説明

車両の衝突物保護構造

【課題】フロントウインドガラスの前方からインストルメントパネルに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができる車両の衝突物保護構造を提供することを課題とする。
【解決手段】車両の衝突物保護構造であって、フロントウインドガラス2の前方からインストルメントパネル10に衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収するための衝撃吸収部が、インストルメントパネル10に設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドガラスの前方からインストルメントパネルに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収して、衝突物を保護する車両の衝突物保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両への衝突を検知または予知したときに、車両の上面にエアバッグを膨張展開させて、衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和する衝突物保護装置としては、車両のフロントウインドガラスの下縁部に沿って膨張展開する本体部と、この本体部の両端部から屈曲して車両のフロントピラーの下部付近に沿って膨張展開する一対のピラー部とが形成された筒状の袋体からなるエアバッグを備えている衝突物保護装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前記した従来の衝突物保護装置のエアバッグには、フロントウインドガラスの前面を覆うように展開する透明な裂傷防止膜が設けられており、この裂傷防止膜によってフロントウインドガラスの前面を覆うことにより、フロントウインドガラスに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができるとともに、衝突物がフロントウインドガラスを貫通してしまうことを防ぐことができる。
【特許文献1】特開2000−264146号公報(段落0015、0019、0020、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した従来の衝突物保護装置では、裂傷防止膜はエアバッグの一部であり、エアバッグが膨張展開後に収縮したときには、フロントウインドガラスの前面で収縮した裂傷防止膜を通して運転者は前方を見ることになり、前方視界を確保することが困難になってしまう。
【0005】
そこで、衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和するとともに、衝突物の衝突後に前方視界を確保することができるフロントウインドガラスとしては、二枚の透明基板の間に、透明で靭性を有する中間膜が挟まれた合わせガラスを用いることができる。
この構成では、衝突物に加えられる衝撃力を中間膜の撓みによって吸収緩和させることができるとともに、中間膜が透明基板の間に挟まれており、衝突物の衝突後に中間膜が収縮しないため、衝突物の衝突後に前方視界を確保することができる。
【0006】
しかしながら、前記中間膜を有するフロントウインドガラスでは、中間膜の撓み量を増加させて衝撃吸収性能を向上させた場合には、フロントウインドガラスの前方から衝突した衝突物が、中間膜の撓みによって車内側に大きく入り込むことになり、衝突物が車内のインストルメントパネルに衝突してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、フロントウインドガラスの前方からインストルメントパネルに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができる車両の衝突物保護構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、車両の衝突物保護構造であって、フロントウインドガラスの前方からインストルメントパネルに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収するための衝撃吸収部が、インストルメントパネルに設けられていることを特徴としている。
【0009】
このように、フロントウインドガラスの前方からインストルメントパネルに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収するための衝撃吸収部が、インストルメントパネルに設けられることにより、衝突物がフロントウインドガラスの撓み等によって車内側に大きく入り込んで、車内のインストルメントパネルに衝突した場合であっても、インストルメントパネルから衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができる。
【0010】
前記した車両の衝突物保護構造であって、フロントウインドガラスは、二枚の透明基板の間に透明な中間膜が挟まれている合わせガラスであり、中間膜は、衝突物がフロントウインドガラスに衝突したときに、衝突物を貫通させることなく衝撃を吸収するように靭性を備えているように構成することができる。
【0011】
ここで、靭性を備えた中間膜をフロントウインドガラスに設けることにより、衝突物がフロントウインドガラスに衝突したときには、中間膜の撓みによって、衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和させることができる。
そして、本発明では、中間膜が撓むことにより、車内側に大きく入り込んだ衝突物がインストルメントパネルに衝突した場合であっても、その衝撃力を衝撃吸収部によって吸収緩和することができるため、衝突物とインストルメントパネルの衝突を考慮して、中間膜の撓み量を制限することなく、中間膜の撓み量を増加させて、中間膜の衝撃吸収性能を向上させることができる。
【0012】
前記した車両の衝突物保護構造において、衝撃吸収部は、インストルメントパネルの内側面に設けられたリブに脆弱部を形成したり、インストルメントパネルの内側面に設けられたリブの屈曲部を緩やかな曲率に形成したりすることにより構成することができる。
【0013】
ここで、脆弱部とは、スリットやノッチを形成することにより、他の部位よりも弱い力で変形や破断しやすくした部位である。
【0014】
このように、リブに脆弱部を形成したり、リブの屈曲部を緩やかな曲率に形成したりすることによって、リブは押圧力によって変形や破断しやすくなる。これにより、衝突物がインストルメントパネルに衝突したときには、衝突物からの押圧力によって、リブが変形や破断して、インストルメントパネルに撓みが生じるため、衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができる。
【0015】
前記した車両の衝突物保護構造において、衝撃吸収部は、車体フレームに突設された支持軸が嵌り合う筒状の嵌合部をインストルメントパネルに設け、この嵌合部に脆弱部を形成したり、車体フレームに形成された嵌合孔に嵌り合う支持軸をインストルメントパネルに設け、支持軸に脆弱部を形成したりすることにより構成することができる。
【0016】
このように、車体フレームの支持軸が嵌り合う筒状の嵌合部に脆弱部を形成したり、車体フレームの嵌合孔に嵌り合う支持軸に脆弱部を形成したりすることによって、嵌合部または支持軸は押圧力によって変形や破断しやすくなる。これにより、衝突物がインストルメントパネルに衝突したときには、衝突物からの押圧力によって、嵌合部または支持軸が変形や破断し、インストルメントパネルと車体フレームの固定が解除されて、インストルメントパネルに撓みが生じるため、衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができる。
【0017】
前記した車両の衝突物保護構造において、衝撃吸収部は、インストルメントパネルの上部に弾性部材が取り付けられることにより構成することができる。
【0018】
このように、インストルメントパネルの上部に弾性部材を取り付けることにより、衝突物がインストルメントパネルに衝突したときには、衝突物に加えられる衝撃力を弾性部材によって吸収緩和することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両の衝突物保護構造によれば、フロントウインドガラスの前方からインストルメントパネルに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収するための衝撃吸収部が、インストルメントパネルに設けられており、衝突物が車内のインストルメントパネルに衝突したときに、インストルメントパネルから衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができるため、衝突物を確実に保護することができる。
また、二枚の透明基板の間に、靭性を有する中間膜が挟まれたフロントウインドガラスを備えた車両に適用した場合には、中間膜が撓むことにより、車内側に大きく入り込んだ衝突物がインストルメントパネルに衝突した場合であっても、その衝撃力が衝撃吸収部によって吸収緩和されるため、衝突物とインストルメントパネルの衝突を考慮して、中間膜の撓み量を制限することなく、中間膜の撓み量を増加させて、中間膜の衝撃吸収性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0021】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態の車両の衝突物保護構造について説明する。
図1は、第1実施形態の車両を示した平面図である。図2は、第1実施形態のインストルメントパネルを下方からみた図である。図3は、第1実施形態の衝突物保護構造を示した図で、(a)は図1のA−A断面図、(b)はフロントウインドガラスの拡大断面図、(c)はリブの拡大断面図である。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態の車両1は自動車であり、この車両1が走行中に衝突物と衝突し、その衝突物がフロントウインドガラス2に二次衝突したときに、衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和するための衝突物保護構造3が設けられている。
第1実施形態の衝突物保護構造3は、車両1の前方からフロントウインドガラス2に衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和するとともに、フロントウインドガラス2の撓みによってインストルメントパネル10に衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和するように構成されている。
【0023】
フロントウインドガラス2は、図3(b)に示すように、上下方向に配置されたガラス製の二枚の透明基板2a,2bの間に、透明な中間膜2cが挟まれている合わせガラスである。
中間膜2cは、フロントウインドガラス2の前方から衝突した衝突物を貫通させることなく、衝突物に加えられる衝撃力を吸収するように靭性を備えている薄い膜である。この中間膜2cの材料は限定されるものではないが、例えば、PVB(ポリビニルブチラール)等を用いることができる。
【0024】
インストルメントパネル10は、フロントウインドガラス2の下端縁に沿って車内前部に配設された樹脂製の内装パネルであり、図3(a)に示すように、側面視では、車両前方に向かって開口するように略コの字形状となっている。
このインストルメントパネル10には、図2に示すように、車体フレームに突設された支持軸(図示せず)に嵌り合う筒状の嵌合部11が、車幅方向に所定間隔を離して三箇所に設けられている。
中央の嵌合部11は、車幅方向の中央に位置しており、この中央の嵌合部11から車内空調の吹き出し口であるデフロスタ12,12を介在させた位置に、外側の嵌合部11,11が配設されている。
そして、車体フレームに突設された三本の支持軸(図示せず)に、各嵌合部11,11,11がそれぞれ嵌め合わされると共に、インストルメントパネル10の車幅方向の両側部が車体フレームにボルト締結されることにより、インストルメントパネル10が車体フレームに取り付けられている。
なお、図3(a)に示す符号13は、インストルメントパネル10の外側面に取り付けられたパッドである。
【0025】
また、図2に示すように、インストルメントパネル10には、内側面10aから垂直に立ち上げられた板状のリブ14が、車両1の前後方向に延設されている。このリブ14は、インストルメントパネル10が熱や弱い力で歪んでしまうことを防ぐための部材であり、車幅方向に所定間隔を離して複数設けられている。
【0026】
さらに、インストルメントパネル10には、フロントウインドガラス2の前方からインストルメントパネル10の上面10cに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収する衝撃吸収部が設けられている。
【0027】
第1実施形態の衝撃吸収部は、図3(a)に示すように、リブ14に複数のノッチ14a・・・を切り欠いて形成し、リブ14の複数箇所に脆弱部を形成することにより構成されている。
各ノッチ14a・・・は、インストルメントパネル10の内側面10aに対して略垂直に形成されており、リブ14の延長方向に所定間隔を離して形成されている。
【0028】
また、第1実施形態の衝撃吸収部は、リブ14の屈曲部を緩やかな曲率に形成することによっても構成されている。
図3(c)に示すように、リブ14には、インストルメントパネル10の内側面10aに形成された段差部10bに沿って屈曲した屈曲部14b,14bが形成されており、この屈曲部14b,14bが緩やかな曲率に形成されている。
【0029】
以上のように構成された第1実施形態の衝突物保護構造3では、次のような作用効果を奏する。
第1実施形態の衝撃吸収部では、図3(c)に示すように、インストルメントパネル10の内側面10aに設けられたリブ14にノッチ14aを複数形成するとともに、リブ14の屈曲部14bを緩やかな曲率に形成することにより、リブ14は押圧力によって変形や破断しやすくなっている。
【0030】
そして、車両1の前方からフロントウインドガラス2に衝突物が衝突したときには、フロントウインドガラス2の中間膜2cが撓むことにより、衝突物に加えられる衝撃力が吸収緩和されることになる。
このとき、中間膜2cが撓むことにより、衝突物が車内側に大きく入り込んでインストルメントパネル10の上面10cに衝突したときには、衝突物からの押圧力によって、リブ14が変形や破断して、インストルメントパネル10の上面10cに撓みが生じるため、インストルメントパネルから衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができ、衝突物を確実に保護することができる。
【0031】
また、中間膜2cが大きく撓むことにより、衝突物がインストルメントパネル10に衝突した場合であっても、その衝撃力が衝撃吸収部によって吸収緩和されるため、衝突物とインストルメントパネル10の衝突を考慮して、中間膜2cの撓み量を制限することなく、中間膜2cの撓み量を増加させて、中間膜2cの衝撃吸収性能を向上させることができる。
【0032】
なお、中間膜2cは、透明基板の間に挟まれており、衝突物の衝突後に中間膜2cが収縮しないため、衝突後に前方視界を確保することができ、衝突後の回避操作を的確に行うことができる。
【0033】
また、リブ14の強度が必要以上に低下しないように、ノッチ14aの幅や深さを設定する必要がある。
さらに、車幅方向に隣り合うリブ14,14の各ノッチ14a・・・が車幅方向に並ばないようにずらして形成して、脆弱部を分散させることにより、インストルメントパネル10の強度に偏りを生じさせないことが望ましい。
【0034】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の車両の衝突物保護構造について説明する。
図4は、第2実施形態の衝突物保護構造を示した側断面図である。図5は、第2実施形態の衝撃吸収部を示した図で、(a)は嵌合部の側断面図、(b)は嵌合部の正面断面図、(c)は嵌合部の上壁部が支持軸を越える態様を示した正面断面図である。
【0035】
第2実施形態の衝突物保護構造における衝撃吸収部は、図4に示すように、車体フレーム4に突設された支持軸4aが嵌り合う嵌合部11をインストルメントパネル10の内側面10aに設け、この嵌合部11にスリット11aを開口させることにより構成されている。
【0036】
嵌合部11は、図5(a)および(b)に示すように、内側面10aから垂直に立ち下げられた両側の側壁部11c,11cと、この両側の側壁部11c,11cの間に形成された上壁部13bおよび下壁部11dによって、車両1の前後方向に延長された穴部11eを形成する筒状の部位である。
穴部11eは、正面視で逆台形状に形成されており、車体フレーム4の支持軸4aが嵌り合う大きさに形成されている。
また、上壁部11bおよび下壁部11dは、両側の側壁部11c,11cの高さ方向の下部に形成されており、内側面10aと上壁部11bの上面との間には、中空部11fが形成されている。
【0037】
上壁部11bには、車両1の前後方向に延長されたスリット11aによって脆弱部が形成されており、上壁部11bは押圧力によって湾曲しやすくなっている。そのため、図5(c)に示すように、インストルメントパネル10の上面10cに押圧力が作用したときには、上壁部11bが湾曲することにより、上壁部11bが支持軸4aを越えて下方に移動することになり、支持軸4aは穴部11eから外れて中空部11f内に遊嵌されることになる。これにより、インストルメントパネル10と車体フレーム4との固定が一部解除され、衝突物からの押圧力によって、インストルメントパネル10の上面10cに撓みが生じることになる。
【0038】
このように、第2実施形態の衝突物保護構造では、インストルメントパネル10の上面10cに押圧力が作用したときに、嵌合部11が変形することにより、インストルメントパネル10と車体フレーム4の固定が解除され、インストルメントパネル10の上面10cに撓みが生じるため、インストルメントパネル10に衝突した衝突物に加えられる衝撃力を、インストルメントパネル10の上面10cの撓みによって吸収緩和することができる。したがって、衝突物とインストルメントパネル10の衝突を考慮して、中間膜2c(図3(b)参照)の撓み量を制限することなく、フロントウインドガラス2の中間膜2cの撓み量を増加させて、中間膜2cの衝撃吸収性能を向上させることができる。
【0039】
なお、支持軸4aが中空部11f内に遊嵌されたときの支持軸4aと中空部11fの上下方向の遊び量は、嵌合部11が支持軸4aに対して上下に移動することができる距離であり、インストルメントパネル10の上面10cの撓み量となるため、中空部11fの高さを調整することによって、インストルメントパネル10の上面10cの撓み量を設定することができる。
また、第2実施形態では、上壁部11bが衝突物からの押圧力によって曲がるように構成されているが、上壁部11bが衝突物からの押圧力によって折れるように構成することもできる。
【0040】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の車両の衝突物保護構造について説明する。
図6は、第3実施形態の衝撃吸収部を示した図で、嵌合部の側断面図である。
【0041】
第3実施形態の衝突物保護構造における衝撃吸収部は、図6に示すように、車体フレーム4に形成された嵌合孔4bに嵌り合う支持軸15をインストルメントパネル10の内側面10aに設け、この支持軸15の下部にノッチ15aを切り欠いて形成することにより構成されている。
【0042】
支持軸15の下部には、ノッチ15aによって脆弱部が形成されており、支持軸15は押圧力によって折れやすくなっている。
このノッチ15aは、支持軸15が嵌合孔4bに嵌り合ったときに、嵌合孔4b内に入り込まない位置に形成されており、インストルメントパネル10の上面10cに押圧力が作用したときには、支持軸15が折れることにより、インストルメントパネル10と車体フレーム4の固定が一部解除され、インストルメントパネル10の上面10cに撓みが生じることになる。
【0043】
このように、第3実施形態の衝突物保護構造では、インストルメントパネル10の上面10cに押圧力が作用したときに、支持軸15が折れることにより、インストルメントパネル10と車体フレーム4の固定が解除され、インストルメントパネル10の上面10cに撓みが生じるため、インストルメントパネル10に衝突した衝突物に加えられる衝撃力を、インストルメントパネル10の上面10cの撓みによって吸収緩和することができる。したがって、衝突物とインストルメントパネル10の衝突を考慮して、中間膜2c(図3(b)参照)の撓み量を制限することなく、フロントウインドガラス2の中間膜2cの撓み量を増加させて、中間膜2cの衝撃吸収性能を向上させることができる。
【0044】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の車両の衝突物保護構造について説明する。
図7は、第4実施形態の衝突物保護構造を示した側断面図である。
【0045】
第4実施形態の衝撃吸収部は、図7に示すように、インストルメントパネル10の上面10cに窪み部10dを形成し、この窪み部10d内にウレタン材16を取り付けることにより構成されている。
【0046】
このように、インストルメントパネル10の上面10cに、弾性部材であるウレタン材16を取り付けることにより、インストルメントパネル10の上面10cに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を、ウレタン材16の弾性によって吸収緩和することができる。したがって、衝突物とインストルメントパネル10の衝突を考慮して、中間膜2cの撓み量を制限することなく、フロントウインドガラス2の中間膜2cの撓み量を増加させて、中間膜2cの衝撃吸収性能を向上させることができる。
さらに、ウレタン材16がインストルメントパネル10の上面10cに露出した状態となるため、内装の質感を向上させることもできる。
【0047】
なお、第4実施形態では、弾性部材としてウレタン材16を用いているが、インストルメントパネル10に衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収緩和することができる部材であれば、その材料や形状は限定されるものではない。
【0048】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態には限定されない。例えば、各実施形態の衝突物保護構造に、図8の平面図に示すエアバッグ20を組み合わせることができる。
このエアバッグ20は、衝突物が衝突する直前に、車両1の上面に膨張展開する筒状の袋体であり、フロントウインドガラス2の下縁部に沿って膨張展開する本体部21と、この本体部21の両端部から屈曲して車両1のフロントピラーに沿って膨張展開する一対のピラー部22,22とが形成されており、ピラー部22,22によって、車両1のフロントピラーを覆うことができ、衝突物がフロントピラーに直接衝突することを防ぐことができる。
【0049】
このような構成において、衝突物がエアバッグ20に衝突した後に、フロントウインドガラス2の上面に移動し、フロントウインドガラス2の中間膜2c(図3(b)参照)の撓みによって、インストルメントパネル10(図1参照)に衝突した場合であっても、各実施形態の衝突物保護構造では、インストルメントパネル10から衝突物に加えられる衝撃力を、インストルメントパネル10の衝撃吸収部によって吸収緩和することができるため、衝突物を確実に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態の車両を示した平面図である。
【図2】第1実施形態のインストルメントパネルを下方からみた図である。
【図3】第1実施形態の衝突物保護構造を示した図で、(a)は図1のA−A断面図、(b)はフロントウインドガラスの拡大断面図、(c)はリブの拡大断面図である。
【図4】第2実施形態の衝突物保護構造を示した側断面図である。
【図5】第2実施形態の衝撃吸収部を示した図で、(a)は嵌合部の側断面図、(b)は嵌合部の正面断面図、(c)は嵌合部の上壁部が支持軸を越える態様を示した正面断面図である。
【図6】第3実施形態の衝撃吸収部を示した図で、嵌合部の側断面図である。
【図7】第4実施形態の衝突物保護構造を示した側断面図である。
【図8】他の実施形態の車両を示した図で、エアバッグを膨張展開させた後の平面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 フロントウインドガラス
2c 中間膜
3 衝突物保護構造
4 車体フレーム
10 インストルメントパネル
14 リブ (第1実施形態)
14a ノッチ (第1実施形態)
14b 屈曲部 (第1実施形態)
4a 支持軸 (第2実施形態)
11 嵌合部 (第2実施形態)
11a スリット (第2実施形態)
11b 上壁部 (第2実施形態)
3b 嵌合孔 (第3実施形態)
15 支持軸 (第3実施形態)
15a ノッチ (第3実施形態)
16 ウレタン材(第4実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインドガラスの前方からインストルメントパネルに衝突した衝突物に加えられる衝撃力を吸収するための衝撃吸収部が、前記インストルメントパネルに設けられていることを特徴とする車両の衝突物保護構造。
【請求項2】
前記フロントウインドガラスは、二枚の透明基板の間に透明な中間膜が挟まれている合わせガラスであり、
前記中間膜は、前記衝突物が前記フロントウインドガラスに衝突したときに、前記衝突物を貫通させることなく衝撃を吸収するように靭性を備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両の衝突物保護構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収部は、前記インストルメントパネルの内側面に設けられたリブに、脆弱部が形成されることにより構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の衝突物保護構造。
【請求項4】
前記衝撃吸収部は、前記インストルメントパネルの内側面に設けられたリブの屈曲部が緩やかな曲率に形成されることにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両の衝突物保護構造。
【請求項5】
前記衝撃吸収部は、車体フレームに突設された支持軸が嵌り合う筒状の嵌合部を前記インストルメントパネルに設け、前記嵌合部に脆弱部が形成されることにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両の衝突物保護構造。
【請求項6】
前記衝撃吸収部は、車体フレームに形成された嵌合孔に嵌り合う支持軸を前記インストルメントパネルに設け、前記支持軸に脆弱部が形成されることにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両の衝突物保護構造。
【請求項7】
前記衝撃吸収部は、前記インストルメントパネルの上部に弾性部材が取り付けられることにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両の衝突物保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−137257(P2007−137257A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333607(P2005−333607)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】