説明

車両用バッテリーの冷却構造

【課題】送気による圧損が抑制され、且つスペースを広く確保することができる車両用バッテリーの冷却構造を提供する。
【解決手段】吸気ダクト15は、少なくとも一部が床下に配置される第1ダクト部材20と、床下以外に配置される上流側及び下流側第2ダクト部材21、22と、を備える。第1ダクト部材20と下流側第2ダクト部材22の接続部45は、床下以外に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に適用されるバッテリーの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車では、例えば、ラゲッジスペースの床下に、電動機の駆動エネルギー源であるバッテリーが搭載されている。バッテリーは、充放電が行われる際に発熱する発熱部品であるので、バッテリー性能を維持するための冷却が必要であり、車室内などから取り込んだ冷却風により冷却することが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用電源ユニットの冷却構造は、後部座席近傍に設けた吸気口から車室内の空気を冷却ファンにより取り込み、その空気を冷却風としてバッテリーを含む電源ユニットに供給して冷却している。蓋部材を備える防水ケース内に収容された電源ユニットは、一対の吊り下げフレームを介してリヤサイドフレームに吊り下げ支持された状態でラゲッジスペース下方のスペアタイヤを収納するタイヤパンを利用して収納されており、電源ユニットの上方には、スペアタイヤが収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐120397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の車両用電源ユニットの冷却構造では、電源ユニットの上方にスペアタイヤが収容されているため、スペアタイヤの周囲に、送気ダクトの設置スペースを比較的自由に確保することができる。
【0006】
しかしながら、電源ユニットの上方にスペアタイヤを収納せずに荷室やキャビンの床面高さを低く抑え、荷室やキャビンのスペースを広く確保しようとすると、この構造は採用し難く、改善の余地があった。即ち、特許文献1に記載の車両用電源ユニットの冷却構造では、送気ダクトが干渉してしまい荷室やキャビンの床面高さを低く抑えることができなかった。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷室やキャビンの床面高さを低く抑え、荷室やキャビンのスペースを広く確保することができる車両用バッテリーの冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
荷室(例えば、後述の実施形態における荷室11)又はキャビンの床下に配置されるバッテリー(例えば、後述の実施形態におけるバッテリー12)と、吸気口(例えば、後述の実施形態における吸気口14)を有して前記車室内の空気を冷却風として前記バッテリーに供給する吸気ダクト(例えば、後述の実施形態における吸気ダクト15)と、を備える車両用バッテリーの冷却構造であって、
前記吸気ダクトは、少なくとも一部が前記床下に配置される第1ダクト部材(例えば、後述の実施形態における第1ダクト部材20)と、前記床下以外に配置される第2ダクト部材(例えば、後述の実施形態における上流側第2ダクト部材21、下流側第2ダクト部材22)と、を備え、
前記第1ダクト部材と前記第2ダクト部材の接続部(例えば、後述の実施形態における接続部45)は、前記床下以外に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
前記第1ダクト部材は、前記床下に配置される部分の流路に直交する断面が、鉛直方向の高さ(例えば、後述の実施形態における鉛直方向の高さH)に対し水平方向の長さ(例えば、後述の実施形態における水平方向の長さL)が長い扁平形状を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の構成に加えて、
前記第2ダクト部材は、前記荷室又はキャビンを区画する側壁面(例えば、後述の実施形態における側壁面23)内に配置され、
前記第1ダクト部材は、鉛直方向上方に屈曲する屈曲部(例えば、後述の実施形態における屈曲部24)を有し、
前記屈曲部の少なくとも一部は、前記側壁面内に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3の構成に加えて、
前記接続部は、前記屈曲部の上方に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかの構成に加えて、
前記第2ダクト部材は、一部がホイールハウス(例えば、後述の実施形態におけるホイールハウス31)に沿うように形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項3〜5のいずれかの構成に加えて、
前記第2ダクト部材には、前記吸気口から落下した異物を収容する異物収容部(例えば、後述の実施形態における異物収容部30)が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項6の構成に加えて、
前記異物収容部は、前記第2ダクト部材から着脱可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項6又は7の構成に加えて、
前記異物収容部と前記接続部とは、車幅方向にオフセットしており、
前記異物収容部は、車幅方向において、前記接続部よりも内側に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項6又は7の構成に加えて、
前記異物収容部と前記接続部は、車両の前後方向にオフセットしていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項6〜9のいずれかの構成に加えて、
前記第2ダクト部材は、前記吸気口を有する上流側第2ダクト部材(例えば、後述の実施形態における上流側第2ダクト部材21)と、前記異物収容部を有し前記第1ダクト部材に接続する下流側第2ダクト部材(例えば、後述の実施形態における下流側第2ダクト部材22)と、から構成され、
前記下流側第2ダクト部材は、前記第1ダクト部材と前記上流側第2ダクト部材とから着脱可能であることを特徴とする。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項10の構成に加えて、
前記下流側第2ダクト部材には、前記異物収容部に繋がる通路(例えば、後述の実施形態における異物収容部に繋がる通路22a)と前記接続部に繋がる流路(例えば、後述の実施形態における接続部に繋がる流路22b)とが分岐する分岐部(例えば、後述の実施形態における分岐部22c)が設けられ、
前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の下流側の流路断面積は、前記上流側第2ダクト部材の最小流路断面積と略等しいことを特徴とする。
【0019】
請求項12に係る発明は、請求項11の構成に加えて、
前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の下流側の流路断面は、鉛直方向から見て前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の上流側の流路断面とオフセットしており、
前記異物収容部は、鉛直方向から見て前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の上流の流路断面とオーバーラップしていることを特徴とする。
【0020】
請求項13に係る発明は、請求項6〜12のいずれかの構成に加えて、
前記異物収容部は、下部断面が上部断面に対して小さく構成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項14に係る発明は、請求項13の構成に加えて、
前記異物収容部は、車両の前後方向の壁面の幅(例えば、後述の実施形態における上部幅W1、下部幅W2)を上部に対して下部で短くなるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、バッテリーが配置される荷室又はキャビンの床面高さを低くして、荷室又はキャビンのスペースを広く確保することができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、より床面高さを低くして、荷室又はキャビンのスペースを広く確保することができる。
【0024】
請求項3の発明によれば、屈曲部の少なくとも一部を側壁面内に配置することで、荷室又はキャビンの床面を下げて広いスペースを確保することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、荷室又はキャビンの車幅方向のスペースを確保することができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、第2ダクト部材を側壁面内でコンパクトに収容することができ、荷室又はキャビンを区画する側壁面が車室側に張り出すことを抑制できる。
【0027】
請求項6の発明によれば、万一、吸気口からコイン、指輪などの導電体の異物が落下しても、異物収容部に収容して、バッテリーの短絡発生を防止することができる。
【0028】
請求項7の発明によれば、異物収容部に収容された異物を容易に取り出すことができる。
【0029】
請求項8の発明によれば、床下に配置される第1ダクト部材から鉛直方向上方に屈曲する屈曲部の曲率半径を大きくすることができ、吸気ダクトの通気抵抗を低減させて、効率的にバッテリーを冷却することができる。
【0030】
請求項9の発明によれば、荷室又はキャビンの車幅方向長さを狭めることなく、異物収容部を設置することができる。
【0031】
請求項10の発明によれば、必要に応じて異物収容部を有する下流側第2ダクト部材を取り外し、異物収容部に収容されている異物を回収することができる。また、第2ダクト部材が上流側と下流側で分割されていることで組み付け性が向上する。
【0032】
請求項11の発明によれば、吸気ダクトの通気抵抗が低減されると共に、騒音が抑制されて快適な室内環境が得られる。
【0033】
請求項12の発明によれば、吸気口から落下した異物を、確実に異物収容部に収容して、バッテリーの短絡発生を防止することができる。
【0034】
請求項13の発明によれば、異物収容部内に落下した異物の跳ね返りを抑制して、異物を確実に異物収容部内に収容しておくことができる。
【0035】
請求項14の発明によれば、車両の加速時又は減速時に異物が前後の壁面に接触する可能性が高いので、前後方向の壁面の幅を上部に対して下部で短くすることで、異物収容部内に落下した異物の跳ね返りを抑制して、異物を確実に異物収容部内に確保しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態の車両用バッテリーの冷却構造が適用される車両から内装カバーを外した車両後部を示す斜視図である。
【図2】図1において、バッテリーの断面が見えるように前後方向に沿って切断した断面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図1において、吸気ダクトの断面が見えるように前後方向に沿って切断した断面図である。
【図5】図3における円Bで囲む部分の拡大図である。
【図6】異物収容部の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の変形例の車両用バッテリーの冷却構造の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0038】
図1から図4に示すように、本実施形態の車両用バッテリーの冷却構造は、後部座席シート10後方の荷室11の床下に配置され、防水ケース13に収容されたバッテリー12と、吸気口14を有し下流側の一端が防水ケース13に接続されて、吸気口14から取り込んだ空気を冷却風としてバッテリー12に供給する吸気ダクト15と、上流側の一端が防水ケース13に接続されて、バッテリー12を冷却した冷却風を防水ケース13内から排出する排気ダクト16と、を備える。なお、符号Fが荷室11の床面を示している。
【0039】
吸気ダクト15の吸気口14は、クォーターウインドウ40の窓枠下部に網目状に形成された吸気グリル41を介して車室内と連通する。
【0040】
排気ダクト16の上流側には、電動式のファン17が設けられており、このファン17が発生する負圧で、吸気口14から吸気ダクト15内に冷却風が吸入される。バッテリー12(防水ケース13)は、車幅方向に延びる前後一対の吊り下げフレーム18を介して左右のリヤサイドフレーム19に吊り下げ支持されている。なお、バッテリー12は、防水ケース13内に単独で設けられていてもよく、車両用バッテリー以外に、インバータ、DC/DCコンバータ等のバッテリーに付随する電装部品も含む電源ユニットとして設けられていてもよい。
【0041】
吸気ダクト15は、少なくとも一部が荷室11の床下に略水平に配置される第1ダクト部材20と、車両の右側の側壁面23に沿って略垂直に配置される上流側第2ダクト部材21及び下流側第2ダクト部材22と、から構成され、上流側から上流側第2ダクト部材21、下流側第2ダクト部材22、及び第1ダクト部材20の順で接続されている。上流側第2ダクト部材21及び下流側第2ダクト部材22は、側方から見て、一部がホイールハウス31に沿うように湾曲しており(図2参照)、後方から見て、一部がホイールハウス31とオーバーラップしている(図5参照)。
【0042】
第1ダクト部材20は、図4に示すように、床下に配置される部分の流路に直交する断面が、鉛直方向の高さHに対し水平方向の長さLが長い扁平形状に形成されている。第1ダクト部材20の下流側端部は、バッテリー12が収容された防水ケース13の側面に接続する。第1ダクト部材20の上流側は、図3に示すように、大きな曲率半径で側壁面23に沿って垂直に立ち上る屈曲部24が形成され、屈曲部24の上方で下流側第2ダクト部材22の下端と接続部材25で接続される(図5参照)。この接続部材25、第1ダクト部材20の上端及び下流側第2ダクト部材22の下端で本発明の接続部45が構成される。
【0043】
図5も参照して、接続部材25には、下流側第2ダクト部材22の下端に設けられた係合凸部27と係合する凹溝26が内周面に設けられている。これにより、第1ダクト部材20と下流側第2ダクト部材22とは、着脱可能に接続される。
【0044】
上流側第2ダクト部材21は、吸気口14を有し、側壁面23に沿って略垂直に配置される直線部21aと、直線部21aから車幅方向内側に傾斜する傾斜部21bと、傾斜部21bから延設され、直線部21aより車幅方向内側で略垂直に配置される直線状の連結部21cと、が一体に形成されている。上流側第2ダクト部材21の下端には、下流側第2ダクト部材22の上端に設けられた凹溝28と係合する突起29が設けられ、これにより上流側第2ダクト部材21と下流側第2ダクト部材22とは、着脱可能に接続される。
【0045】
下流側第2ダクト部材22は、吸気口14から落下した異物(図示せず)を収容する袋状の異物収容部30を備える。具体的に、下流側第2ダクト部材22には、異物収容部30に繋がる通路22aと接続部45に繋がる流路22bとに分岐する分岐部22cが設けられており、異物収容部30は、接続部45よりも車幅方向内側にオフセットして配置されている。分岐部22cは、騒音の発生原因となり易いエッジ部をなくすため、大きな曲面で形成されている。
【0046】
異物収容部30は、鉛直方向から見て、下流側第2ダクト部材22の分岐部22cより上流の流路断面とオーバーラップしている。また、分岐部22cより下流側の流路断面は、鉛直方向から見て、分岐部22cの上流側の流路断面とオフセットしている。また、下流側第2ダクト部材22の分岐部22cより下流側の流路断面積は、上流側第2ダクト部材21の最小流路断面積と略等しくなっている。
【0047】
このように、異物収容部30を車幅方向内側にオフセットして配置することにより、接続部45を防水ケース13から車幅方向外側に離間した位置に配置することができ、接続部45から繋がる屈曲部24の曲率半径を大きくして、流路抵抗を低減している。また、下流側第2ダクト部材22の分岐部22cより下流側の流路断面積と、上流側第2ダクト部材21の最小流路断面積と略等しくして、流線を滑らかにして送気損失を抑制すると共に、騒音発生を防止している。
【0048】
また、異物収容部30は、鉛直方向から見て、下流側第2ダクト部材22の分岐部22cより上流の流路断面とオーバーラップしていることにより、異物を確実に異物収容部30内に収容することができる。一方で、分岐部22cより下流側の流路断面は、鉛直方向から見て、分岐部22cの上流側の流路断面とオフセットしているので、異物が分岐部22cより下流側の流路に落下することが効果的に防止される。
【0049】
図2に示すように、異物収容部30は、壁面の車両前後方向幅が、上部幅W1より下部幅W2が短くされて、下部断面が上部断面より小さくなっている。これにより、車両の加速時又は減速時に前後の壁に接触する可能性が高い、落下する異物の跳ね返りを抑制して、異物が異物収容部30から飛び出すことを防止している。
【0050】
次に、上記の構成を備えた本実施形態の作用について説明する。図3中破線矢印で示すように、排気ダクト16に設けられた電動式のファン17を回転させ、防水ケース13内の空気を排気して負圧にすることで、荷室11内の空気を吸気口14から吸気ダクト15(上流側第2ダクト部材21)内に吸入する。
【0051】
上流側第2ダクト部材21内に取り込まれた空気は、下流側第2ダクト部材22及び第1ダクト部材20を経由して防水ケース13に冷却風として供給され、防水ケース13内のバッテリー12を冷却した後、排気ダクト16から吸気ダクト側のホイールハウス31とは反対側の不図示のホイールハウスの後方に排気される。
【0052】
吸気ダクト15の断面積は、各部で略同じ断面積となるように設定され、更に各屈曲部の曲率半径は、できるだけ大きくされているので、吸気ダクト15の流路抵抗、即ち、送気損失を小さくすることができると共に、騒音の発生が抑制される。
【0053】
また、万一、吸気口14からコイン、指輪などの異物を落下させた場合、この異物は、上流側第2ダクト部材21の連結部21cの略真下に位置する異物収容部30内に確実に収容されて、防水ケース13内に入り込むことはなく、バッテリーの短絡発生が防止される。更に、異物収容部30内に収容された異物は、下流側第2ダクト部材22を第1ダクト部材20及び上流側第2ダクト部材21から取り外すことにより、異物収容部30から取り出して回収することができる。
【0054】
異物収容部30は、図6に示すように、下流側第2ダクト部材22から着脱可能に形成されていてもよい。これにより、下流側第2ダクト部材22を第1ダクト部材20及び上流側第2ダクト部材21から取り外すことなく、異物収容部30内に収容された異物を取り出して回収することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用バッテリーの冷却構造によれば、吸気ダクト15は、少なくとも一部が床下に配置される第1ダクト部材20と、床下以外に配置される上流側及び下流側第2ダクト部材21、22と、を備え、第1ダクト部材20と下流側第2ダクト部材22の接続部45は、床下以外に配置されるので、バッテリー12が配置される荷室11の床面高さを低くして、荷室11のスペースを広く確保することができる。
【0056】
また、第1ダクト部材20は、床下に配置される部分の流路に直交する断面が、鉛直方向の高さに対し水平方向の長さが長い扁平形状を有するので、より床面高さを低くして、荷室11のスペースを広く確保することができる。
【0057】
また、上流側及び下流側第2ダクト部材21、22は、荷室11を区画する側壁面23内に配置され、第1ダクト部材20は、鉛直方向上方に屈曲する屈曲部24の少なくとも一部が、側壁面23内に配置されるので、第1ダクト部材20と下流側第2ダクト部材22の接続部45を側壁面23内に配置することができ、荷室11の床面を下げて広いスペースを確保することができる。
【0058】
更に、接続部45は、屈曲部24の上方に配置されるので、荷室11の車幅方向のスペースを確保することができる。
【0059】
また、第2ダクト部材21、22は、一部がホイールハウス31に沿うように形成されているので、第2ダクト部材21、22を側壁面23内でコンパクトに収容することができ、荷室又はキャビンを区画する側壁面23が車室側に張り出すことを抑制できる。
【0060】
更にまた、下流側第2ダクト部材22には、吸気口14から落下した異物を収容する異物収容部30が設けられているので、万一、吸気口14からコイン、指輪などの導電体の異物が落下しても、異物収容部30に収容して、バッテリー12での短絡発生を防止することができる。
【0061】
また、異物収容部30は、接続部45よりも車幅方向内側にオフセットして配置されているので、床下に配置される第1ダクト部材20から鉛直方向上方に屈曲する屈曲部24の曲率半径を大きくすることができ、これにより、吸気ダクト15の通気抵抗を低減させて、効率的にバッテリー12を冷却することができる。
【0062】
更に、第2ダクト部材は、吸気口14を有する上流側第2ダクト部材21と、異物収容部30を有し第1ダクト部材20に接続する下流側第2ダクト部材22と、から構成され、下流側第2ダクト部材22が、第1ダクト部材20及び上流側第2ダクト部材21から着脱可能であるので、必要に応じて異物収容部30を有する下流側第2ダクト部材22を取り外し、異物収容部30に収容されている異物を回収することができる。
【0063】
また、下流側第2ダクト部材22には、異物収容部30に繋がる通路22aと接続部45に繋がる流路22bとに分岐する分岐部22cが設けられ、下流側第2ダクト部材22における分岐部22cの下流側の流路断面積は、上流側第2ダクト部材21の最小流路断面積と略等しいので、吸気ダクト15の通気抵抗が抑制されると共に、騒音が低減されて快適な室内環境が得られる。また、第2ダクト部材が上流側第2ダクト部材21と下流側第2ダクト部材22に分割されていることで組み付け性が向上する。
【0064】
更に、下流側第2ダクト部材22における分岐部22cの下流側の流路断面は、下流側第2ダクト部材22における分岐部22cの上流側の流路断面と、鉛直方向から見てオフセットしており、異物収容部30は、鉛直方向から見て下流側第2ダクト部材22における分岐部22cの上流の流路断面とオーバーラップしているので、吸気口14から落下した異物を、確実に異物収容部30に収容してバッテリー12への侵入を防止し、これにより、バッテリーの短絡発生を防止することができる。
【0065】
更にまた、異物収容部30は、下部断面が上部断面に対して小さく構成されているので、異物収容部30内に落下した異物の跳ね返りが抑制されて、異物を確実に異物収容部30内に収容することができる。
【0066】
また、異物収容部30は、車両の前後方向の壁面の幅を上部に対して下部で短くなるように構成されているので、異物収容部30内に落下した異物の跳ね返りを抑制して、異物を確実に異物収容部30内に確保することができる。
【0067】
<変形例>
図7は変形例に係る車両用バッテリーの冷却構造の側面図であり、本変形例の吸気ダクト15は、異物収容部30に繋がる通路22aと、接続部45に繋がる流路22bとが、分岐部22cによって分岐して、車両の前後方向にオフセットして配置されている。即ち、異物収容部30と接続部45とが、車両の前後方向にオフセットしている。
【0068】
その他の部分については、本発明の第1実施形態の車両用バッテリーの冷却構造と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0069】
本変形例に係る車両用バッテリーの冷却構造によれば、異物収容部30と接続部45とは、車両の前後方向にオフセットしているので、荷室11の車幅方向長さを狭めることなく、異物収容部30を設置することができ、荷室11のスペースを広くすることができる。また、第1ダクト部材20の床下に配置される部分から鉛直方向上方に屈曲する屈曲部24の曲率半径を大きくすることができ、これにより、吸気ダクト15の通気抵抗を低減させて、効率的にバッテリー12を冷却することができる。その他の作用は、第1実施形態の車両用バッテリーの冷却構造と同様である。
【0070】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。適用車両としては、ハイブリッド自動車以外にも、例えば、モータのみを駆動源とする電気自動車であってもよい。
また、上記実施形態では、荷室の床下にバッテリー12を配置したが、これに限らず、キャビンの床下に配置し、キャビンの床面高さを低く抑えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
11 荷室
12 バッテリー
14 吸気口
15 吸気ダクト
20 第1ダクト部材
21 上流側第2ダクト部材(第2ダクト部材)
22 下流側第2ダクト部材(第2ダクト部材)
22a 通路
22b 流路
22c 分岐部
23 側壁面
24 屈曲部
30 異物収容部
31 ホイールハウス
45 接続部
F 荷室の床面
H 鉛直方向の高さ
L 水平方向の長さ
W1 上部幅(異物収容部の車両前後方向の壁面の幅)
W2 下部幅(異物収容部の車両前後方向の壁面の幅)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室又はキャビンの床下に配置されるバッテリーと、吸気口を有して車室内の空気を冷却風として前記バッテリーに供給する吸気ダクトと、を備える車両用バッテリーの冷却構造であって、
前記吸気ダクトは、少なくとも一部が前記床下に配置される第1ダクト部材と、前記床下以外に配置される第2ダクト部材と、を備え、
前記第1ダクト部材と前記第2ダクト部材の接続部は、前記床下以外に配置されることを特徴とする車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項2】
前記第1ダクト部材は、前記床下に配置される部分の流路に直交する断面が、鉛直方向の高さに対し水平方向の長さが長い扁平形状を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項3】
前記第2ダクト部材は、前記荷室又はキャビンを区画する側壁面内に配置され、
前記第1ダクト部材は、鉛直方向上方に屈曲する屈曲部を有し、
前記屈曲部の少なくとも一部は、前記側壁面内に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項4】
前記接続部は、前記屈曲部の上方に配置されることを特徴とする請求項3に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項5】
前記第2ダクト部材は、一部がホイールハウスに沿うように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項6】
前記第2ダクト部材には、前記吸気口から落下した異物を収容する異物収容部が設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項7】
前記異物収容部は、前記第2ダクト部材から着脱可能であることを特徴とする請求項6に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項8】
前記異物収容部と前記接続部とは、車幅方向にオフセットしており、
前記異物収容部は、車幅方向において、前記接続部よりも内側に配置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項9】
前記異物収容部と前記接続部は、車両の前後方向にオフセットしていることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項10】
前記第2ダクト部材は、前記吸気口を有する上流側第2ダクト部材と、前記異物収容部を有し前記第1ダクト部材に接続する下流側第2ダクト部材と、から構成され、
前記下流側第2ダクト部材は、前記第1ダクト部材と前記上流側第2ダクト部材とから着脱可能であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項11】
前記下流側第2ダクト部材には、前記異物収容部に繋がる通路と前記接続部に繋がる流路とが分岐する分岐部が設けられ、
前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の下流側の流路断面積は、前記上流側第2ダクト部材の最小流路断面積と略等しいことを特徴とする請求項10に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項12】
前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の下流側の流路断面は、鉛直方向から見て前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の上流側の流路断面とオフセットしており、
前記異物収容部は、鉛直方向から見て前記下流側第2ダクト部材における前記分岐部の上流の流路断面とオーバーラップしていることを特徴とする請求項11に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項13】
前記異物収容部は、下部断面が上部断面に対して小さく構成されていることを特徴とする請求項6〜12のいずれか1項に記載の車両用バッテリーの冷却構造。
【請求項14】
前記異物収容部は、車両の前後方向の壁面の幅を上部に対して下部で短くなるように構成されていることを特徴とする請求項13に記載の車両用バッテリーの冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−179978(P2012−179978A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43082(P2011−43082)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】