説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】アクセル操作量に対して運転者の意図に沿ったトルクが出力されるように調整された車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両は、エンジン100と、エンジン100と動力伝達可能に設けられた自動変速機10とを有する。車両の制御装置は、運転者のアクセル操作量を検出するアクセル開度センサ460と、アクセル操作量を補正して目標量を算出し、目標量に基づいてエンジン100の出力を制御するECU1000とを備える。ECU1000は、自動変速機10のトルク増幅率が第1の増幅率である場合には、第1の増幅率よりも小さい第2の増幅率である場合よりも、アクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の制御装置および制御方法に関し、特に、駆動源と自動変速機とを搭載する車両の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2002−192988号公報(特許文献1)は、車両の駆動力制御装置を開示する。この駆動力制御装置は、アクセルペダルの踏込量と車速と勾配による抵抗力に応じて目標駆動力を設定し、目標駆動力と車速とから、変速制御用アクセル開度を設定し、変速制御用アクセル開度と車速とで変速制御を行なう。
【特許文献1】特開2002−192988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特開2002−192988号公報に開示された駆動力制御装置は、アクセル操作量からスロットル開度を導く補正方法が、変速比に関わらず一つしかないため、変速比がローギヤ段側では運転者の意図以上にトルクが出力され、ハイギヤ段側では逆にトルクが不足し制御性が悪い。
【0004】
この発明の目的は、アクセル操作量に対してより一層運転者の意図に沿ったトルクが出力されるように調整された車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、要約すると、駆動力源と、駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機とを有する車両の制御装置であって、運転者のアクセル操作量を検出するアクセル開度センサと、アクセル操作量を補正して目標量を算出し、目標量に基づいて駆動力源の出力を制御する制御部とを備える。制御部は、自動変速機のトルク増幅率が第1の増幅率である場合には、第1の増幅率よりも小さい第2の増幅率である場合よりも、アクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。
【0006】
好ましくは、自動変速機は、トルクコンバータと、トルクコンバータの入力軸と出力軸とを直結させるロックアップクラッチとを含む。トルク増幅率が第1の増幅率である場合は、ロックアップクラッチが解放しているという条件が少なくとも成立する場合である。トルク増幅率が第2の増幅率である場合は、ロックアップクラッチが係合しているという条件が少なくとも成立する場合である。
【0007】
好ましくは、トルク増幅率が第1の増幅率である場合は、自動変速機の変速比が第1の変速比であるという条件が少なくとも成立する場合である。トルク増幅率が第2の増幅率である場合は、自動変速機の変速比が第1の変速比よりも増速側である第2の変速比であるという条件が少なくとも成立する場合である。
【0008】
より好ましくは、自動変速機は、変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速部を含む。
【0009】
より好ましくは、自動変速機は、変速比を不連続的に変化させる有段変速部を含む。
好ましくは、トルク増幅率が第1の増幅率である場合と第2の増幅率である場合における目標量の差を目標量差と称すると、アクセル操作量がアクセル開度センサの検出可能な最小値である第1の操作量であるときと比べて、アクセル操作量が第1の操作量よりも増加した第2の操作量であるときは、目標量差は拡大し、アクセル操作量が第2の操作量であるときと比べて、アクセル操作量が第2の操作量よりもさらに増加した第3の操作量であるときは、目標量差は減少する。
【0010】
この発明は、他の局面にしたがうと、駆動力源と、駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機とを有する車両の制御装置である。自動変速機は、トルクコンバータと、トルクコンバータの入力軸と出力軸とを直結させるロックアップクラッチとを含む。制御装置は、運転者のアクセル操作量を検出するアクセル開度センサと、アクセル操作量を補正して目標量を算出し、目標量に基づいて駆動力源の出力を制御する制御部とを備える。制御部は、自動変速機の変速比が第1の変速比である場合には、第1の変速比よりも増速側の第2の変速比である場合よりも、ロックアップクラッチの係合状態及びアクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。制御部は、ロックアップクラッチが係合状態である場合には、ロックアップクラッチが解放状態である場合よりも、アクセル操作量及び自動変速機の変速比が同じ条件では目標量が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。
【0011】
好ましくは、ロックアップクラッチの状態が同じでかつアクセル操作量が同じである場合において、トルク増幅率が第1の増幅率であるときと第2の増幅率であるときにおける目標量の差を目標量差と称すると、アクセル操作量がアクセル開度センサの検出可能な最小値である第1の操作量であるときと比べて、アクセル操作量が第1の操作量よりも増加した第2の操作量であるときは、目標量差は拡大し、アクセル操作量が第2の操作量であるときと比べて、アクセル操作量が第2の操作量よりもさらに増加した第3の操作量であるときは、目標量差は減少する。
【0012】
この発明は、さらに他の局面に従うと、駆動力源と、駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機とを有する車両の制御方法であって、運転者のアクセル操作量を検出するステップと、アクセル操作量を補正して目標量を算出し、目標量に基づいて駆動力源の出力を制御するステップとを備える。制御するステップは、自動変速機のトルク増幅率が第1の増幅率である場合には、第1の増幅率よりも小さい第2の増幅率である場合よりも、アクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アクセル操作量に対して運転者の意図に沿ったトルクが出力される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両のパワートレーンの構成を示した図である。
【0016】
本実施の形態に係る車両の制御装置は、図1に示すECU(Electronic Control Unit)1000により実現される。
【0017】
図1に示すように、この車両のパワートレーンは、エンジン100と、自動変速機10と、デファレンシャルギヤ800と、ECU1000とを含む。自動変速機10は、トルクコンバータ200と、前後進切換装置290と、変速機構300と、油圧制御部1100とを含む。変速機構300はベルト式無段変速機構である例を示すが、特にベルト式無段変速機構に限定されるものではなく、歯車を用いた有段式変速機構であってもよい。
【0018】
エンジン100は、出力軸であるクランクシャフト102と、エンジン回転速度センサ430と、気筒104と、燃料供給装置106と、吸気管108と、吸気管108の途中に設けられる電子スロットル110と、電子スロットル110に設けられるスロットル開度センサ112と、吸気管108の途中であって電子スロットル110よりも上流吸入口側に設けられるエアフローメータ114と、排気管116と、水温センサ118とを含む。
【0019】
燃料供給装置106は、ECU1000からの制御信号に基づいてエンジン100に燃料を供給する。燃料供給装置106は、エンジン100の吸気ポート(図示せず)に燃料を噴射するポートインジェクタであってもよいし、エンジン100の気筒104内に直接燃料を噴射する筒内インジェクタであってもよく、特に限定されるものではない。
【0020】
エンジン回転速度センサ430は、クランクシャフト102の回転速度(すなわち、エンジン回転速度NE)を検出する。エンジン回転速度センサ430は、検出されたエンジン回転速度NEを示す信号をECU1000に送信する。
【0021】
スロットル開度センサ112は、電子スロットル110のスロットル開度を検出する。スロットル開度センサ112は、検出されたスロットル開度を示す信号をECU1000に送信する。
【0022】
エアフローメータ114は、吸気管108における吸入空気量を検出する。エアフローメータ114は、検出された吸入空気量を示す信号をECU1000に送信する。
【0023】
水温センサ118は、エンジン100の内部に設けられる冷却水通路を流通する冷却水の温度を検出する。水温センサ118は、検出された冷却水温を示す信号をECU1000に送信する。
【0024】
エンジン100の出力軸は、トルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸により連結されている。したがって、エンジン回転速度センサ430により検出されるエンジン100の出力軸回転速度NE(エンジン回転速度NE)とトルクコンバータ200の入力軸回転速度(ポンプ回転速度)とは同じである。
【0025】
トルクコンバータ200は、入力軸と出力軸とを直結状態にするロックアップクラッチ210と、入力軸側のポンプ羽根車220と、出力軸側のタービン羽根車230と、ワンウェイクラッチ250と、トルク増幅機能を有するステータ240とを含む。
【0026】
トルクコンバータ200と変速機構300とは、回転軸により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転速度NT(タービン回転速度NT)は、タービン回転速度センサ400により検出される。
【0027】
トルクコンバータ200と変速機構300との間には、オイルポンプ260が設けられる。オイルポンプ260は、たとえば、ギヤポンプであって、入力軸側のポンプ羽根車220が回転するとともに作動する。オイルポンプ260は、油圧制御部1100の各種ソレノイドに油圧を供給する。
【0028】
変速機構300は、前後進切換装置290を介在させてトルクコンバータ200に接続される。変速機構300は、入力側のプライマリプーリ500と、出力側のセカンダリプーリ600と、プライマリプーリ500とセカンダリプーリ600とに巻き掛けられた金属製のベルト700とを含む。
【0029】
プライマリプーリ500は、プライマリシャフトに固定された固定シーブと、プライマリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブとを含む。セカンダリプーリ600は、セカンダリシャフトに固定されている固定シーブと、セカンダリシャフトに摺動のみ自在に支持されている可動シーブとを含む。
【0030】
プライマリプーリ500およびセカンダリプーリ600の油圧アクチュエータ(いずれも図示せず)に対しては、それぞれ作動油が供給および排出される。各プーリ500,600の固定シーブと可動シーブとの間の溝幅を連続的に変化させることにより、ベルトの巻き掛け半径が大小に変化して変速が行なわれる。
【0031】
油圧制御部1100は、プライマリプーリ500の回転速度を目標回転速度に一致させる変速比となるように、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する。さらに、油圧制御部1100は、セカンダリプーリ600の可動シーブを固定シーブ側に押圧してベルトを挟みつけて、トルクを伝達するのに必要な張力が得られるようにセカンダリプーリ600の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御する。
【0032】
変速機構300のプライマリプーリ500の回転速度NINは、プライマリプーリ回転速度センサ410により検出され、セカンダリプーリ600の回転速度NOUTは、セカンダリプーリ回転速度センサ420により検出される。
【0033】
これら回転速度センサは、プライマリプーリ500やセカンダリプーリ600の回転軸やこれに繋がるドライブシャフトに取付けられた回転検出用ギヤの歯に対向して設けられている。これらの回転速度センサは、変速機構300の入力軸であるプライマリプーリ500や出力軸であるセカンダリプーリ600の僅かな回転の検出も可能なセンサであり、たとえば、一般的に半導体式センサと称される磁気抵抗素子を使用したセンサである。
【0034】
前後進切換装置290は、ダブルピニオンプラネタリギヤ、リバース(後進用)ブレーキB1および入力クラッチC1を有している。プラネタリギヤは、そのサンギヤが入力軸に連結されており、第1および第2のピニオンを支持するキャリヤがプライマリ側固定シーブに連結されており、そしてリングギヤRが後進用摩擦係合要素となるリバースブレーキB1に連結されており、またキャリヤとリングギヤとの間に入力クラッチC1が介在している。この入力クラッチC1は、前進クラッチやフォワードクラッチとも呼ばれ、パーキング(P)ポジション、リバース(R)ポジション、ニュートラル(N)ポジション以外の車両が前進するときに必ず係合状態で使用される。
【0035】
これらのパワートレーンを制御するECU1000および油圧制御部1100について説明する。ECU1000には、タービン回転速度センサ400からタービン回転速度NTを表わす信号が入力され、プライマリプーリ回転速度センサ410からプライマリプーリ回転速度NINを表わす信号が入力され、セカンダリプーリ回転速度センサ420からセカンダリプーリ回転速度NOUTを表わす信号が入力される。
【0036】
油圧制御部1100は、変速速度制御部1110と、ベルト挟圧力制御部1120と、ライン圧制御部1130と、ロックアップ係合圧制御部1132と、クラッチ圧力制御部1140と、マニュアルバルブ1150とを含む。ECU1000は、油圧制御部1100の変速制御用デューティソレノイド(1)1200と、変速制御用デューティソレノイド(2)1210と、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220と、ライン圧制御用リニアソレノイド1230と、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240に対して制御信号を出力する。
【0037】
変速速度制御部1110は、車輪速に基づく車速やアクセル開度に応じて、変速制御用デューティソレノイド(1)1200により、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータへの作動油の流入量を制御することにより増速側の変速速度を制御する。さらに、変速速度制御部1110は、車輪速やアクセル開度に応じて、変速制御用デューティソレノイド(2)1210により、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータからの作動油の流出量を制御して減速側の変速速度を制御する。変速速度制御部1110によりプライマリプーリ500の油圧アクチュエータに対する作動油の流入量と流出量とを制御することにより変速制御が行なわれる。
【0038】
ベルト挟圧力制御部1120は、プライマリプーリ500の入力軸トルクと変速比とに応じてベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220により、セカンダリプーリ600の油圧アクチュエータに供給される油圧を制御して、ベルト挟圧力を制御する。入力軸トルクは、たとえば、エンジン100の回転速度、吸入空気量等に基づくエンジン100の出力トルクとトルクコンバータ200におけるトルク比とから推定されてもよいし、直接的に検出されてもよい。
【0039】
ライン圧制御部1130は、ベルト挟圧力に対応するベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220に対する指示値とプライマリプーリ500の油圧アクチュエータに供給される油圧の推定値とに基づいて、ライン圧制御用リニアソレノイド1230によりライン圧を制御する。プライマリプーリ500のアクチュエータの油圧は、プライマリプーリ500の油圧アクチュエータへの作動油の流入量と流出量とに基づいて推定される。ここで、ライン圧とは、オイルポンプ260により供給された油圧がレギュレータバルブ(図示せず)により調圧された油圧である。
【0040】
ロックアップ係合圧制御部1132は、ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド1240によりロックアップクラッチ210の係合と解放の切換え、および、ロックアップクラッチ210の係合圧の漸増および漸減を制御する。
【0041】
マニュアルバルブ1150は、運転者のシフトレバーの操作に連動して作動して、油路を切換える。クラッチ圧力制御部1140は、入力クラッチC1またはリバースブレーキB1の係合時に、ライン圧制御用リニアソレノイド1230によりマニュアルバルブ1150を経由して供給される油圧を制御する。
【0042】
車速センサ440は、車輪(図示せず)の回転速度を検出する。車速センサ440は、検出された車輪の回転速度を示す車輪速信号をECU1000に送信する。なお、本実施の形態においては、車速が検出できれば、特に車輪の回転速度を検出することに限定されるものではなく、たとえば、セカンダリプーリ回転速度と無段変速機から駆動輪までの減速比とに基づいて車速を演算するようにしてもよい。
【0043】
また、車両には、さらに、油圧制御部1100内を流通する作動油の温度を検出する油温センサ450と、アクセルペダルの踏み込み量、すなわち、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ460と、車両の加速度を検出するGセンサ470とが設けられる。
【0044】
油温センサ450は、油温を示す信号をECU1000に送信する。アクセル開度センサ460は、アクセル開度を示す信号をECU1000に送信する。Gセンサ470は、車両の加速度を示す信号をECU1000に送信する。
【0045】
上述したような自動変速機10が搭載された車両において、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、ECU1000は、車速とアクセル開度とに応じて目標エンジン出力を設定する。ECU1000は、設定された目標エンジン出力がエンジン100の最適燃費線上で実現できるように目標変速比(あるいは、目標プライマリ回転速度)を設定する。
【0046】
ECU1000は、目標変速比を設定すると実変速比(すなわち、実プライマリプーリ回転速度と実セカンダリプーリ回転速度との比に基づく変速比)が目標変速比に近づくように、変速制御用デューティソレノイド(1)1200、変速制御用デューティソレノイド(2)1210、ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド1220およびライン圧制御用リニアソレノイド1230に対して制御信号を出力することによりフィードバック制御する。
【0047】
ECU1000は、メモリ1002を有する。メモリ1002には、各種情報、ECU1000が実行するプログラム、しきい値、マップ等が記憶され、必要に応じてデータが読み出されたり、格納されたりする。
【0048】
[実施の形態1]
図2は、実施の形態1におけるスロットル開度の補正処理を説明するためのブロック図である。
【0049】
図1、図2を参照して、アクセル開度センサ460は、アクセルペダルの踏込量を検出してアクセルポジション信号ACCPを出力する。ECU1000のROM1002には、複数のマップ群MA,MBが記憶されている。ECU1000は、これらのマップ群の中から変速機構300の状態に応じたマップを選択し、アクセルポジション信号ACCPを非線形補正してスロットル開度指令値θth算出する。
【0050】
スロットル開度指令値θthは電子スロットル110に送られ、これに基づいて吸気量が調整されエンジンが制御される。エンジンからの出力トルクTeは、変速機構300に入力される。変速機構300は、図1ではたとえば摩擦伝動を使った無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)である例が示されているが、歯車を使った有段式変速機(AT:stepped Automatic Transmission)であってもよい。
【0051】
変速機構300に入力されたエンジントルクTeはロックアップクラッチの係合状態や変速比γによって異なる出力トルクToutに変換されてデファレンシャルギヤ800に伝達される。
【0052】
変速機構300からは、自動変速機の状態を示す情報(たとえば、変速比γや、ロックアップクラッチが係合か非係合かなど)がECU1000に送られる。ECU1000はこの情報に基づいて、非線形補正に使用するマップを選択する。
【0053】
図3は、非線形補正を行なうためのマップの例を示した図である。
図3を参照して、横軸にはアクセル開度ACCP、縦軸には目標スロットル開度θthが示されている。ACCP=θthとなる線からアクセル開度が補正され、アクセル開度が小さいときは増加の傾きが小さくなる(横に寝る)ようにグラフが非線形に補正される。
【0054】
基準となるのがマップW0とすると、この基準マップW0から変速比がローギヤに近づくほど非線形特性がさらに寝るようにACCP=θthからの補正量は大きくなる。変速比γ1の場合はマップW1が選択され、変速比γ2(ただしγ2>γ1、すなわちγ2のほうがよりローギヤに近い)の場合はマップW2が選択される。
【0055】
変速比やロックアップクラッチの状態によってマップを切換えるのは、変速機のトルク増幅率が異なってくるからである。
【0056】
トルク増幅率が第1の増幅率である場合と第2の増幅率である場合における目標量の差を目標量差と称すると、アクセル操作量がアクセル開度センサの検出可能な最小値である第1の操作量(ACCP=AP1)であるときと比べて、アクセル操作量が第1の操作量よりも増加した第2の操作量(ACCP=AP2)であるときは、目標量差は拡大し、アクセル操作量が第2の操作量(ACCP=AP2)であるときと比べて、アクセル操作量が第2の操作量よりもさらに増加した第3の操作量(ACCP=AP3)であるときは、目標量差は減少する。
【0057】
すなわち、各マップの非線形特性は、ゼロに近いアクセル開度をAP1とし、最大値に近いアクセル開度をAP3とすると、AP1,AP3での基本のマップW0からの補正量は小さく、それらの補正量よりも中間のアクセル開度AP2付近では補正量は大きい。
【0058】
つまり、中間のアクセル開度では非線形の度合いが両端よりも強まるように補正されている。
【0059】
図4は、スロットル開度とエンジントルクとの関係がエンジン回転速度Neによってどのように変わるかというエンジンの特性を示した図である。
【0060】
図4を参照して、スロットル開度θthが小さい10%の領域では、エンジン回転速度Ne=1000rpm(点P1)に比べ、Ne=2000rpm(点P2)ではエンジントルクが小さくなり、Ne=4000rpm(点P3)ではさらにエンジントルクが小さくなる。これは、回転速度が速いとその分吸気時間も短くなるので、同じ小さなスロットル開度では回転速度が小さいほど吸気量が多くその分大きなトルクが出力されるからである。しかし、スロットル開度が大きくなると十分に吸気されるようになり、トルクが増加する傾きが減少する。
【0061】
たとえば、回転速度が2000rpmでは、スロットル開度が10%付近ではトルクの増加する傾きはエンジン回転速度1000rpmよりも小さい。しかし、回転速度1000rpmはそのうちトルクが増加する傾きが小さくなってしまうので、スロットル開度が十分大きくなるとエンジントルクは結局回転速度2000rpmのときのほうが1000rpmの時よりも大きくなる。
【0062】
図5は、車速の変化に対して変速比γ、エンジン回転速度Neおよびロックアップクラッチの係合がどのように変化するかを示した図である。
【0063】
図4、図5を参照して、一般に車速が増加するとエンジン回転速度も増加する。車速が低い発進時(Ne=1000rpm)には、スロットル開度10%付近では少しのスロットル開度変化でエンジントルクは大きく増加する。しかし100km/hに近い高速走行時(Ne=2000rpm)では、スロットル開度が変化してもエンジントルクが増加する度合いは発進時よりも小さく、十分な加速感が得られない。
【0064】
また、発進時は、ロックアップOFF状態でトルクコンバータ動作領域であり、かつ変速比がローギヤに近いので、アクセルペダルを少し変化させただけでもトルクが大きく変わり、アクセル制御性が悪い。逆に高速走行時では、ロックアップON状態で変速比もハイギヤに近いため、逆にアクセル応答性が悪い。
【0065】
つまり、このような特性であるので、アクセル開度の非線形補正を行なわなければ、発進時には思った以上にスロットルが開きすぎ、ドライバーは車両が飛び出す感じを強く感じてしまう。一方で、発進後に低速状態からさらに加速しようとすると、その時にはCVTの変速がハイギヤ側にシフトしているため、ドライバーは発進時ほどの加速を得られず、もたつき感を感じてしまう場合がある。さらに車速が上がった領域では、ハイギヤ側に変速比が変化しているだけでなく、さらにロックアップクラッチの係合も行なわれているため、アクセルペダル操作にたいして、パワートレーン全体の駆動レスポンスが低下し、さらに加速感が得られないと感じる場合がある。
【0066】
そこで、本実施の形態では、図2に示すように変速機構300の変速比γおよびロックアップクラッチのON/OFFの情報に基づいて、アクセル開度を非線形変換するマップを選択して同じアクセル操作量に対して低速時でも高速時でも同様な加速感を得られるようにスロットル開度を制御する。
【0067】
図6は、実施の形態1でECU1000が実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の車両制御のメインルーチンから一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとに呼び出されて実行される。
【0068】
図1、図6を参照して、処理が開始されるとまず、ステップS1においてECU1000はアクセルストロークセンサ(アクセル開度センサ460)の出力を取得する。次にステップS2においてクラッチ圧力制御部1140に対する指令値からロックアップクラッチ210が非係合状態(OFF状態)か否かを判断する。ロックアップクラッチ210が非係合状態であれば、ステップS2からステップS3に処理が進む。一方、ロックアップクラッチ210が係合状態であればステップS2からステップS5に処理が進む。
【0069】
ステップS3では、ECU1000は、CVT変速比とトルクコンバータすべりとを考慮したマップ群から変速比に対応するマップMAを選択する。そしてステップS4においてECU1000は選択したマップMAからアクセル開度に対応するスロットル開度指令値θthを取得する。
【0070】
一方、ステップS5に処理が進む場合は、ロックアップがONであるので、トルクコンバータのすべりは考慮する必要がない。そこでECUは、ステップS5において、CVT変速比を考慮したマップ群から変速比に対応するマップMBを選択する。そしてステップS6においてECU1000は選択したマップMBからアクセル開度に対応するスロットル開度指令値θthを取得する。
【0071】
ステップS4またはステップS6でスロットル開度指令値θthが取得されると、ステップS7においてスロットル開度指令値θthに基づいて電子スロットル110の制御が行なわれる。電子スロットル110のバルブ開度はスロットル開度センサ112で検出され、バルブ開度が指令値と一致するように電子スロットル110のアクチュエータが制御される。ステップS7の処理が終了するとステップS8において制御はメインルーチンに移される。
【0072】
図7は、ロックアップON時に適用されるマップ群の一例を示す図である。
図8は、図7に示したマップ群をグラフ上にプロットして示した図である。
【0073】
図7、図8を参照して、アクセルペダルストローク(アクセル開度)が0〜100(%)まで変化した時に目標スロットル開度(スロットル開度指令値)をどのように定めるかが、変速比A=1.0,2.0,3.0の3つの変速比の場合について示されている。
【0074】
図3で説明したように、基準となるのがA=1.0のマップとすると、この基準マップから変速比がローギヤに近づくほど非線形特性がさらに強まる(原点付近の傾きが寝る)ようにACCP=θthからの補正量は大きくなる。変速比が2.0の場合はA=2.0のマップが選択され、変速比が3.0(なお、変速比は2.0より3.0のほうがローギヤに近い)の場合はA=3.0のマップが選択される。
【0075】
変速比によってマップを切換えるのは、変速機のトルク増幅率が異なってくるからである。
【0076】
図9は、ロックアップOFF時に適用されるマップ群の一例を示す図である。
図10は、図9に示したマップ群をグラフ上にプロットして示した図である。
【0077】
図9、図10を参照して、アクセルペダルストローク(アクセル開度)が0〜100(%)まで変化した時に目標スロットル開度(スロットル開度指令値)をどのように定めるかが、変速比B=1.0,2.0,3.0の3つの変速比の場合について示されている。
【0078】
図3で説明したように、基準となるのがB=1.0のマップとすると、この基準マップから変速比がローギヤに近づくほど非線形特性がさらに寝るようにACCP=θthからの補正量は大きくなる。変速比が2.0の場合はB=2.0のマップが選択され、変速比が3.0(なお、変速比は2.0より3.0のほうがローギヤに近い)の場合はB=3.0のマップが選択される。
【0079】
変速比によってマップを切換えるのは、変速機のトルク増幅率が異なってくるからである。また、ロックアップのON/OFFでもマップを切換えるのは、ロックアップOFFではトルクコンバータによってトルクが増幅されるからである。
【0080】
実施の形態1では、ロックアップのON/OFFおよび変速比の値に応じてアクセル開度をスロットル開度に変換する際の非線形特性を切換えている。これにより、ドライバーに対して同じアクセル操作量に対して、低速走行時と高速走行時とで同様な制御性と加速感を提供することができるようになる。
【0081】
[実施の形態2]
実施の形態1では、ロックアップON/OFFによってマップ群を選択し、そしてさらにその中から変速比によってマップを選択した。このようにするとマップが増えて、データの記憶容量が大きくなってしまう。するとECUに実装するメモリ容量を増やさなければならず、コストが増加する場合がある。
【0082】
実施の形態2では、マップの数を減らし記憶容量を増加させずに実施の形態1と同様な効果を得るものである。
【0083】
図11は、実施の形態2におけるスロットル開度の補正処理を説明するためのブロック図である。
【0084】
図11に示すブロック図は、図2に示したブロック図のマップ群MA,MBに代えて、マップMCと係数選択部1502と補正処理部1504とを含む。図11の他の部分については図2で説明しているので詳細な説明は繰返さない。
【0085】
マップMCは、アクセルポジション信号ACCPを非線形補正して信号ACCBを出力する。係数選択部1502は、変速機構300に設定されている変速比γやロックアップクラッチのON/OFF状態に基づいて係数Kを選択する。補正処理部1504は、信号ACCBを係数Kに基づいて演算によって補正してスロットル開度指令値θthを出力し電子スロットル110に与える。
【0086】
図12は、実施の形態2でECU1000が実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の車両制御のメインルーチンから一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとに呼び出されて実行される。
【0087】
図1、図12を参照して、処理が開始されるとまず、ステップS11においてECU1000はアクセルストロークセンサ(アクセル開度センサ460)の出力(アクセル開度ACCP)を取得する。
【0088】
そして、ステップS12においてECU1000は、基本マップMCからアクセル開度ACCPに対応するアクセル非線形開度ACCBを取得する。
【0089】
続いて、ステップS13において、ECU1000は、アクセル開度ACCPとアクセル非線形開度ACCBの差分X(=ACCP−ACCB)を算出する。ただし、ACCPよりACCBが大きくなるように補正されている場合は差分Xを0に設定して以降の演算を実行する。この差分Xは、非線形度合いを示すもので変速比やロックアップのON/OFFに基づいてこの非線形度合いを強める。
【0090】
非線形度合いを示す差分Xを求めた後、ステップS14においてロックアップクラッチが係合か非係合かが判断される。ロックアップOFFであればステップS14からステップS15に処理が進み、ロックアップONであればステップS14からステップS19に処理が進む。
【0091】
ステップS15では、ECU1000は、CVT変速比とトルクコンバータすべりとを考慮した係数Aを選択する。そして、ECU1000は、ステップS16において次式(1)に基づいて指令値Tの算出を行なう。
T=ACCP−X・A … (1)
さらにステップS17,S18において上限をACCBにする処理が行なわれる。まずステップS17において指令値Tがアクセル非線形開度ACCBより大きいか否かが判断される。T>ACCBであれば、ステップS18においてT=ACCBに設定される。T>ACCBでなければ、ステップS18の処理は実行されずそのままの指令値Tが用いられる。
【0092】
ロックアップONでありステップS14からステップS19に処理が進んだ場合には、ステップS19〜S22の処理が実行される。この処理はステップS15〜S18の処理の係数Aに代えてロックアップONの条件に合せた係数Bを採用する処理である。
【0093】
まずステップS19では、ECU1000は、CVT変速比を考慮した係数Bを選択する。ロックアップONであるので、係数Bにはトルクコンバータのトルク増幅率は考慮する必要はない。そして、ECU1000は、ステップS20において次式(2)に基づいて指令値Tの算出を行なう。
T=ACCP−X・B … (2)
さらにステップS21,S22において上限をACCBにする処理が行なわれる。まずステップS21において指令値Tがアクセル非線形開度ACCBより大きいか否かが判断される。T>ACCBであれば、ステップS22においてT=ACCBに設定される。T>ACCBでなければ、ステップS22の処理は実行されずそのままの指令値Tが用いられる。
【0094】
ステップS15〜S18の処理またはステップS19〜S22の処理によって指令値Tが算出されると、ステップS23に処理が進み、指令値Tに基づいて電子スロットル110が制御される。電子スロットル110のバルブ開度はスロットル開度センサ112で検出され、バルブ開度が指令値と一致するように電子スロットル110のアクチュエータが制御される。ステップS23の処理が終了するとステップS24において制御はメインルーチンに移される。
【0095】
図13は、実施の形態2における第1の非線形補正処理の例を示した図である。
図14は、図13に示した処理の結果をグラフ上にプロットして示した図である。
【0096】
図13、図14を参照して、アクセルペダル操作量に対してACCPをプロットすると直線となる。これに対して基本マップによって非線形処理を行なった後のデータがACCBである。そして、差分X1はACCP−ACCBであり係数A=3/2としてACCP−X1・Aを演算しその結果が負であれば補正後のスロットル開度指令値は0に設定され、負でなければ演算結果が補正後のスロットル開度指令値として設定される。
【0097】
図15は、実施の形態2における第2の非線形補正処理の例を示した図である。
図16は、図15に示した処理の結果をグラフ上にプロットして示した図である。
【0098】
図15、図16では、ACCP=50〜100%において基本マップの補正後のACCBがACCPよりも大きくなるように補正されている。したがって、この範囲では差分X1が負になっているが、図12のステップS13の処理によってX=0として演算が行なわれる。またこの範囲ではACCP−X1・AがACCBよりも大きくなってしまうので、図12のステップS18の処理が適用されている。
【0099】
実施の形態2によれば、マップの数を減らしても実施の形態1と同様な効果を得ることができ、ECUのメモリ容量の増加が抑制され製造コストの低減が期待できる。
【0100】
最後に、本実施の形態について再び図1等を参照して総括して説明する。本実施の形態の車両の制御装置は、駆動力源(エンジン100)と、駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機10とを有する車両の制御装置であって、運転者のアクセル操作量(ACCP)を検出するアクセル開度センサ460と、アクセル操作量(ACCP)を補正して目標量(θth)を算出し、目標量に基づいて駆動力源の出力を制御する制御部(ECU1000)とを備える。制御部(ECU1000)は、自動変速機10のトルク増幅率が第1の増幅率である場合には、第1の増幅率よりも小さい第2の増幅率である場合よりも、アクセル操作量(ACCP)が同じ条件では目標量(θth)が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。
【0101】
好ましくは、自動変速機10は、トルクコンバータ200と、トルクコンバータ200の入力軸と出力軸とを直結させるロックアップクラッチ210とを含む。トルク増幅率が第1の増幅率である場合は、ロックアップクラッチ210が解放しているという条件が少なくとも成立する場合であり、トルク増幅率が第2の増幅率である場合は、ロックアップクラッチ210が係合しているという条件が少なくとも成立する場合である。
【0102】
好ましくは、トルク増幅率が第1の増幅率である場合は、自動変速機10の変速比が第1の変速比(例えば図7,図8においてA=3.0)であるという条件が少なくとも成立する場合である。トルク増幅率が第2の増幅率である場合は、自動変速機10の変速比が第1の変速比よりも増速側である第2の変速比(例えば図7,図8においてA=1.0)であるという条件が少なくとも成立する場合である。
【0103】
より好ましくは、自動変速機10は、変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速部(図2、図11:変速機構300)を含む。
【0104】
より好ましくは、自動変速機10は、変速比を不連続的に変化させる有段変速部(図2、図11:変速機構300)を含む。
【0105】
好ましくは、たとえば図3に示すように、トルク増幅率が第1の増幅率(γ=γ2)である場合と第2の増幅率(γ=γ1)である場合における目標量の差を目標量差と称すると、アクセル操作量がアクセル開度センサの検出可能な最小値である第1の操作量(AP1)であるときと比べて、アクセル操作量が第1の操作量よりも増加した第2の操作量(AP2)であるときは、目標量差は拡大し、アクセル操作量が第2の操作量(AP2)であるときと比べて、アクセル操作量が第2の操作量よりもさらに増加した第3の操作量(AP3)であるときは、目標量差は減少する。
【0106】
この発明は、他の局面にしたがうと、駆動力源(エンジン100)と、駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機10とを有する車両の制御装置である。自動変速機10は、トルクコンバータ200と、トルクコンバータ200の入力軸と出力軸とを直結させるロックアップクラッチ210とを含む。制御装置は、運転者のアクセル操作量(ACCP)を検出するアクセル開度センサ460と、アクセル操作量を補正して目標量を算出し、目標量に基づいて駆動力源の出力を制御する制御部(ECU1000)とを備える。制御部(ECU1000)は、自動変速機10の変速比が第1の変速比である場合には、第1の変速比よりも増速側の第2の変速比である場合よりも、ロックアップクラッチの係合状態及びアクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。制御部は、ロックアップクラッチ210が係合状態である場合には、ロックアップクラッチ210が解放状態である場合よりも、アクセル操作量及び自動変速機10の変速比が同じ条件では目標量が小さくなるようにアクセル操作量の補正を行なう。
【0107】
好ましくは、ロックアップクラッチ210の状態が同じでかつアクセル操作量が同じである場合において、トルク増幅率が第1の増幅率であるときと第2の増幅率であるときにおける目標量の差を目標量差と称すると、アクセル操作量がアクセル開度センサの検出可能な最小値である第1の操作量(AP1)であるときと比べて、アクセル操作量が第1の操作量よりも増加した第2の操作量(AP2)であるときは、目標量差は拡大し、アクセル操作量が第2の操作量であるときと比べて、アクセル操作量が第2の操作量よりもさらに増加した第3の操作量(AP3)であるときは、目標量差は減少する。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態に係る車両の制御装置を搭載する車両のパワートレーンの構成を示した図である。
【図2】実施の形態1におけるスロットル開度の補正処理を説明するためのブロック図である。
【図3】非線形補正を行なうためのマップの例を示した図である。
【図4】スロットル開度とエンジントルクとの関係がエンジン回転速度Neによってどのように変わるかというエンジンの特性を示した図である。
【図5】車速の変化に対して変速比γ、エンジン回転速度Neおよびロックアップクラッチの係合がどのように変化するかを示した図である。
【図6】実施の形態1でECU1000が実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】ロックアップON時に適用されるマップ群の一例を示す図である。
【図8】図7に示したマップ群をグラフ上にプロットして示した図である。
【図9】ロックアップOFF時に適用されるマップ群の一例を示す図である。
【図10】図9に示したマップ群をグラフ上にプロットして示した図である。
【図11】実施の形態2におけるスロットル開度の補正処理を説明するためのブロック図である。
【図12】実施の形態2でECU1000が実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態2における第1の非線形補正処理の例を示した図である。
【図14】図13に示した処理の結果をグラフ上にプロットして示した図である。
【図15】実施の形態2における第2の非線形補正処理の例を示した図である。
【図16】図15に示した処理の結果をグラフ上にプロットして示した図である。
【符号の説明】
【0110】
10 自動変速機、100 エンジン、102 クランクシャフト、104 気筒、106 燃料供給装置、108 吸気管、110 電子スロットル、112 スロットル開度センサ、114 エアフローメータ、116 排気管、118 水温センサ、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、240 ステータ、250 ワンウェイクラッチ、260 オイルポンプ、290 前後進切換装置、300 変速機構、C1 入力クラッチ、400 タービン回転速度センサ、410 プライマリプーリ回転速度センサ、420 セカンダリプーリ回転速度センサ、430 エンジン回転速度センサ、440 車速センサ、450 油温センサ、460 アクセル開度センサ、470 Gセンサ、500 プライマリプーリ、600 セカンダリプーリ、700 ベルト、800 デファレンシャルギヤ、1002 メモリ、1100 油圧制御部、1110 変速速度制御部、1120 ベルト挟圧力制御部、1130 ライン圧制御部、1132 ロックアップ係合圧制御部、1140 クラッチ圧力制御部、1150 マニュアルバルブ、1220 ベルト挟圧力制御用リニアソレノイド、1230 ライン圧制御用リニアソレノイド、1240 ロックアップ係合圧制御用デューティソレノイド、1502 係数選択部、1504 補正処理部、B1 リバースブレーキ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源と、前記駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機とを有する車両の制御装置であって、
運転者のアクセル操作量を検出するアクセル開度センサと、
前記アクセル操作量を補正して目標量を算出し、前記目標量に基づいて前記駆動力源の出力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記自動変速機のトルク増幅率が第1の増幅率である場合には、前記第1の増幅率よりも小さい第2の増幅率である場合よりも、アクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるように前記アクセル操作量の補正を行なう、車両の制御装置。
【請求項2】
前記自動変速機は、
トルクコンバータと、
前記トルクコンバータの入力軸と出力軸とを直結させるロックアップクラッチとを含み、
前記トルク増幅率が前記第1の増幅率である場合は、前記ロックアップクラッチが解放しているという条件が少なくとも成立する場合であり、
前記トルク増幅率が前記第2の増幅率である場合は、前記ロックアップクラッチが係合しているという条件が少なくとも成立する場合である、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記トルク増幅率が前記第1の増幅率である場合は、前記自動変速機の変速比が第1の変速比であるという条件が少なくとも成立する場合であり、
前記トルク増幅率が前記第2の増幅率である場合は、前記自動変速機の変速比が前記第1の変速比よりも増速側である第2の変速比であるという条件が少なくとも成立する場合である、請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記自動変速機は、
変速比を連続的に変化させることが可能な無段変速部を含む、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記自動変速機は、
変速比を不連続的に変化させる有段変速部を含む、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記トルク増幅率が前記第1の増幅率である場合と前記第2の増幅率である場合における前記目標量の差を目標量差と称すると、
前記アクセル操作量が前記アクセル開度センサの検出可能な最小値である第1の操作量であるときと比べて、前記アクセル操作量が前記第1の操作量よりも増加した第2の操作量であるときは、前記目標量差は拡大し、
前記アクセル操作量が前記第2の操作量であるときと比べて、前記アクセル操作量が前記第2の操作量よりもさらに増加した第3の操作量であるときは、前記目標量差は減少する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
駆動力源と、前記駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機とを有する車両の制御装置であって、
前記自動変速機は、
トルクコンバータと、
前記トルクコンバータの入力軸と出力軸とを直結させるロックアップクラッチとを含み、
前記制御装置は、
運転者のアクセル操作量を検出するアクセル開度センサと、
前記アクセル操作量を補正して目標量を算出し、前記目標量に基づいて前記駆動力源の出力を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記自動変速機の変速比が第1の変速比である場合には、前記第1の変速比よりも増速側の第2の変速比である場合よりも、前記ロックアップクラッチの係合状態及びアクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるように前記アクセル操作量の補正を行ない、
前記制御部は、前記ロックアップクラッチが係合状態である場合には、前記ロックアップクラッチが解放状態である場合よりも、前記アクセル操作量及び前記自動変速機の変速比が同じ条件では目標量が小さくなるように前記アクセル操作量の補正を行なう、車両の制御装置。
【請求項8】
前記ロックアップクラッチの状態が同じでかつ前記アクセル操作量が同じである場合において、前記トルク増幅率が前記第1の増幅率であるときと前記第2の増幅率であるときにおける前記目標量の差を目標量差と称すると、
前記アクセル操作量が前記アクセル開度センサの検出可能な最小値である第1の操作量であるときと比べて、前記アクセル操作量が前記第1の操作量よりも増加した第2の操作量であるときは、前記目標量差は拡大し、
前記アクセル操作量が前記第2の操作量であるときと比べて、前記アクセル操作量が前記第2の操作量よりもさらに増加した第3の操作量であるときは、前記目標量差は減少する、請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
駆動力源と、前記駆動力源と動力伝達可能に設けられた自動変速機とを有する車両の制御方法であって、
運転者のアクセル操作量を検出するステップと、
前記アクセル操作量を補正して目標量を算出し、前記目標量に基づいて前記駆動力源の出力を制御するステップとを備え、
前記制御するステップは、前記自動変速機のトルク増幅率が第1の増幅率である場合には、前記第1の増幅率よりも小さい第2の増幅率である場合よりも、アクセル操作量が同じ条件では目標量が小さくなるように前記アクセル操作量の補正を行なう、車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−287419(P2009−287419A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138447(P2008−138447)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】