説明

車両のリアサスペンション取付け構造

【課題】 剛性を向上させた車両のサスペンション取付け構造を提供すること。
【解決手段】 フロアサイドメンバの下部に設置され、車両中央側に配置される第1の側壁と、車両側方側に配置される第2の側壁との間でマウントを軸支するサスペンションブラケットを備えた車両のリアサスペンション取付け構造において、サイドシル2を車両後方へ延設し、前記サスペンションブラケット4の前記第2の側壁20を、前記フロアサイドメンバ1と前記サイドシル2に結合した構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリアサスペンション取付け構造に関するもので、詳しくは、トレーリングアームを軸支するサスペンションブラケットおよび該ブラケットの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リアサスペンションブラケットは、走行性能を左右する部分であり、高い剛性が要求される。そこで、リアサスペンションブラケットは、リアサイドメンバの下面に三角形状の凹部を形成し、該凹部にリーンフォースを結合するとともに、そのリーンフォースの両端部をマウントを軸支するための両側壁に結合することによって剛性を高めたり(例えば、特許文献1参照)、マウントを軸支するための側壁の一方にロッカレールインナパネルの張出部を添設し、他方にクロスシルの突出部を添設することによって剛性を高めている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開平7−164845号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2000−153778号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題を解決し、剛性をより向上させた車両のサスペンション取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するため、フロアサイドメンバの下部に設置され、車両中央側に配置される第1の側壁と、車両側方側に配置される第2の側壁との間でマウントを軸支するサスペンションブラケットを備えた車両のリアサスペンション取付け構造において、サイドシルを車両後方へ延設し、前記サスペンションブラケットの前記第2の側壁を、前記フロアサイドメンバと前記サイドシルに結合したことにある。
また、本発明は、ホイールハウスインナパネルの車両中央側端部を車両の後方へ延設し、その延設部に前記サスペンションブラケットの前記第2の側壁を結合したことにある。
さらに、本発明は、前記第1の側壁の上端を前記フロアサイドメンバの側面に結合し、前記第1の側壁にリーンフォースを添設するとともに、該リーンフォースを前記フロアサイドメンバの下面に結合したことにある。
またさらに、本発明は、前記リーンフォースの車両前方側端部を車両側方側に屈曲させて連結壁を形成し、該連結壁を前記第2の側壁に結合したことにある。
また、本発明は、前記第1の側壁の車両の前方側端部を車両の側方側に屈曲させて、前記連結壁の前方を覆う前壁を形成し、前記前壁の下端を前記連結壁の下端に結合するとともに、前記前壁を上方に向かうにしたがって前記連結壁から離れるように延設し、その前壁上端を前記フロアサイドメンバの下面に結合したことにある。
【発明の効果】
【0005】
閉断面構造のサイドシルが無くなる部位は、剛性の急変部であり、車両のねじり剛性に重要な部分となっている。このような部位にサスペンションブラケットを配設する場合には、剛性を高めるための工夫が必要になる。
請求項1の発明によれば、サイドシルの後端とホイールハウスとの連結部近傍にサスペンションブラケットを配置した場合にも、該サスペンションブラケットをフロアサイドメンバとサイドシルに結合したので、サスペンションブラケットが強固に車体に固定され、ブラケットの剛性が向上するとともに、サスペンションブラケットによってサイドシルの後端とホイールハウスの結合部が強化されるので、車両の剛性が向上し、それによって、車両の走行安定性が向上し、車両走行時の剛性感が増し、商品性が向上する。
請求項2の発明によれば、第2の側壁をホイールハウスに結合したので、第2の側壁の剛性がさらに向上する。
第1の側壁の上端はフロアサイドメンバの側面に接合されるので、サスペンションから入力される車両の左右方向の力(コーナリング中に主に発生する)には、剥離方向となるので結合強度的に不利になる。
請求項3の発明によれば、第1の側壁を、フロアサイドメンバの側面ばかりでなく、フロアサイドメンバの下面でも結合させるので、第1の側壁の剛性が向上し、ブラケットのサスペンションから受ける力に対する耐久性が向上する。
請求項4の発明によれば、第1の側壁と第2の側壁とを車両の前方端部で、板状の構造(上下方向に幅を持った構造)にて互いに結合したので、第1の側壁と第2の側壁の板厚方向の倒れが防止され、ブラケットの剛性が向上する。
また、第1の側壁と第2の側壁が互いに結合されるので、ブラケットの部品を予め結合して組み立てておくことができ、組付け作業性が向上する。
請求項5の発明によれば、第1の側壁の前壁とリーンフォースの連結壁とフロアサイドメンバの下面とによって断面三角形状の閉断面が形成されるので、サスペンションブラケットの剛性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明に係る車両のリアサスペンション取付け構造を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車両のリアサスペンション取付け構造を車両下部から視た斜視図,図2は、図1における要部拡大斜視図,図3は、サスペンションブラケットを内側下方から視た斜視図,図4は、サスペンションブラケットを前部上方から視た斜視図,図5は、サスペンションブラケットを後部上方から視た斜視図,図6は、図2におけるA−A線断面図,図7は、図2におけるB−B線断面図である。
【0007】
図1ないし図5において、本実施形態の車両では、車体の後部下面には、左右一対のリアフロアサイドメンバ(以下、サイドメンバという)1が車体の前後方向に沿って配設されている。車体のドア開口部に対応する側面下部側には、車体の前後方向に沿ってサイドシル2が設けられている。
このサイドメンバ1の上方、かつ車両の中央方向に向かって湾曲される部位まで、サイドシル2のインナパネル2aが延設されている。このサイドシル2の後部側にはホイールハウス3とともに、後輪のサスペンションアームを支持するサスペンションブラケット4が設けられている。
前記ホイールハウス3のインナパネル3aは、その下端が後方に延設され、その延設部3aがサイドシル2のインナパネル2aに接合されている。
【0008】
前記サスペンションブラケット4は、第1の側壁10と、第2の側壁20と、リーンフォース30と、連結部材40によって構成されている。サスペンションブラケット4の第1の側壁10と、第2の側壁20との間隔は、サスペンションアームの幅に合わせて形成されているため、前記サイドメンバ1の幅は、サスペンションブラケット4の第1の側壁10と、第2の側壁20との間隔よりも大きい幅に形成されている。
【0009】
第1の側壁10は、車両の前後方向に延設され、マウント取付けボルト5を挿通させるボルト挿通孔11を有するマウント取付け壁12と、該マウント取付け壁12の上縁から車両中央方向、かつ上方に延設された膨出壁13と、該膨出壁13の上縁から上方に向けて延設され、サイドメンバ1の側面1bに接合されるフランジ14と、マウント取付け壁12の前縁から車両の側方側に曲折され、かつ下縁を、リーンフォース30の後述する前面壁の下端に接合され、上方に向けて前方に傾斜する前面壁15と、該前壁15の上縁から前方に延設され、フロアサイドメンバ1の下面に接合されるフランジ16と、前面壁15の車両の側方側縁に前方に延設され、サイドシル2のインナパネル2aに接合されるフランジ17によって構成されている。
【0010】
第2の側壁20は、車両の前後方向に延設され、マウント取付けボルト5を挿通させるボルト挿通孔21を有するマウント取付け壁22と、該マウント取付け壁22の上縁から車両の中央側に曲折され、フロアサイドメンバ1の下面に接合される天井壁23によって構成されている。
【0011】
リーンフォース30は、第1の側壁10の内面側から第2の側壁20のマウント取付け壁22の前端にかけて配設されたもので、マウント取付けボルト5を挿通させるボルト挿通孔31を有するマウント取付け壁32と、該マウント取付け壁32の上縁を車両の側方側に延設させ、フロアサイドメンバ1の下面に接合される天井壁33と、マウント取付け壁32の前端縁と天井壁33の前端縁から垂直に配設された前面壁34から構成されている。
【0012】
連結部材40は、車両の幅方向に延設された後面壁41と、該後面壁41の上縁から後方に延設され、フロアサイドメンバ1の下面に接合される天井壁42と、後面壁41の両側端部に、前方に延設され、前記マウント取付け壁12およびマウント取付け壁22にそれぞれ接合されるフランジ43,44によって構成されている。
【0013】
そして、リーンフォース30の天井壁33は、その前端部で第2の側壁20の天井壁23に接合され、リーンフォース30の前面壁34の車両側方縁が第2の側壁20のマウント取付け壁22の前縁に接合される。
また、第1の側壁10のマウント取付け壁12が、そのボルト挿通孔11をリーンフォース30のマウント取付け壁32のボルト挿通孔31に合致するようにして、リーンフォース30のマウント取付け壁32に接合され、第1の側壁10の前壁15の下端縁が、リーンフォース30の前壁34の下端縁に接合される。
また、連結部材40は、フランジ43が、第1の側壁10のマウント取付け壁12の後端縁に接合され、フランジ44が、第2の側壁20のマウント取付け壁22の後端縁に接合される。
【0014】
このようにして形成されたブラケット2は、図3、図6および図7に示すように、第2の側壁20の天井壁23およびリーンフォース30の天井壁33が、サイドメンバ1の下面1aにそれぞれ接合され、第1の側壁10のフランジ14がサイドメンバ1の車両の中央側側面1bに接合され、第2の側壁20のマウント取付け壁22が、サイドシルインナパネル2aに接合され、第1の側壁10のフランジ17がサイドシルインナパネル2aに接合される。
【0015】
上記実施の形態によれば以下のような効果を奏する。
サイドシル2の後端とホイールハウス3との連結部近傍にサスペンションブラケット4を配置した場合にも、該サスペンションブラケット4をフロアサイドメンバ1とサイドシル2に結合したので、サスペンションブラケット4が強固に車体に固定され、サスペンションブラケット4の剛性が向上する。また、サスペンションブラケット4によってサイドシル2の後端とホイールハウス3の結合部が強化されるので、車両の剛性が向上し、それによって、車両の走行安定性が向上するとともに、車両走行時の剛性感が増し、商品性が向上する。サスペンションブラケット4がホイールハウス3から見える位置に配置されるので、車両の側方からボルトを挿入、締結することができ、組付け作業性が向上する。
【0016】
また、サイドシル2を形成するインナパネル2aの後端を後方に延長して第2の側壁20をホイールハウス3に結合したので、サスペンションブラケット4の剛性がさらに向上する。第2の側壁20のマウント取付け壁22をサイドシル2の後方を塞いで閉じ断面を形成するホイールハウスインナパネル3aと連結したので、サスペンションブラケット4の剛性が向上する。つまり、サイドシル2の後端の角部に第2の側壁20のマウント取付け壁22を連結したので、サイドシル2の後端とホイールハウスインナパネル3aの端部との2方向の面に連結され、サスペンションブラケット4の剛性が向上する。
第1の側壁10を、上方および前方に延設させて、フランジ14および16によって、フロアサイドメンバ1の側面ばかりでなく、フロアサイドメンバ1の下面でも結合させるので、第1の側壁10の剛性が向上し、サスペンションブラケット4のサスペンションから受ける力に対する耐久性が向上する。
【0017】
フロアサイドメンバ1から下方に延びる第1の側壁10と第2の側壁20とをサスペンションアームと干渉しない車両の前方端部で、リーンフォース30によって互いに結合したので、第1の側壁10と第2の側壁20の板厚方向の倒れが防止され、サスペンションブラケット4の剛性が向上する。
また、第1の側壁10と第2の側壁20が互いに結合されるので、サスペンションブラケット4の部品を予め結合して組み立てておくことができ、組付け作業性が向上する。
さらに、第1の側壁10の前面壁15とリーンフォース30の連結壁とフロアサイドメンバ1の下面とによって断面三角形状の閉断面が形成されるので、サスペンションブラケット4の剛性がさらに向上する。
さらに、第1の側壁10とリーンフォース30は、マウントボルト締付ナットの周りや下端にて溶接結合されているので、第1の側壁10とリーンフォース30とフロアサイドメンバ1下面にて、前側と同様に閉じ断面が構成され、第1の側壁10の剛性が向上する。第1の側壁10のマウント取付け壁12と前面壁15とフランジ17とでZ形状の折り曲げ部を形成しているので、剛性の向上を図ることができる。第1の側壁10のフランジ16と、前面壁15と、前面壁15の下部壁面とで台形状の屈曲面を形成しているので、剛性の向上を図ることができる。
【0018】
また、上記第1の側壁10のマウント取付け壁12、前面壁15と、第2の側壁20のマウント取付け壁22などの、各壁に、図2に示すように、ビード10a,10b,20a等を形成すれば、サスペンションブラケット4の強度をさらに高めることができる。
【0019】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、サスペンションブラケット4を構成する第1の側壁10と、第2の側壁20と、リーンフォース30と、連結部材40は、必要に応じて板厚、大きさを変えることができ、また、ビードの幅、数等も任意に設定することができる。等、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜、変更して実施し得ることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両のリアサスペンション取付け構造を車両下部から視た斜視図である。
【図2】図1における要部拡大斜視図である。
【図3】サスペンションブラケットを車両の中央側下方から視た斜視図である。
【図4】サスペンションブラケットを前部上方から視た斜視図である。
【図5】サスペンションブラケットを後部上方から視た斜視図である。
【図6】図2におけるA−A線断面図である。
【図7】図2におけるB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 フロアサイドメンバ
1a 下面
1b 車両の中央側側面
2 サイドシル
2a インナパネル
3 ホイールハウス
3a インナパネル
4 サスペンションブラケット
5 マウント取付けボルト
10 第1の側壁
11 ボルト挿通孔
12 マウント取付け壁
13 膨出壁
14 フランジ
15 前面壁
16 フランジ
17 フランジ
20 第2の側壁
21 ボルト挿通孔
22 マウント取付け壁
23 天井壁
30 リーンフォース
31 ボルト挿通孔
32 マウント取付け壁
33 天井壁
34 前面壁
40 連結部材
41 後面壁
42 天井壁
43,44 フランジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアサイドメンバの下部に設置され、車両中央側に配置される第1の側壁と、車両側方側に配置される第2の側壁との間でマウントを軸支するサスペンションブラケットを備えた車両のリアサスペンション取付け構造において、
サイドシルを車両後方へ延設し、前記サスペンションブラケットの前記第2の側壁を、前記フロアサイドメンバと前記サイドシルに結合したことを特徴とする車両のリアサスペンション取付け構造。
【請求項2】
ホイールハウスインナパネルの車両中央側端部を車両の後方へ延設し、その延設部に前記サスペンションブラケットの前記第2の側壁を結合したことを特徴とする請求項1に記載の請求項1に記載の車両のリアサスペンション取付け構造。
【請求項3】
前記第1の側壁の上端を前記フロアサイドメンバの側面に結合し、前記第1の側壁にリーンフォースを添設するとともに、該リーンフォースを前記フロアサイドメンバの下面に結合したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両のリアサスペンション取付け構造。
【請求項4】
前記リーンフォースの車両前方側端部を車両側方側に屈曲させて連結壁を形成し、該連結壁を前記第2の側壁に結合したことを特徴とする請求項3に記載の車両のリアサスペンション取付け構造。
【請求項5】
前記第1の側壁の車両の前方側端部を車両の側方側に屈曲させて、前記連結壁の前方を覆う前壁を形成し、前記前壁の下端を前記連結壁の下端に結合するとともに、前記前壁を上方に向かうにしたがって前記連結壁から離れるように延設し、その前壁上端を前記フロアサイドメンバの下面に結合したことを特徴とする請求項4に記載の車両のリアサスペンション取付け構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−131271(P2007−131271A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328736(P2005−328736)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】