説明

車両のブレーキ制御装置

【課題】エンジンブレーキ(スロットル弁開閉アクチュエータ20)及び車輪ブレーキ(車輪ブレーキ作動手段21)の両方が作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する場合に、ブレーキ作動開始初期に制御が不安定になるのを防止する。
【解決手段】エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方が作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する際に、エンジンブレーキを車輪ブレーキよりも所定時間だけ遅延させて作動開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を先行車両に追従走行させているときに、目標減速度に応じて、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの少なくとも一方の作動により自車両を減速制御するようにした車両のブレーキ制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両とその前方の先行車両との車間距離をレーダ装置等によって検知し、この検知した車間距離が、予め設定した目標車間距離になるように自車両を先行車両に対して追従走行させるようにした制御装置はよく知られている(例えば特許文献1、2参照)。このものでは、レーダ装置等によって検知した車間距離が、上記目標車間距離を維持するように自車両の目標加減速度を算出し、この目標加減速度に応じて、スロットル弁やブレーキ等の作動により自車両を加減速制御するようにしている。
【特許文献1】特開2001−239855号公報
【特許文献2】特開2004−330890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記目標加減速度が減速度であるときには、エンジンブレーキや車輪ブレーキを作動させることで、自車両を減速制御することになるが、これら両ブレーキをどのように作動させるかが問題となる。すなわち、車輪ブレーキは、大きなブレーキ力が得られるものの、油圧ポンプ等を作動させるために応答性が悪く、また、頻繁に作動させると寿命が低下するとともに、作動時に乗員に違和感を与える可能性が高い。一方、エンジンブレーキは、車輪ブレーキのような問題は生じないものの、大きなブレーキ力が得られない。
【0004】
そこで、出来る限りエンジンブレーキを作動させて車輪ブレーキを作動させないようにすることことが好ましく、この観点から、大きなブレーキ力が必要でないときには、エンジンブレーキのみを使用しつつ、先行車両と自車両との間に割込み車両があった場合等のように、急激に大きなブレーキ力をかける必要があるときには、エンジンブレーキと車輪ブレーキとを併用するようにすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを同時に作動開始させた場合には、安定した減速制御を行うことができないという問題がある。すなわち、車輪ブレーキによる減速制御は、通常、車輪に供給される油圧の制御を、車速センサ等により検出した車両減速度をフィードバックすることにより行うが、急激に大きなブレーキ力をかけるとともに車両減速度は遅れて検出されるために、車両減速度がオーバーシュートする傾向にある。ここで、車輪ブレーキのみの作動であれば、そのオーバーシュートを出来る限り抑えて早期に収束させることができるが、エンジンブレーキの作動による減速分が加わると、このエンジンブレーキの作動が減速にどの程度寄与するかが作動開始初期には分からないために、大きくオーバーシュートし過ぎて、収束するまでに時間がかかったり制御が発散したりしてしまう。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自車両のエンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方が作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する場合に、ブレーキ作動開始初期に制御が不安定になるのを防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方が作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する際に、エンジンブレーキを車輪ブレーキよりも所定時間だけ遅延させて作動開始させるようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、自車両前方の先行車両を検知する先行車両検知手段と、該先行車両検知手段が検知した先行車両と自車両との車間距離を検知する車間距離検知手段と、上記先行車両と自車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、上記車間距離検知手段により検知される車間距離が、上記目標車間距離設定手段により設定された目標車間距離を維持するように自車両の目標加減速度を算出する目標加減速度算出手段と、上記目標加減速度算出手段により算出された目標加減速度が減速度であるときに、該目標減速度に応じて、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの少なくとも一方の作動により自車両を減速制御する減速制御手段とを備えた車両のブレーキ制御装置を対象とする。
【0009】
そして、上記減速制御手段は、上記両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する際には、エンジンブレーキを車輪ブレーキよりも所定時間だけ遅延させて作動開始させるように構成されているものとする。
【0010】
上記の構成により、両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する際には、車輪ブレーキから作動を開始して、車両減速度がほぼ安定する時間(このような時間を所定時間に設定すればよい)が経過してからエンジンブレーキを作動させることができる。これにより、車輪ブレーキ作動開始初期にエンジンブレーキが加わることによる制御の不安定はなくなる。また、車輪ブレーキを先に作動させることで、急激に大きなブレーキ力をかける必要があるときにも対応することができる。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記減速制御手段は、上記両ブレーキが作動していない状態から、上記目標加減速度算出手段により算出された目標減速度の大きさが所定値よりも大きくなったときに、上記両ブレーキを作動させて自車両を減速制御するように構成されているものとする。
【0012】
このことにより、急激に大きなブレーキ力をかける必要があるときにエンジンブレーキと車輪ブレーキとを併用することで、エンジンブレーキの欠点を補って的確にブレーキをかけることができるとともに、ブレーキ作動開始初期の制御の不安定を防止することができる。
【0013】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、上記減速制御手段は、上記目標加減速度算出手段により算出された目標減速度の大きさが、予め設定された設定値よりも大きいときには、上記両ブレーキの作動により自車両を減速制御する一方、上記目標減速度の大きさが上記設定値以下であるときには、上記エンジンブレーキのみの作動により自車両を減速制御するように構成されているものとする。
【0014】
このことで、出来る限りエンジンブレーキを作動させて車輪ブレーキを作動させないようにして、車輪ブレーキの寿命低下を防止したり乗員に違和感を与えるのを防止したりしつつ、急激に大きなブレーキ力をかける必要があるときには、両ブレーキの作動により的確にブレーキをかけることができる。しかも、ブレーキ作動開始初期の制御の不安定を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の車両のブレーキ制御装置によると、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方が作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する際には、エンジンブレーキを車輪ブレーキよりも所定時間だけ遅延させて作動開始させるようにしたことにより、ブレーキ作動開始初期の制御の不安定を防止することができるとともに、エンジンブレーキを出来る限り使用することで、車輪ブレーキの寿命低下を防止したり乗員に違和感を与えるのを防止したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置を搭載した車両W(自車両に相当)を示し、この車両Wの前端部に、車両Wの前方に存在する先行車両を検知する先行車両検知手段としてのレーダ装置1が設けられている。このレーダ装置1は、ミリ波レーダ装置であって、ミリ波を前方に向けて略水平方向に所定角度範囲を走査しながら発信する発信部と、そのミリ波が車両Wの前方の障害物に当たって反射してきた反射波を受信する受信部とを有している。そして、レーダ装置1は、その受信部で受信(検知)した障害物の車両Wとの距離及び相対速度を検出して、その検出データを障害物検知情報としてコントロールユニット11に送信するようになっている。
【0018】
上記車両Wには、上記レーダ装置1からの障害物検知情報を受けて車両Wを制御するコントロールユニット11が設けられている。本実施形態では、コントロールユニット11は、障害物が先行車両である場合に、上記障害物検知情報に基づいて、スロットル弁開閉アクチュエータ20や、車両Wの各車輪31にブレーキ力を付与するための油圧ポンプ等を含む車輪ブレーキ作動手段21を作動させることで、車両Wを先行車に対して追従走行させる追従走行制御を行う(先行車両が存在しないときには、車両Wの乗員が設定した目標車速で走行させる定速走行制御を行う)ようになっている。尚、コントロールユニット11は、車両Wと障害物との相対速度及び車両Wの車速に基づいて、上記検知された障害物が移動物体であるか又は静止物体であるかを判定しかつ移動物体である場合に先行車両であるか否かを判定する。障害物が先行車両である場合には、レーダ装置1により検出される、障害物と車両Wとの距離が、先行車両と車両Wとの車間距離であり、このことで、レーダ装置1は車間距離検知手段を構成することになる。
【0019】
また、上記車両には、図2に示すように、車両Wの車速を検出する車速センサ12と、車両Wに生じるヨーレートを検出するヨーレートセンサ13とが設けられており、これら各センサ12,13からの検出情報が上記コントロールユニット11に入力されるようになっている。
【0020】
上記コントロールユニット11には、予め設定された車間時間(先行車両が停止した場合に該停止から車両Wが現在の速度で先行車に到達するまでの時間)が記憶されており、上記追従走行制御時には、この車間時間と、先行車両の車速(レーダ装置1により検出される相対速度と、車速センサ12により検出される車両Wの速度とから求める)とに基づいて目標車間距離を設定する。そして、この設定した目標車間距離と現在の車間距離との差と上記相対速度とに基づいて目標加減速度を算出し(例えば、目標車間距離と現在の車間距離との差及び相対速度に応じて目標加減速度が決まるようなマップを予め作成しておき、このマップから目標加減速度を算出する)、この算出した目標加減速度に基づいて、上記スロットル弁開閉アクチュエータ20や車輪ブレーキ作動手段21を制御する。
【0021】
上記コントロールユニット11は、上記目標加減速度が加速度(正の値)であるときには、スロットル弁開閉アクチュエータ20の作動により車両Wを加速制御する一方、目標加減速度が減速度(負の値)であるときには、その目標減速度に応じて、スロットル弁開閉アクチュエータ20及び車輪ブレーキ作動手段21(つまりエンジンブレーキ及び車輪ブレーキ)の少なくとも一方の作動により車両Wを減速制御するようになっている。このことで、コントロールユニット11は減速制御手段を構成することになる。本実施形態では、後述の如く、上記目標減速度に応じて、エンジンブレーキのみの作動、又はエンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方の作動により車両Wを減速制御する。尚、エンジンブレーキは、スロットル弁開閉アクチュエータ20と変速機とを併用したものであってもよい。
【0022】
上記コントロールユニット11は、車速センサ12及びヨーレートセンサ13の検出値に基づいて車両Wの旋回半径、つまり車両Wの進行路の曲率半径を推定するように構成されている。具体的には、車両Wの旋回半径(進行路の曲率半径)Rは、ヨーレートをφとし、車両Wの速度をVとして、
R=V/φ
より求める。
【0023】
そして、上記コントロールユニット11は、上記追従走行制御時においては、先行車両が上記推定した進行路上に存在しているか否かを判定し、存在していると判定したときには、先行車両が、車両Wと同じ車線を走行していると判断して、そのまま追従走行制御を続行する一方、先行車両が上記進行路上に存在していないと判定したときには、先行車両又は車両Wが車線変更を行ったと判断して、上記定速走行制御を行うようになっている。
【0024】
ここで、上記コントロールユニット11による減速制御について詳しく説明する。
【0025】
本実施形態では、コントロールユニット11は、上記目標減速度の大きさ(目標加減速度の絶対値)が、予め設定された設定値(請求項3の「設定値」に相当)よりも大きいときには、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方の作動により車両Wを減速制御する一方、上記目標減速度の大きさが上記設定値以下であるときには、エンジンブレーキのみの作動により車両Wを減速制御するようになっている。上記設定値は、スロットル弁開閉アクチュエータ20のみの作動で得られる最大に近いブレーキ力に対応する減速度とすればよく、例えば0.3m/sに設定される。尚、エンジンブレーキのみの作動により車両Wを減速制御する際には、オープン制御で行う。
【0026】
したがって、コントロールユニット11は、上記両ブレーキが作動していない状態(つまり加速時(加速も減速もしていないときを含む))から、目標減速度の大きさが上記設定値よりも大きくなったときには、上記両ブレーキを作動させて車両Wを減速制御することになる。このことで、上記設定値は、請求項2の「所定値」に相当するものでもある。
【0027】
そして、コントロールユニット11は、上記両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを作動させて車両Wを減速制御する際には、エンジンブレーキを車輪ブレーキよりも所定時間だけ遅延させて作動開始させるように構成されている。すなわち、車輪ブレーキによる減速制御は、車輪に供給される油圧の制御を、車速センサ12(車輪31の回転速度を検出する車輪速センサであってもよい)により検出した車両減速度をフィードバックすることにより行うが、急激に大きなブレーキ力をかけるとともに車両Wの減速度は遅れて検出されるために、車両Wの減速度がオーバーシュートする傾向にある。ここで、車輪ブレーキのみの作動であれば、そのオーバーシュートを出来る限り抑えて早期に収束させることができるが、エンジンブレーキによる減速分が加わると、このエンジンブレーキの作動が減速にどの程度寄与するかが作動開始初期には分からないために、大きくオーバーシュートし過ぎて、収束するまでに時間がかかったり制御が発散したりしてしまう。そこで、本実施形態では、車輪ブレーキの作動により減速度がほぼ安定する所定時間(例えば0.5s)を待ってからエンジンブレーキを作動させるようにしている。このエンジンブレーキの作動により、車輪ブレーキによるブレーキ力は、エンジンブレーキによるブレーキ力の分だけ減少する。
【0028】
尚、エンジンブレーキのみが作動している状態(つまり目標減速度の大きさが上記設定値以下であるとき)から、目標減速度の大きさが上記設定値よりも大きくなったときには、エンジンブレーキをそのままの大きさで作動させたまま、車輪ブレーキを作動させる。
【0029】
次に、上記コントロールユニット11における追従走行制御の処理動作について、図3及び図4のフローチャートを参照しながら説明する。尚、この処理動作は、予め設定された基準時間(レーダ装置1におけるミリ波の走査時間に対応する時間)毎に繰り返し行われる。
【0030】
先ず、最初のステップS1で、車速センサ12及びヨーレートセンサ13より車速V及びヨーレートφをそれぞれ入力し、次のステップS2では、上記車速V及びヨーレートφに基づいて車両Wの進行路の曲率半径Rを、
R=V/φ
により求めて、車両Wの進行路を推定する。
【0031】
次のステップS3では、レーダ装置1より障害物検知情報を入力し、次のステップS4で、先行車両が上記推定した進行路上(つまり車両Wと同じ車線上)に存在するか否かを判定する。
【0032】
上記ステップS4の判定がNOであるときには、ステップS5に進んで、定速走行制御の処理を行い、しかる後にリターンする。一方、ステップS4の判定がYESであるときには、ステップS6に進んで、先行車両の車両Wに対する相対速度と、車速センサ12により検出された車両Wの車速とから、先行車両の車速を演算する。
【0033】
次のステップS7では、予め設定記憶された車間時間と上記先行車両の車速とから目標車間距離を演算し、次のステップS8で、目標車間距離と現在の車間距離との差と、上記相対速度とに基づいて上記マップより目標加減速度を算出する。
【0034】
次のステップS9では、上記目標加減速度が減速度であるか否かを判定する。このステップS9の判定がNOであるときには、ステップS10に進んで、タイマーを上記所定時間Tに設定し、次のステップS11で、スロットル弁開閉アクチュエータ20の作動により加速制御を行い、しかる後にリターンする。
【0035】
一方、上記ステップS9の判定がYESであるときには、ステップS12に進んで、目標減速度の大きさが上記設定値よりも大きいか否かを判定する。このステップS12の判定がNOであるときには、ステップS13に進んで、上記タイマーを0に設定し、次のステップS14で、エンジンブレーキを作動させて減速制御を行い、しかる後にリターンする。
【0036】
一方、上記ステップS12の判定がYESであるときには、ステップS15に進んで、上記タイマーの設定値が0であるか否かを判定する。このステップS12の判定がYESであるときには、ステップS16に進んで、エンジンブレーキを作動させ、続くステップS17で、車輪ブレーキを作動させて減速制御を行い、しかる後にリターンする。
【0037】
一方、上記ステップS15の判定がNOであるときには、ステップS18に進んで、上記タイマーを、該タイマーの設定値から上記基準時間を引いた値に設定し、しかる後に上記ステップS17に進み、しかる後にリターンする。
【0038】
上記コントロールユニット11の処理動作により、上記目標加減速度が減速度でない場合には、タイマーが所定時間Tに設定されるとともに、スロットル弁開閉アクチュエータ20の作動により加速制御が行われる。そして、この状態から目標減速度の大きさが設定値よりも大きくなると、タイマーの設定値が0になるまで、エンジンブレーキの作動は抑制され、車輪ブレーキのみが作動する。そして、タイマーの設定値が0になる、つまり車輪ブレーキの作動開始から所定時間Tが経過すると、エンジンブレーキも作動を開始し、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方で減速制御が行われる。これにより、車輪ブレーキ作動開始初期にエンジンブレーキが加わることによる制御の不安定はなくなる。
【0039】
また、目標減速度の大きさが設定値以下であると、タイマーが0に設定されるとともに、エンジンブレーキのみの作動により減速制御が行われる。そして、この状態から目標減速度の大きさが設定値よりも大きくなると、タイマーの設定値が0であるので、即座にエンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方で減速制御が行われる。このときには、車両Wの減速度がほぼ安定した状態から車輪ブレーキを作動させることになり、このような状態から車輪ブレーキを作動させるのは、両ブレーキが作動していない状態から車輪ブレーキのみを作動させる場合と同様であり、制御が不安定になるようなことはない。
【0040】
したがって、本実施形態では、目標減速度の大きさが設定値よりも大きいときには、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方の作動により車両Wを減速制御する一方、上記目標減速度の大きさが上記設定値以下であるときには、エンジンブレーキのみの作動により車両Wを減速制御するようにしたので、出来る限りエンジンブレーキを作動させて車輪ブレーキを作動させないようにして、車輪ブレーキの寿命低下を防止したり乗員に違和感を与えるのを防止したりしつつ、急激に大きなブレーキ力をかける必要があるときには、両ブレーキの作動により的確にブレーキをかけることができる。
【0041】
しかも、本実施形態では、両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを作動させて車両Wを減速制御する際には、エンジンブレーキを車輪ブレーキよりも所定時間だけ遅延させて作動開始させるようにしたので、車輪ブレーキ作動開始初期にエンジンブレーキが加わることによる制御の不安定を防止することができる。
【0042】
尚、上記実施形態では、目標減速度の大きさが設定値よりも大きいときには、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの両方の作動により車両Wを減速制御する一方、上記目標減速度の大きさが上記設定値以下であるときには、エンジンブレーキのみの作動により車両Wを減速制御するようにしたが、両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する場合が存在するものであれば、本発明を適用することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、レーダ装置1をミリ波レーダ装置としたが、どのような種類のレーダ装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、自車両を先行車両に追従走行させているときに、目標減速度に応じて、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの少なくとも一方の作動により自車両を減速制御するようにした車両のブレーキ制御装置に有用であり、特に両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する場合が存在するものに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置を搭載した車両前側の構成図である。
【図2】上記ブレーキ制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】コントロールユニットにおける追従走行制御の処理動作の前半部を示すフローチャートである。
【図4】上記追従走行制御の処理動作の後半部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
W 車両(自車両)
1 レーダ装置(先行車両検知手段)(車間距離検知手段)
11 コントロールユニット(目標車間距離設定手段)
(目標加減速度算出手段)(減速制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の先行車両を検知する先行車両検知手段と、該先行車両検知手段が検知した先行車両と自車両との車間距離を検知する車間距離検知手段と、上記先行車両と自車両との目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段と、上記車間距離検知手段により検知される車間距離が、上記目標車間距離設定手段により設定された目標車間距離を維持するように自車両の目標加減速度を算出する目標加減速度算出手段と、上記目標加減速度算出手段により算出された目標加減速度が減速度であるときに、該目標減速度に応じて、エンジンブレーキ及び車輪ブレーキの少なくとも一方の作動により自車両を減速制御する減速制御手段とを備えた車両のブレーキ制御装置であって、
上記減速制御手段は、上記両ブレーキが作動していない状態から該両ブレーキを作動させて自車両を減速制御する際には、エンジンブレーキを車輪ブレーキよりも所定時間だけ遅延させて作動開始させるように構成されていることを特徴とする車両のブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両のブレーキ制御装置において、
上記減速制御手段は、上記両ブレーキが作動していない状態から、上記目標加減速度算出手段により算出された目標減速度の大きさが所定値よりも大きくなったときに、上記両ブレーキを作動させて自車両を減速制御するように構成されていることを特徴とする車両のブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両のブレーキ制御装置において、
上記減速制御手段は、上記目標加減速度算出手段により算出された目標減速度の大きさが、予め設定された設定値よりも大きいときには、上記両ブレーキの作動により自車両を減速制御する一方、上記目標減速度の大きさが上記設定値以下であるときには、上記エンジンブレーキのみの作動により自車両を減速制御するように構成されていることを特徴とする車両のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−179200(P2008−179200A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12744(P2007−12744)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】