説明

車両の走行用トランスミッション

【課題】本発明では、メイン駆動軸の周りにクラッチを有する複数の従動軸を装着するミッションケース内の構造で、簡単な部品構造で、間違って組み付けて再度修正組付けを行うようなことを防止することを課題とする。
【解決手段】メイン駆動軸58と平行に変速クラッチC1,C2,C3,C4を装着した複数の従動軸59,60を配設したミッションケース12を有する車両の走行用トランスミッションにおいて、前記従動軸59,60の出力側軸端にそれぞれギア75,81を設け、該ギア75,81と一体のボス75b,81aをミッションケース12側の軸受94,95に枢支した状態で、前記軸受94,95の端面からボス75b,81aの端部が突出する長さL,Mを異ならせて構成したことを特徴とする車両の走行用トランスミッションの構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンから走行装置の駆動輪やクローラへ動力を伝動するミッションケース内の動力伝動構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ミッションケース内では、駆動輪を所望の回転数で駆動するためにエンジンの出力をギアで多段に変速したり油圧無段変速装置を組み込んだりしている。そして、このミッションケースはトラクタなどでは車体の主要構成部材でもある。
【0003】
例えば、特開2000−320644号公報に記載のミッションケース内には、油圧無段変速装置とギア多段変速装置及び遊星歯車装置が組み込まれた技術の開示がある。
【特許文献1】特開2000−320644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミッションケース内の動力伝動機構や変速機構は、一部の部品を事前に組み立て(サブ組)しながら全体を組み上げていくが、形状の似通った部品やサブ組部材が複数あって、組み付け時に細心の注意が要求される。
【0005】
本発明では、メイン駆動軸の周りに変速機構をサブ組みした複数の従動軸を装着するミッションケース内の構造で、簡単な部品構造で、間違って組み付けて再度修正組付けを行うようなことを無くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の解決手段により解決される。
即ち、請求項1に記載の発明は、メイン駆動軸58と平行に変速クラッチC1,C2,C3,C4を装着した複数の従動軸59,60を配設したミッションケース12を有する車両の走行用トランスミッションにおいて、前記従動軸59,60の出力側軸端にそれぞれギア75,81を設け、該ギア75,81と一体のボス75b,81aをミッションケース12側の軸受94,95に枢支した状態で、前記軸受94,95の端面からボス75b,81aの端部が突出する長さL,Mを異ならせて構成したことを特徴とする車両の走行用トランスミッションとしたものである。
【0007】
この構成によって、ギア75,81と一体のボス75b,81aの端部が軸受94,95の端面から突出する長さLとMが違うので、組み付け嵌合する従動軸59,60を間違えなくなり、誤組を防止できるようになる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記従動軸59,60をメイン駆動軸58の上下方向に振り分けて配置して構成し、メイン駆動軸58と従動軸59の軸間距離D1と、メイン駆動軸58と従動軸60の軸間距離D2を同じ長さとなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行用トランスミッションとしたものである。
【0009】
この構成により、請求項1の作用に加え、メイン駆動軸58と従動軸59の軸間距離D1と、メイン駆動軸58と従動軸60の軸間距離D2は同じとなる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明においては、変速クラッチC1,C2,C3,C4を設けている複数の従動軸59,60を、ギア75,81側に組み付け嵌合させる時において、組み違いを無くして効率的なミッションケース12の組立が行えるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明においては、請求項1の効果に加え、軸間を同じにすることで、ミッションケース12はよりコンパクトな構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のミッションケースを適用したクローラ式トラクタTの全体を示す図面である。
【0013】
トラクタTは、図1に示すように、車体前部にエンジン取付フレーム10を配し、同フレーム10にエンジン11を取り付け、このエンジン11の後部からエンジン出力軸(図示せず)を突設し、同軸の回転を車体前後方向に配した鋳物製ミッションケース12内の変速装置に伝達する構成となっている。また、前記変速装置により適宜減速された回転動力は、後述するベベルギアや左右アクスルケース内のスプロケット軸等を介して、左右のクローラ式走行装置13へ伝達する構成となっている。
【0014】
前記ミッションケース12の上方には、フロア14を支持し、このフロア14上に、操向操作部となるステアリングハンドル15とこのステアリングハンドル15の左右に走行を前後進に切り換える前後進切換レバー24と作業機(ロータリ)Rなどの対地作業機或いは機体の前側に装着するフロントドーザ(図示省略)を昇降させる昇降レバー23(図2参照)を設け、ステアリングハンドル15の後側に操縦席18を設けてオペレータが着座して操縦操作を行う。また、ステアリングハンドル15の右側で昇降レバー23の前方には、アクセルレバーAL(図6参照)を設ける構成としている。
【0015】
操縦席18の左側に走行速度を変速する副変速レバー9(低速、中立、高速切換)、作業機(ロータリ)Rの高さを調整するポジションレバー16を設けている。副変速レバー9には、増速ボタン9aと減速ボタン9bを設けている。増速ボタン9aを押すと、後述する図8に示しているクラッチC1〜C4のシフトアップが行われ、減速ボタン9bを押すと、クラッチC1〜C4のシフトダウンが行われる。
【0016】
操縦席18の右側には、機体が後進状態になると作業機(ロータリ)Rを自動的に上昇させるバックアップスイッチ19、作業機(ロータリ)Rの左右の傾きを調整する傾き調整ダイヤル20や左右傾斜手動調整スイッチ21及び水平制御切換スイッチ22を設け、足元のフロア14にブレーキペダル25、クラッチペダル26、アクセルペダルAP等を設ける構成となっている。
【0017】
なお、昇降レバー23に代えてポジションレバー16でフロントドーザを昇降するようにしても良い。この時は、ポジションレバー16が中立位置に復帰するように付勢して設けると良い。
【0018】
前記フロア14の左右両側部には、クローラ13の上方を覆うフェンダー27を設ける構成となっている。左右のフェンダー27は、着脱式の燃料タンク28を取り付ける構成となっていて、この燃料タンク28の上部形状は、前記フェンダー27に沿わせた形状とし、この上面に前後に伸びる取手29を設ける構成となっている。この取手29がそのまま乗降用のハンドキャッチャーとなる。
【0019】
前記ミッションケース12の上面には、作業機昇降用アクチュエータとなる昇降用油圧シリンダ30を設け、同シリンダ30のピストンに接続したリフトアーム31を上下回動することにより、リンク機構を介して作業機を昇降する構成となっている。
【0020】
また、車体後部のリンク機構の一部には、作業機Rの左右ローリング用アクチュエータとして左右水平シリンダ32を取り付け、この作動量を前記シリンダ32に併設するストロークセンサ(図示せず)により検出する構成となっている。
【0021】
ステアリングハンドル15の前側下部に設けるフロントパネル33には、図3と図4に示す如く、燃料計34、バッテリチャージ警告灯35、エンジンオイル圧力警告灯36、水温警告灯37、システム異常警告灯38、スピンターン表示灯39、マイルドターン表示灯40、作業時間等を表示するアワーメータ41、旋回モード切換スイッチ42を設け、さらに、このフロントパネル33の左下側にホ―ンスイッチ44、ウインカーレバー43、ライト切換レバー45、旋回モード切換スイッチ46を設けている。
【0022】
次に、トラクタTのミッションケース12内の動力伝動構造を主として図8の動力伝動機構線図で説明する。
ミッションケース12は、図9に示す如く、前ケース99、第一中間ケース100、第二中間ケース101、第三中間ケース102、後ケース103の5つの中空ケースを連結した構成で、前記エンジン11の出力軸から前ケース99内の入力軸50へ入力された回転動力は、まず該入力軸50に設けた減速ギア組51、51aによりミッションケース12の第一中間ケース100に枢支した主クラッチ入力軸54に伝達され、主クラッチ52を回転する。この主クラッチ52にて入切操作される動力は、ミッションケース12の第三中間ケース102内に設ける主変速装置A(クラッチC1〜C4)及び副変速装置B(ドック78a(低速時)とクラッチギア78(高速時))により適宜減速され、後ケース103に枢支してベベルギア56を有する出力軸55へ伝達される。主クラッチ入力軸54の前ケース99外側には油圧ポンプ57を装着して駆動している。
【0023】
前記主クラッチ52は主クラッチ出力軸53への動力断続を行い、フロア14上の走行クラッチペタル26で入切操作される。
主変速装置Aは主クラッチ出力軸53の延長線に設けるメイン駆動軸58を中心にして上下に配して設けた第一従動軸59と第二従動軸60の三軸で構成されている。
【0024】
主クラッチ出力軸53の回転動力は主クラッチ出力軸53の後端に設けたギア61に噛合する大径ギア62を備えた減速軸63に伝達され、該減速軸63の小径ギア64と噛合するギア65からメイン駆動軸58に伝達される。
【0025】
メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア66と前記第二従動軸60上にニードルベアリングを介して軸受されたギア67とが常時噛合し、前記メイン駆動軸58にスプライン係合している小径ギア68と前記第一従動軸59にニードルベアリングを介して軸受されているギア69とがそれぞれ常時噛合している。なお、ギア65とギア66は一体のギアである(図9参照)。
【0026】
さらにメイン駆動軸58にスプライン係合しているギア70と第一従動軸59にニードルベアリングを介して軸受されているギア71とが常時噛合している。また、メイン駆動軸58にスプライン係合しているギア72と第二従動軸60にニードルベアリングを介して軸受されているギア73とが常時噛合している。
【0027】
第一従動軸59には、一速用のクラッチC1と三速用のクラッチC3を内装して相対回転不能にしたシリンダーケース74が設けられている。
第一従動軸59と第二従動軸60とメイン駆動軸58の第二中間ケース101側(前側)は、軸受104,105,106で枢支し、第三中間ケース102側(後側)は、第一従動軸59と第二従動軸60は軸受94,95で枢支したギア75,81にスプライン嵌合し、メイン駆動軸58は軸受96で枢支している。
【0028】
これら各軸58,59,60の第三中間ケース102への組み立ては、まず、第三中間ケース102にギア75とギア81を軸受94,95で枢支し、シリンダーケース74,80をサブ組みした第一従動軸59と第二従動軸60をギア75とギア81にスプライン嵌合し、駆動軸58にギア70,72をスプライン嵌合した後に軸受96へ嵌合する。
【0029】
その後、駆動軸58にギア68,65,66(ギヤ65,66は一体構成)をスプライン嵌合し、第一従動軸59と第二従動軸60の軸端を第二中間ケース101に取り付けた軸受104,105に嵌合し、ギア61を軸受106に嵌合して、第三中間ケース102と第二中間ケース101を一体に組み付ける。
【0030】
この組立作業において、ギア75が軸受94から前側へ突出する突出量Lと、ギア81が軸受95から前側へ突出する突出量Mを異ならせている(図8と図11参照)ので、第一従動軸59と第二従動軸60を組み違えると第二中間ケース101が取り付けられず間違いに気がつき、誤って組み付けてしまうことを防止できる。
【0031】
また、駆動軸58と第一従動軸59との軸間距離D1と、駆動軸58と第二従動軸60との軸間距離D2を等しくして、駆動軸58の軸線上に設けるギア76に第一従動軸59と第二従動軸60にスプライン嵌合した同一歯数のギア75,81を噛み合わせて以降の副変速Bの構成が簡単になっている。
【0032】
第一従動軸59には、ギア69,71と共にクラッチC1,C3を組み込んだシリンダーケース74をサブ組みするが、これが外れないようにギア端面を押える止め輪109,107を設けている。同様に、第二従動軸60には、ギア67,73と共にクラッチC2,C4を組み込んだシリンダーケース80をサブ組みするが、これが外れないようにギア端面を押える止め輪110,108を設けている。サブ組の最後に嵌め込む止め輪109,107,110,108は、各ギア69,71,67,73の端面がシリンダーケース74,80からの距離を異ならせているので、正しい組み立ての確認にもなる。
【0033】
シリンダーケース74内のクラッチC1,C3を作動する油圧配管は、第三中間ケース102に穿孔した油路114と第二中間ケース101に穿孔した油路111をケースの接合と共に連結するが、第二中間ケース101側の油路111を隆起部112に設け、第三中間ケース102側の凹み部116に設けた油路114と連結することで、ケース端面に塗布するシール材が油路を防がないようにしている。115はオイルリングである。
【0034】
シリンダーケース80への油路も同様にしている。
第一従動軸59の後端部にスプライン嵌合したギア75をメイン駆動軸58に遊嵌したギア筒77に固定したギア76と噛み合わせて第一従動軸59の回転をギア筒77に伝動している。
【0035】
また第一従動軸59の軸線上に出力軸55を設け、この出力軸55に副変速装置Bを構成するクラッチギア78をスプライン嵌合し、このクラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせると、ギア筒77回転がギア79から出力軸55に伝動される(副変速低速)。この場合、クラッチC1又はクラッチC3で接続された動力は、第一従動軸59、ギア75、ギア76及びギア筒77を経由してギア79に伝達されてくる。また、クラッチC2又はクラッチC4で接続された動力は、第二従動軸60、ギア81、ギア76及びギア筒77を経由してギア79に伝達されてくる。
【0036】
また、クラッチギア78と一体のドック78aと第一従動軸59のギア75に一体のドック75aとを連結すると、ギア75の回転がドック75a、ドック78aを経由して出力軸55に伝動される(副変速高速)。
【0037】
従って、副変速低速を選択した状態でクラッチC1〜C4を変速(油圧作動)すると、車速が1速〜4速の変速となり、副変速高速を選択した状態でクラッチC1〜C4を変速すると、車速が5速〜8速の変速となる。
【0038】
従って、一速用のクラッチC1を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア68からギア69へ減速伝動され、クラッチC1(ディスク板)、シリンダーケース74を介して第一従動軸59に伝達され、ギア75を回転する。この時にクラッチギア78と一対のドック78aギア75のドック75aと噛み合わせていると、第一従動軸59の回転が出力軸55に直接伝動される。また、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせているとギア75の回転がギア76を介してギア筒77に減速伝動し、ギア79からクラッチギア78を経由して出力軸55に減速伝動される。
【0039】
また、三速用のクラッチC3を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア70からギア71へ伝動され、ギア71の回転は、クラッチC3、シリンダーケース74を介して第一従動軸59に伝達され、ギア75を回転する。この時にクラッチギア78と一対のドック78aギア75のドック75aと噛み合わせていると、第一従動軸59の回転が出力軸55に直接伝動される。また、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせているとギア75の回転がギア76を介してギア筒77に減速伝動し、ギア79からクラッチギア78を経由して出力軸55に減速伝動される。
【0040】
メイン駆動軸58と平行位置に配置された第一従動軸59との間に設けられる前記のギア伝達機構と同様の構成が、メイン駆動軸58と第二従動軸60の間にも設けられていて、二速用のクラッチC2と四速用のクラッチC4を構成している。
【0041】
まず、メイン駆動軸58に固着しているギア66が第二従動軸60にニードルベアリングを介して軸受されているギア67と常時噛合し、第二従動軸60に相対回転不能にしたシリンダーケース80を取り付けている。このシリンダーケース80に二速用のクラッチC2と四速用のクラッチC4を内装している。
【0042】
第二従動軸60の後端部に固定したギア81をメイン駆動軸58に遊嵌したギア筒77に固着のギア76と噛み合わして第二従動軸60の回転をギア筒77に伝動している。
従って、二速用のクラッチC2を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア66からギア67へ速伝動され、クラッチC2、シリンダーケース80を経由して第二従動軸60に伝達されてギア81を回転し、さらにギア81からギア76を介してギア75を回転する。この時にクラッチギア78と一対のドック78aギア75のドック75aと噛み合わせていると、ギア75の動力は出力軸55に直接伝動される。また、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせているとギア76を介してギア筒77に減速伝動し、ギア79からクラッチギア78を経由して出力軸55に減速伝動される。
【0043】
また、四速用のクラッチC4を入にすると、メイン駆動軸58の回転がギア72からギア73へ伝動され、ギア73の回転はクラッチC4、シルンダーケース80を経由して第二従動軸60に伝達されてギア81を回転し、さらにギア81からギア76を介してギア75を回転する。この時にクラッチギア78と一対のドック78aギア75のドック75aと噛み合わせていると、ギア75の動力は出力軸55に直接伝動される。また、クラッチギア78を前記ギア筒77に形成したギア79と噛み合わせているとギア76を介してギア筒77に減速伝動し、ギア79からクラッチギア78を経由して出力軸55に減速伝動される。
【0044】
なお、上記の構成は、ギア75とギア76及びギア81を一列に配して伝動しているので、構成が簡単でミッションの前後方向の長さが短くなる。
左右のクローラ走行装置13,13を支持する後ケース103の左右側壁問に支持軸94を枢着し、前記出力軸55のベベルギア56と噛み合うベベルギア85を係合し、このベベルギア85と左右対称位置にブレーキディスク82を設けている。
【0045】
そして、ブレーキペダル25とブレーキディスク82をリンク機構(図示せず)で接続し、ブレーキペダル25の踏み込み操作によりブレーキディスク82を圧着することによって、支持軸94の回転、即ち左右クローラ走行装置13,13の回転を制動するように構成している。
【0046】
また、前記支持軸94の端部には減速ギア組83、83aを設け、この減速ギア組83、83aを介して支持軸94の回転をアクスルケース内の入力軸84に伝動する。
前記アクスルケースの内部には前後進切換クラッチDを配置してあり、この前後進切換クラッチDは、前記入力軸84と、この入力軸84の一端部側に入力軸84と同軸に枢着された出力軸86と、入力軸84と出力軸86の間に介装された二段遊星歯ギア機構87と、この二段遊星歯ギア機構87のキャリア88に設けられた湿式多板型の正転用クラッチ89(車体外側)及び逆転用クラッチ90(車体内側)とから構成している。
【0047】
120は、出力軸86の回転状態検出用のギアで、2個の回転センサ121,122で回転状態を検出する。ギアの歯数は75或いは81が適しており、2個の回転センサ121,122の取付角度は30°が適している。機体が走行しているか否かの判断は、回転センサ121,122からの信号だけでなく、主変速レバー9や副変速レバー9や前後進切換レバー24が中立及びクラッチペダル26が踏み込みのどれか一つでもYESの条件では回転センサ121,122からの回転信号を無視して機体の走行状態ではないと判断し、旋回制御信号を出力しない。これは、機体停止時に回転センサ121,122がエンジン振動による回転を検出しても油圧機器を無駄に作動させないためである。
【0048】
メイン駆動軸58の回転は、軸端に連結したPTO入力軸91に伝動され、PTO変速機構92を介してPTO出力軸93へ伝動される。
一速用のクラッチC1と三速用クラッチC3がシリンダーケース74に収められ、二速用のクラッチC2と四速用クラッチC4がシリンダーケース80に収められ、各シリンダーケース74、84内のクラッチを共通の油圧スプールで作動しているので、クラッチ切り換えに僅かなタイムラグが生じるが、連続する変速段でないために、一速から四速まで或いは逆に四速から一速まで順次変速していく場合に、タイムラグによるもたつき感を感じさせない。
【0049】
第一従動軸59と第二従動軸60に組み付ける2個のシリンダーケース74,80は、同一形状をしているが、それぞれに組み付けるギア69,71,67,73の軸方向長さを異ならせているために、サブ組みした第一従動軸59と第二従動軸60をミッションケース12内へ組み込む際に組み込み位置を間違えることがない。
【0050】
また、第一従動軸59の軸端に固着するギア75は、軸部をスプライン嵌合孔にして、まずミッショケース12内の軸受94へ組付け、後で第一従動軸59のスプライン軸部を差し込んで組み付けるので、組み付けが容易である。この点は、第二従動軸60も同様で、ギア81を軸受95に組付けた後に第二従動軸60をギア81にスプライン嵌合させているので、組み付けが容易である。
【0051】
この部分の組付け順序は、まず、ギア71,81を軸受94,95に組付け、ギア72,70を置いてメイン駆動軸58を軸受96へ差し込む。そして、クラッチC1、C3をサブ組みした第一従動軸59とクラッチC2、C4をサブ組みした第二従動軸60をそれぞれギア75,81にスプライン嵌合し、最後にギア68,65をメイン駆動軸58にスプライン嵌合する。この際に先に置くギア72が大きくそれに重ねるギア70が小さいために組付け易い。その後、減速軸63を軸受97に差し込み、小径ギア64と大径ギア62を減速軸63に組む。
【0052】
メイン駆動軸58に対して第一従動軸59と第二従動軸60を上下方向に振り分けした場合において、第一従動軸59は上側に位置している。そして、ミッションケース12内にはオイルを注入して各ギアの潤滑を行っているが、そのオイル量のオイルレベルOLは第一従動軸59の軸芯位置程度とする。第一従動軸59には一速用のクラッチC1と三速用クラッチC3が装着されて第二従動軸60には二速用のクラッチC2と四速用のクラッチC4が装着されているので、第一従動軸59が第二従動軸60よりも低速で回転してクラッチでの付き回りが多くなる傾向があるが、オイルに浸かる部分が少なく回転抵抗が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例を示すトラクタの側面図である。
【図2】トラクタの一部斜視図である。
【図3】トラクタの一部拡大平面図である。
【図4】トラクタの一部拡大平面図である。
【図5】トラクタの全体斜視図である。
【図6】トラクタの一部平面図である。
【図7】トラクタの一部斜視図である。
【図8】トラクタの動力伝動線図である。
【図9】ミッションケースの全体側断面図である。
【図10】ミッションケースの正断面図である。
【図11】ミッションケースの一部拡大側断面図である。
【符号の説明】
【0054】
12 ミッションケース
58 メイン駆動軸
59 従動軸
60 従動軸
75 ギア
75b ボス
81 ギア
81a ボス
94 軸受
95 軸受
C1 クラッチ
C2 クラッチ
C3 クラッチ
C4 クラッチ
D1 軸間距離
D2 軸間距離
L 突出長さ
M 突出長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン駆動軸(58)と平行に変速クラッチ(C1),(C2),(C3),(C4)を装着した複数の従動軸(59),(60)を配設したミッションケース(12)を有する車両の走行用トランスミッションにおいて、前記従動軸(59),(60)の出力側軸端にそれぞれギア(75),(81)を設け、該ギア(75),(81)と一体のボス(75b),(81a)をミッションケース(12)側の軸受(94),(95)に枢支した状態で、前記軸受(94),(95)の端面からボス(75b),(81a)の端部が突出する長さ(L),(M)を異ならせて構成したことを特徴とする車両の走行用トランスミッション。
【請求項2】
前記従動軸(59),(60)をメイン駆動軸(58)の上下方向に振り分けて配置して構成し、メイン駆動軸(58)と従動軸(59)の軸間距離(D1)と、メイン駆動軸(58)と従動軸(60)の軸間距離(D2)を同じ長さとなるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両の走行用トランスミッション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−213502(P2008−213502A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49283(P2007−49283)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】