説明

車両の変速装置のシフト制御のシステム及び方法

車両の変速装置のシフト制御のシステム及び方法。変速装置は、指定された変速装置の変速点でギヤをシフトする。車両が直面した道路の勾配の傾斜が変化すると、変速装置の変速点が、より良い車両性能を提供するように変化される。1つの実施形態によれば、道路の傾斜が、車両の加速度及びペダルの踏み込みによって生じる加速度に基づいて計算される。こうした実施形態では、ブレーキ表示は、ブレーキ信号のスイッチを使用することなく、同じ道路の傾斜の計算から計算される。ブレーキの適用が、道路の傾斜の計算によって表示されると、変速装置のシフティングが、弱い車両性能を防止するように調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね、車両のブレーキを検出し、その検出に基づいて変速装置のギヤの変更を禁止するように、計算された道路の傾斜の変化を監視するシステム及び方法に関する。特に、或る実施形態は、車速に基づいて道路の傾斜を計算することによって、自動車のブレーキを検出するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
概して、変速装置の制御システムが、車両に配置され、変速点と呼ばれる特定の間隔で変速装置のギヤの変更(すなわち、シフトアップ又はシフトダウン)を生じさせる。これら変速点は、様々な車両の状態(すなわち、加速度、道路勾配、アクセルの踏み込み、又は、速度等)を監視し、且つ、変速装置のギヤの「ハンチング」、オーバーランニング、又はミスシフトを最小化する変速点を計算することによって、選択される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら車両の状態は、そのブレーキ中のように、突然変化し、前回計算された変速点は、「ハンチング」、オーバーランニング、又はミスシフトを生じさせる可能性がある。従って、ブレーキ中は、選択された変速点を調整し、それによって車両性能を改善することが、多くの場合望ましい。一般に、ブレーキランプのスイッチは、車両のブレーキを示すと共に変速装置の変速点を調整するために用いられる。しかしながら、ブレーキランプは、固有の不正確性を有している。例えば、ブレーキペダルが実際に係合していたとしても、スイッチが作動していない場合があり、そのため、車両のブレーキが表示されない。その結果、変速装置は、車両のブレーキ中に変速装置の変速点を誤って変更し、それによって望ましくない車両性能を生じさせる可能性がある。従って、車両のシフティング、シフトの復旧、及び/又は、道路の勾配の計算を改善するシステム及び方法のニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの実施形態によれば、ギヤを備えると共に自動のギヤ変更を生じさせる少なくとも1つの変速点に応答するように構成された車両の変速装置を制御する方法が提供される。この方法は、車両車の走行中に検出された1つ又は複数の状態に基づいて道路の傾斜を計算することと、計算された道路の傾斜の変化を測定することとを含む。さらに、この方法は、計算された道路の傾斜の変化に基づいてブレーキの適用を検出することと、ブレーキの適用が検出された場合に変速装置のギヤの変更点を調整することとを含む。
【0005】
別の実施形態によれば、車両のブレーキを決定する方法が提供される。この方法は、車両の走行中に状態を検出することと、検出された1つ又は複数の状態に基づいて道路の傾斜を計算することとを含む。さらに、この方法は、計算された道路の傾斜の変化を測定することと、計算された道路の傾斜の変化を、車両が直面した実際の傾斜の変化の代表値の範囲と比較することとを含む。さらに、この方法は、計算された道路の傾斜の変化が、この代表値の範囲から外れる場合には、ブレーキの適用を表示することを含む。
【0006】
さらに別の実施形態によれば、車両のブレーキ表示システムが提供される。このシステムは、車両の状態センサーと、情報システムから道路の傾斜を計算し、計算された道路の傾斜に基づいて車両のブレーキの適用を表示するように動作する少なくとも1つのプロセッサとを有する。さらに、このシステムは、車両のブレーキの表示に基づいて変速装置のギヤの変更点を調整するように動作する変速装置制御システムを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、車両の変速装置のシステムの概略図である。
【図2】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、変速装置のシステムの変速装置制御ユニットのブロック図である。
【図3】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、変速点を選択するために使用可能なシフトコントローラーの概略図である。
【図4】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、機関回転速度及び車速をギヤ比の選択に関連させて描写したグラフである。
【図5】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、加速度差及び計算された道路の傾斜間の相関関係を描写したグラフである。
【図6】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、加速度の変化率及び計算された道路の傾斜の変化率間の相関関係を描写したグラフである。
【図7】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、加速度の変化率及び計算された道路の傾斜の変化率間の相関関係を描写したグラフである。
【図8】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、車両のブレーキを決定するために、加速度の変化率及び計算された道路の傾斜の変化率間の相関関係を描写したグラフである。
【図9】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、基準道路傾斜に対する補償をすることなく車両のブレーキを決定するために、加速度の変化率及び計算された道路の傾斜の変化率間の相関関係を描写したグラフである。
【図10】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、ギヤを備えると共に自動のギヤ変更を生じさせる少なくとも1つの変速点に応答するように構成された車両の変速装置を制御する1つの方法のフローチャートである。
【図11】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、車両のブレーキを決定する1つの方法のフローチャートである。
【図12】本発明の1つの例示的な実施形態に従って、ギヤを備えると共に自動のギヤ変更を生じさせる少なくとも1つの変速点に応答するように構成された車両の変速装置を制御する1つの方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、添付した図面と共に以下の記載からより理解することができるであろう。
【0009】
図1は、自動車に搭載可能な変速装置20を示している。図に示されるように、変速装置20は、変速装置制御ユニット32と、変速装置22と、動力伝達装置25とを有する。変速装置22は、駆動部材23を介してエンジン24に関連付けるように係合し、エンジン24は、所定の回転速度(毎分回転数「RPM」)で駆動部材23を回転させることによって、変速装置22に回転速度を供給している。以下に述べるように、変速装置22は、エンジン24によって供給される回転速度を変更し、このように変更された回転速度を出力するように動作する。また、変速装置22は、動力伝達装置25に関連付けるように係合し、変速装置22は、出力される回転速度を変更しつつ動力伝達装置25を駆動させ、それによって自動車の車輪30を回転させる。
【0010】
1つの実施形態では、変速装置22は、通常、自動車に用いられる自動変速装置である。変速装置22は、変速装置22に供給される回転速度を比例的に変化させるように選択的に係合可能な各種の遊星ギヤの組を有する。各遊星ギヤの組と関連する各比例的変化は、特定のギヤ比として規定されてもよい。例えば、1:1のギヤ比を有する遊星ギヤの組は、エンジンの回転速度を動力伝達装置25に直接供給する(すなわち、毎分回転数1(RPM)の機関回転速度は、1RPMの動力伝達装置の回転速度に対応する)。さらに、3:1のギヤ比を有する遊星ギヤの組は、3倍の機関回転速度を動力伝達装置25に供給する(すなわち、1RPMの機関回転速度は、3RPMの動力伝達装置の回転速度に対応する)。さらに、変速装置22は、ギヤ比を車両の動作中に選択的に選択されるようにトルク変換装置を有してもよい。1つの実施形態では、トルク変換装置は、ギヤ比の変更が生じるように、エンジン24を変速装置22から一瞬だけ解除する。当然のことながら、変速装置22は、上述の実施形態とは異なる遊星ギヤの組及びギヤ比を有していてもよい。さらに、別の実施形態では、このようなシフト補助装置付きの手動の他の変速装置が搭載されていてもよい。
【0011】
図に示されるように、動力伝達装置25は、変速装置22から車輪30へ回転速度を供給するために、差動装置26と、駆動軸27と、車軸28とを有する。こうした実施形態では、変速装置22からの回転速度は、差動装置26及び駆動軸27を介して車軸28に供給され、車輪30へ供給される。当然のことながら、こうした実施形態は、単なる例示であって、他の実施形態が、特定の自動車の仕様及び設計に応じて構成されてもよい。例えば、動力伝達装置25は、回転速度を、変速装置22から四輪駆動車のような4つの車輪30へ供給するために、2つの差動装置26と、2つの駆動軸27と、4つの車軸28とを有してもよい。さらに、動力伝達装置25は、6つの車輪(すなわち、全地形万能車(ATV))、4つの後輪(すなわち、トラクタートレーラー)、1つの車輪(すなわち、オートバイ)のような任意の数の車輪、又は、所定の自動車を運転する他の任意の数の車輪を駆動させるように構成されてもよい。従って、当然のことながら、動力伝達装置25の構成は、例示であって、特定の車両の仕様及び設計に応じて構成されてもよい。例えば、或る2つの車輪の駆動システムでは、変速装置22は、車軸28に直接接続されており、それによって、駆動軸27及び差動装置26の必要性を排除してもよい。同様に、或る四輪車では、付加的な変速装置22が搭載され、車軸28に直接接続されてもよく、それによって、駆動軸27及び差動装置26の必要性を排除してもよい。
【0012】
図1及び2に示されるように、変速装置制御ユニット32が、車両の状態データ(すなわち、車両データ、変速装置データ、環境データ、ユーザーにより提供されたデータ、又は、変速装置の制御を支援する他の任意のデータ)に基づいて変速装置22を制御するために備わっている。変速装置制御ユニット32は、制御信号を変速装置22に供給するために、変速装置22に通信可能に接続されている。さらに、図2に示されるように、変速装置制御ユニット32は、変速装置の制御を支援するデータを変速装置制御ユニット32に供給する車両システム40に通信可能に接続されている。1つの実施形態では、変速装置制御ユニット32は、光ファイバー通信(すなわち、電子制御方式による運転又はイーサネット(登録商標)等)を用いて通信してもよい。しかしながら、変速装置制御ユニット32は、無線通信(すなわち、ブルートゥース又はラジオ周波数等)、マイクロ波通信、赤外線通信、又は、アナログ通信等の他の通信形式を用いて通信してもよい。さらに、変速装置制御ユニット32は、J1850、Nexus、SCI、SPI、又は、CAN等の一般的な車両通信を用いて通信してもよい。
【0013】
図2に示されるように、変速装置制御ユニット32は、少なくとも1つの通信システム56と、メモリ54と、データを処理するプロセッサ52とを有する。通信システム56は、車両システム40と通信するように動作し、情報を収集して、収集した情報をプロセッサ52及び/又はメモリ54に伝送するように動作する。通信システム56は、J1850、Nexus、SCI、SPI、又は、CAN等の一般的な車両通信形式を用いて車両システムと通信可能である。さらに、通信システム56は、変速装置制御ユニット32で説明したものと同様の通信方法及び通信形式を用いて通信してもよい。
【0014】
図に示されるように、メモリ54は、データストレージを提供するために、変速装置制御ユニット32内に含まれている。メモリ54は、ランダム・アクセス・メモリ、CDドライブ、ハードドライブ、又は、現在公知若しくは今後開発される他の任意のデータストレージのようなデータを保存可能な任意のデバイスであってもよい。さらに、プロセッサ52は、データの論理演算を行うように、変速装置制御ユニット32内に含まれている。
【0015】
プロセッサ52は、Motorola HC12、Motorola x86、又は、Texas Instruments z80等のデータの演算を行うことができる、任意の電子デバイス、コントローラー、マイクロプロセッサ、電気回路、又は、チップセットであってもよい。プロセッサ52は、変速装置制御ユニット32内でデータの処理をする役割を果たしている。また、プロセッサ52は、プログラム、ファームウェア、ファジー理論、ニューラル・ネットワーク、又は、特定の設計に応じて他の電子的アルゴリズムを介してこうした処理を支援するためのアルゴリズムを実装している。さらに、プロセッサ52は、変速装置制御ユニット32で説明したものと同様の通信方法及び通信形式を用いて通信してもよい。
【0016】
変速装置制御ユニット32は、変速点を計算し、制御ルーチンを計算し、最適化スキームを計算し、エラー修正を実行し、保護スキームを計算し、又は、変速装置の制御を支援する他の任意の方法でデータを処理するように、データを処理する。変速装置制御ユニット32は、MPC500ベースのマイクロコントローラー、MC56F8300シリーズのマイクロコントローラー、又は、当該技術分野で公知の他の任意の変速装置のコントローラーのような、データを処理し変速装置を制御する任意の電子モジュール又は電気回路であってもよい。1つの実施形態では、変速装置制御ユニット32は、車両の状態データに基づいて、変速装置の変速点を計算し、こうした変速点に基づいて変速装置22を制御する。
【0017】
別の実施形態では、変速装置制御ユニット32は、ブレーキ、降水量、温度、又は、風速のような車両の状態及び環境の状態を監視することによるシフト禁止ルーチンを備え、変速装置のシフトが望ましくない車両性能を引き起こすかどうかを決定する。さらに別の実施形態では、変速装置制御ユニット32は、ユーザーに情報を提供するように問い合わせを行い、こうした情報に基づいて変速装置22を制御することによって、変速装置22を制御する。当然のことながら、変速装置制御ユニット32は、単なる例示であって、他の多くの構成が現在入手可能である。例えば、通信システム56、メモリ54、及びプロセッサ52は、同一チップセットに実装されてもよい。さらに、通信システム56、メモリ54、及びプロセッサ52は、他のデバイスで補完してもよく、或いは、それが実装される特定の変速装置システムと適合するように構成されてもよい。従って、変速装置制御ユニット32は、任意の車両の構成及び/又は変速装置の構成に応じて構成され、所定の設計又は構成に適した任意の方法で変速装置22を制御する。
【0018】
さらに図1を参照すると、エンジン24は、駆動部材23を介して変速装置22に関連付けるように係合し、エンジン24は、回転速度を変速装置22に供給するように所定の回転速度で駆動部材23を回転させる。
【0019】
一般に、エンジン24は、内燃エンジンであるが、蒸気エンジンや電気モーター等の他の実施形態が提供されてもよい。多くの車両でよくあるように、ユーザーは、エンジンの回転速度を制御することによって(例えば、エンジンのスロットルを変化させることによって)、車速を選択的に制御する。1つの実施形態では、ユーザーは、アクセルペダルを踏み込むことによって、エンジンの回転速度を変化させることができる。しかしながら、他の実施形態では、ユーザーは、ノブ、レバー、トリガー、又はユーザーがエンジンの回転速度を変化させることが可能な他の任意のデバイスを係合させることによって、回転速度を変化させることができる。車両でよくあるように、エンジン24は、低速で車両を運転可能な回転速度の限界の範囲(例えば、0〜6000RPM)内で動作する。変速装置22は、上述のような選択可能なギヤ比を実装することによって、エンジン24によって供給される回転速度を比例的に変化させる。特に、エンジン24は、各ギヤ比の回転速度のその限界の範囲内で動作し、各特定のギヤ比が車速の特定の範囲と一致する。例えば、第1のギヤ比のエンジンの回転速度は、0〜16.1km/h(0〜10マイル/時間(MPH))の車速を供給し、第2のギヤ比のエンジンの回転速度は、16.1〜32.2km/h(10〜20MPH)の車速を供給し、第3のギヤ比のエンジンの回転速度は、32.2〜64.4km/h(20〜40MPH)の車速を供給する等々。当然のことながら、任意の数のギヤ比、異なる範囲の速度を有するギヤ比、又は、エンジンの回転速度を車輪に一致させるのに適した他のギヤ比の構成を有する他の構成が、考えられる。
【0020】
図3に示されるように、シフトコントローラー60は、ギヤ比間を選択するために、変速装置22に油圧を供給する。変速装置でよくあるように、ギヤ比は、特定の油圧が変速装置22内で達成されると選択される。シフトコントローラー60は、シフトバルブ44を制御することによって、変速装置の媒体(すなわち、オートマティック・トランスミッション液、トランスミッションオイル、又は、油圧油等)の流れを調整し、それによって、特定の変速点を選択する。車両が速度を変化させるにつれて、変速点は、ギヤ比の変更を開始するように選択される。変速点は、車両の状態(すなわち、機関回転速度、機関トルク、車速、車両重量、加速度、減速度、環境の状態、又は、道路の状態等)に基づいて決定される。特定の変速点は、車両の状態と関連する限界に基づいて割り当てられる。特定の状態の限界に達すると(すなわち、変速点に達すると)、ギヤ比の変更が生じる。変速点は、現在公知又は今後開発される計算/選択の方法を用いて選択可能である。1つの実施形態では、変速点は、変速点を特定の状態の限界と関連付ける予め定められたアルゴリズム又はプログラム又はファームウェアを用いて計算される。別の実施形態では、変速点は、変速点を特定の状態の限界と関連付ける参照テーブルから選択される。さらに別の実施形態では、変速点は、特定の状態の限界値に達すると、メモリ内のストレージから選択される。変速点が状態に基づいていると共に特定の車両又は変速装置の構成と適合する方法で計算されるような、他の様々な実施形態が考慮される。
【0021】
1つの実施形態では、変速点は、機関回転速度に基づいて決定される。上述のように、エンジン24は、上限及び下限(すなわち、0〜6000RPM)を有する回転速度の範囲内で動作可能である。変速点は、車両の動作中に所定の回転速度の範囲内でエンジン24を確実の動作させる上限及び下限の機関回転速度の限界に基づいて割り当てられる。例えば、図4に示されるように、特定の変速点(すなわち、車両の加速中)に達すると、より高いギヤ比が選択され、エンジン24の回転速度が減少するような(すなわち、シフトアップ)回転速度の上限に、変速点が選択される。反対に、特定の変速点(すなわち、車両の減速中)に達すると、より低いギヤ比が選択され、エンジン24の回転速度が増加するような(すなわち、シフトダウン)回転速度の下限に、変速点が選択される。当然のことながら、回転速度の上限及び下限は、車両の加速及び減速の法律違反である。従って、変速点は、車両の加速中及び減速中に、適切なエンジンの動作を保証するように、様々なギヤ比が選択される。
【0022】
別の実施形態では、変速点は、車両の速度及びアクセルの踏み込みに基づいて決定される。車両が動作するにつれて、ユーザーは、アクセルペダルを踏み込むことによって車両を加速させたいという要求を示している。車両の加速は、高い機関回転速度に到達させることをより容易にするので、特定の変速点は、エンジン24が高い回転速度に達することができるように割り当てられる。例えば、アクセルペダルのかなりの踏み込みは、車速を素早く増加させたいという要求を示している。変速点は、ギヤの変更が遅延し、エンジン24が、さらなる加速を供給する高い回転速度を達成するように割り当てられる。
【0023】
こうした実施形態では、シフトコントローラー60は、車速及びアクセルペダルの踏み込みに基づいて、変速装置の媒体を変速装置22に供給する。こうした実施形態では、シフトコントローラーは、シフトバルブ64によって隔離された2つのチャンバー61及び63を有する。チャンバー63内の圧力がチャンバー61内の圧力に打ち勝つと、シフトバルブ64は、ギヤの開口70を介して媒体を供給するのに十分付勢される。ギヤの開口70を介して媒体を供給することによって、油圧は、変速装置22内で増加し、ギヤの変更が生じる(すなわち、変速点が提供される)。変速装置の媒体は、流体の開口65を介してチャンバー61及び63に供給され、一定の圧力で維持される。こうした実施形態では、調速機(図示せず)は、車速との相関関係で、調速機の開口66を介してチャンバー63に変速装置の媒体を供給する(例えば、車速が増加すると、付加的な変速装置の媒体が追加される)。車速が変化するにつれて、チャンバー63内の様々な量の変速装置の媒体が、シフトコントローラー60内でシフトバルブ64を横方向に付勢する。さらに、スロットル(図示せず)は、アクセルペダルの踏み込み量との相関関係で、スロットルの開口68を介してチャンバー61に変速装置の媒体を供給する(例えば、アクセルペダルが次第に踏み込まれると、付加的な変速装置の媒体が追加される)。アクセルペダルの踏み込みが変化するにつれて、チャンバー61内の様々な量の変速装置の媒体が、シフトコントローラー60内でシフトバルブ64を横方向に付勢する。チャンバー63内の圧力がチャンバー61内の圧力に打ち勝つと、シフトバルブ64は、ギヤの開口70を介して媒体を供給するのに十分付勢され、それによって、変速装置の油圧を増加させる。
【0024】
当然のことながら、シフトコントローラー60は、単なる例示であって、他の実施形態が意図される。例えば、シフトコントローラー60内のシフトバルブ64は、電気的に制御されてもよい。こうした実施形態では、車両の状態は、変速装置のシフトが適切であるかどうかを決定するために監視される。論理的で適切な変速点が(すなわち、メモリ等に保存されたアルゴリズム又は参照テーブルを介して)決定されると、シフトバルブ64は、ギヤの開口70を介して変速装置の媒体を調整するように制御される。
【0025】
図2に示されるように、少なくとも1つの車両システム40は、車両の状態データ(すなわち、車両情報、環境情報、変速装置情報、又は、ユーザー情報等)を変速装置制御ユニット32に伝送するために備わっている。1つの実施形態では、車両システム40は、道路状態センサーであってもよい。別の実施形態では、車両システム40は、トルクセンサーであってもよい。しかしながら、車両システム40は、車両の状態データを伝送するように動作し、電子制御ユニット、車両状態センサー、診断ユニット、又は、現在公知若しくは今後開発される他の任意のシステムを含むシステムであってもよい。さらに、車両システム40は、変速装置制御ユニット32で説明し、以下に説明する特定の通信方法及び通信形式を用いて、変速装置制御ユニット32と通信してもよい。
【0026】
1つの実施形態では、図10〜12に示されるように、車両が直面した道路の傾斜の値(すなわち、計算された道路の傾斜)が計算される。こうした実施形態では、ブロック1200で示されるように、基準道路傾斜が、それに基づいて計算を行う基準として提供される。一般に、基準道路傾斜は、ゼロの傾斜(すなわち、比較的平坦な道路)であるが、特定の設計に適合する他の任意の道路の傾斜であってもよい。ブロック1000、1100、及び1210に示されるように、所定の基準道路傾斜のために、予想される車両の状態に対する車両の応答が決定される。ブロック1210A及び1210Bに示されるように、こうした応答は、プロセッサによって計算されるか、参照テーブルを参照することによって得られるか、或いは、現在公知若しくは今後開発される他の計算方法を用いて提供される。現在の車両の状態は、予想される基準道路傾斜の状態に適合され、そして、現在の車両の応答及び予想される車両の応答が比較される。予想される車両の応答及び現在の車両の応答間の差異は、直面した道路の傾斜の値に一致する。1つの実施形態では、ブロック1220に示されるように、アクセルペダルの位置及び車両の加速度は、車両が直面した道路の傾斜の値を決定するために監視される。上述のように、車両システム40は、こうした状態を監視するために備わっているが、現在公知若しくは今後開発される他の監視システムも使用可能である。さらに、ブロック1220Aに示されるように、こうした状態は、メモリ44又は他の任意のデータストレージデバイスに保存される。
【0027】
こうした実施形態では、略ゼロの基準道路傾斜が提供され、予想される車両の加速(すなわち、車両の応答)が、予想されるアクセルペダルの位置のために決定される。ブロック1230及び1235に示されるように、現在の車両のアクセルペダルの踏み込みが、基準道路傾斜の予想されるアクセルペダルの踏み込みに適合され、現在の車両の加速の割合が、予想される加速の割合と比較される。ブロック1240に示されるように、現在の車両の加速度及び予想される車両の加速度間の差の大きさが、車両が直面した道路の傾斜の値を示している。傾斜(勾配)を加速度に関連付ける1つの実施例が以下のように、提供される。
平坦な道路=0%の勾配=0m/s2
普通の坂=4%の勾配=0.4m/s2
険しい坂=12%の勾配=1.2m/s2
サンフランシスコの坂=30% 加速度=3.0m/s2
【0028】
他の点は、補完可能であり、或いは、計算可能であるか、獲得可能である。従って、この実施例では、車両は、上りの10%の勾配で重いトレーラーを牽引すると、勾配の計算は、30%の勾配を示す。なお、この実施例では、道路勾配の%は、垂直距離/水平距離であり、100%の道路勾配は、45度であり、13.7m(45ft)の垂直距離/13.7m(45ft)の水平距離である。
【0029】
従って、現在の車両の加速度が、所定のアクセルペダルの位置で予想される加速度よりも高い場合には、その差異が、特定の減少する(すなわち、下り坂)道路の傾斜の値に相関付けられる。反対に、図5に示されるように、現在の車両の加速度が、所定のアクセルペダルの位置で予想される加速度よりも低い場合には、その差異が、特定の増加する(すなわち、2%の勾配の上り坂)道路の傾斜の値に相関付けられる。
【0030】
別の実施形態では、ブロック1010及び1110に示されるように、車両が直面した道路の傾斜の変化率が計算される。こうした実施形態では、道路の傾斜は、上述したように計算され(すなわち、基準道路傾斜を提供し、予想される状態を現在の状態と適合させ、車両の応答の差異を測定する)、前回の道路の傾斜の計算と比較される。例えば、道路の傾斜は、以下のように計算される。
予想される車両の加速度−実際の車両の加速度
(1m/s2=10%の勾配の場合)
【0031】
計算された道路の傾斜は、加速度レベルであるため、ドライバーが運転している勾配や或いは車両がトレーラーの重量を牽引している場合を考慮に入れている。或る時間に亘る車両の応答における差異の変化率(すなわち、計算された道路の傾斜)は、車両が直面した道路の傾斜の変化率に一致する。1つの実施形態では、アクセルペダルの位置及び車両の加速度は、車両が直面した道路の傾斜の変化率を決定するために監視される。こうした実施形態では、道路の傾斜は、上述したように計算される(すなわち、基準道路傾斜を提供し、現在のアクセルペダルの踏み込みを予想されるアクセルペダルの踏み込みと適合させ、車両の加速度変化率の差異を測定する)。ブロック1250に示されるように、前回の道路の傾斜の計算は、前回の道路の傾斜の計算を保存したときに使用された、メモリ44又は他の任意のストレージデバイスから取得される。ブロック1255に示されるように、計算された道路の傾斜は、計算された道路の傾斜の変化率を提供するために前回の道路の傾斜の計算と比較される。計算された道路の傾斜の変化率は、車両が直面した道路の傾斜の変化率に一致する。1つの実施例では、以下の値が用いられる。
実施例:道路の勾配の変化率
(%の勾配及び時間の傾斜の関係)
軽いブレーキの適用=1.0%の勾配/s=0.1(m/s2)/s
中間のブレーキの適用=5.0%の勾配/s=0.5(m/s2)/s
重いブレーキの適用=10.0%の勾配/s=1.0(m/s2)/s
平均の勾配の変化=0.3%の勾配/s=0.03(m/s2)/s
【0032】
例えば、図5に示されるように、現在の車両の加速度及び予想される加速度間の差異が、前回の差異に対して一定のままである場合には、車両が直面した計算された道路の傾斜は、一定である。さらに、現在の車両の加速度及び予想される加速度間の差異が、前回の差異に対して増加している場合には、車両が直面した傾斜の変化率は、こうした変化率で徐々に傾斜する道路の傾斜と一致する。反対に、図6に示されるように、現在の車両の加速度及び予想される加速度間の差異が、前回の大きさに対して減少している場合には、車両が直面した傾斜の変化率は、こうした変化率で徐々に減少する道路の傾斜と一致する。例えば、図7に示されるように、現在の車両の加速度及び予想される加速度間の差異の大きさは、前回の大きさに対して増加し、車両が直面した道路の傾斜の特定の変化率と一致する(すなわち、2%の勾配が6%の勾配へ増加する)。
【0033】
道路の勾配の値又は変化率は、現在公知又は今後開発される計算/選択方法を用いて、予想される加速度及び実際の加速度間の特定の差異に相関付けられる。1つの実施形態では、道路の勾配の値又は変化率は、道路の勾配の値又は変化率と予想される加速度及び実際の加速度間の特定の差異とを関連付ける予め定められたアルゴリズムを用いて、相関付けられる。別の実施形態では、道路の勾配の値又は変化率は、道路の勾配の値と予想される加速度及び実際の加速度間の特定の差異とを関連付ける予め定められた参照テーブルから、相関付けられる。こうした実施形態では、アルゴリズムや選択テーブル等が、特定の設計及び/又は構成に応じて規定される。従って、道路の勾配の値又は変化率は、任意の算術演算子(すなわち、プロセッサ等)によって相関付けられるか、又は、任意のメモリデバイス(すなわち、RAM又はCDドライブ等)に保存されたデータから選択される。
【0034】
他の実施形態では、車両の道路の勾配が、GPSの推定の軌道、カメラからの道路の映像、トルク、衝撃圧縮、速度又は燃料消費等の他の車両の状態を用いて計算される。さらに、他の実施形態では、車両の道路の勾配は、微分方程式や線形方程式等といった、現在公知若しくは今後開発される計算方法を用いて計算してもよい。当然のことながら、加速度及びアクセルペダルの位置に基づく道路の傾斜の計算は、単なる例示であって、特定の車両又は変速装置制御ユニットの設計に適合する任意の手段で達成可能である。
【0035】
1つの実施形態では、図10〜12に示されるように、機関トルク、車速、車両重量、加速度又は減速度等の車両の状態は、車両のブレーキの発生を決定するために監視される。例示的な実施形態によれば、ブロック1020及び1120に示されるように、計算された道路の傾斜の変化率は、ブレーキスイッチに依存することなく車両のブレーキを示している。一般に、車両は、実際の道路の傾斜の変化に直面すると、計算された道路の傾斜の変化率は、特定の範囲内のままである。計算された道路の傾斜の変化率がこうした範囲から外れると、車両のブレーキは、車両のブレーキが発生していることを示す信号を供給することによって表示される(従って、ブレーキ信号は、計算された道路の傾斜の変化率に基づいている)。
【0036】
特に、ブレーキペダルの踏み込み中及び解放中、車両は、アクセルペダルの踏み込みなしで、加速度の変化を受ける。従って、ブロック1260に示されるように、車両のブレーキを決定するために、道路の傾斜の変化率が計算され、実際の道路の傾斜の変化と関連付けられた範囲と比較される。こうした範囲の値は、一般に実際の道路の傾斜の変化中に直面する加速度及びアクセルペダルの踏み込みに基づく。しかしながら、こうした範囲は、加速度及びアクセルペダルの踏み込みをこうした値に相関付ける、現在公知若しくは今後開発されるアルゴリズム又は計算を用いて決定される。例えば、基準道路傾斜に基づく予想される車両の加速度は、アクセルペダルの踏み込みなしで決定される。予想される加速度は、計算された道路の傾斜を決定するために、現在の車両の加速度と比較される。上述し、ブロック1255に示されるように、計算された道路の傾斜は、計算された道路の傾斜の変化率を決定するために、前回の道路の傾斜と比較される。ブロック1270に示されるように、計算された道路の傾斜の変化率が、道路の傾斜の実際の変化と関連付けられた範囲から外れる場合には、次いで、車両のブレーキが表示される。しかしながら、ブロック1295に示されるように、計算された道路の傾斜の変化率が、道路の傾斜の実際の変化と関連付けられた範囲内に入る場合には、計算された変化率が、道路の傾斜の実際の変化率と相関付けられる。ブロック1300に示され、さらに以下に記載するように、変速点は、その後、計算される。
【0037】
1つの実施形態では、道路の傾斜の実際の変化中、計算された道路の傾斜の変化率は、0.0(%の勾配/s)〜約1.0(%の勾配/s)である。しかしながら、図8に示されるように、計算された道路の傾斜の変化率が、約1.0(%の勾配/s)よりも大きいと、車両のブレーキの踏み込みが表示される。反対に、図8に示されるように、計算された道路の傾斜の変化率の大きさが、約0.0(%の勾配/s)よりも小さいと(すなわち、或いは、実際の道路の傾斜の変化の下限だと)、ブレーキの踏み込みが表示される。当然のことながら、上記値は、単なる例示であって、多くの値/範囲が、特定の車両及び/又は変速装置の構成に応じて実装可能である。当然のことながら、本発明の原理に従って、車両のブレーキを表示するために道路の傾斜を監視することは、アンチロックブレーキシステム、乗員拘束装置、又は、補助拘束装置等のような、ブレーキの表示信号を利用する多くのシステムに適用可能である。
【0038】
現在公知又は今後開発される計算/選択方法を用いて、計算された道路の傾斜の変化率に基づいて車両のブレーキの決定が行われる。1つの実施形態では、車両のブレーキは、車両のブレーキを、計算された道路の勾配の特定の変化率と関連付けるアルゴリズムを用いて決定される。別の実施形態では、車両のブレーキは、車両のブレーキを、計算された道路の勾配の特定の変化率と関連付ける予め定められた参照テーブルを用いて決定される。こうした実施形態では、アルゴリズムや選択テーブル等が、特定の設計及び/又は構成に応じて規定される。従って、車両のブレーキは、任意の算術演算子(すなわち、プロセッサ等)によって決定されるか、又は、任意のメモリデバイス(すなわち、RAM又はCDドライブ等)に保存されたデータから選択される。
【0039】
さらに別の実施形態では、機関トルク、車速、車両重量、加速度、又は、減速度等の車両の状態は、適用されるブレーキ力の大きさを決定するために監視される。例示的な実施形態によれば、適用されるブレーキ力の大きさは、道路の傾斜の変化率を計算することによって決定される。従って、道路の傾斜の変化率は、上述の車両のブレーキ表示の方法と同様に計算される。一般に、ブレーキペダルの踏み込み中及び解放中、車両は、アクセルペダルの踏み込みなしで、加速度の変化を受ける。上述の道路の傾斜の計算と同様に、ブレーキペダルの踏み込み中及び解放中、加速度の変化率は、道路の傾斜の変化率を計算するために用いられる。道路の傾斜の計算された変化率は、特定のブレーキ力の大きさに相関付けられる。例えば、予想される車両の加速度は、基準道路傾斜に沿う車両の走行のために、アクセルペダルの踏み込みなしで決定される。予想される加速度は、計算された道路の傾斜を決定するために、現在の車両の加速度と比較される。計算された道路の傾斜は、計算された道路の傾斜の変化率を決定するために、或る時間に亘って監視される。変化率の大きさは、特定のブレーキ力の大きさに相関付けられる。1つの実施形態では、ブレーキ力の大きさは、ブレーキ力の大きさを、特定の計算された道路の勾配の変化率に関連付けるアルゴリズムを用いて決定される。別の実施形態では、ブレーキ力の大きさは、ブレーキ力の大きさを、特定の計算された道路の勾配の変化率に関連付ける予め定められた参照テーブルを用いて決定される。こうした実施形態では、アルゴリズムや選択テーブル等が、特定の設計及び/又は構成に応じて規定される。従って、ブレーキ力の大きさは、任意の算術演算子(すなわち、プロセッサ等)によって決定されるか、又は、任意のメモリデバイス(すなわち、RAM又はCDドライブ等)に保存されたデータから選択される。
【0040】
図8に示されるように、ブレーキペダルの適用中、計算された道路の傾斜の変化率の大きさが、5.0(%の勾配/s)である。こうした変化率は、ブレーキペダルに適用された媒体の力に一致する。同様に、ブレーキペダルの適用後、計算された道路の傾斜の変化率の大きさは、0.0(%の勾配/s)である。こうした変化率は、一定の減速度の割合に一致する。さらに、ブレーキペダルの解放中、計算された道路の傾斜の変化率の大きさは、5.0(%の勾配/s)である。こうした変化率は、ブレーキペダルを元の位置に戻すために、ブレーキペダル組立体によって適用される0の大きさと一致する。当然のことながら、これらの値は、単なる例示であって、多くの値/範囲が、特定の車両及び/又は変速装置の構成に応じて実装可能である。また、当然のことながら、ブレーキ力の大きさを決定するために道路の傾斜を監視することは、アンチロックブレーキシステム、乗員拘束装置、又は、補助拘束装置等のような、適用されるブレーキ力の表示を実装する多くのシステムに実装可能である。
【0041】
1つの実施形態では、図12に示されるように、基準道路傾斜が、車両のブレーキ表示の後で、正確な道路の傾斜の推定を維持するために補償される。上述のように、車両の道路の傾斜は、ブレーキのスイッチよりもむしろ、車両のブレーキの発生を決定するために監視される。こうした実施形態では、上述のように、最初のブレーキペダルの適用中及びその後のブレーキペダルの解放中、計算された道路の傾斜の変化率は、大きく変化するが、実際の道路の傾斜に直面はしていない。ブレーキの後、道路の傾斜の計算は、走行する実際の傾斜とは異なる道路の傾斜を示す。従って、ブロック1280に示されるように、基準道路傾斜は、ブレーキの適用の後に補償される。従って、その後に道路の傾斜を計算する際に(すなわち、ブロック1220に戻る際に)、基準道路傾斜は、正確な道路の傾斜の計算を供給するために調整される。図9に示されるように、ブレーキペダルの適用中、計算された道路の傾斜は、大きく増加するが、道路の傾斜の実際の変化は生じない。こうした増加が、実際の道路の傾斜の変化と関連付けられた範囲よりも大きい場合には、上述のように、ブレーキの適用が表示される。
【0042】
しかしながら、基準道路傾斜及び計算された道路の傾斜間の差異の増加は、実際の道路の傾斜の変化を誤って反映している。従って、車両のブレーキが、その後の道路の傾斜の計算を正確にするように示される場合に、基準道路傾斜が補償される。1つの実施形態では、図8に示されるように、最初のブレーキペダルの適用中及びその後のブレーキペダルの解放中、基準道路傾斜は、ブレーキペダルの踏み込み前に、計算された道路の傾斜及び基準道路傾斜間で同じ差異を達成するように補償される。別の実施形態では、計算された道路の傾斜が、ブレーキペダルの踏み込み前に、計算された道路の傾斜及び基準道路傾斜間で同じ差異を達成するように減少される。
【0043】
図8に示されるように、補償又は減少は、車両のブレーキが止まるまで、計算された道路の傾斜と同じ方向の基準道路傾斜にステップ関数を絶えず適用することによって達成される。しかしながら、補償又は減少は、基準道路傾斜/計算された道路の傾斜にランプ関数を適用したり、基準道路傾斜/計算された道路の傾斜に補償関数を適用したりするような、従来公知の又は今後開発される他の手段を介して達成可能である。
【0044】
別の実施形態では、図11のブロック1130及び図12のブロック1290に示されるように、シフティングは、車両のブレーキ、粘着摩擦の損失、変速装置の欠陥、変速装置の流体の低下、又は、過熱等の好ましくない変速装置の状態の間、禁止される。上述のように、様々な状態は、好ましくない状態が生じているか否かを決定するために監視される。例えば、車輪速度は、粘着摩擦の損失を決定するために監視され、ギヤ比は、変速装置の欠陥を決定するために監視され、変速装置の温度は、変速装置の過熱を決定するために監視され、又は、危険な変速装置のシフティングを示す任意の状態が監視される。こうした状態が発生すると、変速装置22は、(例えば、変速装置の変速点を調整することによって)シフティングを禁止する。1つの実施形態では、道路の傾斜は、車両のブレーキを決定するために監視され、従って、車両のブレーキが表示されると、変速装置のギヤの変化点は調整される。こうした表示は、車両が、不適切なシフトアップによってさらに加速しないようにし、ブレーキスイッチの不正確さを克服することによってシフトの禁止を改良することを保証している。
【0045】
1つの実施形態では、図10〜12に示されるように、変速装置の変速点は、計算された道路の傾斜に基づいて選択され及び/又は計算される。上述のように、計算された道路の傾斜の変化率は、車両がブレーキスイッチに関係なくブレーキしているかどうかを表示する。こうした表示がない場合には、変速点は、ブロック1300に示されるような計算された道路の傾斜に基づいて計算される。特に、1つの実施形態では、変速装置の変速点は、計算された道路の傾斜が緩やかな傾斜を示す場合に遅延する。例えば、車両が道路の傾斜を登るにつれて、変速装置の変速点が遅延し(すなわち、変速装置22は現在のギヤ比のままにし)、それによって、傾斜に打ち勝つように、付加的な回転速度が変速装置22に供給されるようにする。別の実施形態では、計算された道路の傾斜が、より厳しい傾斜を示す場合には、異なる変速点が計算され選択される。例えば、車両が、増加する道路の傾斜を登るにつれて、より低い変速装置の変速点が選択され(すなわち、変速装置22はより低いギヤ比を選択し)、それによって、傾斜に打ち勝つように、付加的な回転速度/出力が、変速装置22に供給されるようにする。さらに別の実施形態では、変速点の値は、計算された道路の勾配の大きさ又は変化率に基づいて選択される。例えば、車両が、増加する道路の傾斜を登るにつれて、変速点は、増加する傾斜に対応して増加し続ける。
【0046】
従って、当然のことながら、ここで提供される方法は、計算された道路の傾斜に基づいてブレーキ表示を決定すること、計算された道路の傾斜に基づいて適用されるブレーキ力を決定すること、又は、計算された道路の傾斜に基づいて変速点を選択することの単なる実施例であり、他の方法が、本発明の原理から逸脱することなく可能である。例えば、道路の傾斜は、GPSの推定の軌道、カメラからの道路の映像、トルク、衝撃圧縮、速度、燃料消費、摩擦係数、道路のバンク、方向転換、又は、路面等の他の状態に基づいている。
【0047】
当然のことながら、ここに記載されたモデル、方法、及びアルゴリズムの機能性は、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又は、所望のタスクを実行するために関連するハードウェアの電気回路を用いて実装される。例えば、上述の様々な機能性は、汎用の又は特殊用途のプログラミング言語を用いて、一連の命令、コード、又はコマンドとしてプログラム可能であり、1つ又は複数の汎用の又は特殊用途の、コンピューター、コントローラー、プロセッサ又は他のコントロール電気回路上で実行可能である。
【0048】
上述の本発明の様々な実施形態は、例示目的及び説明目的のために提示されている。それが、完全であり、或いは、本発明を開示された正確な形式に限定することを意図するものではない。多くの代替、改良、及びバリエーションが、上述の教示された技術分野の当業者にとって明らかであろう。例えば、本発明に従って変速装置を制御する方法は、道路の傾斜を計算し、道路の傾斜の変化を測定し、道路の傾斜の特定の変化に基づいてブレーキの適用を検出し、及び、ブレーキが表示されると変速装置のシフティングを禁止する。
【0049】
従って、エンジンの変数を調整するシステムのいくつかの代替的な実施形態が、特に論じられてきたのに対して、他の実施形態は、当業者にとって明らかであるか又は比較的簡単に開発されるであろう。さらに、複数の発明の態様及び特徴が記載されているが、当然のことながら、これら態様及び特徴は、任意の特定の実施形態に組み合わせて使用される必要はない。従って、本発明は、すべての代替、改良、及びバリエーションを包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤを備えると共に自動のギヤ変更を生じさせる少なくとも1つの変速点に応答するように構成された車両の変速装置を制御する方法であって、
車両の走行中に検出された1つ又は複数の状態に基づいて道路の傾斜を計算することと、
前記計算された道路の傾斜の変化を測定することと、
前記計算された道路の傾斜の前記変化に基づいてブレーキの適用を検出することと、
ブレーキが検出されると、変速装置のギヤ変更を禁止すること、を含む方法。
【請求項2】
前記道路の傾斜の計算が、車両の加速度に基づく請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記道路の傾斜の計算が、アクセルペダルの踏み込みに基づく請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記計算された道路の傾斜の変化を測定することが、前記計算された道路の傾斜を、基準道路傾斜と比較することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記計算された道路の傾斜の変化を測定することが、前記基準道路傾斜を補償することをさらに含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基準道路傾斜が、平坦な道路を代表する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基準道路傾斜が、増加するステップ関数によって補償される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記計算された道路の傾斜の前記変化が、約1.0(%の勾配/s)よりも大きいと、ブレーキの適用が検出される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキの適用を検出する動作が、ブレーキスイッチのステータスを考慮に入れることなく達成される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
車両のブレーキを決定する方法であって、
車両の走行中に状態を検出することと、
検出された1つ又は複数の状態に基づいて道路の傾斜を計算することと、
前記計算された道路の傾斜の変化を測定することと、
前記計算された道路の傾斜の前記変化を、車両が直面した実際の道路の変化の代表の値の範囲と比較することと、
前記計算された道路の傾斜の前記変化が、前記値の範囲から外れると、ブレーキの適用を表示すること、を含む方法。
【請求項11】
前記道路の傾斜の計算が、車両の加速度に基づく請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記道路の傾斜の計算が、アクセルペダルの踏み込みに基づく請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記計算された道路の傾斜の変化を測定することが、前記計算された道路の傾斜を、基準道路傾斜と比較することをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記計算された道路の傾斜の変化を測定することが、前記基準道路傾斜を補償することをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基準道路傾斜が、平坦な道路を代表する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記値の範囲が、0.0%/sと1.0%/sとの間である請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ブレーキの適用を検出する動作が、ブレーキスイッチのステータスを考慮に入れることなく達成される請求項10に記載の方法。
【請求項18】
車両のブレーキ表示システムであって、
車両の状態センサーと、
情報システムから道路の傾斜を計算し、該計算された道路の傾斜に基づいて車両のブレーキの適用を表示するように動作する少なくとも1つのプロセッサと、
前記車両のブレーキの表示に基づいて変速装置のギヤ変更を禁止するように動作する変速装置制御システムと、を具備するシステム。
【請求項19】
前記プロセッサが、車両のブレーキの適用を表示するために、前記計算された道路の傾斜を、基準道路傾斜と比較するように動作する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロセッサが、増加するステップ関数を適用することによって、平坦な道路を示すように前記基準道路傾斜を調整するように動作する請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記車両の状態センサーが、車速及びアクセルペダルの踏み込みを検出する請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−533275(P2010−533275A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516077(P2010−516077)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/US2008/055108
【国際公開番号】WO2009/009161
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【Fターム(参考)】