説明

距離測定装置

【課題】外乱光が存在する測定環境においても、測定対象物におけるレーザ反射光の抽出を高速且つ高精度に実行可能な距離測定装置を提供する。
【解決手段】照射方向を変化させながら、測定対象物Wにスリット状のレーザ光を照射する照射装置2と、撮影方向を変化させながら、測定対象物Wで反射したレーザ光の反射光を撮影画像として取り込む撮像装置3と、照射装置2及び撮像装置3の動きを制御する制御装置4と、撮影画像に2値化処理及びラベリング処理を施した処理画像を作成する画像処理部5と、処理画像に含まれる反射光と外乱光とを区別するために用いられる所定の物理量を、ラベリングされた領域ごとに演算する物理量演算部6と、少なくとも2枚の処理画像を比較して、対応する領域の物理量の変化量を算出し、変化量が予め設定した閾値を超過している領域のデータを消去する外乱光消去部7と、を備えた距離測定装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を照射した測定対象物を撮影し、この撮影画像を処理して測定対象物で反射されたレーザ光を抽出し、測定対象物までの距離を測定する距離測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置では、測定対象物で反射したレーザ光以外の外乱光が撮影画像に含まれる場合がある。外乱光が撮影画像に含まれると、撮影画像中の外乱光を測定対象物と認識してしまい、正確な距離測定ができなくなるという問題がある。したがって、このような距離測定装置においては、撮影画像から外乱光を除去して、レーザ光の反射光のみを抽出することが必要となる。
【0003】
特許文献1に記載の距離測定装置は、測定対象物に光を照射しているときに受光手段で得られる計測光情報から、測定対象物に光を照射していないときに受光手段で得られる背景光情報を差し引いて、背景光(外乱光)を除去しようというものである。このとき、計測光情報から背景光情報を差し引いた差が閾値以下の場合は、距離計測を行わないように構成されている。この構成によれば、背景光の揺らぎにより背景光情報が大きくなった場合に、適切に計測光を抽出できないという問題を回避できる。
【0004】
特許文献2に記載の距離測定装置は、測定対象物にパルス状にレーザ光を照射し、レーザ光の照射、停止に同期させて測定対象物の画像を取り込み、これらの画像間の差画像を求め、差画像の最小値を画素ごとに求めて画像を作成する。よって、動く物体が撮影画像に写った場合に、この物体のデータを除去することができ、レーザ光のみを抽出することができる。この距離測定装置によれば、低出力のレーザ光でもレーザ光のみを抽出できるので、照度の変化の大きい屋外でも使用可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−122223号公報
【特許文献2】特許第3909377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の距離測定装置では、距離測定装置や測定対象物が移動する場合には背景光情報も変化するので、計測光情報から背景光情報を差し引いても計測光だけを抽出することができない。したがって、距離測定装置や測定対象物が移動する場合には、各測定位置において距離測定装置及び測定対象物を一旦停止させた上で、光を照射しているときと照射していないときとの2回画像を取り込む必要があり、測定に多大な時間を要する。
【0007】
また、特許文献2に記載の距離測定装置では、レーザ光が取得画像内で移動した場合、差画像の最小値を画素ごとに求める段階で、本来抽出すべきレーザ光までもが除去されてしまう。さらに、各測定位置で光の照射と停止を繰り返す必要があり、測定に要する時間が長くなるという問題がある。
【0008】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたもので、外乱光が存在する測定環境においても、測定対象物におけるレーザ反射光の抽出を高速且つ高精度に実行可能な距離測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る距離測定装置の第1特徴構成は、照射方向を変化させながら、測定対象物にスリット状のレーザ光を照射する照射装置と、撮影方向を変化させながら、前記測定対象物で反射した前記レーザ光の反射光を撮影画像として取り込む撮像装置と、前記照射装置及び前記撮像装置の動きを制御する制御装置と、前記撮影画像に2値化処理及びラベリング処理を施した処理画像を作成する画像処理部と、前記処理画像に含まれる前記反射光とそれ以外の外乱光とを区別するために用いられる所定の物理量を、ラベリングされた領域ごとに演算する物理量演算部と、少なくとも2枚の前記処理画像を比較して、対応する前記ラベリングされた領域の前記物理量の変化量を算出し、前記変化量が予め設定した閾値を超過している前記領域のデータを消去する外乱光消去部と、を備えている点にある。
【0010】
第1特徴構成によれば、処理画像間で対応するラベリングされた領域の物理量の変化量によって外乱光の除去を行うので、レーザ光を照射していない状態の撮影画像が不要となる。したがって、各測定位置で1枚の撮影画像を取得するだけでよいので、測定処理の高速化を図ることができる。また、スリット状のレーザ光を照射するので、スポット状のレーザ光を照射する場合と比べて、1回の撮影で広い範囲のデータが取得できるため、測定時間の短縮を図ることができる。
【0011】
また、本特徴構成によれば、画像データの差分をとることによりレーザ反射光を抽出するのではなく、ラベリングされた領域の物理量の変化量を閾値と比較することによってレーザ反射光を抽出する。したがって、測定条件に応じて適切な物理量や変化量を選択し、閾値を設定すれば、距離測定装置や測定対象物が動くものであっても外乱光を消去できるので、より高精度にレーザ反射光のみを抽出できる。
【0012】
第2特徴構成は、前記測定対象物は静止しており、前記照射装置及び前記撮像装置は揺動する点にある。
【0013】
外乱光を消去するための閾値は、測定対象物、照射装置及び撮像装置の動きを考慮して決定する必要がある。しかし、第2特徴構成によれば、測定対象物は静止しているので動きを考慮する必要はなく、照射装置及び撮像装置は揺動するので並行移動を考慮する必要はない(回転のみを考慮すればよい)ので、閾値の決定を容易に行える。
【0014】
第3特徴構成は、前記外乱光消去部は、連続で撮影した2枚の前記撮影画像を処理した前記処理画像を比較する点にある。
【0015】
第3特徴構成によれば、連続で撮影した撮影画像を基に処理を行うので、非連続の撮影画像を利用する場合と比べてデータの取得間隔が細かくなり、より正確な形状構築が可能となる。また、比較に用いるのは2枚の撮影画像のみなので、3枚以上の撮影画像を比較する場合と比べて処理負荷を小さくすることができる。
【0016】
第4特徴構成は、前記処理画像に前記ラベリングされた領域が存在しない場合は、当該処理画像に代えて、当該処理画像の後に得られた所定枚数の処理画像のうち、前記ラベリングされた領域が存在する最初の処理画像を用いる点にある。
【0017】
第4特徴構成によれば、何らかの不具合で処理画像にラベリングされた領域が存在しない場合にも、その後に得た処理画像にラベリングされた領域が存在すれば、その処理画像を用いて測定を継続することができる。また、この場合に、ラベリングされた領域が存在するか否かを確認する枚数を所定枚数に限ることにより、不必要に測定が継続されることを防止できる。
【0018】
第5特徴構成は、前記物理量は、前記処理画像における前記ラベリングされた領域の重心の位置座標であり、前記変化量は、前記対応する領域の前記重心の移動距離である点にある。
【0019】
第5特徴構成のごとく、物理量としてラベリングされた領域の重心の位置座標、変化量として重心の距離を採用することにより、物理量や変化量の演算が容易となり、演算負荷を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る距離測定装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】距離測定装置の具体的構成を示す模式図である。
【図3】閾値の算出方法を説明するための概略平面図である。
【図4】距離測定装置の一連の動作を示すフローチャートである。
【図5】測定環境の一例を示す写真である。
【図6】撮像装置で撮影された撮影画像である。
【図7】画像処理部で作成された処理画像である。
【図8】外乱光消去部で得られる反射光抽出画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る距離測定装置の実施形態について図1〜図8を用いて説明する。
【0022】
距離測定装置1の基本構成を示したブロック図を図1に、具体的構成を示した模式図を図2に示す。距離測定装置1は、レーザ照射器(照射装置)2、カメラ(撮像装置)3、制御装置4、画像処理部5、物理量演算部6、外乱光消去部7及び記憶部8を備える。
【0023】
レーザ照射器2は、測定対象物Wにスリット状のレーザ光を照射し、カメラ3は測定対象物Wにて反射したレーザ光を撮影可能に構成されている。スリット状のレーザ光とは、スリット光そのものであってもよいし、スポット光の集合体としてスリット状となるものであってもよい。カメラ3のレンズ3aの前方にはバンドパスフィルタ3bが備えられ、レーザ照射器2から照射したレーザ光と同じ波長を有する光のみを通過させる。また、レンズ3aの後方には撮像素子3cが備えられている。
【0024】
レーザ照射器2及びカメラ3はセンサ9として一体的に動き、センサ9はY軸を揺動軸として揺動するよう構成されている。なお、レーザ照射器2及びカメラ3の構成はこれに限られるものではなく、レーザ照射器2とカメラ3とが各自独立に動くものであってもよいし、Y軸周りの揺動以外の他の動きを行うものであってもよい。
【0025】
制御装置4は、レーザ照射器2及びカメラ3の動きを制御する。本実施形態では、制御装置4は制御部4aと移動機構部4bとから構成されるが、これらが一体品として構成されてもよい。移動機構部4bは、複数のアームや回動支軸を有し、レーザ照射器2及びカメラ3(センサ9)の三次元的な動きを実現するものである。制御部4aは、後述の画像処理部5、物理量演算部6及び外乱光消去部7における処理状況や演算状況に応じて、移動機構部4bに動作指令を発する。
【0026】
画像処理部5、物理量演算部6及び外乱光消去部7は、マイクロプロセッサ等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアとが協働することにより実現される。これらはそれぞれの機能としての分担を示すものであり、必ずしも物理的に独立して構成される必要はない。
【0027】
画像処理部5は、カメラ3で撮影された撮影画像に2値化処理及びラベリング処理を施して処理画像を作成する機能部である。物理量演算部6は、画像処理部5によりラベリングされた領域(以降、「ラベリング領域」と称す)における所定の物理量を演算する機能部である。外乱光消去部7は、複数枚の処理画像を比較し、前記物理量に基づいて、外乱光とみなされるラベリング領域を消去して反射光抽出画像を取得する機能部である。
【0028】
記憶部8は、上記各機能部で得られた撮影画像、処理画像、反射光抽出画像や物理量等を格納しておく機能部である。ただし、記憶部8は必ずしも独立に構成する必要はなく、例えば、画像処理部5、物理量演算部6及び外乱光消去部7の各機能部が記憶部の役割も有するように構成してもよい。
【0029】
物理量とはラベリング領域を、レーザ反射光のデータと外乱光のデータとに区別するために用いる量であって、例えば、ラベリング領域の重心の位置座標、ラベリング領域の面積・長さ等から選択することが可能である。ここでは、物理量として処理画像中におけるラベリング領域の重心の位置座標、変化量として重心の移動距離を採用した場合の閾値の算出手法について、図3を用いて説明する。
【0030】
図3は、レーザ光軸r上にセンサ9の揺動中心oがある場合に、センサ9がα度揺動したときの除去対象Zの重心Zgの移動量を幾何学的な算出手法を説明するための概略平面図である。a図の状態からセンサ9がα度揺動した状態を示すのがb図である。図中の各記号について、以下に説明する。
【0031】
L:センサ9の揺動中心o−除去対象重心Zgの距離
L0:センサ9の揺動中心o−レーザ光軸rとカメラ光軸sとの交点pの距離
θ:レーザ光軸rとカメラ光軸sとの角度
d0:レンズ3aの中心−撮像素子3cの距離
d1:レンズ3aの中心−レーザ光軸rとカメラ光軸sとの交点pの距離
δ0:撮像素子3cの中心−除去対象重心Zg像の距離
a:レーザ光軸rとカメラ光軸sとの交点p−カメラ光軸sと除去対象重心Zg垂線との交点qの距離
b:除去対象重心Zg−カメラ光軸sと除去対象重心Zg垂線との交点qの距離
c:除去対象重心Zg−レーザ光軸rとカメラ光軸sとの交点pの距離
α:センサ9の揺動角度
β:図3(b)参照
γ:aとcとの角度
δ1:撮像素子3cの中心−除去対象重心Zg像の距離(α度揺動時)
【0032】
a図の状態においては、撮像素子3cの中心−除去対象重心Zg像の距離δ0は図中に示された式で表される。また、a図の状態からセンサ9がα度揺動したb図の状態においては、撮像素子3cの中心−除去対象重心Zg像の距離δ1は図中に示された式で表される。センサ9がα度揺動したときの除去対象Zの重心Zgの移動量δは、δ=δ1−δ0となるから、移動量δはL,L0,d0,d1,θ、αのみで算出することができる。したがって、センサ9の仕様が分かっており、除去対象(外乱光)Zの存在する範囲がおおよそ分かっていれば、予めδを算出することができる。よって、この算出結果を基に閾値を決定できる。
【0033】
このように、測定対象物Wが静止しており、センサ9(レーザ照射器2及びカメラ3)が揺動する構成としているので、比較的簡単な計算式に基づいて閾値を決定することができる。しかし、これは本距離測定装置1にとって不可欠な構成ではない。すなわち、計算式は煩雑になるが、動きが既知であれば測定対象物Wは静止しているものに限らないし、センサ9が並行移動を含む動きをするものであってもよい。
【0034】
次に、上記のようにして求めた閾値を用いて、距離測定装置1により測定対象物Wの形状を構築し、これを設計図面等のデータと比較することにより、測定対象物Wの製品としての良・不良の判定を行うまでの一連の流れについて、図4〜図7に基づいて説明する。図4は一連の流れを示すフローチャート、図5は測定環境を示す写真、図6は撮像装置で撮影された撮影画像、図7は画像処理部で作成された処理画像、図8は外乱光消去部で得られる反射光抽出画像を示す。図6及び図7においては、a図はn位置におけるもの、b図はn+1位置におけるものである。
【0035】
最初に、測定対象物Wをセットする(S1)。このとき、上記閾値を算出する際に除去対象重心Zgを設定した位置よりもセンサ9の側であって、できるだけレーザ光軸rとカメラ光軸sとの交点p付近に測定対象物Wを配置することに留意する。ここで説明する例では、図5に示すように略正方形の正面を有する静止状態の測定対象物Wを測定する。測定対象物Wの後方の天井に設置された4つの外乱光(蛍光灯)X1〜X4が、除去すべき対象となる。センサ9が水平方向に揺動することによって、レーザ反射光Yは図中左右方向に移動する。
【0036】
測定対象物Wのセット完了後、センサ9を測定開始位置nに移動し(S2)、レーザ照射器2によりレーザ光を照射する(S3)。ここでは、レーザ光は測定が完了するまで照射し続けるものとするが、カメラ3で撮影する際にその都度照射するようにしてもよい。レーザ光を照射した状態で、カメラ3で測定対象物Wを含む範囲を撮影し、n位置における撮影画像(n)を取得し、記憶部8に保存する(S4)。撮影画像(n)は、図6(a)に示すように、バンドパスフィルタ3bによりある程度のノイズは除去され、バンドパスフィルタ3bが許容する波長の光のみが撮影されたものとなっている。
【0037】
次に、画像処理部5にて、撮影画像(n)に2値化処理及びラベリング処理を施して処理画像(n)を取得し、記憶部8に保存する(S5)。処理画像(n)は、図7(a)に示すようにラベリング領域A1〜A5を含む。ラベリング領域A1〜A4は外乱光X1〜X4に係るデータ、ラベリング領域A5はレーザ反射光Yに係るデータである。しかし、この段階において、距離測定装置1はどのラベリング領域が外乱光に係るものかは判別できない。
【0038】
そこで、外乱光X1〜X4に係るラベリング領域A1〜A4とレーザ反射光Yに係るラベリング領域A5との区別を行うために、各ラベリング領域A1〜A5の物理量を算出し、記憶部8に保存する(S6)。ここでの物理量は、処理画像(n)中におけるラベリング領域A1〜A5の重心の位置座標とする。
【0039】
以上で、n位置における測定は終了し、制御装置4はセンサ9を次のn+1位置に移動する(S7)。n+1におけるS8〜S10は、S4〜S6と同じであるので説明を省略する。なお、n+1位置で得られた撮影画像を図6(b)に、処理画像を図7(b)に示す。図7(b)における点線はn+1におけるラベリング領域A1〜A5を、矢印はラベリング領域A1〜A5の移動を示すものであり、実際の処理画像には存在しない。
【0040】
n位置で得られた処理画像(n)に含まれるラベリング領域A1〜A5と、n+1で得られた処理画像(n+1)に含まれるラベリング領域A1〜A5とは、それぞれ対応するものである。しかし、この段階において、距離測定装置1はそれぞれが別個のラベリング領域として認識されているだけで、対応付けは行われていない。
【0041】
そこで、処理画像(n)に含まれるラベリング領域A1〜A5と、処理画像(n+1)に含まれるラベリング領域A1〜A5とを対応付ける処理を次に行う(S11、ここではP=5)。対応付けの方法としては、センサ9は水平方向に揺動するのみで鉛直方向には動かないので、処理画像中における縦方向の重心の座標を利用することが考えられる。このほかにも、各ラベリング領域の相対的な位置関係から対応付けることも可能であるし、ラベリング領域の面積等から対応付けを行ってもよい。
【0042】
処理画像(n)に含まれるラベリング領域A1〜A5と、処理画像(n+1)に含まれるラベリング領域A1〜A5との対応付けを行った後、ラベリング領域A1〜A5ごとに物理量の変化量を算出し、記憶部8に保存する(S12)。ここでの変化量は、ラベリング領域A1〜A5の重心の移動量とするが、移動量の代わりに、移動方向とすることも可能である。
【0043】
次に、ラベリング領域A1〜A5ごとに求めた重心の移動量を、先述の移動量δに基づいて設定された閾値と比較する(S13)。比較の結果、移動量が閾値を超過しているラベリング領域のデータを消去し(S14)、移動量が閾値を超過していないラベリング領域のデータを記憶部8に保存する(S15)。この処理を全てのラベリング領域A1〜A5について行う(S16)。
【0044】
閾値をレーザ反射光Yと外乱光X1〜X4とを判別できるように予め設定しておけば、以上の処理により、処理画像(n+1)から外乱光X1〜X4のデータが除去され、レーザ反射光Yのデータのみが抽出された反射光抽出画像(図8)が得られる。そして、反射光抽出画像から測定対象物Wまでの距離に基づいた形状が算出され、記憶部8に保存される(S17)。
【0045】
測定が完了していなければ(S18、No)、センサ9をn+2の位置に移動してS7〜S17を実行する。測定が完了すれば(S18、Yes)、センサ9を測定開始位置nに戻す。なお、測定が完了したか否かの判断は、センサ9が予め定めた動作範囲を超えたか否かで判断してもよいし、ラベリング領域が存在しない処理画像が所定枚数得られたか否かで判断してもよいし、距離測定装置1の稼働時間で判断してもよい。
【0046】
S17で保存した形状の集合から、検査面の形状を構築し(S20)、予め準備されている設計図面等のデータと比較して、欠陥形状を抽出する(S21)。この結果に応じて、測定対象物Wの製品としての良・不良の判定を行って終了する(S22)。なお、S17で得た形状データを本距離測定装置1とは別のデータ処理装置に移して、S20〜S22の処理を実行するように構成してもよい。
【0047】
上記実施形態によれば、連続で撮影した撮影画像を基に処理を行うので、非連続の撮影画像を利用する場合と比べてデータの取得間隔が細かくなり、より正確な形状構築が可能となる。また、比較に用いるのは2枚の撮影画像のみなので、3枚以上の撮影画像を比較する場合と比べて処理負荷を小さくすることができる。
【0048】
また、S5やS9で取得した処理画像にラベリングされた領域が存在しない場合は、その後に取得した処理画像のうち、ラベリングされた領域が存在する最も直近の処理画像を用いて、測定を継続することができる。この場合に、ラベリングされた領域が存在するか否かを確認する処理画像の枚数を所定枚数に限ることにより、不必要に測定が継続されることを防止できる。
【0049】
上記実施形態では、物理量としてラベリング領域の重心の位置座標、変化量として重心の移動距離を採用することにより、物理量や変化量の演算が容易となり、演算負荷を小さくすることができた。しかし、ほかの物理量(ラベリング領域の面積、長さ等)やこれから求められる変化量を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
レーザ光を照射した測定対象物を撮影し、この撮影画像を処理して測定対象物で反射されたレーザ光を抽出し、測定対象物までの距離を測定する距離測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 距離測定装置
2 レーザ照射器(照射装置)
3 カメラ(撮像装置)
4 制御装置
5 画像処理部
6 物理量演算部
7 外乱光消去部
8 記憶部
9 センサ
W 測定対象物
X 外乱光
Y レーザ反射光
A ラベリング領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射方向を変化させながら、測定対象物にスリット状のレーザ光を照射する照射装置と、
撮影方向を変化させながら、前記測定対象物で反射した前記レーザ光の反射光を撮影画像として取り込む撮像装置と、
前記照射装置及び前記撮像装置の動きを制御する制御装置と、
前記撮影画像に2値化処理及びラベリング処理を施した処理画像を作成する画像処理部と、
前記処理画像に含まれる前記反射光とそれ以外の外乱光とを区別するために用いられる所定の物理量を、ラベリングされた領域ごとに演算する物理量演算部と、
少なくとも2枚の前記処理画像を比較して、対応する前記ラベリングされた領域の前記物理量の変化量を算出し、前記変化量が予め設定した閾値を超過している前記領域のデータを消去する外乱光消去部と、
を備えた距離測定装置。
【請求項2】
前記測定対象物は静止しており、前記照射装置及び前記撮像装置は揺動する請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記外乱光消去部は、連続で撮影した2枚の前記撮影画像を処理した前記処理画像を比較する請求項1又は2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
前記処理画像に前記ラベリングされた領域が存在しない場合は、当該処理画像に代えて、当該処理画像の後に得られた所定枚数の処理画像のうち、前記ラベリングされた領域が存在する最初の処理画像を用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載の距離測定装置。
【請求項5】
前記物理量は、前記処理画像における前記ラベリングされた領域の重心の位置座標であり、前記変化量は、前記対応する領域の前記重心の移動距離である請求項1〜4のいずれか一項に記載の距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149820(P2011−149820A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11336(P2010−11336)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】