説明

車両のサスペンションアーム取付構造

【課題】アルミ製サスペンションメンバに取付部を型成形によって容易に形成して該サスペンションメンバの生産性の向上を図るとともに、サスペンションアームの取付剛性の向上とガタの無い確実な取り付けを実現することができる車両のサスペンションアーム取付構造を提供すること。
【解決手段】サスペンションメンバ4の取付部4Dに揺動可能に取り付けられるサスペンションアームの取付構造として、前記サスペンションメンバ4の取付部4Dを、ブッシュの上方と下方に略水平に配置されてブッシュを固定する取付部上壁4D1及び取付部下壁4D2と、前記取付部上壁4D1の前端と前記取付部下壁4D2の前端同士を連結する取付部前壁4D3及び前記取付部上壁4D1の後端と前記取付部下壁4D2の後端同士を連結する取付部後壁4D4とで左右方向に開口する矩形筒状に一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームの下方に配置されるアルミ製サスペンションメンバの左右両端部に揺動可能に支持される左右のサスペンションアームの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルームの下方に配置されるサスペンションメンバは、左右のサスペンションアームを上下に揺動可能に支持するとともに、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材である。
【0003】
従来、上記サスペンションメンバは板金のプレス成形品を溶接することによって構成されており、その左右両端部にブラケットを溶接してサスペンションアームの取付部とし、左右の各取付部にブッシュを介して左右の各サスペンションアームを揺動可能に支持する構成が採用されていた。このような構成のサスペンションメンバにおいては、サスペンションアームの取付部にブラケットをそれぞれ溶接することによって、サスペンションアームの端部に取り付けられたブッシュの両側(後方側の取付部は上下)に配置される取付部(後方側の取付部では上下に配置される面)を形成するようにしている。そして、サスペンションメンバに形成された取付部(後方側の取付部においては上下の取付面間)にサスペンションアームの端部をブッシュを介して配置し、取付部とブッシュの内筒に挿通するボルトを締め付けることによって、サスペンションメンバにサスペンションアームをブッシュを介して揺動可能に支持している。
【0004】
ところで、近年、軽量化や生産性の向上等の目的のためにサスペンションメンバを軽量なアルミニウム合金で鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形することが行われている。斯かるアルミ製サスペンションメンバにおいては、平行な取付面の形成が成形的に困難であるという問題がある。このため、サスペンションメンバの後方側の取付部においては、別体のブラケットをボルト等で取り付けることによって平行な上下の取付面を形成していた。例えば、特許文献1には、図11の部分断面図に示すように、サスペンションメンバ104とこれとは別体のブラケットカバー105によって平行な上下の取付面を形成し、これらの取付面間にサスペンションアーム(ロアアーム)130の端部をブッシュ138と共に配置し、サスペンションメンバ104とブッシュ138、ブラケットカバー105及びフロントサイドメンバ101に挿通するボルト106とこれに螺合するナット107によってサスペンションアーム130の端部を揺動可能に取り付ける構成が提案されている。
【0005】
又、サスペンションメンバの前方側の取付部構造に関して特許文献2には、図121の部分側面図に示すように、サスペンションメンバ204に一体に形成された一対の取付壁204A,204Bのうち、一方の取付壁204Aの肉厚を他方の取付壁204Bの肉厚よりも薄くすることによって、該一方の取付壁204Aの剛性を他方の取付壁204Bのそれよりも低くする提案がなされている。そして、成形型の鋳抜き方向を本来の抜き勾配分だけ片側に振ることによって、一方の取付壁204Bの外面を最初から垂直面とし、該外面への機械加工(二次加工)を省略する構成が開示されている。尚、図12において、230はサスペンションアームの取付部、231は該取付部230に圧入されたブッシュ、232はサスペンションアームの取付部230をブッシュ231を介してサスペンションメンバ204の取付壁204A,204Bに締め付けるボルト、233はボルト232の端部に螺着されたナットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4025052号公報
【特許文献2】特開2008−201416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1において提案されているようにサスペンションメンバ104にこれとは別体のブラケットカバー105を取り付ける構成では、部品点数及び取付工数が増えてコストアップを招くという問題がある。
【0008】
ところで、車両の走行安定性や剛性感を高めるためにはサスペンションメンバへのサスペンションアームの取付剛性を高める必要があるが、ダイキャスト等の鋳造によるアルミニウム合金製のアルミ製サスペンションメンバでは、効率の良い補強構造を得ることは不可能であった。又、サスペンションメンバの取付部の剛性を高くすると、該取付部にブッシュを組み込むために形成された隙間(上下の取付面間の距離−ブッシュの内筒の長さ)を取付部の撓み変形によって吸収することができず、所望の締め付けができないために取付面間とブッシュとの間にガタが発生する可能性がある。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、アルミ製サスペンションメンバに取付部を型成形によって容易に形成して該サスペンションメンバの生産性の向上を図るとともに、サスペンションアームの取付剛性の向上とガタの無い確実な取り付けを実現することができる車両のサスペンションアーム取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
端部に設けられたブッシュを介して前記サスペンションメンバの取付部に揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、
を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造であって、
前記サスペンションメンバの取付部を、前記ブッシュの上方と下方に略水平に配置されてブッシュを固定する取付部上壁及び取付部下壁と、前記取付部上壁の前端と前記取付部下壁の前端同士を連結する取付部前壁及び前記取付部上壁の後端と前記取付部下壁の後端同士を連結する取付部後壁とで左右方向に開口する矩形筒状に一体成形したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記サスペンションメンバの取付部における前記取付部前壁と前記取付部後壁の間隔を車両外側方に向かって広くなるよう設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記サスペンションメンバに、車体への取付部として、左右端部の前方側において上壁からそれぞれ上方に突出する前方取付部と、左右端部の後方側にそれぞれ配置された後方取付部を設け、
前記取付部の取付部上壁と取付部下壁を、平面視で前記上壁と前記前方取付部の接続箇所と前記後方取付部とを結ぶ方向に沿って配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記サスペンションメンバにおいて、前記取付部上壁を前記上壁とほぼ同じ高さ位置に配置して該上壁に接続するとともに、前記取付部下壁を前記後方取付部とほぼ同じ高さ位置に配置して該後方取付部に接続したことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記サスペンションメンバにおいて、前記取付部前壁と前記上壁とを該上壁の側縁から延びる周縁フランジによって連結するとともに、前記取付部後壁と前記後方取付部とを連結壁によって連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、型成形によってサスペンションメンバの取付部を取付部上壁、取付部下壁、取付部前壁及び取付部後壁によって矩形筒状に一体成形することができるため、サスペンションメンバの生産性が高められる。又、サスペンションメンバの取付部の上下の平行な取付面を構成する取付部上壁と取付部下壁を他の部位よりも変形し易くすることができるため、ブッシュ挿入用の隙間を上下の取付面(取付部上壁と取付部下壁)の撓み変形によって吸収することができ、組付性を犠牲にすることなくサスペンションアームをガタ無く確実に締付固定することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、サスペンションメンバの取付部における取付部前壁と取付部後壁の間隔を車両外側方に向かって広くなるよう設定したため、成形時における型の抜きが容易となってサスペンションメンバの生産性が高められるとともに、サスペンションアームの組付性(サスペンションメンバの取付部への挿入作業性)が高められ、更にはサスペンションアームの形状の自由度が高められる。又、サスペンションメンバの取付部を構成する取付部前壁と取付部後壁は平行ではないため、サスペンションアームの取付剛性が高められる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、サスペンションメンバの取付部を構成する取付部上壁と取付部下壁を、剛性の高い方向(平面視で上壁と前方取付部の接続箇所と後方取付部とを結ぶ方向)に沿って配置したため、サスペンションアームの取付剛性を更に高めることができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、取付部上壁を上壁とほぼ同じ高さ位置に配置して該上壁に接続するとともに、取付部下壁を後方取付部とほぼ同じ高さ位置に配置して該後方取付部に接続したため、サスペンションメンバの車体への取付部の近傍にほぼ連続する面として取付部上壁と取付部下壁が配置されることとなり、これらの取付部上壁と取付部下壁の各面に平行な方向の剛性が高められてサスペンションアームの取付剛性が高められるとともに、取付部上壁と取付部下壁の面に垂直な方向(ブッシュの締付方向)の剛性を比較的低く抑えてその方向の撓み変形を容易とし、ブッシュ挿入用の隙間を取付部上壁と取付部下壁の撓み変形によって吸収してガタの無いサスペンションアームの締付固定が可能となる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、サスペンションメンバの取付部を構成する取付部前壁と取付部後壁の倒れが周縁フランジ又は連結壁によって防がれるため、サスペンションアームの取付剛性が高められる。又、取付部上壁と取付部下壁の各面に平行な方向の剛性を周縁フランジと連結壁によって効果的に高めることができ、これらの取付部上壁と取付部下壁とのズレ方向の動きを抑制することができる。そして、取付部上壁と取付部下壁の面に垂直な方向(ブッシュの締付方向)の剛性を比較的低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両の車体前部構造を示す側面図である。
【図2】車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図である。
【図3】サスペンションメンバの平面図である。
【図4】サスペンションメンバの底面図である。
【図5】サスペンションメンバの正面図である。
【図6】サスペンションメンバの左側面図である。
【図7】サスペンションメンバの部分斜視図である。
【図8】本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係るサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図である。
【図10】本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す部分側断面図である。
【図11】サスペンションアームの従来の取付構造を示す側断面図である。
【図12】サスペンションアームの従来の取付構造を示す破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は車両の車体前部構造を示す側面図、図2は同車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図、図3はサスペンションメンバの平面図、図4は同サスペンションメンバの底面図、図5は同サスペンションメンバの正面図、図6は同サスペンションメンバの左側面図、図7はサスペンションメンバの部分斜視図、図8は本発明に係るサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図、図9はサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図、図10はサスペンションアームの取付構造を示す部分側断面図である。
【0023】
図1に示すように、車両前部のエンジンルームSには左右一対のエプロンサイドメンバ1(図1には一方のみ図示)が車両前後方向(図1の左右方向)に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ1の下方には左右一対のエプロンロアメンバ2(図1には一方のみ図示)が車両前後方向に沿って配設されている。そして、左右一対のエプロンロアメンバ2の前端には、車幅方向(図1の紙面垂直方向)に配されたラジエータサポートロアメンバ3が架設されており、同エプロンロアメンバ2の後端にはエンジンルームSの下部に配置されたサスペンションメンバ4が連結されている。
【0024】
上記各エプロンサイドメンバ1は、前後の第1及び第2水平部1A,1Bと両水平部1A,1Bを連結する斜めの傾斜部1Cとで構成されており、その前端には変形することによって衝撃を吸収するクラッシュボックス5が取り付けられている。そして、左右の各クラッシュボックス5の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材6を有するアッパバンパメンバ7が連結されており、該アッパバンパメンバ7の車両前方にはバンパフェイシア8が配設されている。
【0025】
又、左右一対の前記クラッシュボックス5の車幅方向内面には垂直に延びるランプサポートブレース9がそれぞれ取り付けられており、両ランプサポートブレース9の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材10を有するロアバンパメンバ11が連結されており、該ロアバンパメンバ11の車両前方にはバンパフェイシア12が配設されている。ここで、バンパフェイシア8とバンパフェイシア12はラジエータ用の空気取入口を間に配置して一体に形成されている。
【0026】
次に、前記サスペンションメンバの構成を図2〜図7に基づいて以下に説明する。
【0027】
サスペンションメンバ4は、アルミニウム合金による鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形される部材であって、略水平な上壁4Aと、該上壁4Aの前端縁と後端縁からそれぞれ略垂直下方に延びる前壁4B及び後壁4Cによって下方が開放された断面形状を有している。ここで、図2及び図5に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの中央にはトルクロッド13(図2参照)が貫通するための矩形の貫通孔14が形成され、前壁4Bの右側寄りには、不図示のエンジンから車両後方へと延びる排気管15が通過するための半円状の切欠き16が形成されている。尚、サスペンションメンバ4の切欠き16の周縁には補強リブ17が一体に形成されている。
【0028】
又、アルミ製サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端前側には前方取付部を構成する支柱4bがそれぞれ立設されており、図3及び図4に示すように、各支柱4bの上端部には円孔状のボルト挿通孔18がそれぞれ上下方向に貫設されている。又、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端の後端角部には後方取付部を構成する取付座4c(図3参照)が形成されており、図3及び図4に示すように、各取付座4cには円孔状のボルト挿通孔19がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0029】
而して、サスペンションメンバ4は、左右の前記支柱4bに形成されたボルト挿通孔18に下方から挿通するボルト20(図2参照)を図1に示す左右一対の各エプロンサイドメンバ1の第1水平部1Aの後端下面に締め付けるとともに、前記取付座4cに形成されたボルト挿通孔19に下方から挿通するボルト21(図2参照)を図1に示すように左右一対の各エプロンサイドメンバ1の斜面部1Cの後端に締め付けることによって、左右のエプロンサイドメンバ1に取り付けられる。
【0030】
ところで、サスペンションメンバ1の上部には図2に示すスタビライザ22とステアリングギヤボックス23が取り付けられるが、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右には、図2及び図3に示すように、スタビライザ22を取り付けるための取付座4dが形成され、これらの車両前方の左右にはステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fが形成されている。そして、各取付座4dには各2つのネジ孔24が形成され、取付座4eには各2つのネジ孔25、各取付座4fには各1つのネジ孔25がそれぞれ形成されている。
【0031】
而して、図2に示すように、スタビライザ22は、押え部材26に挿通する各2本のボルト27をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4dのネジ孔24にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aに車幅方向に沿って取り付けられる。又、ステアリングギヤボックス23は、2本のボルト28をサスペンションメンバ4の取付座4eのネジ孔25にねじ込むとともに、各2本のボルト29をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4fのネジ孔25にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aの上面に車幅方向に沿って取り付けられる。
【0032】
又、図2、図7及び図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端には平面視Y字状を成す左右一対のサスペンションアーム30(図には一方のみ図示)の内端部の前後が上下に揺動可能に取り付けられる。尚、左右の各サスペンションアーム30の外側端部は、ボールジョイント31を介して不図示の前輪ナックルに回動可能に枢着されており、各前輪ナックルには左右の不図示の各前輪がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、前記ステアリングギヤボックス23から左右に延びるタイロッド32の端部がボールジョイント33を介して連結されている。
【0033】
ここで、本発明に係るサスペンションアーム30の取付構造について説明する。
【0034】
サスペンションメンバ4の左右両端部の各前方部分には、図6及び図8に示すように、前後2つのボス4gが一体に形成されており、各ボス4gの下面は平坦な下向きの取付面4g−1を構成している。そして、各ボス4gにはネジ孔34がそれぞれ上下方向に貫設されている。そして、図10に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各前方部分に前後に形成された取付面4g−1の間には凹部35が形成されており、該凹部35には、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hが立設されている。ここで、図4及び図6に示すように、サスペンションメンバ4の左右の取付面4g−1は、当該サスペンションメンバ4の車体への前方取付部である左右の前記支柱4bの近傍に形成されている。
【0035】
又、図6〜図9に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各後方部には偏平な矩形筒状の取付部4Dがそれぞれ形成されている。ここで、図7に詳細に示すように、サスペンションアーム30の取付部4Dは、上下の取付部上壁4D1及び取付部下壁4D2と、取付部上壁4D1の前端と取付部下壁4D2の前端同士を連結する取付部前壁4D3及び取付部上壁4D1の後端と取付部下壁4D2の後端同士を連結する取付部後壁4D4とで左右方向に開口する矩形筒状に一体成形されている。
【0036】
ところで、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の取付部4Dにおける取付部前壁4D3と取付部後壁4D4の間隔は車両外側方に向かって広くなるよう設定されている。詳細には、取付部前壁4D3は車両外側方にいくに従い前方側となっていくよう設定され、取付部後壁4D4はほぼ車両の左右方向に平行に設定されている。
【0037】
又、サスペンションメンバ4には、車体への取付部として、左右端部の前方側において上壁4Aからそれぞれ上方に突出する前方取付部である支柱4bと、左右端部の後方側にそれぞれ配置された後方取付部である取付座4cが設けられているが、取付部4Dの取付部上壁4D1と取付部下壁4D2は、平面視で上壁4Aと支柱4bの接続箇所と取付座4cとを結ぶ方向に沿って配置されている。詳細には、取付部4Dの取付部上壁4D1と取付部下壁4D2は、平面視で上壁4Aと支柱4bの接続箇所と取付座4cの間に配置されている。
【0038】
更に、サスペンションメンバ4においては、取付部4Dを構成する取付部上壁4D1は上壁4Aとほぼ同じ高さ位置に配置されて該上壁4Aに接続されており、取付部下壁4D2は取付座4cとほぼ同じ高さ位置に配置されて該取付座4cに接続されている。
【0039】
又、図7に示すように、サスペンションメンバ4において、取付部4Dを構成する取付部前壁4D3と上壁4Aとは該上壁4Aの側縁から下方に延びる周縁フランジ4jによって連結されるとともに、取付部後壁4D4と取付座4cとは連結壁4kによって連結されている。詳細には、取付部前壁4D3の前面と上壁4Aとは周縁フランジ4jによって連結され、取付部後壁4D4の後面と取付座4cの上面とは連結壁4kによって連結されている。尚、連結壁4kは、高さの異なる上壁4Aと取付座4cを連結しており、車両の中央側ほど高くなるような斜面となっている。
【0040】
そして、サスペンションメンバ4の取付部4Dにおいて、取付部下壁4D2には円孔状のボルト挿通孔36が形成され、取付部上壁4D1には円柱状のボス4iが一体に立設されている。そして、各ボス4iにはネジ孔37が上下方向に貫設されている。
【0041】
他方、図8に示すように、左右の各サスペンションアーム30(図8には一方のみ図示)の車幅方向内端部の前側には車両前後方向に開口する円筒状のボス30aが一体に形成され、このボス30aにはブッシュ38が車両前後方向に圧入されている。ここで、ブッシュ38は、図10に示すように、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填されたゴム等の弾性部材38Cとで構成されており、軸38Aの外筒38Bから突出する両端部には平坦な締付固定部38aが形成されている。そして、軸38Aの各締付固定部38aには円孔状のボルト挿通孔39がそれぞれ貫設されている。
【0042】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側には円孔状の嵌合孔30bが形成されており、この嵌合孔30bにはブッシュ40が上下方向に圧入されている。尚、図示しないが、ブッシュ40は、ブッシュ38と同様に内外二重筒状の内筒と外筒の間にゴム等の弾性部材を充填して構成されている。
【0043】
而して、各サスペンションアーム30は以下の要領によってサスペンションメンバ4に上下に揺動可能に取り付けられる。
【0044】
即ち、図8及び図9に示すように、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側に形成されたボス30aとこれに圧入されたブッシュ38を前後2つの取付面4g−1間に形成された凹部35に嵌め込み、ブッシュ38の軸38Aの両端に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の前後の取付面4g−1に下方から押し当て、該締付固定部38aに形成されたボルト挿通孔39に下方から挿通するボルト41をサスペンションメンバ4の取付面4g−1に形成されたネジ孔34にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側がブッシュ38の軸38Aを中心として上下に揺動可能に取り付けられる。
【0045】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側に形成された嵌合孔30bに圧入されたブッシュ40をサスペンションメンバ4に形成された矩形筒状の取付部4Dの内部に挿入し、取付部4Dの取付部下壁4D2に形成されたボルト挿通孔36に下方から挿通するボルト42をブッシュ40の内筒に通し、このボルト42の先端を取付部4Dの取付部上壁4D1に立設されたボス4iのネジ孔37にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側がブッシュ40の弾性部材の弾性変形によって上下に揺動可能に取り付られる。
【0046】
以上において、本実施の形態では、型成形によってサスペンションメンバ4の取付部4Dを取付部上壁4D1、取付部下壁4D2、取付部前壁4D3及び取付部後壁4D4によって矩形筒状に一体成形することができるため、サスペンションメンバ4の生産性が高められる。
【0047】
又、サスペンションメンバ4の取付部4Dの上下の平行な取付面を構成する取付部上壁4D1と取付部下壁4D2を他の部位よりも変形し易くすることができるため、ブッシュ挿入用の隙間を上下の取付面(取付部上壁4D1と取付部下壁4D2)の撓み変形によって吸収することができ、組付性を犠牲にすることなくサスペンションアーム30をサスペンションメンバ4の取付部4Dにガタ無く確実に締付固定することができる。
【0048】
更に、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の取付部4Dにおける取付部前壁4D3と取付部後壁4D4の間隔を車両外側方に向かって広くなるよう設定したため、成形時における型の抜きが容易となってサスペンションメンバ4の生産性が高められるとともに、サスペンションアーム30の組付性(サスペンションメンバ4の取付部4Dへの挿入作業性)が高められ、更にはサスペンションアーム4の形状の自由度が高められる。そして、サスペンションメンバ4の取付部4Dを構成する取付部前壁4D3と取付部後壁4D4は平行ではないため、サスペンションアーム30の取付剛性が高められる。
【0049】
又、サスペンションメンバ4の取付部4Dを構成する取付部上壁4D1と取付部下壁4D2を、剛性の高い方向(平面視で上壁4Aと支柱4bの接続箇所と取付座4cとを結ぶ方向)に沿って配置したため、サスペンションアーム30の取付剛性を更に高めることができる。
【0050】
更に、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の取付部4Dを構成する取付部上壁4D1を上壁4Aとほぼ同じ高さ位置に配置して該上壁4Aに接続するとともに、取付部下壁4D2を取付座4cとほぼ同じ高さ位置に配置して該取付座4cに接続したため、サスペンションメンバ4の車体への取付部である支柱4bと取付座4cの近傍にほぼ連続する面として取付部上壁4D1と取付部下壁4D2が配置されることとなり、これらの取付部上壁4D1と取付部下壁4D2の各面に平行な方向の剛性が高められてサスペンションアーム4の取付剛性が高められるとともに、取付部上壁4D1と取付部下壁4D2の面に垂直な方向(ブッシュ38の締付方向)の剛性を比較的低く抑えてその方向の撓み変形を容易とし、ブッシュ挿入用の隙間を取付部上壁4D1と取付部下壁4D2の撓み変形によって吸収してガタの無いサスペンションアーム30の締付固定が可能となる。
【0051】
又、本実施の形態では、サスペンションメンバ4の取付部4Dを構成する取付部前壁4D3と取付部後壁4D4の倒れが周縁フランジ4j又は連結壁4kによって防がれるため、サスペンションアーム30の取付剛性が高められる。
【0052】
更に、取付部上壁4D1と取付部下壁4D2の各面に平行な方向の剛性を周縁フランジ4jと連結壁4kによって効果的に高めることができ、これらの取付部上壁4D1と取付部下壁4D2とのズレ方向の動きを抑制することができる。そして、取付部上壁4D1と取付部下壁4D2の面に垂直な方向(ブッシュ38の締付方向)の剛性を比較的低く抑えることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 エプロンサイドメンバ
4 アルミ製サスペンションメンバ
4A サスペンションメンバの上壁
4B サスペンションメンバの前壁
4C サスペンションメンバの後壁
4D サスペンションアームの取付部
4D1 取付部上壁
4D2 取付部下壁
4D3 取付部前壁
4D4 取付部後壁
4b 支柱(前方取付部)
4c 取付座(後方取付部)
4j サスペンションメンバの周縁フランジ
4k サスペンションメンバの連結壁
30 サスペンションアーム
38 ブッシュ
S エンジンルーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
端部に設けられたブッシュを介して前記サスペンションメンバの取付部に揺動可能に取り付けられるサスペンションアームと、
を有する車両の前記サスペンションアームの取付構造であって、
前記サスペンションメンバの取付部を、前記ブッシュの上方と下方に略水平に配置されてブッシュを固定する取付部上壁及び取付部下壁と、前記取付部上壁の前端と前記取付部下壁の前端同士を連結する取付部前壁及び前記取付部上壁の後端と前記取付部下壁の後端同士を連結する取付部後壁とで左右方向に開口する矩形筒状に一体成形したことを特徴とする車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項2】
前記サスペンションメンバの取付部における前記取付部前壁と前記取付部後壁の間隔を車両外側方に向かって広くなるよう設定したことを特徴とする請求項1記載の車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項3】
前記サスペンションメンバに、車体への取付部として、左右端部の前方側において上壁からそれぞれ上方に突出する前方取付部と、左右端部の後方側にそれぞれ配置された後方取付部を設け、
前記取付部の取付部上壁と取付部下壁を、平面視で前記上壁と前記前方取付部の接続箇所と前記後方取付部とを結ぶ方向に沿って配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項4】
前記サスペンションメンバにおいて、前記取付部上壁を前記上壁とほぼ同じ高さ位置に配置して該上壁に接続するとともに、前記取付部下壁を前記後方取付部とほぼ同じ高さ位置に配置して該後方取付部に接続したことを特徴とする請求項3記載の車両のサスペンションアーム取付構造。
【請求項5】
前記サスペンションメンバにおいて、前記取付部前壁と前記上壁とを該上壁の側縁から延びる周縁フランジによって連結するとともに、前記取付部後壁と前記後方取付部とを連結壁によって連結したことを特徴とする請求項4記載の車両のサスペンションアーム取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−81881(P2012−81881A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230191(P2010−230191)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】