説明

車両の制御装置

【課題】坂路で車両を停止させる際、制動装置を制御するソレノイドバルブの作動回数を抑制すると共に、車両の移動を抑制することができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】坂路においてブレーキペダル36の踏み込みが解除されても、制動手段100によって車速Vの上昇が制限されるため、規定時間Ta内ではパーキングロック可能な車速Vに制限される。したがって、パーキングレンジが選択された際に、ブレーキ油圧Pbkを制御するソレノイドバルブ50を再度作動させることが防止され、ソレノイドバルブ50の作動回数増加による耐久性低下が抑制される。また、ブレーキペダル36の踏み込みが解除されると、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが急激に低下せず、所定の勾配ΔPで低下するに従い制動力が発生するため、その車両の移動が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に係り、特に、坂路でのパーキングロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シフト操作装置における操作位置に応じた位置信号に基づいて駆動装置のシフトレンジの切替えを電気的に制御するシフトバイワイヤ形式の車両のシフト制御装置が知られている。このようなシフトバイワイヤ形式の車両のシフト制御装置において、例えば運転者によって車両停止レンジであるパーキングレンジが選択されると、シフトレンジを切り替えるための電動アクチュエータが駆動され、パーキングロック機構が電動アクチュエータを介してパーキングロックさせられる。このようなシフトバイワイヤ形式の車両のシフト制御装置では、運転者のパーキング操作とそのパーキング操作によってパーキングロック機構が実際にパーキングロックされるまでの間にタイムラグが生じ、このタイムラグの間に車両が動きだすとパーキングロックしにくい状況が発生することが知られている。
【0003】
ところで、前記シフトバイワイヤ形式の車両において、坂路でブレーキペダルを踏み込むことで車両を停止させた状態から、ブレーキペダルの踏み込みを解除すると、制動装置であるホイールブレーキに供給されるブレーキ油圧が低下する、すなわち制動力が低下するため、車両が坂路の勾配に従って移動し、車両が所定の車速を越えることでパーキングロック不可能となる可能性が生じる。これに対して、特許文献1に記載の車両の制御装置では、ブレーキペダルの踏み込みを解除した状態からパーキングレンジを選択した際に、車両の車速が所定速度を超えている場合には、制動力が増加するようにホイールブレーキの加圧制御を実施する技術が開示されている。これより、車両停止前の移動状態においてパーキングレンジが選択されると、車輪にかかる制動力が増加し、車両の車速がパーキングロック可能な範囲内に抑制されるため、パーキングロックが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−55355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両の制御装置において、ブレーキペダルの踏み込みが解除された場合には、制動装置であるホイールブレーキのブレーキ油圧が低下し、パーキングレンジが選択されると再びホイールブレーキのブレーキ油圧が上昇することとなる。このホイールブレーキのブレーキ油圧は、各車輪のホイールブレーキ毎に備えられている複数個のソレノイドバルブによって制御され、ソレノイドバルブを作動させてホイールブレーキの油圧を低下させ、再びソレノイドバルブを作動させて油圧を上昇させることとなる。したがって、ソレノイドバルブの作動回数が増加し、ソレノイドバルブの耐久性が低下する可能性があった。また、上述したシフトバイワイヤ形式の車両においては、パーキングロック機構が電動アクチュエータを介して作動するため、パーキングレンジが選択されてから実際にパーキングロック機構が作動してパーキングロックされるまでに時間遅れ(タイムラグ)が発生する。したがって、路面で車両をパーキングロックする際、そのタイムラグの間に路面の勾配によって車両が移動し易い問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、シフトバイワイヤ形式の車両の制御装置において、坂路で車両を停止させる際、制動装置を制御するソレノイドバルブの作動回数を抑制すると共に、車両の移動を抑制することができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)シフト操作装置における操作位置に応じた位置信号に基づいて車両のシフトレンジの切替えを電気的に制御する車両の制御装置であって、(b)ブレーキペダルの踏み込みに応じてホイールブレーキのブレーキ油圧を発生させて車輪の回転を制限する制動装置と、(c)前記シフト操作装置によってパーキングレンジが選択された際には、前記車輪に動力伝達可能に連結されている回転軸の回転を阻止するパーキングロック機構と、(d)その制動装置のホイールブレーキのブレーキ油圧をソレノイドバルブによって制御する制動手段とを備え、(e)その制動手段は、坂路停止時において前記ブレーキペダルの踏み込みを解除した際には、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧を所定の勾配で低下させることで、車速の上昇を制限することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両の制御装置において、前記制動手段は、パーキングレンジが確定されると、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2の車両の制御装置において、前記制動手段は、アクセルペダルが踏み込まれると、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1の車両の制御装置において、前記制動手段は、前記ブレーキペダルの踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間経過すると前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の勾配は、前記ブレーキペダルの踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間経過したときの車速が、前記パーキングロック可能な車速を越えない値となるように、予め求められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両の制御装置によれば、坂路においてブレーキペダルの踏み込みが解除されても、制動手段によって車速の上昇が制限されるため、所定の時間内ではパーキングロック可能な車速に制限される。したがって、パーキングレンジが選択された際に、制動装置を制御するソレノイドバルブを再度作動させることが防止され、ソレノイドバルブの作動回数増加による耐久性低下が抑制される。具体的には、パーキングレンジが選択された際にパーキングロック可能な速度を越えている場合、車速を上記パーキングロック可能な速度まで低下させるため、制動手段によってホイールブレーキの油圧を上昇させて制動力を増加させる必要が生じる。これに対して、ブレーキペダルの踏み込み解除後の車速の上昇が制限されるようにホイールブレーキのブレーキ油圧が所定の勾配で低下制御されることで、パーキングレンジが選択されても再びホイールブレーキの油圧をソレノイドバルブによって上昇させることなく、パーキングロック機構をパーキングロックさせることが可能となる。したがって、ソレノイドバルブの作動回数が少なくなり、ソレノイドバルブの耐久性低下が抑制される。また、シフトバイワイヤ形式の車両においては、パーキングレンジ選択からパーキングロックされるまでに時間遅れ(タイムラグ)が発生し、車両が移動する可能性があるが、ブレーキペダルの踏み込みが解除された後、ホイールブレーキのブレーキ油圧が急激に低下せず、所定の勾配で低下するに従い制動力が発生するため、その移動が抑制される。
【0013】
また、請求項2にかかる発明の車両の制御装置によれば、前記制動手段は、パーキングレンジが確定されると、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了するため、パーキングレンジが確定されるまでは、ホイールブレーキのブレーキ油圧によって制動力が発生するに従い、車速の上昇および車両の移動が防止される。また、パーキングレンジが確定されると、ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御が終了するため、必要以上に油圧制御が実施されずに済み、ブレーキ油圧を制御するソレノイドバルブの消費電力が低減される。
【0014】
また、請求項3にかかる発明の車両の制御装置によれば、前記制動手段は、アクセルペダルが踏み込まれると、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了するため、運転者がアクセルペダルを踏み込む発進操作時に、制動力がかかることで運転者に違和感を与えることが防止される。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の車両の制御装置によれば、前記制動手段は、ブレーキペダルの踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間経過すると、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了するため、運転者が意図する走行状態と実際の車両の走行状態とのズレが抑制される。具体的には、運転者がブレーキペダルの踏み込みを解除してから規定時間経過してもパーキングレンジが選択されない場合、運転者にはパーキングロックの意思がないものと判断される。このような場合には、制動手段を終了することで、運転者の意図する走行状態と実際の車両の走行状態とを一致させることができる。
【0016】
また、請求項5にかかる発明の車両の制御装置によれば、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の勾配は、前記ブレーキペダルの踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間経過したときの車速が、前記パーキングロック可能な車速を越えない値となるように予め求められている。このようにすれば、ホイールブレーキのブレーキ油圧が予め求められている勾配で低下すると、規定時間内においては、車速がパーキングロック可能な車速を越えないため、ブレーキ油圧を制御するソレノイドバルブを再び作動させることなくパーキングロックが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例の車両用動力伝達装置の構成を説明するための骨子図である。
【図2】図1の動力分配機構の各回転要素の回転速度の相対的関係を示す共線図である。
【図3】図1のパーキングロック機構の構成を説明する図である。
【図4】図1の車両用動力伝達装置において、複数種類のシフトレンジを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置の一例を示す図である。
【図5】図1の動力伝達装置を制御するための制御装置としての電子制御装置に入力される信号およびその電子制御装置出力される信号を例示する図である。
【図6】図5の電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図7】図1のエンジンの最適燃費率曲線を表す図である。
【図8】坂路においてブレーキペダルが踏み込まれることで停止された状態からブレーキペダルの踏み込みを解除したときの制動力の変化を示す図である。
【図9】図5の電子制御装置の制御作動の要部すなわち坂路でブレーキペダルの踏み込みにより車両を停止させた状態から、ブレーキペダルの踏み込みを解除したとき、車速の上昇を制限することで、ブレーキ油圧の上昇を防止しつつパーキングロックを可能とする制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図10】図5の電子制御装置によって制御されるホイールブレーキのブレーキ油圧の時間変化およびソレノイドバルブの作動回数を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例の車両用動力伝達装置10(以下、動力伝達装置10)の構成を説明するための骨子図である。図1において、動力伝達装置10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、その入力軸14と車輪38との間の動力伝達経路においてその入力軸14に連結された差動部11と、その差動部11と駆動輪32との間の動力伝達経路において差動部11に連結されている出力軸22とを、備えている。この動力伝達装置10は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14には、走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8が直接にあるいは脈動吸収ダンパ15を介して直接的に連結されている。また、エンジン8の動力は、差動部11等を介して、さらに動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置24(終減速機)および一対の車軸26等を順次介して左右一対の駆動輪32へ伝達される。
【0020】
差動部11は、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する遊星歯車装置から成る機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機MG1および出力軸22に分配する差動機構としての動力分配機構16と、その動力分配機構16に動力伝達可能に連結された第1電動機MG1と、出力軸22と一体的に回転するように設けられている第2電動機MG2とを備えている。なお、第1電動機MG1および第2電動機MG2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、動力分配機構16の差動状態を制御するための差動用電動機として機能する第1電動機MG1は、反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備える。そして、駆動輪32に動力伝達可能に連結された第2電動機MG2は、走行用の駆動力源として駆動力を出力する走行用電動機として機能するためモータ(電動機)機能を少なくとも備える。以下、これら第1電動機MG1及び第2電動機MG2を特に区別しない場合には、単に「電動機MG」と表す。
【0021】
動力分配機構16は、エンジン8と駆動輪32との間に連結された差動機構であって、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ0を有するシングルピニオン型の遊星歯車装置で構成される。この動力分配機構16は、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転および公転可能に支持するキャリヤCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素(要素)として備えている。サンギヤS0の歯数をZs、リングギヤR0の歯数をZrとすると、上記ギヤ比ρ0はZs/Zrである。
【0022】
この動力分配機構16においては、キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は伝達部材18に連結されている。動力分配機構16は遊星歯車装置の3要素であるサンギヤS0、キャリヤCA0、リングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機MG1と出力軸22とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機MG1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機MG2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず出力軸22の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が差動状態とされると差動部11も差動状態とされ、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度/出力軸22の回転速度)が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされる。このように動力分配機構16が差動状態とされると、動力分配機構16に動力伝達可能に連結された第1電動機MG1および/または第2電動機MG2の運転状態が制御されることにより、動力分配機構16の差動状態、すなわち入力軸14の回転速度Ninと出力軸22の回転速度Noutの差動状態が制御される。
【0023】
動力分配機構16として機能するシングルピニオン型の遊星歯車装置の各回転要素の回転速度の相対的関係は、図2の共線図により示される。この共線図において、縦軸S0、縦軸CA0、および縦軸R0は、サンギヤS0の回転速度、キャリヤCA0の回転速度、およびリングギヤR0の回転速度をそれぞれ表す軸であり、縦軸S0、縦軸CA0、および縦軸R0の相互の間隔は、縦軸S0と縦軸CA0との間隔を1としたとき、縦軸CA0と縦軸R0との間隔がρ(サンギヤS0の歯数Zs/リングギヤR0の歯数Zr)となるように設定されたものである。
【0024】
動力分配機構16において、キャリヤCA0に入力されるエンジン24の出力トルクに対して、第1電動機MG1による反力トルクがサンギヤS0に入力されると、出力要素となっているリングギヤR0には、直達トルクが現れるので、第1電動機MG1は発電機として機能する。また、リングギヤR0の回転速度すなわち出力軸22の回転速度(出力軸回転速度)Noutが一定であるとき、第1電動機MG1の回転速度Nmg1を上下に変化させることにより、エンジン24の回転速度(エンジン回転速度)Neを連続的に(無段階に)変化させることができる。図2の破線は第1電動機MG1の回転速度Nmg1を実線に示す値から下げたときにエンジン回転速度Neが低下する状態を示している。すなわち、エンジン回転速度Neを例えば燃費が最もよい回転速度に設定する制御を、第1電動機MG1を制御することによって実行することができる。この種のハイブリッド形式は、機械分配式あるいはスプリットタイプと称される。上記より、動力分配機構16の差動状態が第1電動機MG1によって電気的に制御される。
【0025】
図1に戻り、前記制動装置45は、常用ブレーキとしてよく知られた所謂ディスクブレーキであって、車軸に固定されて車輪38と共に回転するディスク47と、車体に連結されたサスペンションを構成する部材等に配設され、ブレーキペダル36の操作量に応じてマスターシリンダー49等からブレーキ油圧が供給されることによりブレーキパッド(摩擦材)を介してディスク47を挟圧するキャリパ48とを備えるホイールブレーキ46と、ブレーキアクチュエータ43等とを有して構成されている。上記ブレーキアクチュエータ43は、たとえば、ブレーキ油圧の元圧を発生させる油圧ポンプやアキュムレータ、および各車輪38に備えられるホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkを調圧する複数個のソレノイドバルブ50等を備え、後述する電子制御装置34からの指令に従って各車輪38のキャリパ48へブレーキ油圧Pbkを供給するとともにその供給されるブレーキ油圧Pbkを調圧制御するものである。上記ホイールブレーキ46は、車両の制動時において、車輪38と共に回転するディスク47に対してキャリパ48からブレーキパッドが押し付けられることにより発生する摩擦により車輪38の回転を制動(制限)するものであり、その摩擦による制動力(油圧制動トルクTB−OIL、ブレーキ制動トルク)は、ブレーキアクチュエータ43から供給されるブレーキ油圧Pbkの大きさに応じて増減させられるようになっている。ここで、制動装置45は、その作動回数が多くなるほど耐久性が問題となり、例えば上記ブレーキパッドやソレノイドバルブ50等の作動回数が多くなるとそれらブレーキパッドやソレノイドバルブ50等が早期に消耗するからである。なおソレノイドバルブ50は、各ホイールブレーキ46の制動力を独立して制御するため、複数個備えられている。例えば、各車輪38のホイールブレーキ46毎に、増圧用ソレノイドバルブおよび減圧用ソレノイドバルブの2個のソレノイドバルブ50が設けられている。
【0026】
また、出力軸22には、パーキングロック機構52を構成するパーキングギヤ54が設けられている。図3に、パーキングロック機構52の構成を示す。パーキング機構52は、駆動輪32に連結されている出力軸22(本発明の回転軸に対応する)に固定されたパーキングギヤ54と、そのパーキングギヤ54と噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ54の回転ををロックするパーキングロックポール56と、パーキングロックポール56と当接するテーパ部58に挿し通されてテーパ部58を一端部において支持するパーキングロッド60と、パーキングロッド60に設けられてテーパ部58をその小径方向へ付勢するスプリング62と、パーキングロッド60の他端部に回動可能に接続されて節度機構により少なくともパーキング位置に位置決めされるディテントプレート64と、ディテントプレート64に固設されて一軸まわりに回転可能に支持されたシャフト68と、シャフト68を回転駆動させる電動アクチュエータ70と、シャフト68の回転角度を検出するロータリエンコーダ72と、ディテントプレート64の回転に節度を与えて各シフト位置に固定するディテントスプリング74およびその先端部に設けられた係合部76とを、備えている。
【0027】
ディテントプレート64は、シャフト68を介して電動アクチュエータ70の駆動軸に作動的に連結されており、パーキングロッド60と共に電動アクチュエータ70により駆動されてシフト位置を切り替えるためのシフト位置決め部材として機能する。ディテントプレート64の頂部には、第1凹部78および第2凹部80が形成されている。そして、第1凹部78がパーキングロック位置に対応しており、第2凹部80が非パーキングロック位置に対応している。また、ロータリエンコーダ72は、電動アクチュエータ70の駆動量すなわち回転量に応じた計数値(エンコーダカウント)を取得するためのパルス信号を出力する。
【0028】
図3は、パーキング機構52がパーキングロック状態にある場合を表している。パーキングロック機構52がパーキングロック状態にある場合、パーキングロックポール56とパーキングギヤ54とが噛み合わされることで、パーキングギヤ54の回転が阻止されている。なお、パーキングギヤ54は、駆動輪32に作動的に連結されているため、パーキングギヤ54がロック状態にあると、駆動輪32の回転も同様に阻止される。パーキングロックポール56は、パーキングロッド60の一端に設けられているテーパ部58との当接位置が変化させられることで、その位置が調節される。例えば、パーキングロックポール56がテーパ部58の大径部と当接する場合、パーキングギヤ54とパーキングロックポール56とが噛み合うことで、パーキングロック状態とされる(図1)。一方、パーキングロックポール56がテーパ部58の小径部と当接する場合、パーキングギヤ54との噛合いが外れ、パーキングロック状態が解除される。
【0029】
上記パーキングロックポール56とテーパ部58との当接位置は、テーパ部58の軸方向位置に基づいて調節される。テーパ部58の軸方向位置は、はパーキングロッド60によって変化させられ、それに伴ってパーキングロックポール56とテーパ部58との当接位置が調節される。例えば、矢印C方向にテーパ部58が移動させられると、パーキングロックポール56はテーパ部58の小径側と当接することとなる。したがって、パーキングロックポール56の先端が鉛直下方に移動されるに伴って、パーキングロックポール56とパーキングギヤ54との噛合が解除される。すなわちパーキングロック状態が解除される。
【0030】
一方、矢印Cとは逆方向にテーパ部58が移動させられると、パーキングロックポール56の先端がテーパ部58の大径側と当接することとなる。したがって、パーキングロックポール56の先端が鉛直上方に移動されるに伴って、パーキングロックポール56とパーキングギヤ54とが噛み合わされる。すなわち、パーキングロック状態とされる。
【0031】
また、パーキングロッド60の軸方向への移動は、ディテントプレート64の回動位置すなわちシャフト68の回転位置に応じて調節される。シャフト68は電動アクチュエータ70によって回転させられ、走行レンジを制御する後述する電子制御装置34から出力される電動アクチュエータ70の作動信号に基づいて、その回転位置が制御される。ここで、シャフト68において、ディテントプレート64の第1凹部78とディテントスプリング74に設けられている係合部76とが係合される回転位置がパーキングロック位置、すなわちパーキングギヤ54とパーキングロックポール56とが噛み合う位置に対応している。一方、ディテントプレート64の第2凹部80と係合部76とが係合される回転位置がパーキングロック解除位置、すなわちパーキングギヤ54とパーキングロックポール56との噛合いが解除される位置に対応している。
【0032】
したがって、電子制御装置34からパーキングロック指令が出力されると、電動アクチュエータ70は、シャフト68を上記第1凹部78と係合部76とが係合する回転位置まで回転させる。また、電子制御装置34からパーキングロック解除指令が出力されると、電動アクチュエータ70は、シャフト68を上記第2凹部80と係合部76とが係合する回転位置まで回転させる。なお、シャフト68の回転位置は、予め設定されている基準回転位置よりロータリエンコーダ72によって検出される計数値が、パーキングロック位置およびパーキングロック解除位置に対応する予め設定された回転位置に相当する計数値となるように制御される。
【0033】
図4は、車両用動力伝達装置10において、複数種類のシフトレンジを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置81の一例を示す図である。このシフト操作装置81は、例えば運転席の近傍に配設され、複数のシフトポジションPshへ操作されるモーメンタリ式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(初期位置)へ自動的に復帰する自動復帰式の操作子としてのシフトレバー83を備えている。また、本実施例のシフト操作装置81は、車両用動力伝達装置10のシフトレンジをパーキングレンジ(Pレンジ)としてパーキングロックする為のPスイッチ82をシフトレバー83の近傍に別スイッチとして備えている。
【0034】
シフトレバー32は、図4に示すように車両の前後方向または上下方向すなわち縦方向に配列された3つのシフトポジションPshであるRポジション(R位置)、Nポジション(N位置)、Dポジション(D位置)と、それに平行に配列されたMポジション(M位置)、Bポジション(B位置)とへそれぞれ操作されるようになっており、シフトポジションPshに応じた位置信号を後述する電子制御装置34へ出力する。また、シフトレバー32は、RポジションとNポジションとDポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、MポジションとBポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、更に、NポジションとMポジションとの相互間で上記縦方向に直交する車両の横方向に操作可能とされている。
【0035】
Pスイッチ82は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、運転者により押込み操作される毎にPスイッチ信号を電子制御装置34へ出力する。例えば車両用動力伝達装置10のシフトレンジが非PレンジにあるときにPスイッチ82が押されると、フットブレーキが踏まれており車両が停止状態である場合やパーキングロック可能な上限速度Vmaxにある場合などの所定の条件が満たされていれば、シフトレンジがパーキングレンジとされる。このパーキングレンジは、車両用動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断され、且つ、パーキングロック機構52により車輪38の回転を機械的に阻止するパーキングロックが実行される駐車レンジである。
【0036】
シフト操作装置81のMポジションはシフトレバー32の初期位置(ホームポジション)であり、Mポジション以外のシフトポジションPsh(R,N,D,Bポジション)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー83を解放すればすなわちシフトレバー83に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー83はMポジションへ戻るようになっている。シフト操作装置81が各シフトポジションPshへシフト操作された際には、電子制御装置34によりシフトポジションPsh(位置信号)に基づいてそのシフト操作後のシフトポジションPshに対応したシフトレンジに切り替えられる。
【0037】
各シフトレンジについて説明すると、シフトレバー83がRポジションへシフト操作されることにより選択されるRレンジは、車両を後進させる駆動力が駆動輪に伝達される後進走行レンジである。また、シフトレバー83がNポジションへシフト操作されることにより選択されるニュートラルレンジ(Nレンジ)は、車両用動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立レンジである。また、シフトレバー83がDポジションへシフト操作されることにより選択されるDレンジは、車両を前進させる駆動力が駆動輪に伝達される前進走行レンジである。また、シフトレバー83がBポジションへシフト操作されることにより選択されるBレンジは、Dレンジにおいて例えば電動機に回生トルクを発生させるなどによりエンジンブレーキ効果を発揮させ駆動輪の回転を減速させる減速前進走行レンジ(エンジンブレーキレンジ)である。
【0038】
上記動力伝達装置10では、シフト操作装置81の操作位置に応じた位置信号に応じて、各シフトレンジの切替が電気的に制御される所謂シフトバイワイヤ形式が採用されている。具体的には、シフト操作装置81の操作位置に応じた位置信号に基づいて、Pレンジおよび非Pレンジ(R,N,D,Bレンジ)の切替が、図3に示すように、電動アクチュエータ70の回転角制御によって切り替えられる。
【0039】
図5は、動力伝達装置10を制御するための制御装置としての電子制御装置34に入力される信号およびその電子制御装置34から出力される信号を例示している。この電子制御装置34は、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1電動機MG1、および第2電動機MG2に関するハイブリッド駆動制御、車両の走行状態に応じて制動装置45を作動させる制動制御、或いはパーキングロック機構52のパーキングロック制御等を実行するためのものである。
【0040】
電子制御装置34には、各センサやスイッチなどから、エンジン水温を示す信号、シフトポジションPshを表す信号、第1電動機MG1の回転速度Nmg1を表す信号、第2電動機MG2の回転速度Nmg2を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度Neを表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコン作動を示すエアコン信号、出力軸22の回転速度Noutに対応する車速Vを表す信号、ECTの作動を示すECT信号、サイドブレーキ操作を示す信号、常用ブレーキとしてのホイールブレーキ46の作動を制御する制動装置45(図1参照)を作動させるために操作されるブレーキペダル(操作体)36の操作量を検出するブレーキ操作量センサ37からのブレーキ操作量信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダル39の操作量(アクセル開度)Accを示すアクセル開度センサ40からのアクセル開度信号、路面の勾配θを検出する勾配センサ42からの路面勾配信号、車両の前後加速度Gを示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、入力軸14の回転速度Ninを表す信号、車両の重量を示す車重信号、各車輪38(図1参照)の車輪速を示す車輪速信号、パーキングロック機構52を作動させるPスイッチ82からのPポジション信号、ロータリエンコーダ72からのシャフト68の回転角度を表す信号等が、それぞれ供給される。
【0041】
また、上記電子制御装置34からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置への制御信号例えばエンジン8の吸気管に備えられた電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号や燃料噴射装置によるエンジン8の各気筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコン作動のための電動エアコン駆動信号、第1電動機MG1およびMG2の作動を指令する指令信号、コントローラBの作動のための指令信号、コントローラAの作動のための指令信号、シフトインジケータ作動のためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時に各車輪38へ必要な制動力を分配するとともに制動時の車輪38のスリップを防止するABS制御やVSC制御などを行うために作動させられるブレーキアクチュエータ43の作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号、パーキングロック機構52の作動状態を切り替える電動アクチュエータ70への信号、ブレーキアクチュエータ43に備えられているホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkを制御するソレノイドバルブ50への信号等が、それぞれ出力される。
【0042】
図6は、電子制御装置34による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、ハイブリッド制御手段84は、動力伝達装置10の前記無段変速状態すなわち差動部11の差動状態においてエンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機MG2との駆動力の配分や第1電動機MG1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速において、運転者の出力要求量としてのアクセルペダル操作量(アクセル開度)Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機MG2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機MG1の発電量を制御する。
【0043】
ハイブリッド制御手段84は、例えば図7に示すようなエンジン回転速度Neとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)Teとをパラメータとする二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に定められたエンジン8の動作曲線の一種である最適燃費率曲線Lef(燃費マップ、関係)を予め記憶しており、その最適燃費率曲線Lefにエンジン8の動作点Peg(以下、「エンジン動作点Peg」と表す)が沿わされつつエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTeとエンジン回転速度Neとなるように動力伝達装置10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。ここで、上記エンジン動作点Pegとは、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeなどで例示されるエンジン8の動作状態を示す状態量を座標軸とした二次元座標においてエンジン8の動作状態を示す動作点である。
【0044】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機MG1により発電された電気エネルギをインバータ86を通して蓄電装置88や第2電動機MG2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に出力軸22へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機MG1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ86を通してその電気エネルギが第2電動機M2Gへ供給され、その第2電動機MG2が駆動されて第2電動機MG2から出力軸22へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機MG2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0045】
ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置90に出力して必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度信号Accに基づいてスロットルアクチュエータを駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θthを増加させるようにスロットル制御を実行する。
【0046】
ハイブリッド制御手段84は、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動力源をエンジン8と電動機例えば第2電動機MG2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動力源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2電動機MG2を走行用の駆動力源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための図示しない駆動力源切換線図を予め記憶している。そして、ハイブリッド制御手段84は、前記駆動力源切換線図に基づいて、モータ走行或いはエンジン走行を実行する。
【0047】
ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第1電動機回転速度Nmg1を負の回転速度で制御例えば空転させて、差動部11の差動作用によりエンジン回転速度Neを零乃至略零に維持する。
【0048】
また、ハイブリッド制御手段84は、アクセルペダルオフの惰性走行時(コースト走行時)やブレーキペダルオンの制動時などにおいて、車輪38からエンジン8側へ伝達される逆駆動力により第2電動機MG2を回転駆動させて発電機として作動させ、その電機エネルギすなわち第2電動機発電電流をインバータ86を介して蓄電装置88へ充電する回生制御を実行する。このとき、第2電動機MG2が回転駆動される際の抵抗力が、車両の制動力(回生制動力)として作用する。
【0049】
パーキングレンジ判定手段92は、Pスイッチ82からのPポジション信号に基づいて、パーキングレンジが選択されたか否かを判定する。そして、パーキングレンジ判定手段92によって、パーキングレンジが選択されたものと判定されると、パーキングロック切替手段94が実行される。パーキングロック切替手段94は、パーキングレンジ判定手段92からのPポジション信号に基づいて、パーキングロック機構52の電動アクチュエータ70を駆動し、パーキングロック機構52のパーキングロック状態を切り替える。
【0050】
また、パーキングレンジ判定手段92は、パーキングレンジが選択されてパーキングロック機構52がパーキングロックされたか、すなわちパーキングレンジが確定されたか否かを判定する。パーキングレンジ判定手段92は、パーキングロックの確定の判定を、例えばパーキングロック機構52の電動アクチュエータ70の回転量を検出するロータリエンコーダ72から検出される計数値が、予め設定されているパーキングロック時の計数値に到達したか否かに基づいて判定する。
【0051】
制動手段100は、各車輪38に設けられたホイールブレーキ46の油圧制動トルクTb-oil(制動力)を制御するものである。例えば、制動手段100は、油圧制動トルクTb-oilが、運転者のブレーキペダル操作量および車速Vに応じて算出された要求油圧制動トルクTb-oil*に一致するようにブレーキアクチュエータ43を作動させる。具体的には、制動手段100は、ホイールブレーキ46に供給されるブレーキ油圧Pbkを、ブレーキアクチュエータ43に備えられているソレノイドバルブ50によって制御することで、油圧制動トルクTb-oilすなわち制動力を制御する。
【0052】
制動手段100は、アクセルペダルオフの惰性走行時(コースト走行時)やブレーキペダルオンの制動時などにおいて、ハイブリッド制御手段84の第2電動機MG2による回生制御によって得られる回生制動力と、制動手段100によって得られる制動力との総和が、運転者の要求する制動力となるように、ホイールブレーキ46による制動力(油圧制動トルクTb-oil)を制御する。具体的には、予め運転者の要求する制動力に対して、ハイブリッド制御手段84の第2電動機MG2による回生制御によって得られる回生制動力と、制動手段100による制動力との制動力分担が予め設定されており、ハイブリッド制御手段84による回生制動力と制動手段100による制動力とが、その制動力分担となるように協調制御が実施される。
【0053】
また、制動手段100は、低摩擦係数路面などにおける発進走行時や制動時、旋回時の車両の安定性を高めるために、TRC(トラクションコントロール)制御やABS(アンチロックブレーキシステム)制御、あるいはVSC(ヴィークルスタビリティコントロール)制御などを実行する。なお、制動手段100には、上記油圧制動トルクTb-oilの制御やTRC制御等に必要な車両状態値を表す信号、例えば各車輪38の回転速度を表す信号、または車両の前後加速度Gやヨーレートを表す信号などが適宜供給されるようになっている。
【0054】
また、制動手段100は、坂路停止時においてブレーキペダル36の踏み込みを解除した際には、マスターシリンダ49のブレーキ油圧Pbkを所定の勾配ΔPで低下させることで、規定時間内において車速Vの上昇を抑え、パーキングレンジ選択可能な速度に制限する。この制動手段100を実施するに際して、車両が停止している路面が坂路であるか否か、車速Vが零であり、且つ、ブレーキペダル36が踏み込まれた状態からその踏み込みが解除されたか否かが判定される。
【0055】
車両が停止している路面が坂路であるか否かは、坂路判定手段102によって判定される。坂路判定手段102は、路面勾配θを検出し、検出された路面勾配θが零以上であるか否かを判定する。なお、路面勾配θは、例えば路面勾配θを検出する勾配センサや車両を停止させている制動力すなわちホイールブレーキ46に供給されているブレーキ油圧Pbkの大きさ等に基づいて検出される。車速Vが零であるか否かは車速判定手段104によって判定される。車速判定手段104は、車速Vに対応する出力軸22の回転速度Noutを検出し、その回転速度Noutが零であるか否かを判定する。また、ブレーキペダル36が踏み込まれた状態からその踏み込みが解除されたか否かは、ブレーキ作動状態判定手段106によって判定される。ブレーキ作動状態判定手段106は、ブレーキ操作量センサ37からのブレーキ操作量信号に基づいてブレーキペダル36の操作量を検出し、ブレーキペダル36が踏み込まれたオン操作(ON操作)状態からブレーキペダル36の踏み込みが解除されるオフ操作(OFF操作)されたか否かを判定する。
【0056】
そして、車両が坂路においてブレーキペダル36の踏み込みによって停止された状態から、その踏み込みが解除されたと判定されると、制動手段100は、ホイールブレーキ46に供給されるブレーキ油圧Pbkを、ブレーキアクチュエータ43のソレノイドバルブ50を制御することで、所定の勾配ΔPで低下させる。以下、前記ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPの決定方法について説明する。
【0057】
図8は、各勾配(θ1°<θ2°<θ3°)を有する坂路においてブレーキペダル36が踏み込まれることで停止された状態からブレーキペダル36の踏み込みを解除したときの制動力(油圧制動トルクTb-oil)の関係を示している。なお、前記制動力は、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの大きさに比例するため、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkに置き換えて考えることができる。また、t1時点以前すなわちブレーキオフ操作以前の各坂路の勾配θ(θ1°<θ2°<θ3°)に対応する制動力(ブレーキ油圧Pbk)は、車両停止に最低限必要な制動力(ブレーキ油圧Pbk)を示している。図8に示すように、坂路の勾配θ(θ1°<θ2°<θ3°)が大きくなるに従って、車両を停止させるために最低限必要な制動力およびブレーキ油圧Pbkが大きくなる。また、t1時点は、ブレーキペダル36の踏み込みが解除された時点を示しており、制動手段100が実行されることで、t1時点よりホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが所定の勾配ΔPで低下している。
【0058】
図8において、ブレーキ油圧Pbkが所定の勾配ΔPで減少すると、制動力が減少し、車両に加速度α(t)が発生する。上記関係を運動方程式で示すと、下式(1)となる。ここで、Mは車両質量、Aはタイヤ径等に基づく定数、μはブレーキパッドの摩擦係数、ΔPはブレーキ油圧Pbkの勾配、tは経過時間をそれぞれ示している。また、式(1)を変形すると、下式(2)となる。
【数1】

【数2】

【0059】
ここで、車両の車速Vは、図8に示す網掛け部の面積に対応することから、式(2)を積分することで求められることとなる。すなわち、時間T経過後の車速V(T)は下式(3)で示される。なお、式(3)はブレーキペダル36の踏み込みを解除してから、すなわち図8に示すt1時点から時間Tだけ経過したときの車速V(T)を示している。ここで、V(T)が予め設定されたエンゲージ速度VEに到達するまでにかかる時間Tを予め設定されたエンゲージ時間TEとすると、エンゲージ時間TEは、式(3)を変形することで下式(4)で示される。
【数3】

【数4】

【0060】
また、車速V(T)がエンゲージ速度VEに到達するまでの平均加速度αは、下式(5)で示される。ここで、式(5)において、定数A、車両の質量M、エンゲージ速度VEは、それぞれ一定値であるため、平均加速度αは下式(6)の関係となる。式(6)より、平均加速度αは、ブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPが大きくなるに従って大きくなる。また、平均加速度αは、ブレーキ油圧の勾配ΔPに応じて変化し、坂路勾配θによって影響されない。
【数5】

【数6】

【0061】
ブレーキ油圧の勾配ΔPは、上述した関係式に基づいて設定される。具体的には、前記エンゲージ速度VEは、パーキングロック機構52において、パーキングロック可能な上限速度Vrockの範囲内に設定される。また、エンゲージ時間TEは、パーキングロック機構52において、Pスイッチ82が押されてから実際にパーキングロックされるまでの時間Trockを考慮した値に設定される。パーキングロック機構52においては、電動アクチュエータ70を介してパーキングロックされるため、Pスイッチ82が押されてから実際にパーキングロック機構52がパーキングロックされるまでに時間がかかり、これにかかる時間Trock分だけ車速Vが増加する。したがって、エンゲージ時間TEは、前記時間Trockと同値、或いはそれ以上の時間に設定して勾配ΔPが算出される。
【0062】
このようにエンゲージ速度VE(例えばVrock)およびエンゲージ時間TE(例えばTrock)が設定されると、例えばブレーキペダル36の踏み込みの解除と同時にPスイッチ82が押されてから、パーキングロック機構52が実際にパーキングロックされるまでの時間Trockにおいて、車速Vがパーキングロック可能な速度Vrockを越えないホイールブレーキ46のブレーキ油圧の勾配ΔPが求められる。ここで、パーキングロック可能な速度VrockおよびPスイッチ82が押されてから実際にパーキングロックされるまでにかかる時間Trockは、予めパーキングロック機構52の性能試験を実施することで求められる。上記より、パーキングロック機構52において、パーキングペダル36の踏み込みが解除されてから実際にパーキングロックされるまでに車速Vがパーキングロック可能な速度Vrockを越えないブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPを、式(3)等に基づいて算出することができる。式(3)からもわかるように、ブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPは、路面の勾配θに拘わらず一定となる。なお、前記ブレーキ油圧の勾配ΔPは、予めオフラインで算出され、電子制御装置34のROMに記憶される。制動手段100は、その記憶されているホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが、その勾配ΔPで低下するようにブレーキアクチュエータ43のソレノイドバルブ50を制御する。また、ブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPを、計算ではなく実験的に求めても構わない。
【0063】
アクセル操作判定手段108は、制動手段100によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが所定の勾配ΔPで低下されている間に、運転者によってアクセルペダル39が踏み込まれたか否かを判定する。制動手段100の制御中にアクセルペダル39が踏み込まれると、その操作は運転者による発進意思があるものと判断される。このような場合、制動手段100は、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの制御を終了する。すなわちブレーキ油圧Pbkを解放して制動力を解除する。制動手段100による制御が終了されることで、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが解放され、発進時の走行抵抗となることが回避され、運転者に発進時の違和感を与えること防止されることとなる。なお、アクセルペダル39の踏み込み操作は、アクセル開度センサ40からのアクセル開度信号に基づいて判定される。
【0064】
経過時間判定手段110は、ブレーキペダル36の踏み込みが解除されてから、すなわち制動手段100の制御開始からの経過時間tをカウントし、その経過時間tが予め設定されている規定時間Taを超えたか否かを判定する。ブレーキペダル36の踏み込みが解除されてから規定時間Taを越えてもパーキングロック機構52がパーキングロックされない場合、運転者には車両をパーキングロックする意思がないものと判断される。このような場合、制動手段100は、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの制御を終了することで、運転者の意図しない制動力をなくし、運転者の意図と車両の挙動とのズレを抑制する。なお、規定時間Taは、予め実験や計算によって求められ、予め設定されているブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPより、規定時間Ta内においてパーキングロック可能な範囲すなわち車速Vがパーキングロック時において上限速度Vrockを越えない範囲に設定される。具体的には、前述したブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPを求める際に設定したエンゲージ時間TEに対応し、例えば前述したPスイッチ82が押されてから実際にパーキングロック機構52がパーキングロックされるまでにかかる時間Trockに設定される。
【0065】
また、制動手段100は、前述したパーキングレンジ判定手段92よりパーキングレンジが選択されパーキングロック機構52がパーキングロックされたと判定されると、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの制御を終了する、すなわち制動力を解除する。
【0066】
図9は、電子制御装置34の制御作動の要部すなわち坂路でブレーキペダル36の踏み込みにより車両を停止させた状態から、ブレーキペダル36の踏み込みを解除したとき、車速Vの上昇を制限することで、ブレーキ油圧Pbkの上昇を防止しつつパーキングロックを可能とする制御作動を説明するためのフローチャートである。なお、上記フローは、数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
【0067】
先ず、坂路判定手段102に対応するステップSA1(以下、ステップを省略する)において、車両停止時の路面が勾配を有する坂路であるか否かが判定される。SA1が否定されると、本ルーチンは終了させられる。一方、SA1が肯定されると、車速判定手段104およびブレーキ作動状態判定手段106に対応するSA2において、車速Vが零であり、且つ、ブレーキペダル36が踏み込まれた状態(ブレーキON)であるか否かが判定される。SA2が否定されると、本ルーチンは終了させられる。一方、SA2が肯定されると、ブレーキペダル36が踏み込まれた状態からその踏み込みを解除するオフ操作(ブレーキOFF操作)が実行されたか否かが判定される。SA3が否定されると、本ルーチンは終了させられる。
【0068】
一方、SA3が肯定されると、制動手段100に対応するSA4において、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが所定の勾配ΔPで低下させられることで、車速Vの上昇が制限される。なお、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkは、ブレーキアクチュエータ43に設けられているソレノイドバルブ50によって制御される。また、ΔPの勾配は、予め実験や計算によって求められて記憶されている値であり、車速Vが、ブレーキペダル36の踏み込みを解除してから規定時間Ta内において、パーキングロック機構52のパーキングロック可能な上限速度Vrockを越えない勾配に設定されている。なお、本フローにおいて、SA3と同時、或いはそれ以降に運転者によってPスイッチ82が押され、パーキングレンジが選択されるものとする。
【0069】
次いで、経過時間判定手段110に対応するSA5では、ブレーキペダル36の踏み込みを解除してから、すなわちホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkを所定の勾配ΔPで抜きはじめてからの時間tが規定時間Taを越えたか否かが判定される。SA5が肯定される、すなわちホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkを所定の勾配ΔPで抜きはじめてから規定時間Taを越えた場合、運転者にはパーキングロック機構52をパーキングロックする意思がないものと判断され、制動手段100に対応するSA8において、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが解放され、制動力が解除される。
【0070】
SA5が否定される場合、アクセル操作判定手段108に対応するSA6に進む。SA6では、アクセルペダル39が運転者によって踏み込まれるON操作が実行されたか否かが判定される。SA6が肯定される場合、運転者に車両発進の意思があるものと判断され、SA8において、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが解放される。一方、SA6が否定される場合、パーキングレンジ判定手段92に対応するSA7において、Pスイッチ82が押されることで、パーキング機構52がパーキングロックされるに従い、パーキングレンジに入ったか否か、すなわちパーキングレンジが確定されたか否かが判定される。SA7が肯定される場合、SA8において、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが解放される。一方、SA7が否定される場合、SA5に戻り、SA5〜SA7にいずれかが肯定されるまで、繰り返しホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkを所定の勾配ΔPで低下させる制御が実行される。
【0071】
図10は、電子制御装置34によって制御されるホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの時間変化を示すタイムチャートである。図10に示すt1時点において、坂路でブレーキペダル36が踏み込まれることで停止した状態からその踏み込みが解除されると、実線で示すように、ブレーキ油圧Pbkが所定の勾配ΔPで低下する。なお、一点鎖線は、従来のブレーキ油圧Pbkの変化を示しており、t1時点でブレーキペダル36の踏み込みが解除されると、ブレーキ油圧Pbkが解放されるために急激に低下することとなる。そして、t2時点においてPスイッチ82が押されることで、Pポジション信号が出力されると、パーキングロック機構52がパーキングロックされる。このとき、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが所定の勾配ΔPで低下しているに従い、車速Vがパーキングロック可能な上限速度Vrockの範囲内に制限されているため、ブレーキ油圧Pbkをソレノイドバルブ50によって上昇させることなくパーキングロックが可能となる。
【0072】
一方、一点鎖線で示す従来の場合では、ブレーキ油圧Pbkが大きく低下しているため、t2時点での車速Vがパーキングロック可能な上限速度Vrockを越えている。したがって、車速Vを上限速度Vrockまで低下させるため、一点鎖線に示すように、t2時点以降において再びブレーキ油圧Pbkを上昇させて制動力を発生させている。このように、従来では、t1時点でブレーキ油圧Pbkを低下させ、さらに、t2時点でブレーキ油圧Pbkを上昇させる必要があるため、ブレーキ油圧Pbkを制御するソレノイドバルブ50の作動回数が2回となる。一方、本発明では、ソレノイドバルブ50によってブレーキ油圧Pbkを所定の勾配ΔPで低下させるだけであるため、その作動回数は1回となる。すなわち、本発明では、従来に比べて作動回数が少なくなり、ソレノイドバルブ50の耐久性が向上する。また、車速Vがパーキングロック可能な上限速度Vrock内にあるため、車両の移動も従来に比較して抑制され、パーキングロックした際に車両にかかるショックも抑制される。さらに、運転者の図示しないスイッチ操作により、ブレーキペダル36の踏み込み解除後においても制動力をブレーキペダル36の踏み込み時と同様に発生させる、所謂ブレーキホールド制御と比較しても、ソレノイドバルブ50の消費電力を小さくすることができる。
【0073】
上述のように、本実施例によれば、坂路においてブレーキペダル36の踏み込みが解除されても、制動手段100によって車速Vの上昇が制限されるため、規定時間Ta内ではパーキングロック可能な車速Vに制限される。したがって、パーキングレンジが選択された際に、ブレーキ油圧Pbkを制御するソレノイドバルブ50を再度作動させることが防止され、ソレノイドバルブ50の作動回数増加による耐久性低下が抑制される。具体的には、パーキングレンジが選択された際にパーキングロック可能な速度Vを越えている場合、車速Vを上記パーキングロック可能な速度まで低下させるため、制動手段100によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkを上昇させて制動力を増加させる必要が生じる。これに対して、ブレーキペダル36の踏み込み解除後の車速Vの上昇が制限されるようにホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが制御されることで、パーキングレンジが選択されても再びホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkをソレノイドバルブ50によって上昇させることなく、パーキングロック機構52をパーキングロックさせることが可能となる。したがって、ソレノイドバルブ50の作動回数が少なくなり、ソレノイドバルブ50の耐久性低下が抑制される。また、シフトバイワイヤ形式の車両においては、パーキングレンジ選択からパーキングロックされるまでに時間遅れ(タイムラグ)が発生し、車両が移動する可能性があるが、ブレーキペダル36の踏み込みが解除されると、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが急激に低下せず、所定の勾配ΔPで低下するに従い制動力が発生するため、その車両の移動が抑制される。
【0074】
また、本実施例によれば、制動手段100は、パーキングレンジが確定されると、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの制御を終了するため、パーキングレンジが確定されるまでは、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkによって制動力が発生するに従い、車速の上昇および車両の移動が防止される。また、パーキングレンジが確定されると、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの制御が終了するため、必要以上に油圧制御が実施されずに済み、ブレーキ油圧Pbkを制御するソレノイドバルブ50の消費電力が低減される。
【0075】
また、本実施例によれば、制動手段100は、アクセルペダル39が踏み込まれると、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの制御を終了するため、運転者がアクセルペダル39を踏み込む発進操作時に、制動力がかかることで運転者に違和感を与えることが防止される。
【0076】
また、本実施例によれば、制動手段100は、ブレーキペダル36の踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間Ta経過すると、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの制御を終了するため、運転者が意図する走行状態と実際の車両の走行状態とのズレが抑制される。具体的には、運転者がブレーキペダル36の踏み込みを解除してから規定時間Ta経過してもパーキングレンジが選択されない場合、運転者にはパーキングロックの意思がないものと判断される。このような場合には、制動手段100を終了することで、運転者の意図する走行状態と実際の車両の走行状態とを一致させることができる。
【0077】
また、本実施例によれば、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkの勾配ΔPは、ブレーキペダル36の踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間Ta経過したときの車速Vが、パーキングロック可能な車速Vrockを越えない値となるように予め求められている。このようにすれば、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbkが予め求められている勾配ΔPで低下すると、規定時間Ta内においては、車速Vがパーキングロック可能な車速Vrockを越えないため、ブレーキ油圧Pbkを制御するソレノイドバルブ50を再び作動させることなくパーキングロックが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0079】
例えば、前述の実施例では、ハイブリッド形式の車両に本発明が適用されているが、本発明は必ずしもハイブリッド形式の車両に限定されず、電気的にシフト切替が実施可能な構成およびブレーキ油圧Pbkを制御可能な構成であれば、他の形式の車両であっても構わない。
【0080】
また、前述の実施例では、ブレーキ油圧Pbkは一定の勾配ΔPで低下していたが、ブレーキ油圧Pbkは、必ずしも一定の勾配ΔPに限定されず、曲線的或いは勾配が変化するなど、車両の形式等に応じて適宜変更しても構わない。
【0081】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
10:車両用動力伝達装置
22:出力軸(回転軸)
34:電子制御装置(制御装置)
38:車輪
36:ブレーキペダル
39:アクセルペダル
45:制動装置
46:ホイールブレーキ
50:ソレノイドバルブ
52:パーキングロック機構
100:制動手段
81:シフト操作装置
Pbk:ブレーキ油圧
ΔP:所定の勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフト操作装置における操作位置に応じた位置信号に基づいて車両のシフトレンジの切替えを電気的に制御するシフトバイワイヤ形式の車両の制御装置であって、
ブレーキペダルの踏み込みに応じてホイールブレーキのブレーキ油圧を発生させて車輪の回転を制限する制動装置と、
前記シフト操作装置によってパーキングレンジが選択された際には、前記車輪に動力伝達可能に連結されている回転軸の回転を阻止するパーキングロック機構と、
該制動装置のホイールブレーキのブレーキ油圧をソレノイドバルブによって制御する制動手段とを備え、
該制動手段は、坂路停止時において前記ブレーキペダルの踏み込みを解除した際には、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧を所定の勾配で低下させることで、車速の上昇を制限することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制動手段は、パーキングレンジが確定されると、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了することを特徴とする請求項1の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制動手段は、アクセルペダルが踏み込まれると、前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了することを特徴とする請求項1または2の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制動手段は、前記ブレーキペダルの踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間経過すると前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の制御を終了することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両の制御装置。
【請求項5】
前記ホイールブレーキのブレーキ油圧の勾配は、前記ブレーキペダルの踏み込みが解除されてから予め設定されている規定時間経過したときの車速が、パーキングロック可能な車速を越えない値となるように、予め求められていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−1186(P2012−1186A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140742(P2010−140742)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】