説明

車両タイヤのトレッド深さを測定する方法及びその装置

タイヤを、測定ステーション上を回転通過させるか或いは測定ステーション上に置く;該タイヤのトレッドを、少なくとも1つの測定ライン上で、タイヤ回転方向に対して横断する方向で光学的に感知する;この際に、光源から広がる扇状光線が前記タイヤ表面で反射され、反射した扇状光線の信号がセンサにより記録される、そして、前記反射した扇状光線の前記信号を三角測量法により評価する、タイヤが車両に装着された状態で車両タイヤのトレッド深さを決定する方法において、前記信号が前記タイヤ表面に対して非直交的に記録される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤが車両に装着された状態で車両タイヤのトレッド深さを決定する方法に関するもので、タイヤは測定ステーション上を回転通過させられるか測定ステーション上に置かれ;少なくとも1本の測定線上でタイヤ回転直角方向に該タイヤトレッドが光学的に検知され;光源から広がる扇状光線(ray fan)がタイヤ面で反射され、この反射された扇状光線の信号がセンサにより記録され;この信号が評価される方法に関する。
さらに本発明は車両タイヤのトレッド深さを決定する装置に関するもので、該装置は、光源とイメージ解析センサを有する測定ステーションを備えるとともに、タイヤ表面で反射した扇状光線の信号を評価するユニットとを備えたものである。
【0002】
上述した方法により、車両が静止したセンサステーションの上を走行する間に、タイヤトレッド深さを測定することが可能になる。これによりタイヤの全断面プロフィールが検出されるが、それはタイヤ外周のほんの一部分である。
【背景技術】
【0003】
車両がセンサステーションを通過する間にトレッド深さを測定する現在の通常の方法は、タイヤ接地面(foot print)がセンサ上で水平に位置した正にその時にトレッド深さを測定する方法に基づいている。この方法が有利な点は、タイヤトレッドは短い時間間隔の間に接地表面上に静的に留まるので、タイヤトレッドは接触法を用いて決定することが可能であるか、または超音波やレーダ反射その他光学的方法、例えばレーザによる三角測量法や光切断法(light section process)を使った非接触法を用いて抽出することが可能なことである。
【0004】
光切断測定技術は、物体の3次元検出が早い点で特に有利である。これにより、特定の光学拡大素子を用いたレーザ光が、タイヤ表面に光線を投射する。光切断測定技術により動作するシステムは、完成品の検査工程に至るまでの全てのタイヤ製造工程で利用されている。しかしながら本発明は、このようなタイヤの製造過程の検査を意図するものではない。さらに本発明は、車両に装着されたタイヤ検査を、例えば交通の流れ自体に影響を与えることなく、通行状態において実施することを探求するものである。
【0005】
DE43 16 984 A1(特許文献1)には、車両に装着された車両タイヤのトレッド深さを自動的に測定する方法と装置が記載されている。測定ステーションの通過部分に一部透明な測定板が配置されており、その下に測定ヘッドが置かれている。この測定ヘッドは少なくともレーザセンサと三角測量法ユニットとしての光学解析センサを備えている。車両タイヤのトレッド深さを測定するために、タイヤが測定板上を回転通過するか、或いはタイヤが測定板上に置かれる。そのときレーザがタイヤのトレッド表面に光のスポットを作り出し、この光スポットの位置はセンサにより監視される。センサの出力信号はタイヤトレッドの外形を決定する評価ユニットに送られる。測定ヘッドは搬送機(carriage)に配置され、タイヤ回転方向を横断するように移動することができる。測定結果が不良とならないように、レーザービームは、タイヤ接地面の外側のタイヤトレッドに入射するように方向付けられている。接地面内側には、タイヤ荷重とタイヤ空気圧によりかなりの加重がタイヤにかかっているため、タイヤプロフィールの山部はタイヤの半径方向に圧縮されている。このため関連するプロフィールの輪郭はまったく認識できない可能性があり、トレッド深さは過小に評価される。測定結果は比較基準となる手動測定とは、もはや全く対応しなくなる。この影響は、少なくとも、ゴムの材料特性、タイヤトレッド、トレッド深さ、タイヤ空気圧、及びタイヤ加重に依存するため、測定したり補正することはできない。一方接地面外側には加重が加わらないので、実際に測定を行うことができる。
【0006】
しかしながら点測定をDE 43 16 984 A1(特許文献1)に従って行うと、タイヤの輪郭外側とは関連性が無いという不利があった。もしセンサがトレッド溝の内側を測定すると、基準表面の高さについての情報が無いので正確な結果を得ることができない。これは代わりに、タイヤに接触する事によってのみ避けることが出来るが、先に述べた欠点があった。
【0007】
さらにこの方法では、タイヤドレッド上のタイヤ回転方向を横断する方向の線に沿ってのみの測定が行なわれる。このため、たった一度の機会によって、この位置のタイヤトレッド深さがタイヤ全体のトレッド深さを代表しているかどうかを決めることになる。また現在トレッド表面のどの部分が測定ヘッド上に載っているかはまったく無作為であるため、タイヤトレッド表面の特定位置を選定して測定を行うことは不可能である。DE43 16 984 A1(特許文献1)では、移動方向にいくつかの測定ユニットを連続配置して、この問題に対処しようとしている。
【0008】
WO 98/34090(特許文献2)では直線状のレーザ光線を車両タイヤのプロフィール表面に当てて上記に述べた問題の一部を解決している。タイヤトレッド表面からの反射光は画像解析センサにより検出され、その信号はトレッド深さに応じた出力信号を生成するために処理される。この方法によって、車両タイヤは測定中少なくとも一つの回転可能なローラに係合して回転するので、タイヤトレッドの複数の位置で測定を行うことができる。さらにタイヤを回転させることにより力が有効に働き、汚れやゆるい小石はトレッド表面から取り除かれる。この方法は、例えばブレーキテストの最中に、車庫の中で行われるべき方法である。そのため気象条件にもよるが、例えば濡れたタイヤからの反射は大きな測定誤りを起こすので、測定に影響を与える永久的な汚れや湿気が支配する交通現場では、このシステムは必ずしも使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE43 16 984 A1
【特許文献2】WO 98/34090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明の目的は、汚れた周囲環境や湿気によって測定結果の品質が実質的に損なわれない、車両タイヤのトレッド深さを決定するための方法と装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は請求項1による方法及び請求項8による装置により解決され、好ましい実施態様は各々引用された従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施態様に基づいた車両タイヤのトレッド深さを測定する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によると、信号はタイヤ表面に対して非直交的に(non-orthogonal manner)記録される。すなわち光源とセンサはいずれも測定中に直接反射を受ける角度には位置しない。このために濡れたタイヤの反射により測定誤差や測定不良を起こすことは無い。しかしながら、正確な測定結果を達成するためには、測定ステーションでのタイヤの表面角度は決定されあるいは判明されている必要があり、またタイヤの表面角度が計算に必要される。これは垂直方向にずれた2つの位置での同時検出、及び/あるいはタイヤまで異なる距離での数回の測定により達成することができる。これに代るものとしては、タイヤの直径が判ると、所要の情報を与える可能性がある。
【0014】
好ましくは、これら複数の扇状光線はタイヤ上で重なって連続した水平ラインを形成するように配置されるが、同一の高さで一つの連続したライン構成が得られるか、あるいは異なる高さの位置で複数のラインが得られる。
【0015】
このようにして測定影響は、光源の角度、及びセンサの視角により補正が行われる。
【0016】
測定は、測定記録の過程で、タイヤの複数の場所において行うことが好ましく、即ち、タイヤ上のそれぞれに異なった位置で、複数の光線により同時に、或いはいくつかの連続した記録により行う。これにより磨耗マーク上の測定が認識され考慮されることがある。タイヤ外周に沿ったいくつかのトレッド深さを比較することにより、タイヤの経線方向の(longitudinal)磨耗の兆候を認識することが可能である。
【0017】
以上に述べたトレッド深さ測定技術は、点測定としてのあるいは光切断法におけるレーザ三角測量である。高強度のレーザ照射の危険性は別として、スペックルノイズ、汚れに対する高感受性、そして高価格であるための欠点が現れる。しかしながらレーザは遠距離において画像が明瞭であるという大きな長所があり、光学的三角測量法機構を簡略でかつ非常に高精度な態様で構成することができる。
【0018】
タイヤトレッド深さの測定は、無光沢の黒い表面を有する標的で計測されるが、それは強いレーザパワーを必要とするので、目標物は強い危険にさらされる。さらに複雑な操作手順を踏まないと、拡散的な反射を起こす表面で局所的な干渉が発生し、これによって測定精度がかなり損なわれる。
【0019】
これらの問題は、本発明によれば、少なくとも1つの発光ダイオードで照射することにより対処される。
【0020】
垂直方向の三角測量アセンブリーの場合には、1つ又はいくつかの明瞭に画像化された水平ラインがタイヤ上に光の線あるいは光バーとして投影されることが必要である。一本の光の線または一本の光バーの縁部が別の垂直方向角度から、例えばカメラで、観測される場合には、タイヤの深さの変動が、レーザ光切断法の場合と同様に可視化できる。幅がより広い光バーの場合は、上部縁部あるいは下部縁部は別個に評価され得るので、各々独立した測定結果が得られる。このようにして例えばタイヤの表面角度が決定される。
【0021】
タイヤに投影される光の線からなる光バーは、例えば発光ダイオードのような点光源を線形のシャドーイングで得ることが可能である。シャドーイングは光源の焦点調整によりかなり改善可能である。そして光はスリットによりシャドーされ、タイヤ面上で明るく明瞭に束縛された光バーを形成する。
【0022】
発光ダイオードの多くは単色光を作り出す利点がある。そのため外部からの光は狭帯域カラーフィルタによって効果的に最小限に抑制される可能性がある。
【0023】
以下に本発明を、図面を参照して説明する。この図面は本発明の一実施態様に基づいた車両タイヤのトレッド深さを測定する装置の概略図である。
【0024】
車両に装着されたタイヤ1は接地面の前方あるいは後方で測定される。そこでは、タイヤ1の移動方向を横切るように照射する光源3として、レーザ或いはシャドーされた発光ダイオードにより扇状光線が作られる。測定はタイヤ1の表面2に対して非直交的に行われるので、光源3もセンサ4のいずれも直接反射の角度方向に位置しない。センサ4はこの場合2次元画像解析カメラである。
【0025】
この計測方法では、構成を非常に平坦にすることができ、そのため、その上を回転通過されるモジュール、または、地面中に単純に沈みこむモジュールが可能となる。
【0026】
評価は、測定したタイヤトレッドの包絡面(envelope)を生成することにより、そしてトレッド溝のもっとも深い箇所を探すことにより行われる。タイヤの縁部が決定され、主要なトレッド溝、断面プロフィールで、も同様に決定されると、これにより評価するべき範囲まで、たとえば、道路交通における車両利用認可規制(Regulations Authorizing the Use of the Vehicles for Road Traffic StVZo)に従って、タイヤ幅の75%まで狭めることが可能になる。またタイヤ面と測定システムの間の角度が補償される。最終的に、臨界プロフィール深さが包絡面とトレッド溝の最も深い部分の差を用いて計算される。
【0027】
本発明により、光源角度による測定影響の補償と、センサの方向づけの間に起こる測定影響の補償が正しく行われる。こうしてタイヤ位置、タイヤ幅及び関連トレッド範囲(tread area)がタイヤの両側面を手がかりに決定される。
【0028】
上記の説明、特許請求の範囲及び/または添付した図面において開示した特徴は、それ単独でも或いはいかなる組み合わせにおいても、本発明を多様な形態を実現するために重要である。
【符号の説明】
【0029】
1.タイヤ
2.タイヤの表面
3.光源
4.センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが車両に装着された状態で、車両タイヤのトレッド深さを決定する方法にして、
− 該タイヤを、測定ステーション上を回転通過させるか或いは測定ステーション上に置く;
− 該タイヤのトレッドを、少なくとも1つの測定ライン上で、タイヤ回転方向に対して横断する方向で光学的に感知する;この際に、光源から広がる扇状光線が前記タイヤ表面で反射され、反射した扇状光線の信号がセンサにより記録される、そして、
− 前記反射した扇状光線の前記信号を三角測量法により評価する、
方法において、
前記信号が前記タイヤ表面に対して非直交的に記録されることを特徴とする、
車両タイヤのトレッド深さを決定する方法。
【請求項2】
前記タイヤの表面角度が、前記タイヤの表面の法線方向と、前記光源に向かう方向または前記センサに向かう方向とのなす角度として決定されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タイヤの前記表面角度を、
− 前記タイヤ表面上の垂直方向にずれた2つの位置で検出することにより、或いは
− 前記タイヤに対して異なる距離で、前記タイヤ表面上の測定を複数回実行することにより、或いは
− 前記タイヤの直径を計算に利用することにより、
決定することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定を、前記測定ステーション上においてタイヤ接地面の外側で実施することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記扇状光線は、光切断法により、特にレーザを利用して、作られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記扇状光線は、少なくとも1つの点光源を線状形状にシャドーイングすることにより作られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記線状形状へのシャドーイングの両側縁部の信号を評価して、前記タイヤの前記表面角度を決定することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
タイヤが車両に装着された状態で、車両タイヤのトレッド深さを決定する装置にして、
− 光源とセンサとを含み、前記光源は前記タイヤの前記回転方向に対して横断方向である少なくとも1本の測定ラインに沿って広がる扇状光線を作り出し、前記センサは前記タイヤ表面から反射した前記扇状光線の信号を記録する、測定ステーションと、
− 三角測量法を行う、前記タイヤ表面からの反射扇状光線の信号を評価するためのユニットと、
を具備する上記装置において、
前記センサは前記タイヤ表面に対して非直交的に記録を行うことを特徴とする、装置。
【請求項9】
前記光源がレーザ或いは少なくとも1つの発光ダイオードであることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記センサは2次元解析カメラであることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記光源は発光ダイオードであり、周囲光はスペクトルフィルタにより取り除かれることを特徴とする請求項7に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−523547(P2012−523547A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503855(P2012−503855)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000258
【国際公開番号】WO2010/115390
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(509072434)ヴェンテヒ・ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】