説明

超高真空走査型プローブ顕微鏡

【課題】 超高真空中において試料に応力を印加しながらその表面構造の原子レベルの分解能でのその場観察を行うことができる超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【解決手段】 この出願の発明の超高真空走査型プローブ顕微鏡は、超高真空状態の真空槽内に、板状試料(2)の一端又は両端を支持する試料ホルダー(3)と、垂直方向の変位がナノスケールで制御され、板状試料(2)に対し応力を印加する応力印加機構(6)、(7)、(8)と、応力が印加された板状試料表面の状態を原子レベルの分解能でその場計測するプローブ(1)を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、超高真空走査型プローブ顕微鏡に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、超高真空下で試料に応力を印加しながら試料の表面構造を原子レベルの分解能でその場計測することができる、新規な超高真空走査型プローブ顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超高真空走査型プローブ顕微鏡(以下、SPMとも称する)によれば、一般の光学顕微鏡では観察できない原子レベルの分解能での試料の観察が可能である。そして、この超高真空走査型プローブ顕微鏡には、走査トンネル顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)、走査近接場光学顕微鏡(SNOM)をはじめとして様々なタイプのものが開発され、それぞれ異なった局所的物理量を検出して、試料の表面状態等の観察、計測等が行われている。
【0003】
一方で、ここ数年のナノテクノロジーの急速な展開により、種々の構造のナノ構造体の創製、その特性の計測、応用分野の検討等に関心がもたれてきている。このようなナノ構造体において弾性変形、塑性変形の領域における原子レベルでの構造変化は、ナノ構造体をナノ電子素子や、ナノ光学素子、ナノ機械素子等のナノデバイスを実現するためにも非常に興味深いものである。材料表面におけるナノ構造の形成と表面応力(もしくは歪)とは相関関係が存在するとされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超高真空走査型プローブ顕微鏡では、試料に応力を印加しながら原子レベルの分解能で試料表面の状態を観察することはナノスケールの分解能で精密変位制御可能な超高真空対応応力印加機構の開発の難しさのため困難と考えられ、実際に試みられていなかった。
【0005】
そこで、この出願の発明は、このような従来技術の実情に鑑み、超高真空中において試料に応力を印加しながらその表面構造の原子レベルの分解能でのその場観察を行うことができる超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この出願の発明は、上記課題を解決するものとして、第1には、超高真空状態の真空槽内に、板状試料の一端又は両端を支持する試料ホルダーと、垂直方向の変位がナノスケールで制御され、板状試料に対し応力を印加する応力印加機構と、応力が印加された板状試料表面の状態を原子レベルの分解能でその場計測するプローブを備えることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0007】
また、第2には、上記第1の発明において、垂直応力印加機構が、超高真空対応ステッピングモーターと、超高真空対応ステッピングモーターの回転を、ナノスケールで制御された垂直方向の変位に変換するマイクロメーターヘッドと、マイクロメーターヘッドの先端に取り付けられ、板状試料に対し垂直方向に荷重を印加する電気的絶縁性のジグを有することを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0008】
また、第3には、上記第2の発明において、試料ホルダーが、板状試料の一端のみを片持梁方式に固定保持するホルダーであり、かつ、ジグが、板状試料の自由端に荷重を上方向又は下方向に印加するものであることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0009】
また、第4には、上記第2の発明において、試料ホルダーが、板状試料の両端を単純支持するホルダーであり、かつ、ジグが、板状試料の中心又は任意の位置にて荷重を上方向又は下方向に印加するものであることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0010】
また、第5には、上記第1から第4のいずれかの発明において、板状試料に垂直荷重が印加されることにより応力が加わった状態で、歪による試料中の微小な変位を観察する長焦点顕微鏡と、長焦点顕微鏡で観察された像を撮像するCCDカメラを、真空槽外に有することを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0011】
また、第6には、上記第1から第5のいずれかの発明において、板状試料に直流電流を直接通電して加熱昇温させる加熱手段を有することを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0012】
また、第7には、上記第6の発明において、試料ホルダーが、板状試料の一端のみを固定保持するホルダーであるときに、加熱手段は、高融点金属の箔又はワイヤを、板状試料の自由端部分に接触させて通電加熱させる方式のものであることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0013】
また、第8には、上記第1から第7のいずれかの発明において、4探針プローブを用い、板状試料の表面電気伝導度計測が行えることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0014】
また、第9には、上記第1から第7のいずれかの発明において、複数のプローブをそれぞれ独立して使用することができることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【0015】
さらに、第10には、上記第1から第7のいずれかの発明において、プローブ交換機構を備えることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、超高真空中において試料に応力を印加しながらその表面構造の原子レベルの分解能でのその場観察を行うことができる超高真空走査型プローブ顕微鏡の実現が可能となる。すなわち、板状試料に対して応力を印加する応力印加機構は、その動作メカニズムが比較的簡単なことから、超高真空に対応でき、かつ、ナノスケールという高精度でその応力印加機構による板状試料の変位を制御できることから、計測に対する擾乱が少なく、板状試料の表面構造の原子レベルの分解能での可視化(イメージング)が達成される。
【0017】
請求項2の発明によれば、応力印加機構を、超高真空対応ステッピングモーターと、マイクロメーターヘッドと、ジグを用いて構成したので、超高真空対応、最小変位ステップ、十分に大きなトルク、ナノスケールでの一定の変位幅の全条件を満たして、ステッピングモーターの回転をマイクロメーターヘッドを介してジグにナノスケールでの垂直変位として伝え、そのナノスケールでの垂直変位を荷重として、板状試料に印加させることができる。したがって、請求項1の発明と同様の効果をシンプルな構成の応力印加機構で得ることができる。
【0018】
請求項3及び4の発明によれば、上記効果に加え、曲げ変形による表面応力及び歪の量を材料力学的計算により定量的に算出可能となる利点がある。
【0019】
請求項5の発明によれば、板状材料の変位の様子及び変位量を、SPM計測に全く擾乱を与えずに測定することができる利点がある。
【0020】
請求項6及び7の発明によれば、試料温度を昇温させた状態でのSPM計測がが行える利点がある。
【0021】
請求項8の発明によれば、応力を加えた状態での表面電気伝導度の計測が可能となる利点がある。
【0022】
請求項9の発明によれば、応力を加えた状態で同時に複数箇所のSPM計測が可能となる利点がある。
【0023】
請求項10の発明によれば、プローブ交換機構により、応力を印加しながら、多様なSPMイメージングが可能である。具体的には、走査トンネル顕微鏡(STM)、走査トンネル分光(STS)、原子間力顕微鏡(AFM)、磁気力顕微鏡(MFM)、走査近接場光学顕微鏡(SNOM)、4端子表面電気伝導度計測等である。
【0024】
また、この出願の上記発明をナノ構造創製技術と組み合わせることにより、応力印加状態におけるナノ構造創製とナノ構造解析が可能となり、新規のナノマテリアルやナノデバイスの開発が促進され、特に量子ドットなどの次世代ITナノテクノロジーの推進に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0026】
この出願の超高真空走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、超高真空状態の真空槽内に、板状試料の一端又は両端を支持する試料ホルダーと、垂直方向の変位がナノスケールで制御され、板状試料に対し応力を印加する応力印加機構と、応力が印加された板状試料の表面構造を原子レベルの分解能でその場計測するプローブを備えることを特徴とする。
【0027】
なお、この出願の明細書において、「超高真空」とは、10-7Pa台以下の真空度、すなわち10-7Paかそれよりも真空度の高い状態を意味する。また、「ナノスケール」とは、0.01〜1μm程度の範囲を対象とする。
【0028】
図1から図4に、この出願の発明の実施形態である4種類の超高真空SPM計測システムの構成図を示す。これらの図において同様な要素には同じ符号を付して重複説明を省略する。また、板状試料面において長手方向をx軸、その直交方向をy軸、垂直方向をz軸とする。
【0029】
まず、図1は、片持梁(片方が固定端かつ他方が自由端)方式に試料を保持した場合における応力(曲げ応力)印加機構を組み込んだSPM計測システムの実施形態の構成図を示す。
【0030】
点線内は超高真空環境かつ外部振動を除去した環境(0)である。除振方法は圧縮ガスによる装置全体のエアーダンピング及び内部SPMヘッドシステムのバネつりエディー電流ダンピングの2種類を併用している。
【0031】
SPMプローブ(1)は1個又は複数個使用できる(この場合は1個のみ図示)。SPMプローブ(1)としては、従来から使用されているものを用いることができる。
【0032】
試料(2)は、板状に加工されたものが使用でき、一端は試料ホルダー(3)において片持梁方式に固定保持される。試料(2)の大きさは、たとえば縦10〜30mm、横0.5〜5mm、厚さ10〜500μm程度のものとすることができるが、これに限定されない。また、試料ホルダー(3)は、たとえば試料(2)をタンタル等の高融点金属製の薄板ではさむことにより片持梁方式に固定保持する。
【0033】
SPMステージ(4)には、SPMプローブ(1)・試料ホルダー(3)・応力印加機構などが一体化されている。
【0034】
応力印加機構は、応力印加用ジグ(5)、マイクロメーターヘッド(6)、超高真空(UHV)対応ステッピングモーター(7)により、構成される。
【0035】
応力印加用ジグ(5)は、同一荷重を試料面y軸方向に均等に印加できるように先端形状が三角柱状もしくはその近似的な形状であることが好ましく、先端部分のy軸方向の長さは試料(2)の寸法に応じて適宜設定されるが、たとえば0.5〜5mm程度とすることができる。また、応力印加用ジグ(5)の少なくともその先端は、SPM計測の擾乱を避けるために、電気的に絶縁されていることが好ましい。
【0036】
マイクロメーターヘッド(6)は、上方部分に応力印加用ジグ(5)を取り付けるための固定部(図示せず)を有し、その反対の下方部分にはUHV対応ステッピングモーター(7)との連結部を有している。このマイクロメーターヘッド(6)は、たとえばヘッド1回転により応力印加用ジグ(5)を50μm上方に変位させる。もちろん1回転当たりの変位量が異なるものの使用することができる。
【0037】
UHV対応ステッピングモーター(7)は、ベーキング可能かつガス放出量の小さな材料により構成することによりUHV対応となっている。ステッピングモーター(7)は、単一ステップにより0.9゜回転する(応力印加用ジグ(5)の125nmの垂直方向の変位に相当)。ステッピングモーター(7)は、真空槽、すなわち超高真空除振環境(0)の外側に配置された外部制御電源を含む垂直応力印加制御機構(8)により、単一ステップ毎の上昇下降の制御が行われるようになっている。
【0038】
応力印加機構においては、ステッピングモーター(7)の回転をマイクロメーターヘッド(6)に伝達し、垂直方向への変位に変換し、試料(2)と接触する応力印加用ジグ(5)により、試料端部に垂直(鉛直)方向への荷重を印加し、曲げ変形を与える。試料表面では曲げ応力による圧縮応力・圧縮歪が発生し、その大きさは試料端での変位量、試料寸法、試料のヤング率、及び試料端からの距離に依存する。
【0039】
試料の変位量は、ビューポート(9)を通して、真空槽外部の長焦点顕微鏡(10)、CCDカメラ(11)及びCRTなどのモニター(12)により、計測することができる。
【0040】
この実施形態において、試料(2)を昇温させて計測する場合、試料(2)を通電加熱する方法としては、試料端部に高融点金属による箔やワイヤ(細線)を接続し、試料両端に直流電圧を印加することにより行う。ここで高融点金属とは、試料(2)を加熱してもSPM計測に影響を与えない融点を有する金属であり、たとえばTa、W、Mo、Pt、Ir、Reなどが例示される。
【0041】
図2は、図1と同様に片持梁方式における曲げ応力印加機構を組み込んだSPM計測システムの実施形態の構成を示しているが、このSPM計測システムは、試料端部において下降方向への垂直変位を印加する方式である。この場合、曲げ応力により、SPM側試料表面には引張応力が印加される。図1と異なる点は、応力印加用ジグ(5)が、試料端部において下降方向へ変位できるような鉤型構造をしている点である。試料(2)の加熱方式は図1のものと同様である。
【0042】
図3は、板状試料の両端を単純支持した場合における曲げ応力印加機構を組み込んだSPM計測システムの実施形態の構成図である。このSPM計測システムでは、曲げ応力により、SPM側試料表面には引張応力が印加される。この場合、板状試料(2)の両端は試料ホルダー(3)、(3)において単純支持されており、鉛直方向への変形を板状試料(2)の中央において印加できる構造になっている。集中荷重の印加地点が中心以外の任意の場所であっても曲げ応力印加は可能である。また、この場合、2個のSPMプローブ#1、#2(1)、(1)が図示されているが、独立の異なった地点におけるSPMイメージングが可能である。また、3個以上のSPMプローブを用い、同時に複数箇所のSPMイメージングを行ってもよい。また、4探針プローブを取り付けることにより任意の位置における表面電気伝導度計測が可能である。
【0043】
図4は、板状試料の両端を単純支持した場合における曲げ応力印加機構を組み込んだSPM計測システムの実施形態の構成図である。図3の実施形態との違いは、試料中心において下向きに垂直荷重を印加する方式であることである。この場合、曲げ応力により、SPM側試料表面には圧縮応力が印加される。このSPM計測システムでは、下向き方向の集中荷重を試料中心部において印加するために、応力印加用ジグ(5)は鉤型構造をとっている。
【0044】
図2から図4の全てのSPM計測システムにおいても、応力印加用ジグ(5)の先端形状は、図1の実施形態と同様、三角柱構造もしくはその近似的な形状とすることにより、同一荷重を試料面y軸方向に均等に印加できるようにする。
【0045】
この出願の発明の超高真空走査型プローブ顕微鏡では、プローブ交換機構を備えることができる。超高真空中におけるプローブ交換機構により、STMプローブやAFMプローブなどの異なる機能を有するプローブの使用、及び損傷したプローブと新規プローブとの交換、が可能となる。プローブ自体にはAFM及びSTMなどの計測機能に必要な電極があらかじめ取り付けられており、SPMヘッドのプローブ取り付け位置にはプローブ電極に対応する個所に、ばね板形式等による電極が取り付けられている。精密真空マニピュレーターにより、プローブをSPMヘッドに挿入、もしくは取りはずすことができる。
【0046】
図5(a)は、実際に試作した応力印加機構を内蔵した超高真空2探針SPM計測システムである。このSPM計測システムは、3室構成の超高真空システムであり、SPM室・準備室・ロードロック室から構成される。準備室においても、SPM室と同様の応力印加機構が試料マニピュレーター部に内蔵されており、応力を印加しながら低速電子回折(LEED)計測を行うことにより、応力誘起による表面構造のマクロな解析ができる。
【0047】
図5(b)では、SPM室における2つの独立駆動SPMプローブと試料に応力を印加する機構を示している。応力印加機構はSPMステージの中央下部に設置されている。応力印加機構により試料表面に応力を与えながら、各種のSPM計測(STM、STS;Contact AFM,Noncontact AFM、など)を行うことができる。
【0048】
図6は、応力を印加しながら、計測された原子分解能STMイメージングの実証例である。
【0049】
この場合、試料はn型のSi(111)[Pドープ]であり、試料中央部の表面では引張応力が印加されている。試料のサイズは縦17mm、横2mm、厚さ250μmである。SPM計測システムは図3のタイプのものである。真空度は10-8Pa、ステップモーター単一ステップによりジグの垂直変位量は125nmである。応力印加前において原子分解能イメージングがなされているが、曲げ変形による引張応力印加時においても、同様の原子分解能イメージングが達成されていることが明確に実証されている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この出願の発明によれば、応力を試料に印加しながら表面原子構造をその場計測することができ、応力場が表面ナノ構造に及ぼす効果を原子レベルで明らかにすること、並びに、応力印加環境におけるナノ構造創製機構の解明を容易にさせることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】板状試料の一端を片持梁(片方が固定端かつ他方が自由端)方式で固定保持した場合における曲げ応力印加機構を組み込んだSPM計測システムの実施形態の構成図である。
【図2】板状試料の一端を片持梁(片方が固定端かつ他方が自由端)方式で固定保持した場合における曲げ応力印加機構を組み込んだSPM計測システムの実施形態の構成図である。
【図3】板状試料の両端を単純支持した場合における曲げ応力印加機構を組み込んだSPM計測測システムの実施形態の構成図である。
【図4】板状試料の両端を単純支持した場合における曲げ応力印加機構を組み込んだSPM計測システムの実施形態の構成図である。
【図5】(a)は実際に試作した応力印加機構を内蔵した超高真空2探針SPM計測システムを撮像したものを印刷した図であり、(b)はSPM室における2つの独立駆動SPMプローブと試料に応力を印加する機構を撮像したものを印刷した図である。
【図6】応力場印加中における原子分解能STMイメージングの実証例を撮像したものを印刷した図である。
【符号の説明】
【0052】
0 超高真空除振環境
1 SPMプローブ
2 板状試料
3 試料ホルダー
4 SPMステージ
5 応力印加用ジグ
6 マイクロメーターヘッド
7 超高真空ステッピングモーター
8 垂直応力印加制御機構
9 ビューポート
10 長焦点顕微鏡
11 CCDカメラ
12 モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高真空状態の真空槽内に、
板状試料の一端又は両端を支持する試料ホルダーと、
垂直方向の変位がナノスケールで制御され、板状試料に対し応力を印加する応力印加機構と、
応力が印加された板状試料の表面構造を原子レベルの分解能でその場計測するプローブ
を備えることを特徴とする超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
垂直応力印加機構が、超高真空対応ステッピングモーターと、超高真空対応ステッピングモーターの回転を、ナノスケールで制御された垂直方向の変位に変換するマイクロメーターヘッドと、マイクロメーターヘッドの先端に取り付けられ、板状試料に対し垂直方向に荷重を印加する電気的絶縁性のジグを有することを特徴とする請求項1記載の超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
試料ホルダーが、板状試料の一端のみを片持梁方式に固定保持するホルダーであり、かつ、ジグが、板状試料の自由端に荷重を上方向又は下方向に印加するものであることを特徴とする請求項2記載の超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
試料ホルダーが、板状試料の両端を単純支持するホルダーであり、かつ、ジグが、板状試料の中心又は任意の位置にて荷重を上方向又は下方向に印加するものであることを特徴とする請求項2記載の超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項5】
板状試料に垂直荷重が印加されることにより応力が加わった状態で、歪による試料中の微小な変位を観察する長焦点顕微鏡と、長焦点顕微鏡で観察された像を撮像するCCDカメラを、真空槽外に有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項6】
板状試料に直流電流を直接通電して加熱昇温させる加熱手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項7】
試料ホルダーが、板状試料の一端のみを固定保持するホルダーであるときに、加熱手段は、高融点金属の箔又はワイヤを、板状試料の自由端部分に接触させて通電加熱させる方式のものであることを特徴とする請求項6記載の超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項8】
4探針プローブを用い、板状試料の表面電気伝導度計測が行えることを特徴とする請求項1から7のいずれかの超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項9】
複数のプローブをそれぞれ独立して使用することができることを特徴とする請求項1から7のいずれかの超高真空走査型プローブ顕微鏡。
【請求項10】
プローブ交換機構を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の超高真空走査型プローブ顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−133089(P2006−133089A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322873(P2004−322873)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(596066574)株式会社ユニソク (8)
【Fターム(参考)】