説明

車両内装材

【課題】熱接着性複合短繊維と主体繊維とを含む車両内装材であって、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有する車両内装材を提供する。
【解決手段】熱接着性成分と繊維形成性成分とで構成される熱接着性複合短繊維と、主体繊維とを含む車両内装材であって、前記熱接着性複合短繊維が、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を有するビニルモノマーがグラフト共重合された変成ポリオレフィン、または、該変成ポリオレフィンと他のポリマーとの混合ポリマーを熱接着性成分とし、該熱接着性成分より融点の高いポリマーを繊維形成性成分とし、少なくとも前記熱接着性成分が表面に露出するように両成分が複合化された熱接着性複合短繊維であることを特徴とする車両内装材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着性複合短繊維と主体繊維とを含む車両内装材であって、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有する車両内装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高級化、高性能化にともない、自動車内で用いられる車両内装材も高性能化が求められており、種々の車両内装材が提案されている。例えば、特許文献1や特許文献2では、易リサイクル素材であるポリエステル繊維を使用し、かつ細繊度にすることによりリサイクル性と吸音性とを兼ね備えた車両内装材が提案されている。
【0003】
しかしながら、これらの車両内装材では、低融点のポリエステル系熱接着性複合短繊維を用いているため、成型の際に収縮するという問題や、高温下で実際に使用した際に剛性が十分でないという問題があった。
なお、特許文献3において、変性ポリオレフィン系熱接着性複合短繊維が、エアレイド不織布のパルプ接着用として提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−3599号公報
【特許文献2】特開平10−147191号公報
【特許文献3】特開2004−270041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、熱接着性複合短繊維と主体繊維とを含む車両内装材であって、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有する車両内装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を達成するため鋭意検討した結果、熱接着性複合短繊維と主体繊維とを含む車両内装材において、熱接着性複合短繊維の熱接着性成分として特定のポリマーを採用することにより、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有する車両内装材が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明によれば「熱接着性成分と繊維形成性成分とで構成される熱接着性複合短繊維と、主体繊維とを含む車両内装材であって、前記熱接着性複合短繊維が、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を有するビニルモノマーがグラフト共重合された変成ポリオレフィン、または、該変成ポリオレフィンと他のポリマーとの混合ポリマーを熱接着性成分とし、該熱接着性成分より融点の高いポリマーを繊維形成性成分とし、少なくとも前記熱接着性成分が表面に露出するように両成分が複合化された熱接着性複合短繊維であることを特徴とする車両内装材。」が提供される。
【0008】
その際、前記の不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を有するビニルモノマーが、無水マレイン酸であることが好ましい。また、前記の繊維形成性成分がポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。また、前記の熱接着性複合短繊維が、熱接着性成分を鞘、繊維形成性成分を芯とする芯鞘型複合繊維であることが好ましい。かかる熱接着性複合短繊維において、熱接着性成分の複合短繊維に占める割合が30〜70重量%の範囲内であることが好ましい。また、前記の熱接着性複合短繊維の繊維長が30〜150mmの範囲内であることが好ましい。
【0009】
本発明の車両内装材において、前記の主体繊維がポリエステル系繊維からなることが好ましい。また、前記熱接着性複合短繊維と主体繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿され、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱接着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記主体繊維とが交差した状態で熱接着された固着点が散在していることが好ましい。
【0010】
本発明の車両内装材において、その見かけ密度が0.02〜0.40g/cmの範囲内であることが好ましい。また、その厚さが1〜70mmの範囲内であることが好ましい。また、車両内装材が、フロアインシュレータ、ドアトリム、ヘッドライニング、トランクリム、ダッシュインシュレータ、および表皮シート材からなる群より選択されるいずれかに用いられる車両内装材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱接着性複合短繊維と主体繊維とを含む車両内装材であって、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有する車両内装材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、熱接着性複合短繊維は熱接着性成分と繊維形成性成分とで構成され、前記熱接着性成分は、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を有するビニルモノマーがグラフト共重合された変成ポリオレフィン、または、該変成ポリオレフィンと他のポリマーとの混合ポリマーからなる。
【0013】
前記の不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を有するビニルモノマーの具体例としては、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸などをあげることができる。なかでも無水マレイン酸が特に好ましい。これらのビニルモノマーをポリオレフィンに共重合させることにより、高温での高い剛性が得られ、また同時に、主体繊維としてポリエステル繊維を採用した場合、ポリエステル繊維との接着性が良好となる。
【0014】
前記ビニルモノマーを共重合する、変性ポリオレフィンの幹ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などがあげられる。ポリエチレンは高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンを用いることができる。また、これらのポリマーは、ホモポリマーあるいは他のオレフィンとの共重合であってもよい。これらのポリマーの中では、融点の範囲、グラフト反応の容易性を考慮するとポリエチレンが好ましい。
【0015】
前述のビニルモノマーを、前記幹ポリマーにグラフト共重合するのは通常の方法で行うことができ、ラジカル開始剤を用いて、ポリオレフィンに前記のビニルモノマーを混合してランダム共重合体からなる側鎖を導入するか、あるいは異種モノマーを順次重合することによるブロック共重合体からなる側鎖を導入することができる。
【0016】
また、幹ポリマーには、前記のビニルモノマー以外に、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル類、あるいは同様なアクリル酸エステルなどのビニルモノマーが共重合されていてもよい。
【0017】
熱接着性成分を形成するポリマーとしては、前記変性ポリオレフィン単独であっても、該変性ポリオレフィンと他のポリマーとの混合ポリマーであってもよい。ここで、他のポリマーとしてはポリオレフィンが好ましく、変性ポリオレフィンの幹ポリマーと同種のポリオレフィンがより好ましい。すなわち、幹ポリマーがポリエチレンである場合は、他のポリマーもポリエチレンであることが好ましい。この場合、ポリエステル繊維対比比重が低いため、主体繊維としてポリエステル繊維を採用した場合、熱接着性複合短繊維の使用比率をアップすると、得られた車両内装材が軽量となり好ましい。
【0018】
前記熱接着性成分のメルトインデックス(MI)は15〜200g/10分(より好ましくは15〜150g/10分)であることが好ましい。該MIが15g/10分未満であると、溶融して主体繊維の表面を十分濡らすだけの熱流動性に欠け、主体繊維との熱接着性が不十分となるおそれがある。逆に、該MIが200g/10分を越えると、溶融粘度が低すぎるため、熱接着性成分と繊維形成性成分との比率を所定の範囲内として紡糸するのが難しくなり、断糸が多くなるおそれがある。
【0019】
一方、前記繊維形成性成分を形成するポリマーとしては、熱接着性成分よりも融点の高いポリマーであることが肝要である。具体的には、前記変性ポリオレフィンの幹ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)またはこれらの共重合体などがあげられる。なかでも、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが耐熱性も高く好ましい。なお、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。
【0020】
前記の熱接着性成分または繊維形成性成分に使用されるポリマーには、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0021】
前記の熱接着性複合短繊維において、少なくとも前記熱接着性成分が表面に露出するように両成分が複合化されている必要がある。その際、熱接着性成分が、少なくとも1/2の表面積を占めるものが好ましい。重量割合は、熱接着性成分と繊維形成性成分が複合重量比率で30/70〜70/30(より好ましくは35/65〜65/35)の範囲にあるのが適当である。熱接着性成分の重量比率が30重量%未満では、主体繊維を十分濡らすだけのポリマー量がないため、主体繊維との熱接着性が十分でなく、熱接着後も剛性が十分に向上しないおそれがある。逆に、熱接着性成分の重量比率が70重量%を超えると、複合繊維の安定した溶融紡糸が困難となるおそれがある。
【0022】
前記の熱接着性複合短繊維の形態としては、特に限定されないが、熱接着性成分と繊維形成性成分とが、サイドバイサイド、芯鞘型であるのが好ましく、より好ましくは芯鞘型である。この芯鞘型の熱接着性複合短繊維では、繊維形成性成分が芯部となり、熱接着性成分が鞘部となるが、この芯部は同心円状、若しくは、偏心状にあってもよい。前記熱接着性複合短繊維においては、熱接着性成分の繊維表面に占める割合が小さくても良好な接着力を示すが、芯鞘型であると主体繊維を均一に濡らすことができる。
【0023】
かかる熱接着性複合短繊維において、単繊維径としては10〜55μmの範囲内であることが好ましい。単繊維繊度としては、1〜20dtex(より好ましくは2〜10dtex)の範囲内であることが好ましい。単繊維横断面形状は、通常の丸断面でもよいし、丸断面以外の異型断面であってもよい。
【0024】
かかる熱接着性複合短繊維は、繊維長が30〜150mm(より好ましくは35〜80mm)に裁断されていることが好ましい。該繊維長が30mmよりも小さいと、繊維を強固に接着させるためのネットワークが形成しにくくなり、また、カード等での生産性が低下するおそれがある。逆に、該繊維長が150mmを越えると、ネップ等が発生し製品の外観が不良となり、また、生産性も低下するおそれがある。
【0025】
さらには、該熱接着性複合短繊維に捲縮が付与されていることが好ましく、この場合の捲縮付与方法としては、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。
【0026】
本発明において、主体繊維としては、耐熱性に優れ、成型時のヘタリ防止および嵩高性による軽量化が可能な、前記のようなポリエステル系繊維が好ましい。なかでも、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが耐熱性も高く好ましい。なお、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。
【0027】
前記の主体繊維を形成するポリマーには、本発明の効果を妨げない範囲で、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0028】
かかる主体繊維において、単繊維径としては5〜100μmの範囲内であることが好ましい。繊度としては、0.5〜100dex(より好ましくは、0.5〜40dtex)の範囲が好ましい。単繊維横断面形状は、通常の丸断面でもよいし、丸断面以外の異型断面であってもよい。異型断面とすることにより音のエネルギーを積極的に吸収することができ好ましい。ここでいう異型断面とは、繊維断面積の等価な円形の外周に比べて、繊維の外周が長いような断面形状の繊維を示し、扁平、三角等の凸多角形やY型、十字型、星型等の凹多角形の断面、さらには、繊維を分割して得られる極細繊維等も含まれる。吸音性、剛性を考慮して、細繊度繊維の混綿も含め、この範囲で単独または複数の主体繊維を使用することで成形性、剛性、吸音性に優れる車両内装材とすることができる。
【0029】
前記の主体繊維は、繊維長が30〜150mm(より好ましくは30〜100mm)に裁断されていることが好ましい。さらには、該主体繊維に捲縮が付与されていることが好ましく、この場合の捲縮付与方法としては、熱収縮率の異なるポリマーをサイドバイサイド型に張り合わせた複合繊維を用いてスパイラル状捲縮を付与、異方冷却によりスパイラル状捲縮を付与、捲縮数が3〜40個/2.54cm(好ましくは7〜15個/2.54cm)となるように通常の押し込みクリンパー方式による機械捲縮を付与など、種々の方法を用いればよいが、嵩高性、製造コスト等の面から機械捲縮を付与するのが最適である。
【0030】
本発明において、前記熱接着性複合短繊維と主体繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿され、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱接着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記主体繊維とが交差した状態で熱接着された固着点が散在していることが好ましい。かかる構成を有することにより、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有し、しかも吸音性にも優れる。前記熱接着性複合短繊維の重量比率が10重量%未満の場合は、固着点が少なくなり必要な剛性が得られないおそれがある。逆に、該熱接着性複合短繊維の重量比率が90重量%を越える場合は、形状がうまく形成できなかったり、内装材としての厚みの維持が難しくなるおそれがある。
【0031】
本発明の車両内装材は例えば下記の製造方法で製造することができる。まず、熱接着性複合繊維および主体繊維を混綿しカードなどで開繊しウエッブ化した後、ウエッブやそれらウエッブを積層し、そのまま熱処理してもよいし、所定形状を持つモールドに所定量のウエッブを詰め込んで圧縮・加熱成型することにより製造することができる。また、パンチングプレートで構成される平板やキャタピラー式の上下パンチングプレートによるコンベアーに積層ウエッブ等を挟み込み、加熱処理を行い、更に加熱中や加熱直後の冷却まえに縦・横に圧縮して製造する方法もある。また、熱処理前にニードルパンチ処理を行い剛性をアップさせることも有効である。さらには、ローラーカードにより均一なウエッブとして紡出した後、ウエッブをアコーデイオン状に折りたたみながら加熱処理し、熱接着による固着点を形成する方法などもあり、例えば特表2002−516932号公報に示された装置(市販のものでは、例えばStruto社製Struto設備など)などを使用することで作製できる。
【0032】
次いで、所定の車両内装材の形状をした金型等に熱処理しないシートまたは熱処理したシートを必要に応じて予備熱処理し、常温または加熱した金型を用いて成型を行い車両内装材を作製する。この場合、繊維配合を変更したシート状物を事前に貼り合せたものや、単に重ね合わせたもの、他のフィルム等を重ね合わせたものを成型用基材としてもよい。
【0033】
また、通常の染色加工、起毛加工、プリント加工、エッチング加工、アルカリ減量加工を施してもよい。さらには、撥水加工、防炎加工、難燃加工、マイナスイオン発生加工など公知の機能加工が付加されていてもさしつかえない。
【0034】
かくして得られた車両内装材において、その見かけ密度が0.02〜0.40g/cm(より好ましくは0.03〜0.20g/cm)の範囲内であることが好ましい。該見かけ密度が0.02g/cmよりも小さいと、適正な剛性が得られないおそれがある。逆に、該見かけ密度が0.40g/cmを越える場合は、内装材がプラスチックのボード状となり吸音材としての性能が劣るおそれがある。また、その厚さが1〜70mmの範囲内であることが好ましい。該厚さの範囲は、車両内装材として使用可能な範囲である。
【0035】
本発明の車両内装材は、成型工程での収縮や厚み変化が小さく、また、製品として高温で高い剛性を有する。さらには、軽量であり、工程中に溶剤系接着剤を使用する必要もなく、主体繊維としてポリエステル系繊維を採用する場合には、リサイクル性にも優れるので、フロアインシュレータ、ドアトリム、ヘッドライニング、トランクリム、ダッシュインシュレータ、表皮シート材などの車両内装材として好適である。
【実施例】
【0036】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
(1)繊度
JIS L 1015 7.5.1 A法に記載の方法により測定した。
(2)繊維長
JIS L 1015 7.4.1 C法に記載の方法により測定した。
(3)捲縮数
JIS L 1015 7.12に記載の方法により測定した。
(4)固有粘度([η])
オルトクロロフェノールを溶媒として、温度35℃で測定した。
(5)メルトインデックス(MI)
JIS K 7210 条件4に記載の方法により測定した。
(6)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
(7)収縮率
成型性を評価するため、ウエッブから約300mm角のサンプルを切り取り、20℃、65%RHの雰囲気中に48時間放置し、サンプルの片面に約200mm間隔の目印をつけ、目印間の初期寸法を測定しておく。その後、160℃の熱風乾燥機の中にサンプルを入れ、5分間経過後取出し、直後の寸法を測定し、下記式により寸法変化率を算出した。なお、縦横方向を各3点測定し、すべての値の平均値を算出した。
寸法変化率(%)=(初期寸法(mm)−加熱直後の寸法(mm))/(初期寸法(mm))×100
(8)目付け
JIS L1906 4.2により目付け(g/m)を測定した。
(9)厚み
断面をマイクロスコープ(顕微鏡)を用い、厚み(mm)を測定した。
(10)見かけ密度
目付けの単位を(g/cm)に、厚みの単位を(cm)に換算した後、下記式により見かけ密度(g/cm)を算出した。
見かけ密度(g/cm)=目付け(g/cm)/厚み(cm)
(11)試験片先端の撓み量
高温での剛性を評価するため、プレス加工した平板型サンプルを50mm×250mmのサイズに切り取って試験片とし、表面側を下にして、つかみしろ50mm、スパン長200mmにてセットし(片側固定支持としてセット)、80℃の環境下において4時間放置し、試験片先端の初期値の撓み量(cm)と放置後の撓み量(cm)を測定した。なお、縦横方向を各3点測定し、すべての値の平均値を算出した。
【0037】
[実施例1]
MIが40g/10分、Tmが131℃の高密度ポリエチレン(HDPE)のチップと、MIが80g/10分、Tmが98℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を幹ポリマーとし、無水マレイン酸が0.20モル/kg、アクリル酸メチルが0.8モル/kg共重合された変成ポリエチレン(MPE−1)のチップを87:13の割合で混合し、これを二軸エクストルーダーで溶融し、250℃の溶融混合ポリマーとした。この溶融混合ポリマー(熱接着性成分)の無水マレイン酸含有率は0.026モル/kg、MIは43g/10分であった。
また、120℃で16時間真空乾燥した固有粘度[η]が0.61のポリエチレンテレフタレートのペレットをエクストルーダーで溶融し、280℃の溶融ポリマー(繊維形成性成分)とした。
【0038】
両溶融ポリマーを、前者を鞘成分A、後者を芯成分Bとし、かつ重量比がA:B=65:35となるように、直径0.3mmの丸穴キャピラリーを900孔有する公知の芯鞘型複合紡糸口金から、複合化して溶融吐出させた。この際、口金温度は285℃、吐出量は615g/分であった。さらに、吐出ポリマーを30℃の冷却風で空冷し1150m/分で巻き取り、未延伸糸を得た。この未延伸糸を72℃の温水中で3倍に延伸した後、油剤を0.2重量%付与した後、押込み型クリンパーで捲縮数9.9山/2.54cmのジグザグ型捲縮を付与し、110℃で乾燥した後、51mmの繊維長にカットした。得られた熱接着性複合短繊維の繊度は2.3デシテックスであった。
一方、主体繊維として、帝人ファイバー(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(単繊維繊度6.6dte、繊維長64mm、捲縮数9ケ/2.54cm、単繊維断面形状:丸断面)を用意した。
【0039】
次いで、混率20:80(熱接着性複合短繊維:主体繊維)にて混綿し、カードおよびクロスレイヤーによりウエッブを作製し、その後、160℃で5分間熱処理し、見かけ密度約0.03g/cmのシートを得た。該シートを平板型の金型に入れ、170℃で2分間熱処理して、平板型の車両内装材を得た。得られた車両内装材において、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱接着された固着点および熱接着性複合短繊維と前記主体繊維とが交差した状態で熱接着された固着点が散在していた。得られた車両内装材の評価結果を表1に示す。
また、前記のシートを用いて、ヘッドライニングの金型に入れ、同様にしてヘッドライニングを得たところ、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有するものであった。
【0040】
[実施例2]
実施例1において、混率50:50(熱接着性複合短繊維:主体繊維)にて混綿すること以外は実施例1と同様にした。得られた車両内装材の評価結果を表1に示す。
【0041】
[実施例3]
実施例1において、車両内装材の見かけ密度を0.080g/cmに変更すること以外は実施例1と同様にした。得られた車両内装材の評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
実施例1において、熱接着性複合短繊維の熱接着性成分として、融点110℃のランダム共重合ポリエステルを使用すること以外は実施例1と同様にした。得られた車両内装材の評価結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
実施例1において、熱接着性複合短繊維の熱接着性成分として、無水マレイン酸およびアクリル酸メチルが共重合しないポリエチレンポリマーを使用すること以外は実施例1と同様にした。得られた車両内装材の評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、熱接着性複合短繊維と主体繊維とを含む車両内装材であって、成型性に優れ、かつ高温で高い剛性を有する車両内装材が得られ、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱接着性成分と繊維形成性成分とで構成される熱接着性複合短繊維と、主体繊維とを含む車両内装材であって、
前記熱接着性複合短繊維が、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を有するビニルモノマーがグラフト共重合された変成ポリオレフィン、または、該変成ポリオレフィンと他のポリマーとの混合ポリマーを熱接着性成分とし、該熱接着性成分より融点の高いポリマーを繊維形成性成分とし、少なくとも前記熱接着性成分が表面に露出するように両成分が複合化された熱接着性複合短繊維であることを特徴とする車両内装材。
【請求項2】
前記の不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を有するビニルモノマーが、無水マレイン酸である、請求項1に記載の車両内装材。
【請求項3】
前記の繊維形成性成分がポリエチレンテレフタレートである、請求項1または請求項2に記載の車両内装材。
【請求項4】
前記の熱接着性複合短繊維が、熱接着性成分を鞘、繊維形成性成分を芯とする芯鞘型複合繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の車両内装材。
【請求項5】
前記の熱接着性複合短繊維において、熱接着性成分の複合短繊維に占める割合が30〜70重量%の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の車両内装材。
【請求項6】
前記の熱接着性複合短繊維の繊維長が30〜150mmの範囲内である、請求項1〜5のいずれかに記載の車両内装材。
【請求項7】
前記の主体繊維がポリエステル系繊維からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の車両内装材。
【請求項8】
前記熱接着性複合短繊維と主体繊維とが重量比率で90/10〜10/90となるように混綿され、前記熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱接着された固着点および/または前記熱接着性複合短繊維と前記主体繊維とが交差した状態で熱接着された固着点が散在している、請求項1〜7のいずれかに記載の車両内装材。
【請求項9】
その見かけ密度が0.02〜0.40g/cmの範囲内である、請求項1〜8のいずれかに記載の車両内装材。
【請求項10】
その厚さが1〜70mmの範囲内である、請求項1〜9のいずれかに記載の車両内装材。
【請求項11】
車両内装材が、フロアインシュレータ、ドアトリム、ヘッドライニング、トランクリム、ダッシュインシュレータ、および表皮シート材からなる群より選択されるいずれかに用いられる車両内装材である、請求項1〜10のいずれかに記載の車両内装材。

【公開番号】特開2008−207777(P2008−207777A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49135(P2007−49135)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】