説明

車両後部の衝撃吸収構造

【課題】衝突エネルギーを広い範囲で良好に吸収することができる車体後部の衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】トランク本体5には、車幅方向に延在するトランクアッパーフレーム6と、上下方向に延在するトランクセンターフレーム7が取り付けられる。リアクロスメンバ3及びトランクサイドフレーム4には、被係合部材31,81が設けられる。トランクアッパーフレーム6の車幅方向両端側には、トランクサイドフレーム4の被係合部材81に係合可能な係合部材82が設けられる。また、トランクセンターフレーム7の下端側には、リアクロスメンバ3の被係合部材31に係合可能な係合部材53が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突エネルギーを吸収するための車両後部の衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突エネルギーを吸収するための車両後部の衝撃吸収構造としては、例えば、車両前後方向に延在するリアサイドメンバと、車幅方向に延在するリアバンパと、リアサイドメンバとリアバンパとの間に配設され且つリアサイドメンバ及びリアバンパの高さよりも上下に長く延在するロアバックパネルと、を備えたものがある(特許文献1参照)。そして、この車両後部の衝撃吸収構造では、車高の異なる他の車両が車両後部に衝突したときに、ロアバックパネルが衝突時の荷重を受けることが可能であるとともに、ロアバックパネルが受けた荷重をリアサイドメンバに伝達させることが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−8346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明では、前記ロアバックパネルが車幅方向両側に配設される一対の柱状部材であり、車幅方向中央側には配設されていないため、オフセット衝突時において、衝突エネルギーを良好に吸収することができない虞があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような観点から創案されたものであり、衝突エネルギーを広い範囲で良好に吸収することができる車体後部の衝撃吸収構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明は、車両後部に他の車両が衝突したときに生じる衝突エネルギーを吸収するための車体後部の衝撃吸収構造であって、前記車体後部に形成されたトランク開口部を開閉可能に覆うトランク本体と、前記トランク本体に取り付けられ、車幅方向に延在するトランクアッパーフレームと、前記トランク本体に取り付けられ、上下方向に延在する少なくとも1つのトランクセンターフレームと、前記トランク本体の下方に配設され、車幅方向に延在するリアクロスメンバと、その後端部が前記リアクロスメンバの前端部に接合され、車両前後方向に延在するとともに、車幅方向に離間して配置される一対のリアサイドフレームと、その下端部が前記リアクロスメンバの車幅方向端部に接合され、上下方向に延在するとともに、車幅方向に離間して配置される一対のトランクサイドフレームと、を備え、前記リアクロスメンバ及び前記トランクサイドフレームには、被係合部材が設けられており、前記トランクアッパーフレームの車幅方向両端側には、衝突時に前記トランクサイドフレームの被係合部材に係合可能な係合部材が設けられるとともに、前記トランクセンターフレームの下端側には、衝突時に前記リアクロスメンバの被係合部材に係合可能な係合部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、トランクアッパーフレーム及びトランクセンターフレームがトランク本体に取り付けられ、他の車両が衝突したときに、トランクアッパーフレームの車幅方向両端側に設けられた係合部材がトランクサイドフレームに設けられた被係合部材に係合するとともに、トランクセンターフレームの下端側に設けられた係合部材がリアクロスメンバに設けられた被係合部材に係合することによって、オフセット衝突時においても、トランク本体に入力された荷重を車体骨格部に確実に伝達することができるため、衝突エネルギーを広い範囲で良好に吸収することができる。
【0008】
なお、「車体骨格部」とは、「リアクロスメンバ、リアサイドフレーム及びトランクサイドフレーム」のことをいう。
【0009】
また、トランクサイドフレームの下端部には、さらに被係合部材が設けられており、トランク本体の車幅方向端部の下側には、衝突時に被係合部材に係合可能な係合部材が設けられていることが好ましい。このようにすると、係合部材及び被係合部材がリアサイドフレームの近傍に配置されていることによって、トランク本体に入力された荷重がこの係合部材及び被係合部材を介して、リアサイドフレームに伝達しやすくなるため、リアサイドフレームがより一層座屈変形しやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、衝突エネルギーを広い範囲で良好に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る車両後部の衝撃吸収構造の背面図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図1のY−Y線断面図である。
【図4】図1のZ−Z線断面図である。
【図5】本実施形態に係るキャッチャー機構の構成を示す斜視図である。
【図6】(a)は従来の車体後部構造において、荷重が加わる前後の状態を示す概略側面図であり、(b)は本発明の車体後部の衝撃吸収構造において、荷重が加わる前後の状態を示す概略側面図である。
【図7】(a)〜(c)は変形例に係るトランクセンターフレームの構成を示す背面図である。
【図8】(a)〜(b)は変形例に係るトランクアッパーフレームの構成を示す断面図である。
【図9】(a)は変形例に係るキャッチャー機構の構成を示す斜視図であり、(b)は変形例に係るキャッチャー機構の取付状態を示す断面図である。
【図10】(a)〜(b)は変形例に係るキャッチャー機構の取付状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下、前後、上下左右は、車両Cを基準とする。また、左右方向と車幅方向とは、同一方向を指す。
【0013】
本実施形態に係る車両後部の衝撃吸収構造Aは、例えば、トランクを有するセダン型車両などの後部に適用される構造であり、他の車両が車両後部に衝突したときに生じる衝突エネルギーを吸収するための構造である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の車両後部の衝撃吸収構造Aは、リアバンパ1と、一対のリアサイドフレーム2,2と、リアクロスメンバ3と、一対のトランクサイドフレーム4,4と、トランク本体5と、トランクアッパーフレーム6と、トランクセンターフレーム7と、4つのキャッチャー機構8,8・・・と、から主に構成されている。
【0015】
リアバンパ1は、図1及び図2に示すように、車幅方向に延在しており、トランク本体5の下方に配設されている。リアバンパ1の外面は、図2に示すように、トランク本体5の外面より後方に張り出している。また、リアバンパ1の前方には、リアパネル9が配設されている。
【0016】
一対のリアサイドフレーム2,2は、他の車両が衝突したときに、その衝突エネルギーを座屈変形することによって吸収する部材であり、図1に示すように、車幅方向に離間して配置されている。リアサイドフレーム2は、図2に示すように、車両Cの前後方向に延在しており、その後端部2aがリアクロスメンバ3の前端部3aに接合されている。
【0017】
リアクロスメンバ3は、リアパネル9を含む複数のパネルを接合して閉断面に形成されている。リアクロスメンバ3は、図1及び図2に示すように、車幅方向に延在しており、左右のリアサイドフレーム2,2を連結している。リアクロスメンバ3の上面3bには、被係合部材であるストライカー31が設けられている。
【0018】
一対のトランクサイドフレーム4,4は、図1に示すように、トランクアッパーフレーム6を挟んで対向している。すなわち、一対のトランクサイドフレーム4,4は、車幅方向に離間して配置されている。トランクサイドフレーム4は、上下方向に延在しており、鉛直軸に対して車幅方向外側に傾斜している。トランクサイドフレーム4の下端部4aは、リアクロスメンバ3の上面3bに接合されている。また、トランクサイドフレーム4の適所には、図3及び図4に示すように、被係合部材であるキャッチャーブラケット81が設けられている。
【0019】
トランク本体5は、車両Cの後部に形成されたトランク開口部(図示省略)を開閉可能に覆う部材であり、図2に示すように、車外側に位置するトランクスキン51と、車内側に位置するトランクパネル52と、から主に構成されている。トランク本体5の車幅方向端部5cの下側には、図4に示すように、トランクサイドフレーム4に設けられたキャッチャーブラケット81に係合可能なキャッチャーフック82が設けられている。トランクスキン51とトランクパネル52との間には、中空部5bが形成されている。この中空部5b内には、トランクアッパーフレーム6と、トランクセンターフレーム7とが配設されている。本実施形態のトランクアッパーフレーム6とトランクセンターフレーム7とは、図1に示すように、T字状を呈している。
【0020】
トランクアッパーフレーム6は、図1及び図2に示すように、丸パイプ(中空部材)で構成されており、車幅方向に延在している。トランクアッパーフレーム6は、図2に示すように、リアバンパ1及びリアクロスメンバ3の上方に配設されており、ブラケットBK1を介して、トランク本体5のトランクパネル52に固定されている。トランクアッパーフレーム6の車幅方向両端側には、図3に示すように、トランクサイドフレーム4に設けられたキャッチャーブラケット81に係合可能なキャッチャーフック82が設けられている。すなわち、トランクアッパーフレーム6は、アッパーフレームブラケット61を介して、トランクパネル52の車幅方向端部5cに連結されている。また、トランクパネル52の車幅方向端部5cには、キャッチャーフック82が接合されている。換言すると、トランクアッパーフレーム6の車幅方向両端側には、アッパーフレームブラケット61及びトランクパネル52を介して、キャッチャーフック82が設けられている。なお、トランクアッパーフレーム6とキャッチャーフック82との取り付け方は、これに限定されるものではなく、トランクアッパーフレーム6からキャッチャーフック82へ荷重を伝達可能であれば、トランクアッパーフレーム6とキャッチャーフック82との間に他の部材が介在していてもよいし、トランクアッパーフレーム6の車幅方向両端部にキャッチャーフック82を直接取り付けてもよい。
【0021】
トランクセンターフレーム7は、図1及び図2に示すように、上下方向に延在しており、トランクアッパーフレーム6の車幅方向中央に配設されている。トランクセンターフレーム7は、リアクロスメンバ3とトランクアッパーフレーム6との間に介在している。トランクセンターフレーム7の上端部7aは、図2に示すように、トランクアッパーフレーム6と略同じ曲率の曲面(円弧面)に成形されており、トランクアッパーフレーム6の外面に接合されている。トランクセンターフレーム7の下端側には、リアクロスメンバ3に設けられたストライカー31に係合可能なロック部材53が設けられている。すなわち、トランクセンターフレーム7の下端部7bは、ブラケットBK2を介して、トランク本体5の下端部5aに固定されている。また、トランク本体5の下端部5aには、ロック部材53が固定されている。換言すると、トランクセンターフレーム7の下端部7bには、トランク本体5を介して、ロック部材53が設けられている。
【0022】
キャッチャー機構8は、図1に示すように、トランク本体5の四隅に設置されている。キャッチャー機構8は、図3乃至5に示すように、トランクサイドフレーム4側に配設されるキャッチャーブラケット81と、トランク本体5側に配設されるキャッチャーフック82と、から構成されている。
なお、図1に示すように、キャッチャー機構8は、左右対称となっているため、以下の説明においては右側のみを説明し、左側の説明は省略することとする。また、性能上不要な場合は、トランク本体5の車幅方向端部5cの下側に位置するキャッチャー機構8,8を設けなくてもよい。
【0023】
被係合部材である一対のキャッチャーブラケット81,81は、図1及び図3に示すように、上下に離間して配置されており、キャッチャースチフナ41を介して、トランクサイドフレーム4の傾斜面4bに固定されている。キャッチャーブラケット81は、図5に示すように、一枚の金属板をプレス成形して形成されており、上下に離間して形成された一対の接合部81a,81aと、接合部81aの内縁からトランク本体5側(左側)に向かって延出する立ち上がり部81b,81bと、一対の立ち上がり部81b,81bの先端同士を繋ぐ本体部81cと、から構成されている。
【0024】
接合部81aには、ボルトBを挿通するためのボルト挿通孔81dが貫通形成されている。接合部81aは、トランクサイドフレーム4の傾斜面4bにボルトBによって固定されている。本体部81cは、立ち上がり部81bによって、トランクサイドフレーム4から離間している。本体部81cとトランクサイドフレーム4との間には、空間部81eが形成されている。また、本体部81cは、接合部81aに対して平行に形成されている。
【0025】
係合部材であるキャッチャーフック82は、他の車両が車両後部に衝突したときに、キャッチャーブラケット81に係合(接触)する部材である。キャッチャーフック82は、図3乃至図5に示すように、キャッチャーブラケット81に対応する位置に配置されている。上側に位置するキャッチャーフック82は、図3に示すように、アッパーフレームブラケット61を介して、トランク本体5のトランクパネル52に固定されている。また、下側に位置するキャッチャーフック82は、キャッチャーフックスチフナ54を介して、トランク本体5のトランクパネル52に固定されている。
【0026】
キャッチャーフック82は、図5に示すように、一枚の金属板をプレス成形して形成されており、略L字状を呈する。キャッチャーフック82は、トランクパネル52に接合される基端部82aと、基端部82aの一端から前方に向かって延出する先端部82bと、から構成されている。
【0027】
基端部82aには、ボルトBを挿通するためのボルト挿通孔82cが貫通形成されている。基端部82aは、トランクパネル52にボルトBによって固定されている。先端部82bは、空間部81eに挿脱自在である。換言すると、先端部82bは、トランク本体5を閉じた状態において空間部81eに挿入され、トランク本体5を開けると空間部81eから抜脱される。
【0028】
次に、車体後部の衝撃吸収構造Aの作用について説明する。
なお、参照する図面において、図6(a)は、従来の車体後部に荷重が加わる前後の状態を示す概略側面図であり、(b)は、本発明の車体後部に荷重が加わる前後の状態を示す概略側面図である。
【0029】
図6(a)及び(b)に示すように、車両Cのリアバンパ1の位置よりフロントバンパFBの位置が高い他の車両Dが衝突したときには、トランク本体5に荷重Pが入力される。しかしながら、従来の車体後部構造では、図6(a)に示すように、トランク本体5がロック部材(図示省略)だけで車体に連結されているため、荷重Pを受け止めることができず、トランク本体5が大きく変形したり、開放された状態になったりする。その結果、他の車両Dが車両Cに乗り上がり、車内への侵入量が多くなる。
【0030】
これに対して、本発明においては、トランク本体5に衝突時の荷重Pが入力されると、トランク本体5に入力された荷重Pは、トランクセンターフレーム7、ロック部材53及びストライカー31を介して、リアクロスメンバ3に伝達され、ひいては、リアサイドフレーム2に伝達される(図2参照)。また、荷重Pは、トランクアッパーフレーム6及び上側に位置するキャッチャー機構8を介して、トランクサイドフレーム4及びリアクロスメンバ3に伝達され、ひいては、リアサイドフレーム2に伝達される(図2及び図3参照)。さらに、荷重Pは、下側に位置するキャッチャー機構8を介して、トランクサイドフレーム4及びリアクロスメンバ3に伝達され、ひいては、リアサイドフレーム2に伝達される(図2及び図3参照)。その結果、図6(b)に示すように、リアサイドフレーム2が座屈変形して、荷重Pを受け止めることができる。また、他の車両DのフロントバンパFBなどが車両Cに引っ掛かるため、他の車両Dが車両Cに乗り上がることを抑制でき、車内への侵入量を少なくすることができる。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る車両後部の衝撃吸収構造Aによれば、トランクアッパーフレーム6及びトランクセンターフレーム7がトランク本体5に取り付けられ、他の車両が衝突したときに、トランクアッパーフレーム6の車幅方向両端側に設けられたキャッチャーフック82がトランクサイドフレーム4に設けられたキャッチャーブラケット81に係合するとともに、トランクセンターフレーム7の下端部7b側に設けられたロック部材53がリアクロスメンバ3に設けられたストライカー31に係合することによって、オフセット衝突時においても、トランク本体5に入力された荷重を車体骨格部に確実に伝達することができるため、衝突エネルギーを広い範囲で良好に吸収することができる。
【0032】
また、下側に位置するキャッチャー機構8がリアサイドフレーム2の近傍に配置されていることによって、トランク本体5に入力された荷重がキャッチャー機構8を介して、リアサイドフレーム2に伝達しやすくなるため、リアサイドフレーム2がより一層座屈変形しやすくなる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
本実施形態のトランクセンターフレーム7は、トランクアッパーフレーム6の車幅方向の中央に配設されているが、これに限定されることなく、トランク本体5の中空部5b内の部品配置及び必要な荷重を考慮して適宜設定すればよい。例えば、図7(a)に示すように、一対のトランクセンターフレーム7,7をV字状に配設してもよい。換言すると、一対のトランクセンターフレーム7,7は、ロック部材53側からトランクアッパーフレーム6側に向かうにつれて互いに離間するように配設されてもよい。
【0035】
また、図7(b)に示すように、一対のトランクセンターフレーム7,7を逆V字状に配設してもよい。換言すると、一対のトランクセンターフレーム7,7は、ロック部材53側からトランクアッパーフレーム6側に向かうにつれて互いに接近するように配設されてもよい。
また、図7(c)に示すように、単一のトランクセンターフレーム71を、トランクアッパーフレーム6の車幅方向中央に鉛直方向に沿って配設するとともに、一対のトランクセンターフレーム72,72を逆V字状に配設してもよい。
【0036】
また、本実施形態のトランクアッパーフレーム6は、丸パイプで構成されているが、これに限定されることなく、断面強度、設置スペース及び製造方法などを考慮して適宜設定すればよい。例えば、図8(a)に示すように、角パイプで構成されてもよいし、図8(b)に示すように、二枚の板状部材を接合して構成されても構わない。
【0037】
また、図9(a)及び(b)に示すように、キャッチャー機構8は、トランクサイドフレーム4側に配設されるキャッチャーブラケット83と、トランク本体5側に配設されるキャッチャーピン84と、から構成されてもよい。
【0038】
被係合部材であるキャッチャーブラケット83は、キャッチャースチフナ41を介して、トランクサイドフレーム4の傾斜面4bに固定されている。キャッチャーブラケット83は、一枚の金属板をプレス成形して形成されており、上下に離間して形成された一対の接合部83a,83aと、一対の接合部83a,83aの内縁からトランク本体5側に向かって円弧状に延出する立ち上がり部83bと、立ち上がり部83bの先端を覆うように形成された受け部83cと、から構成されている。
【0039】
接合部83aには、ボルトBを挿通するためのボルト挿通孔83dが貫通形成されている。接合部83aは、トランクサイドフレーム4の傾斜面4bにボルトBによって固定されている。受け部83cは、立ち上がり部83bによって、トランクサイドフレーム4から離間している。受け部83cとトランクサイドフレーム4との間には、空間部83eが形成されている。受け部83cは、接合部83aに対して平行に形成されている。また、受け部83cには、後方に開口する凹部83fが形成されている。
【0040】
係合部材であるキャッチャーピン84は、他の車両が車両後部に衝突したときに、キャッチャーブラケット83に係合(接触)する部材である。キャッチャーピン84は、キャッチャーブラケット83に対応する位置に配置されている。キャッチャーピン84は、円板状の頭部84aと、頭部84aに連続して形成され且つ頭部84aより小径に形成された円柱状の軸部84bと、軸部84bの先端に連続して形成され且つ軸部84bより大径に形成された固定部84cと、から構成されている。
【0041】
頭部84aは、空間部83eに挿脱自在であるとともに、軸部84bは、凹部83fに挿脱自在である。換言すると、頭部84aは、トランク本体5を閉じた状態において空間部83eに挿入され、トランク本体5を開けると空間部83eから抜脱される。また、軸部84bは、トランク本体5を閉じた状態において凹部83fに挿入され、トランク本体5を開けると凹部83fから抜脱される。固定部84cは、キャッチャーフックスチフナ54を介して、トランク本体5のトランクパネル52に固定されている。
【0042】
また、図10(a)に示すように、キャッチャー機構8は、トランクサイドフレーム4側に配設されるキャッチャーブラケット85と、トランク本体5側に配設されるキャッチャーピン86と、から構成されてもよい。
【0043】
被係合部材であるキャッチャーブラケット85は、一枚の金属板をプレス成形して形成されており、トランクサイドフレーム4の後壁4cに形成された開口部4dの開口縁に沿って延在する略円板状の接合部85aと、接合部85aの内縁に連続して形成された円筒状の本体部85bと、から構成されている。
【0044】
接合部85aは、トランクサイドフレーム4の後壁4cにボルト(図示省略)によって固定されている。また、本体部85bには、孔部85cが形成されている。
【0045】
係合部材であるキャッチャーピン86は、他の車両が車両後部に衝突したときに、キャッチャーブラケット85に係合(接触)する部材である。キャッチャーピン86は、トランク本体5の車幅方向端部5cに配設されており、頭部86aと、頭部86aに連続して形成された短軸部86bと、から構成されている。頭部86aは、キャッチャーフックスチフナ54を介して、トランク本体5のトランクパネル52に固定されている。短軸部86bは、トランク本体5を閉じた状態では孔部85c内には侵入せず、衝突時に凹部85d内に侵入するように設定されている。
このような構成により、他の車両が車両後部に衝突したときに、短軸部86bの尖端がトランクサイドフレーム4に刺さって引っ掛かるため、トランク本体5に加わった荷重を車体骨格部に確実に伝達することができる。
【0046】
なお、図10(b)に示すように、短軸部86bを長軸部86cに変更してもよい。長軸部86cは、その先端側が通常時から凹部85d内に侵入するとともに、トランクサイドフレーム4に刺さって引っ掛かっている。このような構成でも、トランク本体5に加わった荷重を車体骨格部に確実に伝達することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 リアバンパ
2 リアサイドフレーム(車体骨格部)
2a 後端部
3 リアクロスメンバ(車体骨格部)
3a 前端部
31 ストライカー(被係合部材)
4 トランクサイドフレーム(車体骨格部)
4a 下端部
5 トランク本体
5a 下端部
5c 車幅方向端部
53 ロック部材(係合部材)
6 トランクアッパーフレーム
7 トランクセンターフレーム
7a 上端部
7b 下端部
8 キャッチャー機構
81 キャッチャーブラケット(被係合部材)
82 キャッチャーフック(係合部材)
83 キャッチャーブラケット(被係合部材)
84 キャッチャーピン(係合部材)
85 キャッチャーブラケット(被係合部材)
86 キャッチャーピン(係合部材)
9 リアパネル
A 車両後部の衝撃吸収構造
C 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に他の車両が衝突したときに生じる衝突エネルギーを吸収するための車体後部の衝撃吸収構造であって、
前記車体後部に形成されたトランク開口部を開閉可能に覆うトランク本体と、
前記トランク本体に取り付けられ、車幅方向に延在するトランクアッパーフレームと、
前記トランク本体に取り付けられ、上下方向に延在する少なくとも1つのトランクセンターフレームと、
前記トランク本体の下方に配設され、車幅方向に延在するリアクロスメンバと、
その後端部が前記リアクロスメンバの前端部に接合され、車両前後方向に延在するとともに、車幅方向に離間して配置される一対のリアサイドフレームと、
その下端部が前記リアクロスメンバの車幅方向端部に接合され、上下方向に延在するとともに、車幅方向に離間して配置される一対のトランクサイドフレームと、を備え、
前記リアクロスメンバ及び前記トランクサイドフレームには、被係合部材が設けられており、
前記トランクアッパーフレームの車幅方向両端側には、衝突時に前記トランクサイドフレームの被係合部材に係合可能な係合部材が設けられるとともに、
前記トランクセンターフレームの下端側には、衝突時に前記リアクロスメンバの被係合部材に係合可能な係合部材が設けられていることを特徴とする車体後部の衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記トランクサイドフレームの下端部には、さらに被係合部材が設けられており、前記トランク本体の車幅方向端部の下側には、衝突時に前記被係合部材に係合可能な係合部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部の衝撃吸収構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−264921(P2010−264921A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119204(P2009−119204)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】