望の場所に移動させる(ステップS106)。
【0111】
本実施形態に係るロボットは、家庭内やオフィス等の人と共存するような環境内で好適に使用される。ここでは、このロボットが家事を手伝う状況を想定する。このような状況において、ロボットは、これまで産業用のロボットとは異なり、様々な状態の物体を把持する必要がある。例えば、構造的な硬さが小さい物体、部位によって構造的な硬さが異なる物体、内部に他の物体を含む物体、上に他の物体が載っている物体などが把持の対象とする。このような物体の例は、コップ、食器(食器洗いや食事の運搬の場合)、ゴミ箱、花瓶(掃除の場合)等である。
【0112】
ロボットが食器洗いや食事の運搬する場合、飲み物が入っているコップ、食べ物が載っている食器を扱う状況が考えられる。例えば、飲み物が入っているコップは、物体の構造的な硬さや物体の重心の位置が、飲み物の残り方(具体的には、飲み物が入っている場所と入っていない場所)で異なる。そのため、コップの高さ方向における中央位置を常に把持位置と定めると、物体の把持が安定化しない場合がある。そのため、複数の位置でコップの構造的な硬さの情報を取得し、コップの構造的な硬さが変化した位置(飲み物が入っている場所と入っていない場所と境目)を、コップの把持する高さ位置と決定する。ある一定以上の高さ位置がコップの把持位置と決定された場合、安定なコップの把持のため、コップの高さの5分の4の位置を把持位置と決定するようにしても良い。
【0113】
なお、超音波受波器2を複数備えることにより、複数の位置における物体の構造的な硬さに関する情報を容易に得ることができる。
【0114】
コップ、食器、ゴミ箱及び花瓶では形状の違いにより、把持の仕方に違いが出る。よって、対象に応じてロボットハンド111による物体の把持の仕方を定めておいても良い。例えば、コップや花瓶などのように高い物体を把持する場合には、ロボットハンド111が、把持力を相対的に低いレベルから、決定した把持力まで徐々に高めてゆくようにする。家庭内に存在する物品のうち、高さの大きな物品は、一般的に構造的な硬さが低いと考えられるため、より物品を破壊しないように把持することが好ましい。
【0115】
把持力決定部113で決定した把持力が、ある一定値(例えば、10N)以上の場合には、把持する物体の構造的な硬さが高く、頑丈な物体であると考えることができる。そのため、物体の把持において、機構制御部8の移動と物体の把持のロボットアーム110の動作を素早く行なう(勢い良く物体を把持する)ように、ロボットハンド制御部116やロボットアーム制御部117による制御を決定してもよい。これにより、ロボットハンド111による物体220の把持を迅速に行なうことが可能になる。
【0116】
なお、本発明によるロボットは、上記の例に限定されず、多様な構成を採用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の超音波検査システムは、精密な位置決めを必要とせず、検査対象物の硬さに関わる情報が取得できる。また、重さや、物体の連続性(一体性)に関する情報などを取得可能であるため、ロボットハンドを用いた不特定物体の把持、あるいは事前の接触制御などに有益なセンシング情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の第1の実施形態の超音波検査システムにおける検査状態の一例と制御処理系の機能ブロック構成を示す図である。
【図2】ラム波励起および伝搬・放射現象の模式的に示す図である。
【図3】ラム波励起現象の模式的に示す図である。
【図4】ラム波の波動モードの一例を示す模式的に示す図である。
【図5】ラム波の分散曲線の一例(アルミニウム板)を示す図である。
【図6】第1の実施形態の超音波検査システムに関わる円筒体の直径計測の過程を模式的に示す図である。
【図7】(a)から(c)は、第1の実施形態における超音波検査システムによる計測過程を示す図である。
【図8】第1の実施形態の超音波検査システムの受波信号の一例を示すグラフである。
【図9】ラム波の分散曲線の一例(アルミニウム板、樹脂)を示すグラフである。
【図10】第1の実施形態における受信部および信号解析部における処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施形態の超音波検査システムにおける検査状態の一例を模式的に示す図である。
【図12】(a)および(b)は、第2の実施形態における超音波検査システムの受波信号の変化の一例を示すグラフである。
【図13】本発明の第2の実施形態の超音波検査システムにおける検査状態の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【図14】本発明の第3の実施形態の超音波検査システムにおける検査状態の一例を模式的に示す斜視図である。
【図15】第3の実施形態の超音波検査システムに関わる寸法パラメータの計測の過程を模式的に示す図である。
【図16】板状物体の内部欠陥を検査するためにラム波を用いる従来技術を模式的に示す図である。
【図17】(a)は、本発明のロボットの実施形態における主要部を示す斜視図であり、(b)は、ロボットアーム本体部に内蔵された機能手段の構成を示すプロック図である。
【図18】本発明の実施形態におけるロボットアームの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0119】
1 超音波送波器
2 超音波受波器
3 ラム波
4a 送波超音波(変調波、励起超音波)
4b 放射超音波
5 送信部
6 受信部
7 信号解析部
8 機構制御部
9 把持・移動機構
10 中央処理部
11 検査対象物体
12 ラム波の励起領域
13 ラム波の放射領域
14 送波器の中心軸
15 受波器の中心軸
20 送波器の指向性
21 受波器の指向性
22 受波信号
30 内容物の存在領域
31 内容物の非存在領域
32 内容物の上限
40 円筒容器
41 円筒容器の上下境界
50 送受波器の走査軌跡
100 制御手段
101 表示手段
102 板状物体
105 内部欠陥
111 ロボットハンド
112 ロボットアーム本体部
113 把持力決定部
114 物体位置検出部
115 物体把持場所決定部
116 ロボットハンド制御部
117 ロボットアーム制御部
200 第1指
201 第2指
210 第1指関節
211 第1指関節
220 物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物体に超音波を照射し、前記検査対象物体上にラム波を励起する超音波送波器と、
前記検査対象物体を前記ラム波が伝搬することによって前記検査対象物体から周囲空間に放射される超音波の少なくとも一部を受け、受波信号を出力する超音波受波器と、
前記超音波送波器および前記超音波受波器を保持し、前記検査対象物に対する相対位置関係を決定する保持・移動機構と、
前記ラム波の伝搬経路を推定するために必要な前記検査対象物体の寸法に関する情報を取得する寸法情報取得部と、
前記情報と前記超音波受波器から出力された前記受波信号とに基づいて、前記検査対象物体のたわみ剛性に関する情報を取得する信号解析部と、
を備える超音波検査システム。
【請求項2】
前記保持・移動機構を移動させ、前記検査対象物体に対する前記超音波送波器および超音波受波器の相対位置関係を制御する機構制御部と、
前記超音波送波器に広帯域変調駆動信号を供給することにより、前記超音波送波器から超音波を放射させる送信部と、
前記超音波受波器から出力された前記受波信号を受け取り、出力信号を前記信号解析部に入力する受信部と、
前記機構制御部、送信部、受信部、および信号解析部の動作を制御する中央処理部と、
を備える、請求項1に記載の超音波検査システム。
【請求項3】
(i)前記検査対象物体に励起される前記ラム波の伝搬経路を推定するための前記検査対象物体の寸法パラメータの情報を取得するステップと、
(ii)前記機構制御部の制御により、前記保持・移動機構を移動させ、前記超音波送波器ならびに超音波受波器を前記検査対象物体に対して適切な相対位置に配置するステップと、
(iii)前記送信部の駆動信号によって前記超音波送波器から広帯域変調波を前記検査対象物体の表面に向けて所定の角度で送信するステップと、
(iv)前記検査対象物体に到達した前記広帯域変調波によって前記検査対象物体に前記ラム波を励起するステップと、
(v)前記検査対象物体に励起された前記ラム波が前記検査対象物体を伝搬することによって周囲媒体に超音波を送波させるステップと、
(vi)前記ラム波伝搬によって前記検査対象物体から発生した超音波を前記超音波受波器で受波するステップと、
(vii)前記受信部を介して前記超音波受波器の出力する受波信号を前記信号解析部へ伝達し、前記信号解析部において前記検査対象物体の情報を抽出するステップと、
を実行する、請求項2に記載の超音波検査システム。
【請求項4】
前記広帯域変調波は周波数変調されたチャープ信号である請求項3に記載の超音波検査システム。
【請求項5】
前記超音波受波器は、前記ラム波の伝搬方向を含む面内方向に広い指向性を有している請求項4に記載の超音波検査システム。
【請求項6】
前記信号解析部は、前記受波信号の周期性を解析することにより、前記ラム波の伝搬速度を推定する請求項3に記載の超音波検査システム。
【請求項7】
前記検査対象物体は円筒形状、または円筒形状を一部含む形状を有しており、前記ラム波の伝搬方向が上記円筒形状の円周方向である請求項3に記載の超音波検査システム。
【請求項8】
前記寸法パラメータは、前記円筒形状の径方向サイズを含む請求項7に記載の超音波検査システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の超音波検査システムと、
検査対象物体を把持することのできるロボットアームと、
前記ロボットアームを駆動するアーム制御部と、
を備えるロボット。
【請求項10】
(i)検査対象物体に励起されるラム波の伝搬経路を推定するための前記検査対象物体の寸法パラメータを計測するステップと、
(ii)超音波送波器ならびに超音波受波器を前記検査対象物体に対して適切な相対位置に配置するステップと、
(iii)超音波送波器から広帯域変調波を前記検査対象物体の表面に向けて所定の角度で送信するステップと、
(iv)前記検査対象物体に到達した前記広帯域変調波によって前記検査対象物体に前記ラム波を励起するステップと、
(v)前記検査対象物体に励起された前記ラム波が前記検査対象物体を伝搬することによって周囲媒体に超音波を送波させるステップと、
(vi)前記ラム波伝搬によって前記検査対象物体から発生した超音波を前記超音波受波器で受波するステップと、
(vii)前記寸法パラメータと前記超音波受波器の出力する受波信号に基づいて、前記検査対象物体のたわみ剛性に関する情報を取得するステップと、
を含む超音波検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−232825(P2008−232825A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72852(P2007−72852)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】