車両の下部車体構造
【課題】簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できる車両の下部車体構造を提供する。
【解決手段】車室の底部を形成するフロアパネル1と、このフロアパネル1に沿って車体の前後方向に延びるように設置された外側レール8等からなるシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シート2,3とを具備した車両において、上記フロアパネル1上には、車幅方向に延びるクロスメンバ13,14と、このクロスメンバ13,14の壁面に接続されて前後方向に延びるレールブラケット15,16とが設置され、このレールブラケット15,16に上記外側レール8等シートスライドレールが取り付けられた。
【解決手段】車室の底部を形成するフロアパネル1と、このフロアパネル1に沿って車体の前後方向に延びるように設置された外側レール8等からなるシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シート2,3とを具備した車両において、上記フロアパネル1上には、車幅方向に延びるクロスメンバ13,14と、このクロスメンバ13,14の壁面に接続されて前後方向に延びるレールブラケット15,16とが設置され、このレールブラケット15,16に上記外側レール8等シートスライドレールが取り付けられた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シートとを具備した車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のシートスライドレールを有する車両において、このシートスライドレールに沿って第1後部座席および第2後部座席等からなる複数の乗員用シートをスライド自在に支持することにより、この乗員用シートの配列パターンを多様に変化させ得るように構成された自動車のシートスライド装置が知られている。
【特許文献1】特開2003−146120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、車室の後部に広い空間部を設けて乗員用シートを多様なパターンに配列し得るように構成した場合には、上記シートスライドレールより乗員用シートを安定して支持できるように構成するとともに、車体剛性を充分に確保して走行安定性を向上させるために、剛性の高い車体フレームをフロアパネルに設ける等により強固な補強を行う必要があり、車体の重量が増大するとともに、構造が複雑になる等の問題がある。特に、最後列の乗員用シートと車体の後面開口部との間における空間部が短い場合、または車高が高く設定された車両では、車体剛性を充分に確保することが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できる車両の下部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シートとを具備した車両において、上記フロアパネル上には、車幅方向に延びるクロスメンバと、このクロスメンバの壁面に接続されて車体の前後方向に延びるレールブラケットとが設置され、このレールブラケットに上記シートスライドレールが取り付けられたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の下部車体構造において、レールブラケットの後端部がクロスメンバの前壁面に接合されたものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、レールブラケットの基端部側の幅寸法が先端部側に比べて大きな値に設定されたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、シートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、シートスライドレールの前後方向中央部に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、上記シートスライドレールが、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対のロングレールを有し、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートが上記ロングレールに沿ってスライド自在に支持されたものである。
【0011】
請求項7に係る発明は、上記請求項6に記載の車両の下部車体構造において、前後に配列された複数列の乗員用シートがそれぞれ上記左右一対のロングレールに沿ってスライド自在に支持されたものである。
【0012】
請求項8に係る発明は、上記請求項6に記載の車両の下部車体構造において、上記左右一対のロングレールの間に、左右一対のショートレールが配設されるとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートが配設され、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートが、それぞれ相隣接するロングレールおよびショートレールに沿って個別にスライド自在に支持されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、レールブラケットの基端部をクロスメンバの壁面に接続することにより、車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部を設け、上記レールブラケットを介してクロスメンバにシートスライドレールを接続するように構成したため、所定の剛性および長さを有する上記シートスライドレールを安定した取付状態に保持することができ、これによって剛性の高い車体フレーム等からなる別体の補強部材を必要とすることなく、上記シートスライドレールを利用して車体を効果的に補強することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、レールブラケットの後端部をクロスメンバの前壁面に接合して車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部をクロスメンバの前方側に配設するように構成したため、上記シートスライドレールが後上がりの傾斜状態で設置されている場合に、レールブラケットの上下寸法をシートスライドレールの傾斜角度に対応させて後拡がりに形成することにより、クロスメンバの前壁面に接合されるレールブラケットの後端部の上下寸法をその前方部に比べて大きな値に設定し、簡単な構成で上記クロスメンバに対するレールブラケットの取付強度を充分に維持できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、レールブラケットを後拡がりの台形状に形成することにより、レールブラケットの基端部側の幅寸法を先端部側に比べて大きな値に設定したため、レールブラケットを大型化することなく、上記クロスメンバに対してレールブラケットを強固に取り付けることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、シートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたクロスメンバの壁面に上記レールブラケットの基端部を接続するように構成したため、このレールブラケットによりシートスライドレールの前端部近傍部位を安定して支持することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、シートスライドレールの中央部に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部を接続するように構成したため、このレールブラケットにより上記シートスライドレールの中央部を安定して支持することができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対のロングからなるシートスライドレールを設置するとともに、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートを上記ロングレールに沿ってスライド自在に支持したため、上記ベンチシートタイプの乗員用シートを車体の前後方向へ広範囲に亘って移動させることができるとともに、上記ロングレールにより車体の前後方向における剛性を効果的に向上させることができる。
【0019】
請求項7に係る発明では、前後に配列された中列の乗員用シートおよび後列の乗員用シート等からなる複数列の乗員用シートを、それぞれ上記左右一対のロングレールからなるシートスライドレールに沿ってスライド自在に支持したため、簡単な構成で上記複数の乗員用シートを車体の前後方向にスライド変位させることにより、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、上記ロングレールを有効に利用して車体の広範囲を効果的に補強できるという利点がある。
【0020】
請求項8に係る発明では、左右一対のロングレールの間に、左右一対のショートレールを配設するとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートを配設したため、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートを、それぞれ上記ロングレールおよびショートレールに沿って個別にスライド変位させることにより、さらにシートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1および図2は、本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示している。この車両の車室底部を形成するフロアパネル1上には、互いに独立した左側シート2aおよび右側シート2bからなる中列の乗員用シート2が配設されているとともに、その後方側には、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたいわゆるベンチシートタイプからなる後列の乗員用シート3が配設されている。上記中列の乗員用シートト2は、後述するように運転席シートおよび助手席シートからなる前列シートの後方側に配設されている。
【0022】
また、上記フロアパネル1の下面には、その左右両側辺部に沿って前後方向に延びるようにリヤサイドフレームからなる車体フレーム4が設置されている。図3は、上記乗員用シート2,3を取り外した状態におけるフロアパネル1を上側から見たものである。この図3に示すように、後部車体の側方部には、車室内側に膨出するリヤホイールハウス5が設けられるとともに、その前方側には、車体の前後方向に延びるサイドシル6が設置されている。また、上記フロアパネル1の後方部には、図略のスペアタイヤまたはバッテリ等が収容されるスペアタイヤパン7が下方に向けて凹入するように形成されている。
【0023】
上記フロアパネル1上には、左右一対の外側レール(ロングレール)8,8と、この外側レール8,8の間において前後方向に延びる左右一対の内側レール9,9(ショートレール)とからなるシートスライドレールが設置されている。上記外側レール8および内側レール9は、図4および図5に示すように、上面が開口した所定の強度を有する断面C字状の溝型鋼等からなり、これらの外側レール8および内側レール9に沿って上記乗員用シート2,3が、それぞれ前後方向の所定範囲に亘りスライド可能に支持されている。
【0024】
上記外側レール8は、前列シートの設置部に近接した位置から車体の後端部、具体的にはリヤバンパー10の設置部まで延設され、上記外側レール8の後端部に設けられた取付プレート8aが、リヤバンパー10を構成するバンパーレインフォースメント11の上方部に取付ボルトを介して固定されている(図1および図3参照)。一方、上記内側レール9は、前列シートの設置部に近接した位置からスペアタイヤパン7の設置部近傍まで延設され、その全長が上記外側レール8よりも短く設定されている。
【0025】
また、上記外側レール8および内側レール9は、後上がりに傾斜した状態で設置されることにより、略水平に設置された上記フロアパネル1との離間距離が、後方に至るに従い大きくなるように設定されている。そして、中列の乗員用シート2を構成する左側シート2aが、車体左側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持されるとともに、右側シート2bが、車体右側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持され、かつ後列の乗員用シート3が、左右一対の外側レール8,8に沿ってスライド可能に支持されている。
【0026】
上記車体フレーム4は、図4に示すように、上面が開口した断面コ字状のフレーム本体4aと、その内側辺部および外側辺部の上端に突設された上部フランジ4b,4cとを有し、上記外側レール8の設置部に対応する側方位置でフロアパネル1の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置されている。また、車体フレーム4の後端部は、図1に示すように、上記バンパーレインフォースメント11の下方部に接合されることにより、上記外側レール8の後端部よりも所定距離Sだけ下方側に位置するように配設されている。
【0027】
上記スペアタイヤパン7の左右両側方部には、このスペアタイヤパン7の設置部に近接した位置において、上記リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、フロアパネル1の車室内側面(上面)とを接続する補強ガセット部材12が設けられ、この補強ガセット部材12に上記外側レール8が取り付けられている。上記補強ガセット部材12は、図5および図6に示すように、リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aに接合される上部フランジ17と、その下端部から車体の内方側に延びる上壁部18と、その車内側部位に設けられたレール設置用の段部19と、その内側端部から下方に延びる側壁部20と、その下端部から車内側に向けて突設された内部フランジ21と、上記上壁部18および側壁部20の前面および後面を覆うように設置された前後の縦壁部22と、この縦壁部22の下端部に突設された下部フランジ23とを有している。
【0028】
そして、上記補強ガセット部材12の上部フランジ17が、取付ボルト24を介してリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aに固定されるとともに、上記内部フランジ21が、取付ボルト25を介してスペアタイヤパン7の設置部に近接したフロアパネル1の部位および車体フレーム4の上部フランジ4bに固定され、かつ上記下部フランジ23が、取付ボルト26を介してフロアパネル1の外側端部に固定されることにより、リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、フロアパネル1の車室内側面(上面)とが上記補強ガセット部材12を介して接続されている。また、上記外側レール8が、補強ガセット部材12の段部19上に載置されてボルト止めまたは溶接等の手段で補強ガセット部材12に固定されることにより、後上がりに傾斜した状態で設置された上記外側レール8と、略水平に設置された上記フロアパネル1との間に、補強ガセット部材12が配設されるようになっている。
【0029】
上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位と、外側レール8および内側レール9の前端部から所定距離だけ後方側に位置する部位(中央部)との下方には、図1および図3に示すように、フロアパネル1の車室内側面(上面)に沿って車幅方向に延びるNo.3クロスメンバ、つまり車体の前方側から数えて3番目のクロスメンバ13およびNo.4クロスメンバ、つまり車体の前方側から数えて4番目のクロスメンバ14が設置され、このNo.3,No.4クロスメンバ13,14の左右両端部がサイドシル6または車体側壁部に接合されている。また、上記No.3,No.4クロスメンバ13,14の前方側には、レールブラケット15,16がそれぞれ設置され、このレールブラケット15,16を介して外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位と中央部とが上記No.3,No.4クロスメンバ13,14にそれぞれ接続されている。
【0030】
上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位をNo.3クロスメンバ13に接続するレールブラケット15は、図3および図7に示すように、平面から見て後端部が後拡がりの台形状に形成された上壁部28と、その左右両側辺部から下方に延びる側壁部29と、その後端部に設けられた後部フランジ30と、上記側壁部29の下端部に設けられた下部フランジ31と、左右側壁部29の前面を覆うように設置された前壁部32とを有し、上記レールブラケット15の上壁部28に外側レール8および内側レール9がボトル止めまたは溶接等の手段で固定されるようになっている。
【0031】
そして、上記レールブラケット15の後部フランジ30が、No.3クロスメンバ13の前壁面に取付ボルト33を介して固定されるとともに、上記下部フランジ31の前方部が取付ボルト34を介してフロアパネル1の上面に固定されることにより、外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位をNo.3クロスメンバ13に接続する所定長さのレールブラケット15が、上記No.3クロスメンバ13の前方側に配設されるようになっている。なお、上記外側レール8および内側レール9の中央部をNo.4クロスメンバ13に接続するレールブラケット16は、上記レールブラケット15と略同様の構成を有しているため、その説明を省略する。
【0032】
図8に示すように、上記スペアタイヤパン7の前端部に近接したフロアパネル1の部位には、その上面に取付ボルト35を介して固定される底壁部36と前後一対の縦壁部37とを有する支持ブラケット38が設置され、この支持ブラケット38により、上記内側レール9の後端部近傍部位が支持されるように構成されている。上記スペアタイヤパン7の前端部に近接したフロアパネル1の下面側には、図9に示すように、車幅方向に延びる下面側クロスメンバ39が設置されている。
【0033】
上記下面側クロスメンバ39は、スペアタイヤパン7の前辺周縁部を含む車幅方向の所定範囲に沿って配設されるタイヤパン対応部39aと、このタイヤパン対応部39aの左右両端部から車幅方向外側に延び側方延出部39bとを有し、その左右両端部が車体フレーム4の車室内側壁面に接合されている。また、上記下面側クロスメンバ39の前方側であって内側レール9,9の後端部が取り付けられる部位には、補強プレート40が設置され、この補強プレート40に上記支持ブラケット38が取付ボルト35により固定されている。また、上記補強プレート40の後辺部下面には、下面側クロスメンバ39の前部フランジ39cが接合されている。
【0034】
上記のように車室の底部を形成するフロアパネル1と、このフロアパネル1に沿って車体の前後方向に延びるように設置されたロングレールからなる外側レール8と、ショートレールからなる内側レール9とを具備した車両において、この外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを後上がりの傾斜状態で設置するとともに、外側レール8および内側レール9に沿って乗員用シート2,3をスライド可能に支持した構成によれば、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、快適な車室内の居住空間が得られるという利点がある。
【0035】
例えば、図10および図11に示すように、車室の前面およびルーフ部の前部に、フロントガラス42およびルーフガラス43が連続して設置されたいわゆるパノラマルーフタイプの車両において、上記のように外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを後上がりの傾斜状態で設置した場合には、運転席および助手席からなる最前列の乗員用シート41の設置高さH1に比べ、その後方側に位置する中列の乗員用シート2および後列の乗員用シート3の設置高さH2およびH3を順次大きく設定することにより、中列および後列の乗員用シート2,3に着座した乗員の視界、つまり上記フロントガラス42およびルーフガラス43等を介して外部を視認する際の視界を充分に確保することができる。
【0036】
また、上記中列の乗員用シート2を最前列の乗員用シート41に近接した位置までスライド変位させるとともに、後列の乗員用シート3を最後部までスライド変位させることにより、後列の乗員用シート3に着座した乗員の前方部に広い空間を確保することができる。さらに、中列の乗員用シート2に着座した乗員の前方部に広い空間を確保するために、中列および後列の乗員用シート2,3をそれぞれ後方にスライド変位させる等により、シートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0037】
そして、フロアパネル1の左右両側辺部に沿って車体の前後方向に延びるように外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールが設置されるとともに、この外側レール8および内側レール9に沿って乗員用シート2,3がスライド可能に支持された車両において、上記フロアパネル1上には、車幅方向に延びるクロスメンバ13,14と、このクロスメンバ13,14の壁面に接続されて前後方向に延びるレールブラケット15,16とを設置し、このレールブラケット15,16に上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを取り付けたため、このシートスライドレールを車体の補強部材として利用することにより、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0038】
すなわち、上記レールブラケット15,16の後端部をクロスメンバ13,14の前壁面に接続することにより、車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部を設け、上記レールブラケット15,16を介して上記クロスメンバ13,14に外側レール8および内側レール9を接続するように構成したため、所定の剛性および長さを有する外側レール8および内側レール9を安定した取付状態に保持することができ、これによって剛性の高い車体フレーム等からなる別体の補強部材を必要とすることなく、上記外側レール8を利用して車体を効果的に補強することができる。
【0039】
したがって、車体重量や製造コストの増大等を防止しつつ、車体の剛性を効果的に向上させることができ、車両の衝突時に入力された大きな衝撃荷重を、上記外側レール8および内側レール9とクロスメンバ13,14とを介して車体の各部に伝達して分散支持することにより、車体が大きく変形するのを効果的に防止できるとともに、車両の走行時にリヤサスペンション等から入力される荷重に応じて車体が変形することに起因して走行安定性が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。特に、上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを、上記レールブラケット15,16およびクロスメンバ13,14の両方に取り付けるように構成した場合には、これら各部材を大型化することなくレール支持部の前後寸法を充分に確保することができるため、上記シートスライドレールの取付状態を、さらに安定させることができる。
【0040】
なお、上記レールブラケット15,16の前端部をクロスメンバ13,14の後壁面に接続することにより、車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部をクロスメンバ13,14の後方側に設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、車両の後突時に上記外側レール8等に入力された衝撃荷重が、上記レールブラケット15,16を介してクロスメンバ13,14にスムーズに伝達されるため、上記衝撃荷重を効果的に分散させて支持できるという利点がある。
【0041】
これに対して上記実施形態に示すように、レールブラケット15,16の後端部をクロスメンバ13,14の前壁面に接合して車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部をクロスメンバ13,14の後方側に設けた構造とすれば、図1に示すように、上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールが後上がりの傾斜状態で設置されている場合に、上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールの支持剛性を効果的に増大させることができる。すなわち、上記レールブラケット15,16の上下寸法をシートスライドレールの傾斜角度に対応させて後拡がりに形成することにより、クロスメンバ13,14の前壁面に接合されるレールブラケット15,16の後端部の上下寸法をその前方部に比べて大きな値に設定して、上記クロスメンバ13,14に対するレールブラケット15,16の取付強度を充分に維持し、このレールブラケット15,16に上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを安定した取付状態に保持できるという利点がある。
【0042】
また、上記実施形態では、図7等に示すように、レールブラケット15,16の上壁部28を後拡がりの台形状に形成することにより、レールブラケット15,16の基端部側の幅寸法を先端部側に比べて大きな値に設定したため、レールブラケット15,16を大型化することなく、上記クロスメンバ13,14に対するレールブラケット15,16の取付強度を充分に維持することができる。
【0043】
なお、図12に示すように、上壁部28の幅寸法がその全長に亘り、外側レール8および内側レール9と略同一に設定されたレールブラケット15,16を介して、外側レール8および内側レール9を、クロスメンバ13,14の前壁面または後壁面に接続するように構成してもよい。このように構成した場合には、レールブラケット15,16が外側レール8および内側レール9の左右両側に突出することに起因して、乗員用シート2,3に着座した乗員の足元スペースが狭められるのを防止できるという利点がある。
【0044】
また、上記実施形態に示すように、外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたNo.3クロスメンバ13の壁面にレールブラケット15の基端部を接続するように構成した場合には、このレールブラケット15を介して上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位を安定して支持することができる。さらに、上記実施形態に示すように、外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールの中央部に設置されたNo.4クロスメンバ14の壁面にレールブラケット16の基端部を接続するように構成した場合には、このレールブラケット16を介して上記外側レール8および内側レール9の中央部を安定して支持することができる。
【0045】
上記実施形態では、フロアパネル1の左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対の外側レール8(ロングレール)からなるシートスライドレールを設置するとともに、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シート3を上記外側レール8に沿ってスライド自在に支持したため、上記ベンチシートタイプの乗員用シート3を車体の前後方向へ広範囲に亘って移動させることができるとともに、上記外側レール8により車体の前後方向における剛性を効果的に向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、前後に配列された中列の乗員用シート2および後列の乗員用シート3等からなる複数列の乗員用シートを、それぞれ上記左右一対の外側レール8(ロングレール)に沿ってスライド自在に支持したため、簡単な構成で上記複数の乗員用シート2,3を車体の前後方向にスライド変位させることにより、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、上記外側レール8を有効に利用して車体の広範囲を効果的に補強できるという利点がある。
【0047】
なお、上記後列の乗員用シート3と同様に中列の乗員用シートをベンチシートタイプに構成することも可能であるが、上記実施形態に示すように、左右一対の外側レール8からなるロングレールの間に、左右一対の内側レール9からなるショートレールを配設するとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シート3の前方側に、左右に分割された左側シート2aおよび右側シート2bからなるセパレートタイプの乗員用シート2を配設し、上記相隣接するロングレールおよびショートレールに沿って、セパレートタイプの乗員用シート2を構成する上記左側シート2aおよび右側シート2bを、それぞれ個別にスライド自在に支持した場合には、左側シート2aおよび右側シート2bの前後位置を変化させる等により、さらにシートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0048】
また、上記セパレートタイプの乗員用シート2を構成する左側シート2aおよび右側シート2bと、外側レール8および内側レール9との間に、上記左側シート2aおよび右側シート2bを、それぞれ車幅方向にスライド可能に支持する横スライドレールを設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、上記横スライドレールに沿って左側シート2aおよび右側シート2bを車幅方向にスライド変位させることにより、必要に応じて左右両シート2a,2bの設置間隔を変化させることができるため、さらにシートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0049】
また、上記実施形態に示すように、上記外側レール8が取り付けられる補強ガセット部材12を、所定の剛性を有するリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aとフロアパネル1の上面とを接続するように取り付けた場合には、上記外側レール8の中央後方部に支持剛性を充分に確保することができる。したがって、上記外側レール8を利用して車体の剛性を効果的に向上させることができ、車体重量や製造コストの増大等を防止しつつ、車両の後突時に車体後部に入力された大きな衝撃荷重を、上記外側レール8を介して車体の各部に伝達して分散支持することにより、車体が大きく変形するのを効果的に防止できるとともに、車両の走行時にリヤサスペンション等から入力される荷重に応じて車体が変形することに起因して走行安定性が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0050】
特に、上記実施形態に示すように、フロアパネル1に形成された下方に向けて凹入するスペアタイヤパン7の設置部に近接したフロアパネル1の部位に上記補強ガセット部材12を配設し、フロアパネル1の車幅方向側方部から上方に延びるように設置された上記リヤホイールハウス5の設置部と、上記スペアタイヤパン7の設置部近傍とを上記補強ガセット部材12で接続するように構成した場合には、上記リヤホイールハウス5およびスペアタイヤパン7の両方をフロアパネル1の補強部材として効果的に利用することができるため、車両の走行時に、フロアパネル1に反りが発生すること等に起因して走行安定性が損なわれるのを、より効果的に防止できるという利点がある。
【0051】
また、上記実施形態に示すように、後方に至るに従いフロアパネル1からの離間距離が大きくなるように後上がりに傾斜した外側レール8からなるシートスライドレールと、フロアパネル1との離間部に上記補強ガセット部材12を配設した場合には、フロアパネル1を略水平に設置しつつ、図11に示すように、車室内の後方側に位置する乗員用シート2,3を前方側の乗員用シート41,2よりも上方に位置させることができるため、上記フロントガラス42およびルーフガラス43等を介した乗員の視界を効果的に確保できるという利点がある。しかも、上記のようにフロアパネル1と外側レール8とが離間している場合においても、上記補強ガセット部材12により外側レール8の支持剛性を充分に確保することができるため、この外側レール8により上記乗員用シート2,3を安定して支持できるという利点がある。
【0052】
さらに、上記実施形態に示すように、外側レール8をリヤバンパー10の設置部まで延出した場合には、車両の後突時等に、上記リヤバンパー10に入力された衝撃荷重を上記外側レール8により直接支持することができるため、車体の変形を効果的に防止できるという利点がある。特に、上記実施形態に示すように、外側レール8の後端部を、リヤバンパー10を構成するバンパーレインフォースメント11の上部に固定するとともに、上記外側レール8の設置部に対応する位置においてフロアパネル1の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置された車体フレーム4の後端部を、上記バンパーレインフォースメント11の下方部に接合することにより、上記外側レール8の後端部よりも所定距離Sだけ下方側に位置するように設置した場合には、上記外側レール8および車体フレーム4により車体の前後方向に延びる立体的な補強構造が構成されるため、車両の後突時等に入力された衝撃荷重を、より安定して支持できるという利点がある。
【0053】
なお、上記実施形態では、図5等に示すように、スペアタイヤパン7の設置部から所定距離だけ離間した位置に上記補強ガセット部材12を配設した例について説明したが、図13に示すように、補強ガセット部材12の内部フランジ21を、スペアタイヤパン7の縦壁部7bに沿わせるように設置して取付ボルト25で固定することにより、車体側壁部から車室内側に膨出するリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、スペアタイヤパン7の縦壁部7bとを補強ガセット部材12で直接接続するように構成してもよい。このように車室内側縦壁部5aと、スペアタイヤパン7の縦壁部7bとを補強ガセット部材12により直接接続するように構成した場合には、さらに効果的に車体を補強できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】車室内の構造を示す平面図である。
【図3】フロアパネルの上部構造を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】補強ガセット部材の構成を示す斜視図である。
【図7】レールブラケットの構成を示す斜視図である。
【図8】支持ブラケットの構成を示す側面断面図である。
【図9】フロアパネルの底面図である。
【図10】本発明に係る下部車体構造を有する車両の外観図である。
【図11】本発明に係る下部車体構造を有する車両の説明図である。
【図12】レールブラケットの他の例を示す斜視図である。
【図13】補強ガセット部材の他の例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 フロアパネル
2,3 乗員用シート
8 外側レール(ロングレール)
9 内側レール(ショートレール)
13,14 クロスメンバ
15,16 レールブラケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シートとを具備した車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置された左右一対のシートスライドレールを有する車両において、このシートスライドレールに沿って第1後部座席および第2後部座席等からなる複数の乗員用シートをスライド自在に支持することにより、この乗員用シートの配列パターンを多様に変化させ得るように構成された自動車のシートスライド装置が知られている。
【特許文献1】特開2003−146120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているように、車室の後部に広い空間部を設けて乗員用シートを多様なパターンに配列し得るように構成した場合には、上記シートスライドレールより乗員用シートを安定して支持できるように構成するとともに、車体剛性を充分に確保して走行安定性を向上させるために、剛性の高い車体フレームをフロアパネルに設ける等により強固な補強を行う必要があり、車体の重量が増大するとともに、構造が複雑になる等の問題がある。特に、最後列の乗員用シートと車体の後面開口部との間における空間部が短い場合、または車高が高く設定された車両では、車体剛性を充分に確保することが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できる車両の下部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シートとを具備した車両において、上記フロアパネル上には、車幅方向に延びるクロスメンバと、このクロスメンバの壁面に接続されて車体の前後方向に延びるレールブラケットとが設置され、このレールブラケットに上記シートスライドレールが取り付けられたものである。
【0006】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の下部車体構造において、レールブラケットの後端部がクロスメンバの前壁面に接合されたものである。
【0007】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、レールブラケットの基端部側の幅寸法が先端部側に比べて大きな値に設定されたものである。
【0008】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、シートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたものである。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、シートスライドレールの前後方向中央部に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたものである。
【0010】
請求項6に係る発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造において、上記シートスライドレールが、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対のロングレールを有し、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートが上記ロングレールに沿ってスライド自在に支持されたものである。
【0011】
請求項7に係る発明は、上記請求項6に記載の車両の下部車体構造において、前後に配列された複数列の乗員用シートがそれぞれ上記左右一対のロングレールに沿ってスライド自在に支持されたものである。
【0012】
請求項8に係る発明は、上記請求項6に記載の車両の下部車体構造において、上記左右一対のロングレールの間に、左右一対のショートレールが配設されるとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートが配設され、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートが、それぞれ相隣接するロングレールおよびショートレールに沿って個別にスライド自在に支持されたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、レールブラケットの基端部をクロスメンバの壁面に接続することにより、車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部を設け、上記レールブラケットを介してクロスメンバにシートスライドレールを接続するように構成したため、所定の剛性および長さを有する上記シートスライドレールを安定した取付状態に保持することができ、これによって剛性の高い車体フレーム等からなる別体の補強部材を必要とすることなく、上記シートスライドレールを利用して車体を効果的に補強することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、レールブラケットの後端部をクロスメンバの前壁面に接合して車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部をクロスメンバの前方側に配設するように構成したため、上記シートスライドレールが後上がりの傾斜状態で設置されている場合に、レールブラケットの上下寸法をシートスライドレールの傾斜角度に対応させて後拡がりに形成することにより、クロスメンバの前壁面に接合されるレールブラケットの後端部の上下寸法をその前方部に比べて大きな値に設定し、簡単な構成で上記クロスメンバに対するレールブラケットの取付強度を充分に維持できるという利点がある。
【0015】
請求項3に係る発明では、レールブラケットを後拡がりの台形状に形成することにより、レールブラケットの基端部側の幅寸法を先端部側に比べて大きな値に設定したため、レールブラケットを大型化することなく、上記クロスメンバに対してレールブラケットを強固に取り付けることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、シートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたクロスメンバの壁面に上記レールブラケットの基端部を接続するように構成したため、このレールブラケットによりシートスライドレールの前端部近傍部位を安定して支持することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、シートスライドレールの中央部に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部を接続するように構成したため、このレールブラケットにより上記シートスライドレールの中央部を安定して支持することができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対のロングからなるシートスライドレールを設置するとともに、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートを上記ロングレールに沿ってスライド自在に支持したため、上記ベンチシートタイプの乗員用シートを車体の前後方向へ広範囲に亘って移動させることができるとともに、上記ロングレールにより車体の前後方向における剛性を効果的に向上させることができる。
【0019】
請求項7に係る発明では、前後に配列された中列の乗員用シートおよび後列の乗員用シート等からなる複数列の乗員用シートを、それぞれ上記左右一対のロングレールからなるシートスライドレールに沿ってスライド自在に支持したため、簡単な構成で上記複数の乗員用シートを車体の前後方向にスライド変位させることにより、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、上記ロングレールを有効に利用して車体の広範囲を効果的に補強できるという利点がある。
【0020】
請求項8に係る発明では、左右一対のロングレールの間に、左右一対のショートレールを配設するとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートを配設したため、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートを、それぞれ上記ロングレールおよびショートレールに沿って個別にスライド変位させることにより、さらにシートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1および図2は、本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示している。この車両の車室底部を形成するフロアパネル1上には、互いに独立した左側シート2aおよび右側シート2bからなる中列の乗員用シート2が配設されているとともに、その後方側には、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたいわゆるベンチシートタイプからなる後列の乗員用シート3が配設されている。上記中列の乗員用シートト2は、後述するように運転席シートおよび助手席シートからなる前列シートの後方側に配設されている。
【0022】
また、上記フロアパネル1の下面には、その左右両側辺部に沿って前後方向に延びるようにリヤサイドフレームからなる車体フレーム4が設置されている。図3は、上記乗員用シート2,3を取り外した状態におけるフロアパネル1を上側から見たものである。この図3に示すように、後部車体の側方部には、車室内側に膨出するリヤホイールハウス5が設けられるとともに、その前方側には、車体の前後方向に延びるサイドシル6が設置されている。また、上記フロアパネル1の後方部には、図略のスペアタイヤまたはバッテリ等が収容されるスペアタイヤパン7が下方に向けて凹入するように形成されている。
【0023】
上記フロアパネル1上には、左右一対の外側レール(ロングレール)8,8と、この外側レール8,8の間において前後方向に延びる左右一対の内側レール9,9(ショートレール)とからなるシートスライドレールが設置されている。上記外側レール8および内側レール9は、図4および図5に示すように、上面が開口した所定の強度を有する断面C字状の溝型鋼等からなり、これらの外側レール8および内側レール9に沿って上記乗員用シート2,3が、それぞれ前後方向の所定範囲に亘りスライド可能に支持されている。
【0024】
上記外側レール8は、前列シートの設置部に近接した位置から車体の後端部、具体的にはリヤバンパー10の設置部まで延設され、上記外側レール8の後端部に設けられた取付プレート8aが、リヤバンパー10を構成するバンパーレインフォースメント11の上方部に取付ボルトを介して固定されている(図1および図3参照)。一方、上記内側レール9は、前列シートの設置部に近接した位置からスペアタイヤパン7の設置部近傍まで延設され、その全長が上記外側レール8よりも短く設定されている。
【0025】
また、上記外側レール8および内側レール9は、後上がりに傾斜した状態で設置されることにより、略水平に設置された上記フロアパネル1との離間距離が、後方に至るに従い大きくなるように設定されている。そして、中列の乗員用シート2を構成する左側シート2aが、車体左側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持されるとともに、右側シート2bが、車体右側の外側レール8およびこれに隣接した内側レール9に沿ってスライド可能に支持され、かつ後列の乗員用シート3が、左右一対の外側レール8,8に沿ってスライド可能に支持されている。
【0026】
上記車体フレーム4は、図4に示すように、上面が開口した断面コ字状のフレーム本体4aと、その内側辺部および外側辺部の上端に突設された上部フランジ4b,4cとを有し、上記外側レール8の設置部に対応する側方位置でフロアパネル1の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置されている。また、車体フレーム4の後端部は、図1に示すように、上記バンパーレインフォースメント11の下方部に接合されることにより、上記外側レール8の後端部よりも所定距離Sだけ下方側に位置するように配設されている。
【0027】
上記スペアタイヤパン7の左右両側方部には、このスペアタイヤパン7の設置部に近接した位置において、上記リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、フロアパネル1の車室内側面(上面)とを接続する補強ガセット部材12が設けられ、この補強ガセット部材12に上記外側レール8が取り付けられている。上記補強ガセット部材12は、図5および図6に示すように、リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aに接合される上部フランジ17と、その下端部から車体の内方側に延びる上壁部18と、その車内側部位に設けられたレール設置用の段部19と、その内側端部から下方に延びる側壁部20と、その下端部から車内側に向けて突設された内部フランジ21と、上記上壁部18および側壁部20の前面および後面を覆うように設置された前後の縦壁部22と、この縦壁部22の下端部に突設された下部フランジ23とを有している。
【0028】
そして、上記補強ガセット部材12の上部フランジ17が、取付ボルト24を介してリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aに固定されるとともに、上記内部フランジ21が、取付ボルト25を介してスペアタイヤパン7の設置部に近接したフロアパネル1の部位および車体フレーム4の上部フランジ4bに固定され、かつ上記下部フランジ23が、取付ボルト26を介してフロアパネル1の外側端部に固定されることにより、リヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、フロアパネル1の車室内側面(上面)とが上記補強ガセット部材12を介して接続されている。また、上記外側レール8が、補強ガセット部材12の段部19上に載置されてボルト止めまたは溶接等の手段で補強ガセット部材12に固定されることにより、後上がりに傾斜した状態で設置された上記外側レール8と、略水平に設置された上記フロアパネル1との間に、補強ガセット部材12が配設されるようになっている。
【0029】
上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位と、外側レール8および内側レール9の前端部から所定距離だけ後方側に位置する部位(中央部)との下方には、図1および図3に示すように、フロアパネル1の車室内側面(上面)に沿って車幅方向に延びるNo.3クロスメンバ、つまり車体の前方側から数えて3番目のクロスメンバ13およびNo.4クロスメンバ、つまり車体の前方側から数えて4番目のクロスメンバ14が設置され、このNo.3,No.4クロスメンバ13,14の左右両端部がサイドシル6または車体側壁部に接合されている。また、上記No.3,No.4クロスメンバ13,14の前方側には、レールブラケット15,16がそれぞれ設置され、このレールブラケット15,16を介して外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位と中央部とが上記No.3,No.4クロスメンバ13,14にそれぞれ接続されている。
【0030】
上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位をNo.3クロスメンバ13に接続するレールブラケット15は、図3および図7に示すように、平面から見て後端部が後拡がりの台形状に形成された上壁部28と、その左右両側辺部から下方に延びる側壁部29と、その後端部に設けられた後部フランジ30と、上記側壁部29の下端部に設けられた下部フランジ31と、左右側壁部29の前面を覆うように設置された前壁部32とを有し、上記レールブラケット15の上壁部28に外側レール8および内側レール9がボトル止めまたは溶接等の手段で固定されるようになっている。
【0031】
そして、上記レールブラケット15の後部フランジ30が、No.3クロスメンバ13の前壁面に取付ボルト33を介して固定されるとともに、上記下部フランジ31の前方部が取付ボルト34を介してフロアパネル1の上面に固定されることにより、外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位をNo.3クロスメンバ13に接続する所定長さのレールブラケット15が、上記No.3クロスメンバ13の前方側に配設されるようになっている。なお、上記外側レール8および内側レール9の中央部をNo.4クロスメンバ13に接続するレールブラケット16は、上記レールブラケット15と略同様の構成を有しているため、その説明を省略する。
【0032】
図8に示すように、上記スペアタイヤパン7の前端部に近接したフロアパネル1の部位には、その上面に取付ボルト35を介して固定される底壁部36と前後一対の縦壁部37とを有する支持ブラケット38が設置され、この支持ブラケット38により、上記内側レール9の後端部近傍部位が支持されるように構成されている。上記スペアタイヤパン7の前端部に近接したフロアパネル1の下面側には、図9に示すように、車幅方向に延びる下面側クロスメンバ39が設置されている。
【0033】
上記下面側クロスメンバ39は、スペアタイヤパン7の前辺周縁部を含む車幅方向の所定範囲に沿って配設されるタイヤパン対応部39aと、このタイヤパン対応部39aの左右両端部から車幅方向外側に延び側方延出部39bとを有し、その左右両端部が車体フレーム4の車室内側壁面に接合されている。また、上記下面側クロスメンバ39の前方側であって内側レール9,9の後端部が取り付けられる部位には、補強プレート40が設置され、この補強プレート40に上記支持ブラケット38が取付ボルト35により固定されている。また、上記補強プレート40の後辺部下面には、下面側クロスメンバ39の前部フランジ39cが接合されている。
【0034】
上記のように車室の底部を形成するフロアパネル1と、このフロアパネル1に沿って車体の前後方向に延びるように設置されたロングレールからなる外側レール8と、ショートレールからなる内側レール9とを具備した車両において、この外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを後上がりの傾斜状態で設置するとともに、外側レール8および内側レール9に沿って乗員用シート2,3をスライド可能に支持した構成によれば、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、快適な車室内の居住空間が得られるという利点がある。
【0035】
例えば、図10および図11に示すように、車室の前面およびルーフ部の前部に、フロントガラス42およびルーフガラス43が連続して設置されたいわゆるパノラマルーフタイプの車両において、上記のように外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを後上がりの傾斜状態で設置した場合には、運転席および助手席からなる最前列の乗員用シート41の設置高さH1に比べ、その後方側に位置する中列の乗員用シート2および後列の乗員用シート3の設置高さH2およびH3を順次大きく設定することにより、中列および後列の乗員用シート2,3に着座した乗員の視界、つまり上記フロントガラス42およびルーフガラス43等を介して外部を視認する際の視界を充分に確保することができる。
【0036】
また、上記中列の乗員用シート2を最前列の乗員用シート41に近接した位置までスライド変位させるとともに、後列の乗員用シート3を最後部までスライド変位させることにより、後列の乗員用シート3に着座した乗員の前方部に広い空間を確保することができる。さらに、中列の乗員用シート2に着座した乗員の前方部に広い空間を確保するために、中列および後列の乗員用シート2,3をそれぞれ後方にスライド変位させる等により、シートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0037】
そして、フロアパネル1の左右両側辺部に沿って車体の前後方向に延びるように外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールが設置されるとともに、この外側レール8および内側レール9に沿って乗員用シート2,3がスライド可能に支持された車両において、上記フロアパネル1上には、車幅方向に延びるクロスメンバ13,14と、このクロスメンバ13,14の壁面に接続されて前後方向に延びるレールブラケット15,16とを設置し、このレールブラケット15,16に上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを取り付けたため、このシートスライドレールを車体の補強部材として利用することにより、簡単な構成で車体の剛性を充分に確保できるという利点がある。
【0038】
すなわち、上記レールブラケット15,16の後端部をクロスメンバ13,14の前壁面に接続することにより、車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部を設け、上記レールブラケット15,16を介して上記クロスメンバ13,14に外側レール8および内側レール9を接続するように構成したため、所定の剛性および長さを有する外側レール8および内側レール9を安定した取付状態に保持することができ、これによって剛性の高い車体フレーム等からなる別体の補強部材を必要とすることなく、上記外側レール8を利用して車体を効果的に補強することができる。
【0039】
したがって、車体重量や製造コストの増大等を防止しつつ、車体の剛性を効果的に向上させることができ、車両の衝突時に入力された大きな衝撃荷重を、上記外側レール8および内側レール9とクロスメンバ13,14とを介して車体の各部に伝達して分散支持することにより、車体が大きく変形するのを効果的に防止できるとともに、車両の走行時にリヤサスペンション等から入力される荷重に応じて車体が変形することに起因して走行安定性が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。特に、上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを、上記レールブラケット15,16およびクロスメンバ13,14の両方に取り付けるように構成した場合には、これら各部材を大型化することなくレール支持部の前後寸法を充分に確保することができるため、上記シートスライドレールの取付状態を、さらに安定させることができる。
【0040】
なお、上記レールブラケット15,16の前端部をクロスメンバ13,14の後壁面に接続することにより、車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部をクロスメンバ13,14の後方側に設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、車両の後突時に上記外側レール8等に入力された衝撃荷重が、上記レールブラケット15,16を介してクロスメンバ13,14にスムーズに伝達されるため、上記衝撃荷重を効果的に分散させて支持できるという利点がある。
【0041】
これに対して上記実施形態に示すように、レールブラケット15,16の後端部をクロスメンバ13,14の前壁面に接合して車体の前後方向に延びる所定長さのレール支持部をクロスメンバ13,14の後方側に設けた構造とすれば、図1に示すように、上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールが後上がりの傾斜状態で設置されている場合に、上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールの支持剛性を効果的に増大させることができる。すなわち、上記レールブラケット15,16の上下寸法をシートスライドレールの傾斜角度に対応させて後拡がりに形成することにより、クロスメンバ13,14の前壁面に接合されるレールブラケット15,16の後端部の上下寸法をその前方部に比べて大きな値に設定して、上記クロスメンバ13,14に対するレールブラケット15,16の取付強度を充分に維持し、このレールブラケット15,16に上記外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールを安定した取付状態に保持できるという利点がある。
【0042】
また、上記実施形態では、図7等に示すように、レールブラケット15,16の上壁部28を後拡がりの台形状に形成することにより、レールブラケット15,16の基端部側の幅寸法を先端部側に比べて大きな値に設定したため、レールブラケット15,16を大型化することなく、上記クロスメンバ13,14に対するレールブラケット15,16の取付強度を充分に維持することができる。
【0043】
なお、図12に示すように、上壁部28の幅寸法がその全長に亘り、外側レール8および内側レール9と略同一に設定されたレールブラケット15,16を介して、外側レール8および内側レール9を、クロスメンバ13,14の前壁面または後壁面に接続するように構成してもよい。このように構成した場合には、レールブラケット15,16が外側レール8および内側レール9の左右両側に突出することに起因して、乗員用シート2,3に着座した乗員の足元スペースが狭められるのを防止できるという利点がある。
【0044】
また、上記実施形態に示すように、外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたNo.3クロスメンバ13の壁面にレールブラケット15の基端部を接続するように構成した場合には、このレールブラケット15を介して上記外側レール8および内側レール9の前端部近傍部位を安定して支持することができる。さらに、上記実施形態に示すように、外側レール8および内側レール9からなるシートスライドレールの中央部に設置されたNo.4クロスメンバ14の壁面にレールブラケット16の基端部を接続するように構成した場合には、このレールブラケット16を介して上記外側レール8および内側レール9の中央部を安定して支持することができる。
【0045】
上記実施形態では、フロアパネル1の左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対の外側レール8(ロングレール)からなるシートスライドレールを設置するとともに、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シート3を上記外側レール8に沿ってスライド自在に支持したため、上記ベンチシートタイプの乗員用シート3を車体の前後方向へ広範囲に亘って移動させることができるとともに、上記外側レール8により車体の前後方向における剛性を効果的に向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、前後に配列された中列の乗員用シート2および後列の乗員用シート3等からなる複数列の乗員用シートを、それぞれ上記左右一対の外側レール8(ロングレール)に沿ってスライド自在に支持したため、簡単な構成で上記複数の乗員用シート2,3を車体の前後方向にスライド変位させることにより、シートの多様な配列パターンが得られるとともに、上記外側レール8を有効に利用して車体の広範囲を効果的に補強できるという利点がある。
【0047】
なお、上記後列の乗員用シート3と同様に中列の乗員用シートをベンチシートタイプに構成することも可能であるが、上記実施形態に示すように、左右一対の外側レール8からなるロングレールの間に、左右一対の内側レール9からなるショートレールを配設するとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シート3の前方側に、左右に分割された左側シート2aおよび右側シート2bからなるセパレートタイプの乗員用シート2を配設し、上記相隣接するロングレールおよびショートレールに沿って、セパレートタイプの乗員用シート2を構成する上記左側シート2aおよび右側シート2bを、それぞれ個別にスライド自在に支持した場合には、左側シート2aおよび右側シート2bの前後位置を変化させる等により、さらにシートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0048】
また、上記セパレートタイプの乗員用シート2を構成する左側シート2aおよび右側シート2bと、外側レール8および内側レール9との間に、上記左側シート2aおよび右側シート2bを、それぞれ車幅方向にスライド可能に支持する横スライドレールを設けた構造としてもよい。このように構成した場合には、上記横スライドレールに沿って左側シート2aおよび右側シート2bを車幅方向にスライド変位させることにより、必要に応じて左右両シート2a,2bの設置間隔を変化させることができるため、さらにシートの多様な配列パターンが得られるという利点がある。
【0049】
また、上記実施形態に示すように、上記外側レール8が取り付けられる補強ガセット部材12を、所定の剛性を有するリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aとフロアパネル1の上面とを接続するように取り付けた場合には、上記外側レール8の中央後方部に支持剛性を充分に確保することができる。したがって、上記外側レール8を利用して車体の剛性を効果的に向上させることができ、車体重量や製造コストの増大等を防止しつつ、車両の後突時に車体後部に入力された大きな衝撃荷重を、上記外側レール8を介して車体の各部に伝達して分散支持することにより、車体が大きく変形するのを効果的に防止できるとともに、車両の走行時にリヤサスペンション等から入力される荷重に応じて車体が変形することに起因して走行安定性が損なわれること等を効果的に防止できるという利点がある。
【0050】
特に、上記実施形態に示すように、フロアパネル1に形成された下方に向けて凹入するスペアタイヤパン7の設置部に近接したフロアパネル1の部位に上記補強ガセット部材12を配設し、フロアパネル1の車幅方向側方部から上方に延びるように設置された上記リヤホイールハウス5の設置部と、上記スペアタイヤパン7の設置部近傍とを上記補強ガセット部材12で接続するように構成した場合には、上記リヤホイールハウス5およびスペアタイヤパン7の両方をフロアパネル1の補強部材として効果的に利用することができるため、車両の走行時に、フロアパネル1に反りが発生すること等に起因して走行安定性が損なわれるのを、より効果的に防止できるという利点がある。
【0051】
また、上記実施形態に示すように、後方に至るに従いフロアパネル1からの離間距離が大きくなるように後上がりに傾斜した外側レール8からなるシートスライドレールと、フロアパネル1との離間部に上記補強ガセット部材12を配設した場合には、フロアパネル1を略水平に設置しつつ、図11に示すように、車室内の後方側に位置する乗員用シート2,3を前方側の乗員用シート41,2よりも上方に位置させることができるため、上記フロントガラス42およびルーフガラス43等を介した乗員の視界を効果的に確保できるという利点がある。しかも、上記のようにフロアパネル1と外側レール8とが離間している場合においても、上記補強ガセット部材12により外側レール8の支持剛性を充分に確保することができるため、この外側レール8により上記乗員用シート2,3を安定して支持できるという利点がある。
【0052】
さらに、上記実施形態に示すように、外側レール8をリヤバンパー10の設置部まで延出した場合には、車両の後突時等に、上記リヤバンパー10に入力された衝撃荷重を上記外側レール8により直接支持することができるため、車体の変形を効果的に防止できるという利点がある。特に、上記実施形態に示すように、外側レール8の後端部を、リヤバンパー10を構成するバンパーレインフォースメント11の上部に固定するとともに、上記外側レール8の設置部に対応する位置においてフロアパネル1の下面に沿って車体の前後方向に延びるように設置された車体フレーム4の後端部を、上記バンパーレインフォースメント11の下方部に接合することにより、上記外側レール8の後端部よりも所定距離Sだけ下方側に位置するように設置した場合には、上記外側レール8および車体フレーム4により車体の前後方向に延びる立体的な補強構造が構成されるため、車両の後突時等に入力された衝撃荷重を、より安定して支持できるという利点がある。
【0053】
なお、上記実施形態では、図5等に示すように、スペアタイヤパン7の設置部から所定距離だけ離間した位置に上記補強ガセット部材12を配設した例について説明したが、図13に示すように、補強ガセット部材12の内部フランジ21を、スペアタイヤパン7の縦壁部7bに沿わせるように設置して取付ボルト25で固定することにより、車体側壁部から車室内側に膨出するリヤホイールハウス5の車室内側縦壁部5aと、スペアタイヤパン7の縦壁部7bとを補強ガセット部材12で直接接続するように構成してもよい。このように車室内側縦壁部5aと、スペアタイヤパン7の縦壁部7bとを補強ガセット部材12により直接接続するように構成した場合には、さらに効果的に車体を補強できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示す側面断面図である。
【図2】車室内の構造を示す平面図である。
【図3】フロアパネルの上部構造を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】補強ガセット部材の構成を示す斜視図である。
【図7】レールブラケットの構成を示す斜視図である。
【図8】支持ブラケットの構成を示す側面断面図である。
【図9】フロアパネルの底面図である。
【図10】本発明に係る下部車体構造を有する車両の外観図である。
【図11】本発明に係る下部車体構造を有する車両の説明図である。
【図12】レールブラケットの他の例を示す斜視図である。
【図13】補強ガセット部材の他の例を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 フロアパネル
2,3 乗員用シート
8 外側レール(ロングレール)
9 内側レール(ショートレール)
13,14 クロスメンバ
15,16 レールブラケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シートとを具備した車両において、上記フロアパネル上には、車幅方向に延びるクロスメンバと、このクロスメンバの壁面に接続されて車体の前後方向に延びるレールブラケットとが設置され、このレールブラケットに上記シートスライドレールが取り付けられたことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
レールブラケットの後端部がクロスメンバの前壁面に接合されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
レールブラケットの基端部側の幅寸法が先端部側に比べて大きな値に設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
シートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
シートスライドレールの前後方向中央部に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記シートスライドレールは、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対のロングレールを有し、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートが上記ロングレールに沿ってスライド自在に支持されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
前後に配列された複数列の乗員用シートがそれぞれ上記左右一対のロングレールに沿ってスライド自在に支持されたことを特徴とする請求項6に記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
上記左右一対のロングレールの間に、左右一対のショートレールが配設されるとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートが配設され、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートが、それぞれ相隣接するロングレールおよびショートレールに沿って個別にスライド自在に支持されたことを特徴とする請求項6に記載の車両の下部車体構造。
【請求項1】
車室の底部を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車体の前後方向に延びるように設置されたシートスライドレールと、このシートスライドレールに沿ってスライド可能に支持された乗員用シートとを具備した車両において、上記フロアパネル上には、車幅方向に延びるクロスメンバと、このクロスメンバの壁面に接続されて車体の前後方向に延びるレールブラケットとが設置され、このレールブラケットに上記シートスライドレールが取り付けられたことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
レールブラケットの後端部がクロスメンバの前壁面に接合されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
レールブラケットの基端部側の幅寸法が先端部側に比べて大きな値に設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
シートスライドレールの前端部近傍部位に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
シートスライドレールの前後方向中央部に設置されたクロスメンバの壁面にレールブラケットの基端部が接続されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記シートスライドレールは、フロアパネルの左右両側辺部に沿って車体の後端部近傍まで延びる左右一対のロングレールを有し、車幅方向に延びる一体のシートクッションを備えたベンチシートタイプの乗員用シートが上記ロングレールに沿ってスライド自在に支持されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
前後に配列された複数列の乗員用シートがそれぞれ上記左右一対のロングレールに沿ってスライド自在に支持されたことを特徴とする請求項6に記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
上記左右一対のロングレールの間に、左右一対のショートレールが配設されるとともに、上記ベンチシートタイプの乗員用シートの前方側に、左右に分割されたセパレートタイプの乗員用シートが配設され、このセパレートタイプの乗員用シートを構成する左右の分割シートが、それぞれ相隣接するロングレールおよびショートレールに沿って個別にスライド自在に支持されたことを特徴とする請求項6に記載の車両の下部車体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−105508(P2008−105508A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289046(P2006−289046)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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