説明

車両のロックアップ制御装置

【課題】本発明は、寒冷時の冷機始動の際の暖房性能を高め、小型の内燃機関及びその制御装置に適したシンプル制御とし、乗員の暖房要求時に暖房性能を高め燃費性能と両立するようバランスさせ、全てが相互成立するようバランスさせることを目的とする。
【解決手段】このため、内燃機関の始動手段と水温検出手段と気温検出手段を備え、エアコン制御装置とエンジンコントローラとトランスミッションコントローラが情報通信を行う車両のロックアップ制御装置において、内燃機関の始動後、エアコン制御装置は暖房要求の有無を判定してエンジンコントローラに出力し、エンジンコントローラは、気温が判定気温より低いこと、水温が判定水温より低いこと、暖房要求があることとがともに肯定された場合にロックアップ解除肯定要求をトランスミッションコントローラに出力し、トランスミッションコントローラはロックアップクラッチを解除状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関とトランスミッションとの間に設けられたロックアップクラッチ付トルクコンバータのロックアップ制御装置に関する。
特に、室内に設けられた空調装置の駆動制御との協調制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ロックアップ機構を有するトランスミッションが搭載される車両は、燃費向上を目的としたロックアップ制御を実施している。
しかし、トルクコンバータ内でロックアップクラッチを締結した状態では、エンジンと車輪間の動力伝達効率が向上することから、エンジン発熱量の減少によりエンジン冷却水温度が上昇し難く、エンジン冷却水を熱源とする空調装置においては、暖房性能が不足する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−83443号公報
【特許文献2】特開2008−121827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両のロックアップ制御装置においては、特許文献1及び2に開示されるように、エンジン回転数を上昇させる、ロックアップクラッチの締結タイミングを変化される等によりエンジン発熱量を増加させる制御が考えられている。
しかし、ロックアップ実施領域の調整やロックアップ解除可能時間などのドライバビリティに影響する要素の適合、及び車両変更毎にエンジンコントローラとトランスミッションコントローラとの詳細な制御調整が必要となるという不都合がある。
また、エンジンコントローラやトランスミッションコントローラの入力条件のみでロックアップクラッチの締結タイミングを変化させた場合に、エンジン冷却水温度や外気温度などの車両環境に依存する条件のみの判断となってしまうため、乗員が暖房は不要と考える領域においてもロックアップ解除を行い、燃費が悪化するという不都合がある。
【0005】
この発明は、寒冷時に冷機始動する際の暖房性能を高めること、発熱量が小さく相対的に熱容量が大きくなる小型の内燃機関およびその制御装置に適したシンプルな制御とすること、真に乗員から暖房が要求されている時に暖房性能を高め燃費性能と両立するようバランスさせること、それら全てが相互成立するよう最適にバランスさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、内燃機関を冷却する冷却水の熱を利用して暖房可能とする空調装置と、この空調装置を制御するエアコン制御装置と、温度情報を含む各種検知情報に基づいて前記内燃機関を制御するエンジンコントローラと、前記内燃機関と変速機との間に設けられるロックアップクラッチ付トルクコンバータと、前記変速機およびロックアップクラッチの状態を制御するトランスミッションコントローラとを備えた車両のロックアップ制御装置であって、前記内燃機関の始動手段と、冷却水の温度を検出する水温検出手段と、車両の外気の温度に相当する温度を検出する気温検出手段とを備え、前記エアコン制御装置と前記エンジンコントローラと前記トランスミッションコントローラとが情報通信を行う車両のロックアップ制御装置において、前記始動手段による前記内燃機関の始動後、前記エアコン制御装置は、暖房要求の有無を判定して前記エンジンコントローラに出力し、このエンジンコントローラは、前記気温検出手段により検出された気温が寒冷状態を判定する判定気温より低いことと、前記水温検出手段により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温より低いことと、前記エアコン制御装置から出力された暖房要求があることとがともに肯定された場合にロックアップ解除肯定要求を前記トランスミッションコントローラに出力し、このトランスミッションコントローラは、ロックアップ解除肯定要求の入力に基づいて前記ロックアップクラッチを解除状態に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、内燃機関を冷却する冷却水の熱を利用して暖房可能とする空調装置と、空調装置を制御するエアコン制御装置と、温度情報を含む各種検知情報に基づいて内燃機関を制御するエンジンコントローラと、内燃機関と変速機との間に設けられるロックアップクラッチ付トルクコンバータと、変速機およびロックアップクラッチの状態を制御するトランスミッションコントローラとを備えた車両のロックアップ制御装置であって、内燃機関の始動手段と、冷却水の温度を検出する水温検出手段と、車両の外気の温度に相当する温度を検出する気温検出手段とを備え、エアコン制御装置とエンジンコントローラとトランスミッションコントローラとが情報通信を行う車両のロックアップ制御装置において、始動手段による内燃機関の始動後、エアコン制御装置は、暖房要求の有無を判定してエンジンコントローラに出力し、エンジンコントローラは、気温検出手段により検出された気温が寒冷状態を判定する判定気温より低いことと、水温検出手段により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温より低いことと、エアコン制御装置から出力された暖房要求があることとがともに肯定された場合にロックアップ解除肯定要求をトランスミッションコントローラに出力し、トランスミッションコントローラは、ロックアップ解除肯定要求の入力に基づいてロックアップクラッチを解除状態に制御する。
従って、寒冷時の冷機始動という限定した条件成立時であって乗員からの暖房要求がある時にのみ、暖房性能アップを果たすことができる。
それ以外の条件では、ロックアップマップに従って経済性を確保できるため、総合的に暖房性能と経済性の両立を図ることができる。
また、ロックアップマップに基づく制御を禁止することができ、ロックアップ制御の係合解除を切り替える判定のための演算負荷を増大させないシンプルな制御とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はこの発明の第1実施例を示すエンジンコントローラの制御用フローチャートである。(実施例1)
【図2】図2は車両のロックアップ制御装置のシステム図である。(実施例1)
【図3】図3は車両のロックアップ制御装置のハードウェア入出力システム図である。(実施例1)
【図4】図4は車両のロックアップ制御装置のソフトウェア入出力システム図である。(実施例1)
【図5】図5はエアコン制御装置の制御用フローチャートである。(実施例1)
【図6】図6はこの発明の第2実施例を示すエンジンコントローラの制御用フローチャートである。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1〜図5はこの発明の第1実施例を示すものである。
図2において、1は車両のロックアップ制御装置である。
このロックアップ制御装置1は、内燃機関2を冷却する冷却水の熱を利用して暖房可能とする空調装置(「HVAC」ともいう。)3と、この空調装置3を制御するエアコン制御装置(「エアコンECU」ともいう。)4と、温度情報を含む各種検知情報に基づいて前記内燃機関2を制御するエンジンコントローラ(「ECM」ともいう。)5と、前記内燃機関2と変速機6との間に設けられるロックアップクラッチ7付トルクコンバータ8と、前記変速機6およびロックアップクラッチ7の状態を制御するトランスミッションコントローラ9とを備えている。
前記変速機6は、ATやCVTをはじめとする油圧制御される変速機であり、併設されるトルクコンバータ8のロックアップクラッチ7を制御する機能を備えたものを想定する。
また、前記ロックアップ制御装置1は、前記内燃機関2の始動手段(「イグニッションスイッチ」ともいう。)10と、冷却水の温度を検出する水温検出手段11と、車両の外気の温度に相当する温度を検出する気温検出手段12とを備え、前記エアコン制御装置4と前記エンジンコントローラ5と前記トランスミッションコントローラ9とが情報通信を行う。
前記内燃機関2は、イグニッションスイッチやプッシュスタートスイッチ等の始動手段10の人為操作に基づいて、決められた方法で始動するように制御される。この制御は、前記エンジンコントローラ5単体あるいは、図示しないボディコントローラの併用によって行われる。始動判定はエンジン回転数が完爆判定回転数を超えた際に始動完了となり、前記内燃機関2の燃料噴射制御は始動時燃料噴射制御から通常運転時の始動後燃料噴射制御に切り替わる。始動後とは、この始動後燃料噴射制御を行っている状態を意味する。
【0011】
そして、前記空調装置3は、空気流通通路13を形成する通路形成体14を備えている。
この通路形成体14には、上流側となる一端で外気導入ダクト15が接続する外気導入口15Aと内気導入ダクト16が接続する内気導入口16Aとを切り替えるように内部側に揺動する内外気切替ダンパ17の基部アクチュエータ17Aと、下流側となる他端でデフロスタダクト18に接続するデフロスタ吹出し口18Aとベントダクト19に接続するベント吹出し口19Aとを切り替えるように内部側に揺動する吹出口切替ダンパ20の基部アクチュエータ20Aと、また、この他端でフットダクト21に接続するフット吹出し口21Aを開閉するように内部側に揺動する開閉ダンパ22の基部アクチュエータ22Aとが設けられている。
また、前記通路形成体14内には、内外気切替ダンパ17の直下流側で送風ファン23と、この送風ファン23よりも下流側でエバポレータ24と、このエバポレータ24よりも下流側でヒータコア25と、このヒータコア25への空気流量を調整するように空気流通通路13内で揺動するエアミックスドア26の回動軸27とが備えられている。
前記送風ファン23は、この送風ファン23を駆動するブロアファンモータ28を備えて、エバポレータ24により冷却された空気を車室内に送給するために前記エアコン制御装置4が接続されている。
【0012】
また、前記ロックアップ制御装置1において、前記始動手段10による前記内燃機関2の始動後、前記エアコン制御装置4は、暖房要求の有無を判定して前記エンジンコントローラ5に出力し、このエンジンコントローラ5は、前記気温検出手段12により検出された気温が寒冷状態を判定する判定気温α[℃]より低いことと、前記水温検出手段11により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]より低いことと、前記エアコン制御装置4から出力された暖房要求があることとがともに肯定された場合にロックアップ解除肯定要求を前記トランスミッションコントローラ9に出力し、このトランスミッションコントローラ9は、ロックアップ解除肯定要求の入力に基づいて前記ロックアップクラッチ7を解除状態に制御する。
詳述すれば、前記エンジンコントローラ5は、前記気温検出手段(外気温センサ、吸気温センサ)12により検出された始動時における気温(外気温、吸気温)が寒冷状態を判定する判定気温α[℃]より低いことと、前記水温検出手段11により検出された始動時における水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]より低いこととがともに肯定された場合に、ロックアップ解除肯定要求を前記トランスミッションコントローラ9に出力する。
一方、前記気温検出手段12により検出された気温が寒冷状態を判定する判定気温α[℃]より低いことと、前記水温検出手段11により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]より低いこととのうち、いずれかが否定された場合と、両方ともに否定された場合には、ロックアップ解除否定要求を前記トランスミッションコントローラ9に出力する。
また、ロックアップ解除要求=ONをロックアップ解除肯定要求とし、ロックアップ解除要求=OFFをロックアップ解除否定要求としている。
前記トランスミッションコントローラ9は、前記エンジンコントローラ5からのロックアップ解除肯定要求の入力に基づいて一義的に前記ロックアップクラッチ7を解除状態とする一方、エンジンコントローラ5からのロックアップ解除否定要求の入力があった場合は、単純にロックアップ係合とするのではなく、後述するロックアップマップに基づいてロックアップクラッチ7を各状態とするよう制御する。
このロックアップクラッチ7のロックアップ制御は、図示しないロックアップマップによって解除、係合、スリップの各状態を切り替え、燃費改善目的を果たせるように制御する。ロックアップマップは、変速機6が主に走行レンジを選択した状態である場合に用いられ、車速とスロットル開度(アクセル開度)に基づいて各状態が一義的に決められる。解除と係合とは車速についてヒステリシスを設けてある。
また、前記ロックアップクラッチ7は、ソレノイドバルブ(図示せず)によって制御される油圧に基づいて、解除、係合、スリップの各状態を切り替える。ソレノイドバルブは、前記トランスミッションコントローラ9から出力するデューティ、電流値によって制御する。
そして、前記内燃機関2は、図2に示す如く、前記ロックアップクラッチ7を介して前記変速機6が接続されているとともに、前記内燃機関2及び変速機6は、冷却水経路29によって前記ヒータコア25に連絡している。
また、前記内燃機関2に前記エンジンコントローラ5を接続して設け、このエンジンコントローラ5には、前記エアコン制御装置4や前記トランスミッションコントローラ9、前記始動手段10、前記内燃機関2の冷却水の温度を検出する前記水温検出手段11、前記気温検出手段12が夫々接続されている。
更に、前記エアコン制御装置4には、空調操作パネル30や前記エアミックスドア26の回動軸アクチュエータ27および前述した各基部アクチュエータ類が接続され、また、内部機能として、室内に吹き出される空気の目標温度を算出する吹出し温度算出手段31が備えられている。
追記すれば、前記ロックアップ制御装置1のハードウェア入出力システムは、図3に示す如く、前記エアコン制御装置4とこのエアコン制御装置4の接続する前記エンジンコントローラ5とによって<制御部>を構成し、この<制御部>の<インプット>側に位置する前記空調操作パネル30は前記エアコン制御装置4に接続される一方、外気温度又は吸気温度を検出する前記気温検出手段12や前記内燃機関2の冷却水の温度を検出する前記水温検出手段11、前記始動手段10が前記エンジンコントローラ5に接続され、このエンジンコントローラ5が<アウトプット>側に位置する前記トランスミッションコントローラ9に接続している。
なお、前記エアコン制御装置4は、乗員の空調操作パネル(A/Cパネル)30の操作を処理するコントローラを意味している。
また、エアコン制御装置4は、マニュアルA/Cシステム等の乗員のパネル操作状態を判断できないシステムの場合は未接続とする。
従って、寒冷時の冷機始動という限定した条件成立時であって乗員からの暖房要求がある時にのみ、
暖房性能アップを果たすことができる。
それ以外の条件では、ロックアップマップに従って経済性を確保できるため、総合的に暖房性能と経済性の両立を図ることができる。
また、ロックアップマップに基づく制御を禁止することができ、ロックアップ制御の係合解除を切り替える判定のための演算負荷を増大させないシンプルな制御とすることができる。
【0013】
また、前記空調装置3は、エアコン制御装置4の内部機能として、室内に吹き出される空気の目標温度を算出する吹出し温度算出手段31と、複数ある吹出し口18A、21Aの組合せが相互に異なる複数の吹出し口モードから選択されている吹出し口モードを特定する吹出し口モード判別手段32と、多段階に設定された送風の強さを検出する風量検出手段33とを備え、前記エアコン制御装置4は、暖房の要求の有無を算出した目標吹出し温度と吹出し口モードと風量とによって判断し、暖房要求があることを、目標吹出し温度が暖房判定温度より高いことと、吹出し口モードが吹出し口としてデフロスタ又はフットを含む特定の吹出し口モードであることと、風量が所定段以上であることとによって決定し、前記エンジンコントローラ5に出力する。
つまり、前記空調装置3は、前記エアコン制御装置4、乗員が操作可能空調操作パネル30、各部に設けた検出手段およびアクチュエータを備える。
前記エアコン制御装置4は、暖房の要求の有無を目標吹出し温度と吹出し口モードと風量とによって判断する。暖房要求があることを、目標吹出し温度が暖房判定温度より高いことと、吹出し口モードが吹出し口としてデフロスタ又はフットを含む(但しベントを除く)特定の吹出し口モードであることと、風量が所定段以上であることとによって決定する。いずれかの条件が外れれば暖房要求がないと決定する。決定した結果を前記エンジンコントローラ5に出力する。
前記ロックアップ制御装置1のデータ通信の流れに注目して表したソフトウェア入出力システムは、図4に示す如く、<インプット>側の空調用パラメータとして、吹出し温度算出手段31による目標吹出し温度や吹出し口モード判別手段32による吹出し口モード、風量検出手段33による風量が、<制御部>の一次制御機能としての前記エアコン制御装置4に入力され、このエアコン制御装置4がこれらの空調用パラメータに基づいて空調暖房要求判断制御を行い、一次制御機能の<アウトプット>側として、ECM向け送信データ:暖房 ON/OFF信号、つまり、暖房要求信号を出力する。
この暖房要求信号は、<インプット>側のロックアップ制御用パラメータとして、始動手段10による始動状態、水温検出手段11による水温、気温検出手段12による吸気温又は外気温とともに、<制御部>の二次制御機能としての前記エンジンコントローラ5に入力され、このエンジンコントローラ5にて空調要望ロックアップ解除フラグ算出制御を行い、二次制御機能の<アウトプット>側に位置する前記トランスミッションコントローラ9向け送信データ:空調要望ロックアップ解除要求 ON/OFF信号、つまり、ロックアップ制御信号を出力する。
【0014】
従って、暖房要求があることを、明らかに暖房要求が高いと判断できる状態のみを特定し、水温や気温の判断と合わせて判断することで、不要なロックアップ解除を行わなくすることができる。
また、空調装置3からは暖房要求の有無だけを出力し、エンジンコントローラ5がその有無判断をロックアップ解除肯定要求に反映させるようにすることと、トランスミッションコントローラ9は、このロックアップ解除肯定要求の入力に基づいて直接的にロックアップクラッチ7を解除状態に制御することによって、全体の演算負荷を極めて小さくすることができる。
【0015】
次に、図1の前記エンジンコントローラ5の制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0016】
始動手段の操作によりこのエンジンコントローラ5の制御用プログラムがスタート(101)すると、エンジンコントローラ5の判断領域に入り、車両の外気の温度に相当する温度を検出する気温検出手段12により検出された気温が寒冷状態を判定する判定気温α[℃]以下であるか否かの判断(102)に移行する。
この判断(102)がYESの場合には、前記水温検出手段11により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]以下であるか否かの判断(103)に移行する。
また、外気温が判定気温α[℃]以下であるか否かの判断(102)がNOの場合には、後述する空調要望ロックアップ解除要求=OFFの処理(106)に移行し、その後に前記エンジンコントローラ5の制御用プログラムのリターン(107)に移行する。
更に、前記水温検出手段11により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]以下であるか否かの判断(103)において、この判断(103)がYESの場合には、後述する前記エアコン制御装置4における図5の制御フローの判断処理結果に基づく、暖房要求があるか否かの判断(104)に移行する。
そして、前記水温検出手段11により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]以下であるか否かの判断(103)がNOの場合には、後述する空調要望ロックアップ解除要求=OFFの処理(106)に移行し、トランスミッションコントローラ9に向けて送信データ:空調要望ロックアップ解除要求OFF信号を出力して、その後に前記エンジンコントローラ5の制御用プログラムのリターン(107)に移行し、スタート(101)からの処理を繰り返す。
更にまた、暖房要求があるか否かの判断(104)において、この判断(104)がYESの場合には、空調要望ロックアップ解除要求=ONの処理(105)に移行し、トランスミッションコントローラ9に向けて送信データ:空調要望ロックアップ解除要求ON信号を出力して、その後に前記エンジンコントローラ5の制御用プログラムのリターン(107)に移行し、スタート(101)からの処理を繰り返す。
また、判断(104)がNOの場合には、空調要望ロックアップ解除要求=OFFの処理(106)に移行し、トランスミッションコントローラ9に向けて送信データ:空調要望ロックアップ解除要求OFF信号を出力して、その後に前記エンジンコントローラ5の制御用プログラムのリターン(107)に移行し、スタート(101)からの処理を繰り返す。
【0017】
前記エアコン制御装置4の条件判断領域における暖房要求に関する説明は、図5の前記エアコン制御装置4の制御用フローチャートに沿って説明する。
【0018】
始動手段の操作によりこのエアコン制御装置4の制御用プログラムがスタート(201)すると、前記空調装置3の室内に吹き出される空気の目標吹出し温度を前記吹出し温度算出手段31により算出した際に、目標吹出し温度が設定温度γ[℃]以上であるか否かの判断(202)に移行する。
そして、この判断(202)がYESの場合には、前記吹出し口モード判別手段32による吹出し口モードの特定が、
吹出し口(MODE)=DFR、D/F、FOOT
DFR :デフロスタ吹出し口18A
D/F :デフロスタ吹出し口18A+フット吹出し口21A
FOOT:フット吹出し口21A
であるか否かの判断(203)に移行する。
また、目標吹出し温度が設定温度γ[℃]以上であるか否かの判断(202)がNOの場合には、後述する
暖房要求=OFF
とする処理(206)に移行し、エンジンコントローラ5に向けて送信データ:暖房要求OFF信号を出力して、その後に前記エアコン制御装置4の制御用プログラムのリターン(207)に移行し、スタート(201)からの処理を繰り返す。
更に、前記吹出し口モード判別手段32による吹出し口モードの特定の判断(203)がYESの場合には、前記風量検出手段33による多段階に設定された送風の強さがσ[段]以上であるか否かの判断(204)に移行する。
そして、前記吹出し口モード判別手段32による吹出し口モードの特定の判断(203)がNOの場合には、後述する
暖房要求=OFF
とする処理(206)に移行し、エンジンコントローラ5に向けて送信データ:暖房要求OFF信号を出力して、その後に前記エアコン制御装置4の制御用プログラムがリターン(207)に移行し、スタート(201)からの処理を繰り返す。
更にまた、前記風量検出手段33による多段階に設定された送風の強さがσ[段]以上であるか否かの判断(204)において、この判断(204)がYESの場合には、
暖房要求=ON
とする処理(205)に移行し、エンジンコントローラ5に向けて送信データ:暖房要求ON信号を出力して、その後に前記エアコン制御装置4の制御用プログラムがリターン(207)に移行し、スタート(201)からの処理を繰り返す。
そして、前記風量検出手段33による多段階に設定された送風の強さがσ[段]以上であるか否かの判断(204)がNOの場合には、
暖房要求=OFF
とする処理(206)に移行し、エンジンコントローラ5に向けて送信データ:暖房要求OFF信号を出力して、その後に前記エアコン制御装置4の制御用プログラムがリターン(207)に移行し、スタート(201)からの処理を繰り返す。
【実施例2】
【0019】
図6はこの発明の第2実施例を示すものである。
この第2実施例において、上述第1実施例のものと同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
【0020】
この第2実施例の特徴とするところは、エンジンコントローラは、ロックアップ解除肯定要求からロックアップ解除否定要求に一旦切替を経験した場合、それ以降はロックアップ解除肯定要求への再切替を禁止するよう判定制御する点にある。
【0021】
すなわち、前記エンジンコントローラは、
ロックアップ解除要求 = ON → OFF
の判断が一度も成立していない場合に、ロックアップ解除肯定要求への切替を行う一方、
ロックアップ解除要求 = ON → OFF
の判断が一度成立した場合には、それ以降のロックアップ解除肯定要求への再切替を禁止するよう判定制御するものである。
従って、一度は暖房性能確保のためのロックアップ解除を実施可能としつつ、外気温度等の変動によって制御状態の切替が繰り返されたりすることを防止できる。
また、上述した第1実施例に比べて、暖房性能確保のためのロックアップ解除を実施する時間を短くすることによって、燃費向上を図ることができる。
【0022】
次に、図6の前記エンジンコントローラの制御用フローチャートに沿って作用を説明する。
【0023】
このエンジンコントローラの制御用プログラムがスタート(301)すると、エンジンコントローラの判断領域に入り、車両の外気の温度に相当する温度を検出する気温検出手段により検出された気温が寒冷状態を判定する判定気温α[℃]以下であるか否かの判断(302)に移行する。
この判断(302)がYESの場合には、前記水温検出手段により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]以下であるか否かの判断(303)に移行する。
また、外気温が判定気温α[℃]以下であるか否かの判断(302)がNOの場合には、後述する空調要望ロックアップ解除要求=OFFの処理(307)に移行し、その後に前記エンジンコントローラの制御用プログラムのリターン(308)に移行する。
更に、前記水温検出手段により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]以下であるか否かの判断(303)において、この判断(303)がYESの場合には、後述する前記エアコン制御装置4における図5の制御フローの判断処理結果に基づく、暖房要求があるか否かの判断(304)に移行する。
そして、前記水温検出手段により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温β[℃]以下であるか否かの判断(303)がNOの場合には、後述する空調要望ロックアップ解除要求=OFFの処理(307)に移行し、トランスミッションコントローラ9に向けて送信データ:空調要望ロックアップ解除要求OFF信号を出力して、その後に前記エンジンコントローラの制御用プログラムのリターン(308)に移行し、スタート(301)からの処理を繰り返す。
更にまた、前記エアコン制御装置の条件判断領域に入り、暖房要求があるか否かの判断(304)において、この判断(304)がYESの場合には、前記エンジンコントローラの判断領域に戻り、
ロックアップ解除要求 = ON → OFF
の判断が一度も成立していないか否かの判断(305)に移行する。
そして、暖房要求があるか否かの判断(304)がNOの場合には、後述する空調要望ロックアップ解除要求=OFFの処理(307)に移行し、トランスミッションコントローラ9に向けて送信データ:空調要望ロックアップ解除要求OFF信号を出力して、その後に前記エンジンコントローラの制御用プログラムのリターン(308)に移行し、スタート(301)からの処理を繰り返す。
また、前記エンジンコントローラの判断領域に戻り、
ロックアップ解除要求 = ON → OFF
の判断が一度も成立していないか否かの判断(305)において、この判断(305)がYESの場合には、ロックアップ解除肯定要求への切替、つまり、空調要望ロックアップ解除要求=ONの処理(306)に移行し、トランスミッションコントローラ9に向けて送信データ:空調要望ロックアップ解除要求ON信号を出力して、その後に前記エンジンコントローラの制御用プログラムのリターン(308)に移行し、スタート(301)からの処理を繰り返す。
また、
ロックアップ解除要求 = ON → OFF
の判断が一度も成立していないか否かの判断(305)がNOの場合には、空調要望ロックアップ解除要求=OFFの処理(307)に移行し、トランスミッションコントローラ9に向けて送信データ:空調要望ロックアップ解除要求OFF信号を出力して、その後に前記エンジンコントローラの制御用プログラムのリターン(308)に移行し、スタート(301)からの処理を繰り返す。
【0024】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0025】
例えば、エアコン制御装置4を空調操作パネル30に一体的に設けて暖房要求判定手段として構成しても良い。また、エアコン制御装置としては、空調操作パネル操作と空調装置(「HVAC」)との制御を行うことができるコントローラであれば、そのコントローラにて実施する特別構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 車両のロックアップ制御装置
2 内燃機関
3 空調装置(「HVAC」ともいう。)
4 エアコン制御装置(「エアコンECU」ともいう。)
5 エンジンコントローラ(「ECM」ともいう。)
6 変速機
7 ロックアップクラッチ
8 トルクコンバータ
9 トランスミッションコントローラ
10 始動手段(「イグニッションスイッチ」ともいう。)
11 水温検出手段
12 気温検出手段
29 冷却水経路
30 空調操作パネル
31 吹出し温度算出手段
32 吹出し口モード判別手段
33 風量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を冷却する冷却水の熱を利用して暖房可能とする空調装置と、この空調装置を制御するエアコン制御装置と、温度情報を含む各種検知情報に基づいて前記内燃機関を制御するエンジンコントローラと、前記内燃機関と変速機との間に設けられるロックアップクラッチ付トルクコンバータと、前記変速機およびロックアップクラッチの状態を制御するトランスミッションコントローラとを備えた車両のロックアップ制御装置であって、前記内燃機関の始動手段と、冷却水の温度を検出する水温検出手段と、車両の外気の温度に相当する温度を検出する気温検出手段とを備え、前記エアコン制御装置と前記エンジンコントローラと前記トランスミッションコントローラとが情報通信を行う車両のロックアップ制御装置において、前記始動手段による前記内燃機関の始動後、前記エアコン制御装置は、暖房要求の有無を判定して前記エンジンコントローラに出力し、このエンジンコントローラは、前記気温検出手段により検出された気温が寒冷状態を判定する判定気温より低いことと、前記水温検出手段により検出された水温が冷機状態を判定する判定水温より低いことと、前記エアコン制御装置から出力された暖房要求があることとがともに肯定された場合にロックアップ解除肯定要求を前記トランスミッションコントローラに出力し、このトランスミッションコントローラは、ロックアップ解除肯定要求の入力に基づいて前記ロックアップクラッチを解除状態に制御することを特徴とする車両のロックアップ制御装置。
【請求項2】
前記空調装置は、室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出し温度検出手段と、複数ある吹出し口の組合せが相互に異なる複数の吹出し口モードから選択されている吹出し口モードを特定する吹出し口モード判別手段と、多段階に設定された送風の強さを検出する風量検出手段とを備え、前記エアコン制御装置は、暖房の要求の有無を吹出し温度と吹出し口モードと風量とによって判断し、暖房要求があることを、吹出し温度が暖房判定温度より高いことと、吹出し口モードが吹出し口としてデフロスタ又はフットを含む特定の吹出し口モードであることと、風量が所定段以上であることとによって決定し、前記エンジンコントローラに出力することを特徴とする請求項1に記載の車両のロックアップ制御装置。
【請求項3】
前記エンジンコントローラは、ロックアップ解除肯定要求からロックアップ解除否定要求に一旦切替を経験した場合、それ以降はロックアップ解除肯定要求への再切替を禁止するよう判定制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のロックアップ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21583(P2012−21583A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159494(P2010−159494)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】