説明

距離測定装置およびそれを備えた輸送機器

【課題】対象物までの距離を高い精度で測定することが可能であるとともに低コスト化が実現された距離測定装置およびそれを備えた輸送機器を提供する。
【解決手段】距離測定装置から対象物に光が発射される。受光部により発射光および対象物からの反射光が受光され、発射光パルスPeおよび反射光パルスPrを含む受光信号REが出力される。受光信号REに基づいて発射光の受光時点および反射光の受光時点が検出される。発射光の受光時点から反射光の受光時点よりも後の時点teまで一定の電圧を維持する第1矩形波信号LS1が生成され、第1矩形波信号LS1が積分される。反射光の受光時点から時点teまで一定の電圧を維持する第2矩形波信号LS2が生成され、第2矩形波信号LS2が積分される。第1矩形波信号LS1の積分結果と第2矩形波信号LS2の積分結果との差に基づいて対象物までの距離が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて対象物までの距離を測定する距離測定装置およびそれを備えた輸送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両から対象物までの距離を測定するための距離測定装置として、種々の車両用のレーザレーダ装置が提案されている。レーザレーダ装置では、送光部から対象物にレーザ光が発射され、対象物からの反射光が受光部で受光される。送光部によるレーザ光の発射から受光部による反射光の受光までに要した時間を測定することにより対象物までの距離が算出される。
【0003】
図12は従来のレーザレーダ装置の主要部の構成の一例を示すブロック図である。また、図13は図12のレーザレーダ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。このような従来のレーザレーダ装置は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0004】
図12のレーザレーダ装置は、発射光検出部901、反射光受光部902、開始パルス発生部903、終了パルス発生部904、ゲート回路905、発振器906およびカウンタ907を含む。
【0005】
図13を参照しながら図12のレーザレーダ装置の動作について説明する。レーザレーダ装置では、レーザ装置から対象物にパルス状のレーザ光(発射光)が発射される。発射光検出部901は発射光を検出する。開始パルス発生部903は、発射光検出部901による発射光の検出時にハイレベルとなる開始パルス信号SPを発生する。反射光受光部902は、対象物からの反射光を受光する。終了パルス発生部904は、反射光受光部902による反射光の受光時にハイレベルとなる終了パルス信号EPを発生する。
【0006】
発振器906は、基本クロック信号CKを発生する。ゲート回路905は、開始パルス発生部903により発生される開始パルス信号SPがハイレベルに立ち上がってから終了パルス発生部904により発生される終了パルス信号EPがハイレベルに立ち上がるまでの期間Tに、発振器906により発生される基本クロック信号CKを出力する。カウンタ907は、ゲート回路905から出力される基本クロック信号CK0のパルス数をカウントする。
【0007】
カウンタ907によるカウント値および基本クロック信号CKの周期に基づいてレーザレーダ装置から発射されたレーザ光が対象物により反射されてレーザレーダ装置に戻るまでの時間を算出することができる。その時間に光速を乗算し、2で割ることにより、レーザレーダ装置から対象物までの距離を算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「新訂レーザ工学の基礎」、啓学出版株式会社、1975年8月10日発行、第188頁
【特許文献1】特開平9−230027号公報
【特許文献2】特開2006−105689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図12のレーザレーダ装置において、発振器906により発生される基本クロック信号CKの周波数が1GHzである場合、基本クロック信号CKのパルスの周期は1nsecである。1nsec当たりに光が進む距離は約30cmである。この場合、レーザ光の発射位置から対象物までの距離を約15cm単位で測定することが可能になる。
【0010】
これに対して、発振器906により発生される基本クロック信号CKの周波数が3GHzである場合、基本クロック信号CKのパルスの周期は約0.3nsecである。0.3nsec当たりに光が進む距離は約10cmである。この場合、レーザ光の発射位置から対象物までの距離を約5cm単位で測定することが可能となる。
【0011】
図12のレーザレーダ装置においては、基本クロック信号CKの周波数を高くすることにより、対象物までの距離を高い精度で測定することが可能となる。しかしながら、基本クロック信号CKの周波数が高いと、基本クロック信号CK0のパルス数を高速でカウントしなければならない。高速動作が可能なカウンタ907は高価である。
【0012】
一方、特許文献1には、カウンタの代りに積分回路を用いたレーザ装置が提案されている。特許文献1に記載のレーダ装置はコンデンサを含む積分回路を備える。このレーダ装置においては、レーザ光の送出パルスが対象物に放射される。対象物からの反射光が検知され、受信信号が生成される。受信信号は反射光に対応するパルス状の成分(反射信号)を有する。受信信号が積分回路に与えられる。積分回路においては、受光信号の反射信号によりコンデンサに所定時間電荷が蓄積される。
【0013】
反射信号の振幅は、レーダ装置から対象物までの距離が短くなるにつれて大きくなり、レーダ装置から対象物までの距離が長くなるにつれて小さくなる。これにより、コンデンサの電圧を予め定められたしきい値と比較することにより、対象物が所定の距離よりも近いか否かが判定される。しかしながら、このレーダ装置では、対象物までの距離を測定することはできない。
【0014】
特許文献2には、カウンタの代りに積分部を用いたレーザレーダセンサが提案されている。特許文献2に記載のレーザレーダセンサは、複数の受光素子および積分部を備える。積分部は複数のスイッチおよび複数のコンデンサにより構成される。各受光素子に複数のスイッチを介してそれぞれコンデンサが接続される。このレーザレーダセンサにおいて、レーザ光が対象物に照射されると、各受光素子により対象物からの反射光が受光され、受光信号が生成される。生成された受光信号が積分部に与えられる。
【0015】
積分部においては、複数のスイッチが一定時間間隔で順にオンされる。それにより、複数のコンデンサに受光信号の強度に応じた電荷が蓄積される。複数のコンデンサの電圧に基づいて対象物までの距離が検出される。
【0016】
しかしながら、特許文献2に記載されたレーザレーダセンサでは、1つの受光素子に対して複数のスイッチおよび複数のコンデンサが必要となる。対象物までの距離の測定精度を高くするためには、多数のスイッチおよび多数のコンデンサを用いる必要がある。それにより、コストが増加する。
【0017】
本発明の目的は、対象物までの距離を高い精度で測定することが可能であるとともに低コスト化が実現された距離測定装置およびそれを備えた輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)第1の発明に係る距離測定装置は、対象物までの距離を測定する距離測定装置であって、対象物にパルス状の光を発射する送光部と、送光部からの発射光および対象物からの反射光を受光し、受光量に応じた受光信号を出力する受光部と、受光部により出力された受光信号に基づいて、発射光の受光時点および反射光の受光時点をそれぞれ第1および第2の時点として検出する検出部と、検出部により検出された第1の時点から第2の時点よりも後の第3の時点まで一定の電圧を維持する第1の矩形波信号を生成する第1の信号生成部と、検出部により検出された第2の時点から第3の時点まで一定の電圧を維持する第2の矩形波信号を生成する第2の信号生成部と、第1の信号生成部により生成された第1の矩形波信号を積分する第1の積分回路と、第2の信号生成部により生成された第2の矩形波信号を積分する第2の積分回路と、第1の積分回路による積分結果と第2の積分回路による積分結果との差に基づいて対象物までの距離を算出する距離算出部とを備えるものである。
【0019】
その距離測定装置においては、送光部から対象物にパルス状の光が発射される。送光部からの発射光および対象物からの反射光が受光部により受光され、受光部から受光量に応じた受光信号が出力される。受光部から出力される受光信号に基づいて、発射光の受光時点および反射光の受光時点がそれぞれ第1および第2の時点として検出部により検出される。この場合、第1の時点から第2の時点までの時間は、距離測定装置から対象物までの距離に比例する。
【0020】
第1の信号生成部により第1の時点から第3の時点まで一定の電圧を維持する第1の矩形波信号が生成され、生成された第1の矩形波信号が第1の積分回路により積分される。第1の積分回路による積分結果は、第1の時点から第3の時点までの時間に対応する。第2の信号生成部により第2の時点から第3の時点まで一定の電圧を維持する第2の矩形波信号が生成され、生成された第2の矩形波信号が第2の積分回路により積分される。第2の積分回路による積分結果は、第2の時点から第3の時点までの時間に対応する。
【0021】
第1の矩形波信号は、第1の時点から第3の時点まで一定の電圧を維持する。第2の矩形波信号は、第2の時点から第3の時点まで一定の電圧を維持する。そのため、第1の時点から第3の時点までの第1の積分回路の出力信号の電圧の変化率は、第2の時点から第3の時点までの第2の積分回路の出力信号の電圧の変化率と等しい。したがって、第1の積分回路による積分結果と第2の積分回路による積分結果との差は、第1の時点から第2の時点までの時間に対応する。
【0022】
第3の時点を第2の時点よりも後の任意の時点に設定することにより、第1の時点から第3の時点までの時間および第2の時点から第3の時点までの時間を任意に設定することができる。そのため、第1および第2の矩形波信号の周波数がそれぞれ第1および第2の積分回路の遮断周波数よりも低くなるように、第1および第2の矩形波信号における一定の電圧の持続時間をそれぞれ設定することが可能となる。それにより、第1および第2の積分回路が第1および第2の矩形波信号を正確に積分することができる。
【0023】
したがって、第1および第2の矩形波信号における一定の電圧の持続時間を長く設定するこにより、第1および第2の積分回路として高速動作が可能な高価な積分回路を用いなくてもよい。
【0024】
これらの結果、対象物までの距離を高い精度で測定することが可能になるとともに距離測定装置の低コスト化が実現される。
【0025】
(2)距離算出部は、第3の時点で第1の積分回路の出力信号の電圧を保持する第1の保持回路と、第3の時点で第2の積分回路の出力信号の電圧を保持する第2の保持回路と、第1の保持回路により保持された電圧をデジタル値に変換して第1の値として出力し、第2の保持回路により保持された電圧をデジタル値に変換して第2の値として出力するアナログデジタル変換器と、アナログデジタル変換器から出力される第1および第2の値の差に基づいて距離を算出する演算部とを含んでもよい。
【0026】
この場合、第1の積分回路による積分結果と第2の積分回路による積分結果との差がデジタル値である第1および第2の値の減算により算出される。それにより、アナログの減算回路を用いることなく、第1の積分回路による積分結果と第2の積分回路による積分結果との差を算出することができる。この場合、距離の測定精度がアナログの減算回路の動作精度に依存しない。したがって、低コストで高精度な距離の測定が可能となる。
【0027】
(3)距離算出部は、第1の積分回路の出力信号の電圧と第2の積分回路の出力信号の電圧とを減算する減算回路と、第3の時点で減算回路の出力信号の電圧を保持する保持回路と、保持回路により保持された電圧をデジタル値に変換して出力するアナログデジタル変換器と、アナログデジタル変換器から出力されるデジタル値に基づいて距離を算出する演算部とを含んでもよい。
【0028】
この場合、第3の時点で第1の積分回路の出力信号の電圧を保持するための保持回路と、第3の時点で第2の積分回路の出力信号の電圧を保持するための保持回路とを個別に設ける必要がない。これにより、距離測定装置の構成が単純化する。
【0029】
また、アナログデジタル変換器が1回の変換動作を行うことにより第1および第2の積分回路による積分結果の差を得ることができる。しかも、減算回路の出力信号の電圧が第2の時点以後一定になるため、アナログデジタル変換器が早い時点で変換動作を開始することができる。したがって、第3の時点から次の測定開始までの時間を短縮することができる。その結果、距離測定装置の動作をより高速化することが可能となる。
【0030】
(4)検出部は、受光部により出力された受光信号における発射光の受光に基づくピークに対応するパルスを有する第1のパルス信号および受光部により出力された受光信号における発射光の受光に基づくピークに対応するパルスを有する第2のパルス信号を発生するパルス発生部を含み、第1の信号生成部は、パルス発生部により発生された第1のパルス信号のパルスに応答して第1の矩形波信号を生成し、第2の信号生成部は、パルス発生部により発生された第2のパルス信号のパルスに応答して第2の矩形波信号を生成してもよい。
【0031】
この場合、第1の時点から第3の時点まで一定の電圧を維持する第1の矩形波信号および第2の時点から第3の時点まで一定の電圧を維持する第2の矩形波信号を容易に生成することができる。
【0032】
(5)第2の発明に係る輸送機器は、本体部と、本体部を移動させる駆動部と、本体部に設けられる上記の距離測定装置とを備えるものである。
【0033】
その輸送機器においては、駆動部により移動する本体部に上記の距離測定装置が設けられる。これにより、本体部から対象物までの距離を高い精度でかつ低コストで測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、対象物までの距離を高い精度で測定することが可能になるとともに、距離測定装置の低コスト化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係る距離測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の距離測定装置の光学系の構成を示す模式図および距離測定装置の反射鏡の構成を示す斜視図である。
【図3】図1の距離測定装置の動作を説明するためのタイミング図である。
【図4】図1の距離生成部の一構成例を示すブロック図である。
【図5】図4の距離生成部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】参考例に係る動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】図1の距離生成部の他の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7の距離生成部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】図1の距離生成部のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【図10】図9の距離生成部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】距離測定装置を備えた自動二輪車を示す模式図である。
【図12】従来のレーザレーダ装置の主要部の構成の一例を示すブロック図である。
【図13】図12のレーザレーダ装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(1)距離測定装置の信号処理系
図1は本発明の一実施の形態に係る距離測定装置の信号処理系の構成を示すブロック図である。この距離測定装置は、例えば輸送機器に搭載される。
【0037】
図1の距離測定装置1は、レーザ光を用いて対象物10までの距離および対象物10の方位を検出するレーザレーダ装置である。ここで、対象物10の方位は、基準方向からの角度で表される。基準方向は、例えば進行方向に垂直な方向に定められる。なお、基準方向は、これに限定されず、進行方向と平行な方向でもよく、または任意の方向に定めることができる。
【0038】
送光装置70は、パルス状のレーザ光を発射する。以下、送光装置70から発射されるパルス状のレーザ光を発射光ELと呼ぶ。モータ30は、送光装置70からの発射光ELの方向を所定の平面(以下、走査平面と呼ぶ)内で360度回転させるために後述する反射鏡を回転させる。エンコーダ40は、モータ30の回転角度に対応するエンコーダパルスEPを出力するとともに、モータ30の1回転ごとに原点パルスOPを出力する。モータ回転数制御部20は、エンコーダ40から出力されるエンコーダパルスEPに基づいてモータ30の回転速度を一定に制御する。
【0039】
発光間隔パルス生成部50は、エンコーダ40から出力されるエンコーダパルスEPを逓倍することにより発光間隔パルスEIを生成する。発光トリガ生成部60は、発光間隔パルス生成部50により生成される発光間隔パルスEIに同期して発光トリガETを生成する。送光装置70は、発光間隔パルス生成部50により生成される発光トリガETに同期して発射光ELを発射する。
【0040】
受光装置80は、対象物10からの反射光RLを受光するとともに、送光装置70からの発射光ELを受光し、受光信号REを出力する。
【0041】
距離生成部100は、発光トリガ生成部60により生成される発光トリガETおよび受光装置80から出力される受光信号REに基づいて距離を示す距離信号DSを生成するとともに、距離の生成を示す距離生成信号DGを出力する。
【0042】
一方、角度生成部210は、エンコーダ40から出力される原点パルスOP、発光トリガ生成部60により生成される発光トリガETおよび距離生成部100により生成される距離生成信号DGに基づいて角度を示す角度信号ASを生成する。
【0043】
レーダ画像生成部220は、距離生成部100により生成される距離信号DSおよび角度生成部210により生成される角度信号ASに基づいて対象物10の距離および方位を示す画像をディスプレイの画面に表示する。
【0044】
(2)距離測定装置の光学系
図2(a)は図1の距離測定装置1の光学系の構成を示す模式図、図2(b)は距離測定装置1の反射鏡250の構成を示す斜視図である。
【0045】
図2(a)において、円筒状の保持体200の底部の中心に送光装置70が取り付けられる。送光装置70は、レーザダイオード(以下、LDと呼ぶ)71および保持部材72を備える。LD71は、レーザ光を走査平面に垂直な方向に出射するように保持部材72により保持される。本実施の形態では、LD71として、例えば波長870nmの近赤外パルスレーザが用いられる。
【0046】
保持体200の内部には、中心に開口部を有する反射鏡210が走査平面に対して45度の角度で傾斜するように取り付けられる。保持体200の側壁には、受光装置80が設けられる。受光装置80は、アバランシェフォトダイオード(以下、APDと呼ぶ)81、保持部材81aおよび受信回路(図示せず)からなる。APD81は、光軸が走査平面に平行な方向を向くように保持部材81aにより保持される。
【0047】
保持体200の内部で反射鏡210の上方には、投受光レンズ220が取り付けられる。投受光レンズ220の中心軸は走査平面に対して垂直な方向を向いている。
【0048】
保持体200の上端部の内周面には、複数のベアリング230を介して保持部材240が走査平面に対して垂直な方向の軸の周りで回転可能に取り付けられる。図2(b)に示すように、保持部材240に反射鏡250が走査平面に対して45度の角度で傾斜するように固定される。
【0049】
図2(a)において、保持体200の上端部の外周面から走査平面に平行な方向に突出するようにモータ保持部201が一体的に形成される。モータ30は、回転軸が走査平面に対して垂直な方向を向くようにモータ保持部201に保持される。モータ30の回転軸にはプーリ31が取り付けられる。プーリ31と保持部材240とはベルト32により連結されている。モータ30の回転に伴って保持部材240が回転する。それにより、反射鏡250が走査平面に対して45度傾斜した状態で走査平面に対して垂直な方向の軸の周りで回転する。
【0050】
送光装置70のLD71から走査平面に垂直な方向に出射されるレーザ光(発射光EL)は、反射鏡210の開口部および投受光レンズ220を透過し、反射鏡250により反射され、走査平面に平行な方向に進行する。モータ30により反射鏡250が回転することにより、発射光ELの進行方向は走査平面に対して垂直な方向の軸を中心として360度回転する。
【0051】
対象物10からの反射光RLは、反射鏡250により下方に反射され、投受光レンズ220により集光される。集光された反射光RLは、反射鏡210により反射され、受光装置80のAPD81に入射する。この場合、LD71からの発射光ELの一部は投受光レンズ220の表面で乱反射され、APD81に入射する。
【0052】
(3)距離測定装置の動作
図3は図1の距離測定装置1の動作を説明するためのタイミング図である。以下、図3を参照しながら図1の距離測定装置1の動作を説明する。
【0053】
図3の横軸は時間である。1段目および2段目に原点パルスOPおよびエンコーダパルスEPが示される。また、3段目〜5段目には発光間隔パルスEI、発光トリガETおよび発射光ELがそれぞれ示されている。発光間隔パルスEI、発光トリガETおよび発射光ELは、エンコーダパルスEPに比べて時間軸上で拡大されている。さらに、6段目には受光信号REが示されている。受光信号REは、発射光ELに比べて時間軸上でさらに拡大されている。
【0054】
図1のモータ30が所定角度回転するごとに、エンコーダ40はエンコーダパルスEPを出力する。本実施の形態では、エンコーダパルスEPは、モータ30が6°回転するごとに生成される。したがって、モータ30が1回転すると、エンコーダ40は60個のエンコーダパルスEPを生成する。また、モータ30が1回転するごとに、エンコーダ40は原点パルスOPを出力する。したがって、原点パルスOPの周期T1はモータ30の1回転の周期に相当する。本実施の形態では、エンコーダ40は、60個のエンコーダパルスEPの生成ごとに原点パルスOPを生成する。
【0055】
モータ回転数制御部20は、エンコーダパルスEPに応答してモータ30の回転数を一定に制御する。この場合、モータ回転数制御部20は、原点パルスOPの周期T1が一定になるようにモータ30を制御する。
【0056】
発光間隔パルス生成部50は、エンコーダパルスEPを逓倍することにより発光間隔パルスEIを生成する。本実施の形態では、発光間隔パルスEIの周期T2はエンコーダパルスEPの周期の1/20である。ここで、発光間隔パルスEIの周期T2の間にモータ30が回転する角度(以下、単位角度と呼ぶ)をΔθとする。本実施の形態では、単位角度Δθは0.3°である。この場合、発光間隔パルスEIは、モータ30が0.3°回転するごとに生成される。
【0057】
発光トリガ生成部60は、発光間隔パルスEIの立ち上がりに同期して立ち下がる発光トリガETを生成する。
【0058】
送光装置70は、発光トリガETの立ち下りに同期してパルス状のレーザ光を発射光ELとして発射する。これにより、モータ30が単位角度Δθ回転するごとに、発射光ELが発射される。
【0059】
送光装置70のLD71からの発射光ELは、対象物10に照射される。一部の発射光ELは、受光装置80のAPD81に入射する。したがって、送光装置70からの発射光ELが受光装置80により受光された後、対象物10からの反射光RLが受光装置80により受光される。この場合、受光装置80による発射光ELの受光時点から反射光RLの受光時点までの時間が距離測定装置1から対象物10までの距離に比例する。
【0060】
上記のように、受光装置80のAPD81には、送光装置70からの発射光ELおよび対象物10からの反射光RLが入射する。したがって、受光装置80から出力される受光信号REには、発射光ELのパルス成分(以下、発射光パルスPeと呼ぶ)および反射光RLのパルス成分(以下、反射光パルスPrと呼ぶ)が含まれる。
【0061】
距離生成部100は、発光トリガETに応答して、距離測定装置1から対象物10までの距離を算出し、算出された距離を示す距離信号DSを生成する。
【0062】
角度生成部210は、原点パルスOP、発光トリガETおよび距離生成信号DGに基づいて角度θ[°]を算出し、角度θを表す角度信号ASを生成する。
【0063】
具体的には、角度生成部210は、原点パルスOPに応答して角度θを0°にリセットし、発光トリガETごとに角度θに単位角度Δθを積算する。距離生成部100により距離生成信号DGが与えられたときに、角度生成部210は、角度θを示す角度信号ASを出力する。
【0064】
(4)距離生成部100の構成および動作
図4は図1の距離生成部100の一構成例を示すブロック図である。
【0065】
図4に示すように、距離生成部100は、パルス発生部110、しきい値出力部111、第1矩形波生成回路120、第1積分回路121および第1サンプルホールド回路122を含む。また、距離生成部100は、第2矩形波生成回路130、第2積分回路131、第2サンプルホールド回路132、リセット回路190、セレクタ191、アナログデジタル(以下、A/Dと呼ぶ。)コンバータ192および処理部193を含む。
【0066】
図5は図4の距離生成部100の動作を説明するためのタイミングチャートである。図5(a)〜(l)の横軸は時間である。図5(a),(b)にそれぞれ開始トリガETおよび受光信号REが示される。図5(c)〜図(e)にそれぞれ第1パルス信号BS1、第2パルス信号BS2およびリセット信号RSが示される。図5(f)〜(h)にそれぞれ第1矩形波信号LS1、第1積分信号IS1および第1サンプルホールド信号HS1が示される。図5(i)〜(k)にそれぞれ第2矩形波信号LS2、第2積分信号IS2および第2サンプルホールド信号HS2が示される。図5(l)にセレクタ出力信号OSが示される。図5(m),(n)にそれぞれ第1パルス信号BS1および第2パルス信号BS2の他の例が示される。図5(b)〜(n)の各信号は、図5(a)の開始トリガ信号ETに比べて時間軸上で拡大されている。
【0067】
図4の受光装置80から距離生成部100のパルス発生部110に図5(b)に示す受光信号REが与えられる。また、図1の発光トリガ生成部60からパルス発生部110に図5(a)に示す開始トリガETが与えられる。さらに、しきい値出力部111からパルス発生部110に予め設定されたしきい値Thが与えられる。
【0068】
一の開始トリガETから次の開始トリガETまでの期間を測定期間と呼ぶ。開始トリガETが一定周期で発生することにより複数の測定期間が一定周期で繰り返し設定される。
【0069】
パルス発生部110は、受光装置80から出力される受光信号REをしきい値出力部111から与えられるしきい値Thと比較することにより図5(c)に示す第1パルス信号BS1および図5(d)に示す第2パルス信号BS2を生成する。
【0070】
具体的には、パルス発生部110は、開始トリガETが立ち下がった後、受光信号REのレベルがしきい値Thを超えた時点で第1パルス信号BS1を“H”レベルに立ち上げ、受光信号REのレベルがしきい値Th以下になった時点で第1パルス信号BS1を“L”レベルに立ち下げる。それにより、第1のパルス信号BS1は、発射光パルスPeに対応する矩形状のパルスPEを有する。生成された第1のパルス信号BS1は、第1矩形波生成回路120およびリセット回路190に与えられる。
【0071】
また、パルス発生部110は、開始トリガETが立ち下がった後、受光信号REのレベルが2度目にしきい値Thを超えた時点で第2パルス信号BS2を“H”レベルに立ち上げ、受光信号REのレベルがしきい値Th以下になった時点で第2パルス信号BS2を“L”レベルに立ち下げる。それにより、第2パルス信号BS2は、反射光パルスPrに対応する矩形状のパルスPRを有する。生成された第2パルス信号BS2は、第2矩形波生成回路130に与えられる。
【0072】
なお、パルス発生部110は、図5(c)の第1パルス信号BS1に代えて図5(m)の第1パルス信号BS1を生成してもよい。図5(m)の例では、パルス発生部110は、開始トリガETが立ち下がった後、受光信号REのレベルがしきい値Thを超えた時点で第1パルス信号BS1を“H”レベルに立ち上げ、微小時間stが経過した時点で第1パルス信号BS1を“L”レベルに立ち下げる。このようにして、矩形状のパルスPEが生成されてもよい。この場合、微小時間stは、第1矩形波生成回路120が応答可能なパルスPEを生成するために必要な時間に設定することができる。
【0073】
また、パルス発生部110は、図5(d)の第2パルス信号BS2に代えて図5(n)の第2パルス信号BS2を生成してもよい。図5(n)の例では、パルス発生部110は、開始トリガETが立ち下がった後、受光信号REのレベルが2度目にしきい値Thを超えた時点で第2パルス信号BS2を“H”レベルに立ち上げ、微小時間stが経過した時点で第2パルス信号BS2を“L”レベルに立ち下げる。このようにして、矩形状のパルスPRが生成されてもよい。この場合、微小時間stは、第2矩形波生成回路130が応答可能なパルスPRを生成するために必要な時間に設定することができる。
【0074】
リセット回路190は、図5(e)に示すように、リセットパルスRRを有するリセット信号RSを生成する。リセットパルスRRは、第1のパルス信号BS1のパルスPEの立ち上がり時点から一定時間TR経過後の時点teに“H”レベルに立ち上がった後、“L”レベルに立ち下がる。リセット信号RSは、第1矩形波生成回路120、第1サンプルホールド回路122、第2矩形波生成回路130、第2サンプルホールド回路132および処理部193に与えられる。時点teの設定方法については、後述する。
【0075】
第1矩形波生成回路120は、例えばDフリップフロップにより構成され、第1矩形波信号LS1を生成する。図5(f)に示すように、第1矩形波生成回路120は、パルスPEの立ち上がり時点で第1矩形波信号LS1を電圧V1に立ち上げ、パルスPEの立ち上がり時点から時点teまでの間第1矩形波信号LS1を一定の電圧V1で維持し、時点teで第1矩形波信号LS1を0Vに立ち下げる。それにより、第1矩形波信号LS1は、パルスPEに対応する第1矩形波SW1を有する。生成された第1矩形波信号LS1は、第1積分回路121に与えられる。
【0076】
第1積分回路121は、例えば演算増幅器により構成される積分回路またはCR積分回路である。第1積分回路121は、第1矩形波信号LS1を積分することにより第1積分信号IS1を出力する。図5(g)に示すように、第1積分信号IS1の電圧は、第1矩形波SW1の期間に一定の変化率(傾き)で上昇する。
【0077】
第1積分回路121により出力された第1積分信号IS1は、第1サンプルホールド回路122に与えられる。図5(h)に示すように、第1サンプルホールド回路122は、リセットパルスRRの立ち上がりに応答して第1積分信号IS1の電圧Vaを保持することにより第1サンプルホールド信号HS1をセレクタ191へ出力する。第1サンプルホールド信号HS1の電圧は、時点te以後一定の電圧Vaに維持される。
【0078】
第2矩形波生成回路130は、例えばDフリップフロップにより構成され、第2矩形波信号LS2を生成する。図5(i)に示すように、第2矩形波生成回路130は、パルスPRの立ち上がり時点で第2矩形波信号LS2を電圧V1に立ち上げ、パルスPRの立ち上がり時点から時点teまでの間第2矩形波信号LS2を一定の電圧V1で維持し、時点teで第2矩形波信号LS2を0Vに立ち下げる。それにより、第2矩形波信号LS2は、パルスPRに対応する第2矩形波SW2を有する。生成された第2矩形波信号LS2は、第2積分回路131に与えられる。
【0079】
第2積分回路131は、例えば演算増幅器により構成される積分回路またはCR積分回路である。第2積分回路131は、第2矩形波信号LS2を積分することにより第2積分信号IS2を出力する。図5(j)に示すように、第2積分信号IS2の電圧は、第2矩形波SW2の期間に一定の変化率(傾き)で上昇する。
【0080】
第2積分回路131により出力された第2積分信号IS2は、第2サンプルホールド回路132に与えられる。図5(k)に示すように、第2サンプルホールド回路132は、リセットパルスRRの立ち上がりに応答して第2積分信号IS2の電圧Vbを保持することにより第2サンプルホールド信号HS2をセレクタ191へ出力する。第2サンプルホールド信号HS2の電圧は、時点te以後一定の電圧Vbに維持される。
【0081】
処理部193は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリからなり、開始トリガETに基づいて選択信号CSを生成する。処理部193は、リセット信号RSに基づいて選択信号CSを生成してもよい。
【0082】
セレクタ191は、選択信号CSに基づいて第1サンプルホールド信号HS1および第2サンプルホールド信号HS2のいずれか一方を選択して出力する。セレクタ191の出力信号をセレクタ出力信号OSと呼ぶ。セレクタ出力信号OSはA/Dコンバータ192に与えられる。
【0083】
処理部193は、時点te以後の時点tfでセレクタ191が第1サンプルホールド信号HS1を選択しかつ時点tfよりも後の時点tgでセレクタ191が第2サンプルホールド信号HS2を選択するように選択信号CSを設定する。それにより、図5(l)に示すように、セレクタ出力信号OSは、時点tfから時点tgまで電圧Vaに維持され、時点tg以後電圧Vbに維持される。
【0084】
A/Dコンバータ192は、アナログ形式のセレクタ出力信号OSをデジタル信号に変換して出力する。処理部193は、時点tfから時点tgまでの時点でA/Dコンバータ192から出力されるデジタル値(電圧Vaの値)を第1のデジタル値として取得する。また、処理部193は、時点tg以後の時点でA/Dコンバータ192から出力されるデジタル値(電圧Vbの値)を第2のデジタル値として取得する。
【0085】
処理部193は、第1のデジタル値から第2のデジタル値を減算し、差分値を算出する。差分値は、電圧Vaの値と電圧Vbの値との差に相当する。
【0086】
図5(g),(j)に示すように、第1矩形波SW1の期間における第1積分信号IS1の変化率は、第2矩形波SW2の期間における第2積分信号IS2の変化率に等しい。
【0087】
そのため、処理部193により算出される差分値は、パルスPEの立ち上がり時点からパルスPRの立ち上がり時点までの第1積分信号IS1の電圧変化量に等しく、パルスPEの立ち上がり時点からパルスPRの立ち上がり時点までの時間に比例する。
【0088】
上述のように、受光装置80による発射光ELの受光時点から反射光RLの受光時点までの時間は、距離測定装置1から対象物10までの距離に比例する。これにより、処理部193は、算出された差分値に基づいて距離測定装置1から対象物10までの距離を算出し、算出結果を距離信号DSとして出力する。また、処理部193は、図1に示すように、距離の生成を示す距離生成信号DGを角度生成部210に出力する。
【0089】
ここで、上記の時点teの設定方法について説明する。時点teは、予め設定された最大測定距離に存在する対象物10までの距離を測定することができるように次の方法で設定される。
【0090】
第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の持続時間は、最大測定距離に存在する対象物10での反射光RLを受光した場合に最も短くなる。したがって、時点teは、最大測定距離に存在する対象物10での反射光RLを受光した場合における第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の持続時間が所定時間以上になるように設定される。ここで、所定時間は、最大測定距離に存在する対象物10での反射光RLを受光した場合における第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の周波数が第2積分回路131の遮断周波数よりも低くなるように定められる。それにより、第2積分回路131が第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2を正確に積分することができる。
【0091】
測定期間(開始トリガETの周期)は、第1パルス信号BS1のパルスBS1の立ち上がり時点から時点teまでの一定時間TRよりも長く設定される。
【0092】
また、時点teは、上記のように予め設定されてもよく、または反射光RLの受光時点に応じて動的に設定されてもよい。例えば、第2パルス信号BS2のパルスPRの立ち上がり時点または立ち下り時点から一定時間後に時点teが設定されてもよい。その場合、対象物10までの距離に関係なく、第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の持続時間が一定になる。それにより、第2積分回路131の積分動作の精度が一定に維持される。
【0093】
なお、第1積分回路121から出力される第1積分信号IS1の変化率および第2積分回路131から出力される第2積分信号IS2の変化率が一定でない場合には、A/Dコンバータ192から出力される第1および第2のデジタル値の変化率が一定とならない。それにより、第1のデジタル値と第2のデジタル値との差分値が受光装置80による発射光ELの受光時点から反射光RLの受光時点までの時間に比例しない。この場合、第1積分回路121および第2積分回路131の積分時間と第1および第2のデジタル値との関係が予め測定され、測定された関係が関数またはテーブルとして処理部193のメモリに記憶される。処理部193は、メモリに記憶された関係および差分値に基づいて受光装置80による発射光ELの受光時点から反射光RLの受光時点までの時間を算出することができる。
【0094】
(5)効果
本実施の形態に係る距離測定装置1においては、第1積分回路121および第2積分回路131として高速動作する積分回路を用いない場合でも、対象物10までの距離を正確に測定することができる。その理由を参考例を参照しながら説明する。以下、高速動作する積分回路を高速の積分回路と呼び、高速の積分回路に比べて低速動作する積分回路を低速の積分回路と呼ぶ。
【0095】
図6は、参考例に係る動作を説明するためのタイミングチャートである。図6(a)〜(e)の横軸は時間である。図6(a),(b),(c)にそれぞれ受光信号RE、第1パルス信号BS1および第2パルス信号BS2が示される。
【0096】
図6(d)には、第1パルス信号BS1および第2パルス信号BS2に基づいて生成される矩形波信号LSが示される。矩形波信号LSは、第1パルス信号BS1のパルスPEの立ち上がりから第2パルス信号BS2のパルスPRの立ち上がりまでの期間に一定の電圧V1を維持する矩形波SWXを有する。図6(e)には、矩形波信号LSを積分することにより得られる積分信号ISが示される。
【0097】
矩形波SWXの立ち下がり時点での積分信号ISの電圧Vxは、発射光ELの受光時点から反射光RLの受光時点までの時間に比例する。したがって、積分信号のISの電圧Vxに基づいて対象物10までの距離を算出することが可能である。
【0098】
しかしながら、対象物10までの距離が短い場合には、矩形波信号LSの矩形波SWXの長さが短くなる。この場合、低い遮断周波数を有する低速の積分回路では、高い周波数を有する矩形波信号LSを正確に積分することができない。そのため、高い遮断周波数を有する高速の積分回路を用いる必要がある。
【0099】
これに対して、本実施の形態に係る距離測定装置1では、第1矩形波信号LS1の第1矩形波SW1の持続時間を測定期間の範囲内で長く設定することができる。同様に、第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の持続時間を測定期間の範囲内で長く設定することができる。そのため、第1矩形波信号LS1および第2矩形波信号LS2の周波数が第1積分回路121および第2積分回路131の遮断周波数よりも低くなるように第1矩形波SW1の持続時間および第2矩形波SW2の持続時間を設定することができる。それにより、第1積分回路121および第2積分回路131が第1矩形波SW1および第2矩形波SW2を正確に積分することができる。
【0100】
したがって、本実施の形態に係る距離測定装置1では、第1矩形波信号LS1の第1矩形波SW1の持続時間および第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の持続時間を長く設定することにより、第1積分回路121および第2積分回路131として比較的低速の積分回路を用いることが可能となる。低速の積分回路は高速の積分回路に比べて安価である。
【0101】
特に、第1矩形波信号LS1の第1矩形波SW1の持続時間は第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の持続時間よりも長いため、第1積分回路121としては第2積分回路131に比べて低速の積分回路を用いることができる。
【0102】
これらの結果、対象物10までの距離を高い精度で測定することが可能になるとともに、距離測定装置1の低コスト化が実現される。
【0103】
また、図4の距離生成部100においては、A/Dコンバータ192から出力される第1のデジタル値から第2のデジタル値が処理部193により減算されることにより、発射光ELの受光時点から反射光RLの受光時点までの時間に比例する差分値が算出される。そのため、アナログの減算回路が必要ない。したがって、距離の測定精度がアナログの減算回路の動作精度に依存しない。
【0104】
(6)距離生成部100の他の構成および動作
図7は図1の距離生成部100の他の構成例を示すブロック図である。図7の距離生成部100が図4の距離生成部100と異なるのは、図4のセレクタ191、第1サンプルホールド回路122および第2サンプルホールド回路132の代りに減算回路194およびサンプルホールド回路195を備える点である。
【0105】
図8は図7の距離生成部100の動作を説明するためのタイミングチャートである。図8(a)〜(k)の横軸は時間である。図8(a)〜(e)の開始トリガET、受光信号RE、第1パルス信号BS1、第2パルス信号BS2およびリセット信号RSは、図5(a)〜(e)のそれぞれ対応する信号と同じである。また、図8(f)〜(i)の第1矩形波信号LS1、第1積分信号IS1、第2矩形波信号LS2および第2積分信号IS2は、図5(f),(g),(i),(j)のそれぞれ対応する信号と同じである。図8(j),(k)には、それぞれ図7の減算回路194から出力される減算信号SSおよび図7のサンプルホールド回路195から出力されるサンプルホールド信号HSが示される。図8(b)〜図8(k)の各信号は、図8(a)の開始トリガ信号ETに比べて時間軸上で拡大されている。
【0106】
図7の距離生成部100において、第1積分回路121により出力された第1積分信号IS1および第2積分回路131により出力された第2積分信号IS2は、減算回路194に与えられる。減算回路194は、第1積分信号IS1から第2積分信号IS2を減算することにより、減算結果を減算信号SSとして出力する。
【0107】
図8(g),(i)に示すように、第1矩形波SW1の期間における第1積分信号IS1の変化率は、第2矩形波SW2の期間における第2積分信号IS2の変化率に等しい。そのため、図8(j)に示すように、第1矩形波SW1の期間のうち第2矩形波SW1の期間と重ならない期間には、減算信号SSは第1積分信号IS1と等しい変化率で上昇する。第1矩形波SW1の期間のうち第2矩形波SW1の期間と重なる期間には、減算信号SSは一定の電圧の値に維持される。この一定の電圧の値は、電圧Vaの値と電圧Vbの値との差である。
【0108】
減算回路194により出力された減算信号SSは、サンプルホールド回路195に与えられる。図8(k)に示すように、サンプルホールド回路195は、リセットパルスRRの立ち上がりに応答して減算信号SSの電圧(Va−Vb)を保持することによりサンプルホールド信号HSをA/Dコンバータ192へ出力する。サンプルホールド信号HSの電圧は、時点te以後一定の電圧(Va−Vb)に維持される。
【0109】
A/Dコンバータ192は、アナログ形式のサンプルホールド信号HSをデジタル信号に変換して出力する。処理部193は、リセット信号RSのリセットパルスRRの立ち上がりから所定期間経過後にA/Dコンバータ192から出力されるデジタル値を差分値として取得する。この差分値は、電圧Vaの値と電圧Vbの値との差に相当する。
【0110】
処理部193は、差分値に基づいて距離測定装置1から対象物10までの距離を算出し、算出結果を距離信号DSとして出力する。
【0111】
本例においても、第1矩形波信号LS1の第1矩形波SW1の持続時間および第2矩形波信号LS2の第2矩形波SW2の持続時間を長く設定することにより、第1積分回路121および第2積分回路131として比較的低速の積分回路を用いることが可能となる。したがって、対象物10までの距離を高い精度で正確に測定することが可能になるとともに、距離測定装置1の低コスト化が実現される。
【0112】
また、A/Dコンバータ192が1回のアナログデジタル変換動作を行うことにより差分値を得ることができる。しかも、減算信号SSの電圧が時点teよりも前のパルスPRの立ち上がり時点以後に一定になるため、A/Dコンバータ192が早い時点でアナログデジタル変換動作を開始することができる。したがって、時点teから次の開始トリガETの発生時までの時間を短縮することができる。その結果、距離測定装置1の動作をより高速化することが可能となる。
【0113】
(7)距離生成部100のさらに他の構成例
距離生成部100のさらに他の構成例について、図4の距離生成部100と異なる点を説明する。送光装置70からの発射光ELは一定の広がりを有する。そのため、発射光ELが複数の対象物10に照射される場合がある。この距離生成部100を備える距離測定装置1は、複数の対象物10までの距離を個別に測定することができる。
【0114】
図9は図1の距離生成部100のさらに他の構成例を示すブロック図である。図9の距離生成部100が図4の距離生成部100と異なるのは、第3矩形波生成回路140、第3積分回路141および第3サンプルホールド回路142をさらに備える点である。
【0115】
図10は図9の距離生成部100の動作を説明するためのタイミングチャートである。図10(a)〜(k)の横軸は時間である。図10(a)に受光信号REが示される。図10(b)〜(e)にそれぞれ第1パルス信号BS1、第2パルス信号BS2、第3パルス信号BS3およびリセット信号RSが示される。図10(f),(g)にそれぞれ第1サンプルホールド信号HS1および第2サンプルホールド信号HS2が示される。図10(h)〜(j)にそれぞれ第3矩形波信号LS3、第3積分信号IS3および第3サンプルホールド信号HS3が示される。図10(k)セレクタ出力信号OSが示される。
【0116】
本例では、図2の受光装置80に、送光装置70からの発射光EL、一方の対象物10からの反射光RLおよび他方の対象物10からの反射光RLが入射する。その結果、図10(a)に示すように、受光装置80から出力される受光信号REには、発射光パルスPeおよび2つの反射光パルスPr,Pr2が含まれる。
【0117】
図9の距離生成部100において、パルス発生部110は、受光装置80から出力される受光信号REをしきい値出力部111から与えられるしきい値Thと比較することにより、図10(b)に示す第1パルス信号BS1、図10(c)に示す第2パルス信号BS2および図10(d)に示す第3パルス信号BS3を生成する。
【0118】
パルス発生部110は、開始トリガETが立ち下がった後、受光信号REのレベルが3度目にしきい値Thを超えた時点で第3パルス信号BS3を“H”レベルに立ち上げ、受光信号REのレベルがしきい値Th以下になった時点で第3パルス信号BS3を“L”レベルに立ち下げる。それにより、第3のパルス信号BS3は、発射光パルスPr2に対応する矩形状のパルスPR2を有する。生成された第3のパルス信号BS3は、第3矩形波生成回路140に与えられる。
【0119】
図9の第1矩形波生成回路120、第1積分回路121および第1サンプルホールド回路122は、図4および図5の例と同様の動作を行う。また、図9の第2矩形波生成回路130、第2積分回路131および第2サンプルホールド回路132も、図4および図5の例と同様の動作を行う。その結果、第1サンプルホールド回路122および第2サンプルホールド回路132は、それぞれ図10(f)に示す第1サンプルホールド信号HS1および図10(g)に示す第2サンプルホールド信号HS2をセレクタ191へ出力する。
【0120】
図9のリセット回路190は、第1矩形波生成回路120、第1サンプルホールド回路122、第2矩形波生成回路130、第2サンプルホールド回路132および処理部193とともに、第3矩形波生成回路140および第3サンプルホールド回路142へ図10(e)に示すリセット信号RSを与える。
【0121】
第3矩形波生成回路140は、例えばDフリップフロップにより構成され、第3矩形波信号LS3を生成する。図10(h)に示すように、第3矩形波生成回路140は、パルスPR2の立ち上がり時点で第3矩形波信号LS3を電圧V1に立ち上げ、パルスPR2の立ち上がり時点から時点teまでの間第3矩形波信号LS3を一定の電圧V1で維持し、時点teで第3矩形波信号LS3を0Vに立ち下げる。それにより、第3矩形波信号LS3は、パルスPR2に対応する第3矩形波SW3を有する。生成された第3矩形波信号LS3は、第3積分回路141に与えられる。
【0122】
第3積分回路141は、例えば演算増幅器により構成される積分回路またはCR積分回路である。第3積分回路141は、第3矩形波信号LS3を積分することにより第3積分信号IS3を出力する。図10(i)に示すように、第3積分信号IS3の電圧は、第3矩形波SW3の期間に一定の変化率(傾き)で上昇する。
【0123】
第3積分回路141により出力された第3積分信号IS3は、第3サンプルホールド回路142に与えられる。図10(j)に示すように、第3サンプルホールド回路142は、リセットパルスRRの立ち上がりに応答して第3積分信号IS3の電圧Vcを保持することにより第3サンプルホールド信号HS3をセレクタ191へ出力する。第3サンプルホールド信号HS3の電圧は、時点te以後一定の電圧Vcに維持される。
【0124】
セレクタ191は、選択信号CSに基づいて第1サンプルホールド信号HS1、第2サンプルホールド信号HS2および第3サンプルホールド信号HS3のいずれかを選択して出力する。
【0125】
セレクタ191は、時点te以後の時点tfで第1サンプルホールド信号HS1を選択し、時点tfよりも後の時点tgで第2サンプルホールド信号HS2を選択し、時点tgよりも後の時点thで第3サンプルホールド信号HS3を選択する。それにより、図10(k)に示すように、セレクタ出力信号OSは、時点tfから時点tgまで電圧Vaに維持され、時点tgから時点thまで電圧Vbに維持され、時点th以後電圧Vcに維持される。
【0126】
A/Dコンバータ192は、アナログ形式のセレクタ出力信号OSをデジタル信号に変換して出力する。処理部193は、時点tfから時点tgまでの時点でA/Dコンバータ192から出力されるデジタル値(電圧Vaの値)を第1のデジタル値として取得する。また、処理部193は、時点tgから時点tfまでの時点でA/Dコンバータ192から出力されるデジタル値(電圧Vbの値)を第2のデジタル値として取得する。さらに、処理部193は、時点th以後の時点でA/Dコンバータ192から出力されるデジタル値(電圧Vcの値)を第3のデジタル値として取得する。
【0127】
図4および図5の例と同様に、処理部193は、第1のデジタル値から第2のデジタル値を減算し、差分値を算出する。差分値は、電圧Vaの値と電圧Vbの値との差に相当する。また、処理部193は、第1のデジタル値から第3のデジタル値を減算し、差分値を算出する。差分値は、電圧Vaの値と電圧Vcの値との差に相当する。
【0128】
この場合、第1のデジタル値と第2のデジタル値との差分値は、パルスPEの立ち上がり時点からパルスPRの立ち上がり時点までの時間に比例する。また、第1のデジタル値と第3のデジタル値との差分値は、パルスPEの立ち上がり時点からパルスPR2の立ち上がり時点までの時間に比例する。
【0129】
これにより、処理部193は、第1のデジタル値と第2のデジタル値との差分値に基づいて距離測定装置1から一方の対象物10までの距離を算出し、算出結果を距離信号DS1として出力する。また、処理部193は、第1のデジタル値と第3のデジタル値との差分値に基づいて距離測定装置1から他方の対象物10までの距離を算出し、算出結果を距離信号DS2として出力する。
【0130】
上記のように、パルス伸長回路、積分回路およびサンプルホールド回路からなる回路群を対象物10の個数に応じて増加させることにより、複数の対象物10までの距離を個別に測定することが可能となる。
【0131】
(8)距離測定装置を備えた輸送機器
次に、上記実施の形態に係る距離測定装置1を備えた輸送機器の例として自動二輪車について説明する。
【0132】
図11は距離測定装置1を備えた自動二輪車を示す模式図である。
【0133】
図11の自動二輪車300においては、車体310の前部下方に前輪320が設けられ、後部下方に後輪330が設けられている。車体310の中央部には、ECU(電子制御装置)340が設けられている。車体310の前端部および後端部に上記実施の形態に係る距離測定装置1がそれぞれ取り付けられている。
【0134】
また、車体310においてハンドル360の後方下部にディスプレイ350が設けられている。
【0135】
前端部の距離測定装置1は、主として自動二輪車300の前方および側方の物体の距離および角度を測定する。後端部の距離測定装置1は、主として自動二輪車300の後方および側方の物体の距離および物体の角度を測定する。前端部および後端部の距離測定装置1により測定された距離および角度はECU340に与えられる。
【0136】
ECU340は、前端部および後端部の距離測定装置1により測定された距離および角度をディスプレイ350にレーダ画像として表示させる。それにより、乗員は、周囲の物体までの距離および物体の方位を視覚的に認識することができる。
【0137】
ECU340は、前端部および後端部の距離測定装置1により測定された距離および角度に基づいて所定の画像処理等を行うことによりレーダ画像を生成してもよい。例えば、ECU340は、測定された距離および角度に基づいて地図上に自動二輪車300の本体および障害物が表示されたレーダ画像を生成してもよい。
【0138】
この場合、乗員は、ディスプレイ350に表示されたレーダ画像を視認することにより距離測定装置1により測定された距離および角度をより簡単に認識することができる。
【0139】
また、ECU340は、障害物との距離または障害物との距離の変化率に応じてレーダ画像を変化させてもよい。さらに、車体310に警報装置(図示せず)が設けられる場合、ECU340は、障害物との距離または障害物との距離の変化率に応じて警報装置を制御することにより、警報装置から音声を発生させてもよい。この場合、乗員は、障害物との距離または障害物との距離の変化率をより迅速に認識することができる。
【0140】
(9)他の実施の形態
送光装置70は、LD71の代りに発光ダイオードを備えてもよい。この場合、送光装置70は、発光ダイオードにより発生されるパルス状の光を発射する。
【0141】
上記実施の形態に係る距離測定装置1は全方向に存在する対象物10までの距離を測定可能なレーザレーダ装置であるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、一方向に存在する対象物を測定する距離測定装置にも同様に適用することができる。この場合、図1のモータ回転数制御部20、モータ30、エンコーダ40および角度生成部210は設けられない。
【0142】
上記の距離測定装置1は、自動二輪車に限らず、4輪の自動車、3輪の自動車、電動自転車、滑走艇、水上バイク、電動車椅子、航空機等の種々の輸送機器に用いることができる。
【0143】
(10)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0144】
上記実施の形態では対象物10が対象物の例であり、距離測定装置1が距離測定装置の例であり、送光装置70が送光部の例であり、受光信号REが受光信号の例であり、受光装置80が受光部の例である。
【0145】
また、第1のパルス信号BS1のパルスPEの立ち上がり時点が第1の時点の例であり、第2のパルス信号BS2のパルスPRの立ち上がり時点が第2の時点の例であり、しきい値出力部111およびパルス発生部110が検出部の例であり、時点teが第3の時点の例である。
【0146】
さらに、第1矩形波信号LS1が第1の矩形波信号の例であり、第1矩形波生成回路120が第1の信号生成部の例であり、第2矩形波信号LS2および第3矩形波信号LS3が第2の矩形波信号の例であり、第2矩形波生成回路130および第3矩形波生成回路140が第2の信号生成部の例である。
【0147】
また、第1積分回路121が第1の積分回路の例であり、第2積分回路131および第3積分回路141が第2の積分回路の例であり、第1サンプルホールド回路122、第2サンプルホールド回路132、第3サンプルホールド回路142、リセット回路190、セレクタ191、A/Dコンバータ192および処理部193、減算回路194およびサンプルホールド回路195が距離算出部の例である。
【0148】
さらに、第1サンプルホールド回路122が第1の保持回路の例であり、第2サンプルホールド回路132および第3サンプルホールド回路142が第2の保持回路の例であり、第1のデジタル値が第1の値の例であり、第2のデジタル値および第3のデジタル値が第2の値の例であり、A/Dコンバータ192がアナログデジタル変換器の例であり、処理部193が演算部の例である。
【0149】
また、減算回路194が減算回路の例であり、サンプルホールド回路195が保持回路の例であり、第1のパルス信号BS1が第1のパルス信号の例であり、第2のパルス信号BS2および第3のパルス信号BS3が第2のパルス信号の例であり、パルス発生部110がパルス発生部の例である。
【0150】
さらに、車体310が本体部の例であり、前輪320および後輪330が駆動部の例であり、自動二輪車300が輸送機器の例である。
【0151】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、レーザ光を用いて対象物までの距離等を測定するために利用することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 距離測定装置
10 対象物
70 送光装置
80 受光装置
110 パルス発生部
111 しきい値出力部
120 第1矩形波生成回路
121 第1積分回路
122 第1サンプルホールド回路
130 第2矩形波生成回路
131 第2積分回路
132 第2サンプルホールド回路
140 第3矩形波生成回路
141 第3積分回路
142 第3サンプルホールド回路
190 リセット回路
191 セレクタ
192 A/Dコンバータ
193 処理部
194 減算回路
195 サンプルホールド回路
300 自動二輪車
310 車体
320 前輪
330 後輪
BS1 第1のパルス信号
BS2 第2のパルス信号
BS3 第3のパルス信号
LS1 第1矩形波信号
LS2 第2矩形波信号
LS3 第3矩形波信号
PE,PR パルス
RE 受光信号
te 時点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物までの距離を測定する距離測定装置であって、
前記対象物にパルス状の光を発射する送光部と、
前記送光部からの発射光および前記対象物からの反射光を受光し、受光量に応じた受光信号を出力する受光部と、
前記受光部により出力された受光信号に基づいて、前記発射光の受光時点および前記反射光の受光時点をそれぞれ第1および第2の時点として検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記第1の時点から前記第2の時点よりも後の第3の時点まで一定の電圧を維持する第1の矩形波信号を生成する第1の信号生成部と、
前記検出部により検出された前記第2の時点から前記第3の時点まで前記一定の電圧を維持する第2の矩形波信号を生成する第2の信号生成部と、
前記第1の信号生成部により生成された第1の矩形波信号を積分する第1の積分回路と、
前記第2の信号生成部により生成された第2の矩形波信号を積分する第2の積分回路と、
前記第1の積分回路による積分結果と前記第2の積分回路による積分結果との差に基づいて前記対象物までの距離を算出する距離算出部とを備えることを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記距離算出部は、
前記第3の時点で前記第1の積分回路の出力信号の電圧を保持する第1の保持回路と、
前記第3の時点で前記第2の積分回路の出力信号の電圧を保持する第2の保持回路と、
前記第1の保持回路により保持された電圧をデジタル値に変換して第1の値として出力し、前記第2の保持回路により保持された電圧をデジタル値に変換して第2の値として出力するアナログデジタル変換器と、
前記アナログデジタル変換器から出力される第1および第2の値の差に基づいて距離を算出する演算部とを含むことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記距離算出部は、
前記第1の積分回路の出力信号の電圧と前記第2の積分回路の出力信号の電圧とを減算する減算回路と、
前記第3の時点で前記減算回路の出力信号の電圧を保持する保持回路と、
前記保持回路により保持された電圧をデジタル値に変換して出力するアナログデジタル変換器と、
前記アナログデジタル変換器から出力されるデジタル値に基づいて距離を算出する演算部とを含むことを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記受光部により出力された受光信号における前記発射光の受光に基づくピークに対応するパルスを有する第1のパルス信号および前記受光部により出力された受光信号における前記発射光の受光に基づくピークに対応するパルスを有する第2のパルス信号を発生するパルス発生部を含み、
前記第1の信号生成部は、前記パルス発生部により発生された前記第1のパルス信号のパルスに応答して前記第1の矩形波信号を生成し、
前記第2の信号生成部は、前記パルス発生部により発生された前記第2のパルス信号のパルスに応答して前記第2の矩形波信号を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の距離測定装置。
【請求項5】
本体部と、
前記本体部を移動させる駆動部と、
前記本体部に設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の距離測定装置とを備えたことを特徴とする輸送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3114(P2013−3114A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137769(P2011−137769)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】