説明

車両のバッテリアセンブリ冷却構造、および、ウォータージャケット付きバッテリアセンブリ

【課題】バッテリアセンブリの上部をより効果的に冷却することが可能な車両のバッテリアセンブリ冷却構造、および、ウォータージャケット付きバッテリアセンブリを得る。
【解決手段】バッテリアセンブリ100のバッテリカバー12の上面12s上にフロントウォータージャケット20Fを取り付けた。かかる構成により、フロアパネル3の高さ位置を高くし難く、バッテリアセンブリ100とフロアパネル3との間の隙間を大きくし難い場合にあっても、当該隙間に配置したフロントウォータージャケット20Fによって、バッテリアセンブリ100の上部をより効果的に冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリアセンブリ冷却構造、および、ウォータージャケット付きバッテリアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のバッテリを含むバッテリアセンブリを床下に取り付けた車両が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−138956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリは使用中に発熱するため、適宜に冷却するのが望ましい。上記特許文献1の構成では、バッテリアセンブリの下面に走行風が当たるため、バッテリアセンブリの下部については比較的容易に冷却することができる。しかし、バッテリアセンブリの上方にはフロアパネルが存在するため、フロアパネルを高い位置に設定し難い場合には、バッテリアセンブリの上方のフロアパネルとの間の隙間を大きくし難くなり、その隙間を通る走行風によってバッテリアセンブリ上部を冷却するのが、難しくなってしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、バッテリアセンブリの上部をより効果的に冷却することが可能な車両のバッテリアセンブリ冷却構造、および、ウォータージャケット付きバッテリアセンブリを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、車両床下に搭載したバッテリアセンブリのケースの上面上に、ウォータージャケットを配置したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウォータージャケットを用いる分、空気流による冷却効果を得難い場合にあっても、バッテリアセンブリの上部をより効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる車両のバッテリアセンブリ冷却構造を備えた車両の概略構成を示す側面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかる車両のバッテリアセンブリ冷却構造を備えた車両の車体骨格部材およびバッテリアセンブリの概略構成を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかる車両のバッテリアセンブリ冷却構造で用いられるバッテリアセンブリを斜め上方から見た斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかる車両のバッテリアセンブリ冷却構造で用いられるバッテリアセンブリをカバーを外して斜め上方から見た斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態にかかる車両のバッテリアセンブリ冷却構造で用いられるバッテリアセンブリのバッテリフレームを斜め上方から見た斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態にかかる車両のバッテリアセンブリ冷却構造で用いられるウォータージャケットの内部の概略構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、図1のVII−VII断面図である。
【図8】図8は、図1のVIII−VIII断面図である。
【図9】図9は、図1のIX−IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。各図中、FRは車両前方、UPは車両上方、WDは車幅方向を示す。
【0010】
図1に示すように、本実施形態にかかる車両1では、車室2の床下(フロアパネル3の下側)に複数のバッテリ4が搭載されており、これらバッテリ4で車輪駆動用のモータ5を駆動するようになっている。車両1は、電気自動車や、ハイブリッド車、燃料電池車等として構成することができる。
【0011】
図2に示すように、車両1の前後方向中央部で車室2の下方となる部分には、車幅方向両側で車両前後方向に沿って延設される一対のサイドメンバ51,51と、これら一対のサイドメンバ51,51の前端部とフロアトンネル部52との間で車幅方向に沿って架設されるクロスメンバ53,53と、を設けてある。また、サイドメンバ51,51の車幅方向外側には、車両前後方向に沿って延設される一対のサイドシル54,54が設けられ、さらに、車両前後方向の複数箇所(本実施形態では三箇所)では、サイドメンバ51とクロスメンバ53との間にアウトリガー55が架設されている。
【0012】
また、サイドメンバ51,51の後端部には、それぞれ車両1の後部の車幅方向両側で車両前後方向に沿って延在するリヤサイドメンバ56,56が接続され、これらリヤサイドメンバ56,56間に、車幅方向に略沿うリヤクロスメンバ57が架設されている。
【0013】
バッテリ4は、図3に示すように、バッテリケース10内に収納されている。バッテリケース10内に複数のバッテリ4が収納されて構成されるバッテリアセンブリ100は、サイドメンバ51や、クロスメンバ53、リヤクロスメンバ57等の車体骨格部材に、床下からブラケットやマウント等を介してあるいは直接的に取り付けられている。好適な車両1は、バッテリアセンブリ100を車体骨格部材に床下から着脱して交換できるように構成される。
【0014】
また、車両1の前部にはフロントコンパートメント6が形成され、このフロントコンパートメント6内に、モータ5や、チャージャ7、インバータ8等が配設されている。フロントコンパートメント6内に収容されるこれらの部品は、フロントコンパートメント6の車幅方向両側でそれぞれ車両前後方向に略沿って伸びる一対のフロントサイドメンバ61,61や、これら一対のフロントサイドメンバ61,61間で架設されるフロントクロスメンバ(図示せず)、サブメンバ(図示せず)等の車体骨格部材に、ブラケットやマウント等を介してあるいは直接的に取り付けられている。
【0015】
バッテリケース10は、バッテリ4を載置するバッテリフレーム11(図5参照)と、バッテリフレーム11に載置したバッテリ4の上側を覆うバッテリカバー12(図3参照)と、を有している。
【0016】
バッテリフレーム11は、図5に示すように、矩形状の外枠111と、この外枠111内に配置されてT字状を成す内枠112と、によって構成される。外枠111は、車幅方向に延在して車両前後方向に所定距離を隔てて対向する前端部材111fおよび後端部材111rと、これら前端部材111fおよび後端部材111rの両端をそれぞれ連結して車両前後方向に延在する一対の側端部材111s,111sと、で構成される。また、内枠112は、対向する側端部材111s,111s同士を連結する横架部材112wと、この横架部材112wと前端部材111fとを連結する縦架部材112cと、で略T字状に構成される。
【0017】
バッテリフレーム11は、外枠111の内側に内枠112を設けることにより、外枠111で形成される矩形領域が、内枠112によってほぼ同じ大きさの複数(本実施形態では3つ)の分割矩形領域11F,11F,11Rに区分されている。これら領域は、いずれも、平面視で長辺が短辺のほぼ2倍となる長方形状となっている。分割矩形領域11F,11Fは、バッテリフレーム11の前部に配置されて車幅方向に並設され、それぞれの長辺が車両前後方向に沿う方向となっている。一方、分割矩形領域11Rは、バッテリフレーム11の後部に配置されて、長辺が車幅方向に沿う方向となっている。
【0018】
また、バッテリフレーム11の外枠111の外側には、バッテリフレーム11を車体骨格部材に取り付けるための外側フランジ部113が一体に突設されるとともに、側端部材111s,111sの内側および縦架部材112cの両側には、バッテリ4を載置することができる内側フランジ部114が一体に突設されている。そして、バッテリフレーム11は、外側フランジ部113に形成した取付穴113aに挿通する図示省略したボルトなどの締結部材を介して、フロアパネル3の下方(床下)から車体骨格部材に着脱可能に取り付けできるようになっている。
【0019】
バッテリ4は、図4に示すように、扁平な略直方体状の同一形状として形成されている。そして、複数のバッテリ4を複数のバッテリ群A〜Eに分けてバッテリフレーム11に積重して搭載している。
【0020】
前側の左右2つの分割矩形領域11F,11Fでは、複数のバッテリ4が上下方向に積重された状態でバッテリフレーム11に搭載されるとともに、後側の分割矩形領域11Rでは、複数のバッテリ4が車幅方向に積重された状態でバッテリフレーム11に搭載される。
【0021】
前側の各分割矩形領域11F,11Fは、図1にも示すように、上下方向に積重したバッテリ4が、車両前後方向に4つのバッテリ群A,B,C,Dに分けてそれぞれ搭載されている。これらのうち前方の2つのバッテリ群A,Bのバッテリ4は4枚重ねとなり、後方の2つのバッテリ群C,Dのバッテリ4は2枚重ねとなって、前方のバッテリ群A,Bと後方のバッテリ群C,Dとの間に積重差が設けられている。また、左右の分割矩形領域11F,11Fでは、各バッテリ群A,B,C,Dのバッテリ4の積重数は同じにして、左右対称となっている。一方、後側の分割矩形領域11Rでは、24枚のバッテリ4が車幅方向に積重された1つのバッテリ群Eが、バッテリフレーム11上に載置されている。また、バッテリ群A,Bの高さをh1、バッテリ群C,Dの高さをh2、バッテリ群Eの高さをh3としたとき、本実施形態では、h3>h1>h2となっている。
【0022】
バッテリカバー12は、図1および図3に示すように、上述したバッテリ群A〜Eを全体的に覆ってバッテリフレーム11に着脱可能に取り付けられている。バッテリカバー12の天板12uは、バッテリ群A〜Eの上端に近接した状態で、それらの上端にほぼ沿った形状となっている。すなわち、バッテリカバー12の天板12uには、第1のバッテリ群A,Bを覆う第1の被覆部分121と、第2のバッテリ群C,Dを覆う第2の被覆部分122と、第3のバッテリ群Eを覆う第3の被覆部分123と、が段差状に設けられ、それら第1〜第3の被覆部分121,122,123は、第1〜第3のバッテリ群A〜Eの高さh1〜h3にそれぞれ対応した高さとなる。本実施形態では、h2<h1<h3であるため、第2の被覆部分122の高さが最も低く、第3の被覆部分123の高さが最も高く、第1の被覆部分121の高さがその間の高さとなっている。
【0023】
また、このバッテリアセンブリ100では、図4に示すように、左右の分割矩形領域11F,11F間の縦架部材112c上に、バッテリ4とフロントコンパートメント6内の電気部品(モータ5、チャージャ7、インバータ8等)との間に介在するハーネス41、スイッチボックス42、およびジャンクションボックス43等の部品が配置されている。そして、図3に示すように、バッテリカバー12のスイッチボックス42の位置に対応した第2の被覆部分122には開口部12hが形成され、その開口部12hから上方に突出させたスイッチボックス42の操作部42aを、フロアパネル3の図示省略した開閉窓から操作できるようになっている。
【0024】
ところで、バッテリアセンブリ100に含まれるバッテリ4は、動作中に発熱するため、適宜冷却するのが望ましい。本実施形態では、バッテリアセンブリ100の下部は路面側に露出するため、走行風によって冷却することができる。
【0025】
また、本実施形態では、バッテリアセンブリ100の上部を走行風によって冷却するため、図1に示すように、フロアパネル3の下面3a(フロアパネル3に形成したバッテリアセンブリ100の収容凹部3Sの上底面)とバッテリアセンブリ100の上面12sとの間に、走行風によって生じる空気流As(図1,図3参照)が前方から後方に通り抜ける空気通路30を形成してある。
【0026】
さらに、バッテリアセンブリ100の上面12s上にフロントウォータージャケット20Fを取り付け、当該フロントウォータージャケット20F内を流れる冷却水によってバッテリアセンブリ100の上部(上壁としての天板12u)を冷却するようになっている。
【0027】
そして、このフロントウォータージャケット20Fを、図1に示すように、空気通路30に臨むように配置している。本実施形態では、図3に示すように、フロントウォータージャケット20Fを、バッテリカバー12の前部となる第1の被覆部分121の車幅方向中央部上に設置している。
【0028】
フロントウォータージャケット20Fは、図6に示すように、全体として扁平な略直方体状に形成されている。本体ブロック23内には、冷却水の導入口21から排出口22に至る冷却水通路24が、複数並列に蛇行(屈曲)して形成されている。なお、図6は、図示しない閉止板を取り外した状態でフロントウォータージャケット20Fの内部を示したものであり、その閉止板が、本体ブロック23の冷却水通路24の周縁部に形成された複数のねじ穴25に螺結されるボルトを介して液密に閉止される。このとき、閉止板と本体ブロック23との間にはパッキングが介装される。
【0029】
このフロントウォータージャケット20Fでは、導入口21から導入された冷却水が蛇腹状の冷却水通路24を通過して排出口22から排出される間に、その冷却水と本体ブロック23との間、ひいては、本体ブロック23を設置したバッテリカバー12の天板12uとの間で熱交換され、これにより、バッテリアセンブリ100の上部を冷却することができる。なお、フロントウォータージャケット20Fは、後述するリヤウォータージャケット20Rとともに、冷却水配管26(図7,図8等参照)を介して、フロントコンパートメント6内の前部に設けられるラジエータ(図示せず)に接続されており、このラジエータで冷却水が冷却されるようになっている。
【0030】
また、図7にも示すように、フロアパネル3の車幅方向中央部には、上方に凹設されて車両前後方向に略沿って延在するフロアトンネル部52が形成されている。しかし、本実施形態では、空気通路30の少なくとも上側の一部を、このフロアトンネル部52によって形成するようになっている。
【0031】
フロアトンネル部52は、本実施形態では、上方に向かってやや幅狭となるほぼ台形状の断面をもってフロアパネル3を上方に突出させて形成されており、このフロアトンネル部52内に、ハーネス41や冷却水配管26およびブレーキ配管27などの配索部品が配索されている。さらに、本実施形態ではフロアトンネル部52内の下部に、フロントウォータージャケット20Fが配置されている。
【0032】
一方、図3および図8に示すように、バッテリカバー12の第2の被覆部分122と第3の被覆部分123との間の傾斜部124には、凹溝部125が設けられている。本実施形態では、凹溝部125は、傾斜部124の車幅方向中央部にて、天板12uを所定幅で比較的浅く下方に向けて凹設して車両前後方向に略沿って延設してある。そして、この凹溝部125によって、空気通路30の下側の少なくとも一部が形成されている。また、本実施形態では、図8に示すように、凹溝部125を、冷却水配管26やブレーキ配管27などの配索部品を配索するガイドとして用いている。
【0033】
上述したように、本実施形態では、フロアトンネル部52および凹溝部125は、いずれも、車両1の車幅方向中央で車両前後方向に略沿って延在している。よって、フロアトンネル部52を通過した空気流は車両前後方向に沿って後方に向けて流れ、より円滑に凹溝部125を通過することができる。すなわち、フロアパネル3とバッテリアセンブリ100との間に形成される空気通路30では、これらフロアトンネル部52および凹溝部125によってガイドされて車幅方向中央部で車両前方から後方に向かう空気流Asが主流となる。
【0034】
そして、本実施形態では、バッテリカバー12を熱伝導性材料(例えば鉄系材料やアルミ合金等の金属材料)で形成してある。これにより、フロントウォータージャケット20Fによる冷却効果をより広い範囲に与えることができる上、フロントウォータージャケット20Fを車幅方向中央部に配置したため左側と右側とで冷却効果にむら(ばらつき)が生じるのを抑制することができる。
【0035】
さらに、バッテリカバー12の上壁としての天板12uを、フロントウォータージャケット20Fを配置した車幅方向中央部が最も上方に位置するように上方に向けて膨出させて形成してある。かかる膨出形状とした場合、バッテリ4の発熱によって、バッテリケース10の空間S内での空気の温度は、当該空間S内で最も高い位置、すなわち車幅方向中央部の上部Stで高くなりやすい。したがって、フロントウォータージャケット20Fによって、この空間S内の上部Stに隣接する天板12uを冷却することで、空間S内の空気ひいてはバッテリ4をより効果的に冷却することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態では、フロントウォータージャケット20Fと天板12uとの間に可撓性を有する熱伝導性シート部材29(例えば、熱伝導性を有する柔軟なアクリル等の合成樹脂材料を含むシート状部材等)を介装し、この熱伝導性シート部材29を、フロントウォータージャケット20Fの下面と天板12uの上面12sとの双方に密着させてある。これにより、密着性を高めて隙間を減らすことができる分、フロントウォータージャケット20Fと天板12uとの間の熱伝導の効率を高めて、フロントウォータージャケット20Fによる冷却効果をより一層高めることができる。
【0037】
また、バッテリアセンブリ100の後面は、走行風が当たりにくく、走行風による冷却効果が得にくい部分となっている。そこで、本実施形態では、図1,図3等に示すように、バッテリアセンブリ100の後面となるバッテリカバー12の後側面12r上に、リヤウォータージャケット20Rを取り付け、当該リヤウォータージャケット20R内を流れる冷却水によってバッテリアセンブリ100の後部(後側の側板12b)を冷却するようにしてある。
【0038】
リヤウォータージャケット20Rの内部には、図示しないが、図6に示したフロントウォータージャケット20Fと同様に、冷却水の導入口から排出口に至る冷却水通路が複数平行に蛇行して形成されている。導入口から導入された冷却水が蛇腹状の冷却水通路を通過して排出口から排出される間に、その冷却水と本体ブロックとの間、ひいては、本体ブロックを設置したバッテリカバー12の側板12bとの間で熱交換され、これにより、バッテリアセンブリ100の後部を冷却できるようになっている。
【0039】
そして、本実施形態では、上述したように、フロアトンネル部52および凹溝部125が車両1の車幅方向中央に配置されているため、空気通路30では、車両1の車幅方向中央を前方から後方に向かう空気流Asが主流となっている。したがって、空気流Asは、リヤウォータージャケット20Rの車幅方向中央部分に向けて案内されることとなる。
【0040】
そこで、本実施形態では、リヤウォータージャケット20Rの車幅方向略中央部の上端部に切欠部28を形成し、空気通路30を通過した空気流Asを、切欠部28を介して後方へ排出するようにしている。かかる構成では、図3から明らかとなるように、切欠部28が空気通路30の後端部の下側の少なくとも一部を形成している。かかる切欠部28を設けた構成では、リヤウォータージャケット20Rがこの切欠部28で空気流Asによって冷却される分、切欠部28を設けない場合に比べて、リヤウォータージャケット20Rの温度をより低下させやすくなる。
【0041】
また、図3に示すように、本実施形態では、バッテリカバー12の後端部の上側角部が切欠部28に対応する部分に、面取部123cを形成し、第3の被覆部分123の上面12s上を車両前後方向に略沿って流れる空気流Asが、より円滑に切欠部28に流れ込むようにして、空気流Asの後方への排出性をより一層高めている。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態では、バッテリアセンブリ100のバッテリケース10をなすバッテリカバー12の上面12s上にフロントウォータージャケット20Fを取り付けた。空気流による冷却では、フロアパネル3の高さ位置が低くバッテリアセンブリ100とフロアパネル3との間の隙間を大きくできない場合には冷却効果が低くなってしまう。この点、かかる構成によれば、フロアパネル3の高さ位置を高くし難くバッテリアセンブリ100とフロアパネル3との間の隙間を大きくし難い場合にあっても、当該隙間に配置したフロントウォータージャケット20Fによって、バッテリアセンブリ100の上部を、より効果的に冷却することができる。
【0043】
また、フロントウォータージャケット20Fは、バッテリカバー12の上面12sのうち、車両前側に配置された前記第1の被覆部分121の上に取り付けられている。ここで、前述したように、バッテリアセンブリ100のうち車両前後方向中央に配置された第2のバッテリ群C,Dは、他のバッテリ群に対して最も積層数が少ないため、発熱量も小さい。一方、最も車両前側に配置した第1のバッテリ群A,Bは、第2のバッテリ群C,Dよりも積層数が多いため、冷却する必要性が高い。従って、本実施形態では、第1のバッテリ群A,Bに対応するバッテリカバー12の第1の被覆部分121の上にフロントウォータージャケット20Fを取り付けている。
【0044】
また、本実施形態では、走行風を車両前方から取り入れて車両後方へ通流させる空気通路30を形成し、当該空気通路30にフロントウォータージャケット20Fおよびリヤウォータージャケット20Rを臨ませた。かかる構成によれば、空気通路30を流れる空気流Asによって、フロントウォータージャケット20Fおよびリヤウォータージャケット20Rを冷却することができる分、バッテリアセンブリ100をより効果的に冷却することができる。また、空気流Asによるバッテリアセンブリ100の冷却効果も得られるため、水冷および空冷の双方によってバッテリアセンブリ100の冷却効果をより一層高めることができる。
【0045】
また、本実施形態では、フロアパネル3に、上方に凹設されて車両前後方向に略沿って延在するフロアトンネル部52を形成し、当該フロアトンネル部52によって空気通路30の少なくとも一部を形成した。かかる構成によれば、フロアトンネル部52を形成した部分で空気通路30の断面積を増大させて空気流Asの流量を増大しやすくなり、バッテリアセンブリ100の上部をより効果的に冷却することができる。また、このフロアトンネル部52によって空気流Asをガイドすることができる分、より円滑にかつより所望の経路で空気流Asを通流させることができる。さらに、配管、配線等の配索部品用に設けられるフロアトンネル部52を有効利用して、より効率よく空気通路30の拡大を図ることができるという利点もある。
【0046】
また、本実施形態では、バッテリアセンブリ100の上面に、下方に凹設されて車両前後方向に略沿って延在する凹溝部125を形成し、当該凹溝部125によって空気通路30の少なくとも一部を形成した。かかる構成によれば、凹溝部125を形成した部分で空気通路30の断面積を増大させて空気流Asの流量を増大しやすくなる分、バッテリアセンブリ100をより効果的に冷却することができる。また、凹溝部125によって空気流Asをガイドして、より円滑にかつより所望の経路で空気流Asを流すことができる。
【0047】
また、本実施形態では、バッテリカバー12の上壁としての天板12uの少なくとも一部を熱伝導性材料で形成し、当該天板12uの上面12sの幅方向中央部上にフロントウォータージャケット20Fを載置した。かかる構成によれば、フロントウォータージャケット20Fによる冷却効果を、熱伝導性材料で形成した天板12uを利用してより広い範囲に及ぼすことができる上、フロントウォータージャケット20Fを車幅方向中央部に配置したため左側と右側とで冷却効果にむら(ばらつき)が生じるのを抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態では、バッテリカバー12の上壁としての天板12uを、車幅方向中央部が最も上方に位置するように上方に向けて膨出させて形成した。かかる膨出形状では、バッテリケース10の空間S内での空気の温度は、当該空間S内で最も高い位置、すなわち車幅方向中央部の上部Stで高くなりやすい。よって、かかる構成によれば、フロントウォータージャケット20Fによって、当該上部Stに隣接する天板12uを冷却することで、空間S内の空気をより効率よく冷却し、ひいてはバッテリ4をより効果的に冷却することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、バッテリアセンブリ100を、バッテリカバー12にフロントウォータージャケット20Fおよびリヤウォータージャケット20Rを一体化したウォータージャケット付きバッテリアセンブリとして構成してある。かかる構成とすることで、これらを一体化しなかった場合に比べて、フロントウォータージャケット20Fおよびリヤウォータージャケット20Rを、比較的簡単に所定の位置に配置することができる。また、バッテリアセンブリ100を車両1から取り外したときに、これらフロントウォータージャケット20Fおよびリヤウォータージャケット20Rを比較的容易にメンテナンスすることができるという利点もある。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず種々の変形が可能である。例えば、バッテリアセンブリやウォータージャケットのスペック(位置、数、形状、大きさ、構成等)は上記実施形態には限定されず、種々に設定することが可能である。また、空気通路のスペック(位置、数、形状、大きさ等)も適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
3 フロアパネル
4 バッテリ
10 バッテリケース(ケース)
12 バッテリカバー(ケース)
12u 天板(上壁)
12s 上面
20F フロントウォータージャケット
30 空気通路
51 サイドメンバ(車体骨格部材)
52 フロアトンネル部
53 クロスメンバ(車体骨格部材)
54 サイドシル(車体骨格部材)
55 アウトリガー(車体骨格部材)
56 リヤサイドメンバ(車体骨格部材)
57 リヤクロスメンバ(車体骨格部材)
100 バッテリアセンブリ
125 凹溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両下部の車体骨格部材と、
複数のバッテリを含みフロアパネルの下に配置され前記車体骨格部材に取り付けられたバッテリアセンブリと、
前記バッテリアセンブリを収容するケースの上面上に取り付けられたウォータージャケットと、
を備えることを特徴とする車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項2】
前記バッテリアセンブリのケースは、車両後側の部位が最も高く、車両前側の部位が次に高く、車両中央側の部位が最も低く形成され、
前記ウォータージャケットを、車両前側の部位の上面に配設したことを特徴とする請求項1に記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項3】
前記バッテリアセンブリは、車両前側に配置された第1のバッテリ群と、車両後側に配置された第3のバッテリ群と、これらの第1のバッテリ群および第3のバッテリ群の間に配置された第2のバッテリ群とを有し、
前記バッテリアセンブリのケースは、前記第1のバッテリ群を覆う第1の被覆部分と、前記第2のバッテリ群を覆う第2の被覆部分と、前記第3のバッテリ群を覆う第3の被覆部分と、から構成され、
前記バッテリアセンブリのケースの上面は、前記バッテリアセンブリの上端に近接した高さに形成されると共に、高さは、第3の被覆部分>第1の被覆部分>第2の被覆部分の関係に設定されており、前記第1の被覆部分の上面にウォータージャケットを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項4】
前記バッテリアセンブリのケースの上面とフロアパネルとの間に、走行風を車両前方から取り入れて車両後方へ通流させる空気通路を形成し、当該空気通路に前記ウォータージャケットを臨ませたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項5】
前記フロアパネルに、上方に凹設されて車両前後方向に略沿って延在するフロアトンネル部を形成し、当該フロアトンネル部によって前記空気通路の少なくとも一部を形成したことを特徴とする請求項4に記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項6】
前記バッテリアセンブリの上面に、下方に凹設されて車両前後方向に略沿って延在する凹溝部を形成し、当該凹溝部によって前記空気通路の少なくとも一部を形成したことを特徴とする請求項4または5に記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項7】
前記ケースの上壁の少なくとも一部を熱伝導性材料で形成し、当該上壁の上面の幅方向中央部上に前記ウォータージャケットを載置したことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一つに記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項8】
前記ケースの上壁を、車幅方向中央部が最も上方に位置するように上方に向けて膨出させて形成したことを特徴とする請求項7に記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一つに記載の車両のバッテリアセンブリ冷却構造で用いられ、前記バッテリアセンブリに前記ウォータージャケットを一体化したことを特徴とするウォータージャケット付きバッテリアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−6051(P2011−6051A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5104(P2010−5104)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】