説明

車両用ナビゲーション装置

【課題】
タッチパネルに表示されているメニューボタンを注視しなくても目的の機能を容易に実行できる車両用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】
パネル画面上で地図情報を表示するとともに、そのパネル画面への接触操作を感知する接触感知手段と、パネル画面が接触された場合にその接触点の数を検出する接触状況検出手段とを有するタッチパネルを備える。また、車両用ナビゲーション装置またはそれ以外の車載機器を接触点の数に応じて制御する制御手段を備える。ユーザがパネル画面を触ると、その接触点の数に応じて、地図を拡大・縮小したり案内音声のボリュームを調整したりできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の走行に伴ってGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等により現在位置を検出し、その現在位置を表示装置上に道路地図と共に表示して、現在位置から目的地までの適切な経路を設定し、表示装置や音声出力装置などによって案内する車両用ナビゲーション装置は、運転者の効率的で安全な運転に貢献している。
【0003】
近年、車両用ナビゲーション装置の表示装置としてタッチパネルが用いられるようになっている(例えば下記特許文献1)。タッチパネルには複数のメニューボタンが表示されており、地図を拡大・縮小したり、目的地への経路を表示したりする機能が、各メニューボタンに割り当てられている。
【0004】
ところが、それらの機能を実行するためにはユーザがメニューボタンを目視し、その形状や記述内容により各機能を認識した後に、該当するメニューボタンに触れる必要があった。そのため、画面を長時間目視することになり、特に運転中は危険であった。
【0005】
また、メニューボタンを押すと別のメニューが表示されるような、いわゆる階層構造になっている場合には、ユーザは目的の機能が表示されるまで順次メニューボタンを押す必要があり、頻繁に使用する機能を即時に実行できないという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−184168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景になされたもので、タッチパネルに表示されているメニューボタンを注視しなくても目的の機能を容易に実行できる車両用ナビゲーション装置を提供することを課題とする。特には、メニューボタンとして表示されていない機能でもショートカットして実行できる車両用ナビゲーション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
請求項1の車両用ナビゲーション装置は、地図情報を表示するタッチパネルと、制御手段とを備えた発明である。このタッチパネルは周知の赤外線方式や抵抗膜方式などを利用して形成することにより、パネル画面への接触操作を感知する手段(接触感知手段)と、接触点の数を検出する手段(接触状況検出手段)とを備えたものとすることができる。また、制御手段は車両用ナビゲーション装置またはそれ以外の車載機器を、パネル画面への接触点の数に応じて制御するものである。具体的には、制御手段は画面上の地図を拡大・縮小したり、案内音声のボリュームを調節したり、車載エアコンの室温調節をしたりする。このような構成とすることで、ユーザはパネル画面を触れるだけで、その接触点の数に応じた機能を実行できるようになり、メニューボタンを注視する必要がなくなる。
【0009】
また、請求項2の車両用ナビゲーション装置によると、パネル画面への接触操作を感知する手段(接触感知手段)と、接触点の座標および接触点数を検出する手段(接触状況検出手段)とを備えたタッチパネルを用いている。そして制御手段は、車両用ナビゲーション装置またはそれ以外の車載機器を、パネル画面内における接触点の相対的位置と接触点数との組み合わせに応じて制御する。ここで相対的位置とは、例えばパネルの上下または左右とすることができる。すなわち、パネル画面を上下または左右に分断する仮想分断線を設定しておき、その仮想分断線を基準として、触れられた位置がパネル画面の上か下か、又は右か左かを判断するのである。そして例えば、パネル画面の上部を指2本で触れた場合は地図を拡大し、下部を指2本で触れた場合は地図を縮小するなどの機能を設定しておく。このようにすると、画面のおおまかな位置と、触れる指の本数によって、多様な機能を実行できるようになる。
【0010】
請求項3によると、地図情報を表示しているパネル画面上の2点が接触された場合、制御手段は、その2点を対角点とする四辺形内の領域を含む拡大地図を、パネル画面に表示させる。これによりユーザは、地図情報を表示しているパネル画面を触って目的のエリアを指定するだけで簡単に拡大地図を表示できるようになる。
【0011】
請求項4の車両用ナビゲーション装置は接触時間判断手段をさらに備えたものである。この接触時間判断手段は、パネル画面が触れられている時間を測定するとともに、その接触時間が予め決められた時間より長いかを判断する。そして制御手段は、接触時間が予め決められた時間より長い場合に、所定の制御を行う。これにより、ユーザが誤ってパネルを触れた場合でも誤操作しなくなる。
【0012】
請求項5は、制御手段が実行する機能を具体的に特定したもので、地図の拡大・縮小、案内音声のボリューム調整、車載エアコンの室温調整、自宅への経路表示、電話番号検索画面の表示、のいずれか一つを含むようにしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は車両用ナビゲーション装置(以下、ナビゲーション装置と略称)100の全体構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置100は、位置検出器1,地図データ入力器6,操作スイッチ群7,これらに接続された制御回路(制御手段)8,外部メモリ9,表示装置(タッチパネル)10,音声入力装置(マイク)11,音声認識制御部12,音声出力制御部13,音声出力装置(スピーカ)14,車両機器群15を備えている。
【0014】
ナビゲーション装置100は、タッチパネル10に表示されたメニューボタンや操作スイッチ群7を用いて目的地の位置を入力すると、現在位置からその目的地までの最適な経路を自動的に選択して誘導経路を形成して表示する、いわゆる経路案内機能を備えている。このような自動的に最適な経路を設定する手法は、ダイクストラ法等の手法が知られている。
【0015】
位置検出器1は、周知の地磁気センサ2,ジャイロスコープ3,距離センサ4,および衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPSのためのGPS受信機5を有している。これらのセンサ等2,3,4,5は各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては前述したうちの一部のセンサで構成してもよく、さらに、ステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0016】
地図データ入力器6は、位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、地図データ及び目印データを含む各種データを入力するための装置である。記憶媒体としては、そのデータ量からCD−ROMやDVD−ROMを用いるのが一般的であるが、メモリカード等の他の媒体を用いてもよい。
【0017】
タッチパネル10には位置検出器1から入力された車両の現在位置マークと、地図データ入力器6から入力された地図データと、更に地図上に表示する誘導経路等付加データとを重ねて表示することができる。タッチパネル10が接触点を感知する原理としては例えば、画面上に縦横に微細に赤外線センサを配置し、指やタッチペンなどがその赤外線を遮断すると、その遮断した位置を二次元座標値(X,Y)として検出する方式(赤外線方式)が知られている。また、この他にも抵抗膜方式や静電気容量方式などが知られている。このような方式を利用して形成することにより、タッチパネル10は、パネル画面への接触操作を感知する接触感知手段と、パネル画面上が接触された場合にその接触点の座標および接触点数を検出する接触状況検出手段とを備えることが可能となる。
【0018】
操作スイッチ群7は、メカニカルなスイッチを用いてもよく、タッチパネル10上にメニューボタンを表示して用いてもよい。これら操作スイッチ群7を使用することによって、種々の指示を入力することが可能になる。また、操作スイッチ群7の他に、音声認識制御部12を用いて種々の指示を入力することも可能である。これは、音声入力装置(マイク)11から音声を入力することによって、その音声信号を周知の音声認識技術により音声認識処理して、その結果に応じた操作コマンドに変換するものである。
【0019】
制御回路(制御手段)8は通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU81,ROM82,RAM83,入出力回路であるI/O84およびこれらの構成を接続するバスライン85が備えられている。ROM82には、タッチパネル10への接触点の数に対応して、ナビゲーション装置100またはそれ以外の車載機器を制御するプログラムが記憶されている。例えば指1本で触った場合は地図拡大、2本の場合は地図縮小、3本の場合は目的地への経路表示、などの機能を実行するようにプログラムを組むことができる。この他には、案内音声のボリューム調整、電話番号検索画面表示、車載エアコンの室温調整、車載オーディオの音量調整、自宅(登録済みの目的地)への経路表示、などの機能を組み込むこともできる。ユーザがパネル画面上を触れると、CPU81は接触点の数に対応した機能を実行する。
【0020】
上記機能は、接触点の数と、接触されたパネル画面内のおおまかな位置との組み合わせに対応させることができる。例えば指1本で画面上部を触れた時は地図拡大、1本で画面下部を触れた時は地図縮小、等とすることができる。地図の拡大・縮小機能や、案内音声のボリューム調整機能など反対の動作を行うものは、指の数は同じで触れる位置が異なるように設定しておくと、ユーザが覚えやすくなってよい。
【0021】
なお、タッチパネル10が触られた時間を計測し、接触時間が予め決められた時間より長い場合にのみ制御を行うようにしてもよい。このようにすると、ユーザが誤ってタッチパネルを触ってしまっても誤動作しなくなる。接触時間の計測および判断を行うための手段は、制御手段8内の回路として構成することができる。
【0022】
次に、図2を用いて使用方法の説明をする。ナビゲーション装置100は図2aに示すようにタッチパネル10、音声出力装置14、操作スイッチ群7を備え、タッチパネル10には地図情報および車両現在位置マークSが表示されている。また、画面下側には複数のメニューボタン7’が表示され、機能スイッチ群の一部として用いられる。そして図2bに示すように、ユーザがパネル画面のメニューボタン7’以外の任意の場所を触れると、タッチパネル10は接触点Pを検出し、制御手段8は接触点Pの数に応じてナビゲーション装置100またはそれ以外の車載機器を制御する。
【0023】
図3にフローチャートの一例を示す。まず、ユーザがパネル画面上を触れると、タッチパネル10の接触感知手段により接触操作のあったことが感知される(ステップS1)。その後、制御手段8内に形成された接触時間判断手段が、パネル画面が接触された時間を計測するとともに、その接触時間が所定の時間より長いか否かを判断する(ステップS2)。ここでYesと判断した場合は、タッチパネル10の接触状況検出手段により接触点Pの数が検出され(ステップS3)、CPU81は接触点Pの数に対応した機能を実行する(ステップS4)。なお、ステップ処理S2でNoと判断した場合は、ユーザが誤ってパネル画面を触ったとみなし、ステップ処理S3,S4を処理しない。
【0024】
次に、図4および図5を用いて別の実施形態について説明する。図4aおよび図4bのタッチパネル10は、ユーザが触れたおおまかな位置を認識できる構成とされている。図4aでは仮想分断線Lによって画面が上下に分断されており、同様に図4bでは画面が左右に分断されている。図4aのように画面が上下に分断されている場合、接触点Pと仮想分断線Lの位置関係から、ユーザが触れた位置がパネル画面内の上か下かを判断する。また、ROM82(図示しない)には、接触点Pの位置と接触点数の組み合わせに応じてナビゲーション装置100またはそれ以外の機器を制御するためのプログラム記憶されている。そのプログラムの行う機能は、例えば下記表1のように設定することができる。
【0025】
【表1】

【0026】
図5にフローチャートを示す。ユーザが画面に触れると、タッチパネル10は接触されたことを感知し(S1)、接触時間が所定時間よりも長いか判断し(S2)、接触点数の検出(S3)および接触位置の検出(S3’)を行う。その後、CPU81がROM82からプログラムを読み出して、接触点数および接触位置の組み合わせに対応した機能を実行する。
【0027】
ステップS3’は上述したように仮想分断線Lを基準として、接触された箇所の相対的な位置を検出する処理である。パネル画面の複数箇所が仮想分断線Lをまたぐように接触された場合は(例えば上部が2点、下部が1点接触された場合)、ユーザの意図がはっきりしないのでステップS4を実行しないようにしてもよい。また、接触点数が多い方が触られたと判断してもよい。
【0028】
本発明は、図6に示す実施形態とすることもできる。この実施形態では、地図情報が表示されているパネル画面上の2点が接触された場合に、制御手段はその2点を対角点とする四辺形内の領域を含む拡大地図をパネル画面に表示させる。これにより、例えば図6aのA点およびB点を触れると、点線内のエリアを含む拡大地図が表示される(図6b)。A1とB1、またはA2とB2を同時に触れた場合にも、各点を対角点とする四辺形内の領域を含む拡大地図を表示する。同様の機能は図6Aの画面左下に表示されている“詳細ボタン”を触っても実行できるが、本発明では上述したように2点を指示するだけで直感的かつ短時間に地図拡大機能を実行できる。
【0029】
なお、上記実施形態ではパネル画面にメニューボタンを表示したが、メニューボタンの一部を削除したり、または全てを削除したりできる。つまり、本発明を採用すれば、必ずしもメニューボタンが表示されていなくても、パネル画面の任意の点を触れるだけで所望の機能を実行できるからである。
【0030】
以上説明したように本発明は、パネル画面上を触れるだけで、その接触点の数や位置に応じて目的の機能を実行できるので、パネル画面を注視する必要がなく、運転中のユーザが事故を起こす危険性を減少でき、その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ナビゲーション装置を示すブロック図。
【図2】ナビゲーション装置の一実施形態
【図3】フローチャートの一例
【図4】図2とは別の実施形態
【図5】図3とは別のフローチャート
【図6】図2および図4とは別の実施形態
【符号の説明】
【0032】
1 位置検出器
6 地図データ入力器
7 操作スイッチ群
8 制御回路(制御手段)
10 表示装置(タッチパネル)
15 車両機器群
81 CPU
82 ROM
S 自車位置マーク
P 接触点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子地図上で車両の現在位置を表示して車両の走行を助ける車両用ナビゲーション装置において、
パネル画面上で地図情報を表示するとともに、そのパネル画面への接触操作を感知する接触感知手段と、前記パネル画面が接触された場合にその接触点の数を検出する接触状況検出手段とを有するタッチパネルと、
前記車両用ナビゲーション装置またはそれ以外の車載機器を前記接触点の数に応じて制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項2】
電子地図上で車両の現在位置を表示して車両の走行を助ける車両用ナビゲーション装置において、
パネル画面上で地図情報を表示するとともに、そのパネル画面への接触操作を感知する接触感知手段と、前記パネル画面上が接触された場合にその接触点の座標および接触点数を検出する接触状況検出手段とを有するタッチパネルと、
前記車両用ナビゲーション装置またはそれ以外の車載機器を、前記パネル画面内における前記接触点の相対的位置と前記接触点数との組み合わせに応じて制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用ナビゲーション装置。
【請求項3】
前記地図情報を表示している前記パネル画面上の2点が接触された場合に、前記制御手段は前記2点を対角点とする四辺形内の領域を含む拡大地図を前記パネル画面に表示させる請求項2記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記パネル画面が接触されている時間を測定するとともに、その接触時間が予め決められた時間より長いかを判断する接触時間判断手段を更に備え、
前記接触時間が前記予め決められた時間より長い場合に前記制御手段による制御が行われる請求項1ないし3記載の車両用ナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御手段による制御は、前記タッチパネルに表示された地図の拡大・縮小、案内音声のボリューム調整、車載エアコンの室温調整、自宅への経路表示、電話番号検索画面の表示、のいずれか一つを含むものである請求項1または2記載の車両用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−162267(P2006−162267A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349720(P2004−349720)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】