説明

車両の障害物認識装置

【課題】自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段(レーダ装置1)を備えた車両の障害物認識装置において、ヨーレートセンサ13の検出値と自車両Wの車速を検出する車速検出手段(車速センサ12)により検出された車速とに基づいて自車両Wの進行路を推定する場合に、自車両Wの走行状況に応じて、その推定を出来る限り正確に行えるようにする。
【解決手段】車速検出手段により検出された車速に応じて、ヨーレートセンサ13の検出値を補正する。具体的には、車速検出手段により検出された車速が所定車速以上であるときには、該所定車速よりも小さいときに比べて、ローパスフィルタのカットオフ周波数を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両前方の障害物を検知するレーダ装置等の障害物検知手段を備えた車両の障害物認識装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーダ装置を用いて自車両前方の障害物を検知するようにした障害物認識装置はよく知られており、障害物が先行車両である場合には、その先行車両に追従する追従走行制御等を行う。この種の障害物認識装置の中には、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサの検出値と、自車両の車速を検出する車速センサの検出値とに基づいて、自車両の進行路を推定するものがある(例えば、特許文献1参照)。すなわち、このものでは、ヨーレートセンサと車速とで自車両の旋回半径を算出し、この旋回半径が、自車両の進行路の曲率半径であるとしている。そして、例えば先行車両に追従する追従走行制御を行っている場合、上記推定した進行路上に、上記検知した障害物が存在するか否かを判定して、その障害物が上記進行路上に存在していると判定したときには、そのまま追従走行制御を続行する一方、上記進行路上に存在しないと判定したときには、乗員が設定した目標車速で走行させる定速走行制御を行うようにしている。
【0003】
上記ヨーレートセンサの検出値はノイズ等の影響を受け易くて大きく変動するため、誤検出される場合があり、このため、特許文献2では、レーダー装置の検知結果及び進行路の推定結果に基づいて複数の先行車両を認識し、これら複数の先行車両の位置及び進行路の推定結果に基づいて自車両の進行路を補正するようにしている。
【特許文献1】特開平8−161697号公報
【特許文献2】2006−213073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献2のものでは、複数の先行車両を検知した場合を前提としており、1台の先行車両しか検知できない場合や障害物が静止物体である場合等に適用することは困難である。
【0005】
そこで、上記ヨーレートセンサの検出値をフィルタ処理するようにすれば、大きな誤差は生じ難くなり、進行路を正確に推定できるようになる。
【0006】
しかしながら、フィルタをかけすぎると応答性が低下し、このため、山道等のように小さい曲率半径のカーブが多数存在する道路では、却って進行路を誤って推定してしまう。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記のようにヨーレートセンサの検出値と自車両の車速を検出する車速センサ等の車速検出手段により検出された車速とに基づいて自車両の進行路を推定する場合に、自車両の走行状況に応じて、その推定を出来る限り正確に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、車速検出手段により検出された車速に応じて、ヨーレートセンサの検出値を補正するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の車速を検出する車速検出手段と、上記ヨーレートセンサの検出値と上記車速検出手段により検出された車速とに基づいて、自車両の進行路を推定する進行路推定手段と、上記障害物検知手段により検知された障害物が、上記進行路推定手段により推定された進行路上に存在するか否かを判定する判定手段とを備えた車両の障害物認識装置を対象とする。
【0010】
そして、上記車速検出手段により検出された車速に応じて、上記ヨーレートセンサの検出値を補正する補正手段を備え、上記進行路推定手段は、上記補正手段による補正後の検出値と上記車速検出手段により検出された車速とに基づいて、自車両の進行路を推定するように構成されているものとする。
【0011】
上記の構成により、ヨーレートセンサの検出値が、車速検出手段により検出された車速に応じて補正されるので、自車両の走行状況に応じて、上記検出値に対して適切な補正を行うことができる。すなわち、例えば上記検出値をフィルタ処理(平滑化)により補正する場合、上記車速が大きいときには、車速が小さいときに比べて、フィルタを強くかけるようにする。この結果、車速が大きいときには、フィルタを強くかけることで、自車両の進行路をより正確に推定できるようになる。このようにフィルタを強くかけても、車速が大きいときには、高速道路等を走行しているときであり、大きい曲率半径のカーブのみが存在するだけであるので、応答性が多少低下しても問題はない。一方、車速が小さいときには、フィルタを強くかけすぎないようにヨーレートセンサの検出値を補正することで、応答性が低下するのを防止しつつ進行路を正確に推定することができ、これにより、小さい曲率半径のカーブが連続的に多数存在する道路等を走行している場合に、応答性の低下により進行路を誤って推定するのを防止することが可能になる。よって、自車両の走行状況に応じて、自車両の進行路を出来る限り正確に推定することができるようになる。
【0012】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記補正手段は、上記ヨーレートセンサの検出値を平滑化するフィルタ手段で構成されているものとする。
【0013】
また、請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記フィルタ手段は、ローパスフィルタからなっていて、上記車速検出手段により検出された車速に応じて、該ローパスフィルタのカットオフ周波数を変更することで、上記ヨーレートセンサの検出値を補正するように構成されているものとする。
【0014】
これら請求項2及び3の発明により、ヨーレートセンサの検出値を容易に補正することができ、簡単な構成で補正手段を構成することができる。
【0015】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、上記フィルタ手段は、上記車速検出手段により検出された車速が所定車速以上であるときには、該所定車速よりも小さいときに比べて、上記ローパスフィルタのカットオフ周波数を低くするように構成されているものとする。
【0016】
このことにより、所定車速を、山道等を走行する場合の上限速度に設定しておくことで、簡単な構成で、自車両の走行状況に応じて、適切な補正を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の車両の障害物認識装置によると、車速検出手段により検出された車速に応じて、ヨーレートセンサの検出値を補正するようにしたことにより、自車両の走行状況に応じて、上記検出値に対して適切な補正を行うことができ、自車両の進行路を出来る限り正確に推定することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る障害物認識装置を搭載した車両W(自車両に相当)を示し、この車両Wの前端部に、車両Wの前方に存在する障害物を検知する障害物検知手段としてのレーダ装置1が設けられている。このレーダ装置1は、ミリ波レーダ装置であって、ミリ波を前方に向けて略水平方向に所定角度範囲を走査しながら発信する発信部と、そのミリ波が車両Wの前方の障害物に当たって反射してきた反射波を受信する受信部とを有している。そして、レーダ装置1は、その受信部で受信(検知)した障害物の車両Wとの距離及び相対速度を検出して、その検出データを障害物検知情報としてコントロールユニット11に送信するようになっている。
【0020】
上記車両Wには、上記レーダ装置1からの障害物検知情報を受けて車両Wを制御するコントロールユニット11が設けられている。本実施形態では、コントロールユニット11は、障害物が先行車両である場合に、上記障害物検知情報に基づいて、スロットル弁開閉アクチュエータ20やブレーキ作動手段21を作動させることで、車両Wを先行車両に対して追従走行させる追従走行制御を行う(先行車両が存在しないときには、車両Wの乗員が設定した目標車速で走行させる定速走行制御を行う)とともに、あらゆる障害物に対して、上記障害物検知情報を受けて、車両Wの衝突を予知したときには、ブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22を作動させる衝突回避制御を行うようになっている。尚、コントロールユニット11は、車両Wと障害物との相対速度及び車両Wの車速に基づいて、上記検知された障害物が移動物体であるか又は静止物体であるかを判定しかつ移動物体である場合に先行車両であるか否かを判定する。
【0021】
また、上記車両には、図2に示すように、車両Wの車速を検出する車速検出手段としての車速センサ12と、車両Wに生じるヨーレートを検出するヨーレートセンサ13と、車両Wの障害物への衝突を検出するGセンサ14とが設けられており、これら各センサ12〜14からの検出情報が上記コントロールユニット11に入力されるようになっている。
【0022】
上記ブレーキ作動手段21は、車両Wのブレーキを作動させて各車輪31に制動力を付与するものである。さらに、シートベルトプリテンショナ22は、車両Wのシート41に着座している乗員が着用しているシートベルト51を巻き取って該シートベルト51に所定張力を付与することで、該乗員を拘束するものである。
【0023】
ここで、車両Wに搭載されているシートベルト装置について説明する。このシートベルト装置は、図1に示すように、上記シートベルト51を巻き取るリトラクタ部53と、このリトラクタ部53から引き出されたシートベルト51の先端部が取り付けられたラップアンカー部54と、シートベルト51の長さ方向中間部に配設されたタング52が着脱可能に係合するバックル部55とを有する3点式に構成されている。上記バックル部55は、シート41の車幅方向内側で車体に固定されている一方、リトラクタ部53及びラップアンカー部54は、シート41を挟んでバックル部55とは反対側である車幅方向外側で車体に固定されている。上記リトラクタ部53から引き出されたシートベルト51は、シート41の車幅方向外側の上方位置に設けられたスリップガイド57により、その引き出し方向が上向きから下向きに変換されて、その先端部が上記ラップアンカー部54に取り付けられている。上記タング52は、上記スリップガイド57とラップアンカー部54との間でシートベルト51に対して摺動可能に設けられており、このタング52が上記バックル部55に係合されることで、シートベルト51の着用状態となる。
【0024】
上記シートベルト装置のリトラクタ部53内に、上記シートベルトプリテンショナ22が設けられている。本実施形態では、シートベルトプリテンショナ22は、図2に示すように、電動モータ等により上記シートベルト51を巻き取る第1プリテンショナ機構22aと、インフレータで発生するガスにより上記シートベルト51を巻き取る第2プリテンショナ機構22bとからなっており、上記コントロールユニット11が上記レーダ装置1からの障害物検知情報に基づいて、車両Wの障害物への衝突の可能性が高いと予知したときには、第1プリテンショナ機構22aを作動させることで、シートベルト51に所定張力を付与する一方、コントロールユニット11がGセンサ14により車両Wの障害物への衝突を検出したときには、第2プリテンショナ機構22bを作動させることで、上記第1プリテンショナ機構22aを作動させたときよりも大きな張力をシートベルト51に付与するようになっている。
【0025】
上記コントロールユニット11には、予め設定された車間時間(先行車両が停止した場合に該停止から車両Wが現在の速度で先行車両に到達するまでの時間)が記憶されており、上記追従走行制御時には、この車間時間と、先行車両の車速(レーダ装置1により検出される相対速度と、車速センサ12により検出される車両Wの速度とから求める)とに基づいて目標車間距離を設定する。そして、この設定した目標車間距離と現在の車間距離との差と上記相対速度とに基づいて目標加減速度を算出し(例えば、目標車間距離と現在の車間距離との差及び相対速度に応じて目標加減速度が決まるようなマップを予め作成しておき、このマップから目標加減速度を算出する)、この算出した目標加減速度に基づいて制御加速度又は制御減速度を演算し、この制御加速度に基づく加速指令又は制御減速度に基づく減速指令を上記スロットル弁開閉アクチュエータ20やブレーキ作動手段21に出力する。
【0026】
上記コントロールユニット11は、車速センサ12及びヨーレートセンサ13の検出値に基づいて車両Wの旋回半径、つまり車両Wの進行路の曲率半径を推定するように構成されている。このことで、コントロールユニット11は、車両Wの進行路を推定する進行路推定手段を構成する。具体的には、車両Wの旋回半径(進行路の曲率半径)Rは、ヨーレートをφとし、車両Wの速度をVとして、
R=V/φ
より求める。
【0027】
そして、上記コントロールユニット11は、上記追従走行制御の場合には、先行車両が上記推定した進行路上に存在しているか否かを判定し、存在していると判定したときには、先行車両が、車両Wと同じ車線を走行していると判断して、そのまま追従走行制御を続行する一方、先行車両が上記進行路上に存在していないと判定したときには、先行車両又は車両Wが車線変更を行ったと判断して、上記定速走行制御を行うようになっている。また、上記衝突回避制御の場合には、障害物が上記進行路上に存在しかつ車両Wが障害物に衝突するまでの予測時間が、予め決めた基準時間よりも短いときに、車両Wの障害物への衝突の可能性が高いと予知して、シートベルトプリテンショナ22の第1プリテンショナ機構22aを作動させるようになっている。したがって、コントロールユニット11は、レーダ装置1により検知された障害物が、上記推定された進行路上に存在するか否かを判定する判定手段を構成することになる。
【0028】
上記進行路の推定に用いるヨーレートセンサ13の検出値は、ノイズ等の影響を受け易くて大きく変動するため、コントロールユニット11が、ヨーレートセンサ13の検出値を平滑化することで補正するようにしている。具体的には、前回に求まった検出値φにα(α<1)を掛けたものと、今回の検出値φnewに(1−α)を掛けたものとを足し合わせて新たな検出値φ(補正後の検出値)とする。すなわち、ヨーレートセンサ13の検出値に一次遅れフィルタ(ローパスフィルタ)をかける。このことで、コントロールユニット11は、ヨーレートセンサ13の検出値を補正する補正手段、つまりフィルタ手段を構成することになる。そして、この新たな検出値φ(補正後の検出値)が、上記進行路の推定に用いられる。
【0029】
本実施形態では、車速センサ12により検出された車速に応じて、上記ヨーレートセンサ13の検出値を補正する。言い換えると、上記αの値を、上記車速に応じて変更する。つまり、ローパスフィルタのカットオフ周波数を、上記車速に応じて変更する。具体的には、本実施形態では、上記車速が所定車速以上であるときには、該所定車速よりも小さいときに比べて、上記ローパスフィルタのカットオフ周波数を低くする、つまり上記αの値を大きくして、フィルタを強くかける。上記所定車速は、山道等を走行する場合の上限速度(例えば50km/h)に設定しておく。また、αの値は、車速が所定車速以上であるときには、例えば0.7〜0.9(図3のフローチャートのステップS3のα1)に、車速が所定車速よりも小さいときには、例えば0.4〜0.6(図3のフローチャートのステップS4のα2)にそれぞれ設定しておく。
【0030】
次に、上記コントロールユニット11における衝突回避制御の処理動作について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。尚、この処理動作は、所定時間(レーダ装置1におけるミリ波の走査時間に対応する時間)毎に繰り返し行われる。
【0031】
先ず、最初のステップS1で、車速センサ12及びヨーレートセンサ13の各検出値である車速V及びヨーレート(φnew)を入力し、次のステップS2で、上記車速が所定車速以上であるか否かを判定する。
【0032】
上記ステップS2の判定がYESであるときには、ステップS3に進んで、
φ←φ×α1+φnew×(1−α1)
より、ヨーレートセンサ13の検出値を補正し、しかる後にステップS5に進む。
【0033】
一方、上記ステップS2の判定がNOであるときには、ステップS4に進んで、
φ←φ×α2+φnew×(1−α2)
より、ヨーレートセンサ13の検出値を補正し、しかる後にステップS5に進む。尚、α1とα2とは、α1>α2の関係を満たす。
【0034】
上記ステップS5では、上記車速V及びヨーレート(補正後の検出値φ)に基づいて車両Wの進行路の曲率半径Rを、
R=V/φ
により求めて、車両Wの進行路を推定する。
【0035】
次のステップS6では、レーダ装置1より障害物検知情報を入力し、次のステップS7で、検知した障害物への車両Wの衝突可能性を判定する衝突可能性判定処理を行う。つまり、障害物が上記推定した進行路上に存在しかつ車両Wが障害物に衝突するまでの予測時間が、予め決めた基準時間よりも短いか否かを判定し、障害物が上記進行路上に存在しかつ上記予測時間が上記基準時間よりも短いと判定したときには、衝突の可能性が高いと判定する一方、障害物が上記進行路上に存在しないか、存在しても、上記予測時間が上記基準時間よりも短くないと判定したときには、衝突の可能性が低いと判定する。
【0036】
そして、次のステップS8で、上記衝突可能性判定処理において衝突可能性が高いと判定されたか否かを判定し、このステップS8の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、ステップS8の判定がYESであるときには、ステップS9に進んで、ブレーキ作動手段21及びシートベルトプリテンショナ22の第1プリテンショナ機構22aを作動させる。
【0037】
次のステップS10では、Gセンサ14からの情報に基づいて車両Wの障害物への衝突があったか否かを判定し、このステップS10の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、ステップS10の判定がYESであるときには、ステップS11に進んで、シートベルトプリテンショナ22の第2プリテンショナ機構22bを作動させることで、シートベルト51に更に大きな張力を付与し、しかる後にリターンする。
【0038】
次いで、上記コントロールユニット11における追従走行制御の処理動作について、図4のフローチャートを参照しながら説明する。この処理動作も、上記所定時間毎に繰り返し行われる。
【0039】
ステップS21〜S26では、上記ステップS1〜S6とそれぞれ同じ処理を行い、ステップS26の後のステップS27では、先行車両が上記推定した進行路上(つまり車両Wと同じ車線上)に存在するか否かを判定し、このステップS27の判定がYESであるときには、ステップS28に進んで、先行車両の車両Wに対する相対速度と、車速センサ12により検出された車両Wの車速とから、先行車両の車速を演算する。
【0040】
次のステップS29では、予め設定記憶された車間時間と上記先行車両の車速とから目標車間距離を演算し、次のステップS30で、目標車間距離と現在の車間距離との差と、上記相対速度とに基づいて上記マップより目標加減速度を算出する。
【0041】
次のステップS31では、上記ステップS30で算出した目標加減速度に基づいて制御加速度又は制御減速度を演算し、次のステップS32で、この制御加速度に基づく加速指令又は制御減速度に基づく減速指令をスロットル弁アクチュエータ20やブレーキ作動手段21に出力し、しかる後にリターンする。
【0042】
一方、上記ステップS27の判定がNOであるときには、ステップS33に進んで、定速走行制御の処理を行い、しかる後にリターンする。
【0043】
したがって、本実施形態では、車速センサ12により検出された車速に応じて、ヨーレートセンサ13の検出値を、一次遅れフィルタ(ローパスフィルタ)により補正する、具体的には、車速が所定車速以上であるときには、該所定車速よりも小さいときに比べて、ローパスフィルタのカットオフ周波数を低くする(αの値を大きくする)ようにしたので、車速が大きいときには、フィルタを強くかけることで、車両Wの進行路をより正確に推定できるようになる。このようにフィルタを強くかけても、車速が大きいときには、高速道路等を走行しているときであり、大きい曲率半径のカーブのみが存在するだけであるので、応答性が多少低下しても問題はない。一方、車速が小さいときには、フィルタを強くかけすぎないようにヨーレートセンサ13の検出値を補正することで、応答性が低下するのを防止しつつ車両Wの進行路を正確に推定することができ、これにより、小さい曲率半径のカーブが連続的に多数存在する道路等を走行している場合に、応答性の低下により進行路を誤って推定するのを防止することが可能になる。よって、車両Wの走行状況に応じて、車両Wの進行路を出来る限り正確に推定することができ、障害物への車両Wの衝突可能性の判定や、先行車両に対する追従走行制御を正確に行えるようになる。
【0044】
尚、上記実施形態では、車速が所定車速以上であるときには、該所定車速よりも小さいときに比べて、ローパスフィルタのカットオフ周波数を低くするようにしたが、車速が大きいほど、カットオフ周波数を連続的又は多段階的に低くするようにしてもよい。
【0045】
また、ヨーレートセンサ13の検出値の補正方法は、上記実施形態で説明した方法には限られない。例えば、今回に検出された検出値及び過去のN回分(Nは1以上の自然数)の検出値の平均値を新たな検出値(補正後の検出値)としてもよい。この場合、車速が所定車速以上であるときには、該所定車速よりも小さいときに比べて、Nの値を大きくすればよい。
【0046】
さらに、上記実施形態では、レーダ装置1をミリ波レーダ装置としたが、どのような種類のレーダ装置であってもよい。また、レーダ装置1からの障害物検知情報を受けて行う制御は、上記追従走行制御や衝突回避制御に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、自車両前方の障害物を検知するレーダ装置等の障害物検知手段を備えた車両の障害物認識装置に有用であり、特にヨーレートセンサの検出値と車速検出手段により検出された車速とに基づいて、自車両の進行路を推定する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る障害物認識装置を搭載した車両前側の構成図である。
【図2】上記障害物認識装置の構成を示すブロック図である。
【図3】コントロールユニットにおける衝突回避制御の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】コントロールユニットにおける追従走行制御の処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
W 車両(自車両)
1 レーダ装置(障害物検知手段)
11 コントロールユニット(進行路推定手段)(判定手段)
(補正手段)(フィルタ手段)
12 車速センサ(車速検出手段)
13 ヨーレートセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、自車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサと、自車両の車速を検出する車速検出手段と、上記ヨーレートセンサの検出値と上記車速検出手段により検出された車速とに基づいて、自車両の進行路を推定する進行路推定手段と、上記障害物検知手段により検知された障害物が、上記進行路推定手段により推定された進行路上に存在するか否かを判定する判定手段とを備えた車両の障害物認識装置であって、
上記車速検出手段により検出された車速に応じて、上記ヨーレートセンサの検出値を補正する補正手段を備え、
上記進行路推定手段は、上記補正手段による補正後の検出値と上記車速検出手段により検出された車速とに基づいて、自車両の進行路を推定するように構成されていることを特徴とする車両の障害物認識装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の障害物認識装置において、
上記補正手段は、上記ヨーレートセンサの検出値を平滑化するフィルタ手段で構成されていることを特徴とする車両の障害物認識装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両の障害物認識装置において、
上記フィルタ手段は、ローパスフィルタからなっていて、上記車速検出手段により検出された車速に応じて、該ローパスフィルタのカットオフ周波数を変更することで、上記ヨーレートセンサの検出値を補正するように構成されていることを特徴とする車両の障害物認識装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両の障害物認識装置において、
上記フィルタ手段は、上記車速検出手段により検出された車速が所定車速以上であるときには、該所定車速よりも小さいときに比べて、上記ローパスフィルタのカットオフ周波数を低くするように構成されていることを特徴とする車両の障害物認識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−168759(P2008−168759A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−3137(P2007−3137)
【出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】