説明

車両制御装置

【課題】回生効率を向上できる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】車両の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して出力する圧力回生装置と、車両の運動エネルギーを電力に変換して出力する電力回生装置とを備え、車両における回生要求量が大きい場合(S4−Y)は、回生要求量が小さい場合(S4−N)よりも圧力回生装置および電力回生装置のうち圧力回生装置によって車両の運動エネルギーを回生する割合を高める(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の回生装置を備える車両が提案されている。特許文献1には、駆動軸の回転によりコンプレッサを駆動して、燃料ガスをバッファタンクに蓄圧する蓄圧回生制御手段と、駆動軸の回転により回転電機を駆動して、発電された電気エネルギを蓄電装置に蓄電する蓄電回生制御手段とを備える燃料電池車両の制御装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の回生装置を備える場合の回生効率を向上できることが望まれている。例えば、車両の運動エネルギーを圧力に変換して出力する圧力回生装置と、車両の運動エネルギーを電力に変換して出力する電力回生装置とを備える車両における回生効率を向上できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、回生効率を向上できる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、車両の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して出力する圧力回生装置と、前記車両の運動エネルギーを電力に変換して出力する電力回生装置とを備え、前記車両における回生要求量が大きい場合は、前記回生要求量が小さい場合よりも前記圧力回生装置および前記電力回生装置のうち前記圧力回生装置によって前記車両の運動エネルギーを回生する割合を高めることを特徴とする。
【0007】
上記車両制御装置において、前記回生要求量が小さい場合は、前記回生要求量が大きい場合よりも前記圧力回生装置および前記電力回生装置のうち前記電力回生装置によって前記車両の運動エネルギーを回生する割合を高めることが好ましい。
【0008】
上記車両制御装置において、前記電力回生装置によって変換された電力を蓄電装置を介することなく前記車両の電気負荷に対して直接供給できる場合であって、前記回生要求量が小さい場合は、前記回生要求量が大きい場合よりも前記圧力回生装置および前記電力回生装置のうち前記電力回生装置によって前記車両の運動エネルギーを回生する割合を高めることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる車両制御装置は、回生要求量が大きい場合は、回生要求量が小さい場合よりも圧力回生装置および電力回生装置のうち圧力回生装置によって車両の運動エネルギーを回生する割合を高める。よって、本発明にかかる車両制御装置によれば、回生効率を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施形態の回生制御の動作を示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施形態にかかる車両の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、油圧回生システムおよび発電機の回生効率の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態にかかる車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
(実施形態)
図1から図3を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、圧力回生装置と電力回生装置とを備えた車両の回生制御を行う車両制御装置に関する。図1は、実施形態の回生制御の動作を示すフローチャート、図2は、実施形態にかかる車両の概略構成を示す図である。
【0013】
本実施形態の車両制御装置1−1は、電気・油圧の2つの回生、エネルギー蓄積手段を有する車両において、要求回生パワーが小さい場合であって、バッテリーの充電状態が閾値未満である場合や、現在の消費電力量が閾値を超える場合、通常時よりも電気による回生割合を増加させる。
【0014】
これは、回生パワーが小さいときは油圧の効率が悪いため、電気による回生が効率上有利であること、および、発電した電力を一旦バッテリーに蓄えることなくリアルタイムで消費するようにすれば充放電に伴う損失を低減できることによる。
【0015】
また、車両制御装置1−1は、要求回生パワーが大きい場合、油圧による回生割合を増加させる。これは、回生パワーが大きいときは油圧による回生が高効率であることによる。本実施形態によれば、要求回生パワーに応じて相対的に効率が高い方の回生装置による回生割合を高めることができ、回生効率を向上させることができる。
【0016】
図2に示すように、ハイブリッド車両100は、エンジン1、トランスミッション(T/M)2、油圧回生システム3、発電機4、バッテリー5およびECU30を備える。また、本実施形態の車両制御装置1−1は、油圧回生システム3、発電機4およびECU30を備える。
【0017】
エンジン1は、ハイブリッド車両100の動力源である。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを出力軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1の出力軸は、T/M2の入力軸と接続されている。T/M2は、例えば、自動変速機であり、エンジン1から入力される動力を変速して出力軸2aから出力する。T/M2の出力軸2aは、第一クラッチC1を介して第一ギアG1に接続されている。第一ギアG1は、第二クラッチC2を介してハイブリッド車両100の駆動輪6と接続されている。
【0018】
油圧回生システム3は、入力される動力を圧力に変換して蓄えることができると共に、蓄えた圧力を動力に変換して出力することができる。油圧回生システム3は、アキュームレータ31、油圧ポンプモータ32およびリザーブタンク33を有する。
【0019】
アキュームレータ31は、作動流体を加圧状態で蓄える蓄圧装置である。本実施形態の油圧回生システム3における作動流体としては、例えば作動油を用いることができる。アキュームレータ31は、高圧の作動油を蓄えることが可能な蓄圧容器であり、高圧油路34を介して油圧ポンプモータ32と接続されている。油圧ポンプモータ32は、低圧油路35を介してリザーブタンク33と接続されている。リザーブタンク33は、作動油を貯留する貯留タンクである。油圧ポンプモータ32の回転軸32aは、第三クラッチC3を介して第二ギアG2と接続されている。
【0020】
油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとしての機能を有すると共に、油圧モータとしての機能も有している。具体的には、油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとして機能する場合、第三クラッチC3を介して回転軸32aに入力される動力によって駆動されることにより、低圧油路35を介してリザーブタンク33の作動油を吸引し、吸引した作動油を加圧して高圧油路34に吐出する。高圧油路34に吐出された作動油は、アキュームレータ31に蓄圧される。油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪6から伝達される動力を圧力に変換して出力することができる。つまり、油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して出力する圧力回生装置として機能する。
【0021】
また、油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして機能する場合、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって駆動されることにより、圧力エネルギーを動力に変換して回転軸32aに出力する。油圧回生システム3は、圧力エネルギーから変換した動力を駆動輪6に出力してハイブリッド車両100を走行させる動力源として機能することができる。油圧ポンプモータ32を駆動した作動油は、低圧油路35を介してリザーブタンク33に流入する。
【0022】
油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして出力する動力の大きさ、および油圧ポンプとして機能するときの負荷の大きさを可変に制御することができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、斜板ポンプや斜軸ポンプ等の可変容量式のポンプモータとすることができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、容量0から最大容量まで無段階にポンプ容量/モータ容量を制御できるものとすることができる。
【0023】
発電機4は、入力される機械的なエネルギーを電力に変換して出力することができる。発電機4の回転軸4aは、第四クラッチC4を介して第三ギアG3と接続されている。発電機4は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪6から第四クラッチC4を介して回転軸4aに入力される動力により駆動されて発電することができる。つまり、発電機4は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを電力に変換して出力する電力回生装置として機能する。発電機4は、バッテリー5と接続されており、バッテリー5と電力を授受することができる。バッテリー5は、充放電可能な蓄電装置である。バッテリー5は、ハイブリッド車両100の電気負荷7と接続されており、電気負荷7のそれぞれに対して電力を供給することができる。バッテリー5に接続されている電気負荷7は、例えば、エアコン、ライト、電動パワーステアリング装置、スタータ等を含む補機類である。
【0024】
第一ギアG1と第二ギアG2とは常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。第二ギアG2と第三ギアG3とは常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。従って、第一ギアG1と第三ギアG3とは第二ギアG2を介して相互に動力を伝達することができる。
【0025】
ECU30は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、ハイブリッド車両100の走行制御を行う走行制御装置としての機能を有している。また、本実施形態のECU30は、回生制御を行う回生制御装置としての機能を有している。ECU30には、エンジン1、T/M2、アキュームレータ31、油圧ポンプモータ32、発電機4、バッテリー5および各クラッチC1,C2,C3,C4が接続されている。エンジン1、T/M2、油圧ポンプモータ32、発電機4および各クラッチC1,C2,C3,C4は、ECU30によって制御される。
【0026】
バッテリー5には、バッテリー5の充放電状態や電圧等を検出するセンサが接続されている。ECU30は、このセンサによる検出結果に基づいて、バッテリー5の充電状態SOCを取得することができる。充電状態SOCは、バッテリー5の充電量を示すものである。アキュームレータ31には、アキュームレータ31内の圧力を検出する圧力センサが設けられている。ECU30は、圧力センサによる検出結果に基づいて、アキュームレータ31内の油圧を取得することができる。
【0027】
各クラッチC1,C2,C3,C4は、それぞれ開放状態と係合状態とに切替え可能である。各クラッチC1,C2,C3,C4は、油圧等によって開放状態と係合状態とを切り替えるアクチュエータをそれぞれ有している。これらのアクチュエータがECU30から出力される指令に応じて作動することにより、各クラッチC1,C2,C3,C4の状態が制御される。なお、各クラッチC1,C2,C3,C4は、半係合状態に制御することも可能であり、更に、半係合状態における動力の伝達度合いを制御することも可能である。
【0028】
ECU30は、ハイブリッド車両100においてエンジン走行および油圧走行を選択的に実行させることができる。ここで、エンジン走行とは、少なくともエンジン1の動力によってハイブリッド車両100を走行させる走行モードである。油圧走行とは、エンジン1の動力によらずに、油圧回生システム3が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させる走行モードである。
【0029】
ECU30は、車速およびアクセル開度などの条件に基づいて、駆動輪6に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、油圧回生システム3、およびクラッチC1,C2,C3を制御する。エンジン走行においてエンジン1のトルクを駆動輪6に伝達する際には、第一クラッチC1および第二クラッチC2が係合状態とされる。また、エンジン走行において、ECU30は、シフトポジションや走行状態に応じてT/M2の変速比を制御する。
【0030】
ECU30は、エンジン走行において、油圧回生システム3が出力する動力を駆動輪6に伝達することができる。油圧回生システム3は、ハイブリッド車両100の加速時等にエンジン1のトルクが不足する場合に、これをアシストすることができる。油圧回生システム3が動力を出力する場合、ECU30は、第三クラッチC3を係合状態とすると共に、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって油圧ポンプモータ32を駆動する。アキュームレータ31内の加圧された作動油は、油圧ポンプモータ32に供給され、油圧ポンプモータ32を駆動して回転軸32aを回転させる。つまり、油圧ポンプモータ32において、油圧エネルギーが回転軸32aの回転動作に変換される。回転軸32aに出力された動力は、第三クラッチC3、第二ギアG2、第一ギアG1、および第二クラッチC2を介して駆動輪6に伝達される。
【0031】
油圧回生システム3は、大きなパワーを出力する場合に有利である。これは、油圧式はバッテリーを使用する電気式と比較して高いパワー密度を確保可能であることによる。大きなパワーを得ようとする場合、ハイブリッドシステムの大型化につながるが、油圧式は、電気式と比較してシステムの大型化を抑制しつつパワーアップを図ることが可能である。このため、油圧回生システム3は、例えば、大型車両に搭載される場合のハイブリッドシステムのコンパクト化において有利である。
【0032】
エンジン走行時において、発電機4に発電を行わせ、発生した電力をバッテリー5に充電することができる。発電機4に発電を行わせる場合、ECU30は、第四クラッチC4を係合状態とする。これにより、発電機4は、エンジン1から第一ギアG1、第二ギアG2、第三ギアG3および第四クラッチC4を介して伝達される動力によって駆動されて発電することができる。
【0033】
ECU30は、ハイブリッド車両100を油圧走行させる場合、第一クラッチC1を開放状態とし、かつ第二クラッチC2および第三クラッチC3を係合状態とする。また、ECU30は、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって油圧ポンプモータ32を駆動し、油圧ポンプモータ32に動力を出力させる。油圧走行時に発電機4に発電を行わせる場合、ECU30は、第四クラッチC4を係合状態とする。
【0034】
ECU30は、アキュームレータ31に蓄圧された油圧や、走行状態等に基づいて、エンジン走行あるいは油圧走行のいずれの走行モードでハイブリッド車両100を走行させるかを決定する。ECU30は、例えば、高負荷の走行時には、油圧回生システム3が出力する動力を利用してハイブリッド車両100を走行させる。このときに、エンジン1の動力を用いるか否かは、例えば、エンジン1の運転効率に基づいて決定するようにしてもよい。すなわち、車速や要求トルク等に基づいて、エンジン1が効率良く運転できる走行状態であればエンジン走行モードを選択し、エンジン1が効率良く運転できない走行状態であれば油圧走行モードを選択することが可能である。ECU30は、例えば、ハイブリッド車両100の発進時に油圧走行を行わせるようにしてもよい。また、アキュームレータ31に蓄圧された油圧が十分でない場合には、エンジン走行を優先させるようにしてもよい。
【0035】
油圧回生システム3は、入力される動力や出力する動力が大きい場合は、入出力される動力が小さい場合よりも効率良く作動することができる。油圧回生システム3に動力が入出力するときには、フリクションロスなどの損失が発生するが、この損失による効率の低下は、入出力する動力が小さい場合に大きくなる。このため、油圧回生システム3は、油圧回生システム3に大きな動力を出力させることができる場合に走行用の動力源として用いられることが好ましい。
【0036】
ECU30は、ハイブリッド車両100の減速時に回生制御を行うことができる。回生制御では、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを電力や油圧エネルギーに変換して利用・蓄積する。油圧ポンプモータ32では、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを油圧エネルギーに変換して出力し、アキュームレータ31に蓄圧することができる。ECU30は、油圧ポンプモータ32のポンプ容量を調節することにより、油圧ポンプモータ32のポンプ負荷、すなわち油圧回生システム3によって発生させる回生パワーを制御することができる。
【0037】
また、発電機4では、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを電力に変換して出力することができる。発電機4が出力する電力は、バッテリー5に充電することや、ハイブリッド車両100の補機に供給することができる。ECU30は、発電機4における発電量を調節することにより、発電機4の発電負荷、すなわち発電機4によって発生させる回生パワーを制御することができる。
【0038】
ECU30は、回生制御において、油圧ポンプモータ32によってハイブリッド車両100の運動エネルギーを回生する割合と、発電機4によって運動エネルギーを回生する割合とを調節することにより、回生制御の効率を向上させることができる。具体的には、ECU30は、ハイブリッド車両100における回生要求量が大きい場合は、回生要求量が小さい場合よりも油圧ポンプモータ32によってハイブリッド車両100の運動エネルギーを回生する割合を高める。これにより、回生要求量が大きく、油圧ポンプモータ32において効率良く運動エネルギーを油圧に変換できる場面において積極的に油圧ポンプモータ32による回生を行うことができる。
【0039】
図3は、油圧回生システム3および発電機4の回生効率の一例を示す図である。図3において、横軸はトルク、縦軸は回生効率を示す。実線は油圧回生システム3の回生効率、破線は発電機4の回生効率を示している。
【0040】
図3からわかるように、油圧回生システム3は、低トルクの領域、すなわち回生パワーが小さな領域では、回生効率が低下し、かつトルクが小さくなるほど回生効率が低下する。一方、発電機4の回生効率は、低トルクの領域であっても油圧回生システム3の回生効率ほどには低下しない。例えば、TQ1よりも低トルクの領域では、油圧回生システム3の回生効率は、発電機4の回生効率よりも低く、かつトルクが小さくなるほど油圧回生システム3の回生効率と発電機4の回生効率との乖離が大きくなる。
【0041】
また、高トルクの領域では、油圧回生システム3の回生効率が高く、かつトルクが大きくなるほど回生効率が高くなる。発電機4の回生効率は、高トルクの領域において油圧回生システム3の回生効率ほどには上昇しない。例えば、本実施形態では、TQ2よりも高トルクの領域において、油圧回生システム3の回生効率が発電機4の回生効率を上回り、かつトルクが大きくなるほど油圧回生システム3の回生効率と発電機4の回生効率との乖離が大きくなる。
【0042】
ECU30は、回生要求量が小さい場合、回生要求量が大きい場合よりも発電機4によってハイブリッド車両100の運動エネルギーを回生する割合を高める。つまり、小さな回生要求パワーに対しては発電機4によって優先的に回生させる。これにより、回生エネルギーが小さく、相対的に発電機4の回生効率が高い場面では発電機4に積極的に回生を行わせることで、回生制御における効率を向上させることができる。また、ECU30は、回生要求量が小さく、かつ電気負荷7における消費電力量が閾値を超える場合に発電機4による回生割合を高める。これにより、発電機4によって発電した電力を一旦バッテリー5に蓄えることなく直接電気負荷7に供給することができる。電気負荷7に対して直接電力を供給することにより充放電に伴う損失を抑制できるため、ハイブリッド車両100におけるエネルギー効率を高めることが可能となる。
【0043】
図1を参照して、本実施形態の回生制御について説明する。図1に示す制御フローは、回生要求がある場合に実行される。ECU30は、例えば、アクセルオフされている場合など、ハイブリッド車両100の減速時に回生要求有りと判定してもよく、制動要求が検出されているときに回生要求有りと判定してもよい。制動要求は、運転者による制動操作に基づくものであっても、ECU30等によって実行される走行制御に基づくものであってもよい。例えば、先行車に追従して走行する追従制御によって減速度が要求されている場合に回生要求有りと判定されることができる。
【0044】
まず、ステップS1では、ECU30により、要求回生パワーが第1閾値A未満であるか否かが判定される。要求回生パワーとは、回生によって回収する単位時間あたりの運動エネルギーの目標である。要求回生パワーは、例えば、要求減速度や要求制動トルクに基づいて算出される。要求減速度は、例えば、運転者による制動操作、例えばブレーキペダルのペダルストロークや踏力等に基づいて決定される。この要求減速度に応じたパワーがそのまま要求回生パワーとされてもよく、また、車両の走行状態に応じた所定の減速度と要求減速度との差分に応じたパワーが要求回生パワーとされてもよい。なお、制動要求が検出されていない場合は、ハイブリッド車両100の実際の減速度と上記所定の減速度との差分に応じたパワーが要求回生パワーとされてもよい。
【0045】
ステップS1の第1閾値Aは、油圧回生システム3による回生効率が低下する回生パワーの領域であるか否かを判定するものである。この第1閾値Aは、例えば、油圧回生システム3における回生パワーと回生効率との関係に基づいて定められる。一例として、第1閾値Aは、図3のトルクTQ1に対応する回生パワー、すなわち油圧回生システム3の回生効率が発電機4の回生効率以下となる回生パワーの領域の上限値に設定することができる。なお、第1閾値Aの定め方は、これには限定されない。第1閾値Aは、例えば、油圧回生システム3の回生効率が一定以下となる回生パワーの値とされてもよい。
【0046】
ステップS1の判定の結果、要求回生パワーが第1閾値A未満であると判定された場合(ステップS1−Y)にはステップS2に進み、そうでない場合(ステップS1−N)にはステップS4に進む。
【0047】
ステップS2では、ECU30により、バッテリー充電量が閾値C未満であるか否かが判定される。閾値Cは、例えば、適正なバッテリー充電量よりも低い充電量である。ECU30は、バッテリー充電量が所定の制御範囲内の値となるようにバッテリー5の充電制御を行っている。閾値Cは、例えば、制御範囲の下限のバッテリー充電量である。ECU30は、バッテリー5の充電状態SOCと閾値Cとに基づいてステップS2の判定を行う。その判定の結果、バッテリー充電量が閾値C未満であると判定された場合(ステップS2−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS2−N)にはステップS6に進む。
【0048】
ステップS3では、ECU30は、電気による回生割合を増加させる。ステップS2で肯定判定がなされてステップS3に進んだ場合、ECU30は、バッテリー充電量が閾値C以上である場合よりも発電機4による回生割合を高める。ここで、発電機4による回生割合は、発電機4による回生と油圧回生システム3による回生とによって要求回生パワーを実現するときの発電機4による回生パワーの割合である。つまり、ステップS3では、バッテリー充電量が適正範囲内である場合に定められる発電量よりも発電機4の発電量を増加させる。発電機4による回生割合を増加させるときは、ECU30は、発電機4の発電負荷を増加させ、油圧ポンプモータ32のポンプ負荷を減少させる。
【0049】
ECU30は、例えば、要求回生パワーが小さいほど発電機4によって回生する割合を高めるようにしてもよい。また、発電機4の回生効率に対して油圧回生システム3の回生効率が低くなるほど発電機4によって回生する割合を高めるようにしてもよい。例えば、要求回生パワーが最小である場合に要求回生パワーの全てを発電機4の回生発電によって発生させるようにしてもよい。
【0050】
あるいは、ECU30は、発電機4による回生割合を増加させる場合、常に要求回生パワーの全てを発電機4の回生発電によって発生させることも可能である。また、ステップS3において、ECU30は、バッテリー充電量が小さいほど発電機4による回生割合を高めるようにしてもよい。ステップS3が実行されると、本制御フローは終了する。
【0051】
ステップS4では、ECU30により、要求回生パワーが第2閾値B以上であるか否かが判定される。第2閾値Bは、油圧回生システム3によってハイブリッド車両100の運動エネルギーを回生する割合を高めるか否かを判定するものである。一例として、第2閾値Bは、図3のトルクTQ2に対応する回生パワー、すなわち油圧回生システム3の回生効率が発電機4の回生効率以上となる回生パワーの領域の下限値に設定することができる。なお、第2閾値Bの定め方は、これには限定されない。第2閾値Bは、例えば、油圧回生システム3の回生効率が一定以上となる回生パワーの値とされてもよい。
【0052】
ステップS4の判定の結果、要求回生パワーが第2閾値B以上であると判定された場合(ステップS4−Y)にはステップS5に進み、そうでない場合(ステップS4−N)にはステップS7に進む。
【0053】
ステップS5では、ECU30は、油圧による回生割合を増加させる。ここで、油圧回生システム3による回生割合は、発電機4による回生と油圧回生システム3による回生とによって要求回生パワーを実現するときの油圧回生システム3による回生パワーの割合である。ECU30は、要求回生パワーが第2閾値B未満である場合よりも油圧回生システム3による回生割合を高める。油圧回生システム3による回生割合を高めるときは、ECU30は、油圧ポンプモータ32のポンプ負荷を増加させ、発電機4の発電負荷を減少させる。
【0054】
ECU30は、例えば、要求回生パワーが大きいほど油圧回生システム3によって回生する割合を高めるようにしてもよい。また、発電機4の回生効率に対して油圧回生システム3の回生効率が高くなるほど油圧回生システム3による回生割合を高めるようにしてもよい。例えば、要求回生パワーが一定以上である場合に要求回生パワーの全てを油圧回生システム3によって発生させるようにしてもよい。あるいは、ECU30は、油圧回生システム3による回生割合を増加させる場合、常に要求回生パワーの全てを油圧回生システム3によって発生させるようにしてもよい。ステップS5が実行されると、本制御フローは終了する。
【0055】
ステップS6では、ECU30により、現在の消費電力が閾値D以上であるか否かが判定される。ECU30は、バッテリー5に接続された電気負荷7の現在の消費電力が、予め定められた閾値D以上であるか否かを判定する。この閾値Dは、例えば、エンジン1が有するオルタネータの定格出力等に基づいて定められる。バッテリー5に接続された電気負荷7は、オルタネータとも接続されており、バッテリー5から電力の供給を受けることも、オルタネータから直接電力の供給を受けることも可能である。また、電気負荷7は、発電機4から直接電力の供給を受けることも可能である。
【0056】
オルタネータの発電量が電気負荷7の消費電力以上である場合、各電気負荷7はオルタネータから電力を供給されて作動する。また、オルタネータの発電量が電気負荷7の消費電力を下回る場合、各電気負荷7は、オルタネータからの電力に加えて、バッテリー5から電力の供給を受けて作動する。閾値Dは、例えば、電気負荷7の消費電力がオルタネータの発電量を上回り、バッテリー5から電力の供給を受けることとなる値とされる。電気負荷7の消費電力がオルタネータの発電量を上回る状況は、発電機4によって変換された電力をバッテリー5を介することなく電気負荷7に対して直接供給できる場合に相当する。ステップS6の判定の結果、現在の消費電力が閾値D以上であると判定された場合(ステップS6−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS6−N)にはステップS7に進む。
【0057】
ステップS6で肯定判定がなされてステップS3に進んだ場合、ECU30は、現在の消費電力が閾値D未満である場合よりも発電機4による回生割合を高める。ECU30は、例えば、要求回生パワーが小さいほど発電機4による回生割合を高めるようにしてもよい。また、発電機4の回生効率に対して油圧回生システム3の回生効率が低くなるほど発電機4による回生割合を高めるようにしてもよい。あるいは、ECU30は、発電機4による回生割合を増加させる場合、常に要求回生パワーの全てを発電機4の回生発電によって発生させることも可能である。また、ステップS3において、ECU30は、電気負荷7の消費電力が大きいほど発電機4による回生割合を高めるようにしてもよい。発電機4による回生割合を高めて、発電機4で発電された電力を一旦蓄電することなく直接電気負荷7に供給することにより、ハイブリッド車両100におけるエネルギー利用効率を高めることが可能となる。
【0058】
ステップS7では、ECU30により、通常制御がなされる。ここで、回生制御における通常制御とは、例えば、(1)要求回生パワーが第1閾値A未満(S1−Y)であって、バッテリー充電量が大きく不足しておらず(S2−N)、かつ電気負荷7の消費電力が過大でない(S6−N)ときや、(2)要求回生パワーが第1閾値A以上(S1−N)第2閾値B未満(S4−N)であるときになされる回生制御である。通常制御では、油圧回生システム3および発電機4の個別要求に応じて回生量や回生割合が定められる。
【0059】
例えば、通常制御では、バッテリー5の充電が必要な場合に充電に必要とされるだけ発電機4に発電を行わせ、発電機4に発電を行わせた状態で回生量に余裕があれば油圧回生システム3による回生を行う。この場合、発電機4における発電量の要求値は、バッテリー5の充電状態SOCに応じて可変とされても、一律の値とされてもよい。ECU30は、発電量の要求値を実現するように発電機4によって発電を行わせる。また、ECU30は、要求回生パワーと発電機4の発電量とに基づいて油圧回生システム3による回生パワーを決定する。ECU30は、発電機4による回生パワーだけでは要求回生パワーに達しない場合に油圧回生システム3による回生を実行する。ステップS7が実行されると、本制御フローは終了する。
【0060】
本実施形態の車両制御装置1−1は、ハイブリッド車両100における要求回生パワー(回生要求量)が大きい場合には、要求回生パワーが小さい場合よりも油圧回生システム3および発電機4のうち油圧回生システム3によってハイブリッド車両100の運動エネルギーを回生する割合を高める。これにより、油圧回生システム3を高効率の動作点で作動させてハイブリッド車両100の運動エネルギーを油圧エネルギーとして蓄えることができる。
【0061】
また、車両制御装置1−1は、要求回生パワーが小さい場合には、要求回生パワーが大きい場合よりも油圧回生システム3および発電機4のうち発電機4によって運動エネルギーを回生する割合を高める。これにより、相対的に高効率で回生を行うことができる発電機4による回生の割合を高めて、回生効率を向上させることができる。よって、本実施形態の車両制御装置1−1によれば、回生効率を向上させてハイブリッド車両100の燃費を向上させることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、要求回生パワーが第1閾値A未満であるか否かに基づいて発電機4の回生割合を高めるか否かが決定されたが、これには限定されない。例えば、要求回生パワーが第1閾値A未満であるか否かにかかわらず、要求回生パワーが小さい場合に要求回生パワーが大きい場合よりも発電機4の回生割合を高めるように、段階的にもしくは連続的に回生割合を変化させるようにしてもよい。
【0063】
本実施形態では、要求回生パワーが第2閾値B以上であるか否かに基づいて油圧回生システム3による回生割合を高めるか否かが決定されたが、これには限定されない。例えば、要求回生パワーが第2閾値B以上であるか否かにかかわらず、要求回生パワーが大きい場合に要求回生パワーが小さい場合よりも油圧回生システム3の回生割合を高めるように、段階的にもしくは連続的に回生割合を変化させるようにしてもよい。
【0064】
本実施形態では、現在の消費電力が閾値D以上であるか否かに基づいて発電機4による回生割合を増加させるか否かが決定されたが、これには限定されない。例えば、オルタネータが発電する電力と電気負荷7の消費電力との比較結果に基づいて発電機4による回生割合を高めるようにしてもよい。また、バッテリー5の放電量に基づいて発電機4による回生割合を高めるか否かが決定されてもよい。
【0065】
なお、本実施形態では、発電機4のジェネレータとしての機能について説明したが、発電機4は、モータとしてハイブリッド車両100の動力源として機能することが可能である。発電機4は、バッテリー5から供給される電力によって駆動されて回転軸4aに動力を出力することができる。すなわち、発電機4は、油圧回生システム3と同様にエンジン走行においてエンジン1をアシストしたり、EV走行モードで発電機4単独でハイブリッド車両100を走行させたりすることができる。また、発電機4の出力する動力と油圧回生システム3の出力する動力とによってハイブリッド車両100を走行させることも可能である。
【0066】
なお、ハイブリッド車両100は、エンジン1を搭載しないものであってもよい。例えば、ハイブリッド車両100は、油圧回生システム3と発電機4の2つを動力源として走行するものであってもよい。
【0067】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明にかかる車両制御装置は、回生効率の向上に有用であり、特に、圧力回生装置と電力回生装置とを備える車両における回生効率の向上に適している。
【符号の説明】
【0069】
1−1 車両制御装置
1 エンジン
3 油圧回生システム
4 発電機
5 バッテリー
7 電気負荷
30 ECU
31 アキュームレータ
32 油圧ポンプモータ
100 ハイブリッド車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して出力する圧力回生装置と、
前記車両の運動エネルギーを電力に変換して出力する電力回生装置とを備え、
前記車両における回生要求量が大きい場合は、前記回生要求量が小さい場合よりも前記圧力回生装置および前記電力回生装置のうち前記圧力回生装置によって前記車両の運動エネルギーを回生する割合を高める
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記回生要求量が小さい場合は、前記回生要求量が大きい場合よりも前記圧力回生装置および前記電力回生装置のうち前記電力回生装置によって前記車両の運動エネルギーを回生する割合を高める
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記電力回生装置によって変換された電力を蓄電装置を介することなく前記車両の電気負荷に対して直接供給できる場合であって、前記回生要求量が小さい場合は、前記回生要求量が大きい場合よりも前記圧力回生装置および前記電力回生装置のうち前記電力回生装置によって前記車両の運動エネルギーを回生する割合を高める
請求項1に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−106683(P2012−106683A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258290(P2010−258290)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】