説明

車両の制御装置

【課題】自動車等の車両において、適切なタイミングで運転支援制御を実行する。
【解決手段】車両の制御装置は、車両が停止する際の状況を検出する状況検出手段130と、車両が停止する際の運転者による減速タイミングを検出する減速検出手段140と、状況及び減速タイミングを互いに関連づけて学習を行う学習手段120と、学習後に、走行中の車両が学習された状況に近い状態となったことを認識する状況認識手段150と、状況に近い状態であることが認識された場合に、学習された状況に関連づけられた減速タイミングに応じて運転支援制御を行う運転支援制御手段160とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両において運転支援制御を実行する車両の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置として、カーブや交差点、一時停止線等の道路条件、或いは他の車両や歩行者等の物体を検出し、走行中の車両における運転支援制御を自動的に実行するものが知られている。例えば特許文献1では、運転者の好む減速操作を予め学習しておき、自車両前方に減速対象となる物体が検出されているにもかかわらず、運転者による減速が開始されない場合には、運転者が減速対象となる物体を見落としていると判断して警報を行うという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−96065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、減速対象となる物体までの距離や道路状況だけで警報を行うタイミングを判断しているため、場合によっては運転者に違和感を与えてしまうようなタイミングで警報が行われてしまうことが予想される。具体的には、減速対象となる物体の視認性や、減速行動を行った場合の衝突危険性等の減速行動に影響を与える要素が考慮されていないため、状況に応じた適切なタイミングで警報を行うことが困難であると考えられる。このように、上述した技術には、減速行動を行うべきタイミングを適切に判断できないおそれがあるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、運転者の減速行動に影響を与える状況を学習することで、適切なタイミングで運転支援制御を実行可能とする車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両の制御装置は上記課題を解決するために、車両が停止する際の状況を検出する状況検出手段と、前記車両が停止する際の運転者による減速タイミングを検出する減速検出手段と、前記状況及び前記減速タイミングを互いに関連づけて学習を行う学習手段と、前記学習後に、走行中の前記車両が学習された前記状況に近い状態となったことを認識する状況認識手段と、前記状況に近い状態であることが認識された場合に、学習された前記状況に関連づけられた前記減速タイミングに応じて運転支援制御を行う運転支援制御手段とを備える。
【0007】
本発明の車両の制御装置によれば、その動作時には、先ず車両が停止する際の状況が検出される。尚、ここでの「停止する際」とは、車両が停止する瞬間のみを意味するものではなく、車両を停止するための減速行動が開始されてから、実際に車両が停止するまでを含む広い概念である。また「状況」とは、自車両の状況及び周囲の状況であって、単なる道路情報や車速だけでなく、停止する際の運転者による減速タイミングに影響を与えるような各種パラメータを含む概念である。
【0008】
続いて、本発明の車両の制御装置では、車両が停止する際の運転者による減速タイミングが検出される。即ち、車両を停止するために行われる減速操作(例えば、ブレーキペダルの操作等)のタイミングが検出される。尚、ここでの「タイミング」は、典型的には、減速操作が開始されるタイミングであるが、減速操作が終了するタイミングや減速操作の操作量が最大となるタイミング等が検出されてもよい。
【0009】
本発明では特に、検出された車両が停止する際の状況及び減速タイミングが、互いに関連づけて学習される。即ち、どのような状況において、どのような減速タイミングで減速が行われたかが学習される。このような学習によれば、状況によって変化する運転者の減速タイミングを知ることができる。
【0010】
車両が停止する際の状況及び減速タイミングが学習された後には、車両の走行時において、現在の車両の状況が、学習された状況に近い状態となったことが認識されるようになる。尚、ここでの「近い状態」とは、現在の車両の状況が、学習された状況に関連づけられた減速タイミング(即ち、学習された減速タイミング)を適用できるまでに近い状態を意味しており、例えば状況を示す各種パラメータに対して予め設定された閾値等によって「近い状態」であるか否かが認識される。
【0011】
現在の車両の状況が、学習された状況に近い状態であることが認識された場合には、学習された状況に関連づけられた減速タイミングに応じて、運転支援制御が行われる。即ち、現在の車両の状況は、学習された減速タイミングで減速を行うことが好ましい状況であると推測して、適切な減速が行えるように運転支援制御が行われる。
【0012】
運転支援制御は、例えば学習された減速タイミングとなっても運転者による減速が開始されない場合に警報を行う制御、学習された減速タイミングに合わせて自動で車両の減速を行う制御、学習された減速タイミングを運転者に提示する制御等である。尚、どのような運転支援制御を行うかによって、上述した「近い状態」を認識するための閾値が適宜設定されることが好ましい。
【0013】
本発明では、車両が停止する際の状況に関連づけて減速タイミングが学習されているため、運転支援制御に用いられる減速タイミングの精度が状況に応じた極めて高いものとされる。従って、行われるべきでないタイミングで、或いは運転者に違和感を与えてしまうようなタイミングで運転支援制御が行われてしまうことを防止することができる。
【0014】
以上説明したように、本発明の車両の制御装置によれば、運転者の減速行動に影響を与える状況を学習することで、適切なタイミングで運転支援制御を実行可能である。
【0015】
本発明の車両の制御装置の一態様では、前記減速検出手段は、停止対象までの距離が所定の範囲内である場合に、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出する。
【0016】
この態様によれば、減速対象までの距離が所定の範囲内である場合に車両が停止すると判断されるため、運転者による減速行動が、車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別することができる。尚、ここでの「停止対象」とは、車両を停止させるべき対象となる地点或いは物体を意味しており、例えば自車両前方のカーブ、交差点、一時停止線、或いは他の車両や歩行者等である。また「所定の範囲」は、車両が停止するか否かを判定するための閾値であり、予め理論的、実験的或いは経験的に求められた値が設定されている。
【0017】
車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別できることによって、車両が停止する際の状況及び減速タイミングを適切に学習することが可能となる。従って、より好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0018】
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記減速検出手段は、停止以外の減速理由を発見しない場合に、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出する。
【0019】
この態様によれば、停止以外の減速理由を発見しない場合に車両が停止すると判断されるため、運転者による減速行動が、車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別することができる。尚、ここでの「減速理由」とは、減速をすべき理由、或いは運転者が減速をするであろうと予測できる理由であり、上述した態様における停止対象の存在や、自車両及び他の車両の車速等の各種条件を含む広い概念である。
【0020】
車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別できることによって、車両が停止する際の状況及び減速タイミングを適切に学習することが可能となる。従って、より好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0021】
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記減速検出手段は、前記車両の速度がゼロとなった場合に、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出する。
【0022】
この態様によれば、車両の速度がゼロとなった場合に車両が停止すると判断されるため、運転者による減速行動が、車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別することができる。尚、本態様では、実際に運転者による減速が行われている時点では車両が停止するか否かは判定できない。このため、減速中に検出される減速タイミングは一旦装置のメモリ等に記憶され、車両の速度がゼロとなった時点で、車両を停止する際の減速タイミングとして検出される。
【0023】
車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別できることによって、車両が停止する際の状況及び減速タイミングを適切に学習することが可能となる。従って、より好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0024】
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記減速検出手段は、前記運転者の入力操作に基づいて、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出する。
【0025】
この態様によれば、運転者の入力操作に基づいて車両が停止すると判断されるため、運転者による減速行動が、車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別することができる。具体的には、例えば運転手が減速行動を開始する前に、これから行う減速行動が停止のための減速であることを入力する。或いは減速行動中に、現在行っている減速行動が停止のための減速であることを入力してもよいし、減速行動を終了してから、行われた減速行動が停止のための減速であったことを入力してもよい。
【0026】
車両を停止するための減速であるか否かを正確に判別できることによって、車両が停止する際の状況及び減速タイミングを適切に学習することが可能となる。従って、より好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0027】
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記状況検出手段は、道路情報を前記状況として検出する。
【0028】
この態様によれば、例えば停止対象の種類や、走行中の道路の勾配、曲率等の道路情報が、学習用の状況として検出される。よって学習手段では、検出された道路情報と運転者による減速タイミングとが互いに関連づけて学習される。
【0029】
本願発明者の研究によれば、車両の運転者は、道路情報に応じて減速タイミングを変化させることが判明している。よって、上述したように道路情報を状況として検出すれば、好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0030】
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記状況検出手段は、前記運転者による停止目標の視認性を前記状況として検出する。
【0031】
この態様によれば、例えば停止線の見えやすさや、横断歩道の有無、交差点の有無、歩行者の有無、停止車両の有無等から推測できる停止目標の視認性が、学習用の状況として検出される。よって学習手段では、検出された停止目標の視認性と運転者による減速タイミングとが互いに関連づけて学習される。
【0032】
本願発明者の研究によれば、車両の運転者は、停止目標の視認性に応じて減速タイミングを変化させることが判明している。よって、上述したように停止目標の視認性を状況として検出すれば、好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0033】
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記状況検出手段は、前記車両が停止する際の衝突危険性を前記状況として検出する。
【0034】
この態様によれば、例えば自車線上の停止車両の有無や、自車線上の停止車両の種類等から推測できる停止時の衝突危険性が、学習用の状況として検出される。よって学習手段では、検出された停止時の衝突危険性と運転者による減速タイミングとが互いに関連づけて学習される。
【0035】
本願発明者の研究によれば、車両の運転者は、停止時の衝突危険性に応じて減速タイミングを変化させることが判明している。よって、上述したように停止時の衝突危険性を状況として検出すれば、好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0036】
本発明の車両の制御装置の他の態様では、前記運転者の認識を行う運転者認識手段を更に備え、前記学習手段は、前記運転者毎に学習を行う。
【0037】
この態様によれば、同じ車両を複数の運転者が使用する場合に、例えば顔認証やキー登録によって、車両を運転している運転者を認識できるように構成される。そして、車両が停止する際の状況及び減速タイミングの学習は運転者毎に行われる。従って、その後の運転支援制御も運転者毎に行われる。
【0038】
本願発明者の研究によれば、車両が停止する際の減速タイミングは、仮に状況が同じであっても、運転者毎に異なることが判明している。よって、上述したように、運転者毎に車両が停止する際の状況及び減速タイミングを学習するようにすれば、より好適に運転支援制御を実行することが可能となる。
【0039】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態に係る車両の制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る車両の制御装置の学習動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】車両が単独で停止する場合の状況を示す上面図である。
【図4】車両が隣接車線に停止車両が存在する状態で停止する場合の状況を示す上面図である。
【図5】車両が同一車線に停止車両が存在する状態で停止する場合の状況を示す上面図である。
【図6】車両が停止する際の状況とブレーキオンのタイミングとの関係を、運転者毎に統計的に示すグラフである。
【図7】車両が停止する際の状況とアクセルオフのタイミングとの関係を、運転者毎に統計的に示すグラフである。
【図8】実施形態に係る車両の制御装置の運転支援動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0042】
先ず、本実施形態に係る車両の制御装置の構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る車両の制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【0043】
図1において、本実施形態に係る車両の制御装置は、運転者認識部110と、学習部120と、状況検出部130と、減速検出部140と、状況認識部150と、運転支援制御部160とを備えて構成されている。
【0044】
運転者認識部110は、本発明の「運転者認識手段」の一例であり、例えば顔認証やキー登録等によって車両の運転者を認識する。運転者認識部110を備えることで、同一の車両を複数人が使用する場合に、現在の運転者を認識することが可能となる。
【0045】
学習部120は、本発明の「学習手段」の一例であり、後述する状況検出部130において検出される状況場所情報、及び減速検出部140において検出される運転者の減速行動を互いに関連づけて学習する。学習部120は、例えば車両に搭載されるカーナビゲーションシステムが有するHDD(Hard Disc Drive)や、通信で接続するセンタ側のサーバ等に学習内容を記憶する。
【0046】
状況検出部130は、本発明の「状況検出手段」の一例であり、走行する車両の状況及び周囲の状況を検出する。状況検出部130は、例えば車載カメラやレーダ、GPS(Global Positioning System)等を含んで構成される。また状況検出部130は特に、車両が停止するか否かを判定する判定手段を備え、車両が停止すると判定された際に状況を検出する。但し、常時或いは所定の間隔、運転者の操作等によって状況を検出できるように構成されてもよい。
【0047】
減速検出部140は、本発明の「減速検出手段」の一例であり、運転者による減速行動を検出する。減速検出部140は、運転者による減速行動の際に操作される各種部位に取り付けられたセンサ等で構成されており、例えばブレーキやアクセル、ハンドル操作のタイミングを検出する。また、操作タイミングだけでなく操作量についても検出できるようにしてよい。減速検出部140は特に、上述した状況検出部130と同様に、車両が停止するか否かを判定する判定手段を備え、車両が停止する際に減速タイミングを検出する。但し、常時或いは所定の間隔、運転者の操作等によって減速タイミングを検出できるように構成されてもよい。
【0048】
状況認識部150は、本発明の「状況認識手段」の一例であり、例えば演算回路やメモリ等を含んで構成されている。状況認識部150は、状況検出部130において現在検出されている状況と、学習された状況とが同一又は類似しているか否かを認識する。状況認識部150における認識には、例えば予め設定された閾値等が用いられる。
【0049】
運転支援制御部160は、本発明の「運転支援制御手段」の一例であり、学習部120において学習された状況と減速タイミングとの関係を利用して、警報やブレーキ制御等の運転支援を行う。運転支援制御部160は、例えばECU(Engine Control Unit)と連動しており、車両の各部位の挙動を制御可能に構成されている。
【0050】
次に、本実施形態に係る車両の制御装置の学習動作について、図2から図7を参照して説明する。ここに図2は、本実施形態に係る車両の制御装置の学習動作の流れを示すフローチャートである。また図3は、車両が単独で停止する場合の状況を示す上面図であり、図4は、車両が隣接車線に停止車両が存在する状態で停止する場合の状況を示す上面図であり、図5は、車両が同一車線に停止車両が存在する状態で停止する場合の状況を示す上面図である。図6は、車両が停止する際の状況とブレーキオンのタイミングとの関係を、運転者毎に統計的に示すグラフであり、図7は、車両が停止する際の状況とアクセルオフのタイミングとの関係を、運転者毎に統計的に示すグラフである。
【0051】
図2において、本実施形態に係る車両の制御装置の学習動作時には、先ず運転者認識部110において、車両の運転者が認識される(ステップS01)。即ち、現在車両を運転しているのが誰であるかが認識される。運転者が認識されると、その情報は学習部120に出力され、以降は認識された運転者別での学習動作が行われることになる。このような運転者の認識動作は、例えばエンジン始動時等に行われる。
【0052】
車両の走行中には、減速検出部140において、運転者による減速行動の開始が監視されている(ステップS02)。ここで、運転者による減速行動が検出されると(ステップS02:YES)、検出された減速行動が、車両を停止させるための減速行動であるか否かが判定される(ステップS03)。
【0053】
減速検出部140は、例えば自車両前方のカーブ、交差点、一時停止線、或いは他の車両や歩行者等の減速対象までの距離が所定の範囲内である場合に、車両が停止すると判定する。所定の範囲は、車両が停止するか否かを判定するための閾値であり、予め理論的、実験的或いは経験的に求められた値が設定されている。
【0054】
減速検出部140は、停止以外の減速理由(例えば、前方の車両の有無や上限速度等から推測される車両を減速すべき理由)を発見しない場合に、車両が停止すると判定するようにしてもよい。また、車両の速度がゼロとなった場合に車両が停止したと判定してもよい。即ち、車両が実際に停止してから判定されてもよい。この場合、減速中に検出される減速タイミングは、判定が完了するまで一旦メモリ等の記憶装置に記憶される。
【0055】
減速検出部は更に、運転者の入力操作に基づいて車両が停止する判定してもよい。具体的には、例えば運転手が減速行動を開始する前に、これから行う減速行動が停止のための減速であることを入力したり、減速行動を終了してから、行われた減速行動が停止のための減速であったことを入力したりしてよい。
【0056】
そして、検出された減速行動が車両を停止させるための減速行動であると判定された場合には(ステップS03:YES)、検出された減速行動のタイミングが、減速タイミングとして検出される(ステップS04)。
【0057】
続いて、本実施形態に係る車両の制御装置では、状況検出部130において、自車の前方に停止車両が存在しているか否かが判定される(ステップS05)。例えば、図3に示すような状況では、自車両200の前方に(具体的には、停止対象である停止線200までに)停止車両が存在していないと判定され(ステップS05:NO)、状況検出部130において、車両が単独で停止する場合のパターンがセットされる(ステップS06)。即ち、状況検出部130では、自車両200が単独であるという状況が検出される。
【0058】
自車の前方に停止車両が存在していると判定された場合(ステップS05:YES)、停止車両が自車両と同一の車線に存在しているか否かが判定される(ステップS07)。例えば、図4に示すような状況では、自車両200が走行する車線と同一の車線に停止車両が存在していない(具体的には、前方には停止車両300が存在しているが、隣接する車線に停止している)と判定され(ステップS07:NO)、状況検出部130において、他車線に停止車両がいる場合のパターンがセットされる(ステップS08)。即ち、状況検出部130では、自車両200の隣接する車線に停止車両300が存在するという状況が検出される。
【0059】
他方で、図5に示すような状況では、自車両200が走行する車線と同一の車線に停止車両が存在していると判定され(ステップS07:YES)、状況検出部130において、自車線に停止車両がいる場合のパターンがセットされる(ステップS09)。即ち、状況検出部130では、自車両200の走行する車線に停止車両300が存在するという状況が検出される。
【0060】
上述したように停止する際の状況が検出されると、ステップS04において検出された減速タイミングと、ステップS06、ステップS08及びステップS09において検出された状況とが、互いに関連づけて学習される(ステップS10)。即ち、運転者による減速タイミングが、停止する際の状況別に記憶される。
【0061】
図6において、本願発明者の研究によれば、運転者によるブレーキ操作が開始されるタイミングには、状況に応じた傾向があることが判明している。具体的には、図3に示すような自車両200が単独で停止する場合、図4に示すような隣接する車線に停止車両300が存在する場合、図5に示すような自車線に停止車両300が存在する場合の順で、ブレーキ操作が開始されるタイミングは遅い。即ち、図3から図5で示す3種類の状況を考えた場合、自車両200が単独で停止する場合がブレーキ操作のタイミングが最も遅く、自車線に停止車両300が存在する場合がブレーキ操作のタイミングが最も早い。このような傾向は、運転者A、B及びCで多少の違いがあるものの、概ね同様の傾向として捉えることが可能である。
【0062】
図7において、運転者によるアクセル操作が解除されるタイミングにも、状況に応じた傾向があることが判明している。但し、アクセル操作が解除されるタイミングは、図6に示したブレーキ操作が開始されるタイミングとは異なり、運転者によって傾向が大きく異なる。具体的には、運転者Aは、図3に示すような自車両200が単独で停止する場合におけるアクセル解除のタイミングが最も早く、図4に示すような隣接する車線に停止車両300が存在する場合、図5に示すような自車線に停止車両300が存在する場合には、アクセル解除のタイミングが遅くなる。運転者Bは、図3に示すような自車両200が単独で停止する場合、図4に示すような隣接する車線に停止車両300が存在する場合には、概ね同様のタイミングでアクセルを解除し、図5に示すような自車線に停止車両300が存在する場合に、最もアクセル解除のタイミングが早くなる。運転者Cは、図6で示したブレーキ操作の開始タイミングと同様に、図3に示すような自車両200が単独で停止する場合、図4に示すような隣接する車線に停止車両300が存在する場合、図5に示すような自車線に停止車両300が存在する場合の順で、アクセルが解除されるタイミングが遅い。
【0063】
図7で示したように、検出される減速行動が、運転者によって傾向が異なるものである場合、異なる運転者による減速行動をまとめて学習してしまうと、状況と減速タイミングとの関係が正確に学習できないおそれがある。しかしながら、本実施形態に係る車両の制御装置では、運転者認識部110において運転者が認識されているため(ステップS01参照)、異なる運転者のデータは、別々に学習される。従って、図7に示したアクセル解除のタイミングのような減速行動であっても、状況と減速タイミングとの関係を正確に学習できる。
【0064】
尚、上述した学習動作は、繰り返し行われることによってデータの精度を向上させることができる。このため、できるだけ多くの学習によって十分なデータが蓄積されることで、後述する運転支援制御を、より好適に実行することが可能となる。
【0065】
次に、本実施形態に係る車両の制御装置の運転支援制御動作について、図8を参照して説明する。ここに図8は、本実施形態に係る車両の制御装置の運転支援動作の流れを示すフローチャートである。
【0066】
図8において、本実施形態に係る車両の制御装置の運転支援制御動作時には、先ず運転者認識部110において、車両の運転者が認識される(ステップS11)。即ち、学習動作時のステップS01と同様に、現在車両を運転しているのが誰であるかが認識される。運転者が認識されると、その情報は状況認識部150に出力され、以降は認識された運転者別での状況認識及び運転支援制御が行われることになる。
【0067】
続いて、状況検出部130において、走行中の車両が減速対象地点に接近中であるか否かが判定される(ステップS12)。そして、車両が減速対象地点に接近中であると判定されると(ステップS12:YES)、状況検出部130による状況検出が行われる(ステップS13)。
【0068】
状況が検出されると、状況認識部150において、検出された状況が学習済みの状況であるか否かが判定される(ステップS14)。ここで、検出された状況が学習済みの状況であと判定された場合(ステップS14:YES)、学習結果に応じた減速タイミングが算出される(ステップS15)。具体的には、現在の状況と同一又は類似する状況として学習された状況に関連づけられている減速タイミングが、現在の状況に対応する減速タイミングとして算出される。
【0069】
減速タイミングが算出されると、算出された減速タイミングに基づいて、運転支援制御が行われる(ステップS16)。例えば、算出された減速タイミングとなっても運転者による減速行動が開始されない場合に警報を行う制御、算出された減速タイミングに合わせて自動で車両の減速を行う制御、算出された減速タイミングをいつもの減速タイミングとして運転者に提示する制御等が行われる。
【0070】
本実施形態に係る車両の制御装置では特に、上述した学習動作によって、車両が停止する際の状況に関連づけて減速タイミングが学習されている。このため、算出された減速タイミング(即ち、運転支援制御に用いられる減速タイミング)の精度が、状況に応じた極めて高いものとされている。従って、行われるべきでないタイミングで、或いは運転者に違和感を与えてしまうようなタイミングで運転支援制御が行われてしまうことを防止することができる。
【0071】
尚、本実施形態では、自車両前方の停止車両の有無及び位置を状況として検出する場合について説明したが、例えば車両の大きさや種類等を状況として検出するようにしてもよい。或いは、各種道路情報や、停止線の見えやすさ(例えば、色やかすれ具合)、横断歩道の有無、交差点の有無、歩行者の有無等を状況として検出するようにしてもよい。典型的には、複数のパラメータを状況として検出することで、より精度の高い減速タイミングを算出することが可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態に係る車両の制御装置によれば、運転者の減速行動に影響を与える状況を学習することで、適切なタイミングで運転支援制御を実行可能である。
【0073】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
110…運転者認識部、120…学習部、130…状況検出部、140…減速検出部、150…状況認識部、160…運転支援制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が停止する際の状況を検出する状況検出手段と、
前記車両が停止する際の運転者による減速タイミングを検出する減速検出手段と、
前記状況及び前記減速タイミングを互いに関連づけて学習を行う学習手段と、
前記学習後に、走行中の前記車両が学習された前記状況に近い状態となったことを認識する状況認識手段と、
前記状況に近い状態であることが認識された場合に、学習された前記状況に関連づけられた前記減速タイミングに応じて運転支援制御を行う運転支援制御手段と
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記減速検出手段は、停止対象までの距離が所定の範囲内である場合に、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記減速検出手段は、停止以外の減速理由を発見しない場合に、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記減速検出手段は、前記車両の速度がゼロとなった場合に、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記減速検出手段は、前記運転者の入力操作に基づいて、前記車両が停止すると判断し、前記減速タイミングを検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記状況検出手段は、道路情報を前記状況として検出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記状況検出手段は、前記運転者による停止目標の視認性を前記状況として検出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記状況検出手段は、前記車両が停止する際の衝突危険性を前記状況として検出することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記運転者の認識を行う運転者認識手段を更に備え、
前記学習手段は、前記運転者毎に学習を行う
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−121509(P2011−121509A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281744(P2009−281744)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】